説明

床暖房パネルの配管接続構造及びこの配管接続構造で用いる床暖房パネル

【課題】 ハードタイプの床暖房パネル10の引出管14の配管接続を現場で極めて簡単に行うことができ、施工性の著しい向上を図るとともに、地震等の振動や熱膨張の繰り返しに対して耐性を有し、耐久性に優れた床暖房パネルの配管接続構造を提案する。
【解決手段】 引出管14の端末をビーディング加工して外周面に鍔状隆起15を形成し、引出管14の外周に隆起15に係止させて締め付けナット18を取り付け、ベローズ22の両端に雄ネジ部24を設けた接続管20を形成し、引出管14の先端を接続管20内に挿入して隆起15が接続管20の開口端に当接し、締め付けナット18を雄ネジ部24に締結して2本の引出管14を配管接続することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、温水循環パイプを所定の配管パターンで配設した床暖房パネルを敷設し、床暖房パネルから導出した引出管を現場にて配管接続する床暖房パネルの配管接続構造及びこの配管接続構造で用いる床暖房パネルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
温水循環パイプとして銅管等の金属製パイプを用いたハードタイプの床暖房パネルは、所定矩形寸法の木質合板に、蛇行状等の配管パターンで銅管を埋設して製作され、床下地材として表面に仕上げ材を別途施工するものと、予め仕上げ材を貼ったユニットとしたものがある。この床暖房パネルは、必要な枚数を床組根太等の横架材上や床スラブ上に並べて敷設し、床暖房パネルから導出した引出管を現場にて配管接続する方法で施工されている。温水循環パイプとして樹脂パイプを用いたソフトタイプの床暖房パネルであれば、樹脂パイプ自体にある程度の屈曲性を有するので、その配管接続は比較的容易である(特許文献1参照)。従来、ハードタイプの床暖房パネルの配管接続の手段としては、継手として銅管を用いて引出管の端部とろう付け接合する方法や、ソケットタイプのジョイントを用いてOリングによるシール手段等がとられている。
【0003】
こうした床暖房パネルの配管接続構造において、ろう付け接合する施工方法は、熟練を要して著しく作業性に劣り、施工コストが高価であるとともに、火災の危険が伴い、安全上も好ましい手段ではなく、Oリングによるシール手段は、流通する高温水に対する耐性に劣るものである。また、これらの配管接続構造は、地震等の振動や熱膨張の繰り返しで亀裂を生じ、漏水を生じ易いなどの課題がある。このように、床暖房パネルの配管接続構造が床暖房の普及の大きな障壁となっている。
【特許文献1】特開2004−205084号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この発明は、引出管の配管接続を現場で極めて簡単に行うことができ、施工性の著しい向上を図るとともに、地震等の振動や熱膨張の繰り返しに対して耐性を有し、耐久性に優れた床暖房パネルの配管接続構造を提案することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
こうした課題を解決するため、請求項1に記載のこの発明の床暖房パネルの配管接続構造は、温水循環パイプを所定の配管パターンで配設したハードタイプの床暖房パネルを敷設し、床暖房パネルから導出した引出管を現場にて配管接続する床暖房パネルの配管接続構造であって、引出管の端末をビーディング加工して外周面に鍔状隆起を形成し、引出管の外周に隆起に係止させて締め付けナットを取り付け、ベローズの両端に雄ネジ部を設けた接続管を形成する。そして、引出管の先端を接続管内に挿入して隆起が接続管の開口端に当接し、締め付けナットを雄ネジ部に締結して2本の引出管を配管接続することを特徴とするものである。
【0006】
また、請求項2に記載の床暖房パネルの配管接続構造は、左右のベローズの間に直管部を設けて接続管を形成し、ベローズをそれぞれ90度曲げ、2本の引出管をU字配管するものである。
【0007】
また、請求項3に記載の床暖房パネルの配管接続構造は、上記の接続管及び締め付けナットをステンレス材で形成したものである。
【0008】
また、請求項4に記載のこの発明の床暖房パネルは、上記の配管接続構造で用いる床暖房パネルであって、隅部を切り欠いて凹部を形成し、この凹部に引出管を導出したものである。
【発明の効果】
【0009】
この発明の床暖房パネルの配管接続構造は、引出管の先端を接続管内に挿入して締め付けナットを雄ネジ部に締結する構造で、スパナを用いて引出管の配管接続を現場で極めて簡単に行うことができ、施工性の著しい向上を図ることができる。また、締め付けナットの締結で接続管の開口端に隆起を圧接し、メタルタッチで確実にシールすることができ、Oリング等のシール材を不要とした構造で、流通する高温水に対する耐性を有し、地震等の振動や熱膨張の繰り返しに伴う体積変化はベローズで吸収され、亀裂や破損が生じることがなく、耐久性に優れるものである。
【0010】
また、この発明の配管接続構造は、樹脂材を一切使用しないので機械的強度に優れ、接続管及び締め付けナットをステンレス材で形成すれば、オールステンレスで構成されてサビに対する耐性を有した構造とすることができる。
【0011】
また、接続管はベローズ継手で伸縮性・バネ性を有して配管自由度が高く、屈曲自在であるからベローズを90度曲げて簡単にエルボ配管可能である他、任意の交差角度で対向する2本の引出管の配管接続が容易である。請求項2に記載の左右にベローズを設けた接続管を用いれば、ベローズをそれぞれ90度曲げ、2本の引出管を簡単にU字配管することができる。
【0012】
また、この発明の配管接続構造で用いる床暖房パネルを並べて敷設し、それぞれの床暖房パネルの凹部が当接し、配管接続作業のための作業凹所が表面に開口する。その上面からスパナを用いて締め付けナットを締結するだけの作業であるから、作業のための開口面積も小さくて足り、床暖房の熱効率の向上と温度ムラの改善を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に、この発明を実施するための最良の形態について、図面を用いて説明する。
図1から3に、この発明の床暖房パネルの配管接続構造の基本的構成及び作業手順を示す。図1は接続管20の実施例で、この接続管20はステンレス材で形成され、伸縮性・気密性・バネ性を有したベローズ22の両端に、外周にネジを刻設した雄ネジ部24が形成されている。中央のベローズ22と両端の雄ネジ部24との間には、配管接続時にスパナを掛けるための六角部25が加工されている。
【0014】
配管接続のために床暖房パネル10から導出した引出管14は、端末をビーディング加工し、先端に近接した外周面に鍔状隆起15が形成され、内周面に雄ネジ部24に螺合するメネジを刻設した締め付けナット18が、隆起15に係止させて引出管14の外周に設けられている。この締め付けナット18もステンレス材で形成されている。図2に示すように、接続管20の雄ネジ部24の内径は、引出管14の外径に適合して引出管14が挿入可能な寸法とされ、引出管14の先端を接続管20内に挿入して隆起15が接続管20の開口端に当接する。
【0015】
このようにして接続管20の両端に引出管14の先端を挿入し、水平を確認し、締め付けナット18を雄ネジ部24の外周に手締めする。そして、六角部25にスパナを掛けて接続管20の回動を防止し、締め付けナット18をスパナを用いて増し締めして雄ネジ部24に締結する。締め付けナット18の締結で接続管20の開口端に隆起15が圧接され、図3に示すように、2本の引出管14が配管接続される。
【0016】
図4は床暖房パネル10の実施例である。この床暖房パネル10は、所定矩形寸法の木質合板に、所定の配管パターンで銅管等の温水循環パイプ12を埋設して製作され、その隅部を切り欠いて凹部11が形成され、この凹部11に、温水循環パイプ12に連通した引出管14が導出されている。
【0017】
図5は、4枚の床暖房パネル10を敷設してそれぞれの凹部11が当接し、配管接続作業のための作業凹所が表面に開口した状態である。各床暖房パネル10の凹部11に2本の引出管14が導出され、作業凹所に4組対向している。図6に示すように、4本の接続管20を用いて作業凹所の上面から上記の手順で作業し、各組の引出管14を配管接続する。配管接続作業の後、蓋板で作業凹所に蓋をして開口表面を塞ぐ。
【0018】
図7は、90度の交差角度で対向した2本の引出管14をエルボ配管した状態を示す。ベローズ22は屈曲自在であり、図に示すように、ベローズ22を90度曲げて簡単にエルボ配管可能である。ベローズ22の曲げ角度を調整することで、任意の交差角度で対向する2本の引出管14の配管接続も容易である。
【0019】
図8は接続管20aの他の実施例で、この接続管20aは、左右のベローズ22a、22bとの間に直管部23を設けて形成されている。図9に示すように、ベローズ22a、22bをそれぞれ90度曲げ、接続管20aを用いて2本の引出管14を簡単にU字配管することができる。
【0020】
図10は、4枚の床暖房パネル10を敷設した全体図である。図に示すように、2種類の接続管20、20a用いて引出管14を配管接続し、温水循環パイプ12を連通させて循環回路を形成し、給湯装置から供給される高温水を循環させて床暖房を運転する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】接続管の正面図。
【図2】接続管を用いて引出管を配管接続する途中の状態を示す説明図。
【図3】接続管を用いて引出管を配管接続した状態を示す正面図。
【図4】床暖房パネルの平面図。
【図5】4枚の床暖房パネルを敷設して凹部が当接した状態を示す説明図。
【図6】4本の接続管を用いて配管接続した状態を示す説明図。
【図7】引出管をエルボ配管した状態を示す説明図。
【図8】他の接続管の正面図。
【図9】引出管をU字配管した状態を示す説明図。
【図10】4枚の床暖房パネルを敷設した全体の状態を示す平面図。
【符号の説明】
【0022】
10 床暖房パネル
11 凹部
12 温水循環パイプ
14 引出管
15 隆起
18 締め付けナット
20 接続管
20a 接続管
22 ベローズ
22a ベローズ
22b ベローズ
23 直管部
24 雄ネジ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
温水循環パイプ12を所定の配管パターンで配設したハードタイプの床暖房パネル10を敷設し、床暖房パネル10から導出した引出管14を現場にて配管接続する床暖房パネルの配管接続構造であって、
引出管14の端末をビーディング加工して外周面に鍔状隆起15を形成し、引出管14の外周に隆起15に係止させて締め付けナット18を取り付け、ベローズ22の両端に雄ネジ部24を設けた接続管20を形成し、
引出管14の先端を接続管20内に挿入して隆起15が接続管20の開口端に当接し、締め付けナット18を雄ネジ部24に締結して2本の引出管14を配管接続することを特徴とした床暖房パネルの配管接続構造。
【請求項2】
左右のベローズ22a、22bの間に直管部23を設けて接続管20aを形成し、ベローズ22a、22bを90度曲げ、2本の引出管14をU字配管する請求項1に記載の床暖房パネルの配管接続構造。
【請求項3】
接続管20及び締め付けナット18をステンレス材で形成した請求項1又は2に記載の床暖房パネルの配管接続構造。
【請求項4】
請求項1、2又は3に記載の床暖房パネルの配管接続構造で用いる床暖房パネル10であって、隅部を切り欠いて凹部11を形成し、この凹部11に引出管14を導出した床暖房パネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−14329(P2009−14329A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−180392(P2007−180392)
【出願日】平成19年7月9日(2007.7.9)
【出願人】(591193691)株式会社イズミ技研 (2)
【Fターム(参考)】