説明

床材

【課題】
本発明は、寸法安定性に優れ、床の下地に存在する凹凸に追従するため施工時には簡易施工も可能な床材に関するものであり、より具体的には床材の剛性度を一定の範囲に保つことにより床下地への追従性が向上するため置き敷き等の簡易施工に好適な床材に関するものである。
【解決手段】
本発明は、熱可塑性樹脂からなり、寸法安定化層を有した床材であって、前記床材の23℃における剛性度が500〜1300kgf/cmであるため、常温での簡易施工が可能であり、さらに、5℃における剛性度を1500〜2500kgf/cmの範囲にすることで、季節、又は寒暖の地域の差にかかわらず安定的に簡易施工をすることが可能であることを特徴とする

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、寸法安定性に優れ、床の下地に存在する凹凸に追従するため施工時には簡易施工も可能な床材に関する。
【背景技術】
【0002】
一般にポリ塩化ビニル樹脂をはじめとする熱可塑性樹脂からなる床材(以下、床材と記す。)を施工する際には接着剤により、床下地と強力に貼着しなければならない。床材を接着剤により、床下地と強力に接着しなければならない主要な理由として、2つ挙げることができる。まず、ひとつ目は床材の温度等の環境の変化による寸法変化を抑制することを目的とするためである。即ち、床材は温度等の環境の変化により寸法変化を生じることから強力に床下地と貼着することにより、前記床材の寸法変化を抑制し、施工後に寸法変化が原因となって生じる床材の接合部に隙間が生じたりする等を防止しようとするものである。もうひとつは、床下地に存在する凹凸(以下、不陸と記す。)にからなる床材を追従させて貼着することを目的とするためである。床材を不陸に追従させないで貼着した場合、床材に部分的に床下地と貼着されない部分が生じるため、施工後に床材の部分的な剥離が発生したり、或いは当該剥離に起因する床材間の接合部に段差が生じる等の問題が生じるからである。
【0003】
床材の施工の際には、接着剤を床下地に塗布し、貼着しなければならない。また、前記接着剤については、より強力な接着力を確保するため、溶剤系の接着剤を使用しなければならない場合も少なくない。
【0004】
一方、床材、とりわけ、ポリ塩化ビニル樹脂からなる床材は紫外線に侵されやすいため、屋内に使用されることが多い。よって、屋内に敷設する床材を溶剤系接着剤により貼着した場合、施工後も前記接着剤に含まれる溶剤が微量ではあるが揮発していくため、臭気の問題等が発生することがある。
【0005】
また、床材のリフォーム等を目的として貼り替える場合、前記床材は上述したように強力に施工されているため、剥離作業の作業負荷が大きく、剥離作業時にも粉塵の飛散が多ため、作業環境上も好ましくなかった。また、床材の剥離作業中に強力に接着剤により貼着されているため、モルタル等の下地を破壊してしまうこともしばしばあった。さらに、剥離した床材にモルタル等の下地の一部が破壊して剥離した床材に付着してしまうことがしばしば起こるため、リサイクルが困難であり、産業廃棄物の低減という観点からも改善が求められていた。
【0006】
そこで、上記問題点等を解決するため、床材本体の自重により不陸に追従させることにより、接着力の比較的弱い接着剤で施工可能ないわゆる簡易施工型のタイルや一定の空隙率を有するガラス繊維又は合成繊維布帛、特に織物の両面にゴム系粘着剤層を有し、少なくとも一方の粘着剤面に剥離シートを被覆してなる建材粘着テープにより床材を施工する技術が提供されている(特許文献1)。
【特許文献1】特開2003−261835号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前者の技術では、床材本体の自重により床下地に追従させるため、床材自体の重量を大きくする必要があることから、かかる床材は持ち運びや施工時のハンドリング性が悪く、作業者の労働負荷が少なくなかった。さらに、貼り替え時の剥離作業時の作業者の負担も床材の重量が大きいため、結果的に作業者の負担は大きかった。さらに、前記簡易施工型の床材は床材本体の重量を確保するため、通常の床材が2mm〜3mmの厚みに対し、少なくとも4mmの厚みにすることが必要であった。従って、とりわけ張替え時には厚みが2mm〜3mmの通常の床材とは厚み差による段差が生じるため貼り合わせることができず、用途が限られたものであった。
【0008】
また、後者の発明では床材粘着テープの貼着時に当該粘着テープに皺が生じることにより十分な効果を奏することができなかったり、剥離紙が産業廃棄物となって発生する等の問題があり、さらに、張替え時に剥離した床材をリサイクルする場合には、前記粘着テープを除去する必要があり、作業者の労力負担に加えて、除去された粘着テープが産業廃棄物となるため、更なる改善が望まれていた。
【0009】
さらに、ポリ塩化ビニル樹脂からなるホモジニアスタイルは従来、剛性度を小さくすると残留へこみ値が大きくなり、重量物を長期間載置した場合に、当該重量物の載置した跡が残存してしまい、美観上好ましくなかった。かかる状況において、美観を保持するため、部分的に前記載置した跡が残存した箇所について、貼り替える等の処置が必要であった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そこで、本発明は、上記問題点を解決したものであり、請求項1記載の発明は、熱可塑性樹脂からなり、寸法安定化層を有した床材であって、前記床材の23℃における剛性度が500〜1300kgf/cm(6°)であることを特徴とする床材を提供するものである。本明細書において、23℃における剛性度とは JISK7106に基づいて測定した硬さの指標となる値をいう。23℃における剛性度を500〜1300kgf/cm(6°)にすることにより、常温での不陸追従性が確保することができる。
【0011】
一方、従来の床材の23℃における剛性度が1500〜3000kgf/cm(6°)、5℃における剛性度が 4000〜8000kgf/cm(6°)であるため、本発明床材の剛性度は従来の床材と比較して小さいため、温度変化によって剛性度の大きい床材はより伸縮しやすい傾向にあり、寸法変化が大きくなっていた。本発明床材では寸法安定化層を設けることで、剛性度を小さくすることにより温度変化にともなって大きくなる寸法変化を有効に抑えることができる。
【0012】
請求項2記載の発明は、請求項1の発明の特徴に加え、5℃における剛性度を1500〜2500kgf/cm(6°)にした床材を提供するものであり、低温での不陸追従性をも確保することができる。従って、請求項2記載の発明により、5℃〜23℃の温度範囲でほとんどの季節、及び地域の内装材の施工現場の実際の温度条件を網羅することができるため、内装材として本発明床材を施工する場合には、季節、及び地域による温度変化にかかわらず、不陸に追従させて施工することができる。ここで、5℃における剛性度とは温度条件のみを5℃±3℃とし、測定方法を含むその他の条件をJISK7106と同様にして測定した硬さの指標となる値をいう。勿論、5℃における剛性度が23℃と同様の500〜1300kgf/cm(6°)であってもよいが、熱可塑性樹脂の性質上、23℃と5℃との剛性度を同等の数値にすることは技術的に非常に困難である。従って、請求項2記載の発明では、実現可能であって、不陸に追従させて施工可能な剛性度の範囲を示したものである。熱可塑性樹脂においては、剛性度は対象物の温度に比例して小さくなるので、5℃、及び23℃での剛性度が上述した範囲内にあれば、少なくとも、5℃〜23℃の温度条件下では不陸に追従させて安定的に床材を施工することができる。
【0013】
請求項3記載の発明は、請求項1、又は2の発明の特徴に加え、寸法安定化層がガラス織布、ガラス不織布、の何れか一であることを特徴とした床材を提供するものである。本発明の床材に設ける寸法安定化層の素材は上述した床材の剛性度を低く維持し、不陸に対する追従性を向上させることによって生じる温度変化による床材の寸法変化の増大を有効に抑えることができれば特に素材は限定されないが、特に寸法安定化の観点から、ガラス織布、又はガラス不織布を好ましく用いることができる。特にポリ塩化ビニル樹脂からなるホモジニアスタイルについては、ガラス織布を寸法安定化層として使用することにより、残留へこみ値を大幅に改善することができる。
【0014】
請求項4記載の発明は、請求項1乃至3の何れか一に記載の発明の特徴に加え、寸法安定化層が厚み0.02mm〜0.5mmのガラス織布であることを特徴とする床材を提供するものである。寸法安定化層は好ましく床材の中間層として設けられる。ここで、中間層とは、床材の厚み方向の中間の位置に限られず、床材の内部に構成される層を意味する。本発明床材を構成する寸法安定化層の厚みは0.02mm〜0.5mmが好ましい。その理由としては寸法安定化層の厚みが0.02mm〜0.5mmである場合には、本発明床材において、寸法安定化層を設ける厚み方向の位置によっては前記織布の形態が本発明床材表面に浮き出して視認されることがなく、また、本発明床材の製造過程で前記寸法安定化層が切断することがなく安定的な製造が可能であるからである。
【0015】
請求項5記載の発明は、請求項1乃至4の何れか一に記載の発明の特徴に加え、寸法安定化層が開口率10%以上のガラス織布であることを特徴とした床材を提供するものである。本発明床材に設ける寸法安定化層の開口率は10%以下であることが好ましい。その理由としては、開口率が10%と寸法安定化層となる基材が切断等が発生せず安定的な製造が可能であるからである。
【0016】
請求項6記載の発明は、請求項1乃至5の何れか一に記載の発明の特徴に加え、熱可塑性樹脂がポリ塩化ビニル樹脂、ポリエチレン樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合樹脂、の何れか一又は二以上からなる床材を提供するものである。床材に使用する熱可塑性樹脂として、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリエチレン樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合樹脂、又はそれらの混合樹脂がコスト面、物性面等の観点から汎用されている。とりわけ、前記床材について不陸追従性の確保、及び温度変化による寸法変化を抑制すること、が求められているからである。
【発明の効果】
【0017】
本発明の床材は、23℃における剛性度を500〜1300kgf/cmとすることにより、常温で施工する際に、強力に貼着する接着剤を用いなくとも不陸に追従させて施工することができる。特に溶剤系の接着剤を使用する必要がなくなるため、施工作業者の作業環境の改善、及び施工後の揮発有機溶剤の懸念がなく居住環境面でも良好な状態を実現することができる。同時に温度変化に伴う寸法変化や特にポリ塩化ビニル樹脂からなるホモジニアスタイルで顕著な残留へこみ値の増大を、寸法安定化層を設けることにより、効果的に防止することができる。

【0018】
本発明床材は、リフォーム時の張替作業の際、強力な接着剤で貼着する必要がなく、例えば、粘着剤でも十分に貼着可能であるため、容易に剥離できる施工が可能であるため、従来のような残存接着剤の除去作業が不要とすることができ、剥離作業時の労働負荷の大幅に軽減することができる。また、本発明床材を粘着剤で施工した場合には、従来のように接着剤の硬化に要する時間が不要となるため、施工の作業効率を向上させることができる。さらに、粘着剤をはじめとする接着力の弱い接着剤を用いることができるため、剥離作業時に下地を破壊することもなくすことができ、下地の補修作業を軽減することができることに加え、剥離時の下地の破壊により、本発明床材に破壊された下地が付着することがないのでリサイクルが非常に容易になる。
【0019】
また、本発明床材は従来の自重により不陸に追従させる置敷型タイルとは異なり、軽量でハンドリング性に優れており、加えて、従来の汎用されている床材と同等の厚みを持たせることができるため、当該汎用されている床材と貼り合わせたときに段差を生じることなく、非常に広い用途での使用が可能である。
【0020】
また、本発明の床材は23℃における剛性度を500〜1300kgf/cmとすることに加え、5℃における剛性度を1500〜2500kgf/cmにすることにより、上述したと同様、強力に貼着する接着剤を用いなくとも気温の変化にかかわらず、不陸に追従させて施工することができる、特に溶剤系の接着剤を使用する必要がなくなるため、施工作業者の作業環境の改善、及び施工後の揮発有機溶剤の懸念がなく居住環境面でも良好な状態を実現することができる、同時に温度変化に伴う寸法変化や特にポリ塩化ビニル樹脂からなるホモジニアスタイルで顕著な残留へこみ値の増大を、寸法安定化層を設けることにより、防止することができる、等の効果を奏する。加えて、冬場、寒冷地等低温条件下で施工しなければならない場合であっても、問題なく不陸に追従させて施工することができるという効果を奏する。
【0021】
また、本発明床材を構成する寸法安定化層をガラス織布、又はガラス不織布にすることにより、寸法安定性という効果を奏することができる。とりわけ、ガラス織布を用いることで、残留凹み値を従来の床材と比較して、著しく改善することができるという効果を奏する。従来、残留へこみ値が大きく問題であったホモジニアスビニルタイルにおいては特に有効である。
【0022】
本発明床材の寸法安定化層を0.02mm〜0.5mmの範囲にすることにより、寸法安定化層がガラス織布である場合に発生しやすい表面へのガラス織布の形態が視認されたり、或いは製造時に寸法安定化層が切断されたりすることが非常に少なくすることができる。
【0023】
また、本発明床材の寸法安定化層のガラス織布の開口率が90%以下にすることにより、製造時に寸法安定化層が切断されたりすることが非常に少なくすることができる。
【0024】
さらに、本発明床材を構成する熱可塑性樹脂として特殊な樹脂を要さず、従来、床材として使用され、下地の不陸追従性や温度による寸法変化が問題となっていたポリ塩化ビニル樹脂、ポリエチレン樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合樹脂、の何れか一、又は二以上であっても使用することができる。とりわけ、ポリ塩化ビニル樹脂からなる床材であって、ホモジニアスタイルにおいては、不陸追従性や寸法変化の抑止に加え、残留へこみ値を小さく抑えることができるため、実用上非常に有効である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明床材の実施するための最良の形態を詳述する。
本発明床材は、熱可塑性樹脂からなり、寸法安定化層を有した床材であって、前記床材の23℃における剛性度が500〜1300kgf/cmであることを特徴とする。23℃という温度条件は、最も一般的な施工現場の温度条件を想定したものである。ここで寸法安定化層とは、温度変化によって生じる熱可塑性樹脂の床材の伸縮を抑制するために設けられた層をいう。素材としては、床材の温度変化による伸縮を抑制できるものであれば特に限定されず、ガラス、金属等の無機素材、及びポリエステル樹脂、ポリプロピレン樹脂等の有機素材からなる織布、又は不織布を用いることができ、好ましくは寸法安定化の性能、加工容易性、及びコスト面、の観点から、ガラス素材の織布、又は不織布を用いることができ、さらに好ましくは残留へこみ値を効果的に抑制するという観点から、ガラス素材からなる織布、即ち、ガラス織布を用いることができる。
【0026】
また、本発明床材の他の形態は、熱可塑性樹脂からなり、寸法安定化層を有した床材であって、前記床材の23℃、及び5℃における剛性度がそれぞれ500〜1300kgf/cm、1500〜2500kgf/cmであることを特徴とする。当該本発明床材は、23℃、及び5℃における剛性度がそれぞれ500〜1300kgf/cmで、1500〜2500kgf/cmであることにより、粘着剤等の接着力の弱い貼着剤であっても不陸に対し追従させて施工が可能である。上述したように23℃という温度条件は、最も一般的な施工現場の温度条件を想定したものであり、5℃という温度条件は床材の剛性度が大きくなる冬季、又は寒冷地の施工現場の条件を想定したものである。また、23℃を超える施工現場にあっては、樹脂が熱可塑性のため温度上昇によりむしろ柔軟になるという理由で本発明床材を問題なく下地に追従させて施工することができる。従って、本発明床材によれば、23℃、及び5℃における剛性度をそれぞれ500〜1300kgf/cm、1500〜2500kgf/cmにすることにより、四季の温度変化、又は寒冷地、温暖地にかかわらず、粘着剤等の貼着力が比較的弱い接着剤によっても不陸に追従させて施工することができる。
【0027】
また、本発明床材は当該床材を構成するに使用する接着剤の貼着力が弱いことに由来する施工後の部分的な剥離や床材間の継ぎ目に隙間が生じたりすることはない。23℃における床材の剛性度が500kgf/cm未満である場合には、残留凹み値が低下し、載置した物の跡が残って美観を損ねてしまうという問題が生じる可能性があり、一方、前記23℃における剛性度が1300kgf/cmを越える場合には下地不陸に追随性が低下するという問題が生じることがある。
【0028】
また、本発明床材に構成する寸法安定化層は温度による寸法の伸縮を抑制することを目的として設けられる。従って、本発明床材の厚み方向での位置については、床材の温度変化による寸法の伸縮を抑制することができれば特に限定されない。但し、床材が寸法安定化層の他、配合組成、特に樹脂含有量の異なる複数の層で構成されている場合には温度による熱可塑性樹脂の伸縮率の差異に由来する床材の反りが発生しない位置を適宜選択することが必要である。
【0029】
また、本発明床材を構成する寸法安定化層の厚みとしては素材との関係で、温度による寸法変化を有効に抑制することができれば特に限定はされないが、本発明床材の製造時での切断防止という観点から、0.02mm〜0.5mmが好適である。前記寸法安定化層の厚みが0.02mm未満になると寸法安定層(ガラス、ポリエステル等を使用する場合)の機械的強度、即ち製造工程中にかかる張力に耐えうるだけの強度を満たせないという問題が生じる可能性があり、厚みが0.5mmを超えると寸法安定化層が不織布の場合には上記剛性度が得られないことがある。また、寸法安定化層が織布である場合には当該寸法安定化層を設ける位置によっては織布の形態が表面上に視認されることがあり、表面に模様等の意匠を付した場合には当該意匠に影響を与えることがあり好ましくない。
【0030】
本発明床材を構成する熱可塑性樹脂としては、加工可能であり、かつ床材として使用した場合に下地に変質等影響を与えないような熱可塑性樹脂であれば特に限定はされないが、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリエチレン樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合樹脂、の何れか一、又は二以上であっても好ましく使用することができる。さらに好ましくは、リサイクル、及び加工が容易であり、床材としての物性面で比較的優れているが温度による寸法の伸縮が顕著な塩化ビニル樹脂からなるホモジニアスタイルに特に好適に使用することができる。尚、剛性度の調整については、公知の方法を用いることができ、ポリ塩化ビニル樹脂を主要な樹脂として使用する場合にはDOP、DHP、DINP等のフタル酸エステル系の可塑剤の添加量を加減することにより、ポリエチレン樹脂を主要な樹脂として使用する場合には、SBR、NBR等の熱可塑性エラストマーの添加量を加減することにより、さらに、ポリエステル樹脂を主要な樹脂として使用する場合には、フタル酸エステル系の可塑剤の添加量を加減することにより、調整することができる。ここで、「主要な樹脂として使用する場合」とは全樹脂量の50%以上を占める場合をいう。また、2種以上の熱可塑性樹脂を使用する場合であって、全樹脂量の50%以上を占める熱可塑性樹脂がない場合には、各々の熱可塑性樹脂の剛性度を調整するために添加する添加剤を併用し、加減することにより剛性度を調整することができる。
【0031】
本発明床材を構成する寸法安定化層が温度による寸法の伸縮を効果的に抑制するため、粘着剤でも施工可能である。本発明床材の張替え時に容易に剥離作業ができることに加え、剥離時に当該床材が従来の強力に貼着する接着剤のように下地を破壊して前記床材の残存することがないため、リサイクルが非常に容易となり、環境面でも好ましい。
【実施例】
【0032】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明する。
表面層、中間層、及び寸法安定化層を介して裏面層を熱融着させ、さらに、厚み3mmのシート状に加工し、450mm角に打ち抜いてポリ塩化ビニル樹脂からなる床タイルを成型した。表面層はポリ塩化ビニル樹脂、可塑剤、安定剤等からなる透明層、及びエチレン酢酸ビニル共重合樹脂からなる印刷模様層から構成されている。中間層はポリ塩化ビニル樹脂、可塑剤、充填剤等からなる裏面層から構成される床材を得た。尚、剛性度は添加する可塑剤量によって調節した。
【0033】
1.不陸追従性試験
*不陸下地試験板:厚み5mm、600mm角の鉄板の一辺に対し鉄板面上の垂直方向に300mの位置で前記一辺と平行に折り曲げ、かつ当該折り曲げ量は前記一辺と鉄板面上の垂直線が下地の水平面とのなす角が1.5°になるようにすることにより、不陸下地の試験板を形成した。
*試料:100mm×350mmの大きさに調製した。
*接着剤:アクリル樹脂系エマルジョン形接着剤(商品名:エコGAセメント−東リ株式会社製)
*温度・湿度条件:20℃±3℃、湿度:50±5%、及び5℃±3℃、湿度:50±5%
【0034】
(1)接着剤あり
所定温度、及び湿度の条件の下、不陸下地試験板、試料、接着剤を24時間養生した。不陸下地試験板の表面に接着剤を櫛目ごて(JISA5536)により塗布した。前記接着剤が半透明になった時点で、試料の長手方向が不陸下地試験板の折り曲げ部と略直交し、かつ前記試料の一方の端部が前記折り曲げ部を挟んで、約300mm、他端部が約50mmになるように配置し、ハンドローラーで数回押圧することにより貼着した。
【0035】
(2)接着剤なし
所定温度、及び湿度の条件の下、不陸下地試験板、試料、接着剤を24時間養生した。試料の長手方向が不陸下地試験板の折り曲げ部と略直交し、かつ前記試料の一方の端部が前記折り曲げ部を挟んで、約300mm、他端部が約50mmになるように配置し、ハンドローラーで数回押圧することにより圧着した。
【0036】
(3)判定方法
試料を不陸下地試験板の表面に貼着、又は圧着後、所定温度、及び湿度の条件の下、不陸下地試験板に約50mm貼着、又は圧着された試料の端部に目視によって隙間が認められるか否かを調べ、以下の基準で評価した。
隙間が認められる:○
隙間が認められない:×
【0037】
2.剛性度試験
片持ちばりによるプラスチックの曲げこわさ試験方法(JISK7106)に準じて行った。尚、温度条件、及び湿度条件は各々温度:23±3℃、湿度:50±5%、温度:5℃±3℃、湿度:50±5%、である。
【0038】
3.重量測定
温度:23±3℃、湿度:50±5%の下、500mm角の試料を24時間養生し、電子天秤(型式:HF−3000(N) 株式会社エー・アンド・デイ社製)にて秤量し、小数点2桁目を四捨五入し、重量をaとした。さらに、(a×4)により、1mあたりの重量を求めた。
【0039】
4.加熱長さ変化試験
JISA1454に準じて試料の加熱長さ変化率を測定した。
【0040】
5.熱膨張率試験
JISA1454に準じて試料の熱膨張率を測定した。
【0041】
6.残留凹み試験
JISA1454に準じて試料の残留凹み率を測定した。
上記試験結果は次の「表1」の通りである。
【0042】
【表1】

【0043】
実施例1、及び比較例1とを対比すると実施例1の残留凹み率が3.3%であるのに対し、比較例1の残留凹み率は11.2%であり、著しく大きくなっている。このことは、床材の23℃における剛性度が500kgf/cmより小さくなると剛性度が著しく大きくなり、床材としては載置跡が付くなど機能性の面で問題を生じる可能性があることを示す。
【0044】
また、実施例3、及び比較例2とを対比すると残留凹み率では大差はないものの、加熱長さ変化率、及び不陸追従性が低下していることがわかる。このことは、23℃における剛性度が1500kgf/cmより大きくなると、寸法安定性、及び施工性が低下することを示している。
【0045】
また、実施例1と比較例1とを対比すると、実施例1の残留凹み値が3.3%であるのに対し、比較例1の残留凹み値は11.2%と著しく大きくなっている。剛性度は23℃、5℃双方における値は互いに連動しているため、熱可塑性樹脂からなる床材においては5℃での剛性度が1500kgf/cmより小さくなると23℃における剛性度も500kgf/cmよりほとんどの場合が小さくなるからである。その結果、残留凹み値が過大となり、床材としては載置跡が付くなど機能性の面で問題を生じる可能性があり好ましくない。
【0046】
また、実施例3と比較例2とを対比すると、実施例3の5℃における不陸追従性が良好であったのに対し、比較例2の5℃における不陸追従性が悪い結果となった。このことは、5℃における剛性度が2500kgf/cmより大きくなると、不陸追従性の面で問題が生じることを示している。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂からなり、寸法安定化層を有した床材であって、前記床材の23℃における剛性度が500〜1300kgf/cmであることを特徴とする床材。
【請求項2】
熱可塑性樹脂からなり、寸法安定化層を有した床材であって、前記床材の5℃における剛性度が1500〜2500kgf/cmであることを特徴とする請求項1記載の床材。
【請求項3】
寸法安定化層がガラス織布、又はガラス不織布の何れか一であることを特徴とする請求項1〜2の何れか一に記載の床材。
【請求項4】
寸法安定化層が厚み0.02mm〜0.5mmのガラス織布であることを特徴とする請求項1〜3の何れか一に記載の床材。
【請求項5】
寸法安定化層が開口率90%以下のガラス織布であることを特徴とした請求項1〜4の何れか一に記載の床材。
【請求項6】
熱可塑性樹脂がポリ塩化ビニル樹脂、ポリエチレン樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合樹脂、の何れか一又は二以上からなる請求項1〜5の何れか一に記載の床材。


【公開番号】特開2007−126853(P2007−126853A)
【公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−319269(P2005−319269)
【出願日】平成17年11月2日(2005.11.2)
【出願人】(000222495)東リ株式会社 (94)
【Fターム(参考)】