説明

廃水処理剤

【課題】各種廃水に対し優れた凝集効果を示し、取り扱いが容易で且つ薬剤添加量が削減し処理コストの削減可能な廃水処理剤を提供する。
【解決手段】固有粘度が0.01〜4.0でジアルキルアミノアルキルメタクリレート塩化メチル4級塩を主成分とし(メタ)アクリルアミドを含まない水溶性ポリマーと鉄又はアルミ系の無機凝集剤から成り、水溶性ポリマーと無機凝集剤の配合比率が重量比として0.05/100〜10/100である廃水処理剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃水処理剤に関し、詳しくは、各種廃水に対し優れた凝集効果を示し、取り扱いが容易な廃水処理剤に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車製造工場、製鐵所、紙パルプ製造業、クリーニング、砂利産業、その他の化学工場などで発生する産業廃水、下水・し尿処理場の返水、及び生物処理水の凝集処理においては、一般的に、硫酸バンド(以下「バンド」と記す)、ポリ塩化アルミニウム(以下「PAC」と記す)等の無機凝集剤を添加した後に更に高分子凝集剤を添加して凝集フロックを生成させ、凝集沈殿又は凝集浮上法により処理する方法が採用されている。そして、浄化された処理水は、河川や下水に放流されるのが一般的である。
【0003】
ところで、放流水質の規制強化に対し、処理装置の改良や廃水処理方法の改善により、水質の向上が図られており、無機凝集剤使用量の増加が不可欠となっている。ところが、無機凝集剤の使用量を増加させると、薬品コストの増加、発生汚泥量の増加並びに発生汚泥処理コストが増大することになる。また、無機凝集剤の力だけでは、処理水のSSは関してはは満足できても、COD、濁度、色度などにおいて充分満足できる効果が得られない場合が多くある。
【0004】
上記のような状況下で処理水の水質を維持・向上しつつ、無機凝集剤使用量の低減を目的に水溶性カチオン重合体の一種である有機凝結剤の適用が進められている。ところが、有機凝結剤を適用した場合、無機凝集剤、有機凝結剤、高分子凝集剤と3種類の薬剤を使用するため、新たに有機凝結剤用の装置を設置すると共に運転管理が煩雑となるという問題がある。特に、無機凝集剤と有機凝結剤の添加比率が廃水の種類により異なるため、運転管理が一層煩雑となっている。
【0005】
上記のような状況下で無機凝集剤と有機凝結剤を配合した一液型の廃水処理剤が提案されている。例えば、ポリ塩化アルミニウム(PAC)とジアリルジメチルアンモニウムクロライド重合体(DADMAC)を配合した薬剤を使用する染色廃水の処理方法が提案されている(特許文献1)。また、PACとDADMACの混合物を使用する土木泥水の処理方法が提案されている(特許文献2)。更には、ポリアリルアミンと鉄又はアルミニウムの塩素化合物を配合した凝集剤が提案されている(特許文献3)。この凝集剤は、特に染色廃水の凝集処理に優れた効果を示すとされている。
【0006】
しかしながら、上記の薬剤は、何れも、使い勝手が良く、ある程度の効果はあるものの、凝集性能、処理コスト等の点で充分に満足できるとはいえない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平6−182350号公報
【特許文献2】特開平6−182353号公報
【特許文献3】特開平7−313804号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであり、その目的は、各種廃水に対し優れた凝集効果を示し、取り扱いが容易で且つ薬剤添加量が削減し処理コストの削減可能な廃水処理剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、鋭意検討を重ねた結果、ジアルキルアミノアルキルメタクリレート塩化メチル4級塩を主成分とする特定の水溶性ポリマーと無機凝集剤とを配合することにより、先行技術で提案された前記の廃水処理剤よりも凝集効果および処理水の水質に優れた廃水処理剤が得られるとの知見を得、本発明に至った。
【0010】
すなわち、本発明の要旨は、固有粘度が0.01〜4.0でジアルキルアミノアルキルメタクリレート塩化メチル4級塩を主成分とし(メタ)アクリルアミドを含まない水溶性ポリマーと鉄又はアルミ系の無機凝集剤から成り、水溶性ポリマーと無機凝集剤の配合比率が重量比として0.05/100〜10/100であることを特徴とする廃水処理剤に存する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の廃水処理剤は、一般的に市販されている無機凝集剤と同様の取り扱い性を有し、各種廃水に対し優れた凝集効果を示し、且つ薬剤添加量が削減し廃水処理コストを削減できる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0013】
本発明の廃水処理剤の一成分は、水溶性ポリマーであり、ジアルキルアミノアルキルメタクリレート塩化メチル4級塩を主成分とし、且つ(メタ)アクリルアミドモノマーを含まない重合体である。
【0014】
ジアルキルアミノアルキルメタクリレート塩化メチル4級塩としては、以下の化学式(I)で表されるジメチルアミノエチルメタアクリレート塩化メチル4級塩が好ましい。
【0015】
【化1】

【0016】
本発明で使用する水溶性ポリマーとしては、ジメチルアミノエチルメタアクリレート塩化メチル4級塩の単独重合体が好ましいが、凝結性能、溶液安定性、取り扱い性などに悪影響を及ぼさない範囲で他の単量体を共重合させても構わない。
【0017】
共重合可能なモノマーとしては、(メタ)アクリルアミドモノマー以外のモノマーであり、例えば、ジメチルアミノエチルメタアクリレートの硫酸塩、ジメチルアミノエチルメタアクリレートのベンジルクロライド4級塩、ジメチルアミノエチルアクリレート塩化メチル4級塩などのカチオン性モノマー及びアクリロニトリル、メタクリル酸メチル等のノニオン性モノマーが挙げられる。他の共重合可能なモノマーとの共重合比率は、特に制限されないが、10重量%以下が好ましい。
【0018】
なお、(メタ)アクリルアミドを共重合した重合体は、無機凝集剤と配合した場合に経時的に増粘するという欠点がある。その理由は、強酸性下での経時的な架橋反応によるものと推定される。特に、硫酸塩系無機凝集剤に配合した場合は増粘度合いが激しい傾向がある。
【0019】
本発明で使用する水溶性ポリマーの固有粘度は、0.01〜4.0であり、好ましくは0.03〜2.5である。固有粘度は、通常の方法に従い、1N硝酸ナトリウム水溶液中、温度30℃で測定した値を意味する。固有粘度が上記の範囲外の場合は、廃水処理剤として使用した際、凝集性、処理水の濁度および色度が劣る。
【0020】
本発明で使用する水溶性ポリマーの形状は、特に限定されず、粉末、液体の何れの形状でも構わない。また、その重合方法は、沈殿重合、塊状重合、分散重合、水溶液重合などが挙げられるが、特に限定されるものではない。一例として水溶液重合法による製造方法について以下に述べる。
【0021】
先ず、所定量のジメチルアミノエチルメタクリレート塩化メチル4級塩、イオン交換水を計量し、所定のpH、温度に調節した後に密閉可能な断熱容器に仕込む。次に、窒素ガスで溶存酸素を置換し、重合開始剤、連載移動剤などの薬品を添加する。重合開始剤としては、公知の一般的なアゾ開始剤、レドックス系開始剤などを使用することが出来る。重合の進行に伴い重合温度が上昇するが、温度がピークに達した後、1時間熟成し、反応容器より重合ゲルを取り出す。重合ゲルをミートチョッパー等により細断し、送風乾燥機で80℃の温度で乾燥する。乾燥ポリマーを0.5〜1mm程度の粒径になるように粉砕し、粉末の水溶性ポリマーを得る。
【0022】
本発明の廃水処理剤の他の一成分は、鉄又はアルミ系の無機凝集剤である。アルミ系無機凝集剤としては、バンド、PAC、塩化アルミ等が例示できる。また、鉄系の無機凝集剤としては、塩化第二鉄、ポリ硫酸鉄などが例示できる。無機凝集剤は、塩化物でも硫酸塩でも構わないが、塩化物の方が有機凝結剤を配合した際の粘度が低いために取り扱い性に優れる。
【0023】
水溶性ポリマーと無機凝集剤の配合比率は、重量比として、0.05/100〜10/100、好ましくは0.1/100〜5/100である。配合比率が上記の範囲未満の場合は、処理水の濁度および色度が無機凝集剤の単独使用の場合と同程度となり、水溶性ポリマーの配合の効果が発揮されない。また、配合比率が上記の範囲を超える場合は、凝集性が悪化し、濁度および色度が悪化する。更には、廃水処理剤の粘度が高く取り扱い性も悪化する。
【0024】
本発明の廃水処理剤の調製方法の一例は次の通りである。
【0025】
1.水溶性ポリマーが粉体の場合:
攪拌機を具備した容器に水と無機凝集剤を投入し、攪拌しながら水溶性ポリマーの粉体を加え、30〜60分程度攪拌して水に無機凝集剤と水溶性ポリマーとを溶解させ、本発明の廃水処理剤を得る。
【0026】
2.水溶性ポリマーが液体の場合:
上記と同様にして本発明の廃水処理剤を得る。ただし、形状が液体の場合は水溶性ポリマーが無機凝集剤に容易に溶解するため、攪拌時間は短く、数分以内で充分である。
【0027】
また、コンテナー、ローリー等に無機凝集剤を充填する場合は、予め、コンテナー、ローリー等に液体の水溶性ポリマーを投入しておき、その後に無機凝集剤を充填して本発明の廃水処理剤を調製することも出来る。この場合、無機凝集剤の充填を先に行ってもよい。
充填後コンテナーに投入することも可能である。更に、無機凝集剤を客先の貯槽に投入する際に液体の水溶性ポリマーを投入して混合することも可能である。
【0028】
本発明の廃水処理剤は無機凝集剤を使用する一般的な廃水処理方法と同様の方法で使用すればよい。具体的には、廃水に本発明の廃水処理剤を添加して混合した後、必要に応じpH調節を行い、高分子凝集剤を加えて凝集フロックを形成させ、沈殿処理或いは浮上処理により固液分離して処理水を得る。高分子凝集剤としては、従来公知のアニオン系、ノニオン系、カチオン系、両性系の何れの種類であってもよい。例えば、アニオン性高分子凝集剤としては、例えば、ポリアクリル酸ソーダ、ポリアクリルアミドの部分加水分解物、アクリルアミドとアクリル酸ソーダの共重合物、2−アクリルアミド−2メチルプロパンスルホン酸の重合物またはアクリルアミド等との共重合物等が挙げられる。ノニオン性高分子凝集剤としては、例えば、アクリルアミドの重合物または他のノニオン性モノマーとの共重合物等が挙げられる。
【0029】
本発明の廃水処理剤は、自動車製造工場、製鐵所、紙パルプ製造業、クリーニング、砂利産業、その他の化学工場などで発生する産業廃水、下水・し尿処理場の返水、生物処理水の凝集処理などにおいて従来の無機凝集剤の替わりに幅広く使用される。
【実施例】
【0030】
以下、本発明を実施例および比較例によって更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例に何ら限定されるものではない。なお、以下の諸例において採用した各測定方法は次の通りである。
【0031】
(1)高分子凝集剤の固有粘度:
固有粘度は、1N硝酸ナトリウム水溶液中、温度30℃の条件で、ウベローデ希釈型毛細管粘度計を使用し、定法に基づき測定した(高分子学会編、「新版高分子辞典」、朝倉書店,p.107)。
【0032】
(2)フロック径:
凝集フロックのフロック径は、目視により全体の平均を測定した。
【0033】
(3)沈降時間:
高分子凝集剤の所定量を添加し、所定時間攪拌混合した後に攪拌を停止する。そして、生成した凝集フロックが500mlのビーカーの底に沈降する迄の時間を測定した。
【0034】
(4)上澄液濁度(SS):
沈降時間を測定した後、2分間静置し、表面から3cmの深さより処理水を採取して測定した。工場排水試験法JIS K 0102に基づき測定した。
【0035】
(5)上澄液色度:
沈降時間を測定した後、2分間静置し、表面から3cmの深さより処理水を採取して測定した。工場排水試験法JIS K 0102に基づき、透過光測定方法で測定した。測定値は420nmの透過率(%)で示した。
【0036】
試験例1:
各重合体が各種無機凝集剤に溶解するか否かを調査した。使用した重合体を表1に示す。
試験結果を表2に示す。
【0037】
表1中、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド系重合物はダイヤニトリックス社製(表品名CHP795M)、アルキルアミン・エピクロロヒドリン縮合物はダイヤニトリックス社製(表品名K601)、ジシアンジアミド系重合物はダイヤニトリックス社製(表品名K415)、ポリエチレンイミンはダイヤニトリックス社製(表品名K409)及びポリビニルアミジンはダイヤニトリックス社製(表品名KP7000)を使用した。
【0038】
表2に示した溶解性の試験方法は以下の通りである。
【0039】
1.重合体が粉体の場合:
500mlのガラス製ビーカーに無機凝集剤を500g量り採る。攪拌しながら重合体5gを加え、60分間攪拌溶解する。60分攪拌後、液全量を100メッシュの篩に開け篩上の不溶物重量を量る。不溶解物の重量が10g未満を○(溶解)、10g以上を×(溶解不可)と表す。
【0040】
2.重合体が液体の場合:
500mlのガラス製ビーカーに無機凝集剤を500g量り採る。重合体を純分換算で5g投入し、3分間攪拌する。目視で不溶物が析出しなければ○(溶解)、析出すれば×(溶解不可)と表す。
【0041】
【表1】

【0042】
【表2】

【0043】
表2に示すように、本発明で使用するジメチルアミノエチルメタクリレート塩化メチル4級塩系水溶性ポリマーは鉄系、アルミ系の無機凝集剤に溶解する。しかし、ジメチルアミノエチルメタクリレート塩化メチル4級塩重合体でも固有粘度が本発明で規定した範囲より高い重合体は硫酸塩系無機凝集剤である硫酸バンドには溶解不可である。また、AAmを共重合した重合体、ジシアンジアミド系重合物ポリエチレンイミン及びポリビニルアミジンも溶解性が悪い。
【0044】
試験例2(廃水処理剤の安定性試験):
重合体と無機凝集剤を調合した廃水処理剤を室温で暗所に保存し、経時的な粘度変化を測定し、溶液安定性を調査した。溶液粘度は(株)東京計器社製のB型粘度を使用して測定した。結果を表3に示す。
【0045】
【表3】

【0046】
表3中の試験例2−1〜2−10に示すように、本発明で使用する水溶性ポリマーは、無機凝集剤の種類によらず4週間後の粘度増加率が10%程度であり安定している。そして、試験例2−11〜2−12に示すように、本発明で規定する範囲内において配合比を変えても4週間後の粘度増加率が10%程度であり安定している。
【0047】
比較試験例2−1及び比較試験例2−2に示すように、ジメチルアミノエチルメタクリレート塩化メチル4級塩重合体であっても固有粘度が本願発明で規定する範囲より高い場合は、粘度増加率が高く不安である。また、比較試験例2−3及び比較試験例2−4に示すように、AAmを含有する重合体を使用した場合および原料組成の異なる重合体を使用した場合も粘度増加率が高く不安である。また、比較試験例2−5に示すように、DADMAC系重合体を使用した場合は、4週間後の粘度増加率がPACとの併用において、25%、硫酸バンドとの併用において56%であり、大幅に粘度が増加する。
【0048】
実施例1〜5及び比較例1〜7:
Aダストコントロール用品のリース会社におけるモップ及びマット洗浄廃水を採取して凝集試験を実施した。廃水の性状は、pH=8.9、SS=350mg/l、420nmの透過率=2%であった。
【0049】
先ず、500mlのビーカーに廃水を500ml採取し、各種廃水処理剤或いはPACを添加し、150rpmの回転数で1分間攪拌、混合した後、pH5.5に調節した。次いで、高分子凝集剤としてアニオン系の高分子凝集剤A1(ダイヤニトリックス社製、表品名AP741B)を添加し、更に、100rpmの回転数で1分間攪拌して凝集フロックを形成させた。フロック径、凝集フロックの沈降時間、処理水の濁度および色度を測定した。結果を表4に示す。
【0050】
【表4】

【0051】
実施例1〜5に示すように、本発明の廃水処理剤は、何れも、凝集性が良好であり、濁度および色度が共に良好な処理水を得ることが出来る。
【0052】
比較例1及び2に示すように、ジメチルアミノエチルメタクリレート塩化メチル4級塩重合体であっても固有粘度が本発明で規定する範囲より高い場合は、凝集フロック径と沈降時間は問題ないが、処理水の濁度と色度が実施例より大幅に劣り、特に色度においてPACを使用した比較例7より劣る。
【0053】
比較例3及び4に示すように、AAmを含有する重合体、原料組成の異なる重合体を使用した場合は、凝集フロック径と沈降時間は問題ないが、処理水の濁度と色度が実施例より大幅に劣る。
【0054】
比較例5及び6に示すように、DADMAC或いはアルキルアミン・エピクロロヒドリン縮合物を使用した場合は、PACを使用した比較例7よりは良好な結果であるが、実施例に比較すると色度が大幅に劣る。
【0055】
比較例7に示すように、PACを使用した場合は、実施例と比較し、処理水の濁度および色度が大幅に劣る。
【0056】
実施例6〜12及び比較例8〜15:
N下水処理場の返流水(余剰汚泥の遠心濃縮分離液)を使用して凝集試験を実施した。廃水の性状は、pH=6.9、濁度(NTU)=287であった。
【0057】
先ず、500mlのビーカーに廃水を500ml採取し、各種廃水処理剤或いはPACを添加し、150rpmの回転数で1分間攪拌、混合した後、pH5.5に調節した。次いで、高分子凝集剤としてアニオン系の高分子凝集剤A2(ダイヤニトリックス社製、表品名AP120C)を添加し、更に、100rpmの回転数で1分間攪拌して凝集フロックを形成させた。フロック径、凝集フロックの沈降時間、処理水の濁度を測定した。結果を表5に示す。
【0058】
【表5】

【0059】
実施例6〜9に示すように、本発明の廃水処理剤(配合比:1/100)は、何れも、凝集性および処理水の濁度が共に良好である。また、実施例10〜12に示すように、本発明の廃水処理剤(配合比:0.1/100〜2/100)は、何れも、凝集性および処理水の濁度が共に良好である。上記の何れの配合比ともPACを使用した比較例7より優れるものの、0.1以下及び2以上の配合比ではDADMACを使用した比較例5と同程度の処理性能である。
【0060】
比較例8及び9に示すように、ジメチルアミノエチルメタクリレート塩化メチル4級塩重合体であっても固有粘度が本発明で規定する範囲より高い場合は、凝集フロック径および沈降時間は問題ないが、処理水の濁度が実施例より大幅に劣る。
【0061】
比較例10及び11に示すように、AAmを含有する重合体、原料組成の異なる重合体を使用した場合も、凝集フロック径および沈降時間は問題ないが、処理水の濁度が実施例より大幅に劣る。
【0062】
比較例12及び13に示すように、DADMAC或いはアルキルアミン・エピクロロヒドリン縮合物を使用した場合は、PACを使用した比較例7よりは良好な結果であるが、実施例に比較すると濁度が劣る。
【0063】
比較例14示すように、PACを使用した場合は、実施例に比較すると処理水の濁度が大幅に劣る。また、比較例15に示すように、PAC添加量を50%増加して600mg/l添加した場合、処理水の濁度は比較例14に比較して向上するが、実施例より劣る。
【0064】
実施例13〜17及び比較例16〜20:
実施例6〜12と同じN下水処理場の返流水(余剰汚泥の遠心濃縮分離液)を使用して凝集試験を実施した。
【0065】
先ず、500mlのビーカーに廃水を500ml採取し、各種廃水処理剤或いは各種無機凝集剤を添加し、150rpmの回転数で1分間攪拌、混合した後、pH5.5に調節した。次いで、高分子凝集剤としてアニオン系の高分子凝集剤A2(ダイヤニトリックス社製、表品名AP120C)を添加し、更に、100rpmの回転数で1分間攪拌して凝集フロックを形成させた。フロック径、凝集フロックの沈降時間、処理水の濁度を測定した。結果を表6に示す。
【0066】
【表6】

【0067】
実施例13〜15に示すように、本発明の廃水処理剤は、何れも、凝集性および処理水濁度が共に良好である。
【0068】
実施例16及び17に示すように、本発明における水溶性ポリマーとしてK2を使用し、無機凝集剤として、塩化アルミ(実施例16)又は塩化第二鉄(実施例17)を使用した場合、何れも、硫酸バンド或いはPACを使用した結果と同様に良好結果を得ることが出来る。
【0069】
比較例16に示すように、ジメチルアミノエチルメタクリレート塩化メチル4級塩重合体であっても固有粘度が本発明で規定する範囲より高い場合、また、比較例17に示すように、DADMACを使用した場合は、凝集フロック径、沈降時間及び処理水の濁度とも実施例25〜27より劣る。
【0070】
比較例18は硫酸バンド、比較例19は塩化アルミ、比較例20は塩化第二鉄を使用した場合であるが、それぞれ、K2を配合した廃水処理剤の実施例14、15、16に比較し、凝集フロック径、沈降時間及び処理水の濁度とも大幅に劣る。
【0071】
実施例18〜23及び比較例21〜27:
T製紙会社の工場廃水(マシーン/DIP混合廃水)を使用して凝集試験を実施した。廃水の性状はpH=8.4、濁度(NTU)=107であった。
【0072】
先ず、500mlのビーカーに廃水を500ml採取し、廃水処理剤或いは塩化アルミを添加し、150rpmの回転数で1分間攪拌、混合した。次いで、高分子凝集剤としてアニオン系の高分子凝集剤A3(ダイヤニトリックス社製、表品名AP805C)を添加し、更に、100rpmの回転数で1分間攪拌して凝集フロックを形成させた。フロック径、凝集フロックの沈降時間、処理水の濁度を測定した。結果を表7に示す。
【0073】
【表7】

【0074】
実施例18〜20に示すように、本発明の廃水処理剤(配合比1/100)は、何れも、凝集性および処理水濁度が共に良好である。実施例21〜23に示すように、本発明の廃水処理剤(配合比0.1/100〜2/100)は、何れも、凝集性および処理水濁度が共に良好である。上記の何れの配合比とも、塩化アルミ(比較例26)、DADMAC(比較例24)及びアルキルアミン・エピクロロヒドリン縮合物(比較例25)より優れている。
【0075】
比較例21及び22に示すように、ジメチルアミノエチルメタクリレート塩化メチル4級塩重合体であっても固有粘度が本発明で規定する範囲より高い場合は、凝集フロック径および沈降時間は問題ないが、処理水の濁度が実施例より大幅に劣る。
【0076】
比較例23及び24に示すように、AAmを含有する重合体、原料組成の異なる重合体を使用した場合は、凝集フロック径、沈降時間は問題ないが、処理水の濁度が実施例より大幅に劣る。
【0077】
比較例25及び26に示すように、配合する重合体としてDADMAC或いはアルキルアミン・エピクロロヒドリン縮合物使用した場合は、塩化アルミを使用した比較例26よりは良好な結果であるが、実施例に比較すると濁度が劣る。
【0078】
比較例27に示すように、塩化アルミを使用した場合は、凝集フロック径および沈降時間は問題ないが、処理水の濁度が実施例より大幅に劣る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固有粘度が0.01〜4.0でジアルキルアミノアルキルメタクリレート塩化メチル4級塩を主成分とし(メタ)アクリルアミドを含まない水溶性ポリマーと鉄又はアルミ系の無機凝集剤から成り、水溶性ポリマーと無機凝集剤の配合比率が重量比として0.05/100〜10/100であることを特徴とする廃水処理剤。
【請求項2】
水溶性ポリマーがジメチルアミノエチルメタクリレート塩化メチル4級塩の単独重合体である請求項1に記載の廃水処理剤。

【公開番号】特開2012−115790(P2012−115790A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−269676(P2010−269676)
【出願日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【出願人】(301057923)ダイヤニトリックス株式会社 (127)
【Fターム(参考)】