説明

廃プラスチック粉砕物の製造方法および固体燃料または鉱石還元材

【課題】低コストで廃プラスチックを微粉砕して粉砕物を得ることが可能であり、粉砕物の生産性も向上する、廃プラスチック粉砕物の製造方法を提供すること。
【解決手段】廃プラスチックを軟化溶融温度以上、かつ可燃性分解ガスが生成しない温度で溶融し、更に100(1/秒)以上の剪断速度で混練した後、冷却・固化して固化体とし、該固化体を粉砕することを特徴とする、廃プラスチック粉砕物の製造方法を用いる。軟化溶融温度が160℃、可燃性分解ガスが生成しない温度が270℃以下であることが好ましい。または、廃プラスチックを160℃〜270℃で溶融し、更に100(1/秒)以上の剪断速度で混練した後、冷却・固化して固化体とし、該固化体を粉砕することを特徴とする、廃プラスチック粉砕物の製造方法を用いる。溶融・混練を、押し出し機を用いて行なうこと、特に二軸押し出し機を用いることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃プラスチックを再生処理して鉱石還元材や固形燃料等を製造するための、廃プラスチック粉砕物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、廃プラスチックの有効利用のための一つの解決手段として、廃プラスチックから鉱石還元材、固体燃料等を製造する方法が検討されている。これは、プラスチックを微粉化すると燃焼性が飛躍的に向上し、有用な燃料資源となり得るためである。
【0003】
プラスチックを固体燃料に転化するこれまでの技術は、例えば、プラスチックを直接、粉砕機で微粉砕するものである(例えば、非特許文献1参照。)。しかし、この方法の場合、堅いプラスチックを1〜2mmの粒度にまでしか粉砕できず、しかも、この粉砕に多大の時間と費用を要し、また、繊維状やフィルム状のプラスチックは粉砕が困難なため、別途、溶融固化後に粉砕しなければならず、工程が複雑になるなどの問題があった。
【0004】
また、廃プラスチックを微粉砕すると、発電用ボイラ等の燃焼炉として使用可能な燃料にすることができることが知られているが(例えば、特許文献1参照。)、特許文献1には特に粉砕方法の記載は無く、廃プラスチックそのものの粉砕性の向上に関する技術的開示は無い。
【0005】
粒径2000μm以下のプラスチックは固形燃料として優れており、乾式粉砕法や湿式粉砕法で製造することが知られている(例えば、特許文献2参照。)。特に、微粉末を得る方法としては、ジェットミルや振動ボールミルが好適であるとも言われているが、やはり、廃プラスチックそのものの粉砕性の向上に関する技術は知られていない。
【0006】
一方、例えば家庭などから排出される廃プラスチックを高炉用還元材などの還元材や燃料として用いる場合、廃プラスチックにはポリ塩化ビニル(以下、PVCと記載する。)などの塩素含有プラスチックが混入しているため、そのまま用いると塩化水素などが発生し、炉が腐食するなどの問題がある。このため、PVCなどの塩素含有プラスチックを分離除去して造粒処理を施し粒状プラスチック成形物を得る技術(例えば、特許文献3参照。)が知られている。
【0007】
また、塩素を含有する廃プラスチックに脱塩素処理を施した上で、廃プラスチックを微粉化する技術として、廃プラスチックを加熱、脱塩素処理、冷却固化した後、微粉砕して炉に投入する(例えば、特許文献4参照、特許文献5。)等の技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平7−119922号公報
【特許文献2】特開平4−332792号公報
【特許文献3】特開2002−67029号公報
【特許文献4】特開平11−192469号公報
【特許文献5】特開2006−241442号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】「プラスチックス」 Vol.47、No.7、p60、1996年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
一般にプラスチックは耐衝撃性に優れるため、そのまま粉砕するのは非常に困難であり、特に0.5mm以下の粒径まで粉砕する場合、粉砕時間を長くすることや、何度か繰り返し粉砕機に投入する等の方法がとられる。この場合、粉砕機のタイプによっては粉砕中にプラスチックがせん断発熱により加熱状態になり、溶融したり、粉砕品が繊維状になったりするケースが認められる。この現象を防ぐために粉砕機あるいは粉砕物を冷却することが考えられるが、設備費や運転コストが増加する。
【0011】
プラスチックを微粉砕する方法として、いわゆる凍結粉砕も有力な手段である。すなわち、一般のプラスチックが脆性破壊を起こす温度領域、たとえば零下数十度までプラスチックを冷却した後、粉砕する方法である。しかし、この方法は事前にプラスチックを冷却する必要があるため、設備費や運転コストが増加する。
【0012】
前述した特許文献4、特許文献5に記載の方法をはじめとする、いわゆる廃プラスチックの溶融脱塩素法に従えば、脱塩素後のPVCは炭素質化し、脆化するため、全体として粉砕性を向上することが可能である。しかし、脱塩素処理により発生する塩素を含む排ガスの処理を行なう必要があり、コスト高である。排ガスから塩素を回収して塩酸として有効利用することも可能であるが、やはり設備コストの増大を招く。安価に廃プラスチック微粉砕物を製造するためには設備コストを引き下げ、かつ生産性を向上させることが重要である。
【0013】
したがって本発明の目的は、このような従来技術の課題を解決し、低コストで廃プラスチックを微粉砕して粉砕物を得ることが可能であり、粉砕物の生産性も向上する、廃プラスチック粉砕物の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
このような課題を解決するための本発明の特徴は以下の通りである。
(1)、廃プラスチックを軟化溶融温度以上、かつ可燃性分解ガスが生成しない温度で溶融し、更に100(1/秒)以上の剪断速度で混練した後、冷却・固化して固化体とし、該固化体を粉砕することを特徴とする、廃プラスチック粉砕物の製造方法。
(2)、軟化溶融温度が160℃、可燃性分解ガスが生成しない温度が270℃以下であることを特徴とする、(1)に記載の廃プラスチック粉砕物の製造方法。
(3)、廃プラスチックを160℃〜270℃で溶融し、更に100(1/秒)以上の剪断速度で混練した後、冷却・固化して固化体とし、該固化体を粉砕することを特徴とする、廃プラスチック粉砕物の製造方法。
(4)、溶融・混練を、押し出し機を用いて行なうことを特徴とする、(1)ないし(3)のいずれかに記載の廃プラスチック粉砕物の製造方法。
(5)、押し出し機が、二軸押し出し機であることを特徴とする、(4)に記載の廃プラスチック粉砕物の製造方法。
(6)、廃プラスチックの溶融・混練の前および/または溶融・混練時に、廃プラスチック以外の固体粒状物を混合し、廃プラスチックと共に混練することを特徴とする、(1)ないし(5)のいずれかに記載の廃プラスチック粉砕物の製造方法。
(7)、篩を通過させて粉砕した固化体の粒度を調整することを特徴とする、(1)ないし(6)のいずれかに記載の廃プラスチック粉砕物の製造方法。
(8)、(1)ないし(7)のいずれかで製造される粉砕物である鉱石還元材または固体燃料。
(9)、目開き0.5mmのふるいを通過することを特徴とする、(8)に記載の鉱石還元材または固体燃料。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、廃プラスチックからの排ガスを処理する設備を設けることなく、低コストで廃プラスチックを原料として燃焼性に優れた固体燃料または鉱石還元材等を製造することができる。廃プラスチック粉砕物の生産性も向上する。
【0016】
また、本発明の廃プラスチックの処理方法を用いることで、廃プラスチックの大量処理を、経済的に実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】廃プラスチックを溶融する温度とプラスチックの分解率の関係を示すグラフ。
【図2】プラスチックの剪断速度と粘度との関係を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、都市ゴミ、産業廃棄物、一般廃棄物などに含まれる廃プラスチックや容器包装材料、および電気製品、自動車などの解体の過程で発生する廃プラスチックなどを加熱溶融・混練後に冷却して固化体とし、該固化体を粉砕して、固形燃料や鉱石還元材等を製造する技術に関するものである。上記のように廃プラスチックは複数種類のプラスチックの混合物であり、廃プラスチックの粉砕性を向上させ、容易に微粉化するための方法として、多種類のプラスチックを溶融混練することが有効である。ほとんどの廃プラスチックはPVC等の混入により塩素を含有するものであるので、従来は廃プラスチックを塩素ガスが発生する高温で溶融・混練することにより塩素含有ガスを発生させて、廃プラスチック粉砕物から塩素成分を除去する脱塩素処理を行っていた。
【0019】
しかし、十分に脱塩素を行なうために、例えば300℃以上の温度で処理すると、脱塩化水素反応と同時に廃プラスチックに含まれるPET(ポリエチレンテレフタレート)や紙・木材(セルロース、ヘミセルロース、リグニン)などが熱分解、加水分解し、可燃性分解ガス(可燃性有機物)が発生する。これらの可燃性分解ガスの大部分は常温では固体であり、しかも一般的に昇華性を有するため、捕集装置の構造が複雑になり、かつ、これらを別途処理する必要が生ずる。さらに、捕集物は塩素を数%程度含むことが多く、燃料とはなりにくい。
【0020】
そこで本発明においては、廃プラスチックを加熱して溶融・混練する際に発生する可燃性分解ガスの発生を防止するために、溶融・混練を比較的低温で行なう方法について検討した。比較的低温で溶融すると、廃プラスチックからの塩素除去が十分に行なえないことが問題であったが、塩素含有量が低い廃プラスチックを用いれば、脱塩素処理を行なうことなく塩素濃度が低い廃プラスチック固化体や粉砕物を製造することができる。したがって、本発明では塩素含有量の低い廃プラスチック(例えば、塩素濃度が2mass%以下)を用いることが好ましい。また、検討の結果、ある程度の塩素の含有は許容される場合があり、必ずしも全ての場合について脱塩素処理が必須ではないことが明らかになった。例えば廃プラスチック粉砕物を溶鉱炉の鉱石還元材に使用する場合は、炉内に存在するスラグ成分と塩素が反応し、固定化されるため、廃プラスチックの含有塩素量によっては脱塩素処理が省略可能であることが分かった。また、原料廃プラスチックの含有塩素濃度が高く粉砕物の塩素含有濃度が高い場合であっても、鉱石還元材や固体燃料として使用できないというわけではなく、その単位時間あたりの使用量を含有塩素濃度に応じて適宜調整することで、炉の腐食等の問題の発生を回避することができる。したがって、脱塩素処理を行うことなく製造された廃プラスチック粉砕物であっても、十分に微粉砕されていれば実用上の問題は発生しない。
【0021】
一方で比較的低温で溶融処理することにより、脱塩素後のPVC等が炭素質化し、脆化する効果が得られなくなるため、製造される廃プラスチック固化体の粉砕性が低下し、生産性が低下することが問題となる。これについては廃プラスチックの溶融・混練工程における混練の度合いを十分に高めることで、粉砕性の低下を問題のない程度に抑えることが可能であることが分かった。同時に、低温で溶融処理して、可燃性分解ガスの発生を防止することにより、可燃性分解ガスとして除去されるはずだった成分をも廃プラスチック粉砕物として取り込むことができるので、歩留も向上し、全体として粉砕物の生産性も向上する。
【0022】
上記のように、廃プラスチックの熱処理を、軟化溶融温度以上、可燃性分解ガスが生成しない温度で行なうことで、処理後の固体収率が増加する。このとき、処理後の固化体中の残存塩素濃度は幾分高めになるが、たとえば高炉の還元材として使用する場合、高炉内に存在するカルシウムと反応するため、塩素が幾分高くても設備上特に大きな支障をきたさない。また、脱塩素反応が起こると、塩素の分だけ固化体の発熱量が増加すると考えられるが、むしろ副反応として有機物が分解・離脱するため、処理後固化体の発熱量はむしろ小さくなる方向である。したがって、廃プラスチックの熱処理を、軟化溶融温度以上、可燃性分解ガスが生成しない温度で行なうことで、固化体の発熱量が低下することは無い。
【0023】
廃プラスチックを加熱溶融、冷却、固化する際の加熱温度は、例えば特許文献4によれば、元々含有されていた、および/または、熱分解によって生成した低沸点化合物を除去するための温度に昇温することが大前提となっており、具体的には、150〜450℃であり、より好ましくは200〜400℃、さらに好ましくは250〜380℃の温度範囲とされている。このような温度範囲のうち、高温で加熱することで、塩化水素とともに、可燃性分解ガスが発生する。
【0024】
また、一般に塩素を含有するプラスチックの脱塩素処理を行なうためには300℃以上に加熱することが好ましく、この場合には発生した塩素ガスを処理・回収するための設備が必要となる。
【0025】
従って、廃プラスチックの脱塩素処理を前提として、廃プラスチックを加熱して溶融後に冷却して固化体とする設備では、廃プラスチックの加熱溶融工程で発生する廃プラスチック分解ガスの燃焼炉と塩酸回収装置等の塩素処理設備が必要となる。このような設備はコスト高であるので、廃プラスチックの処理コストを下げるため溶融・混練した後、冷却・固化して固化体とする際に、本発明者らは可燃性分解ガスが生成する温度について検討し、廃プラスチックを加熱溶融する温度とプラスチックの分解率について、図1に示す関係を見出した。尚、分解率は、処理に用いた廃プラスチック量(処理量、ドライベース)と、処理後の回収量との比を用いて(1−回収量/処理量)×100(mass%)で定義される。
【0026】
図1によれば、270℃までは廃プラスチック分解ガスの発生は極めて少ない。従って、このような分解ガスの発生する温度以下で廃プラスチックを加熱溶融・混練して、冷却固化することで、燃焼炉等の分解ガス処理設備が不要となり、廃プラスチックを低コストで処理し、廃プラスチック固化体を製造することができる。
【0027】
廃プラスチックに残留する塩素は、低濃度であれば、鉱石還元材、固体燃料等に使用する際に問題とならない場合が多く、本発明で処理する廃プラスチックには、塩素濃度の低いものを用いることが好ましい。例えば、塩素濃度が2mass%以下の廃プラスチックを本発明方法で処理したものは、鉱石還元材として高炉吹込みに充分に利用可能である。
【0028】
可燃性分解ガスが生成しない温度は、廃プラスチックの種類により若干変動するが、通常の場合、図1の結果より270℃以下とすることが好ましい。更に、200℃以下とすれば、より確実に可燃性ガスの発生を防止できる。この場合の温度は、樹脂中の最高温度とする。樹脂中の最高温度は、樹脂中に熱電対を挿入するなどの一般的な方法により測定することができる。尚、可燃性分解ガスが生成しない温度は、加熱により廃プラスチックから可燃性の有機物が実質的に発生しない温度であり、廃プラスチック中の不純物(例えば使い捨てライター中の液化ガス)に起因して発生するようなガスはこの場合の可燃性分解ガスの対象外である。
【0029】
溶融温度の下限は、後述するように廃プラスチックの混練を良好に行なうために、廃プラスチックが軟化溶融する温度とする。軟化溶融温度は廃プラスチックの種類により変動するが、通常の廃プラスチックの主成分がポリエチレン(PE)とポリプロピレン(PP)であることから、軟化溶融温度の下限を160℃とすることが好ましい。PEのみが主体の廃プラスチックであれば120℃とすることも可能である。
【0030】
もっとも、溶融・混練処理を160℃未満で実施することは、被処理物の廃プラスチックが各種プラスチックの混合物であることから実際的ではない。すなわち、160℃未満で溶融するプラスチックは主にPEだけであり、無理に処理を行うと、混練に要する所要動力が極端に大きくなるとともに、処理装置内で閉塞が発生し、処理の継続が困難になる場合がある。
【0031】
廃プラスチックを「溶融し、更に混練する」とは、廃プラスチックの溶融と同時に混練するか、溶融後に廃プラスチックが溶融状態で混練することを言う。ここで、混練は少なくとも100(1/秒)以上の剪断速度で行なうものとする。混練を十分に行なうことで、異種のプラスチックが混合されて、高度に分散され、プラスチックの異種界面が増加し、破壊の起点を発現させる。プラスチックはその種類により特性が異なり、このような異種プラスチックを溶融混練後、冷却固化すると、高分子同士はお互いに十分混合された状態のまま固化するが、その接着界面は、化学的にではなく、単に物理的に接触しているに過ぎない一方で、異種プラスチックの成形収縮率はそれぞれのプラスチックで異なり、冷却の過程で異種プラスチックはそれぞれの成形収縮率に応じて収縮し、接着界面が離れるためには内部が真空にならざるを得ず(真空ボイド)、ボイド形成に至らない場合は接着界面に「離れようとするが離れられない」応力が残る(残留応力)。十分な混練により高度に分散された異種プラスチックは、接着界面が多くなり、固化体は必然的に強い残留応力を有する。そして、固化体に衝撃を与えた場合、これらの異種プラスチック接着界面に応力集中を起こし、比較的容易に破壊の起点が生成される。また、亀裂の伝播をとめる要素がないため、結果的に全体がもろい構造になり、粉砕性が向上する。成形収縮率の他に、溶解パラメーター等の差も粉砕性向上に影響する。
【0032】
廃プラスチック以外の固体粒状物も、ほとんどの場合プラスチックと相溶しないため、廃プラスチックの溶融・混練の前、または溶融・混練時に、または溶融・混練の前と溶融・混練時の両方で、廃プラスチック以外の固体粒状物を廃プラスチックに混合し、廃プラスチックと共に混練することで、冷却固化した後は固体粒状物が破壊の起点となり、固化体の粉砕性をよりいっそう向上させることが出来る。
【0033】
溶融・混練前に混合する方法としては、たとえばタンブラー等を使用してあらかじめ廃棄プラスチックと固体粒状物とを混合すればよい。溶融・混練時に混合する方法としては、溶融・混練装置に廃プラスチックと固体粒状物を別々に供給し、装置内で混合してもよいし、どちらかを先に供給したのち、他方を供給してもよい。固体粒状物の融点が廃プラスチックの溶融開始温度よりも高い場合、先に廃プラスチックを供給し、ある程度の溶融状態を達成した後に固体粒状物を添加することが好ましい。
【0034】
固体粒状物としては、石炭、コークス、アスファルト等の化石燃料、バージンプラスチックなどの合成高分子、でんぷんやセルロースなどの天然高分子、鉄やアルミニウム等の金属および鉄鉱石やボーキサイト等のそれらの鉱石、マイカ・タルク等の無機物があげられる。
【0035】
また、固体粒状物として、籾殻、茶殻、コーヒー殻(滓)等の、農作物由来の廃棄物、木材、木炭や竹などの含リグニン植物など、いわゆるバイオマス固体を用いることが好ましい。特に、農作物由来の廃棄物や、間伐材・建築廃材などの廃木材を利用することは、地球環境保護の点からも有用である。
【0036】
上記したように、廃プラスチック以外の固体粒状物は、ほとんどの場合プラスチックと相溶しないため、溶融した廃プラスチックと混練し、冷却固化した後は破壊の起点となり、粉砕性を向上せしめることが出来るが、特にバイオマス固体中には灰分が含まれており、破壊の起点となり易いため好ましい。更に、籾殻は細長い形状になりやすく、また溶融した廃プラスチックを混練する際にさらに粉砕されるので、破壊の起点として効果的に用いることができる。
【0037】
なお、この場合の固体粒状物の配合量は、廃プラスチック100質量部に対して、固体粒状物100質量部未満とすることが好ましい。固体粒状物が100質量部以上では、混練処理後に廃プラスチックが粉化してハンドリングが困難になるからである。また、廃プラスチック100質量部に対して、固体粒状物5質量部以上とすることが好ましい。固体粒状物添加の効果が、より良く発揮できるからである。これら固体粒状物は、処理装置に導入できる大きさであれば使用可能である。
【0038】
廃プラスチックの加熱および溶融は、押し出し機を用いて混練しながら行なうことが好ましい。押出し機を用いることで、廃プラスチックを加熱すると同時に剪断速度100(1/秒)以上の混練を、効率的に行なうことができる。押し出し機は、二軸押し出し機を用いることで、より混練性を高めることができる。
【0039】
製造した廃プラスチックの固化体を、粉砕することで、廃プラスチック粉砕物を製造し、鉱石還元材や固体燃料を製造することができる。加熱溶融後に冷却、固化した固化体は粉砕性が向上し、通常の粉砕機を用いて、粒径2mm以下の微粉を、容易に製造することができる。粉砕した固化体は、篩を通過させて粒度を調整することが好ましい。篩いの篩目を適宜変更することで、粉砕後粒度を設定できる。例えば、本発明の製造方法を用いて、目開き0.5mmのふるいを通過させることで、粒径0.5mm以下の廃プラスチック粉砕物である微粉を得ることができる。
【0040】
以下に、本発明の一実施形態を、I.プラスチック、II.溶融・混練工程、III.冷却固化工程、IV.粉砕工程の順に、さらに詳細に説明する。
【0041】
〔I.プラスチック〕本発明の対象とする廃プラスチック、すなわち本発明における原料プラスチックとしては、都市ゴミ、産業廃棄物、一般廃棄物などに含まれる廃プラスチックや容器包装材料、および電気製品、自動車などの解体の過程で発生する廃プラスチックなどが例示される。
【0042】
具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩素化ポリエチレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネートおよびナイロンやその他の熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂など全てのものが適用可能であり、上記プラスチックの内のいずれか2種以上が混合された状態のものを用いることになる。廃棄物である廃プラスチックの性質上、通常であればある程度の塩素含有プラスチックを含むものであるが、塩素含有プラスチックを含有していない廃プラスチックであっても、本発明を用いることは可能である。
【0043】
加熱処理すべきプラスチックの形状寸法は、粗く粉砕したものでよく、10cm角程度の大きさで十分であり、一般的な廃プラスチックでは、改めて粉砕する必要がなく、回収されたままの状態で処理可能であり、フィルム状、シート状、繊維状のプラスチックもそのままの形で処理できる。もちろん、細かく粉砕してもかまわないがその分処理コストが高くなる。
【0044】
〔II.溶融・混練工程〕溶融・混練工程としては、下記の工程が例示される。すなわち、廃プラスチックを反応器内や押出し機内等で160℃以上、可燃性分解ガスが生成しない温度で溶融する。可燃性分解ガスが生成しない温度は、廃プラスチックの組成により異なるが、通常の場合、上限を270℃とする。可燃性分解ガスが生成しない温度範囲では、より高温で溶融することが好ましく、好ましくは200℃以上、より好ましくは230℃以上の温度範囲内で溶融・混練する。
【0045】
混練は少なくとも、100(1/秒)以上の剪断速度で行なうものとする。図2にキャピラリーレオメーターにより測定した各種低密度ポリエチレン(MI:Melt Index=7、50、200)の150℃における剪断速度に対する溶融粘度の変化を測定した結果を示す。溶融プラスチックは非ニュートン流体であり、図2に示すように、剪断速度が小さい領域では低密度ポリエチレン(LDPE)の溶融粘度はほぼ一定である。しかし、どのMIを有するLDPEであっても剪断速度が100(1/秒)以上の領域では、剪断速度の増加とともに粘度は低下する。すなわち、混練性の観点からは剪断速度が100(1/秒)以上の領域で混練することが混練動力の低下や混練効率の向上のために極めて有効である。
【0046】
溶融し、更に混練を行なうことで、プラスチック処理物の粉砕性を向上させることができる。このことにより廃プラスチック中の異種プラスチックがお互いに混ざり合うが、これらは溶け合うことはほとんど無く、お互いの相互作用が無いため、固化後にはわずかな衝撃でバラバラになりやすく、かつ、破壊の起点が発現するため、全体として耐衝撃性が失われる。溶融・混練処理はバッチ式でも良いし、連続式でも良い。また、バッチ切り替え等の中間型でもかまわない。連続式処理装置としては、押し出し機が好ましく、混練性の観点から、二軸押し出し機がより好ましい。
【0047】
処理時間は0.5分〜30時間が適当である。処理時間が0.5分未満の場合、反応器内の温度制御が困難となると共に溶融した廃プラスチック処理物を十分混練することが困難である。また、処理時間が30時間を超える場合、処理効率が低下し経済的でない。
【0048】
溶融・混練処理に際し、熱媒体を共存させることもできる。
【0049】
〔III.冷却固化工程〕溶融処理後の廃プラスチックを、溶融プラスチック搬送装置にて、溶融プラスチックをベルトクーラーに定量供給することにより、冷却固化を行なう。除熱量は加熱処理後の温度と十分に固化するまでの温度との間のエンタルピー量と、処理速度から計算され、例えば容器包装廃プラスチックを含む場合、冷却後の中心部温度が110℃程度になるように制御すれば十分である。
【0050】
また、連続式の加熱溶融処理装置を用いる場合、装置出口でカットし、あるいはカットしないまま、空冷あるいは水中投入等の冷却を施すことができる。
【0051】
〔IV.粉砕工程〕冷却固加工程を経た固化体は、所定の粒径となるように粉砕することが好ましい。前記した本発明の方法で得られた冷却固化体であるプラスチック処理物の粉砕は、未処理のプラスチックの粉砕に比較して極めて容易に行なうことができる。すなわち、本発明の方法で得られたプラスチック処理物は、あらゆるタイプの粉砕機で粉砕可能であり、粉砕機として、例えばジョークラッシャー、ロールクラッシャー、ボールミル、遠心ミルなどを用いることができる。
【0052】
粉砕後の粒径は、プラスチック処理物の使用目的に応じて決めればよく、所定の粒径となるように粒度調整を行えば、例えば、鉄鉱石などの鉱石還元材、すなわち高炉など銑鉄を製造する竪型炉の還元材などの原燃料や、転炉の還元材、ボイラ、キルンなどの燃焼用燃料、キュポラの燃料、コークス炉の原料として使用できる。また、上記した用途以外にも固体燃料として使用できる。
【実施例1】
【0053】
以下、本発明を実施例に基づいてさらに具体的に説明する。
【0054】
〔本発明例1〕一般廃棄物系容器包装廃プラスチックを1cm程度に粉砕した後、二軸押し出し機にて180℃で溶融して、混練した。混練時の剪断速度は243(1/秒)であった(スクリュー径31mm、スクリューとバレルの隙間0.2mm、スクリュー回転数30rpm、剪断速度π×31×30/60/0.2=243)。押し出し機のベントからは水分(水蒸気)の発生が認められたが、可燃性分解ガスは確認されなかった。これをそのまま空冷し、約30mm程度の塊(固化体)を得た。
【0055】
このときの原料の仕込み量と固化体の回収量とから固化体収率を計算した。また、この固化体中の塩素濃度(固化体残存塩素濃度)と、固化体の発熱量を測定した。結果を表1に示す。
【0056】
【表1】

【0057】
この固化体を(株)ホーライ製小型粉砕機(カッターミル)にて粗粉砕して、9mmのスクリーンを通過させた。
【0058】
この粗粉砕物をホソカワミクロン(株)製ACMパルベライザー(ハンマーミル)にて微粉砕した後、試験篩で分級試験を施し、粒度分布を測定した。結果を表2に示す。
【0059】
【表2】

【0060】
粒度分布から平均粒径を算出した。まず、下記(1)式(Rosin-Rammler-Bennetの式)を変形して得られる下記(2)式に、分級試験で得られた4つのフラクションそれぞれの質量分率と篩い目の径を代入し、最小二乗法で下記式(2)の比例定数n、bを求めた。
R(Dp)=100・exp{−(Dp/De)n}・・・(1)
log{log[100/R(Dp)]}=n・logDp+log(b)・・・(2)
上記式(1)、(2)中、R(Dp)は篩い目Dpの積算篩い上質量%、Deは粒度特性数〔R(Dp)は質量%に対応する数〕、nは均等数(粉粒体の粒度分布の均一性を評価する指数)、bは定数であり、粉粒体の微細性を評価する指数を示す。
【0061】
求めたn、bから、D50(50%通過篩径)を計算し、平均粒径を算出した。平均粒径を表1に併せて示す。180℃で溶融処理を行なった本発明例1の廃プラスチック粉砕物の平均粒径は500μm未満であり、充分に微細なものであった。
【0062】
〔本発明例2〕1cm程度に粉砕した一般廃棄物系容器包装廃プラスチック70質量部と、籾殻30質量部を混合し、二軸押出機に供給した以外は本発明例1と同様の操作を行い、固化体、およびその粉砕物を製造した。固化体収率、固化体中残存塩素濃度、固化体発熱量の測定結果、平均粒径の計算結果と、微粉砕後の粒度分布の測定結果を表1、表2に併せて示す。
【0063】
本発明例1と比較して固化体収率が増加し、固化体中残存塩素濃度は低下し、固化体発熱量は幾分低下した。これは、灰分を約20mass%含む籾殻が処理後にも大部分が固化体中にとどまっていることを示している。また、粉砕後の平均粒径は小さくなり、籾殻添加による粉砕性向上効果が認められた。
【0064】
〔本発明例3〕1cm程度に粉砕した一般廃棄物系容器包装廃プラスチック70質量部と、石炭(銘柄:興隆庄)30質量部を混合し、二軸押出機に供給した以外は本発明例1と同様の操作を行い、固化体、およびその粉砕物を製造した。固化体収率、固化体中残存塩素濃度、固化体発熱量の測定結果、平均粒径の計算結果と、微粉砕後の粒度分布の測定結果を表1、表2に併せて示す。
【0065】
本発明例1と比較して固化体収率が増加し、固化体中残存塩素濃度は減少し、固化体発熱量は幾分低下した。これは、灰分を約10mass%含む石炭が処理後にも大部分が固化体中にとどまっていることを示している。また、粉砕後の平均粒径は小さくなり、石炭添加による粉砕性向上効果が認められた。本発明例2と比較しても、粉砕後の平均粒径はより小さくなっているが、これは添加した石炭自身が籾殻よりも良好な粉砕性を有することが原因である。
【0066】
〔比較例1〕二軸押し出し機による混練温度を335℃とした以外は上記の本発明例1と同様の操作を行い、固化体、およびその粉砕物を製造した。二軸押し出し機のベントからは水分のほか塩化水素ガスや有機物からなる排ガスが認められた。排ガスの成分にはテレフタル酸が検出された。固化体収率、固化体中残存塩素濃度、固化体発熱量の測定結果、平均粒径の計算結果と、微粉砕後の粒度分布の測定結果を表1、表2に併せて示す。
【0067】
比較例1では固化体中残存塩素濃度が十分に低下した。また、平均粒径は小さく、微粉化されているが、この主な原因は75μm以下の超微粉の割合が高いことであった。なお、この75μm以下の超微粉は粉塵爆発性を有する等の安全上の問題点があり、窒素封入等の対策設備費用が必要になる。
【0068】
〔比較例2〕二軸押し出し機による混練時の剪断速度を81(1/秒)(スクリュー回転数10rpm)とした以外は上記の本発明例1と同様の操作を行い、分級試験を施した。固化体収率、固化体中残存塩素濃度、固化体発熱量の測定結果、平均粒径の計算結果と、微粉砕後の粒度分布の測定結果とを表1、表2に併せて示す。
【0069】
本発明例1と比較して、混練時の剪断速度が本発明の範囲外である比較例2では、平均粒径が大きく、微粉化されていないことが明らかである。
【0070】
〔比較例3〕二軸押し出し機による混練温度を335℃とした以外は上記の本発明例2と同様の操作を行い、分級試験を施した。二軸押し出し機のベントからは水分のほか塩化水素ガスや有機物からなる排ガスが認められた。排ガスの成分にはテレフタル酸が検出された。固化体収率、固化体中残存塩素濃度、固化体発熱量の測定結果、平均粒径の計算結果と、微粉砕後の粒度分布の測定結果とを表1、表2に併せて示す。
【0071】
比較例3では平均粒径は小さく、微粉化されているが、この主な原因は75μm以下の超微粉の割合が高いことであった。なお、この75μm以下の超微粉は粉塵爆発性を有する等の安全上の問題点があり、窒素封入等の対策設備費用が必要になる。
【0072】
〔比較例4〕二軸押出機による混練時の処理温度を140℃に設定した以外は、本発明例1と同様の処理を試みた。しかし、処理開始後約5分でスクリューモーターが過負荷で停止し、処理が継続できなかった。二軸押出機を冷却後、スクリューを抜き出したところ、内部に未溶融の廃プラスチック固体が閉塞していた。
【0073】
以上の結果より、本発明例1〜3では、低温で溶融・混練を行ったにもかかわらず、いずれの粉砕物も平均粒計500μm以下に微粉砕することができたことが分かる。籾殻、石炭の添加により、粉砕性は一層向上している。本発明例1と比較例1とを比較すると、本発明例1では固化体中残存塩素濃度は低下しないが、固化体収率が増加すると共に、固化体発熱量も増加した。これにより粉砕物の生産性が向上したことが明らかである。これは、比較例1では脱塩素の過程で燃焼成分であるテレフタル酸も離脱するが、本発明例では燃焼成分が残留することが原因であると考えられる。
【0074】
一方で、比較例3を比較例1と比べると、籾殻の添加にもかかわらず平均粒径が大きくなっており、一見すると粉砕性が低下したようにも考えられる。しかし、比較例3では平均粒径は若干大きくなったものの、表2によれば比較例3は比較例1よりも150〜500μm、75〜150μmの粒径の割合が高く、粒度分布の幅は狭くなっており、粉砕性は向上している。したがって、籾殻を添加することによる、「破壊の起点を形成することでより良好な粉砕性が発現する」効果は認められた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃プラスチックを軟化溶融温度以上、かつ可燃性分解ガスが生成しない温度で溶融し、更に100(1/秒)以上の剪断速度で混練した後、冷却・固化して固化体とし、該固化体を粉砕することを特徴とする、廃プラスチック粉砕物の製造方法。
【請求項2】
軟化溶融温度が160℃、可燃性分解ガスが生成しない温度が270℃以下であることを特徴とする、請求項1に記載の廃プラスチック粉砕物の製造方法。
【請求項3】
廃プラスチックを160℃〜270℃で溶融し、更に100(1/秒)以上の剪断速度で混練した後、冷却・固化して固化体とし、該固化体を粉砕することを特徴とする、廃プラスチック粉砕物の製造方法。
【請求項4】
溶融・混練を、押し出し機を用いて行なうことを特徴とする、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の廃プラスチック粉砕物の製造方法。
【請求項5】
押し出し機が、二軸押し出し機であることを特徴とする、請求項4に記載の廃プラスチック粉砕物の製造方法。
【請求項6】
廃プラスチックの溶融・混練の前および/または溶融・混練時に、廃プラスチック以外の固体粒状物を混合し、廃プラスチックと共に混練することを特徴とする、請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の廃プラスチック粉砕物の製造方法。
【請求項7】
篩を通過させて粉砕した固化体の粒度を調整することを特徴とする、請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の廃プラスチック粉砕物の製造方法。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7のいずれかで製造される粉砕物である鉱石還元材または固体燃料。
【請求項9】
目開き0.5mmのふるいを通過することを特徴とする、請求項8に記載の鉱石還元材または固体燃料。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2010−89500(P2010−89500A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−208864(P2009−208864)
【出願日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】