説明

廃棄物処分場の漏水検知・補修システム及び漏水検知・補修方法

【課題】遮水シートが損傷しても地盤への漏水を防止し、かつ、漏水した箇所を簡便に補修することが可能な漏水検知・補修システム及び漏水検知・補修方法を提供する。
【解決手段】廃棄物処分場10の漏水検知・補修システム12は、上下二層に配置された遮水シート19、20の対向する面同士を間隔をおいて融着等により接合して、複数の袋状の領域24に区分けされ二重遮水シート18と、袋状の各領域24内に設置される通水材21と、袋状の各領域24内に設置される測定電極E1と、袋状の各領域24に連通し、各領域24内に止水材44を注入するための注入用ホース30と、袋状の各領域24に連通し、止水材44が排出されることを確認するための確認用ホース32とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄物処分場の遮水工として使用される遮水シートの漏水検知・補修システム及び漏水検知・補修方法に関し、特に、遮水シートの損傷を電気的な測定手段にて検知する場合についての漏水検知・補修システム及び漏水検知・補修方法に関する。
【背景技術】
【0002】
廃棄物処分場の遮水工として使用されている遮水シートが損傷を受けた場合には、廃棄物処分場のピット内に貯留している水が損傷箇所を通じて地盤内に浸透し、地下水を汚染する可能性がある。したがって、廃棄物処分場等から地盤への漏水を厳しく管理する必要がある。
【0003】
例えば、廃棄物処分場から地盤への漏水を検知する方法として、廃棄物処分場のピット内の底面地盤に敷設された遮水シートの表面に複数配置された測定電極により、遮水シートの損傷箇所を介して漏洩する漏洩電流を検知し、遮水シートの損傷箇所を検知する方法が一般的に用いられている。
【0004】
しかし、遮水シートの損傷箇所を補修する場合は、廃棄物処分場のピット内に堆積された廃棄物を掘り起こし、遮水シートを露出させて補修しなければならず、手間と時間がかかり補修のコストが高いという問題点があった。
【0005】
そこで、特許文献1には、廃棄物処分場の遮水シートの損傷箇所を検知するとともに、廃棄物を掘り起こすことなく、遮水シートの損傷を補修可能な漏水検知・補修システムが開示されている。このシステムでは、測定用電極の設置された遮水シートに複数の止水材注入用ホース及びこれと対をなす注入確認用ホースが接続されており、測定用電極にて漏水を検知すると漏水位置近傍の注入用ホースを通じて止水材を注入して漏水を停止させるとともに、注入確認用ホースよりこの止水材を排出することにより漏水位置近傍への止水材の充填状況を確認することができる。
【特許文献1】特開2005−262021号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の漏水検知・補修システムでは、遮水シートが損傷すると同時にピット内に貯留している水が地盤へ漏水するために、漏水を検知して止水材を充填するまでの間に漏水が生じるおそれがあるという問題点があった。
【0007】
そこで、本発明は、上記のような従来の問題に鑑みなされたものであって、遮水シートが損傷しても地盤への漏水を防止し、かつ、損傷した箇所を簡便に補修することが可能な漏水検知・補修システム及び漏水検知・補修方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するため、本発明の廃棄物処分場の漏水検知・補修システムは、廃棄物処分場の内部に敷設された遮水シートの損傷を電気的に検知し、前記遮水シートに接続されたホースを通じて止水材を注入して遮水シートの損傷箇所を補修するための廃棄物処分場の漏水検知・補修システムであって、上下二層に配置された遮水シートの対向する面同士が間隔をおいて接合されることにより内部が複数の袋状の領域に区分けされた二重遮水シートと、前記袋状の各領域内に設置され、前記二重遮水シートの損傷を検知するための測定電極と、前記袋状の各領域に連通し、前記袋状の領域内に止水材を注入するための注入用ホースとを備えることを特徴とする(第1の発明)。
【0009】
本発明による廃棄物処分場の漏水検知・補修システムによれば、複数の袋状の領域に区分けされた二重遮水シートと、袋状の各領域内にそれぞれ設置された測定電極とを備えているために、二重遮水シートの上下二層の遮水シートのうちいずれか一方の遮水シートが損傷すると、損傷箇所の存在する袋状の領域内の測定電極へ漏洩電流が通じ、この漏洩電流を検知することにより、二重遮水シートの損傷及び損傷箇所を正確に検知することが可能となる。
【0010】
また、二重遮水シートは複数の袋状の領域に区分けされていることで、遮水シートが損傷しても、損傷箇所の存在する袋状の領域のみに止水材を充填すればよい。このため、従来の損傷箇所の周囲全体に止水材を充填する場合と比べてと止水材の注入量を削減することが可能となる。さらに、止水材を注入しつつ、漏洩電流を測定するために、損傷箇所が止水材により充填されると漏洩電流が検知できなくなって、損傷箇所が補修されたことを確認することが可能となる。そして、漏洩電流が検知できなくなった時点で止水材の注入を停止することにより、止水材の注入量を必要最小限にできるため、止水材のコストを大幅に削減することが可能となる。
【0011】
そして、上下二層のうちいずれか一方の遮水シートが損傷しても、他方の遮水シートが存在しているために、廃棄物処分場の内部と地盤とが連通することがなく、廃棄物処分場のピット内に貯留している水が地盤へ漏水することはない。
【0012】
さらに、各領域内に止水材を注入するための注入用ホースを備えているために、二重遮水シートの損傷が検知されると、直ちに止水材を注入することができ、従来の廃棄物を掘り起こして二重遮水シートを補修する場合と比べて、簡便に、かつ迅速に二重遮水シートの損傷を補修することが可能となる。
【0013】
第2の発明は、第1の発明において、前記袋状の各領域内に設置され、前記上下の遮水シート間の隙間を保持するための隙間保持材を更に備えることを特徴とする。
本発明による廃棄物処分場の漏水検知・補修システムによれば、二重遮水シートの遮水シート間の隙間を保持するための隙間保持材を備えることにより、止水材が袋状の領域内を容易に移動することができるので、低い注入圧で止水材を充填することが可能となる。したがって、止水材注入ポンプの吐出出力、注入用ホースの耐圧等の能力の小さいものを使用することができるために、止水材注入設備の投資費を低減することが可能となる。
【0014】
第3の発明は、第1又は2の発明において、前記袋状の各領域に連通し、前記袋状の領域内に注入された止水材が排出されることにより前記袋状の領域内に止水材が充填されたことを確認するための確認用ホースを更に備えることを特徴とする。
本発明による廃棄物処分場の漏水検知・補修システムによれば、二重遮水シートを補修する際に、袋状の領域内に注入された止水材が確認用ホースを通じて排出することにより、袋状の領域内が止水材で充填されたことを直ちに目視確認でき、補修の信頼性を向上させることが可能となる。
【0015】
第4の発明は、第1〜第3のいずれかの発明において、前記二重遮水シートの上側又は下側の少なくともいずれかは、前記二重遮水シートを保護するための保護マットで覆われていることを特徴とする。
本発明による廃棄物処分場の漏水検知・補修システムによれば、二重遮水シートは保護マットで覆われているために、廃棄物処分場のピット内で作業するダンプトラックやショベルカー等の建設重機の走行や旋回による注入用ホース、確認用ホース、二重遮水シート等の損傷を防止することが可能となる。
【0016】
第5の発明は、第1又は4の発明において、前記止水材は、電気絶縁性を有することを特徴とする。
本発明による廃棄物処分場の漏水検知・補修システムによれば、二重遮水シートの損傷箇所に電気絶縁性を有す止水材が充填されると漏洩電流が流れなくなるために、止水が完全に行われているか否かを簡便、かつ確実に確認することができる。
【0017】
第6の発明の廃棄物処分場の漏水検知・補修方法は、廃棄物処分場の内部に敷設された遮水シートの損傷を電気的に検知し、前記遮水シートに接続されたホースを通じて止水材を注入して遮水シートの損傷箇所を補修する廃棄物処分場の漏水検知・補修方法において、上下二層に配置された遮水シートの対向する面同士が間隔をおいて接合されることにより内部が複数の袋状の領域に区分けされた二重遮水シートと、前記袋状の各領域内に設置され、前記遮水シート間の隙間を保持するための隙間保持材と、前記袋状の各領域内に設置され、前記二重遮水シートの損傷を検知するための測定電極と、前記袋状の各領域に連通し、前記袋状の領域内に止水材を注入するための注入用ホースとを備えた漏水検知・補修システムを用い、前記二重遮水シートの損傷による漏洩電流を前記測定電極で検知することにより、前記損傷の存在する袋状の領域を特定し、前記測定電極による測定を継続しつつ、前記ホースを通じて電気絶縁性を有する止水材を前記特定した袋状の領域内に注入し、前記測定電極による測定にて漏洩電流が検知されなくなると、前記止水材の注入を停止することを特徴とする。
【0018】
第7の発明の廃棄物処分場の漏水検知・補修方法は、廃棄物処分場の内部に敷設された遮水シートの損傷を電気的に検知し、前記遮水シートに接続されたホースを通じて止水材を注入して遮水シートの損傷箇所を補修する廃棄物処分場の漏水検知・補修方法において、上下二層に配置された遮水シートの対向する面同士が間隔をおいて接合されることにより内部が複数の袋状の領域に区分けされた二重遮水シートと、前記袋状の各領域内に設置され、前記遮水シート間の隙間を保持するための隙間保持材と、前記袋状の各領域内に設置され、前記二重遮水シートの損傷を検知するための測定電極と、前記袋状の各領域に連通し、前記袋状の領域内に止水材を注入するための注入用ホースと、前記袋状の各領域に連通し、前記袋状の領域内に注入された止水材が排出されることにより前記袋状の領域内に止水材が充填されたことを確認するための確認用ホースとを備えた漏水検知・補修システムを用い、前記二重遮水シートの損傷による漏洩電流を前記測定電極で検知することにより、前記損傷の存在する袋状の領域を特定し、前記測定電極による測定を継続しつつ、前記ホースを通じて電気絶縁性を有する止水材を前記特定した袋状の領域内に注入し、前記測定電極による測定にて漏洩電流が検知されなくなるとともに、前記確認用ホースより前記止水材が排出すると、前記止水材の注入を停止することを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、廃棄物処分場内の遮水シートが損傷しても地盤への漏水を確実に防止でき、かつ、遮水シートの損傷を簡便に補修することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を用いて詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る廃棄物処分場10の全体を示す概略図である。
【0021】
図1に示すように、廃棄物処分場10は、例えば、山間部の広範な谷間や、掘削土工により、周囲地盤11の底面とその左右に二段の傾斜地からなる凹地に造成し、その底面及び傾斜面に二重遮水シート18を敷設して漏水検知・補修システム12を造成したものである。二重遮水シート18は、複数の領域24に区分けされており、各領域24はそれぞれ気密状態に封止されている。
【0022】
図2は、本実施形態に係る廃棄物処分場10の漏水検知・補修システム12を示す断面図である。
【0023】
図2に示すように、二重遮水シート18は、上下二層に配置された上側遮水シート19と下側遮水シート20との対向する面同士を間隔をおいて融着等により接合して、上記のように袋状の領域24に区分けされている。
【0024】
この袋状の各領域24内には、上側遮水シート19と下側遮水シート20との間に所定の隙間を保持するための隙間保持材であって、通水可能な立体編み目構造を有する通水材21が上側、下側遮水シート19、20間に挟持されているとともに、漏水検知用の測定電極E1が配置されている。また、地上部には、電流電極E2(図1)が設置されており、各測定電極E1及び電流電極E2は、それぞれリード線、中継ボックス等を介して地上部の管理棟34(図1)に設けた計測装置(図示しない)に接続され、電流電極E2と測定電極E1との間の電流等の電気的信号が常時測定される。
【0025】
なお、本実施形態においては、測定電極E1として点電極を用いる方法について説明したが、これに限定されるものではなく、線電極を用いてもよい。また、本実施形態においては、電流電極E2として点電極を用いる方法について説明したが、これに限定されるものではなく、線電極、面電極を用いてもよい。
【0026】
そして、二重遮水シート18の上側及び下側には、二重遮水シート18を保護するための上層保護マット15及び下層保護マット16がそれぞれ配置され、この下層保護マット16は廃棄物処分場10の底部又は傾斜面を覆って施工された粘土等からなる所定厚みの下部遮水層14上に設置される。
【0027】
また、上側遮水シート19には、袋状の各領域24に連通し、各領域24内に止水材44を注入するための注入用ホース30と、袋状の各領域24に連通し、止水材44が排出されることを確認するための確認用ホース32とが接続されている。
【0028】
注入用ホース30及び確認用ホース32は、一端が各領域24の上側遮水シート19に接続され、他端が地上まで延設され、それぞれ色分けして区別されるとともに、領域24を示すタグが取り付けている。
【0029】
なお、本実施形態においては、注入用ホース30及び確認用ホース32は、二重遮水シート18の上側に配置するものとしたが、これに限定されるものではなく、二重遮水シート18の下側に配置してもよい。
【0030】
以下に、漏水検知・補修システム12を用いた漏水検知及び補修方法について説明する。
【0031】
図3、図4は、本実施形態に係る漏水検知・補修システム12による漏水検知状態を示す概略図である。
【0032】
図3に示すように、二重遮水シート18の上側遮水シート19に損傷が生じた場合には、電流電極E2から流れる電流が廃棄物処分場10のピット内を通過し、さらに、損傷箇所Aを通過して測定電極E1に到達するという電流の経路が生じ、この経路を流れる電流を上述した不図示の計測装置で計測することにより上側遮水シート19に損傷が生じたことを検知するとともに、該当する測定電極E1が属する領域24を損傷が生じた領域24として検知することができる。
【0033】
また、図4に示すように、二重遮水シート18の下側遮水シート20に損傷が生じた場合には、電流電極E2から流れる電流が周囲地盤11を通過し、さらに、損傷箇所Bを通過して測定電極E1に到達するという電流の経路が生じ、この経路を流れる電流を上述した不図示の計測装置で計測することにより下側遮水シート20に損傷が生じたことを検知するとともに、該当する測定電極E1が属する領域24を損傷が生じた領域24として検知することができる。
【0034】
図5、図6は、本実施形態に係る漏水検知・補修システム12による上側遮水シート19の補修状態を示す概略図である。
【0035】
図5に示すように、漏洩電流を検知すると、損傷箇所Aの存在する領域24に接続されている注入用ホース30及び確認用ホース32を地上で選択し、止水材注入用ポンプ(図示しない)を注入用ホース30に接続し、注入用ホース30を通じて損傷箇所Aの存在する領域24内に止水材44を圧入する。止水材44は、溶融アスファルト等の電気絶縁性を有する材料からなり、止水材44が注入されて損傷箇所Aが完全に閉塞されると漏洩電流は検知されなくなる。したがって、廃棄物を掘り起こすことなく損傷箇所Aの閉塞を確認できる。
【0036】
なお、図6に示すように、漏洩電流が検知されなくなった後も続けて止水材44の注入を継続して損傷箇所Aの存在する領域24内を完全に止水材44で充填してもよい。損傷箇所Aの存在する領域24が完全に止水材44で充填されると余分な止水材44が確認用ホース32からオーバーフローし、これを目視することで、損傷箇所Aの存在する領域24内の止水材44による充填が確認されると同時に損傷箇所Aが完全に閉塞されたことを確認できる。
【0037】
なお、図示しないが、下側遮水シート20の損傷箇所Bも損傷箇所Aと同様に、損傷箇所Bの存在する領域24に接続されている注入用ホース30及び確認用ホース32を地上で選択し、この注入用ホース30を通じて損傷箇所Bの存在する領域24内に止水材44を圧入する。止水材44が注入されて損傷箇所Bが完全に閉塞されると漏洩電流は検知されなくなる。したがって、廃棄物を掘り起こすことなく損傷箇所Bの閉塞を確認できる。さらに、漏洩電流が検知されなくなった後も続けて止水材44の注入を継続して損傷箇所Bの存在する領域24内を完全に止水材44で充填してもよい。損傷箇所Bの存在する領域24が完全に止水材44で充填されると余分な止水材44が確認用ホース32からオーバーフローし、これを目視することで、損傷箇所Bの存在する領域24内の止水材44による充填が確認されると同時に損傷箇所Bが完全に閉塞されたことを確認できる。
【0038】
以上説明した本実施形態における廃棄物処分場10の漏水検知・補修システム12によれば、複数の袋状の領域24に区分けされた二重遮水シート18と、袋状の各領域24内にそれぞれ設置された測定電極E1とを備えているために、二重遮水シート18の上側遮水シート19、下側遮水シート20のいずれか一方が損傷すると、損傷箇所の存在する領域24内の測定電極E1へ漏洩電流が流れ、この漏洩電流を検知することにより二重遮水シート18の損傷及び損傷箇所を正確に検知することが可能となる。
【0039】
また、二重遮水シート18は複数の袋状の領域24に区分けされていることで、損傷箇所A、Bの存在する袋状の領域24のみに止水材44を充填すればよい。このため、従来の損傷箇所A、Bの周囲全体に止水材44を充填する場合と比べて止水材44の注入量を削減することが可能となる。さらに、止水材44を注入しつつ、漏洩電流を測定するために、損傷箇所A、Bが止水材44により充填されると漏洩電流が検知できなくなって、損傷箇所A、Bが補修されたことを確認することが可能となる。そして、漏洩電流が検知できなくなった時点で止水材44の注入を停止することにより、止水材44の注入量を必要最小限にできるため、止水材44のコストを大幅に削減することが可能となる。
【0040】
そして、上側遮水シート19又は下側遮水シート20のいずれか一方の遮水シートが損傷しても、他方の遮水シートが存在しているために、廃棄物処分場10の内部と地盤とが連通することがなく、廃棄物処分場10のピット内に貯留している水が地盤へ漏水することはない。
【0041】
さらに、注入用ホース30を備えているために、二重遮水シート18の損傷が検知されると、直ちに止水材44を注入することができ、従来の廃棄物を掘り起こして二重遮水シート18を補修する場合と比べて、簡便に、かつ迅速に二重遮水シート18の損傷を補修することが可能となる。
【0042】
また、二重遮水シート18を補修する際に、袋状の領域24内に注入された止水材44が確認用ホース32を通じて排出することにより、袋状の領域24内が止水材44で充填されたことを直ちに目視確認でき、補修の信頼性を向上させることが可能となる。
【0043】
そして、袋状の領域24内に通水材21を備えることにより、止水材44が袋状の領域24内を容易に移動することができるので、低い注入圧で止水材44を充填することが可能となる。したがって、止水材注入ポンプの吐出圧力、注入用ホースの耐圧等の能力の小さいものを使用することができるために、止水材注入設備の投資費を低減することが可能となる。
【0044】
また、二重遮水シート18の損傷箇所A、Bに電気絶縁性を有す止水材44が充填されると漏洩電流が流れなくなるために、止水が完全に行われているか否かを簡便、かつ確実に確認することができる。
【0045】
さらに、二重遮水シート18は上層保護マット15及び下層保護マット16で覆われているために、廃棄物処分場10のピット内で作業するダンプトラックやショベルカー等の建設重機の走行や旋回による注入用ホース30、確認用ホース32、二重遮水シート18等の損傷を防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の実施形態に係る廃棄物処分場の全体を示す概略図である。
【図2】本実施形態に係る廃棄物処分場の漏水検知・補修システムを示す概略図である。
【図3】本実施形態に係る漏水検知・補修システムによる漏水検知状態を示す概略図である。
【図4】本実施形態に係る漏水検知・補修システムによる漏水検知状態を示す概略図である。
【図5】本実施形態に係る漏水検知・補修システムによる上側遮水シートの補修状態を示す概略図である。
【図6】本実施形態に係る漏水検知・補修システムによる上側遮水シートの補修状態を示す概略図である。
【符号の説明】
【0047】
10 廃棄物処分場
11 周囲地盤
12 漏水検知・補修システム
14 下部遮水層
15 上層保護マット
16 下層保護マット
18 二重遮水シート
19 上側遮水シート
20 下側遮水シート
21 通水材
24 袋状の領域
30 注入用ホース
32 確認用ホース
34 管理棟
44 止水材
E1 漏水検知用の測定電極
E2 電流電極
A、B 損傷箇所

【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃棄物処分場の内部に敷設された遮水シートの損傷を電気的に検知し、前記遮水シートに接続されたホースを通じて止水材を注入して遮水シートの損傷を補修する廃棄物処分場の漏水検知・補修システムであって、
上下二層に配置された遮水シートの対向する面同士が間隔をおいて接合されることにより内部が複数の袋状の領域に区分けされた二重遮水シートと、
前記袋状の各領域内に設置され、前記二重遮水シートの損傷を検知するための測定電極と、
前記袋状の各領域に連通し、前記袋状の領域内に止水材を注入するための注入用ホースとを備えることを特徴とする廃棄物処分場の漏水検知・補修システム。
【請求項2】
前記袋状の各領域内に設置され、前記上下の遮水シート間の隙間を保持するための隙間保持材を更に備えることを特徴とする請求項1に記載の廃棄物処分場の漏水検知・補修システム。
【請求項3】
前記袋状の各領域に連通し、前記袋状の領域内に注入された止水材が排出されることにより前記袋状の領域内に止水材が充填されたことを確認するための確認用ホースを更に備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の廃棄物処分場の漏水検知・補修システム。
【請求項4】
前記二重遮水シートの上側又は下側の少なくともいずれかは、前記二重遮水シートを保護するための保護マットで覆われていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の廃棄物処分場の漏水検知・補修システム。
【請求項5】
前記止水材は、電気絶縁性を有することを特徴とする請求項1又は3に記載の廃棄物処分場の漏水検知・補修システム。
【請求項6】
廃棄物処分場の内部に敷設された遮水シートの損傷を電気的に検知し、前記遮水シートに接続されたホースを通じて止水材を注入して遮水シートの損傷箇所を補修する廃棄物処分場の漏水検知・補修方法において、
上下二層に配置された遮水シートの対向する面同士が間隔をおいて接合されることにより内部が複数の袋状の領域に区分けされた二重遮水シートと、前記袋状の各領域内に設置され、前記遮水シート間の隙間を保持するための隙間保持材と、前記袋状の各領域内に設置され、前記二重遮水シートの損傷を検知するための測定電極と、前記袋状の各領域に連通し、前記袋状の領域内に止水材を注入するための注入用ホースとを備えた漏水検知・補修システムを用い、
前記二重遮水シートの損傷による漏洩電流を前記測定電極で検知することにより、前記損傷の存在する袋状の領域を特定し、
前記測定電極による測定を継続しつつ、前記ホースを通じて電気絶縁性を有する止水材を前記特定した袋状の領域内に注入し、
前記測定電極による測定にて漏洩電流が検知されなくなると、前記止水材の注入を停止することを特徴とする廃棄物処分場の漏水検知・補修方法。
【請求項7】
廃棄物処分場の内部に敷設された遮水シートの損傷を電気的に検知し、前記遮水シートに接続されたホースを通じて止水材を注入して遮水シートの損傷箇所を補修する廃棄物処分場の漏水検知・補修方法において、
上下二層に配置された遮水シートの対向する面同士が間隔をおいて接合されることにより内部が複数の袋状の領域に区分けされた二重遮水シートと、前記袋状の各領域内に設置され、前記遮水シート間の隙間を保持するための隙間保持材と、前記袋状の各領域内に設置され、前記二重遮水シートの損傷を検知するための測定電極と、前記袋状の各領域に連通し、前記袋状の領域内に止水材を注入するための注入用ホースと、前記袋状の各領域に連通し、前記袋状の領域内に注入された止水材が排出されることにより前記袋状の領域内に止水材が充填されたことを確認するための確認用ホースとを備えた漏水検知・補修システムを用い、
前記二重遮水シートの損傷による漏洩電流を前記測定電極で検知することにより、前記損傷の存在する袋状の領域を特定し、
前記測定電極による測定を継続しつつ、前記ホースを通じて電気絶縁性を有する止水材を前記特定した袋状の領域内に注入し、
前記測定電極による測定にて漏洩電流が検知されなくなるとともに、前記確認用ホースより前記止水材が排出すると、前記止水材の注入を停止することを特徴とする廃棄物処分場の漏水検知・補修方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−61413(P2009−61413A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−232745(P2007−232745)
【出願日】平成19年9月7日(2007.9.7)
【出願人】(000204099)太洋興業株式会社 (30)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【出願人】(000121844)応用地質株式会社 (36)
【Fターム(参考)】