説明

廃液ガス化処理装置

【課題】 バイオディーゼルの精製時に副産物として生成されるグリセリン廃液を減容して処理コストを低減する。
【解決手段】 ボイラ2と共に用いられ、グリセリン廃液の一部をガス化して焼却する装置である。ボイラ2の排ガスの一部は、供給路10を介して、処理槽7内へ供給される。グリセリン廃液は、廃液ポンプ14を介して、噴霧ノズル18から処理槽7内へ噴霧される。これにより、処理槽7内において廃液と排ガスとを直接熱交換させて、廃液のガス化が図られる。排ガスがイナートガスとして作用し、簡易で安全にガス化される。廃液のガス化分であるガス化廃液は、戻し路19を介してボイラ2へ供給され、ボイラ2の主燃料と混焼される。処理槽7内の底部に残る残渣は、残渣回収タンク9へ回収される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、たとえばバイオディーゼルの精製時に副産物として生成されるグリセリン廃液のように、可燃成分を含む廃液の処理に適用され、そのような廃液をガス化後に焼却する廃液ガス化処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
バイオディーゼルの精製時には、副産物としてグリセリン廃液が生成される。この種の廃液は、その処理に手間と費用を要する。すなわち、グリセリン廃液は、アルカリ性であるため、酸により中和することが必要であるが、そのような中和処理には、設備の導入および運用に、手間と費用を要する。
【0003】
一方、廃液の処理方法として、下記特許文献1に開示される方法も知られている。すなわち、同文献の第2図に開示されるように、バーナ(22)による火炎または燃焼ガス中に、スプレイ(3)から廃液を噴霧して焼却することが知られている。また、同文献の第1図に開示されるように、起動用炉(10)で蒸発塔(1)などの設備を昇温した後、蒸発塔(1)内へスプレイ(3)から廃液を噴霧して完全蒸発させ、そのガスを燃焼触媒層(9)で燃焼させ、その排ガスの一部を蒸発塔(1)へ戻すことも知られている。
【特許文献1】特開平2−213608号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記特許文献1に開示される発明の場合、既存のボイラなどを利用できる構成ではない。
【0005】
また、前記特許文献1に開示される発明の場合、噴霧によりガス化された廃液は、起動用炉(10)へ供給されるものではなく、触媒層(9)へ供給されるものである。触媒層(9)は、燃料および燃焼用空気が直接に供給されないので、安定して確実に焼却できないおそれがある。
【0006】
さらに、前記特許文献1に開示される発明の場合、廃液を常に全量蒸発させる構成である。このように廃液を全量蒸発させるのでは、ガス化した廃液を仮にボイラへ戻すとしても、廃液中に腐食成分が含まれる場合、ボイラに悪影響を及ぼすおそれがある。
【0007】
この発明が解決しようとする課題は、ボイラやエンジンなどの既存燃焼機器との相性がよく、安定して確実に焼却できる廃液ガス化処理装置を提供することにある。また、好ましくは、廃液中に腐食成分が含まれても、ボイラなどの燃焼機器に影響を与えない廃液ガス化処理装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、前記課題を解決するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、燃料および燃焼用空気が供給されてその燃料を燃焼させる燃焼機器と共に用いられ、可燃成分を含む廃液の一部または全部をガス化して焼却する装置であって、中空容器から構成される処理槽と、この処理槽内へ前記燃焼機器からの排ガスを供給する供給路と、前記処理槽内へ廃液を噴霧して、前記処理槽内において廃液と排ガスとを直接熱交換させて廃液のガス化を図る噴霧ノズルと、廃液のガス化分であるガス化廃液を前記燃焼機器で燃焼させるために、前記処理槽から前記燃焼機器へガス化廃液を供給する戻し路とを備えることを特徴とする廃液ガス化処理装置である。
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、ボイラなどの燃焼機器の排ガスを処理槽内へ導入し、その処理槽内へ廃液を噴霧してガス化し、そのガス化廃液(廃液のガス化分)は処理槽内の排ガスとの混合気体として燃焼機器へ戻される。燃焼により酸素濃度が低下した排ガスを用いて、処理槽内で廃液のガス化を図るので、排ガスがイナートガスとして作用し、簡易で安全にガス化を図ることができる。しかも、処理槽内の排ガスとガス化廃液とは、燃料を燃焼させる燃焼機器へ戻されるので、上述したように酸素濃度が低くても、燃焼機器において安定して確実に焼却される。さらに、燃焼機器自体に廃液を噴霧する構成ではないので、既存のボイラなどを燃焼機器として利用し易い。
【0010】
請求項2に記載の発明は、廃液が貯留された廃液タンクと、この廃液タンクからの廃液を前記噴霧ノズルへ供給する廃液ポンプと、前記廃液タンクから前記廃液ポンプへ供給される廃液を、前記燃焼機器からの排ガスと間接熱交換させて昇温する熱交換器とをさらに備え、前記燃焼機器からの排ガスは、一部が前記処理槽内へ供給される一方、残りが前記熱交換器を介して排出されることを特徴とする請求項1に記載の廃液ガス化処理装置である。
【0011】
請求項2に記載の発明によれば、燃焼機器からの排ガスを用いて、噴霧ノズルへの廃液を予熱することができる。しかも、廃液ポンプよりも上流において廃液を予熱することで、廃液の粘度を低下させて、廃液を噴霧ノズルへ円滑に供給することができる。
【0012】
請求項3に記載の発明は、前記燃焼機器から前記処理槽内へ供給される排ガスを昇温するヒータが前記供給路に設けられたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の廃液ガス化処理装置である。
【0013】
請求項3に記載の発明によれば、燃焼機器から処理槽内へ供給される排ガスを、ヒータにより昇温することができる。しかも、処理槽内へ供給される排ガスのみを、ヒータにより直接に昇温するので、処理槽内の雰囲気温度を円滑で確実に調整できる。
【0014】
請求項4に記載の発明は、前記処理槽内へ供給される排ガスの温度に基づき、前記処理槽内への排ガス供給量、前記ヒータによる排ガス加熱量、および前記噴霧ノズルによる廃液噴霧量の内、いずれか一以上が調整されることを特徴とする請求項3に記載の廃液ガス化処理装置である。
【0015】
請求項4に記載の発明によれば、排ガス量、排ガス温度、または廃液噴霧量を制御することができる。これにより、廃液中の成分を、選択的にガス化することができる。これにより、廃液中に腐食成分が含まれる場合、腐食成分はガス化しないよう操作することで、ガス化廃液を燃焼機器へ戻しても、燃焼機器への悪影響を回避することができる。ところで、ガス化せずに処理槽内に残る残渣は、適宜、処理槽内から分離、回収すればよい。その場合でも、ガス化した分だけ廃液は減容化されるので、廃液の処理コストは低減される。
【0016】
請求項5に記載の発明は、前記戻し路内を設定温度以上として運転されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の廃液ガス化処理装置である。
【0017】
請求項5に記載の発明によれば、処理槽からのガスを燃焼機器へ戻す間に、ガス化廃液が凝縮してしまうのを防止できる。
【0018】
請求項6に記載の発明は、前記供給路および/または前記戻し路に、逆流を防止する送風機が設けられたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の廃液ガス化処理装置である。
【0019】
請求項6に記載の発明によれば、送風機を設置することにより、燃焼機器の燃焼室と廃液ガス化処理装置の処理槽との差圧により、ガスが逆流するのを防止できる。
【0020】
請求項7に記載の発明は、前記噴霧ノズルは、廃液と排ガスとの二流体噴霧ノズルとされることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の廃液ガス化処理装置である。
【0021】
請求項7に記載の発明によれば、廃液と排ガスとの二流体噴霧ノズルにより、より確実に、廃液のガス化を促すことができる。
【0022】
さらに、請求項8に記載の発明は、前記廃液は、バイオディーゼルの精製時に副産物として生成されるグリセリン廃液とされることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の廃液ガス化処理装置である。
【0023】
請求項8に記載の発明によれば、バイオディーゼルの精製時に副産物として生成されその処理が問題となっているグリセリン廃液を、容易で確実に処理することができる。
【発明の効果】
【0024】
この発明によれば、ボイラやエンジンなどの既存燃焼機器との相性がよく、安定して確実に廃液を処理することができる廃液ガス化処理装置を提供することができる。また、実施の形態に応じて、廃液中の可燃成分を選択的にガス化することができる。その場合、廃液中に腐食成分が含まれても、腐食成分のガス化は抑制することで、ボイラなどの燃焼機器に影響を与えずに、廃液の減容を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、この発明の具体的実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の廃液ガス化処理装置の一実施例の使用状態を示す概略図である。
【0026】
本発明の廃液ガス化処理装置1は、可燃成分を含む廃液の一部または全部をガス化して焼却する装置である。廃液は、特に限定されないが、ここではバイオディーゼルの精製時に副産物として生成されるグリセリン廃液とされる。グリセリン廃液は、グリセリンを主成分としたメタノール、アルカリ成分を含んだ廃液である。たとえば廃食用油からバイオディーゼルをアルカリ触媒法により製造する際、廃食用油にメタノールと触媒とを混合し加熱攪拌するが、これによるエステル交換反応により分離除去されるグリセリン廃液である。
【0027】
本発明の廃液ガス化処理装置1は、燃焼機器と共に用いられる。燃焼機器は、燃焼排ガスを伴う機器であれば特に限定されないが、典型的にはボイラ2とされる。ボイラ2は、油焚きボイラまたはガス焚きボイラであれば特に限定されないが、たとえば多管式の蒸気ボイラとされる。
【0028】
図1では、廃液ガス化処理装置1は、ガス焚きの蒸気ボイラ2と共に用いられている。蒸気ボイラ2は、たとえば多管式の小型貫流ボイラとされる。この場合、ボイラ2は、上部管寄せと下部管寄せとの間を多数の水管で接続して構成される缶体3と、この缶体3内で燃料を燃焼させるバーナ(図示省略)と、缶体3および/またはバーナへ燃焼用空気を供給する送風機4とを備える。なお、缶体3やバーナへは、空気供給路5を介して送風機4から空気が供給され、バーナへは、燃料供給路6を介して燃料が供給される。
【0029】
本実施例の廃液ガス化処理装置1は、処理槽7と、廃液タンク8と、残渣回収タンク9とを備える。処理槽7は、中空容器から構成され、ボイラ2から排ガスが導入されると共に、廃液タンク8から廃液が噴霧される。ボイラ2の排ガスを処理槽7内へ供給するために、ボイラ2の缶体3または煙道もしくは煙突と、廃液ガス化処理装置1の処理槽7とは、供給路10により接続される。これにより、ボイラ2の排ガスの一部または全部が、ボイラ2から供給路10へ導入される。なお、本実施例では、供給路10は、処理槽7の底部よりも若干上方に接続される。
【0030】
ボイラ2から処理槽7への排ガスの供給路10には、所望により、送風機11および/またはヒータ12が設けられる。これら双方を設ける場合、供給路10には、ボイラ2の側から順に、送風機11とヒータ12とが設けられる。送風機11は、ボイラ2と処理槽7との差圧を考慮して、ボイラ2から処理槽7内へ排ガスを円滑に供給するために、所望により設けられる。また、ヒータ12は、ボイラ2から処理槽7内へ供給される排ガスの温度を考慮して、処理槽7内へ供給される排ガスの温度を高めるために、所望により設けられる。
【0031】
廃液タンク8は、廃液ガス化処理装置1によりガス化しようとする廃液が貯留された容器である。廃液タンク8は、廃液路13を介して処理槽7と接続される。廃液路13には、廃液ポンプ14が設けられる。この廃液ポンプ14を作動させることで、廃液タンク8内の廃液は、廃液路13を介して処理槽7内へ供給される。
【0032】
廃液路13には、廃液タンク8と廃液ポンプ14との間に、所望により熱交換器15が設けられる。熱交換器15は、一次側と二次側とに分けられ、一次側にはボイラ2からの排ガスが通され、二次側には廃液タンク8からの廃液が通される。具体的には、ボイラ2から処理槽7への排ガスの供給路10は、中途(送風機11が設けられる場合には送風機11より下流で、ヒータ12が設けられる場合にはヒータ12よりも上流)において分岐されており、その分岐路16は熱交換器15の一次側に接続される。従って、分岐路16から熱交換器15へ供給される排ガスと、廃液タンク8から廃液ポンプ14へ供給される廃液とを間接熱交換させて、廃液タンク8から廃液ポンプ14へ供給する廃液を昇温することができる。使用後の排ガスは、熱交換器15から外部へ排出される。
【0033】
ところで、供給路10には、処理槽7内へ供給する排ガスの流量を調整する流量調整手段17が設けられている。本実施例では、供給路10と分岐路16との分岐部に、ボイラ2からの排ガスを処理槽7へ供給するか熱交換器15へ供給するかの分配割合を調整可能に、ダンパまたは電動三方弁が設けられている。但し、これに代えて、前記分岐部よりも下流の供給路10に、単にダンパを設けるだけでもよい。
【0034】
廃液ポンプ14からの廃液は、噴霧ノズル18により処理槽7内へ噴霧される。本実施例では、噴霧ノズル18は、処理槽7の上部に、下方へ向けて設けられる。これにより、上方から下方へ噴霧される廃液と、下方から上方へ流れる排ガスとが、対向流で直接熱交換され、廃液のガス化が図られる。この際、噴霧された廃液の全部をガス化させてもよいが、本実施例では廃液の一部をガス化させている。排ガスの温度、および/または、排ガスと噴霧廃液との接触時間を制御することにより、ガス化率およびガス化成分を制御することができる。
【0035】
具体的には、処理槽7内へ供給される排ガスの温度、処理槽7内へ供給される排ガスの流量、噴霧ノズル18による廃液の噴霧量の内、一または複数の要素を調整することで、ガス化率およびガス化成分を調整できる。なお、ガス化率とは、処理槽7内へ噴霧された廃液の内、ガス化する割合をいう。たとえば、処理槽7内へ噴霧された廃液の8割をガス化する場合、ガス化率は80%であり、残り20%が処理槽7の底部に残渣として溜まることになる。また、処理槽7内の温度などに応じて、噴霧された廃液中からガス化させる成分を調整できることになる。
【0036】
処理槽7の上部には、ガス化廃液(廃液のガス化分)と排ガスとの混合気体を導出する戻し路19が接続されている。戻し路19は、処理槽7の上部とボイラ2とを接続する。戻し路19には、所望により送風機20が設けられる。この送風機20は、ボイラ2と処理槽7との差圧を考慮して、処理槽7からボイラ2へガス化廃液を含む排ガスを円滑に供給するために、所望により設けられる。
【0037】
処理槽7から戻し路19を介してボイラ2へ供給される気体は、燃料または燃焼用空気としてボイラ2で利用される。たとえば、発熱量が低い場合には、戻し路19の先端部を送風機4の吸込み口に接続するなどして、処理槽7からの気体を空気に混ぜればよい。また、発熱量が比較的ある場合には、バーナへの燃料(および燃焼用空気)に予混合してもよい。いずれにしても、処理槽7からの気体は、その性状に応じて、燃料または燃焼用空気として用いられ、ボイラ2において主燃料との混焼が図られる。そして、その排ガスの一部は、再び処理槽7へ供給される。
【0038】
残渣回収タンク9は、ドラム缶などの中空容器である。残渣回収タンク9は、処理槽7の底部と残渣回収路21を介して接続される。残渣回収路21には、手動弁または電磁弁から構成される残渣回収弁22が設けられている。この残渣回収弁22を開くことで、処理槽7内の底部に溜まった残渣は、重力により残渣回収タンク9へ自動的に排出される。
【0039】
廃液ガス化処理装置1は、制御器(図示省略)により制御される。制御器は、送風機11,20、ヒータ12、廃液ポンプ14、流量調整手段17などに接続される。また、本実施例では、処理槽7への排ガスの供給路10の先端部に、入口温度センサ23が設けられる一方、処理槽7からの気体の戻し路19の基端部に、出口温度センサ24が設けられる。入口温度センサ23は、処理槽7内へ供給される排ガスの温度を監視し、出口温度センサ24は、処理槽7外へ導出される気体の温度を監視する。そして、制御器は、これら温度センサ23,24にも接続される。そして、制御器は、これら温度センサ23,24による検出温度などに基づき、送風機11,20、ヒータ12、廃液ポンプ14、流量調整手段17などを制御して、後述するように、廃液をガス化してボイラ2において焼却する。但し、送風機11,20およびヒータ12は、設置されない場合があることは、前述したとおりである。
【0040】
以下、本実施例の廃液ガス化処理装置1による廃液処理について説明する。
ボイラ2においては、通常どおり、燃料および燃焼用空気が供給され、缶体3内で燃料の燃焼が図られる。それにより、各水管内の水は、加熱され蒸気化される。ボイラ2からの蒸気は、気水分離器などを介して、蒸気利用機器へ供給される。
【0041】
ボイラ2の排ガスの一部は、供給路10を介して処理槽7内へ供給される。この供給量は、供給路10に設けた流量調整手段17により調整される。供給路10に送風機11を備える場合、ボイラ2の排ガスは、昇圧されて処理槽7内へ供給される。また、供給路10にヒータ12を備える場合、制御器は、入口温度センサ23による検出温度に基づきヒータ12を制御して、処理槽7内へ供給する排ガスを設定温度に維持する。このようにして、ボイラ2の排ガスは、一部が処理槽7内に導入され、残りが分岐路16および熱交換器15を介して外部へ排出される。
【0042】
また、制御器は、廃液ポンプ14を作動させて、噴霧ノズル18から処理槽7内へ廃液を噴霧する。この際、廃液タンク8から廃液ポンプ14へ供給される廃液は、熱交換器15において昇温される。廃液ポンプ14よりも上流において廃液を昇温することで、廃液の粘度を低下させて、廃液ポンプ14における廃液の取り扱いを容易にする。また、廃液は、粘度を低下されることで、噴霧ノズル18から円滑に噴霧される。
【0043】
処理槽7内では、廃液と排ガスとを直接熱交換させて、廃液のガス化が図られる。噴霧ノズル18により廃液を噴霧することで、廃液は微粒化され表面積が大きくなり、ガス化を促される。ボイラ2における燃焼により酸素濃度が低下した排ガスを用いて、処理槽7内で廃液のガス化を図るので、排ガスがイナートガスとして作用し、簡易で安全にガス化を図ることができる。
【0044】
本実施例では、供給路10が処理槽7の下部に接続される一方、噴霧ノズル18および戻し路19が処理槽7の上部に接続される。これにより、上方から下方へ噴霧される廃液と、下方から上方へ流れる排ガスとが、対向流で直接熱交換され、廃液のガス化が促される。
【0045】
処理槽7内でガス化された廃液は、排ガスと共に、戻し路19からボイラ2へ導入される。そして、処理槽7からのガス化廃液は、ボイラ2において主燃料と混焼される。その後、その排ガスの一部は、処理槽7へ供給される。
【0046】
運転に伴い、処理槽7の底部には残渣が溜まるが、所望により残渣回収弁22が開けられることで、残渣は残渣回収タンク9へ回収される。処理槽7内においてガス化されボイラ2において焼却されることで、廃液は減容されており、残渣処理の手間と費用は低減される。また、廃液の蒸発分をボイラ2で燃焼させることで、ボイラ2の燃料を削減することもできる。
【0047】
このような一連の廃液のガス化焼却処理中、制御器は、入口温度センサ23の検出温度に基づき、流量調整手段17、ヒータ12および廃液ポンプ14のいずれか一以上を調整してもよい。流量調整手段17を制御することで、処理槽7内への排ガスの供給量を調整することができる。ヒータ12を制御することで、処理槽7内への排ガスの温度を調整することができる。廃液ポンプ14を制御することで、噴霧ノズル18による廃液噴霧量を調整することができる。これらを制御することにより、前述したように、排ガスの温度、および/または、排ガスと噴霧廃液との接触時間を制御することにより、ガス化率およびガス化成分を制御することができる。従って、安定した性状のガス化廃液をボイラ2へ供給することができる。
【0048】
バイオディーゼルの精製時に副産物として生成されるグリセリン廃液の場合、廃液中にはリンの他、バイオディーゼル製造時の触媒に応じてナトリウムまたはカリウムが含まれる。これらは難燃成分または腐食成分であるから、ボイラ2で燃焼させるには不都合である。そこで、これら成分をガス化しないように、ガス化成分を制御するのが好ましい。燃焼不適合成分や腐食成分をガス化しないことで、ボイラ2を傷めるおそれはない。
【0049】
また、制御器は、出口温度センサ24の検出温度を監視して、流量調整手段17、ヒータ12および廃液ポンプ14のいずれか一以上を調整することで、戻し路19内を設定温度以上として運転するのが好ましい。これにより、処理槽7からのガスをボイラ2へ戻す間に、戻し路19内でガス化廃液が凝縮してしまうのを防止できる。
【0050】
本発明の廃液ガス化処理装置1は、前記実施例の構成に限らず適宜変更可能である。たとえば、噴霧ノズル18は、廃液と排ガスとの二流体噴霧ノズルとしてもよい。この場合、廃液と排ガスとの二流体噴霧ノズルにより、より確実に、廃液のガス化を促すことができる。また、廃液とボイラ2からの蒸気とを、二流体噴霧ノズルにより、処理槽7内へ噴霧してもよい。さらに、熱交換器15は、前記実施例では、廃液タンク8と廃液ポンプ14との間の廃液路13に設けられたが、場合により廃液タンク8に設けてもよい。この場合も、ボイラ2からの排ガスにより、廃液ポンプ14へ送られる廃液の粘度を下げることができる。
【0051】
また、前記実施例では、噴霧ノズル18から噴霧された廃液の一部をガス化する例について説明したが、場合により、噴霧された廃液の全部をガス化してもよい。その場合、残渣回収タンク9、残渣回収路21および残渣回収弁22の設置を省略することができる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の廃液ガス化処理装置の一実施例の使用状態を示す概略図である。
【符号の説明】
【0053】
1 廃液ガス化処理装置
2 ボイラ(燃焼機器)
7 処理槽
8 廃液タンク
9 残渣回収タンク
10 供給路
11 (供給路の)送風機
12 ヒータ
14 廃液ポンプ
15 熱交換器
18 噴霧ノズル
19 戻し路
20 (戻し路の)送風機
23 入口温度センサ
24 出口温度センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料および燃焼用空気が供給されてその燃料を燃焼させる燃焼機器と共に用いられ、可燃成分を含む廃液の一部または全部をガス化して焼却する装置であって、
中空容器から構成される処理槽と、
この処理槽内へ前記燃焼機器からの排ガスを供給する供給路と、
前記処理槽内へ廃液を噴霧して、前記処理槽内において廃液と排ガスとを直接熱交換させて廃液のガス化を図る噴霧ノズルと、
廃液のガス化分であるガス化廃液を前記燃焼機器で燃焼させるために、前記処理槽から前記燃焼機器へガス化廃液を供給する戻し路と
を備えることを特徴とする廃液ガス化処理装置。
【請求項2】
廃液が貯留された廃液タンクと、
この廃液タンクからの廃液を前記噴霧ノズルへ供給する廃液ポンプと、
前記廃液タンクから前記廃液ポンプへ供給される廃液を、前記燃焼機器からの排ガスと間接熱交換させて昇温する熱交換器とをさらに備え、
前記燃焼機器からの排ガスは、一部が前記処理槽内へ供給される一方、残りが前記熱交換器を介して排出される
ことを特徴とする請求項1に記載の廃液ガス化処理装置。
【請求項3】
前記燃焼機器から前記処理槽内へ供給される排ガスを昇温するヒータが前記供給路に設けられた
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の廃液ガス化処理装置。
【請求項4】
前記処理槽内へ供給される排ガスの温度に基づき、前記処理槽内への排ガス供給量、前記ヒータによる排ガス加熱量、および前記噴霧ノズルによる廃液噴霧量の内、いずれか一以上が調整される
ことを特徴とする請求項3に記載の廃液ガス化処理装置。
【請求項5】
前記戻し路内を設定温度以上として運転される
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の廃液ガス化処理装置。
【請求項6】
前記供給路および/または前記戻し路に、逆流を防止する送風機が設けられた
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の廃液ガス化処理装置。
【請求項7】
前記噴霧ノズルは、廃液と排ガスとの二流体噴霧ノズルとされる
ことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の廃液ガス化処理装置。
【請求項8】
前記廃液は、バイオディーゼルの精製時に副産物として生成されるグリセリン廃液とされる
ことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の廃液ガス化処理装置。

【図1】
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【公開番号】特開2010−7894(P2010−7894A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−164717(P2008−164717)
【出願日】平成20年6月24日(2008.6.24)
【出願人】(000175272)三浦工業株式会社 (1,055)
【Fターム(参考)】