説明

床材用化粧シート及び床用化粧材

【課題】ポリプロピレン樹脂層である合成樹脂層(バッカー層)と装飾シート(化粧シート中間体)とを接着してなる床材用化粧シートであって、バッカー層と装飾シートの接着性が改善された床材用化粧シートを提供する。
【解決手段】基材シート4のおもて面に1又は2以上の層が積層されている化粧シート中間体と、前記基材シートの裏面に接着剤層3を介して積層される厚さ150μm以上の合成樹脂層とを有する床材用化粧シートであって、(1)前記合成樹脂層は、2層以上のポリプロピレン樹脂層からなり5,6、(2)前記2層以上のポリプロピレン樹脂層のうち、前記基材シートと接着されているポリプロピレン樹脂層は、曲げこわさが200〜500MPaであることを特徴とする床材用化粧シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床材用化粧シート及び床用化粧材に関する。
【背景技術】
【0002】
床材用化粧シートとしては、例えば、基材シート上に装飾層を設けて装飾シートとし、基材シート裏面に合成樹脂製バッカー層を更に設けて、全体として耐キャスター性、耐衝撃性等の特性を発現させる床材用化粧シートが知られている(特許文献1など)。なお、バッカー層とは、木質基材などの表面凹凸の影響を緩和するとともに、上記特性の発現に有効となる、比較的厚みの大きな合成樹脂層である。
【0003】
従来、バッカー層としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂層、ポリプロピレン(PP)樹脂層などが用いられている。バッカー層をPP樹脂層とする場合には、PET樹脂層よりも低温で軟化するため、装飾シートのエンボス模様に影響を与えず、更に基材シートもPP樹脂層である場合には、装飾シート裏面とバッカー層とを熱ラミネートによって強固に密着させることができる。なお、熱ラミネートによる場合には、温度が高温であるとエンボス模様が消失し易い。
【0004】
装飾シート裏面とバッカー層とを密着させる方法としては、上記熱ラミネート以外に、接着剤層を介して両者を接着する方法がある。この場合は、PP樹脂層はPET樹脂層と比較して接着性が劣るという問題がある。
【0005】
従って、装飾シート裏面とPP樹脂層(バッカー層)とを接着剤を介して接着する場合において、更なる接着性の改善の余地がある。
【特許文献1】特開2005−290736号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、ポリプロピレン樹脂層である合成樹脂層(バッカー層)と装飾シート(化粧シート中間体)とを接着してなる床材用化粧シートであって、バッカー層と装飾シートの接着性が改善された床材用化粧シートを提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、鋭意研究を重ねた結果、合成樹脂層を複数層のポリプロピレン樹脂層から構成し、更に装飾シートと接着されるポリプロピレン樹脂層として特定の物性を有するポリプロピレン樹脂層を採用する場合には上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明は、下記の床材用化粧シート及び床用化粧材に関する。
1.基材シートのおもて面に1又は2以上の層が積層されている化粧シート中間体と、前記基材シートの裏面に接着剤層を介して積層される厚さ150μm以上の合成樹脂層とを有する床材用化粧シートであって、
(1)前記合成樹脂層は、2層以上のポリプロピレン樹脂層からなり、
(2)前記2層以上のポリプロピレン樹脂層のうち、前記基材シートと接着されているポリプロピレン樹脂層は、曲げこわさが200〜500MPaである
ことを特徴とする床材用化粧シート。
2.前記基材シートと接着されているポリプロピレン樹脂層は、厚さが5〜100μmである、上記項1に記載の床材用化粧シート。
3.前記化粧シート中間体は、前記基材シート上に、絵柄模様層、透明性接着剤層、透明性樹脂層及び透明性表面保護層を順に有する、上記項1又は2に記載の床材用化粧シート。
4.前記基材シートと前記絵柄模様層との間に、更に着色隠蔽層が形成されている、上記項3に記載の床材用化粧シート。
5.前記透明性表面保護層のおもて面からエンボス加工が施されている、上記項3又は4に記載の床材用化粧シート。
6.上記項1〜5のいずれかに記載の床材用化粧シートの裏面と被着材とを貼着してなる床用化粧材。

以下、本発明の床材用化粧シート及び床用化粧材について詳細に説明する。
【0009】
床材用化粧シート
本発明の床材用化粧シートは、基材シートのおもて面に1又は2以上の層が積層されている化粧シート中間体と、前記基材シートの裏面に接着剤層を介して積層される厚さ150μm以上の合成樹脂層とを有する床材用化粧シートであって、
(1)前記合成樹脂層は、2層以上のポリプロピレン樹脂層からなり、
(2)前記2層以上のポリプロピレン樹脂層のうち、前記基材シートと接着されているポリプロピレン樹脂層は、曲げこわさが200〜500MPaであることを特徴とする。
【0010】
上記特徴を有する本発明の床材用化粧シートは、ポリプロピレン(PP)樹脂層のうち、前記基材シートと接着されているPP樹脂層が特定の物性(曲げこわさが200〜500MPa)を有するため、PP樹脂層と基材シートとの接着性(密着性)が改善されている。
【0011】
以下、本発明の床材用化粧シートの各構成について説明する。
【0012】
(合成樹脂層)
本発明の床材用化粧シートは、基材シートの裏面に接着剤層を介して厚さ150μm以上の合成樹脂層(バッカー層)を有する。
【0013】
バッカー層は、2層以上のPP樹脂層からなり、前記基材シートと接着されているPP樹脂層は、曲げこわさが200〜500MPa(好ましくは300〜500MPa)である。曲げこわさは、片持ちばりの試験片に加えられた曲げモーメントとその曲げ角度から求められる見かけ弾性率であり、特に本明細書ではJIS K7106(測定サンプル寸法:厚み2mm×幅15mm×長さ90mm)に従って測定した値である。なお、前記基材シートと接着されているPP樹脂層は、接着性を改善する層であるため、本明細書において特に易接着樹脂層とも言う。
【0014】
バッカー層は、易接着樹脂層と他のPP樹脂層との2層以上であればよく、通常は2層とする。バッカー層は、例えば、溶融樹脂の同時押出し製膜により形成することができる。同時押出し製膜による場合には、2層以上からなるPP樹脂層を容易に形成できる。押出し製膜には、例えば、マルチマニホールドタイプやフィードブロックタイプのTダイを用いればよい。
【0015】
易接着樹脂層の厚さは限定的ではないが、5〜100μm程度が好ましく、10〜40μm程度がより好ましい。
【0016】
(化粧シート中間体)
化粧シート中間体は、基材シートのおもて面に1又は2以上の層が積層されている。
【0017】
化粧シート中間体としては、例えば、基材シート上に少なくとも絵柄模様層、接着剤層、透明性樹脂層及び透明性保護層を有し、透明性保護層が最表面層として設けられる構成が好ましい実施形態として挙げられる。また、化粧シートの最表面層には、エンボス加工により凹凸模様が付与されてもよい。
【0018】
各層の形成方法は限定的でなく、例えば、グラビア印刷、フレキソ印刷、シルクスクリーン印刷、オフセット印刷、転写印刷等の印刷;スプレー、ローラー、刷毛等の塗布;シート状物等の成形体を積層等のいずれも採用することができる。これらの方法の中から、各層の特性、原料等に応じて適宜組み合わせて選択すれば良い。
【0019】
各層の厚みは限定的でなく、最終製品の用途、特性等に応じて適宜決定できる。通常は0.1〜500μm程度の範囲内とできる。
【0020】
以下、上記の実施形態を代表例として各層について説明する。
【0021】
≪基材シート≫
基材シートは、その表面(おもて面)には絵柄模様層等が順次積層される。
【0022】
基材シートとしては、例えば、熱可塑性樹脂により形成されたものが好適である。具体的には、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリエチレンナフタレート、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、アイオノマー、アクリル酸エステル、メタアクリル酸エステル等が挙げられる。
【0023】
基材シートは、着色されていても良い。この場合は、上記のような熱可塑性樹脂に対して着色材(顔料又は染料)を添加して着色することができる。着色材としては、例えば、二酸化チタン、カーボンブラック、酸化鉄等の無機顔料、フタロシアニンブルー等の有機顔料のほか、各種の染料も使用することができる。これらは、公知又は市販のものから1種又は2種以上を選ぶことができる。また、着色材の添加量も、所望の色合い等に応じて適宜設定すれば良い。
【0024】
基材シートには、必要に応じて、充填剤、艶消し剤、発泡剤、難燃剤、滑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定化剤等の各種の添加剤が含まれていても良い。
【0025】
基材シートの厚みは、最終製品の用途、使用方法等により適宜設定できるが、一般には50〜250μmが好ましい。
【0026】
基材シートは、必要に応じて、絵柄層を形成するインキの密着性を高めるために表面(おもて面)にコロナ放電処理を施してもよい。コロナ放電処理の方法・条件は、公知の方法に従って実施すれば良い。また、必要に応じて、基材シートの裏面にコロナ放電処理を施したり、裏面プライマー層を形成したりしてもよい。
【0027】
≪絵柄模様層(絵柄層)≫
絵柄層は、化粧シートに所望の絵柄(意匠)を付与するものであり、絵柄の種類等は限定的ではない。例えば、木目模様、石目模様、砂目模様、タイル貼模様、煉瓦積模様、布目模様、皮絞模様、幾何学図形、文字、記号、抽象模様等が挙げられる。
【0028】
絵柄層の形成方法は特に限定されず、例えば、公知の着色剤(染料又は顔料)を結着材樹脂とともに溶剤(又は分散媒)中に溶解(又は分散)して得られるインキを用いた印刷法により、基材シート表面に形成すればよい。
【0029】
着色剤としては、例えば、カーボンブラック、チタン白、亜鉛華、弁柄、紺青、カドミウムレッド等の無機顔料;アゾ顔料、レーキ顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、フタロシアニン顔料、イソインドリノン顔料、ジオキサジン顔料等の有機顔料;アルミニウム粉、ブロンズ粉等の金属粉顔料;酸化チタン被覆雲母、酸化塩化ビスマス等の真珠光沢顔料;蛍光顔料;夜光顔料等が挙げられる。これらの着色剤は、単独又は2種以上を混合して使用できる。これらの着色剤には、シリカ等のフィラー、有機ビーズ等の体質顔料、中和剤、界面活性剤等がさらに配合してもよい。
【0030】
結着材樹脂としては、ポリエステル系ウレタン樹脂、親水性処理されたポリエステル系ウレタン樹脂のほか、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリビニルアセテート、ポリブタジエン、ポリ塩化ビニル、塩素化ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリスチレン−アクリレート共重合体、ロジン誘導体、スチレン−無水マレイン酸共重合体のアルコール付加物、セルロース系樹脂なども併用できる。
【0031】
より具体的には、例えば、ポリウレタン−ポリアクリル系樹脂、ポリアクリルアミド系樹脂、ポリ(メタ)アクリル酸系樹脂、ポリエチレンオキシド系樹脂、ポリN−ビニルピロリドン系樹脂、水溶性ポリエステル系樹脂、水溶性ポリアミド系樹脂、水溶性アミノ系樹脂、水溶性フェノール系樹脂、その他の水溶性合成樹脂;ポリヌクレオチド、ポリペプチド、多糖類等の水溶性天然高分子;等を使用できる。また、例えば、天然ゴム、合成ゴム、ポリ酢酸ビニル系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリウレタン−ポリアクリル系樹脂変性又は混合樹脂、その他の樹脂も使用できる。上記結着材樹脂は、単独又は2種以上で使用できる。
【0032】
絵柄層の形成に用いる印刷法としては、例えば、グラビア印刷法、オフセット印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、静電印刷法、インクジェット印刷法等が挙げられる。また、全面ベタ状の絵柄模様層(これを着色隠蔽層とも言う)を形成する場合には、例えば、ロールコート法、ナイフコート法、エアーナイフコート法、ダイコート法、リップコート法、コンマコート法、キスコート法、フローコート法、ディップコート法等の各種コーティング法も挙げられる。
【0033】
上記以外にも、例えば、手描き法、墨流し法、写真法、転写法、レーザービーム描画法、電子ビーム描画法、金属等の部分蒸着法、エッチング法などを用いたり、他の形成方法と組み合わせて用いたりしてもよい。
【0034】
絵柄層の厚みは特に限定されず、製品特性に応じて適宜設定できるが、塗工時の層厚は1〜15μm程度、乾燥後の層厚は0.1〜10μm程度である。
【0035】
≪接着剤層≫
接着剤層は、絵柄層と透明性樹脂層との間に存在する。接着剤層で使用する接着剤は、絵柄層又は透明性樹脂層を構成する成分等に応じて適宜選択することができる。例えば、ポリウレタン系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、エポキシ系樹脂等を含む各種接着剤を使用できる。また、反応硬化タイプのほか、ホットメルトタイプ、電離放射線硬化タイプ、紫外線硬化タイプ等の接着剤でもよい。
【0036】
接着剤層は、絵柄層が認識できる限り、透明でも半透明でもよい。
【0037】
なお、本発明では、必要に応じ、コロナ放電処理、プラズマ処理、脱脂処理、表面粗面化処理等の公知の易接着処理を接着面に施すこともできる。
【0038】
接着剤層の厚みは、透明性保護層、使用する接着剤の種類等によって異なるが、一般的には0.1〜30μm程度とすれば良い。
【0039】
≪透明性樹脂層≫
透明性樹脂層は透明である限り着色されていてもよく、絵柄層が視認できる範囲内で半透明であってもよい。
【0040】
上記樹脂としては、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、アイオノマー、ポリメチルペンテン、アクリル酸エステル、メタアクリル酸エステル、ポリカーボネート、セルローストリアセテート等が挙げられる。上記の中でも、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂が好ましい。より好ましくは、立体規則性を有するポリオレフィン系樹脂である。ポリオレフィン系樹脂を用いる場合は、溶融ポリオレフィン系樹脂を押し出し法により透明性樹脂層を形成することが望ましい。
【0041】
透明性樹脂層には、必要に応じて、充填剤、艶消し剤、発泡剤、難燃剤、滑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、ラジカル捕捉剤、軟質成分(例えばゴム)等の各種の添加剤が含まれていても良い。
【0042】
透明性樹脂層の厚みは特に限定されないが、一般的には10〜150μm程度とすれば良い。
【0043】
≪透明性表面保護層≫
透明性樹脂層の上には、透明性表面保護層が形成されている。透明性表面保護層は限定的ではないが、樹脂成分として電離放射線硬化型樹脂又は2液硬化型ウレタン系樹脂を含有することが好ましい。実質的には、これらの樹脂から形成されているものが好ましい。電離放射線硬化型樹脂又は2液硬化型ウレタン系樹脂により透明性表面保護層を形成する場合には、化粧シートの耐摩性、耐衝撃性、耐汚染性、耐擦傷性、耐候性等を高め易い。
【0044】
電離放射線硬化型樹脂としては特に限定されず、紫外線、電子線等の電離放射線の照射により重合架橋反応可能なラジカル重合性二重結合を分子中に含むプレポリマー(オリゴマーを含む)及び/又はモノマーを主成分とする透明性樹脂が使用できる。これらのプレポリマー又はモノマーは、単体又は複数を混合して使用できる。硬化反応は、通常、架橋硬化反応である。
【0045】
具体的には、前記プレポリマー又はモノマーとしては、分子中に(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基等のラジカル重合性不飽和基、エポキシ基等のカチオン重合性官能基等を有する化合物が挙げられる。また、ポリエンとポリチオールとの組み合わせによるポリエン/チオール系のプレポリマーも好ましい。ここで、(メタ)アクリロイル基とは、アクリロイル基又はメタクリロイル基の意味である。
【0046】
ラジカル重合性不飽和基を有するプレポリマーとしては、例えば、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレート、トリアジン(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの分子量としては、通常250〜100000程度が好ましい。
【0047】
ラジカル重合性不飽和基を有するモノマーとしては、例えば、単官能モノマーとして、メチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。また、多官能モノマーとしては、例えば、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキサイドトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0048】
カチオン重合性官能基を有するプレポリマーとしては、例えば、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ化合物等のエポキシ系樹脂、脂肪酸系ビニルエーテル、芳香族系ビニルエーテル等のビニルエーテル系樹脂のプレポリマーが挙げられる。また、チオールとしては、例えば、トリメチロールプロパントリチオグリコレート、ペンタエリスリトールテトラチオグリコレート等のポリチオールが挙げられる。ポリエンとしては、例えば、ジオール及びジイソシアネートによるポリウレタンの両端にアリルアルコールを付加したものが挙げられる。
【0049】
電離放射線硬化型樹脂を硬化させるために用いる電離放射線としては、電離放射線硬化型樹脂(組成物)中の分子を硬化反応させ得るエネルギーを有する電磁波又は荷電粒子が用いられる。通常は紫外線又は電子線を用いればよいが、可視光線、X線、イオン線等を用いてもよい。
【0050】
紫外線源としては、例えば、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク灯、ブラックライト、メタルハライドランプ等の光源が使用できる。紫外線の波長としては、通常190〜380nmが好ましい。
【0051】
電子線源としては、例えば、コッククロフトワルトン型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、又は直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器が使用できる。その中でも、特に100〜1000keV、好ましくは100〜300keVのエネルギーをもつ電子を照射できるものが好ましい。
【0052】
2液硬化型ウレタン系樹脂としては特に限定されないが、中でも主剤としてOH基を有するポリオール成分(アクリルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、エポキシポリオール等)と、硬化剤成分であるイソシアネート成分(トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、メタキシレンジイソシアネート等)とを含むものが使用できる。
【0053】
透明性表面保護層は、必要に応じて、可塑剤、安定剤、充填剤、分散剤、染料、顔料等の着色剤、溶剤等を含んでもよい。
【0054】
透明性表面保護層は、例えば、透明性ポリプロピレン系樹脂層の上に電離放射線硬化型樹脂又は2液硬化型ウレタン系樹脂をグラビアコート、ロールコート等の公知の塗工法により塗工後、樹脂を硬化させることにより形成できる。電離放射線硬化型樹脂の場合には、電子線照射により樹脂硬化する。
【0055】
透明性表面保護層の厚さは特に限定されず、最終製品の特性に応じて適宜設定できるが、通常0.1〜50μm、好ましくは1〜20μm程度である。
【0056】
≪エンボス加工≫
化粧シート中間体は、透明性表面保護層側からエンボス加工が施されていてもよい。
【0057】
エンボス加工は、化粧シートに木目模様等の所望のテクスチャーを付与するために行う。例えば、加熱ドラム上で透明性保護層を加熱軟化させた後、さらに赤外線輻射ヒーターで140〜170℃に加熱し、所望の形の凹凸模様を有するエンボス板で加圧・賦形し、冷却固定することによりテクスチャーを付与する。エンボス加工は、公知の枚葉又は輪転式エンボス機で行える。
【0058】
エンボス加工の凹凸模様としては、例えば、木目導管溝、浮造模様(浮出した年輪の凹凸模様)、ヘアライン、砂目、梨地等が挙げられる。
【0059】
エンボス加工を施した場合には、必要に応じて、エンボス凹部にワイピング加工によりインキを充填してもよい。例えば、エンボス凹部にドクターブレードで表面をかきながらインキを充填する。充填するインキ(ワイピングインキ)としては、通常は2液硬化型のウレタン樹脂をバインダーとするインキを用いることができる。特に木目導管溝凹凸に対してワイピング加工を行うことによって、より実際の木目に近い意匠を表現することにより商品価値を高めることができる。
【0060】
本発明では、透明性表面保護層中に他の成分が含まれていても良い。例えば、溶剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、分散剤、光安定剤、ツヤ調整剤、ブロッキング防止剤、滑剤等の添加剤を配合できる。
【0061】
(合成樹脂層と化粧シート中間体との接着)
上記合成樹脂層と化粧シート中間体とは、接着剤を介して接着する。
【0062】
接着剤としては、例えば、ポリウレタン系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、エポキシ系樹脂等を含む各種接着剤を使用できる。
【0063】
接着剤層の厚みは、使用する接着剤の種類等によって異なるが、一般的には0.1〜30μm程度とすれば良い。
【0064】
なお、本発明では、必要に応じて、コロナ放電処理、プラズマ処理、脱脂処理、表面粗面化処理等の公知の易接着処理を接着面に施すこともできる。
【0065】
また、必要に応じて、合成樹脂層の裏面(接着面と反対面)にコロナ放電処理を施したり、裏面プライマー層を形成したりしてもよい。
【0066】
床用化粧材
本発明の床材用化粧シートは、各種被着材と接合することにより、床用化粧材とできる。被着材の材質は特に限定されず、例えば、無機非金属系、金属系、木質系、プラスチック系等の材質が挙げられる。
【0067】
具体的には、無機非金属系では、例えば、抄造セメント、押出しセメント、スラグセメント、ALC(軽量気泡コンクリート)、GRC(ガラス繊維強化コンクリート)、パルプセメント、木片セメント、石綿セメント、硅酸カルシウム、石膏、石膏スラグ等の非陶磁器窯業系材料、土器、陶器、磁器、セッ器、硝子、琺瑯等のセラミックス材料などが挙げられる。
【0068】
金属系では、例えば、鉄、アルミニウム、銅等の金属材料(金属鋼板)が挙げられる。
【0069】
木質系では、例えば、杉、檜、樫、ラワン、チーク等からなる単板、合板、パーティクルボード、繊維板、集成材等が挙げられる。
【0070】
プラスチック系では、例えば、ポリプロピレン、ABS樹脂、フェノール樹脂等の樹脂材料が挙げられる。
【0071】
このような被着体の形状は特に限定されず、通常はフローリング等への設置を考慮して平板とすればよい。
【0072】
被着材と接合後は、例えば、最終製品の特性に応じて、裁断、テノーナーを用いてサネ加工、V字形状の条溝付与、四辺の面取り等を施してもよい。
【発明の効果】
【0073】
本発明の床材用化粧シートは、ポリプロピレン(PP)樹脂層のうち、前記基材シートと接着されているPP樹脂層が特定の物性(曲げこわさが200〜500MPa)を有するため、PP樹脂層と基材シートとの接着性(密着性)が改善されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0074】
以下に実験例及び比較例を示して本発明を具体的に説明する。但し、本発明は実施例に限定されない。
【0075】
実施例1〜3及び比較例1〜5
(床材用化粧シートの作製)
0.06mm厚の着色ポリプロピレン(基材シート)に絵柄模様層(2μm)を印刷により形成した。次いで絵柄模様層の上に0.08mm厚の透明性ポリプロピレン系樹脂フィルムを、ウレタン系ドライラミネート用接着剤を用いて接着した。次いで透明性樹脂層の上に電子線硬化型透明性表面保護層(15μm)を形成した。次いで透明性表面保護層側からエンボス加工を施して化粧シート中間体を作製した。エンボス加工は、深さ30μm程度の木目導管模様とした。
【0076】
バッカー層は、易接着樹脂層(30μm)とホモPP樹脂層(220μm)との2層構成とした。易接着樹脂層の曲げこわさ(JIS K7106)は下記表1の通りとした。
【0077】
化粧シート中間体の裏面にウレタン系接着剤(18g/mwet)を塗布し、バッカー層の易接着樹脂層側を貼着することにより床材用化粧シートを作製した。
(床用化粧材の作製)
作製した床材用化粧シートの裏面(バッカー層側)に12mmラワン合板を貼着して床用化粧材を作製した。当該貼着にはウレタン変性エチレン−酢酸ビニル系エマルジョン接着剤(100g/mwet)を利用した。
【0078】
【表1】

【0079】
試験例1
上記床用化粧材の層間強度、湿熱強度、鉛筆硬度を測定した。結果を表1に示す。
【0080】
層間強度は、中間体シートとバッカー層との層間の強度であり、25mm巾で180°方向(T形)へピーリングすることにより測定した。
【0081】
測定結果(判断基準)
◎:60N以上 ○:40〜60N △:20〜40N ×:20N以下
湿熱強度は、80℃・90%RHの恒温恒湿槽に72時間放置後、層間強度を測定した。
【0082】
測定結果(判断基準)
◎:60N以上 ○:40〜60N △:20〜40N ×:20N以下
鉛筆硬度は、試験機が水平位置のときに鉛筆の先に対して1000gの荷重を与えるように試験機を設定し、3Bの鉛筆にて引き掻いた。
【0083】
測定結果(判断基準)
○:変化なし △:若干凹みあり ×:凹み傷発生
(なお、鉛筆硬度の「△」は、製品として実用上許容される範囲である。)
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】試験例1で用いた床材用化粧シートの模式図である。
【符号の説明】
【0085】
1.透明性表面保護層
2.透明性樹脂層
3.絵柄模様層及び透明性接着剤層
4.基材シート
5.PP製合成樹脂層(易接着樹脂層)
6.PP製合成樹脂層(コア層)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材シートのおもて面に1又は2以上の層が積層されている化粧シート中間体と、前記基材シートの裏面に接着剤層を介して積層される厚さ150μm以上の合成樹脂層とを有する床材用化粧シートであって、
(1)前記合成樹脂層は、2層以上のポリプロピレン樹脂層からなり、
(2)前記2層以上のポリプロピレン樹脂層のうち、前記基材シートと接着されているポリプロピレン樹脂層は、曲げこわさが200〜500MPaである
ことを特徴とする床材用化粧シート。
【請求項2】
前記基材シートと接着されているポリプロピレン樹脂層は、厚さが5〜100μmである、請求項1に記載の床材用化粧シート。
【請求項3】
前記化粧シート中間体は、前記基材シート上に、絵柄模様層、透明性接着剤層、透明性樹脂層及び透明性表面保護層を順に有する、請求項1又は2に記載の床材用化粧シート。
【請求項4】
前記基材シートと前記絵柄模様層との間に、更に着色隠蔽層が形成されている、請求項3に記載の床材用化粧シート。
【請求項5】
前記透明性表面保護層のおもて面からエンボス加工が施されている、請求項3又は4に記載の床材用化粧シート。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の床材用化粧シートの裏面と被着材とを貼着してなる床用化粧材。

【図1】
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【公開番号】特開2009−235791(P2009−235791A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−83395(P2008−83395)
【出願日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】