説明

床材

【課題】床としての安定性を確保し、使用感を向上させつつ、振動吸収性能を高めて下方へ振動や衝撃を伝わりにくくする床材を提供する。
【解決手段】上板11と下板13間に中間材12を介在させ、複数の連結部材14による上板11と下板13との間隔保持に伴って、中間材12を十分圧縮した状態で、床として上からの荷重を受けることから、人の歩行等の緩やかな荷重変動に対し中間材12が変形しにくく、上板11が不用意に動くこともなく、上板11上側の人や物を安定的に支持でき、上板11上の人に床が動く違和感を与えずに済む一方、上板11に上から振動や衝撃が加わった場合には、中間材12に残る変形代の分、上板11がわずかに下方へ動くと共に、中間材12が圧縮変形して振動や衝撃に係るエネルギーを吸収し、下板側への伝達を防止することとなり、振動や衝撃を床下に伝わりにくくすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床として使用したり、既設の床に重ねて用いる床材に関する。
【背景技術】
【0002】
床板を張った床(いわゆるフローリング)は、畳や絨毯敷きの床の場合に比べてダニ等が発生しにくくなるため、アレルギー性疾患が大きな問題となっている近年では、その住宅への使用が増えているものの、床上で生じる振動や衝撃があまり吸収されずに床下に伝わり、特に集合住宅の場合は床下の建物躯体に振動が伝わると、振動に伴う音が周囲に拡散しやすくなることもあり、こうした床の振動等への対策が強く求められている。
【0003】
こうした中、床面を構成する床材は、最も振動や衝撃を受ける部材となることから、それ自体で振動や衝撃を吸収するようにして、下方(特に階下)にそれらが伝わらないように工夫された床材の採用例が年々増えてきている。こうした床材としては、弾性を有して振動を吸収するものを板に重ねて一体化したものが提案されており、このような従来の床材の一例として、特開2005−282306号公報や特開2009−84937号公報に開示されるものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−282306号公報
【特許文献2】特開2009−84937号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の床材は前記各特許文献に示される構成となっており、床材単体としては、板に重ねて弾性体を設けて一体化することで制振性能を付与できるものの、床材を床面として設置した状態では、制振性と共に、床として人や物を確実に支えることが求められており、床材の一部に弾性材を設け、振動吸収性を重視した構成とすると、床面としては過剰に弾力のある状態となって安定せず、人が歩くたびに揺れたり、重いものを置くと傾くなど、床としての機能の面で不都合が生じ、また床上の人に床が揺れ動く違和感を与え、使用感の劣ったものとなるという課題を有していた。
【0006】
こうした弾性材に基づく不安定さを避けるために、床材を根太等の床支持材に釘やねじ等で確実に固定した場合、床としての安定性は確保でき、床が動くような違和感を解消できるものの、この場合は弾性材を含む床材全体が剛状態となることで、弾性材の振動吸収効果をほとんど発揮させられず、床上に加わる振動や衝撃を床下にそのまま伝えてしまう状態になるという課題を有していた。
【0007】
本発明は、前記課題を解消するためになされたもので、床としての安定性を確保し、使用感を向上させつつ、振動吸収性能を高めて下方へ振動や衝撃を伝わりにくくする床材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る床材は、最上層に配置される上板と、当該上板の下側に重ねて配設され、上下方向に圧縮変形可能で且つ当該圧縮変形状態から復元可能な弾性を有する略平板状の中間材と、当該中間材の下側に重ねて配設される下板と、横方向に所定間隔で複数並べて配設され、それぞれ前記中間材を貫通して前記上板と下板に係合し、上板と下板をそれぞれ中間材と接する状態に維持する連結部材とを備え、当該各連結部材が、前記上板と下板の間隔を、当該上板と下板に挟まれる前記中間材が上下方向に圧縮されながらも、中間材にはさらに所定寸法分の圧縮変形代が残っている状態をもたらす所定間隔とし、当該所定間隔以上に上板と下板の間が広がらないよう上板と下板を拘束する一方、上板と下板の間隔の狭まる方向への変化は許容するものである。
【0009】
このように本発明においては、上板と下板間に中間材を介在させ、複数の連結部材による上板と下板との間隔保持に伴って、中間材を十分圧縮した状態で、床として上からの荷重を受けることにより、人の歩行等の緩やかな荷重変動に対し中間材が変形しにくく、中間材上の上板が不用意に動くこともなく、上板上側の人や物を安定的に支持でき、上板に載っている人に床が動く違和感を与えずに済む一方、上板に上から振動や衝撃が加わった場合には、中間材に残る変形代の分、上板が下板に対しわずかに間隔を小さくするように下方へ動くと共に、中間材が圧縮変形して振動や衝撃に係るエネルギーを吸収し、下板側への伝達を防止することとなり、上板に加わった振動や衝撃、並びにそれに伴って生じる音を、床下に伝わりにくくすることができる。
【0010】
また、本発明に係る床材は必要に応じて、床下側の床支持材と前記連結部材が接触しない配置としつつ、床支持材上に連結部材で一体となった前記上板、中間層及び下板が載置されると共に、前記下板下面の少なくとも床支持材に面する部分に、弾性変形能を有するシート体があらかじめ貼設されるものである。
【0011】
このように本発明においては、下板と床支持材間に弾性変形するシート体を配設しつつ、下板を床支持材に固定せず載置したのみとして床面を構築することにより、上板、中間材及び下板の重量で床面として安定して床支持材上に固定状態とすることができる一方、下板と床支持材とが一体化した剛構造とならず、シート体の介在も相俟って、上から伝わる振動や衝撃を適切に床支持材より上側の各部材で減衰させて床支持材側に伝えず、床下側に振動や衝撃等が伝わるのを確実に防止できる。
【0012】
また、本発明に係る床材は必要に応じて、既設の床面上で、所定の部材を枠状に組んで形成された支持枠と前記連結部材が接触しない配置としつつ、前記支持枠上に連結部材で一体となった前記上板、中間層及び下板が載置されると共に、前記下板下面の少なくとも支持枠に面する部分に、弾性変形能を有するシート体があらかじめ貼設されるものである。
【0013】
このように本発明においては、既設床面に載せた支持枠と下板との間に弾性変形するシート体を配設しつつ、下板を支持枠に固定せず載置したのみとして、床面上に一段高い台状部分を構築することにより、上板、中間材及び下板の重量でこれらを安定して床面上に固定状態とすることができる一方、下板と支持枠、床面が一体化した剛構造とならず、シート体の介在も相俟って、上から伝わる振動や衝撃を支持枠より上側の各部材で適切に減衰させて支持枠や床面側に伝えず、床面側に振動や騒音等が伝わるのを確実に防止できる。また、既設の床を改修することなく支持枠と床材をなす各部材を載置するだけで制振機能を発揮させられ、既設の床についても振動等への対策を簡易に実行できる。
【0014】
また、本発明に係る床材は必要に応じて、前記連結部材が、前記上板への係合部分と下板への係合部分との間の距離を変更可能に形成され、前記中間材を圧縮変形させている状態における上板と下板の間隔を調整可能とされるものである。
【0015】
このように本発明においては、連結部材による上板と下板との間隔設定を調整可能とし、中間材を圧縮変形させている状態におけるその圧縮の度合を適宜変更できるようにすることにより、上板と下板の間隔をより大きくし、中間材の圧縮度合を小さくすれば、中間材が弾性変形しやすくなり、振動等の吸収性能を向上させた状態にでき、また、逆に上板と下板の間隔をより小さくし、中間材の圧縮度合を大きくすれば、中間材が弾性変形しにくくなる分、床材全体の剛性を高めて、床としての安定性を向上させられるなど、連結部材を用いて振動等の吸収性能と床の安定性とのバランスを調節できることとなり、用途や周囲環境、要求される性能等に応じた適切な床材の特性が得られる。
【0016】
また、本発明に係る床材は必要に応じて、前記連結部材が、前記下板との係合部分を、上板側から垂直下方に延びて下板を貫通する雄ねじ部に下板下側からナットを螺合させ、当該ナットで中間材側から下方へ離れないよう下板を係止する構成とされるものである。
【0017】
このように本発明においては、連結部材の下板と係合する部分を、下板を貫通する雄ねじ部とこれに下側から螺合するナットとし、上板と下板との間隔をナットの締付けで維持することにより、連結部材の構造を簡略化して低コスト化が図れると共に、下板に対しナットを締付ければ、適切な上板と下板との間隔を得られ、またナットの締付け具合を変えることで、上板と下板の間隔を変えて中間材の圧縮度合を調整することが容易に行える。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る床材からなる床面の平面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る床材からなる床面の断面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る床材における連結部材配設部分の拡大断面図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る床材における配設前の中間材未圧縮状態説明図である。
【図5】本発明の第1の実施形態に係る床材における連結部材配設部分の振動等荷重付加状態での拡大断面図である。
【図6】本発明の第2の実施形態に係る床材の床面設置状態の平面図である。
【図7】本発明の第2の実施形態に係る床材の床面設置状態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(本発明の第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態に係る床材を前記図1ないし図5に基づいて説明する。本実施形態においては、新規の床面を構成するものとして根太上に配設する例について説明する。
【0020】
前記各図において本実施形態に係る床材1は、最上層に配置される上板11と、この上板11の下側に重ねて配設され、空気を含んで上下方向に圧縮可能で且つこの圧縮状態から復元可能な弾性を有する略平板状の中間材12と、この中間材12の下側に重ねて配設される下板13と、横方向に所定間隔で複数並べて配設され、それぞれ中間材12を貫通して上板11と下板13に係合し、上板11と下板13の間隔を規制する連結部材14とを備える構成である。
【0021】
前記上板11は、木製で容易に変形しない程度の厚さを有する平板であり、連結部材14の端部を係合させるための孔が前後左右に所定間隔で複数穿設される構成である。この上板は容易に変形しない程度の厚さとして、9〜21mmとするのが好ましい。
【0022】
前記中間材12は、全体として厚さ方向に圧縮できると共に、圧縮した状態から復元できる弾性を有する略平板状体として形成されるものである。この中間材12にも、連結部材14を通すための孔が、上板11の孔と同様の前後左右に所定間隔をなす配置で複数穿設される構成である。中間材12の厚さは、本実施形態においては、上板11の厚さより大きく、上板11と下板13の合計厚さより小さくなるよう設定されるが、これに限らず、中間材の材質や使用状況に対応した厚さを適宜選定できる。
【0023】
この中間材12は、柔軟な外装でほぼ閉じられた空間を生じさせ、この空間内に空気を存在させることで圧縮と復元の各変形が可能な弾性体として機能するもの(例えば、エアマット等)の他、空気を流通可能な多孔質の材質であり、空気を多く含む非圧縮状態から圧縮すると空気を排出しつつ変形する一方、圧縮後に付加した外力を取除くと、空気を取込みながら元の厚さまで復元可能な弾性を備えるもの(例えば、スポンジや繊維質の集合体等)を用いることができる。こうした中間材をなす材質は、変形の過程で内部で摩擦等が生じることで、変形をもたらす外力のエネルギーを吸収できる仕組みである。
【0024】
なお、中間材12においては、中間材の全体が弾性を有する構造とする必要はなく、厚さ方向の少なくとも一部に圧縮と復元の各変形が可能な部分を備えた複層構造としてもよい。ただし、こうした複層構造の場合も、中間材を圧縮していない初期状態で、中間材厚さ全体の約30%以上が、変形可能な材質部分となるよう構成するのが好ましい。
【0025】
中間材12は、上板11と下板13に挟まれた状態で連結部材14により上板11と下板13の間隔を小さくする向きの締付け力を付加され、十分に圧縮されている(例えば、変形可能部分の厚さを非圧縮状態から1/3程度まで圧縮される)ことで、圧縮前と比べて変形しにくくなっており、人の体重程度までの軽荷重の付加あるいは除去や、人の体重程度の重量のものが上板11上を移動する程度の緩やかな荷重変動に対してはほとんど変形せず、上板11及びその上側の人や物は上下方向にほとんど動かず、安定的に支持された状態を維持する。その一方、振動や衝撃として変化の度合の大きな荷重が上板11上に加わると、中間材12は変形可能な範囲で変形しながら、加わるエネルギーを吸収でき、下板13側へ振動や衝撃等を伝わりにくくすることができる。
【0026】
前記下板13は、木製で容易に変形しない程度の厚さを有する平板であり、下面側に弾性変形能を有する材質からなるシート体13aを貼設され、連結部材14の端部を貫通させるための孔が上板11の孔と同様の前後左右に所定間隔をなす配置で複数穿設される構成である。この下板13の厚さは、上板同様、容易に変形しない程度の厚さとして9〜21mmとするのが好ましい。
【0027】
前記シート体13aとしては、振動吸収性に優れるゴムやエラストマーの他、空気等の気体を含んで気体のばね性を利用可能なシート材を採用することができる。このシート体13aも、中間体12の場合と同様に、弾性変形の過程で内部で摩擦等が生じることで、変形をもたらす外力のエネルギーを吸収できる仕組みであり、それにより振動吸収性を得ている。
【0028】
この下板13はシート体13aを介して床支持材としての根太50に支持されるが、根太50に固定されないことで、仮に下板13が振動しても下板13と根太50が一体で振動するようなことはなく、またシート体13aが介在することで下板13の振動が吸収されることもあり、下板13から根太50に振動が伝わりにくい仕組みとなっている。
【0029】
前記連結部材14は、頭部を上板11側に位置させて中間材12及び下板13を貫通する状態で配設され、少なくとも下端側の所定長さを雄ねじとされてなるボルト14aと、下板13の下側からボルト先端に螺合させて配設されるナット14bと、ナット14bと下板13との間に介在させて配設される座金部14cとを備える構成である。
【0030】
連結部材14では、上板11の孔にボルト14a頭部を係合させ、この上板11側から下方に延伸して中間材12及び下板13を貫通するボルト14aの雄ねじ部に、下板13下側からナット14bを螺合させることで、上板11と下板13を中間材12から離れないよう保持する仕組みである。そして、この連結部材14で規定される上板11と下板13の間隔を、ナット14bの締付けで中間材12の非圧縮状態(図4参照)の初期厚さより小さい所定間隔(図3参照)とすることにより、上板11と下板13に挟まれる中間材12を上下方向に圧縮状態としつつ、中間材12にはさらに所定寸法分の圧縮変形代が残っている状態としている。この状態で、連結部材14は、ボルト14a頭部とナット14bにより、上板11と下板13の間が前記所定間隔以上に広がらないよう拘束する一方、中間材12に残った変形代の分の上板11と下板13の間隔の狭まる方向への変化は許容することとなる。
【0031】
振動や衝撃が上板11上に加わる場合、中間材12が圧縮変形して上板11と下板13の間隔が狭まる(図5参照)が、この時、連結部材14は、上板11と下板13の間隔が狭まる動きについては拘束しないことで、上板11と下板13、及び連結部材14が全て一体に動くことはなく、上板11から連結部材14を介して下板13に力が加わる状態とはならない。すなわち、連結部材14を介して上板11から下板13側へ振動や衝撃が伝わりにくい仕組みとなっている。
【0032】
また、連結部材14は、ナット14bの締付け状態を変えることで上板11と下板13の間隔、すなわち中間材12の圧縮状態の度合を調整可能である。上板11と下板13との間隔をより大きくして、中間材12の圧縮度合を小さくすれば、中間材12が弾性変形しやすくなり、振動等の吸収性能を向上させた状態とすることができる。一方、上板11と下板13との間隔をより小さくして、中間材12の圧縮度合を大きくすれば、中間材12が弾性変形しにくくなる分、床材全体の剛性が高まり、床としての安定性が向上することとなる。こうして、連結部材14の調整により、振動等の吸収性能と、床としての安定性とのバランスを調節できることで、用途や周囲環境に応じた適切な特性を得ることができる。
【0033】
なお、床材の設置、使用に先立ち、連結部材14により上板11と下板13の間隔を小さくして中間材12を十分に圧縮した状態を得るにあたっては、連結部材14にナット14bの締付け力など所定の力を加える必要があるものの、中間材12を大きく圧縮させられるような荷重を生じさせる重量物(例えば、ピアノ等)を、上板11の上に載せて使用することがあらかじめわかっている場合は、連結部材14のナット14bの締付け調整で規制する上板11と下板13の間隔を大きめとしておき、床材設置後に上板11上に重量物を載せた段階で、はじめて中間材12が適切な圧縮状態となるようにすることもでき、床材設置時に中間材12を圧縮するために連結部材14に加える力を大幅に軽減することができ、各部材の連結部材14による連結一体化の作業性を向上させられる。
【0034】
連結部材14の配置間隔は、上板11及び下板13の材質や厚さ、また中間材12の材質、構成や厚さにより調整する必要がある。例えば、使用状態での上板11、下板13、及び中間材12の合計厚さが40mm程度となる場合には、20ないし40cm間隔で配置するのが好ましい。また、連結部材14のボルト14aの長さは、重ね合せた上板11、中間材12及び下板13に対し、中間材12を圧縮する前の段階でボルト14aを上板11から中間材12を介して下板13まで通すと、ボルト先端が座金部14cを取付けた上でナット14bを螺合させられる程度に下板13の下側に現れる程度(図4参照)とする。
【0035】
また、上板11が薄い場合には、連結部材14のボルト14a頭部から大きな力が加わる上板11の孔周辺部の破損を防ぎ、ボルト14a頭部の上板11との係合を維持するために、ボルト14a頭部より大きい座金を、ボルト14a頭部と上板11との間に設けるのが望ましい。
【0036】
次に、本実施形態に係る床材の配設及び使用状態について説明する。床材については、あらかじめシート体13aを下面に貼付けた下板13に、中間材12、上板11を重ね、各連結部材14を取付けてから(図4参照)、各連結部材14のナット14bを均等に締付けて、上板11と下板13の間の中間材12が設定された厚みまで圧縮された状態(図2、図3参照)として、床材1として一体に取扱えるようにしておく。なお、連結部材14のナット14b締付けでは、中間材12を一旦圧縮限界まで変形させる状態まで締付けた後、ナット14bを緩めて中間材12を復元させつつ、使用時に上板11の上に載せる物に応じた最適な圧縮状態となるよう調整するのが好ましい。
【0037】
この床材1を、床支持材としてあらかじめ床材の連結部材14と物理的に干渉しない所定間隔で配設された根太50の上側に載置すると、床材1の重量によりそのまま固定状態となる。室内の床面を構築する箇所全てに床材1を載置すれば、床として完成状態となる。なお、床材1を載置する対象としての床支持材を根太50としているが、根太に限られるものではなく、大引きや他の横架材を床支持材とすることもできる。また、捨て張り下地板やコンクリート躯体等の平面上に、床材の下板を浮かせて連結部材下部と前記平面部分との接触を防ぐ部材を配設した上でこれらを床支持材として用いることもできる。
【0038】
この床材1からなる床上に振動や衝撃が加わった場合、振動や衝撃の源と接触する上板11は動く状態となるが、上板11下側の中間材12がわずかながら変形する(図5参照)ことで、振動等に係るエネルギーが吸収され、また、連結部材14は中間材12の変形を許容して上板11と下板13を拘束せず、上板11の動きを下板13にそのまま伝えることはないため、上板11から中間材12及び連結部材14を介した下板13への振動等の伝達はほとんど生じない。さらに、下板13は根太50に固定されず、根太50上に載置されたのみとなっていることに加え、下板13と根太50間にはシート体13aが介在していることで、仮に下板13まで振動等が伝わって下板13がわずかに振動したとしても、根太50にはこうした振動が伝わりにくく、結果として根太50への振動等の伝達を抑えられ、床下に床上側で生じた振動や衝撃が伝わらない。
【0039】
一方、人が床の上を歩く場合など、人の体重程度の荷重が上板11上を移動する際は、上板11で受けた荷重が中間材12にも加わるものの、大きな荷重でない上、振動や衝撃の場合と異なり、荷重の変化の度合も緩やかなものであるため、中間材12はほとんど変形せず、上板11が動きを感じられるほどに動くことはない。こうして上板11及びその上側の人や物は安定的に支持された状態を維持でき、上板11上の人は床が動くような違和感を覚えることもない。
【0040】
このように、本実施形態に係る床材は、上板11と下板13間に変形する中間材12を介在させ、複数の連結部材14による上板11と下板13との間隔保持に伴って、中間材12を十分圧縮した状態で、床として上からの荷重を受けることから、人の歩行等の緩やかな荷重変動に対し、中間材12が変形しにくく、この中間材12の上側の上板11が不用意に動くこともなく、上板11上側の人や物を安定的に支持でき、上板11に載っている人に床が動く違和感を与えずに済む一方、上板11に上から振動や衝撃が加わった場合には、中間材12に残る変形代の分、上板11が下板13に対しわずかに間隔を小さくするように下方へ動くと共に、中間材12が圧縮変形して振動や衝撃に係るエネルギーを吸収し、下板13側への伝達を防止することとなり、上板11に加わった振動や衝撃、並びにそれに伴って生じる音を、床下に伝わりにくくすることができる。
【0041】
なお、前記実施形態に係る床材において、下板13の下面全面にシート体13aを貼設する構成としているが、これに限らず、下板下面における根太等の床支持材に面する部分のみに、弾性変形能を有する材質からなるシート体を貼設するようにしてもよく、シート自体の使用量を削減してそのコストを低減しつつ、前記実施形態と同等の制振効果を上げられる。
【0042】
(本発明の第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態を図6及び図7に基づいて説明する。本実施形態においては、既設の床面上に支持枠を介して設置される例について説明する。
前記各図において本実施形態に係る床材2は、前記第1の実施形態同様、上板21と、中間材22と、下板23と、連結部材24とを備える一方、異なる点として、所定の角材を枠状に組んで形成された支持枠60を既設の床面70上に配設し、この支持枠60上に、連結部材24で一体化した上板21、中間材22及び下板23を載置して、床面70の上側に一段高くなった台状部分として配設されるものである。床材2をなす上板21、中間材22、下板23、及び連結部材24そのものの構成については、前記第1の実施形態と同様であり、説明を省略する。
【0043】
前記支持枠60は、所定の厚みを有する角材を枠状に組んで形成され、下板23と床面70の間に所定の間隔を確保し、下板23下側に突出した状態となる連結部材24下部が床面70に接触しないようにするものであり、この支持枠60をなす各角材はいずれも連結部材24と接触しない配置として組合わされて一体化される。
【0044】
本実施形態に係る床材2をなす最下部の下板23は、前記第1の実施形態同様のシート体を介して支持枠60に支持されるが、支持枠60に固定されないことで、仮に下板23が振動しても下板23と支持枠60が一体で振動するようなことはなく、またシート体が介在することで下板23の振動が吸収され、下板23から支持枠60に振動が伝わりにくい。なお、床材2各部材の重量とシート体の摩擦抵抗とにより、下板23が支持枠60に対し横方向にずれることはない。
【0045】
さらに、支持枠60も床面70と一体化した剛構造となっておらず、上から伝わる振動を床面側に伝えにくくなっていることで、結果として上板21の上側から伝わる振動が支持枠60や床面70側に伝わることはなく、床面やその下側に振動や騒音が伝わるのを確実に防止できる。
【0046】
次に、本実施形態に係る床材の配設及び使用状態について説明する。床材については、前記第1の実施形態同様、あらかじめシート体を下面に貼付けた下板23に、中間材22、上板21を重ね、各連結部材24を取付けてから、各連結部材24のナットを均等に締付けて、上板21と下板23の間の中間材22が設定された厚みまで圧縮された状態として、床材2として一体に取扱えるようにしておく。
【0047】
この床材2を、既設の床面70にあらかじめ載置した支持枠60の上側に載置すると、床材2の重量によりそのまま固定状態となる。所望の箇所全てに支持枠60及び床材2を載置すれば完成状態となる。
【0048】
この床材2上に振動や衝撃が加わった場合、振動や衝撃の源となるものと接触する上板21は動く状態となるが、上板21下側の中間材22がわずかながら変形することで、振動等に係るエネルギーが吸収され、また、連結部材24は中間材22の変形を許容して上板21と下板23を拘束せず、上板21の動きを下板23に伝えることはないため、上板21から中間材22及び連結部材24を介した下板23への振動等の伝達はほとんど生じない。さらに、下板23は支持枠60に固定されず、支持枠60上に載置されたのみとなっていることに加え、下板23と支持枠60間にはシート体が介在していることで、仮に下板23がわずかに振動したとしても、支持枠60にはこうした振動が伝わりにくく、結果として支持枠60への振動等の伝達を抑えられ、その下側の床面70や床下に床材2の上板21上側で生じた振動や衝撃が伝わらない。
【0049】
このように、本実施形態に係る床材は、既設の床面70に載せた支持枠60と下板23との間に弾性変形するシート体を配設しつつ、下板23を支持枠60に固定せず載置したのみとして、床面70上に一段高い台状部分を構築することから、上板21、中間材22及び下板23の重量でこれらを安定して床面70上に固定状態とすることができる一方、下板23と支持枠60、床面70が一体化した剛構造とならず、シート体の介在も相俟って、上から伝わる振動や衝撃を支持枠60より上側の各部材で適切に減衰させて支持枠60や床面70側に伝えず、床面70側に振動や騒音等が伝わるのを確実に防止できる。また、既設の床面70を一切改修することなく支持枠60と床材2をなす各部材を載置するだけで制振機能を発揮させられ、既設の床面70についても振動等への対策を簡易に実行できる。
【符号の説明】
【0050】
1、2 床材
11、21 上板
12、22 中間材
13、23 下板
13a シート体
14、24 連結部材
50 根太
60 支持枠
70 床面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
最上層に配置される上板と、
当該上板の下側に重ねて配設され、上下方向に圧縮変形可能で且つ当該圧縮変形状態から復元可能な弾性を有する略平板状の中間材と、
当該中間材の下側に重ねて配設される下板と、
横方向に所定間隔で複数並べて配設され、それぞれ前記中間材を貫通して前記上板と下板に係合し、上板と下板をそれぞれ中間材と接する状態に維持する連結部材とを備え、
当該各連結部材が、前記上板と下板の間隔を、当該上板と下板に挟まれる前記中間材が上下方向に圧縮されながらも、中間材にはさらに所定寸法分の圧縮変形代が残っている状態をもたらす所定間隔とし、当該所定間隔以上に上板と下板の間が広がらないよう上板と下板を拘束する一方、上板と下板の間隔の狭まる方向への変化は許容することを
特徴とする床材。
【請求項2】
前記請求項1に記載の床材において、
床下側の床支持材と前記連結部材が接触しない配置としつつ、床支持材上に連結部材で一体となった前記上板、中間層及び下板が載置されると共に、
前記下板下面の少なくとも床支持材に面する部分に、弾性変形能を有するシート体があらかじめ貼設されることを
特徴とする床材。
【請求項3】
前記請求項1に記載の床材において、
既設の床面上で、所定の部材を枠状に組んで形成された支持枠と前記連結部材が接触しない配置としつつ、前記支持枠上に連結部材で一体となった前記上板、中間層及び下板が載置されると共に、
前記下板下面の少なくとも支持枠に面する部分に、弾性変形能を有するシート体があらかじめ貼設されることを
特徴とする床材。
【請求項4】
前記請求項1ないし3のいずれかに記載の床材において、
前記連結部材が、前記上板への係合部分と下板への係合部分との間の距離を変更可能に形成され、前記中間材を圧縮変形させている状態における上板と下板の間隔を調整可能とされることを
特徴とする床材。
【請求項5】
前記請求項4に記載の床材において、
前記連結部材が、前記下板との係合部分を、上板側から垂直下方に延びて下板を貫通する雄ねじ部に下板下側からナットを螺合させ、当該ナットで中間材側から下方へ離れないよう下板を係止するものとされてなることを
特徴とする床材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−149170(P2011−149170A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−10069(P2010−10069)
【出願日】平成22年1月20日(2010.1.20)
【出願人】(505325992)株式会社ハウス119 (2)
【Fターム(参考)】