説明

床暖房パネル

【課題】床の強度が充分に保てるとともに、暖房性能が向上するようにした床暖房パネルを提供する。
【解決手段】木質床材2の裏面に形成した堀り込み部2aの底面に、面状発熱体3を貼着する床暖房パネル6Aにおいて、堀り込み部2a内に、木質床材2の裏面と略同高さの凸部2hを形成するとともに、面状発熱体3に、凸部2hに貫通する貫通穴3aを形成して、面状発熱体3の貫通穴3aを凸部2hに貫通させた状態で、面状発熱体3を堀り込み部2aの底面に貼着することにより、凸部2hが補強材の役割を果たすので、床を踏みつけたとき撓みにくくなって、床の強度が充分に保てるようになる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床の強度が保てるとともに、暖房性能が向上するようにした床暖房パネルに関する。
【背景技術】
【0002】
図7(a)に示すように、電気式床暖房に用いる床暖房パネル1は、縦長さL(例えば1818mm…6尺)と横幅W(例えば303mm…1尺)と厚みT(例えば12mm)とが規格化されていて、図7(b)に示すように、床下地の上面に隙間無く縦横に敷き詰めるようになっている(特許文献1参照)。
【0003】
前記のような床暖房パネル1として、図7(a)のB−B線断面図である図8(a)の第1背景技術は、木質床材2の裏面に堀り込み部2aを形成して、堀り込み部2aの底面に、面状発熱体3を貼着するとともに、面状発熱体3の裏面に面状材(合板、発泡樹脂等)4を貼着するようにしている。なお、2cおよび2dは、床暖房パネル1を嵌め合い状態で敷き詰めるための雄および雌の実(さね)である。
【0004】
そして、木質床材2の厚さTを12mmとすれば、木質床材2の裏面から3mm深さt1で堀り込み部2aを堀り込んで、堀り込み部2aの底面に、1mm厚みt2の面状発熱体3を貼着するとともに、面状発熱体3の裏面に2mm厚みt3の面状材4を貼着するようになっている。
【0005】
図8(b)の第2背景技術は、木質床材2の裏面から6mm深さt1で堀り込み部2aを堀り込んで、堀り込み部2aの底面に、1mm厚みt2の面状発熱体3を貼着するとともに、面状発熱体3の裏面に5mm厚みt3の真空断熱材8を配置して、木質床材2の裏面に、例えば厚み0.2mm程度のシート材(紙、樹脂、金属等)9を貼着することで、堀り込み部2aを閉塞するようになっている。
【0006】
背景技術1では、面状発熱体3の上に位置する木質床材2の厚みt6が9mmであるから、昇温スピードが遅くて、上下放熱効率も悪いという問題がある。
【0007】
これに対して、背景技術2では、面状発熱体3の上に位置する木質床材2の厚みt6が6mmであることに加えて、真空断熱材8を配置することで木質床材2の裏面側方向への放熱が格段に抑制できるから、昇温スピードが早くなって、上下放熱効率も良くなる。
【特許文献1】特開2004−245518号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、背景技術2では、面状発熱体3の上に位置する木質床材2の厚みt6が6mmであるから、床を踏みつけたとき撓みやすくなる等の強度上の問題があった。
【0009】
本発明は、前記問題を解消するためになされたもので、床の強度が充分に保てるとともに、暖房性能が向上するようにした床暖房パネルを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するために、本発明の第1の手段は、木質床材の裏面に形成した堀り込み部の底面に、面状発熱体を貼着する床暖房パネルにおいて、前記堀り込み部内に、木質床材の裏面と略同高さの凸部を形成するとともに、前記面状発熱体に、前記凸部に貫通する貫通穴を形成して、面状発熱体の貫通穴を凸部に貫通させた状態で、面状発熱体を堀り込み部の底面に貼着することを特徴とする床暖房パネルを提供するものである。
【0011】
本発明の第2の手段は、木質床材の裏面に形成した堀り込み部の底面に、面状発熱体を貼着する床暖房パネルにおいて、前記面状発熱体に、木質床材の裏面と略同高さの凸部材を取付けたことを特徴とする床暖房パネルを提供するものである。
【0012】
暖房性能をより向上させるために、前記面状発熱体の裏面の前記凸部若しくは凸部材の間に真空断熱材を配置した構成とすることが好ましい。
【0013】
真空断熱材の配置作業性を良好にするとともに、位置決め精度も向上させるために、前記真空断熱材は、ガスバリア性を有する包装材で複数の芯材を覆い、隣接する芯材の間の包装材同士を熱溶着して、各芯材を独立した真空空間に位置させたものであり、前記熱溶着部に、前記凸部若しくは凸部材を貫通する貫通穴を形成した構成とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の第1の手段によれば、前記背景技術2の構成を基本として、木質床材の裏面と略同高さの凸部を堀り込み部内に形成したから、凸部が補強材の役割を果たすので、床を踏みつけたとき撓みにくくなって、床の強度が充分に保てるようになる。
【0015】
また、面状発熱体の貫通穴を凸部に貫通させた状態で、面状発熱体を堀り込み部の底面に貼着するから、凸部を避けるために面状発熱体を分割する必要が無く、1枚の面状発熱体で良いので、面状発熱体の貼着作業性が良好になるとともに、位置決め精度も向上するようになる。
【0016】
さらに、背景技術2と同様に、面状発熱体の上に位置する木質床材の厚みが背景技術1と比べて薄くなる(例えば厚みt6が6mm)ので、昇温スピードが早くなって(快適性)、上下放熱効率も良くなることで(省エネ性)、暖房性能が向上するようになる。
【0017】
本発明の第2の手段によれば、前記背景技術2の構成を基本として、木質床材の裏面と略同高さの凸部材を面状発熱体に取付けたから、凸部材が補強材の役割を果たすので、床を踏みつけたとき撓みにくくなって、床の強度が充分に保てるようになる。
【0018】
また、背景技術2と同様に、面状発熱体の上に位置する木質床材の厚みが背景技術1と比べて薄くなる(例えば厚みt6が6mm)ので、昇温スピードが早くなって(快適性)、上下放熱効率も良くなることで(省エネ性)、暖房性能が向上するようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、背景技術と同一構成・作用の箇所は、同一番号を付して詳細な説明を省略する。
【0020】
図1(a)は、第1実施形態の床暖房パネル6Aの底面(裏面)図、図1(b)は面状発熱体3の平面図、図1(c)は図1(a)のC−C線に相当する断面図である。
【0021】
図2にも示すように、木質床材2の裏面に堀り込み部2aを形成して、堀り込み部2aの底面に、面状発熱体3を貼着するようにしている。この貼着は、例えばホットメルト接着剤で接着することができる。なお、2e,2fは、床暖房パネル連結用のリード線の端末のコネクタ用の窪みである。
【0022】
そして、木質床材2の厚さTを12mmとすれば、図8(b)の背景技術2と同様に、木質床材2の裏面から6mm深さt1で堀り込み部2aを堀り込んで、堀り込み部2aの底面に、1mm厚みt2の面状発熱体3を貼着している。
【0023】
また、木質床材2の裏面に、例えば厚み0.2mm程度のシート材(紙、樹脂、金属等)9を貼着することで、堀り込み部2aを閉塞するようになっている。
【0024】
具体的には、木質床材2の堀り込み部2a内には、木質床材2の裏面と略同高さの円柱状凸部2hを長さ方向と幅方向に一定の間隔で複数個(本例では、長さ方向に5個、幅方向に2個、計10個)を形成している。この凸部2hは、木質床材2の裏面から凸部2hを残して堀り込み部2aを堀り込むことにより形成することができる。その他、堀り込み部2aの底面に、凸部2hを接着等することにより形成することもできる。
【0025】
また、面状発熱体3には、堀り込み部2aの各凸部2hに貫通する円状貫通穴3aをそれぞれ形成する。なお、この貫通穴3aは、ヒータ用電線等を避けた位置に形成する。
【0026】
そして、面状発熱体3の各貫通穴3aを堀り込み部2aの各凸部2hに貫通させた状態で、面状発熱体3を堀り込み部2aの底面に貼着する。
【0027】
第1実施形態の床暖房パネル6Aであれば、前記背景技術2の構成を基本として、木質床材2の裏面と略同高さの凸部2hを堀り込み部2a内に形成したから、凸部2hが補強材の役割を果たすので、床を踏みつけたとき撓みにくくなって、床の強度が充分に保てるようになる。
【0028】
また、面状発熱体3の貫通穴3aを堀り込み部2aの凸部2hに貫通させた状態で、面状発熱体3を堀り込み部2aの底面に貼着するから、凸部2hを避けるために面状発熱体3を分割する必要が無く、1枚の面状発熱体3で良いので、面状発熱体3の貼着作業性が良好になるとともに、位置決め精度も向上するようになる。
【0029】
さらに、背景技術2と同様に、面状発熱体3の上に位置する木質床材2の厚みt6が背景技術1と比べて薄くなる(例えば厚みt6が6mm)ので、昇温スピードが早くなって(快適性)、上下放熱効率も良くなることで(省エネ性)、暖房性能が向上するようになる。
【0030】
第1実施形態では、木質床材2の堀り込み部2a内に円柱状凸部2hを長さ方向と幅方向に一定の間隔で複数個を形成したものであったが、図3(a)〜(c)に示す変形例のように、木質床材2の堀り込み部2a内に、木質床材2の裏面と略同高さで、幅方向に一定の間隔で長さ方向に延在する複数個(本例では2個)の平板状凸部2hを形成するとともに、面状発熱体3に、堀り込み部2aの各凸部2hに貫通するスリット状貫通穴3aをそれぞれ形成して、面状発熱体3の各貫通穴3aを堀り込み部2aの各凸部2hに貫通させた状態で、面状発熱体3を堀り込み部2aの底面に貼着することもできる。
【0031】
図4(a)は、第2実施形態の床暖房パネル6Bの面状発熱体3の底面図、図4(b)は図4(a)のE−E線断面図、図4(c)は図1(a)のC−C線に相当する断面図である。
【0032】
第1実施形態の床暖房パネル6Aでは、木質床材2の堀り込み部2a内に凸部2hを形成したが、第2実施形態の床暖房パネル6Bでは、木質床材2の堀り込み部2a内に凸部2hを形成しない。
【0033】
その代わりに、面状発熱体3には、長さ方向と幅方向に一定の間隔で複数個(本例では、長さ方向に5個、幅方向に2個、計10個)の円状貫通穴3aを形成するとともに、各貫通穴3aに、薄厚の頭部11aを有し、木質床材2の裏面と略同高さの円柱状凸部材11を貫通させて取付けている。
【0034】
そして、頭部11aを木質床材2の堀り込み部2a側に向けた状態で、堀り込み部2aの底面に面状発熱体3を貼着している。なお、堀り込み部2aの底面に、凸部材11の頭部11aが入り込む窪みを形成しても良い。
【0035】
第2実施形態の床暖房パネル6Bであれば、前記背景技術2の構成を基本として、木質床材2の裏面と略同高さの凸部材11を面状発熱体3に取付けたから、凸部材11が補強材の役割を果たすので、床を踏みつけたとき撓みにくくなって、床の強度が充分に保てるようになる。
【0036】
また、背景技術2と同様に、面状発熱体3の上に位置する木質床材2の厚みt6が背景技術1と比べて薄くなる(例えば厚みt6が6mm)ので、昇温スピードが早くなって(快適性)、上下放熱効率も良くなることで(省エネ性)、暖房性能が向上するようになる。
【0037】
図5は、第3実施形態の床暖房パネル6Cであり、図1(a)のC−C線に相当する断面図である。
【0038】
第1実施形態の床暖房パネル6A(第2実施形態の床暖房パネル6Bでも同様。)に加えて、面状発熱体3の裏面の凸部2h(若しくは凸部材11)の間に、幅方向に3分割した5mm厚みt3の真空断熱材8(図2参照)を配置している。
【0039】
第3実施形態の床暖房パネル6Cであれば、面状発熱体3の裏面に真空断熱材8を配置したから、面状発熱体3の裏面方向への放熱が格段に抑制できるので、暖房性能がより向上するようになるとともに、床下地と床暖房パネル6Cとの間に介在させる断熱材を省略することが可能になる。
【0040】
また、凸部2h(若しくは凸部材11)の間に配置した真空断熱材8は複数枚に分割されるから、床暖房パネル6Cの施工時に誤って釘等で複数枚の真空断熱材8の一部に穴が開いて断熱性能が発揮されないことがあったとしても、その影響が床暖房パネル6C全体に及ぶことを未然に避けることができる。
【0041】
図6は、第4実施形態の床暖房パネル6Dであり、図6(a)は真空断熱材8の平面図、図6(b)は図1(a)のC−C線に相当する断面図である。
【0042】
真空断熱材8は、ガスバリア性を有する包装材で複数の芯材を覆い、隣接する芯材の間の包装材同士を熱溶着して、各芯材を独立した真空空間に位置させたものであり、熱溶着部8aに、凸部2h(若しくは凸部材11)を貫通する貫通穴8bをそれぞれ形成している。
【0043】
第4実施形態の床暖房パネル6Dであれば、真空断熱材8の内部を複数に分割して、包装材同士の熱溶着部8aに凸部2h若しくは凸部材11を貫通する貫通穴8bを形成したから、真空断熱材8の貫通穴8bを凸部2h若しくは凸部材11に貫通させた状態で、真空断熱材8を面状発熱体3の裏面に配置するので、真空断熱材8を1枚に集約できるため、真空断熱材8の配置作業性が良好になるとともに、位置決め精度も向上するようになる。
【0044】
また、真空断熱材8は、熱溶着部8aで内部が複数(本例では12個)に分割されるから、床暖房パネル6Dの施工時に誤って釘等で複数枚の真空断熱材8の一部に穴が開いて断熱性能が発揮されないことがあったとしても、その影響が床暖房パネル6全体に及ぶことを未然に避けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の第1実施形態に係る床暖房パネルであり、(a)は底面(裏面)図、(b)は面状発熱体の平面図、(c)は(a)のC−C線に相当する断面図である。
【図2】図1の床暖房パネルの分解斜視図である。
【図3】(a)は第1実施形態の変形例の床暖房パネルであり、(a)は底面(裏面)図、(b)は面状発熱体の平面図、(c)は(a)のD−D線に相当する断面図である。
【図4】第2実施形態の床暖房パネルであり、(a)は面状発熱体の底面図、(b)は(a)のE−E線断面図、(c)は図1(a)のC−C線に相当する断面図である。
【図5】第3実施形態の床暖房パネルであり、図1(a)のC−C線に相当する断面図である。
【図6】第4実施形態の床暖房パネルであり、(a)は真空断熱材の平面図、(b)は図1(a)のC−C線に相当する断面図である。
【図7】従来の床暖房パネルであり、(a)は斜視図、(b)は敷き詰めた状態の斜視図である。
【図8】(a)(b)は従来の床暖房パネルの図7(a)のB−B線横断面図である。
【符号の説明】
【0046】
2 木質床材
2a 堀り込み部
2h 凸部
3 面状発熱体
3a 貫通穴
6A〜6D 床暖房パネル
8 真空断熱材
9 シート材
11 凸部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
木質床材の裏面に形成した堀り込み部の底面に、面状発熱体を貼着する床暖房パネルにおいて、
前記堀り込み部内に、木質床材の裏面と略同高さの凸部を形成するとともに、前記面状発熱体に、前記凸部に貫通する貫通穴を形成して、面状発熱体の貫通穴を凸部に貫通させた状態で、面状発熱体を堀り込み部の底面に貼着することを特徴とする床暖房パネル。
【請求項2】
木質床材の裏面に形成した堀り込み部の底面に、面状発熱体を貼着する床暖房パネルにおいて、
前記面状発熱体に、木質床材の裏面と略同高さの凸部材を取付けたことを特徴とする床暖房パネル。
【請求項3】
前記面状発熱体の裏面の前記凸部若しくは凸部材の間に真空断熱材を配置したことを特徴とする請求項1または2に記載の床暖房パネル。
【請求項4】
前記真空断熱材は、ガスバリア性を有する包装材で複数の芯材を覆い、隣接する芯材の間の包装材同士を熱溶着して、各芯材を独立した真空空間に位置させたものであり、前記熱溶着部に、前記凸部若しくは凸部材を貫通する貫通穴を形成したことを特徴とする請求項3に記載の床暖房パネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−113855(P2007−113855A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−306472(P2005−306472)
【出願日】平成17年10月21日(2005.10.21)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】