説明

廃液濾過システム車

【課題】各工場等の廃液について、焼却処分することなく迅速且つ効率的にリサイクルできるとともに、精密濾過の結果出てくる廃液である濃縮液をも処理でき、ゼロエミッションを実現できる車輌を提供する。
【解決手段】廃液収容部9内の廃液を被処理液として取り込むための吸引手段2と、取り込んだ被処理液を濾過処理する濾過システム1と、濾過システム1が備える精密濾過装置から排出される濃縮液を炭化するための炭化処理装置10と、前記濾過システム1及び炭化処理装置10に駆動電源を供給する電力供給手段4と、前記濾過システム1で処理した処理済み液を当該工場等の同一又は別の収容部に戻すための送出手段3と、前記濾過システム1及び炭化処理装置10の作動を制御するためのコンピュータ等の制御手段5とを備え、更に、図示しない原動機及び駆動機構を含む車輌走行手段を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工場等の廃液収容部に赴き、当該収容部内の廃液を処理するための車輌に関する。
【背景技術】
【0002】
工場で発生する各種の濃厚廃液は、従来から焼却処分されることが一般的であるが、これに含まれる化学物質によるダイオキシンの発生をはじめ、環境ホルモンの環境中への拡散や焼却による二酸化炭素発生の問題も危惧されている。このような危惧から近年では、ダイオキシン濃度や塩素濃度、酸素濃度、臭気などに基づく規制が為されており、従来のような焼却処分は、今後ますます困難になってくることが予想され、これに代わる処理方法が模索されている。このような社会的要請に対し、本出願人は、特許文献1、特許文献2等をはじめ、既に多くの廃液処理装置を提供している。これら処理装置を全国各地の工場に設ければ、上記焼却処分の問題もかなり解消されることなるが、環境保護に対する社会的要請はますます強さを増しており、より迅速且つ効率的な方法が同時に求められている。
【0003】
そこで、本発明者は、先の出願(特許文献3)において、工場等の廃液収容部に赴き、廃液収容部内の廃液を被処理液として取り込んで濾過処理し、処理した処理済み液を当該工場等の同一又は別の収容部に戻すことで、当該収容部内の廃液を焼却処分することなく迅速且つ効率的にリサイクルや廃棄容易化等の処理ができる廃液濾過システム車を提案した。これは精密濾過装置を備え、クリーンな処理済み液を工場に戻すことが可能であるが、当該精密濾過装置からは廃液である濃縮液が排出され、当該濃縮液はリサイクルが不可能であり、処理が困難であった。また、車輌内の限られたスペース内に濾過システムを搭載しているため、このような濃縮液の廃液を貯留するためのスペースにも限りがあり、車輌の軽量化も求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3155212号公報
【特許文献2】特許第3236570号公報
【特許文献3】国際特許公開2004−110590号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明が前述の状況に鑑み、解決しようとするところは、各工場等の廃液について、焼却処分することなく迅速且つ効率的にリサイクルできるとともに、精密濾過の結果出てくる廃液である濃縮液をも処理でき、ゼロエミッションを実現できる車輌を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前述の課題解決のために、工場等の廃液収容部に赴き、当該収容部内の廃液を処理するための車輌であって、走行用の原動機及び駆動機構を有する車輌走行手段と、前記廃液収容部内の廃液を被処理液として取り込むための吸引手段と、荷電フィルター装置、荷電コアレッサー型の油水分離装置、並びに内圧循環方式の中空糸膜からなる精密濾過装置より構成され、取り込んだ被処理液を濾過処理する濾過システムと、濾過システムの精密濾過装置から排出される濃縮液を炭化するための炭化処理装置と、前記濾過システム及び炭化処理装置に駆動電源を供給する電力供給手段と、前記濾過システムで処理した処理済み液を当該工場等の同一又は別の収容部に戻すための送出手段と、前記濾過システム及び炭化処理装置の作動を制御するための制御手段とを備え、前記荷電フィルター装置は、前記電力供給手段から供給された駆動電源により該荷電フィルター装置内の電極間に電圧を印加して不純物粒子の濾過を促進し、前記荷電コアレッサー型の油水分離装置は、前記電力供給手段から供給された駆動電源により該油水分離装置内の電極間に電圧を印加して油水分離を促進し、前記精密濾過装置は、被処理液を循環させる一次側循環路に濃縮液を排出するための排出路を分岐するとともに、該排出路に開閉弁を備え付け、前記制御手段により前記開閉弁を制御して濃縮液の排出を制御し、前記炭化処理装置は、前記電力供給手段から供給される電力を用いてヒーターにより過熱蒸気を生成し、これを前記精密濾過装置から排出された濃縮液が投入される処理室に供給して該濃縮液を炭化し、粉末化してなることを特徴とする廃液濾過システム車を構成した。
【0007】
ここで、前記制御手段は、被処理液の種類に応じてヒーターの温度を制御し、過熱蒸気の温度を制御することが好ましい。
【0008】
また、前記炭化処理装置は、濃縮液タンクから濃縮液が投入される投入口、及び処理後の炭化粉末を排出する排出口を備える処理室と、前記電力供給手段から供給される電力によりヒーターを加熱し、水を加熱して過熱蒸気として前記処理室に供給するパイプヒーターとを少なくとも備えるものが好ましい実施例である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の廃液濾過システム車によれば、処理が難しい濃縮液を車輌上にて炭化・粉末化処理できるため、例えば被処理液が希少金属の洗浄/切削液の場合、濃縮液から希少金属を回収して再資源化することが可能になるなど、リサイクル可能な物質を生成することができ、ゼロエミッションを実現できる車輌を提供することができる。また、車輌上の濃縮液のタンクを小さくするか、或いは無くすることができ、限られた車輌スペースを有効活用することが可能となる。また、濃縮液の粉末化により、車輌全体の軽量化も図ることができる。
【0010】
また、制御手段により、被処理液の種類に応じてヒーターの温度を制御し、過熱蒸気の温度を制御するので、必要最小限の電力で効率よく炭化処理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の代表的実施形態に係る廃液濾過システム車を利用した処理サービスの構成を示す説明図。
【図2】同じく廃液濾過システム車の構成を示す説明図。
【図3】濾過システムの構成を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明の実施形態を添付図面に基づき詳細に説明する。
【0013】
本発明の廃液濾過システム車Aは、図1に示すように、工場の廃液タンク等の廃液収容部9に赴き、当該収容部内の廃液を処理するための車輌であり、図2に示すように、前記廃液収容部9内の廃液を被処理液として取り込むための吸引手段2と、取り込んだ被処理液を濾過処理する濾過システム1と、濾過システム1が備える精密濾過装置から排出される濃縮液を炭化するための炭化処理装置10と、前記濾過システム1及び炭化処理装置10に駆動電源を供給する電力供給手段4と、前記濾過システム1で処理した処理済み液を当該工場等の同一又は別の収容部に戻すための送出手段3と、前記濾過システム1及び炭化処理装置10の作動を制御するためのコンピュータ等の制御手段5とを備え、更に、図示しない原動機及び駆動機構を含む車輌走行手段を備えている。
【0014】
これらは、移動用トラックの荷台部分に設けられ、本例では箱型荷物室Cをもつバンタイプの移動用トラックBの当該荷物室に設置されている。荷物室の周囲を囲む側板のうちの左右の横側板及び後方のあおり板が水平軸芯周りで開閉揺動自在に構成されており、それらを単独又は全部開放することにより濾過システム1を効率よく使用できる構造を有しているが、側板が開閉できないものや側板が全く無いものであってもよい。また、荷物室Cの後方の側板であるあおり板も開閉自在になっているが、このあおり板は開閉できないように構成することも可能である。
【0015】
荷物室の運転室側(本体前方側)箇所には、上記電力供給手段4を構成する発電装置や、記憶装置や操作部を備えたコンピュータからなる制御手段5、通信装置9等の重量物が配置され、荷物室の運転室側から離れる後方側箇所には、前記濾過システム1が配置され、車輌A全体の前後方向の重心が後方寄りになることがないようにされている。前記制御手段5及び通信装置9は、発電装置の上方に支持台を介して設置されている。
【0016】
また、発電装置の操作部は荷台の横側部を向いた状態になっており、荷物室に上がることなく発電装置の操作を行えるように構成されている。前記発電装置は、前記車輌走行手段の原動機により駆動されるものであってもよいし、該原動機から独立した駆動部を備えたものであってもよい。
【0017】
前記制御手段5と濾過システム1及び炭化処理装置10との間には、作業者が入ることのできる空間が確保されており、後方に向けられた制御パネルのスイッチ等を操作できるように構成されている。ここで、発電装置を用いて濾過システム1及び炭化処理装置10を駆動しているが、車輌Aのバッテリからの電圧を利用して駆動することも可能であり、これにより全体重量の軽量化を図れる。本例では、作業開始時に作業者がこの制御パネルから作業者ID、顧客ID、処理単価等を入力し、制御手段5は、所定の情報入力が確認されると濾過システム1の動作を制御し、廃液処理作業を開始する。また、作業完了の際は、後述の積算流量計30で廃液処理量を計測して売上額を算出し、作業単位毎に作業報告データを作成して、これを前記通信装置9より営業所に送信することで作業完了する。この車輌−営業所間の通信は、例えば携帯電話や簡易型携帯電話等で利用される移動体通信網を経由して行われる。
【0018】
濾過システム1は、同出願人が既に提案しているもの(日本国特許公開公報第2001−46805号の第6実施例参照)を特に車載用に改良したシステムが構成されており、図3に示すように、粗ゴミを除去するためのバケットストレーナ11と、微細ゴミを除去するための荷電フィルター装置12と、油水分離を行う荷電コアレッサー型の油水分離装置13と、内圧循環方式の中空糸膜からなる精密濾過装置14とより構成されている。
【0019】
荷電フィルター装置12は、フィルターの濾目による物理的濾過作用と油滴粒子または水分子が持つゼータ電位の中和による凝集粗粒化現象を利用した装置であり、同出願人による日本国実用新案登録出願平成3年第98913号や日本国出願公告公報平成8年第210号で開示した技術が利用でき、特に被処理液中の固形粒子等の不純物粒子の濾過を促進する。
【0020】
また、油水分離装置13は、ゼータ電位の中和による凝集粗粒化現象のほか、コアレッサーにおけるエマルジョン分離による油分と水分との分離を利用した装置であり、本例では、詳しくは荷電凝集フイルターコアレッサー型油水分離装置であり、フィルター層とコアレッサー層とを備えた複合フィルターF2を有し、荷電フィルター装置と油水分離装置の双方の機能を兼ね備え、上記不純物粒子の捕捉と、油滴粒子又は水分子の凝集粗粒化による油水分離を促進する。
いずれもフィルターF1や複合フィルターF2に荷電したり、或いはこれらを電界中に配置してフィルターやフィルター表面に電位をあたえることにより、これらの中を通過するゴミ、油等の不純物粒子が保有するゼータ電位に起因したクーロン力による反発力を失わせしめ、これら不純物粒子間に自然力として作用する粒子間引力を利用して、ゴミや油等の不純物粒子を凝集粗大化させて液中から除去するものである。特に荷電フィルター装置12では、凝集粗粒化したゴミの凝集体層が数ミクロンの濾目を有するフィルターF1の表面に堆積してケーク層を作り、このケーク層もフィルターとしての機能を発揮するため極めて精密な濾過が可能となっている。
【0021】
荷電フィルター装置12の流入側は、ストレーナ11に対してポンプ15、流量調整弁16、圧力計17、圧力スイッチ18を経由して接続され、また荷電フィルター装置12からの排出液は、油水分離装置13に流入されるように構成されている。また、油水分離装置13には、分離した浮上油を排出するための自動弁19が設けられ、荷電フィルター装置12及び油水分離装置13には、それぞれ荷電源20、21が設けられており、上記電力供給手段4より電源供給されている。この油水分離装置13からの排出液は、精密濾過装置14の一次側循環路23につながる導入路22を経て精密濾過装置14に供給され、該精密濾過装置14から排出される透過液は、電動弁29及び積算流量計30を備えた送出路24より収容部9又は別の収容部内に送出されることになる。
一次還流路28の途中部には、弁25及び逆止弁26を備え、その終端が荷電フィルター装置12への送液路途中に設けた真空計27の接続個所近傍につながる還流路28が分岐されている。この還流路28は、一次側循環路23で濃縮された濃縮循環液の一部を荷電フィルター装置12におけるポンプ15の吸引側に連続的に還流させて濃縮液の一部を荷電フィルター装置12及び油水分離装置13によって繰り返し再処理させるためのものである。
【0022】
本例の濾過システムは、先ずポンプ15で吸引された被処理液が収容部9からストレーナ11を通り、流量調整弁16で定流量に調整されて荷電フィルター装置12に圧入される。このときのポンプ15による吸引状態は真空計27によって、また荷電フィルター装置12のフィルターF1の目詰まりは圧力計17によって監視されている。
【0023】
荷電フィルター装置12内に圧入された被処理液は、荷電極兼用フィルターF1を外周面側から内周面に向かって流れ、軸心中空部から容器外に排出される。荷電極兼用フィルターF1内を通過する途上では、被処理液中のゴミ等は電界作用により凝集粗粒化し、効率的にフィルターF1に捕捉され、被処理液中の数十ミクロン以上のゴミ粒子はそのほとんどが除去される。
【0024】
荷電フィルター装置12から排出された被処理液は油水分離装置13に圧入される。油水分離装置13内に入った被処理液は複合フィルターF2内に入り、フィルター内周面から外周面に向かって流れ、フィルターを通過する過程で荷電効果によるゴミや油等の不純物粒子を除去するとともに、油滴粒子の凝集粗粒化が促進されてエマルジョン状態が破壊される。粗粒化した油滴粒子を含む被処理液は環状の仕切り板によって形成された迂回路を昇降し、この過程で油分が比重差により浮上分離して容器内上層に浮上油層が形成される。浮上油層と分離水層との界面レベルが低くなると、この状態を検知した油水界面センサー(図示せず)が自動弁19を開栓して分離油の排出を行う。一方、分離水は容器底部から取り出され、精密濾過装置14に送られる。この油水分離装置13は一台で不純物粒子の除去と油水分離が行われ、小型で高性能であるため本発明のような車輌に搭載する濾過装置として特に適しており、上述の荷電フィルター装置12を省略することも可能となる。
【0025】
油水分離装置13から排出される被処理液のうち、一部は次段の精密濾過装置14に送られるが、精密濾過装置14の処理能力を超える残量分は還流路28を通じて再度荷電フィルター装置12に送られる。ポンプ31によって油水分離装置13の排出液から吸引された被処理液は精密濾過装置14に導入される。精密濾過装置14への被処理液の導入は、導入路22を経て一次側循環路23に流入させられ、並列的に設けられた各精密濾過ユニット33、・・・に圧入される。前記導入路22には、ヒーター32及び加圧ポンプ48が設けられ、開閉弁49、50を設けたバイパス回路がそれぞれに並設されている。
【0026】
前記ヒーター32は、被処理液の冬場の粘度上昇を抑えるものであり、また、加圧ポンプ48はポンプ31を補助するものであり、各々使用する必要がない場合は、前記開閉弁49又は50を開放することでバイパスさせることができる。精密濾過ユニット33に圧入された被処理液は、精密濾過ユニット33の容器内一次側流路を経由して容器外に排出され、容器内を通過する過程で容器内一次側と容器内二次側との間に配設された限外濾過膜(ウルトラフィルタ)や精密濾過膜(マイクロフィルタ)等の中空糸膜を通じて被処理液の一部を容器内二次側に透過させて排出する。中空糸膜としては、濾目0.005〜0.02μmの精密濾過膜を用いることがより好ましく、有効成分を残しつつ処理することが可能となる。
【0027】
ここで、前記精密濾過ユニット33は縦方向に4本設けているが、その本数は処理量に応じて自由に設定できる。また、各配管は荷物室Cの床面に沿って設けられ、車輌Aの重心を下げるように図られている。また、同様の目的から、各精密濾過ユニットを傾斜させたり水平に設置することも可能である。
【0028】
精密濾過ユニット33の容器外二次側流路を経て精密濾過装置外に排出された透過液は、送出路24を通じて収容部9又は別の収容部内に送出される。一方、一次側循環路23の循環液は、透過液が排出された分だけ濃縮されるが、本例では、濃縮された一次側循環液の一部を還流路28を通じて荷電フィルター装置12のポンプ15の吸引側に連続して還流させることによって、濃縮液を荷電フィルター装置12及び油水分離装置13によりゴミ除去と油分除去を繰り返し、これによって一次側循環路23を循環する一次側循環液の濃縮を可能な限り防止している。この還流路28を設けたことにより一次側循環液の濃縮が軽減され、精密濾過装置14の負担が大幅に軽減されて精密濾過ユニット33の濾過膜の寿命が大幅に延びることとなる。
【0029】
油水分離装置13から排出される分離水は、底部から次段の限外濾過膜、精密濾過膜等の中空糸膜に吸い込まれる量の残りを、弁34を介し還流路28を通じてそのまま無処理のまま同じく荷電フィルター装置12のポンプ15の吸引側に還流させている。この場合、循環液は前処理装置Cと膜装置の間を何パスも循環して再処理されながら自動排出される分だけ濃縮速度を落としながら濃縮される。この一次側循環路23には、次第に濃縮された濃縮液を排出するための排出路35が分岐して設けられており、該排出路35には開閉弁36、51を備え付けられている。この開閉弁36、51は、一次側循環路23から適宜濃縮液を濃縮液タンクに排出することで精密濾過ユニット33内の中空糸膜の目詰まりを未然に防止するものである。
【0030】
この開閉弁36は、作業者が定期的にボタン操作等で開閉できるモータ弁で構成されており、本例では、上述の制御手段5により、被処理液の種類に応じて設定された所定の時間毎に当該弁を開放するように制御されており、また、開閉弁51は、当該一次側循環路23に濃縮液の濃度を検出する濃度検出部37を設け、同じく前記制御手段5により、濃度検出部37で検出された濃縮液濃度が所定値を超えた場合に開放し、前記濃縮液の排出を制御するための電磁弁である。これによれば、被処理液の種類や汚れ具合によって濃縮に至る時間は異なるのに対し、所定の濃縮度を把握することが可能となり、濃縮液を適時タンクに排出でき、効率化を図ることができる。前記濃度検出部37は、濃縮により粘性抵抗が変化することに着目し、一次側循環路内の圧力変化を検出する圧力センサを設け、当該循環路を流通する被処理液の粘性抵抗により濃度変化を間接的に検知している。
【0031】
ここで、前記制御手段5は、被処理液の種類に応じて設定された所定時間経過後に、前記開閉弁36の開放を促すための光又は音等の警告信号を出力することも好ましい実施例であり、当該車輌Aに設けた警告灯7又はスピーカより前記警告信号を発することで作業者に知らせることができる。
【0032】
以上の濾過システム1を構成するストレーナ11、荷電フィルター装置12、油水分離装置13、精密濾過装置14には、それぞれ作業終了時に各装置にエア加圧して水抜き或いは逆洗のためのエア供給管38、39、40、41を接続し、各管の開閉弁42〜45は一箇所に集中された箇所に互いに併設され、一箇所で各配管の開閉作業ができるように構成されている。
【0033】
各開閉弁の異常やポンプ15、31、48の異常は、圧力計17等をセンサとして利用しており、制御手段5は各圧力計から送信されたデータを記憶装置6により記憶管理するとともに、異常を検出すれば警告灯7等の警告手段により警告信号を出力することとなる。尚、吸引手段2として廃液収容部9内の廃液を取り込む吸引管47が設けられており、その流路途中部には該流路の開閉を行う電磁弁46が備えられ、上記水抜きや逆洗の際には、制御手段5により前記電磁弁46を閉じ、不正営業を未然に防止している。
【0034】
炭化処理装置10は、電力供給手段4から供給される電力を用いてヒーターにより過熱蒸気を生成し、これを前記精密濾過装置から排出された濃縮液が投入される処理室に供給して該濃縮液を炭化し、粉末化する装置であり、例えば特開2004−332956号に記載されている処理装置を応用することができる。具体的には、濃縮液タンクから濃縮液が投入される投入口、及び処理後の炭化粉末を排出する排出口を備える処理室と、前記電力供給手段から供給される電力によりヒーターを加熱し、水を加熱して過熱蒸気として前記処理室に供給するパイプヒーターとを少なくとも備えている。
【0035】
濃縮液は一端濃縮液タンクに貯留されてから処理室に投入口から投入されるように構成されているが、濃縮液タンクを省略し、開閉弁36の開放により濃縮液が直接、投入口から処理室に貯留されるように構成してもよい。すなわち、濃縮液タンクを処理室で兼ねることができる。この場合、一定量処理室内に貯留された時点で、炭化処理を開始することができる。
【0036】
制御手段5は、被処理液の種類(濃縮液の種類)に応じて、ヒーターの温度を制御し、過熱蒸気の温度を制御しており、被処理液の種類に応じた適切な温度で炭化処理を効率よく行うことができる。炭化処理装置10で処理された濃縮液の炭化粉末は、排出口から粉末タンクに集められる。
【0037】
車輌Aの適所には、上記濾過システム1の各配管や開閉弁等の構成要素を撮影するための単又は複数の撮像装置8が設けられており、各撮像装置8により入力された映像情報は記憶装置6に記憶管理され、異常の発見、不正防止等に利用される。
【0038】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこうした実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0039】
1 濾過システム
2 吸引手段
3 送出手段
4 電力供給手段
5 制御手段
6 記憶装置
7 警告灯
8 撮像装置
9 通信装置
10 炭化処理装置
11 ストレーナ
12 荷電フィルター装置
13 油水分離装置
14 精密濾過装置
15 ポンプ
16 流量調整弁
17 圧力計
18 圧力スイッチ
19 自動弁
20、21 荷電源
22 導入路
23 一次側循環路
24 送出路
25 弁
26 逆止弁
27 真空計
28 還流路
29 電動弁
30 積算流量計
31 ポンプ
32 ヒーター
33 精密濾過ユニット
34 弁
35 排出路
36 開閉弁
37 濃度検出部
38、39、40、41 エア供給管
42、43、44、45 開閉弁
46電磁弁
47 吸引管
48 加圧ポンプ
49、50 開閉弁
51 開閉弁
A 車輌
F1 フィルター
F2 複合フィルター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
工場等の廃液収容部に赴き、当該収容部内の廃液を処理するための車輌であって、
走行用の原動機及び駆動機構を有する車輌走行手段と、
前記廃液収容部内の廃液を被処理液として取り込むための吸引手段と、
荷電フィルター装置、荷電コアレッサー型の油水分離装置、並びに内圧循環方式の中空糸膜からなる精密濾過装置より構成され、取り込んだ被処理液を濾過処理する濾過システムと、
濾過システムの精密濾過装置から排出される濃縮液を炭化するための炭化処理装置と、
前記濾過システム及び炭化処理装置に駆動電源を供給する電力供給手段と、
前記濾過システムで処理した処理済み液を当該工場等の同一又は別の収容部に戻すための送出手段と、
前記濾過システム及び炭化処理装置の作動を制御するための制御手段とを備え、
前記荷電フィルター装置は、前記電力供給手段から供給された駆動電源により該荷電フィルター装置内の電極間に電圧を印加して不純物粒子の濾過を促進し、
前記荷電コアレッサー型の油水分離装置は、前記電力供給手段から供給された駆動電源により該油水分離装置内の電極間に電圧を印加して油水分離を促進し、
前記精密濾過装置は、被処理液を循環させる一次側循環路に濃縮液を排出するための排出路を分岐するとともに、該排出路に開閉弁を備え付け、前記制御手段により前記開閉弁を制御して濃縮液の排出を制御し、
前記炭化処理装置は、前記電力供給手段から供給される電力を用いてヒーターにより過熱蒸気を生成し、これを前記精密濾過装置から排出された濃縮液が投入される処理室に供給して該濃縮液を炭化し、粉末化してなることを特徴とする廃液濾過システム車。
【請求項2】
前記制御手段は、被処理液の種類に応じてヒーターの温度を制御し、過熱蒸気の温度を制御してなる請求項1記載の廃液濾過システム車。
【請求項3】
前記炭化処理装置は、濃縮液タンクから濃縮液が投入される投入口、及び処理後の炭化粉末を排出する排出口を備える処理室と、前記電力供給手段から供給される電力によりヒーターを加熱し、水を加熱して過熱蒸気として前記処理室に供給するパイプヒーターとを少なくとも備える請求項1又は2記載の廃液濾過システム車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−259990(P2010−259990A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−111763(P2009−111763)
【出願日】平成21年5月1日(2009.5.1)
【出願人】(508264519)株式会社ゼオテック (2)
【Fターム(参考)】