説明

床仕上材

【課題】
本発明の目的とするところは、接着施工後に接着剤の水分や溶剤の揮発成分、または下地からの湿気による蒸気圧の影響で、床仕上材が局所的にフクレることを防止でき、床仕上材表面意匠への影響がなく、施工性に優れた床仕上材を提供することである。
【解決手段】
係る目的を達成する本発明の床仕上材は、厚さが0.6mm〜2.0mm、密度が125〜145Kg/mである不織布を最下層として積層一体化した熱可塑性樹脂製床仕上材であって、最下層が平滑で通気性を有し、フクレを防止する熱可塑性樹脂製床仕上材とすることである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は最下層が平滑で、通気性を有する床仕上材に関するものである。更に詳しくは、接着施工後に接着剤の水分や溶剤の揮発成分、または下地からの湿気による蒸気圧により、床仕上材に局所的なフクレの発生を防止でき、床仕上材表面意匠への影響がなく、施工性に優れた床仕上材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、床仕上材の施工は、床下地面に接着剤を塗布し、床仕上材を接着固定する方法が一般的に行なわれている。このような施工の場合、床仕上材と床下地面との間における通気性がないため、床仕上材を接着後に接着剤中の溶剤や、下地中に含まれる水分の蒸発によるガスが発生した場合、発生したガスの圧力により、床仕上材に局所的なフクレが発生するといった問題があった。
そこで、床仕上材と床下地面との間における通気性を確保する方法として、床仕上材の上面と下面を連通する縦通気孔を形成する方法(特許文献1)が提案されているが、この方法では床仕上材表面に孔が開いているため、表面の意匠性に影響を与え、美観性に劣ることになってしまう。
また、床仕上材裏面に点在する突出部を設けて連通する凹部を形成し、突出部は周辺部に対して中央部に窪みを設ける事で接着剤の受容スペースを形成し、接着剤が凹部に侵入することが防止できるため、連通の凹部よりガスを外部に放出する方法(特許文献2)が提案されているが、この方法では下地面と接着される部分が床仕上材裏面の凸部のみとなるため、裏面が平滑なものと比較すると接着強度が低くなり、また、裏面に凸凹を施しているため、裏面の凸凹が表面意匠へ影響するという問題があった。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】通気性評価試験装置
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の好適実施の態様について詳細に説明する。
【0009】
本発明でいう熱可塑性樹脂製の床仕上材表面層は、カレンダー法、押出し法、コーティング法、射出成形法等の公知の手段により、所望の形と厚さに成形することができ、使用目的に応じて印刷、転写、エンボスなどの方法による意匠を付け加えることもできる。
【0010】
本発明に使用する熱可塑性樹脂としては、塩化ビニル系樹脂,塩素化ポリエチレン等の含ハロゲン系樹脂、ポリエチレン,ポリプロピレン,エチレン−酢酸ビニル共重合体,エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体等のオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、熱可塑性エラストマー(オレフィン系,スチレン系,アクリル系,ポリエステル系,ウレタン系等)、合成ゴム等から選ばれた1種又は2種以上を混合してなる合成樹脂等を挙げることができる。なかでも、加工性、耐久性、コストを考慮すると塩化ビニル系樹脂が好ましい。
【0011】
上記熱可塑性樹脂には、加工性の向上、機能性の付与などのために添加剤を加えることも可能である。例えば、可塑剤、安定剤、加工助剤、充填材、酸化防止剤、抗菌剤、防カビ剤、紫外線吸収剤、難燃剤、帯電防止剤、着色剤等を挙げることができる。
【0012】
本発明で床仕上材の最下層に積層する不織布としては、厚さが0.6mm〜2.0mm、密度が125〜145Kg/mの範囲あることが必要で、好ましくは厚さが0.8mm〜1.5mm、密度が130〜140Kg/mの範囲である。
不織布の厚さが0.6mmより薄いか或いは、密度が125Kg/m未満の場合は床仕上材を接着剤で接着施工すると、接着剤が不織布に浸透し、熱可塑性樹脂層まで接着剤が浸透してしまうため、通気性が阻害され、接着後のフクレが発生してしまう。また、動荷重性にも劣ることになり、実用上問題が生じる。逆に不織布の厚さが2.0mmより厚いか或いは、密度が145Kg/mより大きいものを使用すると、不織布の柔軟性がなくなるため、施工がし難くなる。
【0013】
不織布の材質としては、コットン,麻,竹,パルプ,羊毛,絹などの天然繊維、レーヨン,キュプラ,アセテートなどの化学繊維、ナイロン,ポリエステル,アクリル,ビニロン,ポリプロピレン,塩化ビニリデン,ポリウレタンなどの合成繊維、ガラス,金属,炭素などの無機繊維からなる不織布を挙げることができる。中でも、加工性、耐久性、コストを考慮するとポリエステルの繊維が好ましい。また、繊維としては、短繊維でも長繊維でも使用できるが、ほつれ、毛羽たちを考慮すると長繊維が好ましい。
【0014】
本発明の床仕上材は、通常1〜10mmの厚さ範囲で使用され、2〜5mmの範囲が好ましい。
【実施例】
【0015】
次に、具体的な実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0016】
<床仕上材の作成>
表1に示す配合1からなる塩化ビニル系樹脂組成物を用いて、表2に示す実施例1〜2及び表3、4に示す比較例1〜8の不織布に、加工温度180℃でカレンダー加工により厚さ2.0mmのシートを積層し、床仕上材を作成した。また、表1に示す配合2からなるオレフィン系樹脂組成物を用いて、表2に示す実施例3〜4の不織布に、加工温度170℃でカレンダー加工により厚さ2.0mmのシートを積層し、床仕上材を作成した。得られたそれぞれの床仕上材を下記評価方法及び評価基準により評価し、評価結果を表2〜4に示す。
【0017】
<評価方法及び評価基準>
【0018】
[通気性]
中央に直径4mmの貫通穴を設けた厚さ5mm、縦・横200mmのスレート板の中央に縦・横100mmでウレタン樹脂系溶剤型接着剤をJIS A 5536の5.2bに規定のクシ目ごてを使用して塗布する。接着剤塗布部に縦・横100mm角の上記で得られた床仕上材を載せ、質量1Kgのおもりを約5秒間のせた後、おもりを取り除き、48時間養生したものを試験体とした。
この試験体を、図1に示す試験装置に固定し、0.03MPaの空気圧をかけた時の床仕上材中央部のフクレ高さを測定し、評価した。
○:0.10mm未満(施工後、フクレることがない。)
×:0.10mm以上(施工後、フクレることがある。)
【0019】
[耐動荷重性(キャスター試験)]
DIN54324Chair Caster Testの応用試験であり、スレート板にウレタン樹脂系溶剤型接着剤で、上記で得られた床仕上材を張付け試験体とし、試験装置に固定し、正回転を2回転と逆回転を2回転で1サイクルとし、荷重60Kgをかけた車輪を試験体上で繰り返し正回転、逆回転走行させる。6,000回転(1,500サイクル)終了後、床材の膨れ、剥離、破損の有無等を目視により観察した。(車輪:材質/ナイロン、直径/75mmφ、巾/25mm)
○:フクレ、剥離、破損が無い。
×:フクレ、剥離、破損が有る。
【0020】
[柔軟性]
上記で得られた床仕上材を施工し、施工のし易すさで評価を行なった。
○:施工しやすい。
×:収まりが悪いなど施工しにくい。

【0021】
【表1】

EVA*1 :エチレン−酢酸ビニル共重合体(酢酸ビニル含有量=20重量%、MI=10)
酸化防止剤*2:フェノール系とフォスファイト系の複合酸化防止剤
【0022】
【表2】

【0023】
【表3】

【0024】
【表4】

【0025】
実施例1〜4の評価結果より、不織布の厚さが0.6mm〜2.0mm、密度が125〜145Kg/mの不織布を使用することにより、通気性、耐動荷重性、柔軟性に優れた床仕上材が得られることが分かる。
これに対し、比較例1〜8の評価結果から、不織布の厚さが0.6mmより薄いと通気性が阻害されてしまい、2.0mmより厚い不織布を使用すると通気性は保たれるが、耐動荷重性または、柔軟性に劣る結果となった。密度が125Kg/m以下であると通気性または、耐動荷重性に劣る結果となった。密度が145Kg/mより大きいものを使用すると、柔軟性に劣り施工がし難い結果となった。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明の床仕上材は通気性を有しフクレの問題がないため、下地の養生期間を短縮でき、最下層が平滑であるため表面意匠への影響がない。また、一般的な施工方法で施工が可能であり、基材として不織布を使用しているため床材自体が軽量となり作業性が向上する利点もある。このように床仕上材として優れた特徴を有しているため、公共施設、商用ビル、店舗、工場、病院、学校、マンション、一般住宅などに広く使用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚さが0.6mm〜2.0mm、密度が125〜145Kg/mである不織布を最下層として積層一体化した熱可塑性樹脂製床仕上材であって、最下層が平滑で通気性を有し、フクレを防止することを特徴とする熱可塑性樹脂製床仕上材。
【請求項2】
厚さ方向に貫通穴を設けたスレート板の一の面に貫通穴を完全に覆うように床仕上材を接着固定したのち、前記スレート板の他の面の貫通穴より床仕上材の裏面に0.03MPaの空気圧をかけたときの床仕上材のフクレ高さが0.10mm未満である請求項1に記載の熱可塑性樹脂製床仕上材
【請求項3】
DIN54324に準ずる耐動荷重性試験において、6000回転終了後の床仕上材のフクレ、剥離、破損がない請求項1または2に記載の熱可塑性樹脂製床仕上材

【図1】
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【公開番号】特開2009−293372(P2009−293372A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−216561(P2009−216561)
【出願日】平成21年9月18日(2009.9.18)
【分割の表示】特願2004−93008(P2004−93008)の分割
【原出願日】平成16年3月26日(2004.3.26)
【出願人】(000010010)ロンシール工業株式会社 (84)
【Fターム(参考)】