説明

床用化粧材

【課題】凹みなどが付き難く、化粧シートの巻き取り適性に優れ、かつ色調の調整が容易であり、かつ耐キャスター性、耐衝撃性、難燃性などもあり、容易に製造可能で加工適性も優れた床用化粧材を提供すること。
【解決手段】木質系基材上に熱可塑性樹脂化粧シートを積層してなる床用化粧材において、前記木質系基材と熱可塑性樹脂化粧シートとの間に、ランダム繊維強化部材及び/又は一方向繊維強化部材からなる繊維強化熱可塑性樹脂中間層を設けたことを特徴とする。衝撃を受けた場合、強化繊維と熱可塑性樹脂と間の界面剥離によるエネルギー吸収が起こり表面強度が増す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住宅、店舗、事務所、体育館、船舶など用いられる床用化粧材に関する。更に詳しくは、耐衝撃性、耐キャスター性、寸法安定性、化粧シートの巻き取り適性、凹みなどの表面強度に優れ、中でも特に、材料に難燃性が要求される用途に用いる床用化粧材に関する。
【背景技術】
【0002】
木質系基材からなる板張り様の床用化粧材としては、合板に突き板を貼り、木工機械にて溝加工して、溝部を着色した後紫外線硬化型塗料を塗布し硬化させたものが知られている。しかしながら、突き板が天然木のため、色がばらついたり、壁や天井、家具との色調の調和が困難であった。
【0003】
また、木質系基材の表面に凹状溝を設け、表面に導管着色用合成樹脂塗料を塗布し、凹状溝以外の塗料を除去した後、木目柄の導管凹部を形成し、凹状溝以外の木質系基材表面に透明合成樹脂塗料を塗布する方法が知られている。しかしながら、木質系基材と合成樹脂塗料からなる構成のため、キャスター付き椅子による傷付き耐性いわゆる耐キャスター性を出すことが困難であった。また、一度凹みが出来ると復元しにくいといった問題があった。
【0004】
また、木質系基材上に熱可塑性樹脂化粧シートを積層した床用化粧材も知られている。しかしながら、熱可塑性樹脂化粧シートが厚すぎると、ウエーブ状(巻き状態)で巻き取りにくく、木質系基材との連続ラミネート時にライン上でシートカットが困難なものとなる。よって生産性が上がらないため、熱可塑性樹脂化粧シートと木質系基材とをラミネートする際には、予め木質系基材と同等の大きさにカットした熱可塑性樹脂化粧シートを準備して、枚葉方式で、1枚1枚積層するなどの方法をとらなければならなかった。
【0005】
更に、構成材料に木質系基材を用いている為、発泡成形させる場合は特に、火炎加熱による燃焼試験を行うと自己消火性に劣ることが明確に判明するほど、防炎性に欠けるという問題があった。
【0006】
難燃性の付与について、通常はハロゲン系、リン系の有機系あるいは無機系の難燃剤などを成形時に添加する手法が用いられる。しかしながら、より高度の難燃性を付与しようと考えた場合に、単に難燃剤の添加量を多くするというだけでは、難燃性の向上は必ずしも十分ではないのみならず、床材基材としての機械的物性の低下や、木質樹脂組成物の成形時の流動特定の低下による成形速度の低下、成形後のエージング時における難燃剤のブリードアウト等の種々の問題があり、特に発泡成形した場合の難燃性向上手法としては必ずしも適切ではない。
【特許文献1】特開昭52−76409号公報
【特許文献2】特開2004−17590号報
【特許文献3】特開2001−353815号公報
【特許文献4】特開2002−120347号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は前記問題点を解決するためになされたものであり、その課題とするところは、凹みなどが付き難く、化粧シートの巻き取り適性に優れ、かつ色調の調整が容易であり、かつ耐キャスター性、耐衝撃性、難燃性などもあり、容易に製造可能で加工適性も優れた床用化粧材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明はこの課題を解決するものでありすなわち請求項1記載の発明は、木質系基材上に熱可塑性樹脂化粧シートを積層してなる床用化粧材において、前記木質系基材と熱可塑性樹脂化粧シートとの間に、ランダム繊維強化部材及び/又は一方向繊維強化部材からなる繊維強化熱可塑性樹脂中間層を設けたことを特徴とする床用化粧材である。
【発明の効果】
【0009】
本発明はその請求項1に記載の発明により、繊維強化熱可塑性樹脂中間層を設けたことにより、衝撃を受けた場合、強化繊維と熱可塑性樹脂と間の界面剥離によるエネルギー吸収が起こり表面強度が増すため衝撃を受けても凹みにくく、夏場など室温が上がったり、夏場の西日が当たって床材の表面温度があがっても寸法変化しにくい効果がある。
【0010】
且つ化粧シート製造時に容易に巻き取ることができるのでロールツーロールでの生産が容易になる効果が有り、更に重い物を床に落としたときの耐衝撃性や重量物のピアノを置いたときの耐クリープ性の良い床材を得ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を図面に基づき詳細に説明する。図1に本発明の床用化粧材の断面の構造を示す。木質系基材1の上に接着剤層2を介して繊維強化熱可塑性樹脂中間層3を設け、熱可塑性樹脂化粧シート4を設けてなる。更に適宜表面保護層5、透明熱可塑性樹脂層6、U字溝10、V字溝11を設けてもよい。図示しないが熱可塑性樹脂化粧シート4と透明熱可塑性樹脂層6の間に絵柄層を設けても良い。
【0012】
木質系基材1としては、南洋材合板、パーティクルボード、中密度繊維板(以後MDF)、日本農林規格に規定される普通合板が使用可能である。また、木紛添加オレフィン系樹脂からなる基材も使用可能である。厚みは3〜25mm程度が好適である。
【0013】
接着剤層2に用いる接着剤としては、公知の2液のウレタン変性ビニル樹脂からなる水性接着剤や1液酢酸ビニル樹脂エマルジョン系接着剤、湿気硬化型ウレタン樹脂系ホットメルト接着剤等が使用可能である。また熱可塑性樹脂ホットメルト接着剤も使用可能である。塗布量は、乾燥後の重さが3〜20g/m程度が接着性の観点から好適である。
【0014】
繊維強化熱可塑性樹脂中間層3に用いる繊維としては、ガラス繊維、パラ系アラミド繊維、炭素繊維、ボロン繊維、金属繊維、液晶ポリマー繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維等が使用可能である。本発明における繊維強化熱可塑性樹脂中間層3は、これら繊維の1〜50μmのモノフィラメントを熱可塑性樹脂中にランダムに分散させたランダム繊維強化部材、及び/又は一方向繊維を熱可塑性樹脂中に含浸させた一方向繊維強化部材からなる。
【0015】
前記ランダム繊維強化部材の、熱可塑性樹脂中間層に対する体積比は、用いる熱可塑性樹脂により適宜調整するが、10〜30%が全体の成形時の流動性と耐衝撃性の点で望ましい。また同様に一方向繊維強化部材の体積比は、10〜90%が望ましい。
【0016】
繊維強化熱可塑性樹脂中間層3に用いる熱可塑性樹脂としては、スチレン・アクリル樹脂、非結晶性ポリエステル樹脂、非晶状態の結晶性ポリエステル樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂やポリトリメチレンテレフタレート樹脂などの単体やこれらの混合物が使用可能である。厚みは50〜200μm程度が耐衝撃性、表面強度、寸法安定性、化粧シートととしての巻き取り適性の各項目のバランスが取れて望ましい。
【0017】
また、繊維強化熱可塑性樹脂中間層3には、その他、適宜難燃剤等添加剤を入れることができる。難燃材としては、リン酸エステル、縮合リン酸エステルなどの有機系難燃剤、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、ホウ酸亜鉛などのホウ酸化合物、三酸化アンチモン、五酸化アンチモンなどの無機系難燃剤が使用可能である。
【0018】
熱可塑性樹脂化粧シート4としては、非結晶性ポリエステル樹脂、非晶状態の結晶性ポリエステル樹脂、2軸延伸ポリエステル樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、アクリル樹脂などからなる単層あるいは複数の層からなるものが好適に用いられる。特には下層に着色熱可塑性樹脂層を設け、絵柄層(図示せず)を設けてから上面に透明熱可塑性樹脂層6を設ける方法が挙げられる。熱可塑性樹脂化粧シート4の厚みは、耐キャスター性、耐衝撃性、耐傷付き性、ハンドリング性、刃物摩滅度などを考慮すると、50〜200μmが望ましい。図示しないが絵柄層としては、公知の不透明な無機、有機顔料からなる2液のウレタン系樹脂バインダー、アクリル樹脂と塩化ビニル−酢酸ビニル樹脂共重合体等からなるグラビアインキが使用可能である。
【0019】
また、表面保護層5として、すべり性を考慮して公知の紫外線吸収剤、光安定剤、ガラスビーズなどが添加された紫外線硬化型樹脂や2液ウレタン樹脂を塗布量6〜15g/m塗布しても良い。この場合、耐衝撃性試験、耐キャスター性試験の復元性を考慮にいれておて、表面硬度を調節することが望ましい。
【0020】
また、熱可塑性樹脂化粧シート4作製時または床材にした後、金属ロールなどからなるエンボス版を押し当てて、U字溝10、V字溝11等を施してもよい。凹部の溝部を着色をする場合、凹部着色インキ層は、公知の不透明な無機、有機顔料からなる1液、または2液のウレタン系樹脂バインダーからなるグラビアインキが使用可能である。
【実施例1】
【0021】
<熱可塑性樹脂化粧シート>
厚さ70μmの着色ポリプロピレンフィルム(リケンテクノス(株)製「リベスターTPO」)の片面に、グラビアインキ(東洋インキ製造(株)製「ラミスター」)で木目柄をグラビア印刷機により印刷した。その後、印刷を施した面とは逆の面にシリカ粉末を含有する2液ウレタン系プライマー樹脂を乾燥後の厚みが1μmとなるようにグラビア塗工した。前記印刷を施した面上に、アンカー剤としてポリエステルポリオールと硬化剤としてイソホロンジイソシアネートの2液ウレタン樹脂系接着剤を乾燥後の塗布量が1g/mになるように塗工し、さらにこの上に、ホモポリプロピレン50部、ランダムポリプロピレン50部の混合物に紫外線吸収剤0.5部、ヒンダードアミン系光安定剤0.5部、熱安定剤0.2部を添加してマレイン酸変成したポリプロピレン系樹脂を乾燥後の厚みが80μmとなるようにし、更に同時にその上に接着性樹脂を乾燥後の厚みが10μmとなるようにして、オゾンガスを吹き付けながら共押出しラミネートし、熱可塑性樹脂化粧シートを得た。
<表面保護層>
前記熱可塑性樹脂化粧シートの共押出ラミネート面上に、乾燥後の厚みが1g/mとなるように2液ウレタン樹脂からなるリコート層を設け、その後、ウレタンアクリレート(ダイセル・ユーシービ(株)製「Ebecryl4858」)100部とペンタエリスリトールテトラアクリレート(ダイセル・ユーシービ(株)製「PETA−K」)20部、ベンゾフェノン系光開始剤(ダイセル・ユーシービ(株)製「Ebecryl BZO」)0.5部、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤0.5部、ヒンダードアミン系光安定剤0.5部、ガラスビーズ2部を添加した紫外線硬化型樹脂を厚さ5μmとなるように塗布し、メタルハライドランプによる紫外線照射により硬化させて表面保護層を設けた。
<中間層との貼り合わせ>
前記熱可塑性樹脂化粧シートの表面保護層を設けた面とは反対側に、2液ウレタン樹脂接着剤(東洋モートン(株)製「TM−593」)を乾燥後の塗布量が10g/mになるように塗工した。この面に、繊維強化熱可塑性樹脂中間層として、ポリブチレンテレフタレート100重量部に、モノフィラメント直径24μm4000テックス(4000g/1000m JISl0101−1978)のランダムガラス繊維からなるランダム繊維強化部材10重量部、難燃剤(水酸化アルミニウム)10重量部とからなる厚み0.17mmのシートを貼り合わせた。これらはインラインで貼り合わせることが出来、ロールで巻き取れることができた。
<木質系基材との貼り合わせ>
木質系基材として厚み12mm×303mm×1818mmのラワン合板を用い、この表面に2液水性エマルジョン接着剤(中央理化工業(株)製「リカボンド」(BA−10L/BA−11B=100/5」))をウエット状態で100g/mに塗工したあと、前記熱可塑性樹脂化粧シートの繊維強化熱可塑性樹脂中間層側とラミネータにて貼り合わせ、12時間養生後、端部の実加工及び木質系基材まで達するV字溝加工を行い、最後に2液ウレタン樹脂系着色剤にて前記V字溝の着色を行うことで目地を作成し、床用化粧材とした。
<比較例1>
実施例1において繊維強化熱可塑性樹脂中間層3を設けなかった以外は実施例1と同様にして床用化粧材を作製した。
<比較例2>
実施例1において強化熱可塑性樹脂中間層3に繊維を添加しなかった以外は実施例1と同様にして床用化粧材を作製した。
<性能評価>
耐キャスター性試験として、ポリカーボネート製のダブルキャスター(直径40mm、1輪の幅9mm、2輪間の幅18mm)に25kgの重りで荷重をかけ(約245N)、1万回(1ストローク20cm以上、5千往復)、キャスターを速度20cm/秒で床用化粧材上で動かした。その後の痕について観察した。
【0022】
耐衝撃性試験として、本来は、塗膜の評価法である、デュポン式落球試験(JIS_K5400)に準拠して試験を行った。ただし、評価方法としては、床材の凹み量の測定を行った。
【0023】
寒熱繰り返し試験として、−20℃2時間、80℃2時間を4サイクル行った。以上の結果を表1に示す。
【0024】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明の床用化粧材は、住宅、店舗、事務所、体育館など、耐衝撃性、耐キャスター性、寸法安定性、などが要求される箇所に特に好適に使用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の床用化粧材の一実施例の断面の構造を示す説明図である。
【符号の説明】
【0027】
1…木質系基材
2…接着剤層
3…繊維強化熱可塑性樹脂中間層
4…熱可塑性樹脂化粧シート
5…表面保護層
6…透明熱可塑性樹脂層
10…U字溝
11…V字溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
木質系基材上に熱可塑性樹脂化粧シートを積層してなる床用化粧材において、前記木質系基材と熱可塑性樹脂化粧シートとの間に、ランダム繊維強化部材及び/又は一方向繊維強化部材からなる繊維強化熱可塑性樹脂中間層を設けたことを特徴とする床用化粧材。

【図1】
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【公開番号】特開2007−107241(P2007−107241A)
【公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−298248(P2005−298248)
【出願日】平成17年10月13日(2005.10.13)
【出願人】(593173840)株式会社トッパン・コスモ (243)
【Fターム(参考)】