説明

床材の製造方法および床材

【目的】 層間剥離を無くし、寸法安定性、表面の仕上げ度を改良した多層構造の床材の提供。
【解決手段】少なくとも3本のロールで構成された圧延ロールの前方に第1押出機及び第2押出機の2台の押出機をV字形に配設し、それぞれ配合を変えた第1中間樹脂層用配合物を第1押出機から、第2中間樹脂層用配合物を第2押出機から、ロールから供給されてくる表面フィルム層と基布の間に溶融押出し、表面フィルム層、第1押出機から押出しされ溶融状態にある第1中間樹脂層用配合物、第2押出機から押出しされ溶融状態にある第2中間樹脂層用配合物、及び基布を、圧延ロールで圧着し一体化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層構造の床材の製造方法および床材に関する。本発明をより詳細に述べれば、従来のカレンダーロール圧着法とは異なり、2台の押出機を使用して異なる床材配合組成物を溶融圧着させることにより、各種物性を改良した床材の製造方法および床材に関する。
【0002】
積層構造の長尺床材の製造方法には多様な方法があるが、最も代表的な従来法は、たとえば、表面フィルム層、樹脂層、基布層など複数の層を、2〜5本のロールで構成された逆L型、L型、Z型などのロール間を通して一度に熱圧着をし、さらに、他の圧延ロールを通して一体化して積層床材にする方法がある。
【0003】
この従来法の場合、複数のシートを一度に熱圧着するため、相互に接着不良をおこしやすく、そのため、積層床材を構成する各層が剥離してしまう恐れ、いわゆる層間剥離を起こしやすいという欠点がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、積層型床材を構成する、たとえば、表面フィルム層、樹脂層、基布層など複数の層を3〜5本のロールで構成された逆L型、L型、Z型などのロール間を通して一度に熱圧着をし、さらに、他の圧延ロールを通して一体化して積層型床材にする従来法で発生する接着不良による積層型床材を構成している各層の層間剥離を低減することである。
【0005】
本発明が解決しようとする別の課題は、積層型床材を構成する、たとえば、表面フィルム層、樹脂層、基布層など複数の層を3〜5本のロールで構成された逆L型、L型、Z型などのロール間を通して一度に熱圧着をし、さらに、他の圧延ロールを通して一体化して積層型床材にする従来法で発生する寸法安定性が悪く、且つ反りが発生するという欠点を改良する方法を提供することである。
【0006】
本発明が解決しようとするさらに別の課題は、2台の押出機を使用することにより、表面フィルム層、樹脂層、基布層など複数の層を3〜5本のロールで構成された逆L型、L型、Z型などのロール間を通して一度に熱圧着をし、さらに、他の圧延ロールを通して一体化して積層型床材にする従来法に付随する製造工程上の欠点及び製造された積層型床材の物性上の欠点を改良する方法を提供することである。
【0007】
本発明が解決しようとするさらに別の課題および利点は以下逐次明らかにされる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、従来法によって製造される積層型床材の欠点である層同士の接着不良やしわ、凹凸などの発生、さらには層間剥離が発生する原因が、予め成形した複数のシートを圧延ロールで圧着することによるためであると考えた。従って、この従来法の欠点を改良するためには、シートを圧延ロールで圧着する代わりに、配合が異なる2種類の樹脂配合物を押出機により溶融押出して、溶融状態で圧延ロールに供給して相互の表面を溶融状態で一体化することを検討した。
【0009】
従って、課題を解決するための手段は、表面フィルム層、第1中間樹脂層、第2中間樹脂層、及び基布の4層構造から成る積層型の床材を製造する方法であって、
(1)3本のロールで構成された圧延ロールの前方に第1押出機及び第2押出機の2台の押出機をV字形に配設すること、
(2)それぞれ配合を変えた第1中間樹脂層用配合物と第2中間樹脂層用配合物を製造すること、
(3)第1押出機から第1中間樹脂層用配合物を、第2押出機から第2中間樹脂層用配合物を、ロールから供給されてくる表面フィルム層と基布の間に溶融押出しすること、
(4)表面フィルム層、第1押出機から押出しされ溶融状態にある第1中間樹脂層用配合物、第2押出機から押出しされ溶融状態にある第2中間樹脂層用配合物、及び基布を、圧延ロールで圧着することを含む積層型床材を製造する方法によって解決される。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に記載した発明により下記に例示する効果を奏功することができる。
(1)表面フィルム層、第1中間樹脂層、第2中間樹脂層、及び基布の4層構造から成る積層型の床材を製造する方法において、第1中間樹脂層及び第2中間樹脂層を構成する樹脂配合物を、それぞれ配合を変えて、2台の押出機から押出して溶融状態で圧延ロールで圧着させているので、第1中間樹脂層及び第2中間樹脂層が、単に表層面で接合しているのではなく、相互の表層面から相当内部まで溶融固化しているので、層間剥離がない。
(2)通常、配合が異なる異種同士の樹脂層が表層面だけで接合されている場合、両者の熱膨張係数、経時収縮率、吸湿膨張係数の違いにより、寸法安定性に劣り、反り等が発生するが、本発明の積層型床材は、第1中間樹脂層及び第2中間樹脂層が、単に表層面で接合しているのではなく、相互の表層面から相当内部まで溶融固化しているので、従来法による床材に比べて寸法安定性がよい。
(3)物性面において、凹み値が単層構成の床材に比較して、軟らかく仕上がる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
発明を実施するための最良の形態を添付図面を参照して説明する。
図1は本発明で使用する装置の1例を示す概念図である。本発明で使用する製造装置は、たとえば、第1ロール1,第2ロール2、及び第3ロール3の3本ロールから構成される直列3本型ロールの手間に、第1押出機4と第2押出機5がV字形に配設されている。
【0012】
本発明で使用される押出機は、単軸スクリュー押出機または多軸スクリュー押出機、或いはこれらの変形、またはこれらが組合わさった構造のものなど、任意に選択することができ、特段に限定されない。
【0013】
本発明で使用されるロールも、直列3本型、傾斜3本型、直列4本型、逆L型等任意に選択することができ、特段に限定されない。
【0014】
尚、図では、わかりやすくするために、第1ロール1,第2ロール2、及び第3ロール3の間のニップ間隔を拡大してある。
【0015】
また、1を第1ロール,2を第2ロール、及び3を第3ロールとしたが、これは説明の便宜上のためであり、それらの位置関係を限定するものでない。
【0016】
[使用した材料]
1.表面層フィルムの配合
成 分重量部
塩化ビニール(重合度 1100) 79
艶消し塩化ビニール 21
可塑剤(DINP) 35
充填材(CCR) 33
安定剤(AP628.Ba−Zn系.粉体) 1.2
安定剤(SC126.Ba−Zn系.液体) 0.3
着色剤 任意
【0017】
2.第1中間樹脂層用配合物
成 分重量部
再生塩化ビニール (再生農ビ) 65
可塑剤(DINP) 15
安定剤(OW474.Ba−Zn系.粉体) 2.8
充填材(TS70) 10
リサイクル材(製品の粉砕物) 30
着色剤 任意
【0018】
3.第2中間樹脂層用配合物
成 分重量部
再生塩化ビニール (再生農ビ) 65
可塑剤(DINP) 15
安定剤(OW474.Ba−Zn系.粉体) 2.8
充填材(TS70) 122
リサイクル材(製品の粉砕物) 30
着色剤 任意
【0019】
なお、本発明の積層型床材を構成する2つの中間樹脂層を、それぞれ第1中間樹脂層及び第2中間樹脂層と呼称するが、これは説明の便宜上のためであり、それらの位置関係を限定するものではない。
【0020】
3.基布(寒冷紗)
組織:平織
使用原糸:径 ポリエステル100% 低収縮糸
緯 TR混紡糸(ポリエステル 50% レーヨン50%)
使用番手: 径 20S/1 * 緯 20S/1
密度 :径 17本 * 緯 17本 (2.54CM間)
セット方法(接着剤) : アクリル樹脂片面コーティング
【0021】
先ず、第1中間樹脂層用配合物をホッパー(図示せず)を経て第1押出機4に充填し、第2中間樹脂層用配合物をホッパー(図示せず)を経て第2押出機5に充填した。
【0022】
第1中間樹脂層用配合物を第1押出機4に充填し、第2中間樹脂層用配合物を第2押出機5に充填したとしたが、これは説明の便宜上のためであり、それらの対応関係を限定するものではない。
【0023】
常法により、第1ロール1を経て、第2ロール2と第3ロール3のニップに表面層となるフィルム6を供給し、第3ロール3か第2ロール2と第3ロール3のニップに基布7を供給し、同時に、フィルム6と基布7の間に、溶融状態にある第1中間樹脂層用配合物8と第2中間樹脂層用配合物9を押し出し、第2ロール2と第3ロール3で圧着し、巻取りロール(図示せず)で巻き取って、全厚2.0と2.5mmの4層構造の床材を得た。
【0024】
なお、押出機及びロールの諸元、製造条件は、塩ビ床材の製造において、塩ビ配合物の押出し、圧延と同じであり、当業者には周知のことであるので、詳細に説明することを割愛した。
【比較例】
【0025】
なお、比較のため実施例で使用したのと同じ第1中間樹脂層用配合物と第2中間樹脂層用配合物でシートを製造し、それらを圧着ロールを通して、表面フィルム層及び基布と圧着して全厚2.0と2.5mmの4層構造の床材を得た。
【0026】
[物性テスト]
1.表面状態の目視テスト
実施例、及び比較例で製造した4層構造の床材の表面の仕上がり度を目視によりチェックしたところ、比較例の床材には、接着不良による微細しわ、凹凸が観察されたが、実施例の床材の表面には、そのような不良は観察されなかった。
【0027】
2.次いで、へこみ量(mm)、残留へこみ量(mm)を測定して、その結果を表−1に示す。
【表−1】

【0028】
3.寸法安定性テスト
実施例及び比較例で製造した4層構造の床材の寸法安定性を、JISA5705に従って測定した。その結果、実施例は0.95%、比較例は0.45%であった、
【0029】
4.層間剥離テスト
実施例及び比較例で製造した4層構造の床材の表面フィルム層と第1中間樹脂層、第1中間樹脂層と第2中間樹脂層、及び第2中間樹脂層と基布の間の層間剥離テストをJISK6328に従って行った。その結果を表−2に示す。
【表−2】

【産業上の利用可能性】
【0030】
以上述べたように、本発明による床材は、表面フィルム層、第1中間樹脂層、第2中間樹脂層、及び基布の4層構造から成る積層型の床材を製造する方法であって、3本のロールで構成されたロールの前方に第1押出機及び第2押出機の2台の押出機をV字形に配設し、それぞれ配合を変えた第1中間樹脂層用配合物と第2中間樹脂層用配合物を製造し、第1押出機から第1中間樹脂層用配合物を、第2押出機から第2中間樹脂層用配合物を、ロールから供給されてくる表面フィルム層と基布の間に溶融押出し、表面フィルム層、第1押出機から押出しされ溶融状態にある第1中間樹脂層用配合物、第2押出機から押出しされ溶融状態にある第2中間樹脂層用配合物、及び基布を、圧延ロールで圧着する。従って、通常、配合が異なる異種同士の樹脂層が表層面だけで接合されている場合、両者の熱膨張係数、経時収縮率、吸湿膨張係数の違いにより、寸法安定性に劣り、反り等が発生するが、本発明の積層型床材は、第1中間樹脂層及び第2中間樹脂層が、単に表層面で接合しているのではなく、相互の表層面から相当内部まで溶融固化しているので層間剥離強度が高く、従来法による床材に比べて寸法安定性がよく、また、物性面において、凹み値が単層構成の床材に比較して、軟らかく仕上がるので、床材として優れている。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を実施するための装置の1例を示す概念斜視図。
【符号の説明】
1 第1ロール
2 第2ロール
3 第3ロール
4 第1押出機
5 第2押出機
6 表面フィルム
7 基布
8 第1中間樹脂配合物
9 第2中間樹脂配合物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面フィルム層、第1中間樹脂層、第2中間樹脂層、及び基布の4層構造から成る積層型の床材を製造する方法であって、
(1)少なくとも3本のロールで構成された圧延ロールの前方に第1押出機及び第2押出機の2台の押出機をV字形に配設すること、
(2)それぞれ配合を変えた第1中間樹脂層用配合物と第2中間樹脂層用配合物を製造すること、
(3)第1押出機から第1中間樹脂層用配合物を、第2押出機から第2中間樹脂層用配合物を、ロールから供給されてくる表面フィルム層と基布の間に溶融押出しすること、
(4)表面フィルム層、第1押出機から押出しされ溶融状態にある第1中間樹脂層用配合物、第2押出機から押出しされ溶融状態にある第2中間樹脂層用配合物、及び基布を、圧延ロールで圧着することを含む積層型床材を製造する方法。

【図1】
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【公開番号】特開2007−38623(P2007−38623A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−252554(P2005−252554)
【出願日】平成17年8月3日(2005.8.3)
【出願人】(000167820)広島化成株式会社 (65)
【Fターム(参考)】