説明

廃熱回収装置

【課題】タービンが破損する可能性を低減できる廃熱回収装置を提供することを目的とする。
【解決手段】蒸気発生手段により蒸気化した冷媒により駆動されるタービン51と、タービン51により得られた動力を、補助動力として、外部のエンジン10に伝達する動力伝達部と、閾値以上の力が作用した場合に動力伝達部における動力の伝達を解除するピン200と、を備える。ピン200に閾値以上の力が作用した場合に、ピン200は動力伝達部における動力の伝達を解除するため、タービン51が破損する可能性を低減することができる

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃熱回収装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関(エンジン)の駆動に伴って発生する廃熱を、ランキンサイクルを利用して回収する廃熱回収装置が知られている。このような廃熱回収装置には、例えば、エンジンの水冷冷却系統を密閉構造とし、エンジンにおける廃熱によって気化した冷媒、すなわち蒸気によって、膨張機(タービン)を駆動して、その蒸気の持つ熱エネルギーを電気エネルギ等に変換して回収するものがある。例えば、特許文献1に記載の廃熱回収装置は、廃熱を付与した蒸気によりタービンを駆動し、コンプレッサの動力回生及び発電機の電力回生を行うランキンサイクルを形成している。また、廃熱を付与した蒸気により駆動したタービンの回転エネルギを、動力としてエンジンに直接伝えることによって、ランキンサイクルを形成する廃熱回収装置も提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−133210号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した廃熱回収装置において、気化していた冷媒がタービン室内で凝縮する場合がある。凝縮した冷媒がタービン室内に溜まることによりウォータハンマが起こると、タービン翼の回転が妨げられ、タービンが固定された状態となるおそれがある。ここで、タービンの回転エネルギをエンジンに直接伝えるランキンシステムを採用している場合、タービンとエンジンとが連れ回りとなっている。そのため、固定状態となったタービンが、エンジンによって強制的に回転させられてしまい、タービンが破損してしまうおそれがある。
【0005】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、タービンが破損する可能性を低減できる廃熱回収装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための本発明は、蒸気発生手段により蒸気化した冷媒により駆動される膨張器と、前記膨張器により得られた動力を、補助動力として、外部の原動機に伝達する動力伝達部と、閾値以上の力が作用した場合に前記動力伝達部における動力の伝達を解除する動力解除部と、を備える。
【0007】
上記構成によれば、動力解除部に閾値以上の力が作用した場合に、動力解除部は動力伝達部における動力の伝達を解除するため、膨張器が破損する可能性を低減することができる。
【0008】
また、上記構成において、前記動力解除部は、前記動力伝達部側から前記膨張器側へ延びるシャフトと、前記膨張器側から前記動力伝達部側へ延びるシャフトを接続し、閾値以上の力が作用したときに破壊される接続部材である構成をとることができる。
【0009】
上記構成によれば、シャフトとシャフトとを接続する接続部材において閾値以上の力が作用した場合に、接続部材が破壊されることにより、動力の伝達を解除でき、膨張器が破損する可能性を低減することができる。
【0010】
また、前記動力伝達部は、前記膨張器の回転数と、前記原動機の回転数とを同期させる減速機を含み、前記動力解除部は、前記動力伝達部から前記減速機側へ延びるシャフトと、前記減速機から前記動力伝達部側へ延びるシャフトとを接続し、閾値以上の力が作用したときに破壊される接続部材である構成をとることができる。
【0011】
上記構成によれば、減速機のシャフトと動力伝達部のシャフトとを接続する接続部材において閾値以上の力が作用した場合に、接続部材が破壊されることにより、減速機及び膨張器への動力の伝達を解除でき、膨張器が破損する可能性を低減することができる。
【0012】
また、前記動力伝達部は、前記膨張器の回転数と、前記原動機の回転数を同期させる減速機を含み、前記動力解除部は、前記減速機から前記膨張器側へ延びるシャフトと、前記膨張器から前記減速機側へ延びるシャフトとを接続し、閾値以上の力が作用したときに破壊される接続部材である構成をとることができる。
【0013】
上記構成によれば、減速機のシャフトと膨張器のシャフトとを接続する接続部材において閾値以上の力が作用した場合に、接続部材が破壊されることにより、膨張器への動力の伝達を解除でき、膨張器が破損する可能性を低減することができる。
【0014】
また、前記原動機及び前記蒸気発生手段は、前記冷媒が循環する内燃機関であっても良い。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、タービンが破損する可能性を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】ランキンシステムの構成の一例を示す構成図である。
【図2】エンジンと廃熱回収装置との関係の一例を示す概要図である。
【図3】廃熱回収装置の構成の一例を示す図である。
【図4】図3のA部分の断面拡大図である。
【図5】ランキンシステムの平常稼働時における、ピンの状態について説明するための図である。
【図6】廃熱回収装置において、タービンが固定状態となってしまう原因の一例について示す図である。
【図7】タービンが固定状態になった場合においてピンにかかる力を説明するための図である。
【図8】減速機とプーリとを接続する構成の別例を示す図である。
【図9】ピンを配置する箇所の別例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
【0018】
まず、本発明に係る廃熱回収装置を含むランキンシステムの概要について説明する。図1は、本件の廃熱回収装置を含むランキンシシテムの構成の一例を示す構成図である。
【0019】
ランキンシステム100は、内部で冷却媒体が沸騰することにより冷却されるエンジン(原動機、蒸気発生手段)10を備えている。エンジン10は、シリンダブロックとシリンダヘッドを備え、シリンダブロック及びシリンダヘッド内にはウォータジャケットが形成されている。このウォータジャケット内の冷却媒体が沸騰することによってエンジン10の冷却が行われる。エンジン10は、さらに、排気管11を備える。排気管11には排気触媒が組み込まれている。エンジン10のシリンダヘッドには、冷却媒体供給路20の一端が接続されている。冷却媒体供給路20には、エンジン10で温められた冷却媒体が流入する。
【0020】
冷却媒体供給路20には、気液分離器21が配設されている。エンジン10側から気液混合状態で気液分離器21に流入した冷却媒体は、気液分離器21内で気相と液相とに分離される。
【0021】
冷却媒体供給路20の他端は、熱交換部に相当する過熱器30に接続されている。過熱器30には、排気管31が引き込まれている。排気管31は、過熱器30を貫通しており、その内部を排気が通過する。これにより、過熱器30は、エンジン10側から冷却媒体供給路20を通じて流入する冷却媒体とエンジン10が排出する排気との熱交換を行う。これにより、蒸気発生量が増大すると共に、蒸気の過熱度が向上し、廃熱回収効率が向上する。過熱部の上端部には、蒸気排出管40が設けられている。
【0022】
過熱器30の下流には、過熱器30を通過した蒸気化した冷却媒体からエネルギを回収するエネルギ回収部に相当するタービン(膨張器)51が配設されている。タービン51は、衝動タービンを備えており、蒸気排出管40の先端部に設けられたノズル41から噴射された蒸気によって駆動される。衝動タービンの回転力は、減速機52によってその回転数を調整された後、エンジン10が備えるクランクシャフトの回転を補助するのに用いられる。これにより、廃熱の回収が行われる。
【0023】
タービン51の下流側には、タービン51においてエネルギを回収された後の冷却媒体をエンジン10側へ再循環させる冷却媒体回収路60が設けられている。冷却媒体回収路60の一端は、タービン51に接続されている。冷却媒体回収路60の他端は、ウォータポンプ62の上流側に接続されている。冷却媒体回収路60には、凝縮器80が配設されている。凝縮器80は、蒸気化している冷却媒体を冷却して凝縮し、冷却媒体を液状に戻す。凝縮器80の下流側には、リザーバタンク61が配設されている。リザーバタンク61には、液状の冷却媒体が貯留される。
【0024】
冷却媒体回収路60のリザーバタンク61の下流にはウォータポンプ62が配設されている。このウォータポンプ62が稼動状態となると、リザーバタンク61内の冷却媒体をエンジン内のウォータジャケットへ供給する。
【0025】
次に、図2を用いて、エンジン10と本発明に係る廃熱回収装置との関係に着目し、図1のランキンシステム100について説明する。
【0026】
ランキンシステム100は、廃熱回収装置50と、エンジン10とを備える。廃熱回収装置50は、プーリ(動力伝達部)53を備える。エンジン10は、クランクプーリ12を備える。プーリ53とクランクプーリ12とは、ベルト13によって連結され、プーリ53の動力がベルト13を介して、クランクプーリ12に伝達されることにより、ランキンサイクルが形成される。
【0027】
次に、本発明に係る廃熱回収装置について説明する。図3は、本発明に係る廃熱回収装置50の構成の一例を示す図である。
【0028】
廃熱回収装置50は、タービン51、減速機52、及びプーリ53を備える。エンジン10のウォータジャケット内で冷却水などの冷媒をエンジンにおける廃熱によって気化した蒸気が、ノズル41から、タービン室内のタービン51に吹き付けられる。蒸気が吹き付けられることにより、タービン51は回転し、動力を発生する。タービン51のシャフト511は、減速機52と接続されており、タービン51の回転によって発生した動力は、減速機52に伝達される。
【0029】
減速機52は、プーリ53と連結する。減速機52は、タービン51の回転数を変換することによって、プーリ53の回転数を、動力の伝達先であるクランクプーリ12の回転数と合わせる。
【0030】
プーリ53は、上述したように、ベルト13を介して図外のクランクプーリ12へ、動力を伝達する。
【0031】
次に、減速機52とプーリ53との連結方法について説明する。図4は、図3におけるAの部分を拡大した断面図である。
【0032】
減速機52は、減速機52からプーリ53側へ延びるシャフト521を備え、プーリ53は、プーリ53から減速機52側へ延びるシャフト531を備える。減速機52のシャフト521の径は、プーリ53のシャフト531よりも大きく、その端部から減速機52側に向かって、プーリ53のシャフト531を挿入するための中空部522が設けられている。プーリ53のシャフト531は、中空部522に挿入される。シャフト521と、シャフト531の軸方向の中心には、シャフトを貫通する孔が設けられており、その孔には、ピン200が差し込まれている。このピン200によって、シャフト531とシャフト521とが連結され、減速機52からプーリ53へ動力が伝達される。また、ピン200は、閾値を越えた力が作用した場合に、破壊される(折れる)ようになっている。ピン200が破壊される閾値は、例えば、タービン51が固定状態となった場合に、エンジン10が自立運転しているときに発生する力とすることができる。この場合、タービン51が固定状態となったときに、エンジン10が自立運転しているときに発生する力がピン200に作用した場合、ピン200が破壊される。
【0033】
次に、図5を用いて、ランキンシステム100の平常稼働時における、ピン200の状態について説明する。ランキンシステム100の平常稼働時では、減速機52が回転すると、ピン200を介して減速機52と連結されたプーリ53に動力が伝わり、プーリ53が回転する。プーリ53とクランクプーリ12(図外)とは連れ回る構成となっているが、両回転数が減速機52によって調整されているので、ピン200に大きな力はかからない。
【0034】
次に、図6及び図7を用いてタービン51が固定された状態となった場合の、ピン200の状態について説明する。図6は、廃熱回収装置50において、タービン51が固定状態となってしまう原因の一例について示す図である。図6(A)に示すように、タービン室内で冷媒が凝縮すると、タービン室の下方に冷媒が溜まっていく。そして、図6(B)に示すようにタービン室内に一定以上量の冷媒が蓄積されると、ウォータハンマが発生し、タービン51の回転が妨げられ、タービン51が固定状態となる。また、減速機52が異物等を噛み込んだ場合にも、タービン51は固定状態となる。
【0035】
図7は、タービン51が固定状態になった場合においてピン200にかかる力を説明するための、ピン200を含むシャフト521及び531の径方向断面図である。タービン51が固定状態になった場合でも、エンジン10のクランクプーリ12は回転し続けるため、クランクプーリ12と連れ回るプーリ53も回転する。そのため、ピン200は、図7に示すようにシャフト531の径方向端部において、プーリ53の回転方向に力F53を受ける。一方、タービン51は固定状態となっているため減速機52も固定状態となり、ピン200は、シャフト521の中空部522側において、力F53と反対方向の力F52を受ける。その結果、ピン200には、図5に示した平常稼働時と比較して、大きな力がかかることになる。
【0036】
上述したように、ピン200は、閾値を越えた力が作用すると、折れる(破壊される)ようになっている。従って、図7(A)のようにピン200に大きな力がかかると、ピン200は、図7(C)に示されるように折れる。これにより、プーリ53と減速機52との連結が解除される。ピン200が折れた後も、プーリ53はクランクプーリ12によって回転させられるが、プーリ53と減速機52との連結は解除されているため、タービン51がプーリ53により強制的に回転されられることはない。
【0037】
以上の説明から明らかなように、プーリ53と減速機52との連結を解除できない構成の場合(例えば、プーリ53と減速機52とを一体のシャフトで連結した場合、あるいは、プーリ53のシャフト531と減速機52のシャフト521とを溶接等によって連結した場合)、タービン51が固定状態となった場合でも、プーリ53によってタービン51が強制的に回転させられ、タービン51やその他の構成が破損する可能性がある。具体的には、シャフト521やシャフト511が折れたり、減速機52が破損したり、タービン51のタービン翼が変形したりすることが考えられる。
【0038】
一方、本実施例によれば、閾値以上の力を受けたピン200が折れることによって、プーリ53と減速機52との連結を解除できるため、タービン51が固定状態となった場合にも、プーリ53によってタービン51が強制的に回転させられることがなくなる。その結果、シャフト521及び511、減速機52、及びタービン51が破損する可能性が低減される。
【0039】
上述した実施例は本発明の好適な実施の例である。但し、これに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変形実施可能である。
【0040】
例えば、連結には、ピン200ではなく、ワッシャーや、スプラインなどを使用しても良い。
【0041】
また、上述の実施例では、プーリ53のシャフト531が、減速機52のシャフト521に挿入されるとしたが、図8に示すように、減速機52のシャフト521が、プーリ53のシャフト531に挿入されるようにしても良い。
【0042】
また、上述の実施例では、ピン200は、プーリ53のシャフト531と減速機52のシャフト521とを連結した。しかし、図9に示すように、減速機52からタービン51側へ延びるシャフト523と、タービン51から減速機52側へ延びるシャフト511とを連結するように、ピン200を配置しても良い。
【0043】
また、上述の実施例では、廃熱回収装置50の動力の伝達先をエンジン10としたが、動力の伝達先はエンジンに限定されるものではなく、タービン51が固定状態になった場合でも、プーリ53を回転させる原動機となるものであれば良い。さらに、上述の実施例では、プーリ53が動力伝達部に相当するとしていたが、プーリ53と減速機52とを合わせて動力伝達部と考えても良い。また、上述の実施例では、廃熱回収装置50は、クランクプーリ12の回転数とプーリ53との回転数とを合わせるために、減速機52を備えていたが、プーリ53が連結される先の回転数とプーリ53の回転数とを合わせる必要がない場合には、減速機52は必ずしも必要ではない。
【符号の説明】
【0044】
50…廃熱回収装置
51…タービン
52…減速機
53…プーリ
200…ピン
521…減速機シャフト
531…プーリシャフト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸気発生手段により蒸気化した冷媒により駆動される膨張器と、
前記膨張器により得られた動力を、補助動力として、外部の原動機に伝達する動力伝達部と、
閾値以上の力が作用した場合に前記動力伝達部における動力の伝達を解除する動力解除部と、
を備えることを特徴とする廃熱回収装置。
【請求項2】
前記動力解除部は、前記動力伝達部側から前記膨張器側へ延びるシャフトと、前記膨張器側から前記動力伝達部側へ延びるシャフトを接続し、閾値以上の力が作用したときに破壊される接続部材であることを特徴とする請求項1記載の廃熱回収装置。
【請求項3】
前記動力伝達部は、前記膨張器の回転数と、前記原動機の回転数とを同期させる減速機を含み、
前記動力解除部は、前記動力伝達部から前記減速機側へ延びるシャフトと、前記減速機から前記動力伝達部側へ延びるシャフトとを接続し、閾値以上の力が作用したときに破壊される接続部材であることを特徴とする請求項1記載の廃熱回収装置。
【請求項4】
前記動力伝達部は、前記膨張器の回転数と、前記原動機の回転数を同期させる減速機を含み、
前記動力解除部は、前記減速機から前記膨張器側へ延びるシャフトと、前記膨張器から前記減速機側へ延びるシャフトとを接続し、閾値以上の力が作用したときに破壊される接続部材であることを特徴とする請求項1記載の廃熱回収装置。
【請求項5】
前記原動機及び前記蒸気発生手段は、前記冷媒が循環する内燃機関であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項記載の廃熱回収装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−169210(P2011−169210A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−32893(P2010−32893)
【出願日】平成22年2月17日(2010.2.17)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】