説明

廃棄物処理炉

【課題】
廃棄物処理の過程において、廃棄物の処理が不均一で不完全な処理が発生すること、また、処理効率が期待値よりも低いことを改善することを解決課題とする。
【解決手段】
廃棄物が投入される密閉容器2と、この密閉容器の上部に設けられて、この密閉容器内の発生ガスを排気する排気路4と、前記密閉容器に設けられて、この密閉容器内に微量空気を送り込む給気路3と、この給気路を挟むように設けられて、この給気通路を横切る磁場を形成する一対の磁石20とを備えた廃棄物処理炉1であって、前記給気路と前記密閉容器の底部との距離をLとした場合、L≦200mmとしたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、密閉容器内に投入された廃棄物に、磁場内を通過させて活性化した微量空気を照射することにより、前記廃棄物を燃焼させることなく分解して減容処理する廃棄物処理炉に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一般廃棄物や産業廃棄物の処理に焼却が行なわれている。
この焼却処理では、処理に伴って有害物質と飛灰とが発生し、この有害物質が飛灰とともに飛散して近隣の土壌等を汚染してしまうことが問題となっている。
【0003】
このような問題を解決するために、廃棄物を高温で溶融処理することにより、有害物質の発生を抑制する処理方法が採られている。
しかしながら、このような溶融処理においても、多大な電力若しくは化石燃料を必要とし、二酸化炭素排出量の増加を招いているのが現状である。
【0004】
さらに、これらの焼却処理や溶融処理の問題点を解決する処理方法として、磁場を通過させた微量空気を廃棄物へ照射して、この廃棄物を分解処理する技術が提案されている(特許文献1参照)。
【0005】
前述した特許文献中では、磁石手段が空気通路状に磁場を形成することにより、熱処理用空気中の酸素等が活性化されることとなり、その結果、僅かな流入量の熱処理用空気によって緩やかな酸化反応ないしは炭化処理が行なわれることにより、有害物質の発生を抑制しつつ廃棄物の処理を行なうと説明しているが、このような磁場を通過させた微量空気を用いて廃棄物を分解処理するメカニズムについては定かではない。
しかしながら、本願出願人においてもその稼動が確認されている。
【0006】
【特許文献1】特開2003−117534号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本願出願人は、前述した廃棄物処理炉により廃棄物処理を行なう過程において、廃棄物の処理が不均一で、不完全な処理が発生すること、また、処理効率が期待値よりも低いことから、これらを改善すべく鋭意研究の結果、本発明を完成させるに至った。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は前述した課題を解決せんとしてなされたもので、請求項1に記載の廃棄物処理炉は、廃棄物が投入される密閉容器と、この密閉容器の上部に設けられて、この密閉容器内の発生ガスを排気する排気路と、前記密閉容器に設けられて、この密閉容器内に微量空気を送り込む給気路と、この給気路を挟むように設けられて、この給気通路を横切る磁場を形成する一対の磁石とを備えた廃棄物処理炉であって、前記給気路と前記密閉容器の底部との距離をLとした場合、L≦200mmとしたことを特徴とするものである。
また、請求項2に記載の廃棄物処理炉は、請求項1に記載の前記給気路が、上下方向に間隔をおいて設けられており、これらの間隔をPとした場合、P≦400mmとしたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の請求項1に記載の廃棄物処理炉によれば、給気路内に流入する微量空気が、前記給気路内に一対の磁石によって形成された磁場を通過する際に磁化若しくはイオン化された後に、前記密閉容器内に充填されている廃棄物に照射されることにより、前記廃棄物の分子結合を破壊して、これらを分子レベルで分解して廃棄物の処理が行なわれると推察される。
【0010】
そして、この分解処理に伴い熱が発生し、この熱により密閉容器内に流入した微量空気中の酸素と廃棄物との反応による燃焼現象が発生するが、流入空気量が微量でありかつ容器が密閉されていることにより、前記酸素は瞬時に消費され、密閉容器内はほぼ無酸素状態となり、このほぼ無酸素状態で前述した廃棄物の分解処理が行なわれる。
また、廃棄物の分解処理に伴う発生熱によって密閉容器内の温度が上昇することにより、磁化若しくはイオン化された空気の動きが活発化して、前述した分解処理が促進される。
【0011】
このような廃棄物の分解処理に伴い、前述した熱の発生とともにガスが発生するが、このガスが密閉容器内を上昇して、この密閉容器の上部に設けられている排気路を介して外部へ排気される。
【0012】
このように密閉容器内のガスが円滑に排気されることにより、前記給気路からの微量空気の流入も円滑に行なわれることとなり、この結果、分解に必要な磁化若しくはイオン化された微量空気の供給量が確保され、安定した分解処理が連続して行なわれる。
【0013】
そして、前記給気路と前記密閉容器の底部との距離をLとし、L≦200mmとしたことにより、前記給気路から照射される磁化あるいはイオン化された微量空気による分解領域が密閉容器の底部近傍から上方に形成される。
【0014】
ここで、密閉容器の底部から離れた位置に分解領域が形成されると、この分解領域の下方に未分解物が残留し、この未分解物が前記分解領域において発生する分解熱を吸収してその分解処理効率を低下させてしまうことが想定されるが、本発明の構成とすることにより、廃棄物の分解処理が密閉容器の底部から順次行なわれ、前述した不具合の発生が抑制されて分解処理効率が向上する。
【0015】
また、分解効率が高められることにより、廃棄物の処理むらが少なくなり、より均一でより完全な処理が確保されるとともに、処理速度が改善される。
【0016】
また、請求項2に記載のように、前記給気路を、上下方向に間隔をおいて設けることにより、それぞれの給気路から照射される磁化あるいはイオン化された微量空気によって上下に分解領域を形成し、これによって、分解処理の効率を高めることができる。
【0017】
そして、これらの間隔をPとした場合、P≦400mmとすることにより、上下の給気路それぞれによって形成される分解領域の間隔を適切なものとして、両分解領域間に残存する未分解物を適量に保持して、この未分解物による前記各分解領域への影響を抑制し、前述した処理効率を高レベルに保持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の第1の実施形態について図面を参照して説明する。
図1中、符号1は、本実施形態に係わる廃棄物処理炉を示し、この廃棄物処理炉1は、廃棄物が投入される密閉容器2と、この密閉容器2の下部周縁部に周方向に間隔をおいた6箇所に形成された給気路3と、前記密閉容器2の上部に設けられ、この密閉容器2内の発生ガスを外部へ排出する排気路4とによって概略構成されている。
【0019】
さらに詳述すれば、前記密閉容器2は、本実施形態においては、円筒状に形成されており、上部および下部が円板によって気密に閉塞され、その上面には、図2に示すように、この上面の略半分を占めるように開閉蓋5が設けられている。
この開閉蓋5と密閉容器2との間には、前記開閉蓋5を閉塞した状態において前記密閉容器2との間に隙間が形成されないようにパッキン等のシール材が介在させられて、気密に閉塞できるようになっている。
【0020】
また、前記密閉容器2の上部で、前記開閉蓋5が形成されている部位の近傍には、前記排気路4の一部を構成し、前記密閉容器2内に連続した連通管6が取り付けられ、この連通管6に、内部に水が貯留された水槽7が連通状態で取り付けられている。
この水槽7内には、その下面から所定高さまで水が貯留されており、内部の約上半分が前記連通管6の上端部が開放された空間部となされ、この空間部gが前記排気路4の一部を構成している。
【0021】
さらに、前記水槽7の上面には、前記空間部gと外気とを連通し前記排気路4の一部を構成する排気管8が設けられている。
したがって、前記密閉容器2内の発生ガスは、前記連通管6から水槽7の空間部gを経て排気管8から外気へ放出されるが、前記水槽7の空間部g内を通過する間に水と接触させられることにより冷却されて復水し、水槽7内の水に捕獲されるようになっている。
【0022】
一方、前記開閉蓋5は、前記密閉容器2の上面に一対のブラケット9を介して回動自在に取り付けられた枢軸10に固定され、また、前記枢軸10の一端部には、この枢軸10の回動をなす操作ロッド11が直交して設けられており、この操作ロッド11によって前記枢軸10が回動操作されることによって、前記開閉蓋5が前記枢軸5を回動中心として上下に回動させられて、前記密閉容器2の上面に形成されている廃棄物投入口2aの開閉を行なうようになっている。
【0023】
また、前記開閉蓋5の上面には、ロックレバー12が揺動可能に装着されており、このロックレバー12が前記密閉容器2の上面に固定されている係止片13に楔状に係合させられることによって、前記開閉蓋5が前記密閉容器2の上部に圧接させられて、前記廃棄物投入口2aを気密に密閉するようになっている。
【0024】
前記密閉容器2の内側には、その内壁面との間に間隔S(図3参照)をおいて複数の隔壁14が設置されており、両者間に配設された複数の連結プレート15を介して前記密閉容器2と一体化されている。
そして、前記各隔壁14は、本実施形態においては、図1および図3に示すように、前記密閉容器2の周方向に間隔をおいて配設されているとともに、その上端部および下端部は、前記密閉容器2の上壁および下壁から所定距離離間させられており、これによって、密閉容器2の底部と上部とを前記間隔Sを介して連通させるようになっている。
【0025】
前記各給気路3は、図3に示すように、前記密閉容器2の側壁を貫通して内部に突設された導管16と、この導管16の端部に、前記密閉容器2の外部において連結されたエルボ状のジョイント17と、このジョイント17に連結され、前記給気路3内を流れる空気量を調整する流量調整手段としてのバルブ18と、このバルブ18に取り付けられて外気に連通させられた非磁性体からなるケーシング19とによって構成されている。
【0026】
前記各導管16は、本実施形態においては金属によって形成されており、前記密閉容器2の側壁を貫通して、その中心へ向かうように設置されている。
そして、前記各導管16の先端部(密閉容器2の中心部側の端部)は、図4に示すように、その軸線に対して傾斜した開口面16aとなされている。
【0027】
また、前記ケーシング19の中心部には、図4および図5に示すように、前記給気路3の一部を構成する給気路形成孔19aが形成されているとともに、その長さ方向の途中には、前記給気路形成孔19aと直交する磁石装着孔19bが、前記給気路形成孔19aを挟んだ両側に設けられている。
【0028】
これらの磁石装着孔19bは、図6に示すように、外端部が前記ケーシング19の外面に開口し、また、内端部が前記給気路形成孔19aへ開口させられているとともに、小径となされて前記給気路形成孔19aとの間に所定の段部Hを形成するようになっている。
【0029】
さらに、本実施形態においては、前記給気路形成孔19aは、図6に示すように、その軸線と直交する断面において円形に形成されているとともに、図5に示すように、下流側(前記密閉容器2側)の部位に、下流側に行くに従い漸次狭くなる絞り部19cが形成されて、その内面形状が略ベンチュリ管状に形成されている。
【0030】
前記各磁石装着孔19b内には、それぞれ永久磁石20が装着されているとともに、各磁石装着孔19bの外端部が栓体21によって閉塞されている。
【0031】
前記各磁石装着孔19b内に装着される前記磁石20は、異なる磁極が対向するように、すなわち、相互に引き合うように装着されており、前記磁石装着孔19bの内端部に形成されている段部Hに係合させられることにより、それぞれの吸着力によってケーシング19内に位置決めされているとともに、その表面の殆どが、前記磁石装着孔19bの内端部において、前記給気路形成孔19a内に露出させられている。
【0032】
一方、前記各磁石装着孔19bは、本実施形態においては、前記ケーシング19の、前記絞り部19cの上流側の端部近傍に形成されて、前記磁石20も同様に、前記絞り部19cの上流側の端部近傍に位置させられている。
【0033】
さらに、前記導管16の先端部は、本実施形態においては、図4に示すように、前記隔壁14の下端部と前記密閉容器2の底部との間に位置させられている。
【0034】
また、本実施形態においては、図1および図4に示すように、前記各隔壁14には、この隔壁14を貫通する連通孔22が多数形成されており、前記密閉容器2との間隔Sによって形成される隙間と隔壁14の内部とを連通させるようになっている。
【0035】
一方、前記密閉容器2の下部側壁の2箇所には、前記密閉容器2内の分解処理によって生成された残渣を取り出すための残渣排出口(図示略)が形成されており、これらの残渣排出口は、図1ないし図3に示すように、前記密閉容器2の外面に開閉可能にかつ閉位置に係止可能に取り付けられた蓋体23によって開閉されるようになっている。
【0036】
そして、本発明においては、前記各給気路3は、図1に示すように、前記密閉容器2の底部近傍に設けられており、その装着位置は、各給気路3と前記密閉容器2の底部との距離Lが、L≦200mmとなるように設定されている。
【0037】
このように構成された本実施形態に係わる廃棄物処理炉1の作用について説明すれば、まず、操作ロッド11を操作して開閉蓋5を上方へ回動させることにより、密閉容器2の上部の廃棄物投入口2aを開放し、隔壁14の内側に廃棄物を密に投入した後に開閉蓋5を閉じて密閉容器2を気密状態とする。
【0038】
ついで、前記各バルブ18を操作することにより、各給気路3から流れ込む微量空気量が、投入された廃棄物の種類や投入量等に応じた処理に必要な処理空気量となるように調整する。
【0039】
ここで、初期稼働時にあっては、前記密閉容器2内は常温であることから、密閉容器2内の気体の動きがなく、このままでは稼動しないが、前記密閉容器2内を所定温度に加熱することにより、この密閉容器2内の気体が加熱されて前記隔壁14と密閉容器2との間や未処理の廃棄物の隙間を介して上昇を開始した後に前記排気路4から排気されることにより、前記密閉容器2内に上昇気流が形成される。
【0040】
このように前記密閉容器2内に上昇気流が生じると、この密閉容器2内の底部の圧力が低下することにより、大気圧により各給気路3から微量空気が密閉容器2内に流れ込む。
この微量空気は、前記給気路3の一部を構成するケーシング19内を通過させられる間に、このケーシング19に取り付けられている永久磁石20によって形成されている磁場を通過させられる間に磁化あるいはイオン化されて、前記密閉容器2内に流れ込む。
【0041】
この磁化あるいはイオン化された微量空気は、前記密閉容器2内の廃棄物へある速度をもって照射されるとともに、この密閉容器2内が加熱されていることにより、ある温度状況下における廃棄物と磁化あるいはイオン化された微量空気との衝突により、前記廃棄物の分子レベルでの分解処理が開始される。
これは、流れ込む微量空気の磁力あるいはイオンにより、廃棄物の分子間結合が破壊されることによる現象ではないかと推測される。
【0042】
ここで、前述した流入空気は、前記ケーシング19の絞り部19cを通過する際に加速されて前記密閉容器2内に流れ込むことにより、その運動エネルギーが増幅された状態で前記密閉容器2内の廃棄物へ衝突させられる。
したがって、廃棄物の分子間結合を破壊するエネルギーが増幅されることとなり、前述した分子レベルでの分解処理が加速される。
【0043】
そして、このような廃棄物の分解処理の開始に伴い分解熱が発生し、前記密閉容器2内の温度がさらに上昇し、その温度が廃棄物の燃焼温度まで上昇する。
しかしながら、稼働初期においては、前記密閉容器2内の廃棄物の殆どが未処理で、前記密閉容器2内がこの未処理の廃棄物によって満たされて、内部の酸素量が極めて少ないことから、前述したように密閉容器2内の温度が廃棄物の燃焼温度に至った際に、前記密閉容器2内の酸素および流入する微量空気中の酸素が瞬時に消費されて燃焼が停止し、それ以降は、前述した分解熱のみによる温度上昇となる。
【0044】
この分解熱は、密閉容器2内に未処理の廃棄物がある限り、この廃棄物と磁化あるいはイオン化された微量空気との衝突によって継続して発生し、したがって、燃焼を伴わない状態で前述した分解に必要な熱が継続して供給されることにより、磁化あるいはイオン化された微量空気の動きが活発化され廃棄物の分解処理が継続して行なわれる。
【0045】
また、分解処理された廃棄物は約数十分の1に減容されるため、処理の継続にしたがい、上方の未処理の廃棄物が順次下方へ移動して分解処理され、したがって、投入された廃棄物の分解処理が継続して行なわれる。
【0046】
一方、前述した分解処理に伴い密閉容器2内にガスが発生するが、このガスは、前述した密閉容器2内の気体の流れとともに、前記隔壁14と密閉容器2との間に排気通路が確保されていることから、密閉容器2内の上方へ円滑に移動し排気路4を介して外気へ放出される。
この結果、発生ガスの円滑な排気が確保されるとともに、これに伴って、給気路3からの微量空気の流入量も安定して確保され、この点からも、前述した廃棄物の分解処理の継続性が確保される。
【0047】
また、前記発生ガスは、前記隔壁14と密閉容器2との間のみならず、上方の未処理の廃棄物の隙間を通っても上方へ移動するが、この廃棄物の隙間を通過する間に、未処理の廃棄物が予熱されるので、下方における分解処理が円滑になる。
【0048】
さらに、本実施形態においては、前記隔壁14に面方向に貫通する連通孔22が多数形成されていることから、密閉容器2内の発生ガスの動きの自由度が増して発生ガスの排気効率が向上することにより、前述した分解の効率が向上するとともに、分解むらが抑制されて均一な分解処理が行なわれる。
【0049】
また、前記連通孔22の存在により、隔壁14と密閉容器2との対向面積が少なくなることにより、これらの間に廃棄物が詰まることが抑制され、また、詰まった場合にあってもその剥離が容易であり、この結果、前述した発生ガスの抜けの円滑性を確保することができる。
【0050】
前記密閉容器2内に磁化またはイオン化された微量空気を送り込む前記導管16の先端部は、その軸線に対して傾斜した開口面16aとなされている。
このような開口面16aとすることにより、この開口面16aから密閉容器2内に流れ込む微量空気に対する前記導管16による拘束開放位置が軸線方向において異なり、この結果、この導管16の先端から流れ込む微量空気が、図4に矢印(イ)で示すように、前方へ向かって広がるような流れとなる。
【0051】
したがって、磁化あるいはイオン化された微量空気の、前記廃棄物に対する照射面積が拡大されることとなり、広範囲にわたる分解処理が行なわれるとともに、前述したケーシング19の絞り部19cによる流入微量空気の加速作用と相俟って、均一で高効率の分解処理が行なわれる。
【0052】
一方、本実施形態においては、前記給気路3の設置位置を、L≦200mmとしている。
このような位置に給気路3を位置させると、前述した各給気路3から照射される磁化あるいはイオン化された微量空気によって形成される分解領域が、前記密閉容器3の底部近傍から上方に至る範囲に形成される。
【0053】
ここで、L>200mmの位置に前記給気路3を配置すると、前述した分解領域の下方に未分解の廃棄物が存在し、かつ、この廃棄物へ前述した磁化あるいはイオン化された微量空気が届かず、未分解のまま残ってしまう。
【0054】
そして、密閉容器2の底部に残存する未分解の廃棄物は、上方の分解領域の分解熱を奪ってこの分解領域の温度を低下させる作用をし、また、分解領域の分解熱によって加熱されて水分を排出する。
この水分は、前記分解領域において分解後に生成される粉粒体状の残渣に染み込んで泥状にし、この分解領域に流れ込む磁化あるいはイオン化された微量空気の流れを阻害してしまう。
したがって、これらの相乗作用により、分解領域における分解効率が低下し、廃棄物の種類によっては(たとえば、水分を多く含む生ゴミ等である場合には)、分解そのもを停止させてしまうこともある。
【0055】
しかしながら、本実施形態においては前述した構成とすることにより、前記密閉容器3の底部に位置する廃棄物の分解処理が確実に行なわれ、前述した処理領域の下方に未分解物が残留することがなくなる。
この結果、分解によって発生する熱が分解領域に保持されて、分解に必要な温度が確保されるとともに、水分の滞留を防止して分解処理の継続性が確保される。
【0056】
また、分解領域において発生したガスは加熱されることにより上方へ移動するが、前述したように、分解熱の殆どが分解領域に保持されることから、発生ガスの温度も十分な温度となり、その結果、発生ガスの上昇エネルギーも十分に確保される。
したがって、前記発生ガスの排気が円滑に行なわれることとなり、これに伴って、給気路3からの微量空気の流入も円滑化され、また、上昇ガスにより分解領域の上方の未分解物の予熱が行なわれる。
したがって、これらの相乗作用により、廃棄物の分解効率が向上し、また、処理むら等が減少する。
【0057】
図7は、本発明の第2の実施形態を示すものである。
本実施形態においては、前記給気路3を上下に所定間隔をおいて2箇所に形成したものであり、これらの間隔をPとした場合、P≦400mmとしたものである。
そして、下方の給気路3に対して上方の給気路3は、鉛直方向において重畳する位置に位置させられている。
【0058】
このような構成とすることにより、上下の給気路3それぞれによって分解領域が形成されて、全体として厚みのある分解領域が形成され、これによって、分解効率を向上させることができる。
【0059】
そして、上下の給気路3の間隔Pを、P≦400mmとすることにより、上下の給気路3の間隔を適切なものとして、両分解領域間に残存する未分解物を適量に保持して、この未分解物による前記各分解領域への影響を抑制し、前述した処理効率を高レベルに保持することができる。
【0060】
なお、前記各実施形態において示した各構成部材の諸形状や寸法等は一例であって、設計要求等に基づき種々変更可能である。
たとえば、前記密閉容器2は円筒形に限られるものではなく、断面が多角形であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の第1の実施形態を示す廃棄物処理炉の正面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態を示す廃棄物処理炉の平面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態を示す廃棄物処理炉の横断面図である。
【図4】本発明の第1の実施形態を示す要部の拡大図である。
【図5】本発明の第1の実施形態を示すもので、給気路の一部を構成するケーシングの縦断面図である。
【図6】本発明の第1の実施形態を示すもので、図5のA−A断面図である。
【図7】本発明の第2の実施形態を示す廃棄物処理炉の正面図である。
【符号の説明】
【0062】
1 廃棄物処理炉
2 密閉容器
2a 廃棄物投入口
3 給気路
4 排気路
5 開閉蓋
6 連通管
7 水槽
8 排気管
9 ブラケット
10 枢軸
11 操作ロッド
12 ロックレバー
13 係止片
14 隔壁
15 連結プレート
16 導管
16a 開口面
17 ジョイント
18 バルブ(流量調整手段)
19 ケーシング
19a 給気路形成孔
19b 磁石装着孔
19c 絞り部
20 永久磁石
21 栓体
22 連通孔
23 蓋体
D 隙間
g 空間部
H 段部
S 間隔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃棄物が投入される密閉容器と、この密閉容器の上部に設けられて、この密閉容器内の発生ガスを排気する排気路と、前記密閉容器に設けられて、この密閉容器内に微量空気を送り込む給気路と、この給気路を挟むように設けられて、この給気通路を横切る磁場を形成する一対の磁石とを備えた廃棄物処理炉であって、前記給気路と前記密閉容器の底部との距離をLとした場合、L≦200mmとしたことを特徴とする廃棄物処理炉。
【請求項2】
前記給気路が、上下方向に間隔をおいて設けられており、これらの間隔をPとした場合、P≦400mmとしたことを特徴とする請求項1に記載の廃棄物処理炉。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−247457(P2006−247457A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−63837(P2005−63837)
【出願日】平成17年3月8日(2005.3.8)
【出願人】(305012016)株式会社 建創 (4)
【出願人】(597070068)株式会社沖創建設 (12)
【Fターム(参考)】