説明

廃液処理装置

【目的】 廃液への加熱効率を向上させることにより、廃液を噴出させてその略霧状又は水滴状の廃液を効率的に加熱してその水分をほぼ完全に蒸発・乾燥させ残存分を炭化させることをほぼ確実に行うことができる廃液処理装置を提供する。
【構成】 廃液を上方から所定の容器内の下方に向けて略霧状又は水滴状に噴出させるための噴出手段と、前記噴出手段から噴出された略霧状又は水滴状の液体を前記容器内で加熱するための加熱手段と、前記容器の内壁面から内部方向に向かって延びる突部であって前記容器の下方から上方に向けて略スパイラル状に連続的に配置されている突部から成り、前記噴出された略霧状又は水滴状の液体が前記容器の下方で加熱されることにより生成された蒸気が前記容器の内壁面側を略スパイラル状に上昇するように、前記蒸気をガイドするためのガイド部と、を備えたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃液の水分を蒸発・乾燥させて残存分の固形物を炭化させるなどの方法により廃液を処理するための廃液処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、廃液を燃焼炉で乾燥・熱分解させて炭化処理する装置が知られている。例えば、特許文献1は、燃焼炉内を例えば750℃に加熱しておき、廃液ポンプを作動させて廃液タンクから廃液を燃焼炉へ送ると共に送風機により燃焼用空気を送り、燃焼炉内では、前記の送られてきた廃液と燃焼用空気を混合して燃焼炉内の噴霧ノズルから噴射して、この噴射した霧状の廃液を蒸発・乾燥させて高温酸化脱臭するようにした廃液処理装置を提案している。なお、この特許文献1の装置では、前記の燃焼炉から出た高温の排ガスは、洗浄塔の内筒の上部から内筒の内部に入って下降し、内筒の下端部から出ると同時に上方へ反転して外筒の内部を上昇し、洗浄用セラミックリング(多孔質充填床)を通過する間に洗浄液によって洗浄される。この場合、前記燃焼炉から出た高温の排ガスは、内筒の上部から下端部へ下降する際に、前記の既にセラミックリングを通過して洗浄されて温度が下がった状態の外筒内を上昇するガスと内筒を挟んで向流で流れるようになる。そのため、前記燃焼炉から出た高温の排ガスは、前記内筒内を下降する過程で冷却される。他方、これと同時に、前記の外筒内を上昇する洗浄されたガスは、前記内筒内を下降する高温の排ガスにより加熱される(このとき洗浄により生じる白煙が減少することとなる)。そして、前記の外筒内を上昇する洗浄されたガスは、最終的に排風機により排ガス出口から系外に排出される。
【特許文献1】実用新案登録第3014744号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、前述のような従来の廃液処理装置においては、前記内筒の内部で廃液を加熱する効率が悪いため、廃液を噴霧させてその霧状の廃液を加熱して蒸発・乾燥させようとしても、廃液に含まれる水分を十分に蒸発させることができず、容器内に濃縮された液体が残ってしまうことがほとんどであり、廃液からその水分をほぼ完全に蒸発・乾燥させて残りを炭化させることは実際には極めて難しいというのが現状であった。
【0004】
本発明はこのような従来技術の問題点に着目してなされたものであって、容器内での廃液の加熱効率を大幅に向上させることにより、廃液を噴出して成る略霧状又は水滴状の廃液を容器内で極めて効率的に加熱してその水分を完全に蒸発・乾燥させ残存分の固形物を炭化させることを確実に行うことができる廃液処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上のような課題を解決するための本発明による廃液処理装置は、廃液を上方から所定の容器内の下方に向けて略霧状又は水滴状に噴出させるための噴出手段と、前記噴出手段から噴出された略霧状又は水滴状の液体を前記容器内で加熱するための加熱手段と、前記容器の内壁面から容器の内部方向に向かって延びる突部であって前記容器の下方から上方に向けて略スパイラル状に連続的に形成されて成る突部から成り、前記噴出された略霧状又は水滴状の液体が前記容器内で加熱されて生成された蒸気が前記容器の内壁面側を略スパイラル状に移動・旋回しながら上昇するように、前記蒸気をガイドするためのガイド部と、を備えたことを特徴とするものである。
【0006】
また、本発明による廃液処理装置は、廃液の水分を蒸発させて残存分の固形分を炭化させて処理するための廃液処理装置であって、外側容器とこの外側容器の内部に配置されておりその底部が開口部となって前記外側容器の内部と繋がっている内側容器とから成る二重構造の容器と、前記内側容器の上方から下方に向けて廃液を略霧状又は水滴状に噴出させるための噴出手段と、前記略霧状又は水滴状に噴出された廃液を、前記内側容器の内部で加熱するための加熱手段と、前記内側容器と外側容器との間に形成された熱ガス流路であって、前記内側容器内の略霧状又は水滴状の液体を加熱するように、前記加熱手段により加熱されて生成された熱ガスを下方から上方へ流通させるための熱ガス流路と、前記内側容器の内壁面から容器の内部方向に向かって延びる突部であって前記内側容器の下方から上方に向けて略スパイラル状に連続的に形成されて成る突部から成り、前記噴出された略霧状又は水滴状の液体が前記内側容器内で加熱されて生成された蒸気が、前記内側容器の内壁面側を略スパイラル状に移動・旋回しながら上昇するように、前記蒸気をガイドするためのガイド部と、を備えたことを特徴とするものである。
【0007】
さらに、本発明による廃液処理装置においては、前記の略霧状又は水滴状の液体が前記容器内で加熱されて生成された蒸気が前記容器の内部を上昇するように、前記蒸気を吸引するための蒸気吸引手段、を備えたことが望ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明においては、前記噴出手段により廃液を前記容器内の下方に向けて略霧状又は水滴状に噴出すると共に、前記加熱手段により前記噴出手段から噴出されて前記容器内に存在する略霧状又は水滴状の液体を加熱する。前記略霧状又は水滴状の液体が加熱されて生成された高温の蒸気は、高温で比重が軽いため前記容器内を上昇しようとするが、その際、前記上方から下方に向けて噴出される略霧状又は水滴状の液体の勢いに押される形で、前記容器の内壁面側に移動してこの内壁面側に沿って上昇しようとする。その際、前述のように前記容器の内壁面には前記の略スパイラル状のガイド部(突部又は突起)が備えられているので、前記蒸気は、前記ガイド部に案内されて略スパイラル状に移動・旋回しながら、前記容器内をゆっくりと上昇する。その際、前記上方から噴出される略霧状又は水滴状の液体の勢い(噴出の力)は前記ガイド部により遮断される(前記勢いが前記上昇中の高温蒸気に及ぶことが防止される)ので、前記上方から噴出される略霧状又は水滴状の液体の勢いが前記蒸気の上昇を妨げることが、前記ガイド部により防止される。その結果、本発明では、前記容器の内壁面側に、前記略スパイラル状に移動・上昇する高温蒸気から成る「高温蒸気層」が形成されることになる(もし、本発明の「ガイド部」が存在しなければ、前記高温蒸気が内壁面側を上昇しようとしても、前記上方から噴出される略霧状又は水滴状の液体の勢いなどにより前記の「高温蒸気の内壁面側での上昇」が妨げられてしまうため、結局、前記「高温蒸気層」は形成できなくなる)。よって、本発明では、この高温蒸気層によっても、前記上方から噴出されて前記容器内に存在する略霧状又は水滴状の液体が加熱されることになる。よって、本発明では、前記上方から噴出されて前記容器内に存在する略霧状又は水滴状の液体は、前記加熱手段により加熱されるだけでなく、前記ガイド部により形成される高温蒸気層(前記容器の内壁面側を略スパイラル状に移動・旋回・上昇する高温の蒸気の層)によっても加熱されるので、前記の略霧状又は水滴状の液体の加熱が極めて効率的に行われるようになる。よって、本発明によれば、前記容器内で前記の略霧状又は水滴状の液体の水分の全てが確実に蒸発される(残存固形分だけが炭化されて残る)ことになり、従来のように加熱効率が悪いため前記略霧状又は水滴状の液体の水分が十分に蒸発できず前記容器の底部に廃液の一部が液体の状態で溜まってしまうという不都合が無くなる。
【0009】
また、本発明においては、前記噴出手段により廃液を前記内側容器内の下方に向けて略霧状又は水滴状に噴出すると共に、前記加熱手段により、前記噴出手段から噴出されて前記容器内に存在する略霧状又は水滴状の液体を加熱する。前記略霧状又は水滴状の液体が加熱されて生成された高温の蒸気は、高温のため比重が軽いので前記内側容器内を上昇しようとするが、その際、前記上方から噴出される略霧状又は水滴状の液体の勢いに押される形で、前記内側容器の内壁面側に移動してこの内壁面に沿って上昇しようとする。その際、前述のように前記内側容器の内壁面には前記の略スパイラル状のガイド部が備えられているので、前記蒸気は、前記ガイド部に案内されて略スパイラル状に移動・旋回しながら、前記内側容器内をゆっくりと上昇する。その際、前記上方から噴出される略霧状又は水滴状の液体の勢い(噴出の力)は前記ガイド部(突部・突起)により遮断される(前記勢いが前記上昇中の高温蒸気に及ぶことが防止される)ので、前記上方から噴出される略霧状又は水滴状の液体の勢いが前記蒸気の上昇を妨げることが、前記ガイド部により防止される。その結果、本発明では、前記内側容器の内壁面側に、前記略スパイラル状に移動・旋回・上昇する高温蒸気から成る「高温蒸気層」が形成されることになる(もし、本発明の「ガイド部」が存在しなければ、前記高温蒸気が内壁面側を上昇しようとしても、前記上方から噴出される略霧状又は水滴状の液体の勢いなどにより前記の「高温蒸気の内壁面側での上昇」が妨げられてしまうため、結局、前記「高温蒸気層」は形成できなくなる)。よって、本発明では、この高温蒸気層によっても前記上方から噴出されて前記容器内に存在する略霧状又は水滴状の液体が加熱されることになる。よって、本発明では、前記上方から噴出されて前記容器内に存在する略霧状又は水滴状の液体は、前記加熱手段により加熱されるだけでなく、前記ガイド部により形成される高温蒸気層(前記容器の内壁面側を略スパイラル状に移動・旋回・上昇する高温の蒸気の層)によっても加熱されるので、前記の略霧状又は水滴状の液体の加熱が極めて効率的に行われるようになる。よって、本発明によれば、前記略霧状又は水滴状の液体の水分の全てが確実に蒸発される(残存物の固形分は炭化される)ようになり、従来のように加熱効率が悪いため前記略霧状又は水滴状の液体の水分が十分に蒸発できずに前記容器の底部に廃液の一部が液体の状態で溜まってしまうという不都合が無くなる。
【0010】
さらに、本発明において、前記の略霧状又は水滴状の液体が前記容器内で加熱されて生成された蒸気を前記容器の上方に吸引するための蒸気吸引手段を備えるようにしたときは、前記蒸気が前記容器の内壁面側に沿って上昇することを、より促進させることができ、その結果、前記の略霧状又は水滴状の液体を効率的に加熱してその水分の全てを蒸発・乾燥させ、さらにその残部の固形物を炭化させることを、より確実に実現できるようになる。
【0011】
また、本発明において前記の容器の内壁面から突出するように設けているガイド部は、前述のように略スパイラル状に連続する形状としているので、前記容器の内壁面にこのような突起を設けても、前記容器の内壁面の清掃などのメンテナンスの支障にはならない(略スパイラル状の突出部は清掃し易いため)というメリットもある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明を実施するための最良の形態は、以下の実施例1について述べるような形態である。
【実施例1】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施例1による廃液処理装置を説明する。図1は本実施例1の主要部を示すための一部を断面とする概略図、図2はその略中央部分の水平方向断面図、図3は本実施例1の全体構成を示す側面図である。図1,2,3において、1は耐火材により形成された略筒状の基台、2は前記基台1の略中央に形成された空洞部、3は前記空洞部2に向けて熱風を供給するバーナー、4は前記基台1の外周部1aの上端1bの上に配置される略筒状の鉄製の外筒、4aは前記外筒4の外周面に付着された断熱材、5は前記外筒4の内部に配置されておりその底部5aが開口部となって前記空洞部2に向けて開放されており(前記空洞部2を介して前記外筒4と内側内筒4との間の空間である後述の熱風流路10に接続されており)その断面が略テーパ状に形成されている鉄製の下側内筒、6は前記外筒4の内部に配置される内側内筒であってその下端部が前記下側円筒5の上端部5bと接続されておりその上端部6aが開口部となっている略筒状の鉄製の上側内筒、7は図示しないポンプにより図示しない廃液タンクからの廃液を前記各内筒5,6内に供給するための廃液供給パイプ(図1ではシンボル線で示している)、8は前記廃液供給パイプ7から供給された廃液を前記内側内筒6の上方から前記各内筒5,6の内部の図示下方に向けて霧状にして噴霧するための噴霧ノズル、1cは前記基台1の空洞部2の底部に対向する位置に備えられた炭化物取出口、1dは前記基台1を支持する脚部(なお、図3では、便宜上、図1の脚部1dとは異なる形状の脚部1dを図示している)である。
【0014】
また、図1,2,3において、9は前記上側内筒6に接続されており前記各内筒5,6の下方に向かって噴霧された霧状の廃液が前記バーナー3からの熱風で加熱されて生成された廃液ガスを前記各内筒5,6の外部に排出するための廃液ガス吸引パイプ、9aは前記廃液ガス吸引パイプ9と前記上側内筒6の上端部6a(開口部)とを接続するための断面略テーパ状に形成された接続部である。前記廃液ガス吸引パイプ9の途中には図示しない吸引送風機が備えられている。また前記噴霧ノズル8は前記接続部9a内に配置されている。
【0015】
また、図1,2,3において、10は前記外筒4の内壁面と前記各内筒5,6の外周面との間の空間により形成されており前記バーナー3からの熱風を前記各内筒5,6の外周面に沿って移動・上昇させるための熱風流路である。また、11は前記上側内筒6の外周面に溶接された外側突起である。図4は、この外側突起11の形状などを説明するための斜視図である。この図4に示すように、前記外側突起11は、前記上側内筒6の外周面に図示下方から図示上方に向かってスパイラル状に連続的に突出するように形成されている。本実施例1では、図4に示すような外側突起11は、下側内筒5にも同様に設けられている。前記外側突起11は、前記バーナー3からの熱風が、前記空洞部2から前記外筒4と各内筒5,6との間の空間に移動し上昇するとき、前記各内筒5,6の外周面に沿ってスパイラル状に旋回しながらゆっくりと移動・上昇させるようにして、前記熱風が前記各内筒5,6の内部を効率的に加熱できるようにするためのものである。
【0016】
また、図1,2,3において、12は前記熱風流路10内を上昇した熱風を装置の外部に排出するための排出パイプ(なお、図3では、便宜上、図1の排出パイプ12とは異なる形状の排出パイプ12を図示している)、13は前記排出パイプ12の途中に設けられた前記熱風の排出促進用のブロア(送風機)、14は前記排出パイプ12の先端に設けられた前記熱風を排出するための排出口である。
【0017】
また、図3において、15は前記廃液ガス吸引パイプ9内に吸引された廃液ガスから水分等を除去するためのサイクロン(熱交換器)、16はサイロクン15を通過した廃液ガスを前記基台1の空洞部2内に戻す(そして前記熱風流路10内に移動させる)ための戻しパイプ、である。本実施例1において、前記サイクロン15からの廃液ガスを前記戻しパイプ16を介して前記空洞部2に戻すようにしているのは、前記サイクロン15からの廃液ガスの中に未だ匂い成分などが残っているので、前記バーナー3からの熱風により前記匂い成分などを熱分解した上で外部に排出するようにするため、である。
【0018】
また、本実施例1においては、前記下側内筒5及び上側内筒6はその内壁面が滑らかに連続するように互いに接続されている。そして、前記各内筒5及び6の内壁面には、その図示下方から上方に向かってスパイラル状に連続して延びるように形成された鉄製の内側突起21が溶接されている。図5は前記突起21を説明するための斜視図であって、前記上側内筒6を斜め上方から見たときの状態を示す斜視図である。本実施例1では、図5に示すような形状の内側突起21が、前記2つの円筒5,6の内壁面の全体に渡って、その図示下方から上方に向かって、例えば全体で5周半ほどスパイラル状に旋回するように、形成・配置されている。
【0019】
次に本実施例1の動作を説明する。まず、前記バーナー3を点火して熱風を前記空洞部2に供給すると、その熱風は、前記空洞部2から前記熱風流路10内に移動してその内部を前記外側突起11にガイドされてスパイラル状に旋回しながらゆっくりと上昇する。この前記熱風が前記熱風流路10内を上昇する過程で、前記各内筒5,6の内部が加熱される。この状態で、前記廃液供給パイプ7から廃液を前記噴霧ノズル8に供給して、前記噴霧ノズル8から廃液を連続的に又は間欠的に噴霧する(図6の符号A参照)。この噴霧された霧状の廃液は、前記各内筒5,6内を図示下方に移動してその底部5aの近傍に達するが、その移動の過程において、前記熱風流路10を上昇中の熱風からの熱を受けて加熱され、その中の水分が蒸発して高温の廃液ガス(蒸気)となる。
【0020】
前記高温の廃液ガス(蒸気)は、前記内筒5,6の内部で生成するが、特に下側内筒5の底部5aの近傍で多く発生する。このとき、前記の生成された高温の廃液ガス(蒸気)は、前記噴霧ノズル8から連続的に又は間欠的に噴霧される霧状の廃液(図6の符号A参照)の噴出の勢いの力(前記内筒5,6の中央の下方向に向かう力)によって、言わば周辺に押し流される形で、前記内筒5,6の内壁面側に移動する。つまり、前記内筒5,6内では、前記霧状廃液が加熱されて高温の廃液ガスが生成されるが、その廃液ガスは、前記噴出される霧状廃液に押されるように、前記各内筒5,6の内壁面側に移動させられる。
【0021】
そして、このように内壁面側に移動した高温の廃液ガス(蒸気)は、その高温により比重が軽くなっているので、前記内筒5,6内を上昇する。また、このとき、図1などに関して前述した吸引送風機(図示せず。前記廃液ガス吸引パイプ9の途中に設けられている)を駆動させることにより、前記内筒5,6内で生成された高温の廃液ガス(蒸気)の上昇動作はより促進される。
【0022】
このように、前記内筒5,6内で生成された高温の廃液ガス(蒸気)は前記各内筒5,6内を上昇するが、このとき、前述のように前記噴霧される霧状廃液に押される結果、前記内壁面側に移動して、前記内壁面側を前記内壁面に沿って上昇する。このとき、前記各内筒5,6の内壁面には前述の図5に示すようなスパイラル状に連続する内側突起21が形成されているので、前記高温の廃液ガス(蒸気)は、前記内側突起21にガイドされてスパイラル状に旋回しながらゆっくりと移動・上昇する。図7はこのときの様子を説明するための図であって、図7の斜線で示す部分(符号Bを参照)が前記のスパイラル状に移動・上昇する高温の廃液ガス(蒸気)を示している。また、前記廃液ガス(蒸気)Bがスパイラル状に上昇している間も、並行的に前記噴霧ノズル8から廃液が勢いよく上方から下方に噴霧されるが、この噴出された霧状廃液の力(勢い)は、前記内側突起21によりほぼ遮られる(前記内側突起21により前記噴出の勢い・力が前記高温の廃液ガス(蒸気)の上昇の流れに影響を与えることが防止される。図8参照)ので、前記噴出された霧状廃液の力(勢い)が前記廃液ガス(蒸気)の上昇の流れを阻害することはほとんど無い。
【0023】
本実施例1では、前述のように、前記内筒5,6内において前記霧状廃液が加熱されて生成された高温の廃液ガス(蒸気)が前記内筒5,6の内壁面側を前記内側突起21にガイドされてスパイラル状に旋回しながらゆっくりと移動・上昇するので、前記内筒5,6の内壁面のほぼ全体に渡って前記高温の廃液ガスの層(高温蒸気層)が形成されることになる(図7,8の符号B参照)。したがって、本実施例1では、前記内筒5,6の内部に存在する前記霧状廃液は、前記熱風流路10内(前記各内筒5,6の外側)をスパイラル状にゆっくりと移動・上昇する前記バーナー3による熱風からの熱で加熱される(これは従来技術でも同様)だけでなく、前記内筒5,6の内壁面側を前記内側突起21にガイドされてスパイラル状にゆっくりと移動・上昇する高温の廃液ガス(蒸気)から成る「高温蒸気層」によっても、加熱されようになっている。よって、本実施例1では、従来と比較して、前記内筒5,6の内部に存在する前記霧状廃液を極めて効率的に加熱することができるので、前記噴霧ノズル8からの霧状廃液のほぼ全ての水分を前記内筒5,6の内部で蒸発させて残りの固形分だけを炭化して前記空洞部2の底部に炭化物として落下・残存させることができる(前記内側突起21などを備えていない従来の廃液処理装置を使用するときは、廃液を容器内に噴霧しても、容器内部を十分に効率的に加熱することができなかったので、噴霧した廃液に含まれる水分の全てを蒸発させることができず、容器の底部などに濃縮された液状の廃液の一部がそのまま残存して溜まってしまうという不都合が存在していた)。なお、前記霧状廃液の中の全ての水分が蒸発した後に前記空洞部2の底部に落下・残存した炭化物は、図1の炭化物取出口1cから随時取り出すことができる。
【0024】
以上のように、本実施例1においては、前記噴霧ノズル8から廃液を前記内筒5,6内の下方に向けて霧状に噴出すると共に、前記バーナー3からの熱風により、前記噴霧ノズル8から噴出された霧状廃液を、前記内筒5,6内で加熱する。前記霧状廃液が加熱されて生成された高温の廃液ガス(蒸気)は、前記内筒5,6内を上昇しようとするが、その際、前記上方から噴出される霧状廃液の勢いに押される形で、前記内筒5,6の内壁面側に移動してこの内壁面側に沿って上昇しようとする。その際、前述のように前記内筒5,6の内壁面には前記のスパイラル状の内側突起21が備えられているので、前記高温の廃液ガス(蒸気)は、前記内側突起21にガイドされてスパイラル状に旋回しながら、前記内筒5,6内をゆっくりと移動・上昇する。その際、前記上方から噴出される霧状廃液の勢いは前記内側突起21により遮断されるので、前記上方から噴出される霧状廃液の勢いが前記高温の廃液ガス(蒸気)の移動・上昇を妨げることが防止される。その結果、本実施例1では、前記内筒5,6の内壁面側のほぼ全体に、前記スパイラル状に移動・上昇する高温の廃液ガス(蒸気)から成る「高温蒸気層」が形成されることになる。よって、本実施例1では、前記内筒5,6内の前記霧状廃液は、前記内筒5,6の外側の熱風流路10を流れるバーナー3からの熱風の熱だけでなく、前記「高温蒸気層」からの熱によっても、加熱されることになる。
【0025】
このように、本実施例1では、前記の内筒5,6内に噴出される霧状廃液は、前記熱風流路10を移動・上昇する熱風による加熱だけでなく、前記内側突起21により形成される高温蒸気層(前記内筒5,6の内壁面側をスパイラル状に旋回・移動・上昇する高温の廃液ガス)によっても加熱されるので、前記霧状廃液の加熱が極めて効率的に行われるようになり、前記霧状廃液の水分のほぼ全てが確実に蒸発され、従来のように前記霧状廃液の水分が容器の底部に残存してしまうなどの不都合が無くなる。なお、もし、本実施例1において、前記内側突起21が存在しなければ、前記高温の廃液ガス(蒸気)が前記各内筒5,6の内壁面側を上昇しようとしても、前記噴霧ノズル8から噴出される霧状廃液の勢い(力)などにより、「前記高温の廃液ガス(蒸気)の内壁面側での上昇」が妨げられてしまうため、結局、前記「高温蒸気層B」は形成できなくなる。
【0026】
また、本実施例1においては、前述のように、前記霧状廃液が前記内筒5,6内で加熱されることにより生成された廃液ガス(蒸気)を吸引するための吸引送風機を前記廃液ガス吸引パイプ9の途中に備えるようにしているので、前記廃液ガス(蒸気)が前記内筒5,6の内壁面側に沿って上昇することを、より促進させることができ、その結果、前記霧状廃液を加熱してその水分を蒸発・乾燥させ、さらにその残部を炭化させることを、より確実に実現できるようになる。
【0027】
以上、本発明の各実施例について説明したが、本発明及び本発明を構成する各構成要件は、それぞれ、前記の各実施例及び前記の各実施例を構成する各要素として述べたものに限定されるものではなく、様々な修正及び変更が可能である。例えば、前記実施例1においては、前記内筒5,6と外筒4との間の熱風流路10に前記バーナー3により形成・供給される熱風を供給して前記内筒5,6内を加熱するようにしているが、本発明はこれに限られるものではなく、例えば、前記バーナー3による熱風に代えて又はこれと共に、他の外部装置(例えば工場や店舗などで使用される製造装置や発電装置やエアーコンディショナーなど)から生じる高温の廃熱ガスを前記空洞部2から前記熱風流路10に供給して前記内筒5,6の内部を加熱するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施例1による廃液処理装置の主要部を示すための一部を断面とする側面図。
【図2】図1と同じ部分を示すための一部を断面とする平面図。
【図3】本実施例1の全体構成を示す側面図。
【図4】本実施例1における上側内筒に設けられた外側突起を説明するための斜視図。
【図5】本実施例1における上側内筒に設けられた内側突起を説明するための斜視図。
【図6】本実施例1の動作を説明するための図。
【図7】本実施例1の動作を説明するための図。
【図8】本実施例1の動作を説明するための図。
【符号の説明】
【0029】
1 基台
1a 外周部
1b 上端
1c 炭化物取出口
1d 脚部
2 空洞部
3 バーナー
4 外筒
5 下側円筒
5a 底部
6 上側内筒
6a 上端部
7 廃液供給パイプ
8 噴霧ノズル
9 廃液ガス吸引パイプ
9a 接続部
10 熱風流路
11 外側突起
12 排出パイプ
15 サイロクン
16 パイプ
21 内側突起
A 霧状廃液
B 高温廃液ガス(高温蒸気層)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃液を処理するための廃液処理装置であって、
廃液を上方から所定の容器内の下方に向けて略霧状又は水滴状に噴出させるための噴出手段と、
前記の噴出されて前記容器内に存在する略霧状又は水滴状の液体を加熱するための加熱手段と、
前記容器の内壁面から容器の内側方向に向かって延びる突部であって前記容器の下方から上方に向けて略スパイラル状に連続的に形成されて成る突部から成り、前記の噴出されて前記容器内に存在する略霧状又は水滴状の液体が加熱されて生成された蒸気が前記容器の内壁面側を略スパイラル状に旋回しながら上昇するように、前記蒸気をガイドするためのガイド部と、
を備えたことを特徴とする廃液処理装置。
【請求項2】
廃液の水分を蒸発させ残存分を炭化させることにより廃液を処理するための廃液処理装置であって、
外側容器とこの外側容器の内部に配置されておりその底部が開口部となって前記外側容器の内部と繋がっている内側容器とから成る二重構造の容器と、
前記内側容器の上方からその内部の下方に向けて廃液を略霧状又は水滴状に噴出させるための噴出手段と、
前記の噴出されて前記内側容器内に存在する略霧状又は水滴状の廃液を加熱するための加熱手段と、
前記内側容器と外側容器との間に形成された熱ガス流路であって、前記内側容器内の略霧状又は水滴状の液体を加熱するように、前記加熱手段により生成された熱ガスを下方から上方へ流通させるための熱ガス流路と、
前記内側容器の内壁面から容器の内側方向に向かって延びる突部であって前記内側容器の下方から上方に向けて略スパイラル状に連続的に形成されて成る突部から成り、前記の噴出されて前記内側容器内に存在する略霧状又は水滴状の液体が加熱されて生成された蒸気が、前記内側容器の内壁面側を略スパイラル状に旋回しながら上昇するように、前記蒸気をガイドするためのガイド部と、
を備えたことを特徴とする廃液処理装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記容器内に存在する略霧状又は水滴状の液体が加熱されることにより生成された蒸気が前記容器内を上昇して行くように、前記蒸気を吸引するための蒸気吸引手段、を備えたことを特徴とする廃液処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−264721(P2008−264721A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−113592(P2007−113592)
【出願日】平成19年4月23日(2007.4.23)
【特許番号】特許第3998705号(P3998705)
【特許公報発行日】平成19年10月31日(2007.10.31)
【出願人】(592031709)有限会社東根製作所 (3)
【出願人】(507133485)
【出願人】(507133500)
【Fターム(参考)】