説明

廃棄物溶融炉のダスト吹込み装置

【課題】小型でもダストを主羽口から炉体内へ吹込みができる廃棄物溶融炉のダスト吹込み装置を提供することを課題とする。
【解決手段】廃棄物を炉体10内で熱分解し残渣を溶融する廃棄物溶融炉から排出され回収されたダストを羽口12から炉体10内に酸素含有ガスと共に吹き込むダスト吹込み装置20において、炉体10に取り付けられる羽口12と、該炉体10の羽口12に接続された送風管23と、酸素含有ガスを送風管23に送る酸素含有ガス供給管22とを有し、該酸素含有ガス供給管22をダスト合流のための分枝口28を有する中間接続管24を介して上記送風管23に接続し、少なくとも、羽口12、送風管23そして中間接続管24がそれぞれの内面に耐摩耗材層26C,23C,24Cを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄物溶融炉のダスト吹込み装置に関する。
【背景技術】
【0002】
廃棄物を処理する技術として、都市ごみやシュレッダーダストなどの廃棄物を溶融炉で熱分解して可燃性ガスを発生させ、その熱分解後の残渣を溶融しスラグにして排出するガス化溶融処理がある。この処理方法は廃棄物をガス化することによりその燃焼熱を回収することができるとともに、残渣を溶融して埋立処分などにおける取扱いを容易とし、その最終処分量を減容することができる利点を有している。
【0003】
上述の処理を行なう溶融炉には幾つかの方式によるものがあるが、その一つとして、竪型の炉体を有するシャフト式廃棄物ガス化溶融炉がある。このシャフト式廃棄物ガス化溶融炉は、例えば、特許文献1に示されている構成によるものが知られており、炉底部に堆積させたコークスを燃焼させ、この高温のコークス燃焼部上へ廃棄物を炉頂部から投入して、これを炉体内で熱分解させてガス化し、次いでその熱分解後の残渣をコークス燃焼部で溶融してスラグにする処理を行なう方式の炉である。このため、上記シャフト式廃棄物ガス化溶融炉においては、炉体の機能から見て、炉体を縦方向で三つに区分した領域を形成している。すなわち、三つの領域とは、炉体内の炉底部にコークスを堆積させて形成される高温燃焼帯、この高温燃焼帯の上に投入した廃棄物により形成される廃棄物堆積層、該廃棄物堆積層の表面より上方で炉体内の上部に大きな空間として形成されるフリーボード部である。そして、上記各領域に空気又は酸素富化空気(以下、「酸素含有ガス」という)の吹き込みが行われる。
【0004】
高温燃焼帯には周方向の複数位置に主羽口が設けられ、投入され堆積されたコークスを燃焼させて、廃棄物堆積層の廃棄物が熱分解した後の残渣を溶融するための酸素富化空気がこの主羽口から吹き込まれる。廃棄物堆積層には周方向に複数の副羽口が設けられ、投入され堆積された廃棄物を部分燃焼させると共に廃棄物を緩やかに流動させながら熱分解させるための空気がこの副羽口から吹き込まれる。又、フリーボード部には三段羽口が設けられ、廃棄物が熱分解されて生成した熱分解ガス(可燃性ガス)を部分燃焼させて内部を所定温度に維持するための空気がこの三段羽口から吹き込まれる。
【0005】
このように、シャフト式廃棄物ガス化溶融炉は、廃棄物を、一つの炉で熱分解ガス化溶融処理する設備である。投入された廃棄物は熱分解され、ガスと残渣に分離される。ガスは可燃性ガスを多量に含んでいるので二次燃焼炉で燃焼され、ボイラやエコノマイザで熱回収された後、減温装置で冷却され、有害ガスが除去され集塵機で除塵処理された後に大気中に放散される。また、熱分解後の残渣は、炉体内を下方に移動し、炉下部のコークス高温燃焼帯で溶融され、スラグとメタルとして炉外へ排出される。
【0006】
ガス化溶融炉で発生したガスは、二次燃焼炉、ボイラ、減温装置の各装置を経て集塵機へ到達するまでの間で、ガス中のダストのうち、比較的粗い粒子がそれぞれ各装置内で落下する。また、ボイラの下流にサイクロン等の除塵機を設け、ガス中の比較的粗いダストを除塵することもある。このため、ガス化溶融炉と集塵機の間に配置された上記各装置内で落下したダスト(以下、「落下灰」という)は抜出された後に埋立処分されている。
【0007】
集塵機で捕集されるダスト(以下「集塵灰」という)は、廃棄物から由来する重金属類を含んでいるため、重金属安定剤などにより溶出防止処理をされて、落下灰とともに埋立処分されている。本発明では「落下灰」と「集塵灰」をまとめて「ダスト」と呼ぶ。
【0008】
集塵灰に対して重金属の溶出防止処理をせねばならないので、その処分費用がかかるという問題や、埋立処分場の負荷軽減のために埋立処分量を削減したいという要望に対して、特許文献2では、発生ダストをガス化溶融炉の羽口から吹き込み溶融してスラグ化して重金属の溶出を抑制したり減容化することが提案されている。
【0009】
この特許文献2では、ガス化溶融炉から飛散するダストをサイクロンなどの除塵機で捕集し、捕集したダストを水冷羽口から炉内へ吹き込むようにしている。ダスト吹込み装置は、ダストとの摩擦による摩耗を防止するために、二重管構造となっていて、内管でダストを気流搬送し、内管と外管との間隙から酸素富化空気を送風するようにしている。
【特許文献1】特開平9−60830
【特許文献2】特開2002−267127
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献2では、羽口から炉内へダストを吹き込む際の羽口での摩耗防止のために二重管構造としているので、水冷羽口が従来の水冷羽口より大型となり、該水冷羽口を溶融炉本体に取り付けるための空間を確保するのが困難である。
【0011】
また、大型の水冷羽口を設けることにより、その周辺での溶融炉の熱損失が増大してしまい、安定な操業を行なうために熱損失の分だけコークス使用量を増やさなければならない等、運転費が増大する。
【0012】
このように、特許文献2は、水冷羽口の大型化そして運転費の増大という、解決されなければならない課題をかかえている。
【0013】
本発明は、かかる課題を解決するためになされたもので、廃棄物溶融炉から発生するダストを水冷羽口から吹き込み溶融処理する際に、羽口でのダストによる摩耗を防止でき、水冷羽口を大型化することのない廃棄物溶融炉のダスト吹き込み装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係る廃棄物溶融炉のダスト吹込み装置は、廃棄物を炉内で熱分解し残渣を溶融する廃棄物溶融炉から排出され回収されたダストを羽口から炉内に酸素含有ガスと共に吹き込むようになっている。
【0015】
かかるダスト吹込み装置において、本発明では、炉体に取り付けられる羽口と、該羽口に接続された送風管と、酸素含有ガスを送風管に送る酸素含有ガス供給管とを有し、該酸素含有ガス供給管をダスト合流のための分枝口を有する中間接続管を介して上記送風管に接続し、少なくとも、羽口、送風管そして中間接続管がそれぞれの内面に耐摩耗材層を有していることを特徴としている。
【0016】
このような構成の本発明装置では、ダストは中間接続管の分枝口から該中間接続管へ入り、該中間接続管の上流位置の酸素含有ガス供給管からの酸素含有ガスと共に、送風管を経て羽口から炉内へ吹き込まれる。
【0017】
ダストは、中間接続管、送風管、羽口の内面と摩擦を伴うが、これらの内面は耐摩耗材層が形成されており、ダストとの摩擦によってもあまり摩耗しない。このように、本発明では、これらの内面に耐摩耗材層を形成したことにより、摩耗の心配なくダストと酸素含有ガスを一つの流路で送ることができ、その結果、ダスト吹込み装置は大型化されることなく、大型化による水冷の際の熱損失も増大しない。
【0018】
本発明において、耐摩耗材層は耐摩耗材スリーブとすることができる。耐摩耗材層を、コーティング等により、管内面に施すこともできるが、耐摩耗材スリーブを管内に挿入することにより簡単に構成できる。このスリーブは、管内へ圧入されても、遊びをもって挿入されてもよい。ただし、遊びをもって挿入されるときには、ダストの摩擦によって管内での流れ方向へ移動してしまうことのないように工夫する必要がある。
【0019】
本発明において、耐摩耗材層は、窒化珪素、ジルコニア、アルミナ、耐摩耗性クラッド鋼のうちの少なくとも一つで形成することができる。
【0020】
本発明において、耐摩耗材スリーブは、羽口における耐摩耗材スリーブの外径が、炉内側に比し反炉内側での方が大きい大径部分を有しており、該大径部分が羽口内面の対応部と軸線方向で係合していることが好ましい。こうすることにより、羽口における耐摩耗材スリーブが羽口内に遊びをもって挿入されている場合、ダストとの摩擦による力を炉内側へ向けて受けても、若干移動しても、すぐに移動が規制されてそれ以上移動することはない。
【0021】
上記大径部分はフランジ状の段部により形成することも、あるいは、テーパ部により形成することもできる。
【発明の効果】
【0022】
本発明は、以上説明したように、羽口の内面、該羽口に接続される送風管の内面、ダスト合流の分枝口を有し該送風管と酸素含有ガス供給管とを接続する中間接続管の内面にそれぞれ耐摩耗材層を形成することとしたので、ダストとの摩擦による上記内面の摩耗の心配をすることなく、ダストと酸素含有ガスとを一つの流路で羽口を経て炉内に吹き込むことができ、従来のような二重管によらず、小径の装置とすることができ、装置を小型に維持したままダストの吹込みを可能とし、小型の故に、羽口の水冷による熱損失も小さく、炉の運転費を低く抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、添付図面にもとづき、本発明の一実施形態を説明する。図1は、廃棄物をガス化する溶融炉1、二次燃焼炉2、ボイラ3、エコノマイザ4、サイクロン5、減温装置6そして集塵装置7を有する装置の概要構成を示している。
【0024】
溶融炉1は、竪型の炉体10の炉頂部に、コークス及び廃棄物を該炉体10内へ落下供給する供給装置(図示せず)が設けられており、該供給装置からコークスAと石灰石Bの混合体と、廃棄物Cとを炉体10へ落下投入するようになっている。
【0025】
炉体10は、竪型の筒状体をなし、上方に向け拡径しているテーパ状の中間部10Aと、その下方に位置する下筒状部10Bと、上方に位置して該下筒状部10Bよりも大径の上筒状部10Cとを有している。
【0026】
この炉体10内では、炉底部にコークスが堆積され、このコークスの層に酸素富化空気を吹き込んで燃焼させることにより高温燃焼帯を形成し、この高温燃焼帯の上へ廃棄物が投入されて廃棄物堆積層を形成し、この廃棄物堆積層の廃棄物を熱分解させ、その残渣を溶融させるようになっている。廃棄物堆積層よりも上方の炉内空間はフリーボード部を形成する。
【0027】
かかる熱処理のために、上記下筒状部10Bの周壁の下端寄り位置には、溶融スラグ排出口11が設けられ、その上方位置には、周方向複数位置に、コークスを燃焼させる酸素
含有ガスを炉内へ吹き込むための主羽口12が設けられ、さらに上方位置でテーパ状の中間部10A近くの位置には、周方向の複数位置に、廃棄物を流動化させる空気を炉内へ吹き込むための副羽口13が設けられている。
【0028】
上記上筒状部10Cの周壁の上部には、周方向複数位置に、炉下部で生成した熱分解(可燃)ガスを部分燃焼させるための空気を炉内へ吹き込むための三段羽口14が設けられている。又、上記上筒状部10Cの上端位置側部には排ガスを排出するための排気管15が設けられている。
【0029】
上記炉体10の側方上方位置には、二次燃焼炉2、ボイラ3、エコノマイザ4、サイクロン5、減温装置6そして集塵装置7から回収されたダストを受けてこれを貯留しておくダスト貯留槽16が配設されている。該ダスト貯留槽16の下端開口には、ロータリバルブ17が設けられ、ここからシュート18が垂下しており、該シュート18は仕切弁19を経てダスト吹込み装置20に達している。該ダスト吹込み装置20は、炉体10に取り付けられ該ダスト吹込み装置20の一部をなす主羽口12に接続されている。このダスト吹込み装置20には、ブロワ21により酸素含有ガスを該ダスト吹込み装置20に送り込む酸素含有ガス供給管22も接続されている。
【0030】
上記炉体10に接続された二次燃焼炉2は溶融炉1から排出された可燃性ガスを燃焼させ、二次燃焼炉2に続くボイラ3そしてエコノマイザ4では可燃性ガスの燃焼で生ずる熱を回収する。エコノマイザ4に接続されたサイクロン5では、排ガス中の比較的粗いダストが除去される。サイクロン5に接続された減温装置6で、熱回収後の排ガスは、上方からの水Dの噴霧を受けて浄化処理に適する温度まで冷却される。冷却後の排ガスは、有害物除去剤によって有害物が除去された後、バグフィルタ等の集塵装置7でダストが除去された後の浄化ガスが煙突へと導かれ大気へ放散される。
【0031】
上記二次燃焼炉2の下端には落下灰を受け搬送する落下灰コンベア2Aが設けられ、ボイラ3、エコノマイザ4、サイクロン5の下端には落下灰を受け搬送する落下灰コンベア3Aが設けられ、上記落下灰コンベア2Aは落下灰コンベア3Aに接続されている。また、減温装置6の下端にも落下灰コンベア6Aが設けられており、この落下灰コンベア6Aも上記落下灰コンベア3Aに接続されている。さらには、集塵装置7の下端には集塵灰コンベア7Aが設けられており、集塵灰の一部が集塵灰処理装置(図示せず)へ搬送され、残りの集塵灰は上記落下灰コンベア3Aからの落下灰と共にダストとして、帰還路16Aを経てダスト貯留槽16へ搬送されるようになっている。
【0032】
ダスト吹込み装置20は、図2に見られるように、主羽口12と、これに順次接続される送風管23、中間接続管24そして酸素含有ガス供給管22を有している。
【0033】
主羽口12は、主羽口本体26と支持体27とから成っており、主羽口本体26は外径面26Aがテーパ状をなし、また円筒状貫通孔26Bが形成されている。該貫通孔26Bの内径面には耐摩耗材層26Cが設けられている。貫通孔26Bは大外径端側で段状に大内径をなす係止部26B−1を有している。主羽口本体26を支持する支持体27は、円錐椀状をなしその底部には保持孔27Aが形成されている。該保持孔27Aは上記主羽口本体26の外径面の大径端部と適合するテーパ孔をなしていて、ここで上記主羽口本体26の外径面と接面して該主羽口本体26を支持している。さらには、主羽口本体と支持体とを一体、すなわち一部品として作ってもよい。このような、主羽口本体26と支持体27は炉体10の側壁に形成された対応取付孔に図2のごとく取り付けられ、主羽口本体26の小外径端側先端が炉体10内に突入して位置する。かかる主羽口本体26と支持体27のうちの少なくとも主羽口本体26は水冷されるが、その形式は公知なので、ここでは水冷のための形態についての説明は省略する。
【0034】
上記主羽口本体26には前出の送風管23が接続されている。この送風管23は細長い円筒状をなし、左端側に接続フランジ23Aを有している。該送風管23は、右端側は上記主羽口本体26の円筒状貫通孔26Bの左端に設けられたねじ部にねじ込まれて保持されており、接続フランジ23Aを有する左端側は炉体10の外面よりも外方に位置している。上記送風管23の貫通孔23Bの内径面には耐摩耗材層23Cが設けられている。この耐摩耗材層23Cの内径は上記主羽口本体26の耐摩耗材層26Cの内径とほぼ同じである。
【0035】
上記送風管23には、中間接続管24が接続されている。該中間接続管24は上記送風管23と同じ内径そして外径を有する円筒状をなすと共に、分枝口28を有している。上記中間接続管24は左右両端に接続フランジ24Aを、そして分枝口28に接続フランジ28Bをそれぞれ有しており、左右に貫通する内径面そして上記分枝口28の内径面の一部には、耐摩耗材層24Cが形成されている。該中間接続管24はその右端側の接続フランジ24Aにて、上記送風管23の接続フランジ23Aと接続される。上記中間接続管24の分枝口28はその接続フランジ28Bにて、図1のダスト貯留槽16から下方に延びるシュート18の下端開口が接続される。
【0036】
上記中間接続管24には酸素含有ガス供給管22が接続されている。この酸素含有ガス供給管22は、上記中間接続管24と同じ内径そして外径を有す円筒状で、右端側が開口されていて接続フランジ22Aを有し、左端側は閉塞されている。この酸素含有ガス供給管22には、側方に分枝して供給口29を有し、この供給口29に接続フランジ29Bが設けられている。この酸素含有ガス供給管22はその接続フランジ22Aにて上記中間接続管24の左端側の接続フランジ24Aと接続される。この酸素含有ガス供給管22はその接続フランジ29Bにて酸素含有ガス供給源(図示せず)から延びる送気管(図示せず)が接続される。
【0037】
上記主羽口本体26、送風管23、中間接続管24の内径面にそれぞれ形成された耐摩耗材層26C,23C,24Cは、例えば、セラミックあるいは耐摩耗性クラッド鋼で形成できる。セラミックとしては、例えば、窒化珪素、ジルコニア、アルミナのうちの少なくとも一つを使用する。また、この耐摩耗材層は、各管の内径面にコーティングして形成することも、あるいは耐摩耗材の肉厚10mm程度のスリーブを各管内に挿入することもできる。特に、耐摩耗性クラッド鋼の場合は、管全体を該耐摩耗性クラッド鋼としてもよい。耐摩耗材スリーブを用いる場合、交換を容易とするように、つば部を設けてはめ込みとしてもよい。主羽口本体においては、該耐摩耗材スリーブと主羽口本体の貫通孔内径面との間に1mm程度より小さい隙間をもった状態で、例えば該耐摩耗材スリーブの左端部に設けたつば部を、主羽口本体の貫通孔26Bに設けた係止部26B−1に当接するように保持されていることが好ましい。また、耐摩耗材スリーブは、送風管そして中間接続管においては、モルタル等により管内径面と固着されるようにすることができる。
【0038】
このような構成の本実施形態装置での操業は次の要領で行なわれる。
【0039】
<廃棄物のガス化溶融処理>
図1において、都市ごみや産業廃棄物或いは廃棄物焼却残渣などの廃棄物Cと、コークスAと、石灰石Bとがそれぞれ計量され、ガス化溶融炉1の炉体10内へ投入される。炉体10へ投入されたもののうち、コークスAは炉底部に堆積し、ここに主羽口12から酸素含有ガスの熱風が吹き込まれる。この酸素含有ガスの吹込みによりコークスが燃焼し、高温燃焼帯が形成される。投入された廃棄物Cは高温燃焼帯の上方で、副羽口13から吹き込まれる空気によって流動しながら滞留して流動化層を形成する。廃棄物は流動化している間に予熱され、熱分解して可燃性ガスを発生する。
【0040】
廃棄物の熱分解残渣は高温燃焼帯で溶融され、炉底部の溶融スラグ排出口11から抜き出される。一方、廃棄物の熱分解により生成した可燃性ガスは、フリーボード部において、三段羽口14から空気が吹込まれて部分燃焼し、排気管15から炉体10外に排出される。
【0041】
炉体10から排出されたガスは、二次燃焼炉2で二次燃焼用空気が吹き込まれて燃焼した後、ボイラ3及びエコノマイザ4へ送られて熱回収される。熱回収された排ガスはサイクロン5で比較的粗いダストが除去され、減温装置6で水Dが噴霧されて200℃以下程度に冷却される。次いで、排ガス中へ、塩化水素を除去するための消石灰粉やダイオキシン類を吸着して除去するための活性炭などの有害物除去剤が吹き込まれ、バグフィルタ等の集塵装置7へ送られて集塵処理された後、煙突から大気へ放散される。
【0042】
ガス化溶融炉1の炉体10から排出されたガスが集塵装置7へ達するまでの間に、落下灰が落下する。落下灰は、二次燃焼炉2、ボイラ3、エコノマイザ4、サイクロン5及び減温装置6から抜き出され、落下灰コンベア3Aに集められ、該落下灰コンベア3Aからダスト貯留槽16に搬送される。集塵装置7で集塵され集塵灰コンベア7Aで搬送された集塵灰の一部もダスト貯留槽16に搬送される。
【0043】
<ダスト吹込み>
ダスト貯留槽16に貯留されたダストは、ロータリバルブ17により所定量切出されて、シュート18と仕切弁19を経てダスト吹込み装置20に供給され、主羽口12から高温燃焼帯へ吹き込まれる。ダストは主羽口12から高温燃焼帯へ吹き込まれると、溶融して熱分解残渣の溶融物とともに炉底部の溶融スラグ排出口11から抜き出される。このように、ダストを溶融処理することにより、埋立処分量を大幅に削減することができる。
【0044】
ダストを主羽口12から高速で吹き込んでも耐摩耗材スリーブは摩耗することなく長期間連続してダストの溶融処理が可能である。ダストの吹込みは、酸素含有ガスによって行なわれるが、この酸素含有ガスの流速は羽口先端部で80〜150m/sとすることが好ましい。下限値(80m/s)より小さいとダストを搬送するのに支障を生じることがあるし、上限値(150m/s)より大きいと摩耗が生じることがあるからである。
【0045】
廃棄物の種類、装入量が変動し炉体内状況が変化し、これに対応して主羽口12から吹き込む酸素含有ガスの酸素濃度、送風量が調整される際には、ロータリバルブ17のダスト切出し量を調整して、ダストが円滑に溶融されるように制御する。
【0046】
本発明は、図1そして図2に図示された形態に限定されず、種々変更が可能である。例
えば、主羽口本体26における耐摩耗材スリーブは、図3のごとくの形態で主羽口本体26により保持されるようにできる。
【0047】
図3(A)においては、図1に示された段状の係止部26B−1を有する貫通孔26Bに挿入される耐摩耗材層を形成する耐摩耗材スリーブ26Cの左端に大径部をなすフランジ部26C−1を設けている。こうすることにより、耐摩耗材スリーブ26Cが、上記貫通孔26Bと半径方向隙間をもって挿入されても、耐摩耗材スリーブ26Cがダストからの摩擦力を受けた際に、上記フランジ26C−1が係止部26B−1と当接して炉内の方に向け移動してしまうことがない。
【0048】
次に、図3(B)では、耐摩耗材スリーブ26Cは、図3(A)のフランジに代えて、軸線方向中間部で外周面に段部26Dを設けていて、この段部26Dよりも左方が大径部分をなしている。主羽口本体26の貫通孔内面も、上記耐摩耗材スリーブ26Cの外周面に対応して段部を有しており、耐摩耗材スリーブ26Cが圧入あるいは隙間をもって挿入されても、耐摩耗材スリーブ26C内方向の移動が阻止される。
【0049】
また、図3(B)では、耐摩耗材スリーブ26Cはその外周面26Eが炉体方向へ細くなるテーパ状をなしている。主羽口本体26の貫通孔もこれに対応したテーパ状をなしているので、テーパ面同士が接面した位置で、軸線方向位置が定まり、耐摩耗材スリーブ26Cはそれ以上炉内方向に移動しない。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の一実施形態装置を有する廃棄物溶融炉と付随設備を示す概要構成図である。
【図2】図1の溶融炉に取り付けられるダスト吹込み装置を示す断面図である。
【図3】図2のダスト吹込み装置に用いられる主羽口本体の各種変形例を示し、(A)は耐摩耗材スリーブがフランジ部を有し、(B)は段部を有し、(C)はテーパ状外周面をもっている例である。
【符号の説明】
【0051】
1 廃棄物溶融炉
10 炉本体
12 (主)羽口
20 ダスト吹込み装置
22 酸素含有ガス供給管
23 送風管
23C 耐摩耗材層(スリーブ)
24 中間接続管
24C 耐摩耗材層(スリーブ)
26C 耐摩耗材層(スリーブ)
26C−1 フランジ部
26D 段部
26E (テーパ状)外周面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃棄物を炉内で熱分解し残渣を溶融する廃棄物溶融炉から排出され回収されたダストを羽口から炉内に酸素含有ガスと共に吹き込むダスト吹込み装置において、炉体に取り付けられる羽口と、該羽口に接続された送風管と、酸素含有ガスを送風管に送る酸素含有ガス供給管とを有し、該酸素含有ガス供給管をダスト合流のための分枝口を有する中間接続管を介して上記送風管に接続し、少なくとも、羽口、送風管そして中間接続管がそれぞれの内面に耐摩耗材層を有していることを特徴とする廃棄物溶融炉のダスト吹込み装置。
【請求項2】
耐摩耗材層は耐摩耗材スリーブであることとする請求項1に記載の廃棄物溶融炉のダスト吹込み装置。
【請求項3】
耐摩耗材層は、窒化珪素、ジルコニア、アルミナ、耐摩耗性クラッド鋼のうちの少なくとも一つで形成されていることとする請求項1又は請求項2に記載の廃棄物溶融炉のダスト吹込み装置。
【請求項4】
耐摩耗材スリーブは、羽口における耐摩耗材スリーブの外径が、炉内側に比し反炉内側での方が大きい大径部分を有しており、該大径部分が羽口内面の対応部と軸線方向で係合していることとする請求項2に記載の廃棄物溶融炉のダスト吹込み装置。
【請求項5】
大径部分はフランジ状の段部により形成されていることとする請求項4に記載の廃棄物溶融炉のダスト吹込み装置。
【請求項6】
大径部分はテーパ部により形成されていることとする請求項4に記載の廃棄物溶融炉のダスト吹込み装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−82629(P2008−82629A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−263754(P2006−263754)
【出願日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【出願人】(000004123)JFEエンジニアリング株式会社 (1,044)
【出願人】(593141481)JFE環境ソリューションズ株式会社 (47)
【Fターム(参考)】