説明

廃棄物のセメント燃料化方法及び燃料化装置

【課題】セメント工場の既存の設備等を利用して設備費を抑えながら、廃棄物を発熱量が高く燃焼性のよいセメント焼成用燃料として効率的に利用する。
【解決手段】廃棄物Wを発酵させる発酵処理装置2と、発酵処理物W1を粗砕する粗砕機3と、粗砕物W2のうち所定の大きさ以下の物を取り除く選別機4と、選別機で選別された所定の大きさを超える篩上物W3を乾燥させる乾燥機5と、乾燥機による乾燥物W4を破砕する破砕機6と、破砕機による破砕物W5を、セメントキルン22又は仮焼炉23へ吹き込む吹込装置7とを備える廃棄物のセメント燃料化装置1等。篩上物の乾燥に使用した後のガスG4を、該ガスの臭気濃度により、セメントキルンの主バーナー25の燃焼用空気A4、仮焼炉のバーナーの燃焼用空気A5、クリンカクーラー21の冷却用空気A3、又は塩素バイパス抽気ガスの冷却用空気A1のいずれかに利用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家庭ごみ等の廃棄物をセメント焼成用燃料として有効利用するための廃棄物のセメント燃料化方法及び燃料化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、厨芥等の廃棄物の処理量が増大する一方であるため、その処理方法及び有効利用方法に関して多くの試みがなされている。一方、セメント製造工場は、セメントの需要に応じて操業状態が変動し、セメントの需要が少ない時期には焼成装置等のうち一部の運転を停止することもあり、それらの活用が課題となっている。
【0003】
そこで、特許文献1には、セメント製造工場に備えられるセメントキルン等を廃棄物の処理のために有効活用する方法として、ごみ袋に収容された家庭ごみ等を、ごみ袋を破袋せず、そのままロータリーキルン又はロータリードライヤーに投入して発酵処理する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−191059号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献1に記載の方法では、家庭ごみ等を脱臭、減容化するために発酵処理した後、所定の大きさ以下に破砕し、セメントキルンの窯尻又は仮焼炉で燃料化しているが、破砕物の水分が45%程度と高い上、不燃物を含むために発熱量が2500kcal/kg程度と低く、燃え切りも悪く、燃焼性に問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、上記従来の技術における問題点に鑑みてなされたものであって、セメント工場の既存の設備等を利用して設備費を抑えながら、廃棄物を発熱量が高く燃焼性のよいセメント焼成用燃料として効率的に利用することのできる方法等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明は、廃棄物のセメント燃料化方法であって、廃棄物を発酵させ、該発酵処理物を粗砕し、該粗砕物のうち所定の大きさを超える物を乾燥させ、該乾燥物を破砕し、該破砕物をセメントキルン又は仮焼炉へ吹き込むことを特徴とする。ここで、上記廃棄物として、紙、布類、合成樹脂、木竹わら、厨芥、プラスチック類等の家庭ごみ、事業系の一般廃棄物、動植物性残渣、食品残渣物が付着した廃プラ容器類等を処理することができる。
【0008】
そして、本発明によれば、廃棄物の発酵処理物を粗砕し、所定の大きさを超える物を乾燥させることで発熱量の高いセメント焼成用燃料を得ることができ、さらに乾燥物を破砕することで燃焼性が向上し、セメントキルン又は仮焼炉で効率よく燃焼させることができる。セメントキルンに吹き込む場合には、主バーナーから吹き込むこともでき、微粉炭等の主燃料との燃料代替率を向上させることができる。
【0009】
上記廃棄物のセメント燃料化方法において、前記所定の大きさを、最大粒子径で20mm以上100mm以下とすることができる。
【0010】
また、上記廃棄物のセメント燃料化方法において、前記廃棄物の乾燥に使用した後のガスを、該ガスの温度により、前記セメントキルンの主バーナーの燃焼用空気、前記仮焼炉のバーナーの燃焼用空気、クリンカクーラーの冷却用空気、又は塩素バイパス抽気ガスの冷却用空気のいずれかに利用することができる。これにより、廃棄物を乾燥した後の廃熱をセメント製造に有効利用することができる。
【0011】
さらに、前記廃棄物の乾燥に使用した後のガスを、該ガスの臭気濃度により、前記セメントキルンの主バーナーの燃焼用空気、前記仮焼炉のバーナーの燃焼用空気、クリンカクーラーの冷却用空気、又は塩素バイパス抽気ガスの冷却用空気のいずれかに利用することができる。これにより、乾燥後のガスの臭気に応じて適切に臭気処理を行いながら、廃棄物を乾燥した後の廃熱をセメント製造に有効利用することができる。
【0012】
また、前記発酵処理の対象となる廃棄物は、ごみ袋に収容された廃棄物を含み、該ごみ袋を破袋せずに、そのままロータリーキルン又はロータリードライヤーに投入して発酵処理することができる。これにより、セメント工場の既存の設備等を利用して設備費を抑えながら家庭ごみ等を燃料化することができる。
【0013】
上記廃棄物のセメント燃料化方法において、前記廃棄物の乾燥用熱源として、塩素バイパス抽気ガスを冷却する冷却器からの廃熱を利用することができ、さらに効率よく廃棄物をセメント燃料化することができる。
【0014】
また、本発明は、廃棄物のセメント燃料化装置であって、廃棄物を発酵させる発酵処理装置と、該発酵処理装置による発酵処理物を粗砕する粗砕機と、該粗砕機による粗砕物のうち所定の大きさ以下の物を取り除く選別機と、該選別機で選別された所定の大きさを超える物を乾燥させる乾燥機と、該乾燥機による乾燥物を破砕する破砕機と、該破砕機による破砕物を、セメントキルン又は仮焼炉へ吹き込む吹込装置とを備えることを特徴とする。本発明によれば、上記発明と同様に、廃棄物から発熱量の高い燃料を得てセメントキルン又は仮焼炉で効率よく燃焼させることができ、燃料代替率を向上させることができる。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、本発明によれば、セメント工場の既存の設備等を利用して設備費を抑えながら、廃棄物を発熱量が高く燃焼性のよいセメント焼成用燃料として効率的に利用することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明にかかる廃棄物のセメント燃料化装置が付設されたセメント焼成装置を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0018】
図1は、本発明にかかる廃棄物のセメント燃料化装置(以下、「燃料化装置」という)1を付設したセメント焼成装置(以下、「焼成装置」という)20を示し、この焼成装置20は、大別して、セメントキルン22と、仮焼炉23と、最下段サイクロン24を備えるプレヒータ(不図示)と、クリンカクーラー21と、塩素バイパスシステム30等から構成される。
【0019】
セメントキルン22、仮焼炉23等を含む焼成装置20は、セメントを製造するにあたり一般的に用いられているものである。セメントキルン22には、微粉炭等の主燃料を吹き込むための主バーナー25が備えられる。また、仮焼炉23にも、バーナー(不図示)より、微粉炭や廃棄物由来の燃料等が吹き込まれる。
【0020】
塩素バイパスシステム30は、セメントキルン22の燃焼排ガスから塩素分を除去するために一般に用いられるものであって、窯尻22aから燃焼排ガスの一部を冷却しながら抽気するプローブ31と、抽気ガスGを、粗粉Cと、微粉(塩素バイパスダスト)F及びガスG1とに分離するサイクロン32と、微粉F及びガスG1を冷却する冷却器33と、微粉Fを回収するためのバグフィルター34等を備える。
【0021】
燃料化装置1は、廃棄物Wを発酵させる発酵処理装置2と、発酵処理物W1を粗砕する粗砕機3と、粗砕物W2をその大きさによって選別する選別機4と、選別機4で選別された所定の大きさを超える篩上物W3を乾燥させる乾燥機5と、乾燥物W4を破砕する破砕機6と、破砕物W5をセメントキルン22の主バーナー25に吹き込む吹込装置7等を備える。
【0022】
発酵処理装置2は、家庭ごみ等の廃棄物Wを発酵させるために備えられ、特許文献1に記載の発酵処理装置と同様、内張り煉瓦を撤去したセメント焼成用のロータリーキルンやロータリードライヤー等であって、セメント製造工場に既存のものを有効利用することができる。
【0023】
粗砕機3は、発酵処理物W1を粗砕するために備えられ、低速2軸式の破砕機等を用いることができる。
【0024】
選別機4は、粗砕物W2をその大きさによって選別するために備えられ、例えば、目開きが20mmのトロンメル等を用いることができる。
【0025】
乾燥機5は、選別機4で選別された20mmを超える篩上物W3を乾燥させるために備えられ、ロータリードライヤー等を用いることができる。
【0026】
破砕機6は、乾燥物W4を破砕するために備えられ、回転刃及び固定刃を備えたスクリーン付き1軸式破砕機等を用いることができる。
【0027】
吹込装置7は、破砕物W5をセメントキルン22の主バーナー25に吹き込むために備えられ、ブロワー等が用いられる。
【0028】
尚、破砕物W5に鉄、ステンレス、アルミニウム等の金属類(不燃物)が多く含まれる場合には、これらの異物を除去するため、粗砕機3や破砕機6の前段又は後段に、高ガウス選別機やアルミニウム選別機等の異物除去装置を設置する。
【0029】
次に、上記構成を有する燃料化装置1の動作について、図1を参照しながら説明する。尚、以下の説明においては、家庭から回収したごみ袋に収容された、紙、布類、合成樹脂、木竹わら、厨芥、プラスチック類等の廃棄物をセメント燃料化する場合を例にとって説明する。
【0030】
焼成装置20では、後述する燃料化装置1の運転と併行してセメントを製造する。最下段サイクロン24を含むプレヒータでセメント原料の予熱を行い、仮焼炉23で仮焼し、セメントキルン22の主バーナー25から微粉炭等の主燃料を吹き込んでセメント原料を焼成し、得られたセメントクリンカをクリンカクーラー21で冷却する。
【0031】
また、塩素バイパスシステム30において、プローブ31で窯尻22aからセメントキルン22の燃焼排ガスの一部を冷却しながら抽気し、サイクロン32によって抽気ガスGを粗粉Cと、微粉F及びガスG1とに分離し、冷却器33で微粉F及びガスG1を冷却した後、微粉Fをバグフィルター34で回収する。サイクロン32で分離された塩素含有率の低い粗粉Cはセメントキルン系に戻され、バグフィルター34によって回収された塩素含有率の高い微粉Fはダストタンク(不図示)に貯留される。バグフィルター34から排出された排ガスG3は、排気ファン(不図示)を経てセメントキルン22に付設されたプレヒータ等に戻される。
【0032】
一方、トラック等で回収した家庭ごみ等を、ごみ袋を破袋せず、そのまま廃棄物Wとして発酵処理装置2内で発酵処理する。発酵処理は、ロータリーキルンを用いた場合、キルンを回転させて3日程度行うが、有害な微生物が死滅していれば、3日未満であってもよい。
【0033】
次に、上記発酵処理物W1を粗砕機3で200〜400mm程度以下に粗砕した後、粗砕物W2を選別機4で最大粒子径が20mm以下の篩下物W3’と、20mmを超える篩上物W3に選別する。ここで、20mmを境界として粗砕物W2を選別するのは、20mmを超える篩上物W3に、廃プラスチック等の発熱量の高い物が多く含まれるからである。尚、篩下物W3’は、肥料や補助燃料としてそのまま使用することができる。
【0034】
篩上物W3を乾燥機5に供給し、塩素バイパスシステム30の冷却器33からの熱ガスG2を利用して乾燥させる。これにより、篩上物W3の水分含有率が40%程度から5%程度以下まで低下する。
【0035】
一方、乾燥機5から排出された乾燥後のガスG4は、その温度又は臭気濃度によって、セメントキルン22のバーナー25の燃焼用空気A4、仮焼炉23のバーナー(不図示)の燃焼用空気A5、クリンカクーラー21の冷却用空気A3、又はプローブ31における塩素バイパス抽気ガスの冷却用空気A1のいずれかに利用する。
【0036】
この際、ガスG4の温度が高い場合には、セメントキルン22のバーナー25の燃焼用空気A4、仮焼炉23のバーナーの燃焼用空気A5として利用し、低い場合には、クリンカクーラー21の冷却用空気A3、プローブ31における塩素バイパス抽気ガスの冷却用空気A1として利用する。また、臭気濃度が高い場合には、セメントキルン22のバーナー25の燃焼用空気A4、仮焼炉23のバーナーの燃焼用空気A5、クリンカクーラー21の冷却用空気A3として利用し、臭気濃度が低い場合には、プローブ31における塩素バイパス抽気ガスの冷却用空気A1として利用することができる。尚、ガスG4の臭気濃度が1000〜10000(臭気指数30〜40)と、敷地境界の規制の範囲を超える強いにおいであっても、セメントキルン22のバーナー25の燃焼用空気A4として700℃以上の雰囲気に晒すことで、臭気成分を分解することができる。
【0037】
次に、乾燥機5による乾燥物W4を破砕機6によって最大粒子径15mm程度以下に破砕し、発熱量が4000〜6000kcal/kgの破砕物W5を得て、吹込装置7を介してセメントキルン22の主バーナー25に吹き込み、セメント焼成用燃料として微粉炭等の主燃料の代替燃料として利用する。
【0038】
尚、上記実施の形態においては、家庭から回収したごみ袋に収容された廃棄物をセメント燃料化する場合を例示したが、事業系の一般廃棄物、動植物性残渣、食品残渣物が付着した廃プラ容器類等を処理することもできる。
【0039】
また、破砕機6による破砕物W5をセメントキルン22の主バーナー25に吹き込んで主燃料の代替燃料として利用したが、バーナーを介して仮焼炉23に吹き込んで燃料として利用することもできる。
【符号の説明】
【0040】
1 廃棄物のセメント燃料化装置
2 発酵処理装置
3 粗砕機(1次破砕機)
4 選別機
5 乾燥機
6 破砕機(2次破砕機)
7 吹込装置
20 セメント焼成装置
21 クリンカクーラー
22 セメントキルン
22a 窯尻
23 仮焼炉
24 最下段サイクロン
25 主バーナー
30 塩素バイパスシステム
31 プローブ
32 サイクロン
33 冷却器
34 バグフィルター
A1〜A3 冷却空気
A4、A5 燃焼用空気
C 粗粉
F 微粉
G 抽気ガス
G1 ガス
G2 熱ガス
G3 排ガス
G4 (乾燥後の)ガス
W 廃棄物
W1 発酵処理物
W2 粗砕物
W3 篩上物
W3’ 篩下物
W4 乾燥物
W5 破砕物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃棄物を発酵させ、
該発酵処理物を粗砕し、
該粗砕物のうち所定の大きさを超える物を乾燥させ、
該乾燥物を破砕し、
該破砕物をセメントキルン又は仮焼炉へ吹き込むことを特徴とする廃棄物のセメント燃料化方法。
【請求項2】
前記所定の大きさは、最大粒子径で20mm以上100mm以下であることを特徴とする請求項1に記載の廃棄物のセメント燃料化方法。
【請求項3】
前記廃棄物の乾燥に使用した後のガスを、該ガスの温度により、前記セメントキルンの主バーナーの燃焼用空気、前記仮焼炉のバーナーの燃焼用空気、クリンカクーラーの冷却用空気、又は塩素バイパス抽気ガスの冷却用空気のいずれかに利用することを特徴とする請求項1又は2に記載の廃棄物のセメント燃料化方法。
【請求項4】
前記廃棄物の乾燥に使用した後のガスを、該ガスの臭気濃度により、前記セメントキルンの主バーナーの燃焼用空気、前記仮焼炉のバーナーの燃焼用空気、クリンカクーラーの冷却用空気、又は塩素バイパス抽気ガスの冷却用空気のいずれかに利用することを特徴とする請求項1又は2に記載の廃棄物のセメント燃料化方法。
【請求項5】
前記発酵処理の対象となる廃棄物は、ごみ袋に収容された廃棄物を含み、該ごみ袋を破袋せずに、そのままロータリーキルン又はロータリードライヤーに投入して発酵処理することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の廃棄物のセメント燃料化方法。
【請求項6】
前記廃棄物の乾燥用熱源として、塩素バイパス抽気ガスを冷却する冷却器からの廃熱を利用することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の廃棄物のセメント燃料化方法。
【請求項7】
廃棄物を発酵させる発酵処理装置と、
該発酵処理装置による発酵処理物を粗砕する粗砕機と、
該粗砕機による粗砕物のうち所定の大きさ以下の物を取り除く選別機と、
該選別機で選別された所定の大きさを超える物を乾燥させる乾燥機と、
該乾燥機による乾燥物を破砕する破砕機と、
該破砕機による破砕物を、セメントキルン又は仮焼炉へ吹き込む吹込装置とを備えることを特徴とする廃棄物のセメント燃料化装置。

【図1】
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【公開番号】特開2011−79709(P2011−79709A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−234007(P2009−234007)
【出願日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【出願人】(000000240)太平洋セメント株式会社 (1,449)
【Fターム(参考)】