説明

廃食用油精製装置

【課題】装置構成が簡単で安価でありながら、廃食用油から不純物を効果的に除去してディーゼルエンジン用の代替燃料油に精製することができる廃食用油精製装置を提供する。
【解決手段】吸着剤が混入された廃食用油が加熱撹拌装置1の加熱撹拌タンク3内に投入されると、加熱撹拌タンク3に装着された加熱器8および撹拌器7が廃食用油を吸着剤と共に加熱しつつ撹拌することにより、廃食用油に含まれる不純物が吸着剤に吸着される。そして、この吸着剤を含む廃食用油が濾過精製装置2を構成する粗濾し用タンク13内の粗濾し用フィルタ13Fおよび精密濾し用タンク15内の精密濾し用フィルタ15Fを通過することにより、廃食用油中から吸着剤と共に不純物が濾過されてディーゼルエンジン用の代替燃料油が精製される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用済みの食用油である廃食用油を精製する廃食用油精製装置に関し、詳しくは、廃食用油をディーゼルエンジン用の代替燃料油に精製する廃食用油精製装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
てんぷら油やサラダオイルなどの使用済みの食用油を一般に廃食用油というが、この廃食用油は、生物化学的酸素要求量(BOD)が大きく、環境負荷が非常に高いため、これを生活排水と一緒に公共水域に排出すると水質汚染を招く。そこで、このような廃食用油を廃棄することなく再利用することが従来から種々検討されている。
【0003】
一方、軽油やガソリン等の化石燃料は、その燃焼により地球温暖化の原因となるガスを排出するため、近年、その使用削減が要求されている。その一環として、軽油に代わるディーゼルエンジン用の代替燃料が求められている。
【0004】
ここで、廃食用油は、その着火性を表すセタン価が軽油と同等以上であるため、これを精製して金属成分などの不純物成分(Na、Ca、Mg、ブドウ糖、塩化物イオン、硫酸イオン)を除去すれば、ディーゼルエンジン用の代替燃料油として十分に使用可能である。そして、この廃食用油からなる代替燃料油は、もともと菜種やひまわりなどの植物が空気中の二酸化炭素を取り込んで光合成により作り出した植物由来の油であるため、軽油などの化石燃料のように排気ガス中にSOxを放出することがない。
【0005】
また、この廃食用油からなる代替燃料油は、もともと酸素分が結合している含酸素燃料であるため、軽油に較べて燃料と酸素の混合が速やかに行われるようになり、その結果、排気ガス中の二酸化炭素(CO)、黒煙、粒子状物質(パティキュレートマター(PM))の発生も軽油に較べて少ない。
【0006】
加えて、この廃食用油からなる代替燃料油は、植物由来の原料(バイオマス)からなるため、カーボンニュートラルとみなすことができ、これを積極的に使用することは地球温暖化対策としても有効である。
【0007】
このような技術的背景から、廃食用油から不純物を除去してディーゼルエンジン用の代替燃料油とする方法および装置が従来から種々提案されており、最近では、廃食用油とメタノールを反応させてメチルエステル化する技術によって廃食用油をディーゼルエンジン用の代替燃料油とする方法が開発されている。
【0008】
また、特許文献1には、高融点の廃食用油中にオゾンを導入してクラッキングさせることにより、低融点のディーゼルエンジン用の代替燃料油に改質する技術が開示されている。
【特許文献1】特開2003−321683号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、廃食用油とメタノールを反応させてメチルエステル化する技術においては、高価な設備が必要となるだけでなく、グリセリンを含む環境負荷の高い物質が生成されるため、これらの物質を如何に処理するかが問題となる。また、特許文献1に記載された技術においては、廃食用油中にオゾンを導入してクラッキングさせるための装置が高価で複雑であるという問題がある。
【0010】
そこで、本発明は、装置構成が簡単で安価でありながら、廃食用油から不純物を効果的に除去してディーゼルエンジン用の代替燃料油に精製することができる廃食用油精製装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る廃食用油精製装置は、廃食用油をディーゼルエンジン用の代替燃料油に精製するための装置であって、吸着剤が混入された廃食用油を加熱しつつ撹拌する加熱撹拌装置と、この加熱撹拌装置により加熱撹拌された廃食用油中から前記吸着剤と共に不純物を濾過する濾過精製装置とを備えていることを特徴とする。
【0012】
本発明に係る廃食用油精製装置では、吸着剤が混入された廃食用油を加熱撹拌装置が加熱しつつ撹拌することにより、廃食用油に含まれる不純物が吸着剤に吸着される。そして、この廃食用油中から濾過精製装置が吸着剤と共に不純物を濾過することにより、廃食用油がディーゼルエンジン用の代替燃料油に精製される。
【0013】
ここで、廃食用油としては、菜種油、ひまわり油の他、オリーブオイル、ゴマ油、ヤシ油、大豆油、トウモロコシ油、綿実油、落花生油などの種々の廃食用油を挙げることができる。また、吸着剤としては、活性白土、活性炭、珪藻土、ゼオライト、骨灰などが使用可能である。
【0014】
本発明の廃食用油精製装置において、加熱撹拌装置は、吸着剤が混入される廃食用油を収容して加熱撹拌するための撹拌器を内装する加熱撹拌タンクを有する構成とすることができる。この場合、加熱撹拌タンクの上部には、前記廃食用油および吸着剤が投入される原料投入口と、加熱器が装着される加熱器装着口と、撹拌器が装着される撹拌器装着口と、廃食用油を送出するための加圧空気が導入される加圧空気導入口とが設けられ、加熱撹拌タンクの下部には、開閉弁により開閉される原料送出口が設けられているのが好ましい。
【0015】
このような加熱撹拌タンクを有する廃食用油精製装置では、加熱撹拌タンクの上部の原料投入口から廃食用油および吸着剤が加熱撹拌タンク内に投入される。そして、この廃食用油および吸着剤が加熱撹拌タンクの上部の加熱器装着口に装着された加熱器によって加熱され、加熱撹拌タンクの上部の撹拌器装着口に装着された撹拌器によって撹拌されることにより、廃食用油に含まれる不純物が吸着剤に吸着される。そして、この不純物を吸着した吸着剤を含む廃食用油は、加熱撹拌タンクの下部の原料送出口が開かれると、加熱撹拌タンクの上部の加圧空気導入口から導入される加圧空気によって原料送出口から濾過精製装置側へ送出される。
【0016】
ここで、加熱撹拌タンクの上部の原料投入口と撹拌器装着口とが共用化され、下部の原料送出口がドレン口を兼用していると、加熱撹拌タンクの構造が簡素化されるので好ましい。
【0017】
また、撹拌器は、加熱撹拌タンクの外部に配置されるモータにより駆動軸を介して加熱撹拌タンクの内部で回転駆動される回転翼を有する構造とすることができる。この場合、この回転翼が加熱撹拌タンク内に収容された廃食用油に下降流を生成する翼形とされていると、廃食用油が加熱撹拌タンク内を大きく上下に循環し、加熱器によって均一に加熱されるので好ましい。
【0018】
さらに、加熱器が少なくとも150℃の耐熱性を有する電熱ヒータで構成されており、この電熱ヒータの近傍に廃食用油の温度を計測する温度計が付設されていると、廃食用油の温度管理ができるので好ましい。
【0019】
また、加熱撹拌タンクの上部の加圧空気導入口から導入される加圧空気によって加熱撹拌タンク内の廃食用油を加熱撹拌タンクの下部の原料送出口から濾過精製装置側へ送出するためには、加熱撹拌タンクの原料投入口、加熱器装着口、撹拌器装着口および加圧空気導入口が密閉可能に構成されており、原料送出口が耐熱・耐圧ホースを介して濾過精製装置に接続されているのが好ましい。この耐熱・耐圧ホースは、着脱作業が容易なカップラータイプが好ましい。
【0020】
一方、本発明の廃食用油精製装置において、濾過精製装置は、前記加熱撹拌装置に接続される粗濾し用タンクに粗濾し用フィルタが内蔵され、この粗濾し用タンクに接続される精密濾し用タンクに精密濾し用フィルタが内蔵された構造とすることができる。
【0021】
このような構造の濾過精製装置を備える廃食用油精製装置では、加熱撹拌装置から送出される廃食用油中の不純物を吸着した吸着剤が粗濾し用タンク内の粗濾し用フィルタおよび精密濾し用タンク内の精密濾し用フィルタにより2段階に濾過されて除去される。
【0022】
ここで、粗濾し用フィルタおよび精密濾し用フィルタがメタル製とされており、この粗濾し用フィルタおよび精密濾し用フィルタがそれぞれ粗濾し用タンクおよび精密濾し用タンクに設けられた原料流出口から導入される加圧空気によって逆洗可能な形状に構成されていると、粗濾し用フィルタおよび精密濾し用フィルタの目詰まりに対するメンテナンス作業が容易となるので好ましい。
【0023】
また、粗濾し用タンクおよび精密濾し用タンクの底部に開閉可能なドレン口がそれぞれ設けられていると、粗濾し用タンク内および精密濾し用タンク内を洗浄した際の洗浄液をドレン口から容易に排出できるので好ましい。
【0024】
なお、粗濾し用タンクおよび精密濾し用タンクの湯煎槽が付設されていると、粗濾し用タンク内および精密濾し用タンク内の廃食用油の温度低下を防止でき、粗濾し用フィルタおよび精密濾し用フィルタを通過する廃食用油の粘度上昇を防止できるので好ましい。
【発明の効果】
【0025】
本発明に係る廃食用油精製装置では、吸着剤が混入された廃食用油を加熱撹拌装置が加熱しつつ撹拌することにより、廃食用油に含まれる不純物が吸着剤に吸着される。そして、この廃食用油中から濾過精製装置が吸着剤と共に不純物を濾過することにより、廃食用油がディーゼルエンジン用の代替燃料油に精製される。すなわち、本発明の廃食用油精製装置によれば、加熱撹拌装置と濾過精製装置とを備えた簡単で安価な装置構成でありながら、廃食用油から不純物を効果的に除去してディーゼルエンジン用の代替燃料油に精製することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、図面を参照して本発明に係る廃食用油精製装置の実施の形態を説明する。参照する図面において、図1〜図3は一実施形態に係る廃食用油精製装置の概略構成を示す模式図であり、図1は加熱撹拌タンクに原料オイル供給ホースが接続された状態の模式図、図2は加熱撹拌タンクに加熱器および撹拌器が接続された状態の模式図、図3は加熱撹拌タンクに加圧空気供給ホースが接続された状態の模式図である。
【0027】
図1〜図3に示す一実施形態の廃食用油精製装置は、廃食用油をディーゼルエンジン用の代替燃料油に精製するための装置であって、吸着剤が混入された廃食用油を加熱しつつ撹拌する加熱撹拌装置1と、この加熱撹拌装置1により加熱撹拌された廃食用油中から前記吸着剤と共に不純物を濾過する濾過精製装置2とを備えている。
【0028】
ここで、廃食用油としては、菜種油、ひまわり油、トウモロコシ油、オリーブオイル、ゴマ油の他、ヤシ油、大豆油、綿実油、落花生油などの種々の廃食用油を使用することができる。また、吸着剤は、廃食用油中の不純物成分(Na、Ca、Mg、ブドウ糖、塩化物イオン、硫酸イオン)を吸着除去できるものであり、例えばアルミノシリカ系酸化触媒である活性白土、あるいは活性炭が主として使用されるが、珪藻土、ゼオライト、骨灰などを使用することもできる。
【0029】
加熱撹拌装置1は、吸着剤が混入された廃食用油を収容して加熱撹拌するための加熱撹拌タンク3を有する。この加熱撹拌タンク3の上部には、撹拌器装着口3Aと、加熱器装着口3Bと、加圧空気導入口3Cとが設けられており、これらは密閉蓋によって気密性を保持できる構造とされている。そして、この加熱撹拌タンク3の下部には、開閉弁3Dによって開閉される原料オイル送出口3Eがドレン口を兼用して設けられている。
【0030】
加熱撹拌タンク3の撹拌器装着口3Aは、廃食用油および吸着剤が投入される原料投入口を兼用しており、図1に示すように、オイル回収槽4に回収された廃食用油OILをポンプ5の作動により吸引して吐出する原料オイル供給ホース6の吐出側の端部が挿入されるようになっている。なお、オイル回収槽4に回収された廃食用油OILは、天ぷらのカスなどの大きな残渣物が一次濾しとして予め除去されている。
【0031】
この撹拌器装着口3Aには、図2に示す撹拌器7が着脱自在に装着される。この撹拌器7は、加熱撹拌タンク3の外部に配置される駆動モータ7Aと、この駆動モータ7Aにより駆動軸7Bを介して加熱撹拌タンク3の内部で回転駆動される回転翼7Cとを有する。この回転翼7Cは、加熱撹拌タンク3に収容された廃食用油OILに下降流を生成する翼形とされている。
【0032】
加熱撹拌タンク3の加熱器装着口3Bには、図2に示す電熱ヒータ8が加熱器として着脱自在に装着される。この電熱ヒータ8は、少なくとも150℃の耐熱性を有する。そして、この電熱ヒータ8には、廃食用油OILの温度を計測する温度計(図示省略)が付設されている。
【0033】
加熱撹拌タンク3の加圧空気導入口3Cには、図3に示すエアコンプレッサー9に調圧弁10を介して接続された加圧空気供給ホース11の吐出側の端部が着脱自在に気密に接続されるようになっている。そして、この加圧空気供給ホース11を介してエアコンプレッサー9から加熱撹拌タンク3内に加圧空気が導入され、この加圧空気によって加熱撹拌タンク3内の廃食用油OILが送出されるようになっている。
【0034】
一方、濾過精製装置2は、加熱撹拌装置1を構成する加熱撹拌タンク3に耐熱・耐圧ホース12を介して接続される粗濾し用タンク13と、この粗濾し用タンク13に耐熱・耐圧ホース14を介して接続される精密濾し用タンク15とを備えている。
【0035】
粗濾し用タンク13の周壁部には原料オイル流入口13Aが設けられており、この原料オイル流入口13Aが耐熱・耐圧ホース12を介して加熱撹拌タンク3の底部の原料オイル送出口3Eに接続されている。この粗濾し用タンク13の天井部には、開閉弁13Bによって開閉される原料オイル流出口13Cが設けられ、底部には開閉弁13Dによって開閉されるドレン口13Eが設けられている。
【0036】
ここで、粗濾し用タンク13の内部には、粗濾し用フィルタ13Fが設置されている。この粗濾し用フィルタ13Fは、目の粗さが40μm前後の金属製フィルタであり、原料オイル流出口13Cから加圧空気が導入されることで逆洗可能な形状、例えば有底筒状に形成されている。そして、この粗濾し用フィルタ13Fは、その上部の開口部が原料オイル流出口13Cに連通する状態で設置されている。
【0037】
精密濾し用タンク15は、粗濾し用タンク13と同様に構成されており、その周壁部には原料オイル流入口15Aが設けられている。そして、この原料オイル流入口15Aが耐熱・耐圧ホース14を介して粗濾し用タンク13の天井部の原料オイル流出口13Cに接続されている。
【0038】
精密濾し用タンク15の天井部には、開閉弁15Bによって開閉される原料オイル流出口15Cが設けられ、底部には開閉弁15Dによって開閉されるドレン口15Eが設けられている。そして、精密濾し用タンク15の天井部の原料オイル流出口15Cには耐熱・耐圧ホース16が接続されており、その開放端はオイル貯留槽17内に臨んでいる。
【0039】
ここで、精密濾し用タンク15の内部には、精密濾し用フィルタ15Fが設置されている。この精密濾し用フィルタ15Fは、目の粗さが2μm前後の金属製フィルタであり、原料オイル流出口15Cから加圧空気が導入されることで逆洗可能な形状、例えば有底筒状に形成されている。そして、この精密濾し用フィルタ15Fは、その上部の開口部が原料オイル流出口13Cに連通する状態で設置されている。
【0040】
以上のように構成された一実施形態の廃食用油精製装置を使用して廃食用油を精製するには、まず、図1に示すように、予め一次濾しにより天ぷらのカスなどの大きな残渣物が除去された廃食用油OILを精製用としてオイル回収槽4内に用意する。そして、加熱撹拌装置1を構成する加熱撹拌タンク3の原料投入口を兼用した撹拌器装着口3Aの密閉蓋を取外し、この撹拌器装着口3Aに原料オイル供給ホース6の吐出側の端部を挿入する。このような準備の後、ポンプ5を作動させてオイル回収槽4内の廃食用油OILを原料オイル供給ホース6により加熱撹拌タンク3内に投入する。
【0041】
この場合、加熱撹拌タンク3の底部の原料送出口3Eを開閉する開閉弁3Dは、廃食用油OILが流出しないように閉じておく。また、廃食用油OILは、その後の加熱による体積膨張を考慮して、加熱撹拌タンク3の容積の90%程度投入する。
【0042】
加熱撹拌タンク3内への廃食用油OILの投入が完了したならば、原料投入口を兼用した撹拌器装着口3Aから原料オイル供給ホース6を取外し、その撹拌器装着口3Aから加熱撹拌タンク3内に吸着剤を適量投入する。
【0043】
次に、図2に示すように、加熱撹拌タンク3の撹拌器装着口3Aに撹拌器7を装着すると共に、加熱器装着口3Bに電熱ヒータ8を装着する。そして、駆動モータ7Aの駆動により撹拌器7の回転翼7Cを回転させつつ、電熱ヒータ8を100〜120℃に加熱する。
【0044】
こうすることで、加熱撹拌タンク3内の廃食用油OILは、回転翼7Cの部分から加熱撹拌タンク3の内面に沿う下降流となって電熱ヒータ8側へ移動し、この電熱ヒータ8により加熱されることで上昇流となって撹拌器7側へ移動する。こうして加熱撹拌タンク3内を循環する廃食用油OILは、吸着剤と共に100〜120℃の温度に均一に加熱されつつ撹拌される。そして、この過程で廃食用油OILに含まれる不純物成分(Na、Ca、Mg、ブドウ糖、塩化物イオン、硫酸イオン)が吸着剤に吸着される。
【0045】
加熱撹拌タンク3内の廃食用油OILが均一に加熱撹拌されて吸着剤に不純物成分が吸着されたならば、撹拌器装着口3Aから撹拌器7を取外すと共に加熱器装着口3Bから電熱ヒータ8を取外し、撹拌器装着口3Aおよび加熱器装着口3Bを密閉蓋で密閉する。
【0046】
続いて、図3に示すように、加熱撹拌タンク3の加圧空気導入口3Cに加圧空気供給ホース11の吐出側の端部を気密に接続し、エアコンプレッサー9から調圧弁10により調圧された加圧空気を加熱撹拌タンク3内の上部に導入する。そして、加熱撹拌タンク3の原料送出口3E用の開閉弁3Dを徐々に開くと共に、濾過精製装置2を構成する粗濾し用タンク13の原料オイル流出口13C用の開閉弁13Bおよび精密濾し用タンク15の原料オイル流出口15C用の開閉弁15Bを徐々に開く。
【0047】
こうすることで、加熱撹拌タンク3内で100〜120℃の温度に均一に加熱された粘度の低い廃食用油OILは、不純物成分(Na、Ca、Mg、ブドウ糖、塩化物イオン、硫酸イオン)を吸着した吸着剤と共に耐熱・耐圧ホース12を介して原料オイル流入口13Aから粗濾し用タンク13内に流入する。
【0048】
そして、粗濾し用タンク13内に充満した粘度の低い廃食用油OILは、原料オイル流出口13Cから耐熱・耐圧ホース14を介して精密濾し用タンク15内に原料オイル流入口15Aから流入し、精密濾し用タンク15内に充満した粘度の低い廃食用油OILは、原料オイル流出口15Cから耐熱・耐圧ホース16を介してオイル貯留槽17内に流出する。
【0049】
その際、廃食用油OILに含まれる不純物成分(Na、Ca、Mg、ブドウ糖、塩化物イオン、硫酸イオン)を吸着した大きな粒子の吸着剤が粗濾し用タンク13内の粗濾し用フィルタ13Fによって濾過され、続いて、小さな粒子の吸着剤が精密濾し用タンク15内の精密濾し用フィルタ15Fによって濾過される。
【0050】
そして、このように2段階に濾過されることで不純物成分(Na、Ca、Mg、ブドウ糖、塩化物イオン、硫酸イオン)が十分に除去された精製廃食用油OILがディーゼルエンジン用の代替燃料油としてオイル貯留槽17に貯留される。
【0051】
一実施形態の廃食用油精製装置による廃食用油OILの精製作業の終了後、加熱撹拌装置1を構成する加熱撹拌タンク3の底部に吸着剤が堆積した場合、そのタンク清掃作業の一例として、例えば図3に示すように、加熱撹拌タンク3の加圧空気導入口3Cに加圧空気供給ホース11の吐出側の端部を気密に接続すると共に、加熱撹拌タンク3の原料送出口3Eから耐熱・耐圧ホース12を取外して開閉弁3Dを全開にする。そして、エアコンプレッサー9から調圧弁10により調圧された加圧空気を加熱撹拌タンク3内に噴射する。こうすることで、加熱撹拌タンク3の底部に堆積した吸着剤を原料送出口3Eから外部に排出することができる。
【0052】
なお、前述したタンク清掃作業の他の例として、加熱撹拌タンク3の原料投入口を兼用する撹拌器装着口3Aを開いて加熱撹拌タンク3内に洗浄用ホースを挿入し、この洗浄用ホースから噴出する洗浄水によって加熱撹拌タンク3の底部に堆積した吸着剤を原料送出口3Eから洗い流すようにしてもよい。この洗浄作業の終了後、加熱撹拌タンク3の内面の水分は、ウェス等によりきれいに拭き去っておく。このような洗浄作業は、加熱撹拌タンク3の容量や吸着剤の投入量に応じて適宜の時期に実施する。
【0053】
ここで、濾過精製装置2の精密濾し用タンク15内の精密濾し用フィルタ15Fが目詰りした場合には、精密濾し用タンク15の原料オイル流出口15Cから耐熱・耐圧ホース16を取外し、代りにエアコンプレッサー9に接続された加圧空気供給ホース11を原料オイル流出口15Cに接続する。また、精密濾し用タンク15より上流側の粗濾し用タンク13の開閉弁13Bは閉じておく。そして、精密濾し用タンク15のドレン口15E用の開閉弁15Dを全開にして原料オイル流出口15C用の開閉弁15Bを開く。
【0054】
こうすることで、精密濾し用タンク15の原料オイル流出口15Cから精密濾し用フィルタ15Fに向けて加圧空気が噴射され、この加圧空気によって目詰りした精密濾し用フィルタ15Fが逆洗される。なお、粗濾し用タンク13内の粗濾し用フィルタ13Fが目詰りした場合にも同様にしてその目詰りが逆洗される。
【0055】
本発明に係る廃食用油精製装置は、前述した一実施形態に限定されるものではない。例えば、濾過精製装置2の粗濾し用タンク13と精密濾し用タンク15との間に中間濾し用フィルタを内蔵した中間濾し用タンクを設けることにより、廃食用油OILに含まれる不純物成分を3段階に濾過するようにしてもよい。この場合、中間濾し用タンク内の中間濾し用フィルタの目の粗さは例えば20μm前後とし、粗濾し用タンク13内の粗濾し用フィルタ13Fの目の粗さは例えば50μm前後とすることができる。
【0056】
また、粗濾し用タンク13および精密濾し用タンク15を60〜90℃の温度に保持できる湯煎槽を設けてもよい。この場合、粗濾し用タンク13および精密濾し用タンク15内を流通して粗濾し用フィルタ13Fおよび精密濾し用フィルタ15Fを通過する廃食用油OILの温度低下による粘度上昇を防止でき、吸着剤の濾過効率の悪化を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の一実施形態に係る廃食用油精製装置の概略構成を示す模式図であって、加熱撹拌タンクに原料オイル供給ホースが接続された状態の模式図である。
【図2】一実施形態に係る廃食用油精製装置の模式図であって、加熱撹拌タンクに加熱器および撹拌器が接続された状態の模式図である。
【図3】一実施形態に係る廃食用油精製装置の模式図であって、加熱撹拌タンクに加圧空気供給ホースが接続された状態の模式図である。
【符号の説明】
【0058】
1 加熱撹拌装置
2 濾過精製装置
3 加熱撹拌タンク
3A 撹拌器装着口(原料投入口を兼用)
3B 加熱器装着口
3C 加圧空気導入口
3D 開閉弁
3E 原料送出口
4 オイル回収槽
5 ポンプ
6 原料オイル供給ホース
7 撹拌器
7C 回転翼
8 電熱ヒータ(加熱器)
9 エアコンプレッサー
10 調圧弁
11 加圧空気供給ホース
12 耐熱・耐圧ホース
13 粗濾し用タンク
13A 原料オイル流入口
13B 開閉弁
13C 原料オイル流出口
13D 開閉弁
13E ドレン口
13F 粗濾し用フィルタ
14 耐熱・耐圧ホース
15 精密濾し用タンク
15A 原料オイル流入口
15B 開閉弁
15C 原料オイル流出口
15D 開閉弁
15E ドレン口
15F 粗濾し用フィルタ
16 耐熱・耐圧ホース
17 オイル貯留槽

【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃食用油をディーゼルエンジン用の代替燃料油に精製するための装置であって、吸着剤が混入された廃食用油を加熱しつつ撹拌する加熱撹拌装置と、この加熱撹拌装置により加熱撹拌された廃食用油中から前記吸着剤と共に不純物を濾過する濾過精製装置とを備え、前記加熱撹拌装置は、吸着剤が混入される廃食用油を収容して加熱撹拌するための撹拌器を内装する加熱撹拌タンクを有し、この加熱撹拌タンクの上部には、前記廃食用油および吸着剤が投入される原料投入口と、加熱器が装着される加熱器装着口と、撹拌器が装着される撹拌器装着口と、廃食用油を送出するための加圧空気が導入される加圧空気導入口とが設けられ、加熱撹拌タンクの下部には、開閉弁により開閉される原料送出口が設けられていることを特徴とする廃食用油精製装置。
【請求項2】
前記原料投入口と撹拌器装着口とが共用化されており、前記原料送出口がドレン口を兼用していることを特徴とする請求項1に記載の廃食用油精製装置。
【請求項3】
前記撹拌器は、加熱撹拌タンクの外部に配置されるモータにより駆動軸を介して加熱撹拌タンクの内部で回転駆動される回転翼を有し、この回転翼は、加熱撹拌タンク内に収容された廃食用油に下降流を生成する翼形とされていることを特徴とする請求項1または2に記載の廃食用油精製装置。
【請求項4】
前記加熱器が少なくとも150℃の耐熱性を有する電熱ヒータで構成されており、この電熱ヒータの近傍には廃食用油の温度を計測する温度計が付設されていることを特徴とする請求項2または3に記載の廃食用油精製装置。
【請求項5】
前記原料投入口、加熱器装着口、撹拌器装着口および加圧空気導入口が密閉可能に構成されており、前記原料送出口が耐熱・耐圧ホースを介して前記濾過精製装置に接続されていることを特徴とする請求項2〜4の何れかに記載の廃食用油精製装置。
【請求項6】
前記濾過精製装置は、前記加熱撹拌装置に接続される粗濾し用タンクに粗濾し用フィルタが内蔵され、この粗濾し用タンクに接続される精密濾し用タンクに精密濾し用フィルタが内蔵された構造であって、前記粗濾し用タンクおよび精密濾し用タンクの底部には開閉可能なドレン口がそれぞれ設けられていることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の廃食用油精製装置。
【請求項7】
前記粗濾し用フィルタおよび精密濾し用フィルタが金属製であることを特徴とする請求項6に記載の廃食用油精製装置。
【請求項8】
前記粗濾し用フィルタおよび精密濾し用フィルタがそれぞれ前記粗濾し用タンクおよび精密濾し用タンクに設けられた原料流出口から導入される加圧空気によって逆洗可能な形状に構成されていることを特徴とする請求項6または7に記載の廃食用油精製装置。
【請求項9】
前記粗濾し用タンクおよび精密濾し用タンクの湯煎槽が付設されていることを特徴とする請求項6〜8の何れかに記載の廃食用油精製装置。
【請求項10】
前記吸着剤が活性白土または活性炭であることを特徴とする請求項1〜10の何れかに記載の廃食用油精製装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−145974(P2007−145974A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−341770(P2005−341770)
【出願日】平成17年11月28日(2005.11.28)
【出願人】(391016680)株式会社松尾工業所 (4)
【Fターム(参考)】