説明

廃石膏ボード用定量供給装置

【課題】廃石膏ボード塊が破解砕分別装置の入り口で滞留障害を起こすのを防ぎ、また廃石膏ボード塊に含まれる大物の異物が選別工程で除去しやすくなるよう、大きな寸法の石膏ボードを一定程度の大きさに裁断し、かつ大きな山ができないよう均した供給を実現する。しかも、後工程で回収する紙や石膏粉の品質を損なわないよう、必要以上に石膏ボード片を小さくせず、また紙粉の発生を抑える。
【解決手段】廃石膏ボード塊を投入するための投入開口、および前記廃石膏ボード塊を排出するための略水平方向へ開いた排出開口を有するホッパーと、該ホッパー底部に間欠駆動可能なベルトコンベアを有し、該ベルトコンベアの進行方向の端部であって、かつ該排出開口に設けた裁断機とにより構成し、該ベルトコンベアが前記間欠駆動の停止時において該裁断機の裁断刃が往復動することによる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新築や解体などの建築現場から排出される建設廃棄物のうち、廃石膏ボードの分別処理工程において行われる破砕、解砕、ふるい分けなど様々な本処理が効率的に、かつ円滑に行えるよう、しかも分別して得られる回収物の品質が損なわれないよう、あらかじめ処理条件を整えるのに必要な作業を行う前処理工程を担う装置を提供するものである。
【0002】
ところで建設廃棄物のうち建設リサイクル法(平成12年改正)に定める「特定建設資材」の対象である3品目(コンクリート、アスファルト、および木材)については原則埋め立て処分が禁止となり、完全リサイクルがすでに求められている。しかしながら、廃石膏ボードは年間136万トン(新築系22万トン、解体系114万トン、2008年推計)排出され、しかもなお増え続けているにもかかわらず、特定建設資材の適用対象となっていない。
【0003】
一方で平成18年発令の環境省局長通知改正により、廃石膏ボードの埋め立て処分は、石膏を紙と分離して、かつ石膏を管理基準の厳しい「管理型処分場」でのみ受け入れる、とした。すなわち廃石膏ボードは、環境汚染の危険がある第1級の廃棄物として、事実上扱われることになった。この改正は、廃石膏が基準に満たない条件で埋め立てられると、水分と有機物が存在する環境下で硫酸菌による分解を受け、猛毒の硫化水素を発生すると判明したことによる。
【0004】
大量に発生し、かつ非常に危険な廃棄物である廃石膏ボードが、なぜ、完全リサイクルが求められる特定建設資材の対象となっていないのか。大きな理由は、現段階においてリサイクル技術の開発と、用途の拡大が遅れているからある。すなわちリサイクルを義務付けようにも現状では、リサイクルする手段が技術的、または経済的に制約されており、規制を強めれば結果、不法投棄を増発する危惧がある。
【0005】
このような、建築現場から排出される廃石膏ボードのリサイクルの拡大が進めにくいという、実態を示す報告として非特許文献1を示す。
本文献では、廃石膏ボードのリサイクルを進めるにあたって、各種調査とともに、浮き彫りになった様々な課題を指摘している。
【0006】
まず、廃石膏ボードの処分方法別の推計値(割合)がそれぞれ示されている(28ページ)。これによればリサイクル率は13%、管理型処分場における埋め立て処分が22%、判別不能が34%あるとされた。
このうちリサイクルに関しては、紙と石膏を分別しただけの場合もリサイクル扱いに含まれている可能性があり、リサイクル率の数字の実態はもっと低いとされている(26ページ)。また管理型処分場は受け入れ余力の逼迫が徐々に深刻化している(21・27ページ)とも指摘した。
【0007】
また、判別不能(処理方法が不明)とされたものにおいては、他の廃棄物との混合廃棄や不法埋め立てなどのいわば「不適正処理」が横行している(27ページ)とした。このように不適正処理の横行の背景には、適法である管理型処分場埋め立て余力の逼迫、リサイクル需要の不足やコストの問題があると思われる。
【0008】
さらに、リサイクルの現状と課題も調査報告されている。それによると、排出の大部分を占める解体系廃石膏ボードのリサイクルはすべて、平成14年度調査からの進展があった(34ページ)とされ、最近ようやく取り組みが進み始めたばかりであることがうかがえる。つまり、異物が多く、排出時や流通時に破壊が進みやすい解体系廃石膏ボードのリサイクルには、純度の高い石膏粉の回収技術の開発が遅れていたことを示している。本文献の調査では、新築系か解体系かの由来を限定していないが、リサイクル先の品質要求が報告されている(34ページ)。
【0009】
以上のように、建設廃棄物の中でも排出量が多く環境負荷の大きな廃石膏ボードは、不適正処理を含めた埋め立て処分量を削減するために、リサイクル技術の開発が喫緊の課題になっていることが分かる。
【0010】
一方、廃石膏ボードの排出由来の源流にあり、またリサイクル先でもある石膏ボードメーカーの立場から報告された資料として、非特許文献2を示す。これによると、石膏ボードの生産原料の由来は、輸入の天然石膏が約3割、発電所などから排出される排煙脱硫石膏など国産の副産石膏が約6割とされている(1ページ)。バージン材料の天然石膏は輸入で賄われており、資源確保の面からも課題があることをうかがわせる。すなわち将来、海外調達に逼迫状況が生じた場合に対応するために、他の鉱物資源と同様、国内で原料確保が可能となるよう、リサイクル技術の開発は重要になっていくであろう。
【0011】
本発明は、リサイクル技術の開発が喫緊の課題となっているという背景を踏まえ、リサイクル用途の拡大、および経済性の確保を目指すことを主眼において提案するものである。特に本発明は、機械的に分別可能な紙(有機物)および他の異物と、石膏との分別度を高め、純度の高い石膏粉を回収しようとする技術分野において、新しい提案をするものである。
【背景技術】
【0012】
従来の関連技術として、下記特許文献を3例挙げる。
一般に、廃石膏ボードを分別処理するには、表面に刃物を設けたり、刃物状の形状をした破解砕ロールを用いて紙と石膏粉とを分離する方法が採られている。
【0013】
例えば、特許文献1の提案をみる。この提案は、小さな条突を多数設けた2軸の解砕ロールの間に廃石膏ボードを通すことで解砕し、後にふるいをかけて分離する方式である。この提案では、ふるいにより分離回収する小さい粒径の石膏粉の歩留まりを上げるために、また処理能力を向上させるために、解砕ロールを高速で回し、かつ表面の条突を多数設けている。解砕される廃石膏ボードは、いきなり粉々に砕かれるため、石膏とともに紙も細かく破砕される。
【0014】
紙が細かく破砕されることは次の2つの問題を生じる。
第1に、紙片が小さくなることで回収できる紙の繊維長が短くなるため、リサイクル古紙としての価値が低下する。運送や保管などの経費上、焼却処分せざるを得ないケースも多い。
【0015】
第2に、紙が細かく破砕される際に発生する細かな紙の繊維(紙粉)が大量に発生し、ふるいの目をくぐって回収した石膏粉に多量に混入する。紙粉は有機分であり石膏のリサイクル用途上、次のような障害を生じる。例えば、リサイクル石膏粉をセメント副原料に使用する場合、次のような問題を引き起こす。
【0016】
精製されたセメントに有機分が多く含まれると、モルタルやコンクリートの混練時に多数の気泡が発生、気泡がセメント分子の結合を阻害して、強度や耐久性を劣化させる原因になる。また、水分を含むと有機分をエネルギーにした硫酸菌が、石膏成分のうち硫黄分を分解するとともに水に含まれる水素分子と結合させ、猛毒の硫化水素を発生するという問題も起こしやすくなる。
すなわち破解砕を通じ、紙片が小さくなったり紙粉が多く発生することは、廃石膏ボードのリサイクルにとって大きな障害になる。
【0017】
次に、特許文献2の提案をみる。この提案は、櫛歯状の刃物を設けた2軸スクリューを回転させ、スクリューの間に廃石膏ボードが巻き込まれる際に、回転方向に裁断しながら廃石膏ボードを細かく砕く方法である。この方式も特許文献1と同様、廃石膏ボードをいきなり粉々に砕くという点で同じ欠点を有する。
以上、旧来からある廃石膏ボードの破解砕方法の代表例を示した。
【0018】
次に、特許文献3の提案をみる。この提案の大きな特徴は、表面に突起のないロール間に廃石膏ボードを通し、廃石膏ボードの表面から加える圧力のみによる圧縮解砕によって、紙を破砕せずに石膏の部分だけを解砕分離する方式である。紙は、石膏と分離された後に突条を設けた紙だけを破砕するロールにより、一定程度の大きさの紙片にちぎられていく。この提案では、圧縮解砕直後において紙が破れずにいるため、大きな紙が回収できるだけでなく、紙粉がほとんど発生しないため石膏粉の純度を飛躍的に高めることができる。
【0019】
この提案において、紙をある程度の小片に破砕するのは、紙片を回収するための送給装置(スクリューコンベアなど)の流動性を高めたり、保管用の容器(フレコンバッグやコンテナなど)の収容効率を高めるなどに必要なものであって、粉々になるほど小さくする必要はない。紙の破砕ロールは紙を回収するのに適した条件を満足すればよいだけである。従って例えば、前2例の提案など紙と石膏とを同時に破解砕する旧来の装置では、紙片の一辺が大きくてもせいぜい1センチメートル前後までであったが、本提案の装置では、一辺が10センチメートル以上の紙片を回収することが可能となる。
【0020】
またこの提案では、スクリューコンベアに設けた紙と石膏を分離するためのスクリーンに、大きな紙片が触れながらかき回されるため、スクリーン表面に付着しやすい石膏塊をはたき落として目詰まりを防ぐ、クリーニング効果も発揮する。従って、回収する紙には接着付着しているものを除き、石膏粉が混入しにくいという特長もある。
最近、特許文献3の提案による破解砕分別装置が、廃石膏ボード分別処理業界において注目され多く採用されるようになっている。それは以上のような分別性能を有することで、次の2点において高く評価されているからである。
【0021】
第1に、分別回収される石膏粉に紙粉がほとんど混入せず、石膏ボード原料、セメント副原料、土壌改良材などにリサイクルする場合の品質低下を招かない。当然、旧来方式の分別処理に比べ、回収された石膏粉はリサイクル用途を広げ、また使用率を高めることができる。従って、回収した石膏粉を管理型処分場で埋め立てるなど、環境負荷や経費面での負担を抑えることができ、経済的にも有利になる。
【0022】
第2に、分別回収される紙片が大きく、かつ混入する石膏粉が低減されることで、古紙としてリサイクルへの転用率を高めることができる。従って、焼却処分をするなど、環境負荷や経費面での負担を抑えることができ、経済的にも有利になる。
【0023】
このように廃石膏ボードをリサイクルする上で必要な、画期的な提案がなされている。ただリサイクル率をもっと高めるためには、特許文献3の提案以外にも、周辺工程において多くの課題を解決する必要がある。以下に、特許文献3の提案を利用し、その性能および効果を最大限に引き出す上での課題を指摘する。
【0024】
一般に石膏ボードの新品時の大きさは、厚さが9ミリメートル、板の大きさが900×1800ミリメートルである。建築現場から回収された廃石膏ボード塊には、こういった寸法のものを最大に、様々な大きさや形状に切断、または破壊されたものが含まれている。そうして回収された廃石膏ボード塊を、特許文献3の破解砕分別装置で分別処理する際、次のような問題が生じることが多い(他の従来のものも同様である)。
【0025】
第1に、ロールやスクリューによって解砕するには、狭い空間に廃石膏ボード塊を投入しなければならない。例えば廃石膏ボード塊の中に、一辺が大きな石膏ボードが含まれていると、ロールやスクリューのすき間に沿うよう、まっすぐに投入しなければロールやスクリューの手前で引っかかる恐れがある。コンベアなどを利用して機械投入を行う場合、石膏ボードがどのような方向や角度で搬送されていくか定まらず、入り口で引っかかり、結果として廃石膏ボード塊の進入を阻むという滞留障害が起こりやすかった。特に、重機などを使って一挙に投入する場合では、一辺が小さくてもロールやスクリューのすき間に石膏ボードが集中し、ブリッジを生じる滞留障害が起こりやすかった。
【0026】
重機やコンベアを使った投入による滞留を防ぐために従来は、仮置きヤードにおいてクラッシャー機能付きの重機を使用してあらかじめ粗解砕し、かつ投入量を抑え少しずつ投入するといった、面倒で非効率な方法を採らざるを得なかった。
【0027】
ところで一般に、廃石膏ボード塊には石膏ボード以外のものも混入している。ビス、クギ、ステープル針などの小物以外に、金属や木製の間柱材、塗着したモルタル塊、貼着した金属板などもよくある。建築現場で分別を完全に行うのは難しいのが現状である。
【0028】
小物は破解砕の後工程で、ふるい分けにより残渣などに分離することが可能だが、大物の場合、破解砕分別装置そのものを傷めることもある。モルタル塊などは解砕され小さく砕かれるが、石膏粉に微砕石などが混入して品質を落とすことにつながる。従って、このような大物の異物は、できるだけ破解砕分別装置に投入する前に除去するのがよく、そのためには選別工程を別途設けるのが適切とされている。
【0029】
一般に選別工程は、磁選機による機械的な除去と、作業員の目視および手作業による発見除去の、2つの方法が採られている。いずれもベルトコンベアによって廃石膏ボードを搬送しながら、磁選機により磁性の金属異物を吸引して取り除き、作業員の手選別により他のものを取り除く方法を採る。いずれも、ベルトコンベア上を流れる廃石膏ボード塊の山の中から吸引したり、探り出さなければならない。
【0030】
図4に示すように、ベルトコンベア8’の上を移動する廃石膏ボード塊A’に混入する大物の異物C’が、大きな寸法の石膏ボードA1の下にあると、直接覆っている石膏ボードだけでなく、上積みの石膏ボード塊を含む山の重量に阻まれて、磁選機10で吸引したり、作業員で探し出すことが難しかった。仮に小さな片の石膏ボードばかりだったとしても、厚みのある大量の山であれば同じ障害をきたす。従って、選別工程に供給する廃石膏ボード塊は、大きな寸法の石膏ボードをなくし、まんべんなくベルトコンベア上を流れていくよう山を均す前処理工程が必要であった。
【0031】
しかも、この前処理工程は、後工程において品質のよい紙や石膏粉を分離回収するのに適した、特許文献3の提案による破解砕分別装置と同様、紙を細かく破砕して紙粉を多く発生するような方法を採るべきではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0032】
【特許文献1】特開2000−254531号公報
【特許文献2】特開2007−245023号公報
【特許文献3】特開2001−137726号公報
【非特許文献】
【0033】
【非特許文献1】「平成20年度 廃石膏ボード再資源化促進方策検討業務調査報告書」環境省大臣官房廃棄物・リサイクル対策部発行(平成21年3月)
【非特許文献2】「廃石膏ボードの対応策について」社団法人石膏ボード工業会発行(2010年5月)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0034】
解決しようとする課題は、廃石膏ボード塊が破解砕分別装置の入り口で滞留障害を起こすのを防ぎ、また廃石膏ボード塊に含まれる大物の異物が選別工程で除去しやすくなるよう、大きな寸法の石膏ボードを一定程度の大きさに裁断し、かつ大きな山ができないよう均した供給を実現する。しかも、後工程で回収する紙や石膏粉の品質を損なわないよう、必要以上に石膏ボード片を小さくせず、また紙粉の発生を抑える、ことにある。この課題を解決することで、特許文献3に示す精度の高い分別が行える破解砕分別装置の効能効果を最大限引き出すことができる。
【課題を解決するための手段】
【0035】
本発明は前記課題の解決を可能とするために提案するもので、以下に本発明の構成ごとの特徴とともにその作用を説明する。
【0036】
請求項1によれば、廃石膏ボード塊を投入するための投入開口、および前記廃石膏ボード塊を排出するための略水平方向へ開いた排出開口を有するホッパーと、該ホッパー底部に間欠駆動可能なベルトコンベアを有し、該ベルトコンベアの進行方向の端部であって、かつ該排出開口に設けた裁断機とにより構成し、該ベルトコンベアが前記間欠駆動の停止時において該裁断機の裁断刃が往復動することによって、前記廃石膏ボード塊を所定量排出ごとに裁断する、といった構成をなす。
【0037】
この構成により、次の作用をなす。第1に、投入開口、および排出開口を設けたホッパーにより、ホイールローダーなどの重機を使い、一度に大量の機械投入を可能にしながら排出量を制限することができる。
【0038】
第2に、ホッパー底部にベルトコンベアを有することにより、投入開口から投入された廃石膏ボード塊を、ベルトコンベア上を排出開口へと移動させることができる。
【0039】
第3に、排出開口を略水平方向へ開くことで、ベルトコンベアによって移動した廃石膏ボード塊を、排出開口から外部へ押し出すことができる。
【0040】
第4に、ベルトコンベアの進行方向の端部にあって、排出開口に設けた裁断機を配し、しかも裁断刃が往復動することで、ベルトコンベアによって押し出された廃石膏ボード塊を、一定量排出ごとに裁断することができる。しかも石膏ボード塊に含まれる石膏ボードは、必要以上に細かくされることがなく、押し切り作用による単純破壊で砕かれるため、紙粉が飛び散ることもない。
【0041】
第5に、ベルトコンベアが間欠駆動の停止時において裁断刃が往復動することで、裁断刃や裁断機に往復動に対する横方向の余分な力が加わらず、装置を傷めることなく円滑な裁断を行うことができる。
【0042】
また請求項2によれば、該裁断機に対して該ベルトコンベアの進行方向の上流側近傍において、該裁断刃の往復動と略同じ方向に往復動する押え板を設け、かつ該ベルトコンベアが前記間欠運動の停止時おいて該押え板が往復動する、といった構成をなす。
【0043】
この構成により、次の作用をなす。第1に、裁断機に対してベルトコンベアの進行方向の上流側近傍において、裁断刃の往復動と同じ方向に往復動する押え板を設けることで、裁断刃が廃石膏ボードを裁断しようとする際に板状のボードが跳ね上がり、裁断刃の間にかみ込むことを防止できる。裁断刃の間にボードがかみ込むと、うまく裁断できないだけでなく、裁断刃や裁断機に往復動に対する横方向の余分な力が加わり、装置を傷めるなど円滑な裁断の障害となる。
【0044】
第2に、ベルトコンベアが間欠駆動の停止時において押え板が往復動することで、押え板の往復動に対する横方向の余分な力が加わることがなく、装置を傷めることなどがない円滑な動作を維持できる。
【0045】
また請求項3によれば、該裁断機に対して該ベルトコンベアの進行方向上流側でかつ、該ベルトコンベアの上面から所定の高さにおいて円外周面に多数の突起を有する回転ロールを設け、かつ該回転ロールは、前記廃石膏ボード塊と接する部分において、前記廃石膏ボード塊が投入開口の方向へ逆流させられる作用が働く方向に回転する、といった構成をなす。
【0046】
この構成によりなす作用を説明する前に、請求項1の構成において生じる課題を指摘する。
まず廃石膏ボード塊は、投入開口からホッパー内に落下しベルトコンベア上に山積みにされる。併せてベルトコンベアが間欠駆動しながら、廃石膏ボード塊は排出開口へ向け移動する。その際、投入開口から排出開口に至る間のホッパーは四方が閉じた空間となっており、ベルトコンベア上の廃石膏ボード塊は横壁および天井に規制されながら進行していくことになる。
【0047】
また投入開口は、重機で大量に投入するために大きな空間を確保する必要があるが、排出開口は流量を制限し、安定的に定量排出するため小さな空間にする必要がある。すなわち、進行する廃石膏ボード塊はベルトコンベア上を上流から下流側へ、徐々に狭い空間へと移動していかなければならない。このとき、様々な大きさの板状のボードや砕かれたものが混在する廃石膏ボード塊は、排出開口の上流側にあるホッパーの天井部分などに制限されて滞留を起こしやすくなる。投入量が過大となったときなど最悪の場合、ベルトコンベアでの移動押し出しが困難になる恐れもある。
【0048】
これを解決するためには、廃石膏ボード塊と天井部分の間に空間を確保し、ベルトコンベア上の廃石膏ボード塊の進行を妨げないようにし、円滑な排出を実現する必要がある。請求項3の構成によれば、回転ロールによって、廃石膏ボード塊の上面に積み上がっている板状のボードが逆流するよう、すなわち、投入開口方向(上流側)へけり出すことができるため、廃石膏ボード塊の上面とホッパーの天井部分の間に空間を確保することが可能となる。すなわち、廃石膏ボードの円滑な排出を実現することができる。
【発明の効果】
【0049】
本発明の廃石膏ボード用定量供給装置は、次の効果を生む。
第1に、廃石膏ボード塊において、大きな寸法の石膏ボードを一定程度の大きさに裁断し、かつ大きな山ができないよう均した供給を行うため、破解砕分別装置の入り口での滞留障害を起こすのを防ぎ、また廃石膏ボード塊に含まれる大物の異物が選別工程で除去しやすくなる。結果、後工程設備の障害による稼働率低下を防ぐことができ、併せて回収する紙や石膏粉への異物混入を抑えることにつながる。
【0050】
第2に、裁断量の調整で必要以上に石膏ボード片を小さくせず、また単純破壊による裁断のため紙粉の発生が抑えられ、後工程で回収する紙や石膏粉の品質が損なわれない。結果、リサイクル用途の拡大やリサイクル量の向上につながる。
【0051】
以上により、特許文献3に示す精度の高い分別が行える破解砕分別装置の効能効果を最大限引き出すことができる
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】図1は本発明請求項1の廃石膏ボード用定量供給装置を示した模式図である。(実施例1)
【図2】図2は本発明を応用した廃石膏ボード用定量供給装置を示した模式図である。(実施例2)
【図3】図3は図2における裁断刃32、33付近の構造図である。(実施例2)
【図4】図4は従来技術における搬送中の廃石膏ボード塊に含まれる金属異物を示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0053】
第1の実施例を図1に示す。本実施例は、本発明請求項1を反映したもので、一方に、上部へ向け開いた投入開口11、他方に、略水平方向へ開いた排出開口12を有するホッパー1、ホッパー1の底部に設けた略水平の間欠駆動するベルトコンベア2、ベルトコンベア2の進行方向21の端末、すなわち排出開口12に設けた略鉛直の作動方向31に往復動する裁断刃(上刃)32を有する裁断機3、同じく排出開口12に設けた固定の裁断刃(下刃)33から構成されている。ベルトコンベア2はモーター24などにより間欠的に駆動し、その停止時において裁断機3が作動する。裁断機3の作動は油圧シリンダ34やモーターなどを用いて行う。
【0054】
本実施例の処理の過程は次の通りである。
第1にホイールローダー7などの重機等により、投入開口11から一度に大量投入された廃石膏ボード塊Aは、ベルトコンベア2の上に積み上がる。
【0055】
第2に積み上がった廃石膏ボード塊Aは、ベルトコンベア2の間欠駆動により、徐々に排出開口12へ向け進行する。ベルトコンベア2の駆動時は、上刃31は上部へ退避し排出開口12は全開または所定の高さに開いているため、進行した廃石膏ボード塊Aは排出開口12から押し出される。このとき、ベルトコンベア2は水平である必要はなく、次の工程などの事情により排出開口12の位置を高くしたい場合などには、進行方向21の下流へ向かって高くなるよう傾斜していても構わない。
【0056】
第3に排出開口12から押し出された廃石膏ボード塊Aが所定量に達した時点で、ベルトコンベア2の駆動を停止し、上刃32が下降することで下刃33との間で、板状の石膏ボードとともに廃石膏ボード塊Aを裁断する。このとき、降下する上刃32が石膏ボードを押し付けることで、ロールなど回転機械による破砕や解砕とは異なり、単純破壊による裁断作用が行われる。
【0057】
以上の過程を経て、投入された廃石膏ボード塊Aは、定量ずつ裁断されるとともに排出される。排出された廃石膏ボード塊Bは、大きな山を生じることなく比較的均一な量に調節されている。図1に示すように、裁断排出後の廃石膏ボード塊Bを速やかに次の処理工程へ搬送するため、進行方向81へ廃石膏ボード塊Bを送り出す別の排出ベルトコンベア8などの搬送機構を排出開口12に連結するとよい。
【0058】
ここで本実施例では特に1度の裁断排出量を定めないが、裁断寸法が極端に小さすぎると分別後の紙片が小さくなったり、石膏粉への紙粉の混入率が高くなる。また大きすぎると破解砕分別装置の入り口で滞留を生じるなどの恐れがある。実証実績によれば裁断寸法は、およそ5〜50センチメートル程度ごとの間隔で行うのがよいことが分かっている。
【0059】
一方、供給量は実証実績によれば、ベルトコンベア2の幅が1メートル前後、裁断刃(上刃)32の往復動ストロークが60〜80センチメートル程度のとき、1時間当たり5〜6トンの安定した能力が得られることが分かっている。
【0060】
以上のように本実施例の廃石膏ボード用定量供給装置は、重機によって一度に投入された廃石膏ボード塊を、適当な大きさに裁断を行いつつ安定供給が可能であるだけでなく、単純破壊による裁断を行うため紙粉の発生を抑える効果がある。結果、後工程での滞留を防ぎ、異物を除去する選別を促進することができるほか、回収する紙や石膏粉の品質を落とすことがない。
【実施例2】
【0061】
第2の実施例を図2および図3に示す。本実施例は、実施例1を応用したもので基本的な構成は実施例1と同じである。ただ本実施例は、本発明請求項2および3に示した構成を含む多くの機能を付加して、性能を高めたものである。付加した構成とその機能は以下の通りである。
【0062】
まず請求項2を反映した付加構成として、裁断機3に対して進行方向21の上流側近傍に、略鉛直の作動方向41に往復動する押え板42を有する押え板機構4を設ける。これにより廃石膏ボード塊を裁断する際、含まれる板状の石膏ボードが跳ね上がるのを防ぎ、石膏ボードが上刃32と下刃33の間にかみ込むトラブルを防ぐことができる。従って、押え板42は上刃32が下降するよりも早く作動して、廃石膏ボード塊の上面に接する必要がある。また押え板42の作動は、図2に示すモーター43や油圧シリンダなどを用いて行う。
【0063】
また請求項3を反映した付加構成として、裁断機3および押え板機構4に対して進行方向21の上流側にあたるホッパー1の天井13の近傍に、外周面に多数の突起52を有する2本の回転ロール5を設ける。この回転ロール5はいずれも、ベルトコンベア2による廃石膏ボード塊の進行方向21に対して逆流させる作用が働くよう回転させる。図2でいえば、時計回りの回転方向51となる。これにより図2の右方向(進行方向21)へ進もうとする廃石膏ボード塊の上面部分が、回転ローラ5の突起52に触れると、上面付近の板状の石膏ボードが滑って上流側へ押し戻される。すなわち、回転ロール5はホッパー1内部における流量調節機能を果たす。
【0064】
この機能により、廃石膏ボード塊がベルトコンベア2の上を進む際に、天井13に制限されるなどの障害が起きにくくなる。特に大量の廃石膏ボード塊を一度に投入した場合、この機能がないと、排出開口12に至る狭い空間に向けて進行抵抗が過大になり、ベルトコンベア2と廃石膏ボード塊がスリップしたり、駆動モーター24が過負荷停止するなどの障害を起こしやすい。本実施例の回転ロール5は2本としたが、作用が十分であれば1本でもよく、また多くしてもよい。さらに設置高さを調節できる機構を追加して調節できる流量が可変できるようにしてもよい。
【0065】
そのほかの付加構成を、図2に従って説明する。
第1に、ベルトコンベア2のベルト22には突起23を設ける。これにより廃石膏ボード塊を側壁などとの間で発生する摩擦抵抗などに抗して進行させるために、十分な駆動力を伝達することができる。突起23の間隔は、あまり狭すぎると大サイズの石膏ボードが乗った場合にスリップしやすくなるため、適度に広げる必要がある。実証実績によると0.5〜1メートル程度がよい。
【0066】
第2に、裁断時の異物回避機能を設ける。下降中の上刃32と下刃33の間に、石膏ボードではない異物Cが挟まれたことを検出できるセンサーで感知し、制御回路を通じた油圧シリンダ34の逆作動により上刃32を反転上昇させる。これにより上刃32および下刃33の刃面損壊を防止したり、後工程に大型の異物を移送しないなどの予防措置が可能となる。センサーは例えば図3に示すとおり、上刃32に連結される油圧シリンダ34のピンストンロッド35にひずみセンサー36を設けて、金属など硬い異物の挟み込みによって生じる通常より大きな機械的ストレスを感知する方法や、金属など導電性異物を対象に電流導通センサー37を設けて、異物Cを介して上刃32と下刃33との間を流れる微弱電流38を感知する方法など、様々な方法が考えられる。
【0067】
第3に、投入開口11の上部にフード14を、排出開口12の下流側にフード15を設け、それぞれのフード開口部にのれん状の防じん幕16を配することで、投入時や排出時に石膏の粉じんが周囲に飛散するのを防止する。
【0068】
第4に、投入側および排出側のフード14、15の天井付近にそれぞれ集じん口17を設け、これに接続する配管91を通じて別に設けた集じん機9により、フード14、15の内部で発生する石膏の粉じんが外部に流出するのを防止する。
【0069】
第5に、ホッパー1の側壁に設けた内部確認用の開口18を設ける。これを利用した直接目視またはセンサーなどの視認機能6により、ホッパー1の内部にある廃石膏ボード塊の残留量を確認し供給切れを防止する。
【0070】
実施例1同様に、裁断排出後の廃石膏ボード塊を速やかに次の処理工程へ搬送するため、進行方向81へ廃石膏ボード塊を送り出す別の排出ベルトコンベア8などの搬送機構を連結するとよい。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明は廃石膏ボードの分別処理における前処理設備として提案したものであるが、板状、棒状、その他複雑な形状の固体が混入する塊を、機械的に処理しなければならない工程において、対象物を安定かつ連続的に供給したい場合などに応用可能である。
【符号の説明】
【0072】
A 投入された廃石膏ボード塊
A’ 搬送中の廃石膏ボード塊
A1 大きなボード
B 排出された廃石膏ボード塊
C、C’ 異物
1 ホッパー
2 ベルトコンベア
3 裁断機
4 押え板機構
5 回転ロール
6 視認機能
7 投入用の重機(ホイールローダー)
8 排出ベルトコンベア
8’ 搬送ベルトコンベア
9 集じん機
10 磁選機
11 投入開口
12 排出開口
13 天井
14 投入側フード
15 排出側フード
16 防じん幕
17 集じん口
18 側壁の開口
21 ベルトコンベアの進行方向
22 ベルト
23 ベルト上の突起
24 駆動モーター
31 裁断刃(上刃)の作動方向
32 裁断刃(上刃)
33 裁断刃(下刃)
34 油圧シリンダ
35 ピストンロッド
36 ひずみセンサー
37 電流導通センサー
38 微弱電流の流れ
41 押え板の作動方向
42 押え板
43 駆動モータ
51 回転ロールの回転方向
52 回転ロールの突起
81 排出ベルトコンベアの進行方向
91 集じん経路(配管)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
新築や解体の建築現場等から排出される廃石膏ボード塊を投入するための投入開口、および前記廃石膏ボード塊を排出するための略水平方向へ開いた排出開口を有するホッパーと、該ホッパー底部に間欠駆動可能なベルトコンベアを有し、該ベルトコンベアの進行方向の端部であって、かつ該排出開口に設けた裁断機とにより構成し、該ベルトコンベアが前記間欠駆動の停止時において該裁断機の裁断刃が往復動することによって、前記廃石膏ボード塊を所定量排出ごとに裁断することを特徴とする廃石膏ボード用定量供給装置。
【請求項2】
該裁断機に対して該ベルトコンベアの進行方向の上流側近傍において、該裁断刃の往復動と略同じ方向に往復動する押え板を設け、かつ該ベルトコンベアが前記間欠運動の停止時おいて該押え板が往復動することを特徴とする請求項1に記載の廃石膏ボード用定量供給装置。
【請求項3】
該裁断機に対して該ベルトコンベアの進行方向上流側でかつ、該ベルトコンベアの上面から所定の高さにおいて円外周面に多数の突起を有する回転ロールを設け、かつ該回転ロールは、前記廃石膏ボード塊と接する部分において、前記廃石膏ボード塊が投入開口の方向へ逆流させられる作用が働く方向に回転することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の廃石膏ボード用定量供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−16657(P2012−16657A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−155326(P2010−155326)
【出願日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【出願人】(592002558)
【Fターム(参考)】