説明

廃乾電池粉末を用いたセラミック着色粘土煉瓦の製造方法

【課題】廃乾電池粉末を用いたセラミック粘土煉瓦製造方法を提供する。
【解決手段】廃乾電池粉末を用いたセラミック粘土煉瓦製造方法は、廃乾電池に対する破砕、熱分解、粉砕、磁力選別過程を経て廃乾電池の有価物を分離して残った廃乾電池粉末を、セラミック粘土煉瓦を製造する過程中に着色剤として活用することに適するように加工した後、粘土粉末に加えてその含有量に応じて黒色又は暗赤色や暗褐色などに着色された煉瓦を製造する。マンガンと亜鉛を主に含む廃乾電池粉末を着色剤に加工して、粘土粉末に混合した後、その含有量に応じて黒色又は暗赤色や暗褐色などに着色された煉瓦を製造できるので、セラミック粘土煉瓦を製造する時、着色剤として使用されるMnOの購入費用を著しく低減させながら良質の煉瓦を廉価で製造することができ、特に廃乾電池をリサイクルすることで環境汚染を防止し廃棄物のリサイクルによる経済的効果を期待できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築用煉瓦や底材等として使用されるセラミック着色粘土煉瓦を製造する方法に関し、さらに詳しくは廃乾電池粉末を着色剤に加工した後、粘土混合物と混合して成形、焼成工程を経てセラミック着色粘土煉瓦を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般にセラミック粘土煉瓦は粘土(例えば、黄土や泥など)に砂又は原野土を混合した粘土混合物を細かく粉砕して捏ねた後、捏ねられた粘土混合物を真空押し出し土練機を使用して、煉瓦形状に押し出しながら所定の大きさに切断して成形した後、所定の大きさに押し出し成形された煉瓦を乾燥及び焼成加工して製造する。
【0003】
上記のようにセラミック粘土煉瓦を製造する過程中に、粘土混合物に着色剤を加えると、多彩な色の煉瓦を製造することができる。例えば、白色のカオリンを加えると白色に着色された煉瓦が製造され、二酸化チタン(TiO)を加えると黄色に着色された煉瓦が製造され、二酸化マンガン(MnO)を加えるとその含有量に応じて黒色、暗赤色又は暗褐色に着色された煉瓦(以下、「黒色煉瓦」と称する)が製造される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、上記のように多彩な色に製造される煉瓦のうち、MnOを着色剤として使用して製造される黒色煉瓦は、白色や黄色の煉瓦に比べて相対的により多くの需要があり、実際に煉瓦製造業者が最も多く製造する煉瓦である。
【0005】
したがって、黒色煉瓦の消費量の増加に伴って、着色剤、すなわち、MnOの消費量が黒色煉瓦の消費量に比例的に増加する。MnOの購入費用の節減によって、煉瓦の製造単価を低減することが切実に求められている。
【0006】
本発明の目的は、廃乾電池に対する破砕、熱分解、粉砕、磁力選別の過程を経て廃乾電池の有価物(例えば、廃乾電池の外皮用鉄材容器の破片、亜鉛、炭素棒など)を分離して、残った廃乾電池粉末をセラミック粘土煉瓦の着色剤に加工した後、含有量に応じて黒色、暗赤色又は暗褐色に着色される煉瓦を製造するために粘土粉末に廃乾電池粉末が加えられる廃乾電池粉末を用いたセラミック粘土煉瓦製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の目的を達成するために、本発明による廃乾電池粉末を用いたセラミック粘土煉瓦製造方法は、粘土70重量%と砂又は原野土20〜28重量%及び廃乾電池から獲得した粉砕粉末を煉瓦着色剤の用途として2〜10重量%を含む粘土混合物をローラ粉砕機を用いて0.5〜2mmの大きさに粉砕する過程、前記粉砕処理された粘土混合物に対して水分が18〜22%になるように混水、混練を行った後、真空押し出し土練機を使用して煉瓦形状に押し出しながら所定の大きさに切断して成形する過程、前記押し出し成形された煉瓦を、水分が0〜5%になるように、乾燥室に投入して30〜40時間の間乾燥する過程、及び前記乾燥された煉瓦を連続窯で常温〜1000℃で予熱、1000〜1200℃で焼成、1200℃〜常温で冷却の順に焼成乾燥する過程を備えることを特徴とする。
【0008】
本発明の目的を達成するために、本発明による廃乾電池粉末を用いたセラミック粘土煉瓦製造方法は、煉瓦着色剤は廃乾電池に対する破砕、熱分解、粉砕、磁力選別の過程を経て廃乾電池の有価物(例えば、廃乾電池の外皮用鉄材容器の破片、亜鉛、炭素棒など)を分離して残った粉末状から塩素(C1)成分を除去する。粉砕粉末は、炭素6〜10重量%とマンガン・亜鉛系混合化合物90〜94重量%からなる。
【発明の効果】
【0009】
上述したような本発明によれば、マンガンと亜鉛を主に含む廃乾電池粉末を煉瓦着色剤に加工した後、含有量に応じて黒色、暗赤色又は暗褐色に着色された煉瓦を製造するために粘土粉末に廃乾電池が加えられるので、従来のセラミック粘土煉瓦のうち需要が最も多く、実際にも煉瓦製造業者が最も多く製造する黒色、暗赤色又は暗褐色などに着色されたセラミック粘土煉瓦を製造する時に着色剤として使用されるMnOの購入費用を著しく低減させながら良質の煉瓦を廉価で製造することができる。特に、廃乾電池をリサイクルすることで環境汚染を防止し、廃棄物のリサイクルによる経済的効果を期待できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。本発明によるセラミック着色粘土煉瓦製造方法によれば、廃マンガン電池又は廃アルカリ乾電池のような廃乾電池粉末を煉瓦着色剤に加工する。加工された乾電池粉末は、粘土粉末と混合して使用して、その含有量に応じて黒色、暗赤色又は暗褐色に着色された煉瓦を製造できる。
【0011】
先ず、着色剤として廃乾電池粉末を用いるために、廃乾電池粉末の成分を検討する。通常のマンガン電池は正極及び負極作用物質としてMnOとZnとを含み、電解液としてNHCl又はZnClなどの中性塩水溶液を含み、アルカリ乾電池は正極及び負極作用物質としてMnOとZnとを含み、電解液としてKOH水溶液を含む。
【0012】
また、鉄材被覆電池は、外皮としての鉄缶を含み、マンガン電池とアルカリ乾電池の全生産量の80%を占める。この鉄材被覆電池は、破砕行程を用いて解体される。ランタン用マンガン電池(電池の大きさの規格4R25、以下「ランタン電池」と称する)は、外皮としての紙又はポリプロピレン樹脂を含み、また、互いに連結されて6Vになり、各々1.5Vを持ち亜鉛缶に包まれている1組4個のマンガン電池から成る。このランタン電池は、炭素棒を回収し、亜鉛も溶融した後、冷却して分離、回収するための解体方法として熱分解方式を適用する。
【0013】
このような廃乾電池は、放電及び破砕による電解液との混合によって様々な化学反応が複合的に起こることになるため、鉄、亜鉛、炭素棒、包装材、亜鉛酸化物、MnO、Mn(OH)、カルシウム酸化物などが複合的に混在している。
【0014】
塩素(Cl)成分は、煉瓦の着色剤として適さない。そのため、塩素成分は、廃乾電池粉末に含まれる塩素系化合物(例えば、ZnCl、NHClなど)から除去されなければならない。塩素成分は、煉瓦を焼成する時、昇温される過程において、弱い結合力のため塩素系化合物から分離し、酸化する。結果物であるClガスとHClガスとが大気中に放出されるが、このようなガスは大気汚染物質に分類されているため、その排出を規制している。そのため、塩素は、廃乾電池粉末から最初に取り除かれなければならない。
【0015】
上記のように、塩素系化合物(ZnCl、NHClなど)は、その結合力が弱く300℃程度の低温でも塩素成分が分離し、酸化するので、電熱線が巻かれていて300℃以上に昇温されたスクリューコンベアの内部に廃乾電池粉末を移送させて熱処理を行うと、ClガスとHClガスとを蒸発させることができる。
【0016】
この時、ClガスとHClガスとが蒸発した最終的な廃乾電池粉末は目的の煉瓦着色剤への加工が完了したものであり、蒸発したガスは排出ガス精製方式の一つである半乾式吸収法でCa(OH)水溶液に通過させてCaClに沈殿させてリサイクルする。化学反応式は次の化学反応式のとおりである。
【0017】
Clの全反応は、次の反応式1のとおりである。
【0018】
【化1】

【0019】
HClの全反応は、次の反応式2のとおりである。
【0020】
【化2】

【0021】
本発明による粘土煉瓦製造方法を具体的に説明する前に、廃乾電池粉末を獲得する過程について説明すれば次のとおりである。本発明では廃乾電池粉末を獲得するために、先ず、収集された廃乾電池を、その形状によって鉄材被覆電池とランタン電池とに選別する。鉄材被覆電池は、破砕機で破砕してから、粉砕機で粉砕して微粉化した後、粒度選別用金網を具備した振動選別機を用いて金網の下部に落ちた1次粉末を獲得することになる。
【0022】
一方、金網の上に残る大きい粉末及び可燃性廃棄物と電池外皮用鉄材の破片は、磁力選別機を用いて鉄材の破片は取り除き、可燃性の最終残余物はランタン電池と共に熱分解炉に投入して熱分解によって完全炭化させた後、炭素棒及び亜鉛など塊状の物質を適正な方法で回収、リサイクルして残った残余物を粉砕して2次粉末を獲得することになる。
【0023】
上記の工程で廃乾電池から獲得した1次、2次粉末を半乾式吸収法で熱処理加工した煉瓦着色剤は炭素及びマンガンと亜鉛を主に含むマンガン・亜鉛系混合化合物からなる。マンガン・亜鉛系混合化合物は、好ましくは炭素6〜10重量%とマンガン・亜鉛系混合化合物90〜94重量%とからなる。
【0024】
上記のように煉瓦着色剤が加工されて用意が終わると、先ず黄土や泥などの粘土70重量%と、砂又は原野土24〜28重量%と、2〜10重量%の煉瓦着色剤とを混合した粘土混合物をローラ粉砕機を用いて0.5〜2mmの大きさに粉砕する。
【0025】
次に、上記のように粉砕処理された粘土混合物を水分が18〜22%になるように混水、混練を行った後、真空押し出し土練機を使用して煉瓦形状に押し出しながら所定の大きさに切断して成形する。
【0026】
次に、上記のように押し出し成形された煉瓦を、水分が0〜5%になるように、乾燥室に投入して30〜40時間の間乾燥する。
【0027】
最後に、上記のように乾燥された煉瓦を連続窯で常温〜1000℃で予熱、1000〜1200℃で焼成、1200℃〜常温で冷却することでセラミック粘土煉瓦の製造が完了する。
【0028】
上記の廃乾電池粉末から塩素を除去して煉瓦着色剤を得る方法として、「半乾式吸収法」を適用する熱処理法を説明したが、本発明はそのことに限定されない。例えば、廃乾電池粉末を水で洗浄して乾燥する「水処理法」等様々な方法が適用され得る。
【0029】
以下、本発明による廃乾電池粉末を用いたセラミック粘土煉瓦製造方法の好ましい一実施例を示す。
【0030】
(実施例)
赤粘土70重量%と、原野土、マンガン及び亜鉛25重量%とを主に含む鉄材被覆廃乾電池の粉末は、煉瓦着色剤に熱処理加工される。煉瓦着色剤の5重量%は、粘土粉末が混合される。混合した粘土混合物をローラ粉砕機を用いて2mmの大きさに粉砕した。粉砕処理された粘土混合物に対して水分が20%になるように混水、混練を行った後、真空押し出し土練機を使用して煉瓦形状に押し出しながら所定の大きさに切断して成形し、連続して押し出し成形された煉瓦を乾燥室に投入して30〜40時間の間水分が5%になるように乾燥した。乾燥された煉瓦を連続窯で常温〜1000℃で予熱、1000〜1200℃で焼成、1200℃〜常温で冷却して暗褐色のセラミック粘土煉瓦を製造した。
【0031】
煉瓦着色剤粉末5重量%の成分は、炭素8.87重量%とマンガン・亜鉛系混合化合物91.13重量%とからなる。マンガン・亜鉛系混合化合物は、マンガン42.18重量%、亜鉛49.14重量%、カルシウム8.68重量%からなる。
【0032】
この実施形態によって製造されたセラミック粘土煉瓦に対して韓国工業規格(KSL 4201)に基づいて圧縮強度(20.59N/mmを超える)と吸収率(10%未満)を測定し、結果は表1に示される。結果は、表に示すように韓国工業規格による基準を満足することを確認する。
【0033】
【表1】

【0034】
以上で説明した廃乾電池粉末を用いたセラミック粘土煉瓦製造方法は、上記の実施形態に限定されない。種々の改良されたもの、変形したものを本発明から作ることが可能であることは、当業者にとって明らかである。従って、本発明は、添付の請求項、請求項と均等なものの範囲内にあって、この提供された発明の改良されたもの、変形したものを対象とすることを意味する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘土70重量%と砂又は原野土20〜28重量%、及び廃乾電池から獲得した粉砕粉末を煉瓦着色剤の用途として2〜10重量%混合した粘土混合物をローラ粉砕機を用いて0.5〜2mmの大きさに粉砕する過程と、
前記粉砕処理された粘土混合物に対して水分が18〜22%になるように混水、混練を行った後、真空押し出し土練機を使用して煉瓦形状に押し出しながら所定の大きさに切断して成形する過程と、
前記押し出し成形された煉瓦を、水分が0〜5%になるように、乾燥室に投入して30〜40時間の間乾燥する過程と、
前記乾燥された煉瓦を連続窯で常温〜1000℃で予熱、1000〜1200℃で焼成、1200℃〜常温で冷却する過程と、を備えることを特徴とする廃乾電池粉末を用いたセラミック粘土煉瓦製造方法。
【請求項2】
前記粘土混合物を粉砕する過程で使用される粉砕粉末は、破砕、熱分解、粉砕、磁力選別の過程を経て廃乾電池の有価物を分離して残った粉砕粉末から塩素(Cl)成分を除去して廃乾電池から獲得されることを特徴とする請求項1に記載の廃乾電池粉末を用いたセラミック粘土煉瓦製造方法。
【請求項3】
前記粉砕粉末は、破砕工程、粉砕工程、及び300℃以上で熱処理する工程、または塩素(Cl)成分を除去するための水を使った洗浄工程を経て、廃乾電池から獲得され、
前記粉砕粉末は、炭素及びマンガンと亜鉛とを主に含むマンガン・亜鉛系混合化合物を含み、
前記粉砕粉末は、好ましくは炭素6〜10重量%とマンガン・亜鉛系混合化合物90〜94重量%とを含むことを特徴とする請求項1または2に記載の廃乾電池粉末を用いたセラミック粘土煉瓦製造方法。

【公表番号】特表2010−520147(P2010−520147A)
【公表日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−552578(P2009−552578)
【出願日】平成20年2月20日(2008.2.20)
【国際出願番号】PCT/KR2008/000982
【国際公開番号】WO2008/108544
【国際公開日】平成20年9月12日(2008.9.12)
【出願人】(509247560)
【Fターム(参考)】