説明

建具用パネル部材、及び、建具

【課題】建具用パネルを変更することなく、弾性を有する部材を備えることが可能な建具用パネル部材等を提供する。
【解決手段】開口を形成する枠体に支持され前記開口を閉塞可能な建具用パネルと、前記建具用パネルの、見込み方向における一方側の表面に設けられ当該表面の領域より狭い領域を覆う表面部材と、前記建具用パネルの前記表面における前記表面部材に覆われていない領域に配置され前記表面部材と共に前記建具用パネルの前記表面を覆う弾性部材と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開口を形成する枠体に支持され前記開口を閉塞可能な建具用パネルを有する建具用パネル部材、及び、この建具用パネル部材を有する建具に関する。
【背景技術】
【0002】
開口を形成する枠体に支持され前記開口を閉塞可能な建具用パネルを有する建具用パネル部材のなかには、ドアの下端部に軟質合成樹脂のような弾性を有する部材を備えた建具用パネル部材がある(例えば、特許文献1参照)。このような建具用パネル部材に備えられた弾性を有する部材は、既存の建具用パネルの下面側や、高さを若干縮めて形成された建具用パネルの下面側に取り付けられている。
【特許文献1】特開平10−196217号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記のような従来の建具用パネル部材にあっては、弾性を有する部材が建具用パネルの下面側に外付けされる場合には、ドアの高さが高くなるため従来の枠体や開口の寸法を変更しなければドアが収まらない畏れがある。また、建具用パネルの高さを縮める場合には建具用パネル自身に加工を施すか、又は、高さを縮めた専用の建具用パネルを別途用意しなければならない。このため、建具用パネルや建具用パネルを取り付ける箇所に加工を施す場合には多大な手間が発生し、また、専用の建具用パネルを別途用意する場合には、在庫の管理が煩雑になり、いずれの場合にもコストが高騰する畏れがあるという課題があった。
【0004】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、建具用パネルや枠体等を変更することなく、弾性を有する部材を備えることが可能な建具用パネル部材、及び、この建具用パネル部材を有する建具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる目的を達成するために本発明の建具用パネル部材は、開口を形成する枠体に支持され前記開口を閉塞可能な建具用パネルと、前記建具用パネルの、見込み方向における一方側の表面に設けられ当該表面の領域より狭い領域を覆う表面部材と、前記建具用パネルの前記表面における前記表面部材に覆われていない領域に配置され前記表面部材と共に前記建具用パネルの前記表面を覆う弾性部材と、を備えたことを特徴とする建具用パネル部材である。
【0006】
このような建具用パネル部材によれば、建具用パネルの一方側の表面に、当該表面の領域を覆うように表面部材と弾性部材とが設けられているので、建具用パネルが支持される枠体にて形成される開口及び建具用パネルの寸法を変更することなく、表面部材と弾性部材を建具用パネル部材に設けることが可能である。このため、表面部材や弾性部材が設けられない建具用パネルと同一の既存の建具用パネルを用いて、表面部材と弾性部材を備えた建具用パネル部材を実現することが可能である。ここで、建具用パネル部材の例としては所謂障子が挙げられ、開き戸、引き戸、折れ戸、回転ドアなどに用いられる障子がいずれも含まれる。
【0007】
また、弾性部材は、建具用パネルの、表面部材にて覆われていない領域に配置されているので、単に建具用パネルの表面に弾性部材を設けた場合より、表面部材の厚み分だけ弾性部材の表面側への突出量を小さくすることが可能であり、意匠性をより高めることが可能である。ここで、建具用パネルの表面における表面部材に覆われていない領域は、建具用パネルの一方側の表面における縁側の領域であることが望ましい。
かかる建具用パネル部材であって、前記弾性部材は、前記建具用パネルに前記表面部材が設けられたパネル体に、前記弾性部材を取り付けるための取付部材を介して取り付けられていることが望ましい。
このような建具用パネル部材によれば、取付部材を介して、弾性部材をパネル体に容易に取り付けることが可能である。
【0008】
かかる建具用パネル部材であって、前記表面部材の端部を覆うキャップ部材を有し、前記弾性部材は、前記建具用パネルに前記表面部材が設けられたパネル体に、前記キャップ部材を介して取り付けられていることが望ましい。
このような建具用パネル部材によれば、表面部材の端部を覆うキャップ部材を介して弾性部材がパネル体に取り付けられているので、弾性部材を取り付けるためだけの部材を別途設けることなく、表面部材の端部を保護しつつ、容易にかつ安価にパネル体に弾性部材を備えることが可能である。
【0009】
かかる建具用パネル部材であって、前記パネル体は、前記表面部材の端部側であって見込み方向における前記建具用パネルより前記一方側に空隙を有し、前記キャップ部材は前記空隙を利用して取り付けられていることが望ましい。
このような建具用パネル部材によれば、キャップ部材は、パネル体がその端部側に有する、見込み方向における建具用パネルより一方側の空隙を利用して取り付けられるので、建具用パネルの一方側に建具用パネルの端部を覆うキャップ部材を容易に取り付けることが可能である。
【0010】
かかる建具用パネル部材であって、前記表面部材は、前記弾性部材が取り付けられる弾性部材取付部を有することが望ましい。
このような建具用パネル部材によれば、弾性部材が取り付けられる弾性部材取付部を表面部材が有しているので、弾性部材を表面部材に直接取り付けることが可能である。このため、弾性部材を取り付けるためだけの部材を何ら設けることなく、弾性部材を容易に取り付けることが可能である。
【0011】
かかる建具用パネル部材であって、前記表面部材の前記一方側の表面に沿う方向において、前記弾性部材と隣接する部材の前記一方側の表面は、前記弾性部材の前記一方側の表面と平坦な面を形成すべく配置されるか、又は、前記弾性部材の前記一方側の表面より他方側に配置されることが望ましい。
このような建具用パネル部材によれば、表面部材の一方側の表面に沿う方向において弾性部材が隣接する部材の一方側の表面と、弾性部材の一方側の表面とが平坦な面を形成すべく弾性部材が配置された場合には、一方側の表面において弾性部材が隣接する部材と弾性部材との境界部分の段差が小さくなるため、より意匠性を向上させることが可能である。また、隣接する部材の一方側の表面が弾性部材の一方側の表面より他方側に配置された場合には、弾性部材の方が一方側に突出するため、建具用パネル部材の一方側に存在するものに表面部材や建具用パネルが直接衝突することをより防止することが可能である。
【0012】
かかる建具用パネル部材であって、前記弾性部材は、前記建具用パネルの下端側に設けられていることが望ましい。
このような建具用パネル部材によれば、建具用パネルの下端側、及び、建具用パネルを移動させて開口を開閉する際に建具用パネルの下部周辺に存在するものが損傷を受けることを防止することが可能である。
【0013】
また、前記建具用パネル部材と、前記建具用パネル部材を支持する枠体と、を有することを特徴とする建具である。
【0014】
このような建具によれば、建具用パネルの一方側の表面に、当該表面の領域を覆うように表面部材と弾性部材とが設けられている建具用パネル部材を有するので、建具用パネル部材が支持される枠体にて形成される開口及び建具用パネルの寸法を変更することなく、表面部材と弾性部材を建具用パネル部材に設けることが可能である。このため、表面部材や弾性部材が設けられない建具用パネルと同一の既存の建具用パネル及び枠体を用いて、表面部材と弾性部材を備えた建具用パネル部材を有する建具を実現することが可能である。ここで、建具用パネル部材を有する建具の例としては、開き戸、引き戸、折れ戸、回転ドアなどの建具が挙げられる。
【0015】
また、弾性部材が建具用パネルの、表面部材にて覆われていない領域に配置されているので、単に建具用パネルの表面に弾性部材を設けた場合より、表面部材の厚み分だけ弾性部材の表面側への突出量を小さくすることが可能であり、建具全体としての意匠性をより高めることが可能である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、建具用パネルや枠体を変更することなく、弾性を有する部材を備えることが可能な建具用パネル部材、及び、この建具用パネル部材を有する建具を提供することができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態に係る建具用パネル部材、及び、この建具用パネル部材を有する建具について図面を参照して説明する。本実施形態の建具は、開口を形成する枠体と、枠体に回動自在に支持されて開口を閉塞可能な建具用パネル部材と、を有する建具として、建物に設けられる玄関用の建具を例に挙げて説明する。以下の説明では、建物の外側から見た状態にて上下となる方向を上下方向、及び左右となる方向を左右方向又は見付け方向として説明する。尚、建具用パネル単体や建具用パネル部材単体としての説明であっても、玄関ドアを枠体に取り付けた状態における上下を上下方向として説明する。
【0018】
本実施形態に係る建具10は、図1に示すように、躯体に固定され開口を形成する枠体14と、枠体14に蝶番13を介して回動可能に設けられ開口を閉塞可能な建具用パネル部材としての玄関ドア12とを有している。
【0019】
枠体14は、玄関ドア12の上側に位置する上枠14aと、左右に位置する左縦枠14b及び右縦枠14cと、下枠15とを有している。
上枠14a、左縦枠14b、右縦枠14c及び下枠15は、いずれもアルミニウム製の押出成形材である。
【0020】
下枠15は、図4に示すように、下枠本体16と、下枠本体16に設けられ玄関ドア12の周縁部が当接されるゴム製のシール部材17と、下枠本体16に設けられ下枠本体16の屋内側の部位を覆う樹脂製の化粧下枠材18とを有している。
【0021】
下枠本体16は、玄関ドア12の下面と対向する上面部16aと、上面部16aの屋内側の縁部から上方に延出された鉛直壁部16bと、鉛直壁部16bの屋外側に設けられ屋外側に向かう開口を有しシール部材17が保持されるシール保持部16cと、鉛直壁部16bの屋内側に設けられ上方に向かう開口を有し化粧下枠材18が保持される化粧材保持部16dとを有している。
【0022】
玄関ドア12は、建具用パネル20と、建具用パネル20の、見込み方向における一方側の表面としての屋外側の表面(以下、屋外側表面という)20aを覆う表面部材としての化粧部材50と、開閉する際の操作部となるハンドル30と、玄関ドア12の下部に設けられた下部構造体32とを有している。そして、玄関ドア12にて開口が閉塞された状態から、図2、図3に示すように、戸先框側に設けられたハンドル30を屋外側に移動させるように玄関ドア12を回動させることにより開口が開放される。
【0023】
本実施形態の建具用パネル20は、化粧部材50及び下部構造体32を備えなくとも枠体にて形成された開口を閉塞することが可能であり、本建具用パネル20にハンドルが設けられた構成であっても、玄関ドアとして使用することが可能な建具用パネルである。また、本実施形態では、下部構造体32を、弾性を有する弾性部材としての緩衝材33と、緩衝材33を取り付けるための取付部材34とで構成した例について説明する。
【0024】
建具用パネル20は、パネル状の断熱部材22と、断熱部材22の周端部を囲むように矩形状に形成された鋼製のフレーム24と、玄関ドア12の屋内側及び屋外側の面となる鋼製の表面パネル材26と、戸先側に固定され枠体14の左縦枠14bに当接される戸当り部材31(図2)と、を有している。
【0025】
フレーム24は、図4に示すように、建具用パネル20の中央に向かって開放された溝部が全周に亘って形成された矩形状の枠であり、フレーム24にて囲まれた領域に断熱部材22が備えられている。断熱部材22及びフレーム24の表裏面側に設けられた表面パネル材26は、建具用パネル20の周縁部にて全周に亘って建具用パネル20の厚み方向における内側に向かってそれぞれ折り曲げられるとともに、リベット40にてフレーム24に固定されている。折り曲げられた2枚の表面パネル材26の端縁26a同士は、建具用パネル20の厚み方向に間隔を隔てて配置されている。
【0026】
化粧部材50は、建具用パネル20の屋外側表面20aに、屋外側表面20aの全面となる領域より狭い領域、具体的には屋外側表面20aの全領域のうち下端側の領域を除く領域に設けられている。化粧部材50は、複数の化粧体52にて構成されている。化粧体52は、水平断面がほぼ矩形状をなし長手方向に連通する中空部を有するアルミニウム製の押出成形部材である。また、複数の化粧体52のうち少なくとも2つには、見付け方向のほぼ中央に内部の空間を見付け方向において2つの空間に仕切る仕切り部52aが設けられており、仕切り部52aの見込み方向における中央部には、後述する下部構造体32を固定するためのビスが螺合される螺合部52bが形成されている。
【0027】
各化粧体52は、長手方向が上下方向に沿うように配置されて、見付け方向に並べて建具用パネル20の屋外側表面20aに、例えば両面テープにて貼り付けられている。各化粧体52の上端部には、樹脂製の上キャップ37が嵌合され、上キャップ37の上縁と建具用パネル20の上縁とがほぼ水平になるように構成されている。
【0028】
下部構造体32は、建具用パネル20の屋外側表面20aであって、化粧体52に覆われていない領域、すなわち屋外側表面20aの全面における下端側の領域を除く領域に位置させて設けられている。下部構造体32は、弾性変形可能な軟質部材でなる緩衝材33と、建具用パネル20の屋外側表面20aに貼り付けられた化粧体52の下側の小口を覆うように設けられ、緩衝材33が取り付けられる取付部34aを有する取付部材34とで構成されている。また、取付部材34の戸先側及び吊元側の縁部には当該縁部を覆うキャップ35(図2)が設けられている。図1及び図2では、吊元側のキャップは省略されている。
【0029】
玄関ドア12の下部における下部構造体32の構造を、図2〜図4を参照して説明する。取付部材34は、建具用パネル20の見付け方向における全域に亘るような長さを有するアルミニウム製の成型部材である。
【0030】
図4に示すように、取付部材34は、建具用パネル20の屋外側表面20aに設けられた各化粧体52の下端側の小口に当接される小口当接部34bと、小口当接部34bの建具用パネル側の端部から垂設された垂設壁部34cと、小口当接部34bの反建具用パネル側の端部から垂設された表面垂設壁部34dと、垂設壁部34cから反建具用パネル側に向かって延出されたパネル側延出部34eと、表面垂設壁部34dの下端から建具用パネル側に向かって延出された表面側延出部34fと、表面垂設壁部34dの、小口当接部34bより上方に化粧体52の反建具用パネル側の下端縁52cを覆うように突出された突起部34gと、を有している。
【0031】
垂設壁部34cは、上端部と下端部とに建具用パネル側に僅かに突出されて建具用パネル20に当接される当接突起34hを有している。また垂設壁部34cの下端は、建具用パネル20の下端とほぼ同じ位置まで設けられている。
【0032】
表面側延出部34f及びパネル側延出部34eは、小口当接部34bと下方に間隔を隔てるとともに、垂設壁部34cの下端より十分に高い位置に配置されている。また、表面側延出部34fとパネル側延出部34eとは、ほぼ同じ高さの水平な平面を形成し、表面側延出部34fの先端部とパネル側延出部34eの先端部とは、建具用パネル20の厚み方向に間隔を隔てて配置されている。
【0033】
また、取付部材34には、小口当接部34b、表面側延出部34f、パネル側延出部34e、表面垂設壁部34d、及び、垂設壁部34cの一部にて、ほぼ囲まれた凹部34mを有する取付部34aが形成されており、表面側延出部34fとパネル側延出部34eとの間には見付け方向に沿ってスリット34iが形成されている。そして、化粧部材50の下側に設けられる緩衝材33の後述する取付片33aがスリット34iを通して凹部34m内に収容されて緩衝材33が取付部材34に取り付けられている。
【0034】
また、小口当接部34bには、取付部材34を化粧部材50に固定するためのビス70が貫通される貫通孔34jが、化粧部材50に設けられた螺合部52bの位置に合わせても設けられている。そして、垂設壁部34cより反建具用パネル側であって、表面側延出部34f及びパネル側延出部34eより下方の領域には、緩衝材33が取り付けられている。すなわち、緩衝材33は、建具用パネル20の下端側であって、建具用パネル20に化粧部材50が取り付けられたパネル体53に取付部材34を介して取り付けられ、化粧部材50とともに建具用パネル20の屋外側表面20aを覆っている。
【0035】
戸先側のキャップ35aは、取付部材34の戸先側の縁部を覆うとともに建具用パネル20に固定されている戸当り部材31の下端部を覆っている。戸当り部材31は、左縦枠14bの外面に当接されるため建具用パネル20の外表面より外側に設けられている。このため、キャップ35aも戸先部分だけ外側に突出されている。戸先側のキャップ35aの突出部分35bの下面には、取付部材34に設けられた取付部34aと繋がるように取付部(不図示)が設けられている。
【0036】
緩衝材33は、建具用パネル20の屋外側表面20aより屋外側の下端側の領域に設けられており、発泡ウレタンやゴムなどの弾性を有する軟質部材である。また、緩衝材33は、玄関ドア12の幅方向に渡ってほぼ全域に設けられる細長いほぼ直方体状の部材であり、取付部材34と戸先側のキャップ35aとの間にて屈曲変形させて取り付けられている。そして、上部には長手方向に沿って、取付部材34の取付部34a及びキャップ35の取付部に取り付けられる取付片33aが突出されている。
【0037】
建具用パネル20に取り付けられた取付部材34の凹部34mに取付片33aが挿入されて緩衝材33が取り付けられると、緩衝材33の屋外側の表面33cと、屋外側表面20aに沿う方向(ここでは上下方向)において緩衝材33と隣接する部材としての取付部材34の屋外側の表面34kとが、平坦な面を形成すべく配置される。ここで、緩衝材33の屋外側の表面33cと取付部材34の屋外側の表面34kとには、寸法誤差及び取付誤差等により正確に平坦な面が形成されない場合もあるが、設計寸法上は平坦な面が形成されるべく構成されている。
【0038】
また、緩衝材33の下面は、建具用パネル20の下面とほぼ同じ高さに形成されており、反建具用パネル側の下縁は、僅かに下方に突出された水切部33bが設けられている。
【0039】
そして、玄関ドア12が閉じられた状態では、緩衝材33及び建具用パネル20が下枠15の上面部16aと上下方向に間隔を隔てて配置されるとともに、建具用パネル20がシール部材17に当接されている。
【0040】
上記実施形態の玄関ドア12及び建具10によれば、建具用パネル20の屋外側表面20aに化粧部材50と緩衝材33とが設けられているので、建具用パネル20が支持される枠体14にて形成される開口及び建具用パネル20の寸法を変更することなく、化粧部材50と緩衝材33を建具用パネル20に設けることが可能である。このため、枠体と、枠体にて形成される開口を閉塞可能な建具用パネルとが組み合わされた既存の建具の建具用パネルに上記化粧部材50や緩衝材33を設けることにより、特別な建具用パネルや枠体を用いることなく、化粧部材50と緩衝材33とを備えた玄関ドア12を有する建具10を提供することが可能である。また、緩衝材33は、建具用パネル20の、化粧部材50にて覆われていない領域に配置されているので、単に建具用パネル20の表面20aに緩衝材33を設けた場合より、化粧部材50の厚み分だけ緩衝材33の屋外側への突出量を小さくすることが可能である。このため、建具10及び建具10が備えられた建物の意匠性をより高めることが可能である。
【0041】
また、緩衝材33は取付部材34を介して建具用パネル20に取り付けられているので、容易にかつ確実に緩衝材33を建具用パネル20に取り付けることが可能である。
【0042】
また、緩衝材33の屋外側の表面33cと、緩衝材33が上下方向において隣接する取付部材34の屋外側の表面34kとが平坦な面を形成すべく構成されているので、取付部材34と緩衝材33との境界部分の段差が小さくなるため、より意匠性を向上させることが可能である。
【0043】
また、緩衝材33は建具用パネル20の屋外側表面20aの下端側、すなわち、玄関ドア12が移動される側(開放される側)の下端側に配置されているので、屋外側(開放方向側から)から玄関ドア12を開いた際に、玄関ドア12の下端部、及び、玄関ドア12を開閉する際に玄関ドア12の下部周辺に存在するものが損傷することを抑制することが可能である。例えば、玄関ドア12を開放した際に、玄関ドア12を操作した者の足と玄関ドア12の下端とが接触することが万が一生じたとしても、玄関ドア12の屋外側下端に弾性変形可能な緩衝材33が設けられている為、操作した者が足を怪我することを防止することが可能である。
【0044】
上記実施形態においては、緩衝材33を化粧体52にビス止めされた取付部材34に取り付けた例について説明したが、これに限るものではない。以下に緩衝材の異なる取り付け例を説明する。以下の説明においては、上記実施形態と同じ部材には、同符号を付して説明を省略する。
【0045】
例えば図5に示すように、建具用パネル20にビス止めされた取付部材60に弾性を有する緩衝材62を取り付けても良い。この場合には、取付部材60は、建具用パネル20の屋外側表面20aに設けられた各化粧体52の下端側の小口に当接される小口当接部60aと、小口当接部60aの建具用パネル側の端部から垂設された垂設壁部60bと、垂設壁部60bの下端部から屋外方向に向かって延設された下端延設部60cと、小口当接部60aから下方に向かって垂設された屋外側垂設壁部60dと、下端延設部60cの屋外側の端から上方に向かって延出された屋外側延出部60eと、小口当接部60aの屋外側の端から上方に化粧体52の反建具用パネル側の下端縁52cを覆うように突出された突起部60fと、を有している。
【0046】
屋外側垂設壁部60d及び屋外側延出部60eは、垂設壁部60bと建具用パネル20の厚み方向に間隔を隔てて垂設壁部60bと対向する位置に配置されている。また、屋外側垂設壁部60dと屋外側延出部60eとは、ほぼ同じ平面をなすように形成され、屋外側垂設壁部60dの下端部と屋外側延出部60eの上端部とは、上下方向に間隔を隔てて配置されている。すなわち、垂設壁部60b、屋外側垂設壁部60d、屋外側延出部60e、下端延設部60c、及び、小口当接部60aの一部にて、ほぼ囲まれた凹部60iが形成され、屋外側垂設壁部60dと屋外側延出部60eとの間に見付け方向に沿ってスリット60gが形成されている。そして、化粧部材50の下側に設けられる緩衝材62の取付片62aがスリット60gを通して凹部60iに収容されて緩衝材62が取付部材60に取り付けられている。
【0047】
また、垂設壁部60bには、取付部材60を建具用パネル20の下側のフレーム24に固定するためのビス70が貫通される貫通孔60hが設けられている。そして、小口当接部60aより下側であって、屋外側垂設壁部60d及び屋外側延出部60eより屋外側の領域には、緩衝材62が取り付けられている。
【0048】
また、図6、図7に示すように、建具用パネル20の屋外側表面20aに貼り付けられた各化粧体52の下端部に、それぞれ下キャップ部材64を設け、下キャップ部材64に緩衝材33を取り付けるための取付部64aを備えても良い。すなわち、下キャップ部材64は、化粧体52の端部としての小口を覆うキャップ本体64bと、キャップ本体64bの上面に立設され、化粧体52に嵌合される嵌合部64cと、キャップ本体64bの下面側に見付け方向に沿って設けられたスリット64dと、キャップ本体64bの下方からスリット64dを通って外部と連通し緩衝材33の取付片33aが挿入される凹部64eを有する取付部64aとを備えている。そして、建具用パネル20に複数取り付けられた化粧体52の各小口から中空部に嵌合部64cを嵌合させて複数の下キャップ部材64を取り付け、更に、下キャップ部材64に緩衝材33を取り付ける。ここで、化粧体52の中空部は、建具用パネル20より見込み方向における屋外側の空隙53aの一例である。
【0049】
このように、表面部材の端部としての化粧体52の小口を覆う下キャップ部材64を介して緩衝材33が化粧体52に取り付けられているので、緩衝材33を取り付けるためだけの部材を別途設けることなく、化粧体52の端部を保護しつつ、容易にかつ安価にパネル体53に緩衝材33を備えることが可能である。
【0050】
本実施形態では、緩衝材33を個々に下キャップ部材64に取り付けた例について説明したが、1本の緩衝材33を複数の下キャップ部材64に跨らせて備えても良い。また、複数の化粧体52の小口を覆う一体型のキャップ部材(不図示)を備え、この一体型のキャップ部材に緩衝材33を備えてもよい。また、本実施形態は、各化粧体52が内部に中空部を備える例について説明したが、化粧部材50の屋外側の部位と建具用パネル20との間に形成される空隙を覆うためのキャップ部材であれば化粧体52及び下キャップ部材64の形状を限定するものではない。例えば、化粧体が、屋内側が開放され、水平断面が「U」字状の部材であったとしても、その化粧体を建具用パネルに取り付けた際には、化粧部材の屋外側の部位と建具用パネルとの間には空隙が形成されるので、この空隙を利用して下キャップ部材を設け、この下キャップ部材に緩衝材を設けても良い。このように、キャップ部材は、建具用パネルに化粧部材が設けられたパネル体の、建具用パネルより見込み方向における屋外側の空隙を利用して取り付けられてもよい。また、化粧体の端部の外周部を覆うように、化粧体の端部が挿入される凹部をキャップ部材が有しており、化粧体の端部がキャップ部材の端部に挿入されて取り付けられるキャップ部材であっても良い。この場合には、化粧体が中実の部材の場合であっても取り付けることが可能である。
【0051】
また、上記実施形態は、いずれも化粧体52が、長手方向が上下方向に沿わされるとともに見付け方向に並べて配置された例につい説明したが、例えば、図8、図9に示すように、化粧体54の長手方向を見付け方向に沿わせて、上下方向に並べて配置しても良い。
【0052】
この場合には、化粧体54の上縁側に、上側に隣接する化粧体54と係合するための係合突部54aを備え、下縁側には下側に隣接する化粧体54と係合するための係合部54bを備え、上下方向に隣接する2つの化粧体54を、上側に位置する化粧体54の係合部54bに下側に位置する化粧体54の係合突部54aを係合させても良い。このとき最下段に配置される化粧体54の係合部54bには、係合部54bが有する凹部54dに緩衝材33の取付片33aが挿入されることにより、玄関ドア12の下端側に緩衝材33を直接備えることが可能である。
【0053】
この場合には、化粧部材50の屋外側の表面に沿う方向において、緩衝材33と隣接する部材は、最下段に配置される化粧体54なので、緩衝材33の屋外側の表面33cと化粧体54の屋外側の表面54cとが平坦な面を形成すべく構成されている。このため、玄関ドア12の屋外側の表面は全域がほぼ平坦となり、より意匠性を向上する。ここで、最下段の係合部54bは、弾性部材が取り付けられる弾性部材取付部の一例である。
【0054】
このような建具10によれば、緩衝材33が化粧体54に直接取り付けられているので、化粧体54を取り付けるためだけの部材を何ら設けることなく、緩衝材33を容易にかつ確実に取り付けることが可能である。また、緩衝材を直接パネル体に取り付ける場合には、両面テープなどの接着部材にて貼り付けても良い。また、緩衝材が建具用パネルや化粧部材と一体に成形されていても良い。
【0055】
上記実施形態においては、緩衝材33の屋外側の表面33cと、緩衝材33が上下方向において隣接する取付部材34の屋外側の表面34kとが平坦な面を形成すべく構成されている例について説明したが、緩衝材33の屋外側の表面33cと取付部材34の屋外側の表面34kとが、必ずしも平坦な面を形成する構成でなくてもよい。例えば、取付部材34の屋外側の表面34kの方が緩衝材33の屋外側の表面33cより屋内側に位置していても良い。この場合には、玄関ドア12を開いた際に、玄関ドア12の下端部、及び、玄関ドア12を開閉する際に玄関ドア12の下部周辺に存在するものが損傷することを、より抑制することが可能である。
【0056】
上記実施形態においては、玄関ドア12の下端側に緩衝材33、62を備えた構成について説明したが、緩衝材を備える位置は、必ずしも下端側に限らない。例えば、建具用パネル20の吊り元側、又は、戸先側などの建具用パネル20の周端側の部位に緩衝材を備えることにより、縦枠14b、14cと、建具用パネル20の吊り元側及び戸先側の縁部との間に入り込んだものが、挟まれたり損傷したりすることを防止することが可能である。また、上記実施形態では、建具用パネル20の、見込み方向における一方側の表面としての屋外側表面20aを覆うように緩衝材33を備えた例について説明したが、玄関ドアを屋内側に移動させて開く場合には、建具用パネルの屋内側表面に緩衝材が設けられていても良い。また、建具用パネルの屋内側と屋外側とにいずれも緩衝材が設けられていても構わない。
【0057】
上記実施形態においては、玄関に設けられる建具を例に挙げて説明したが、例えば室内外を仕切る扉を有する建具であっても構わない。また、建具用パネル部材を、開き戸である玄関ドアに適用した例について説明したが、建具用パネル部材は開き戸に限らず、引き戸、折れ戸、回転ドアの障子などであっても構わない。これら引き戸、折れ戸、回転ドアなどの障子の場合にも、建具用パネル部材を移動させて開口を開閉する際に建具用パネル部材の下端側をはじめとする縁側の領域周辺に存在するものが損傷することを抑制することが可能である。
【0058】
また、上記実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本実施形態に係る建具を屋外側から見た外観図である。
【図2】玄関ドアを開いた状態を示す斜視図である。
【図3】図2に示すA部の拡大図である。
【図4】化粧体に取り付けられた緩衝材を説明するための縦断面図である。
【図5】建具用パネルに取り付けられた緩衝材を説明するための縦断面図である。
【図6】下キャップ部材に取り付けられた緩衝材を説明するための斜視図である。
【図7】下キャップ部材に取り付けられた緩衝材を説明するための縦断面図である。
【図8】化粧体が横方向に沿って配置された建具を屋外側から見た外観図である。
【図9】横方向に沿って配置された化粧体に取り付けられた緩衝材を説明するための縦断面図である。
【符号の説明】
【0060】
10 建具、12 玄関ドア、14 枠体、15 下枠、
20 建具用パネル、20a 屋外側表面、
33 緩衝材、33a 取付片、33c 表面、
34 取付部材、34a 取付部、34k 表面、
50 化粧部材、52 化粧体、53 パネル体、53a 空隙、
54 化粧体、54b 係合部、54c 表面、60 取付部材、
62 緩衝材、62a 取付片、64 下キャップ部材、64a 取付部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口を形成する枠体に支持され前記開口を閉塞可能な建具用パネルと、
前記建具用パネルの、見込み方向における一方側の表面に設けられ当該表面の領域より狭い領域を覆う表面部材と、
前記建具用パネルの前記表面における前記表面部材に覆われていない領域に配置され前記表面部材と共に前記建具用パネルの前記表面を覆う弾性部材と、
を備えたことを特徴とする建具用パネル部材。
【請求項2】
請求項1に記載の建具用パネル部材であって、
前記弾性部材は、前記建具用パネルに前記表面部材が設けられたパネル体に、
前記弾性部材を取り付けるための取付部材を介して取り付けられていることを特徴とする建具用パネル部材。
【請求項3】
請求項1に記載の建具用パネル部材であって、
前記表面部材の端部を覆うキャップ部材を有し、
前記弾性部材は、前記建具用パネルに前記表面部材が設けられたパネル体に、前記キャップ部材を介して取り付けられていることを特徴とする建具用パネル部材。
【請求項4】
請求項3に記載の建具用パネル部材であって、
前記パネル体は、前記表面部材の端部側であって見込み方向における前記建具用パネルより前記一方側に空隙を有し、
前記キャップ部材は前記空隙を利用して取り付けられていることを特徴とする建具用パネル部材。
【請求項5】
請求項1に記載の建具用パネル部材であって、
前記表面部材は、前記弾性部材が取り付けられる弾性部材取付部を有することを特徴とする建具用パネル部材。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の建具用パネル部材であって、
前記表面部材の前記一方側の表面に沿う方向において、前記弾性部材と隣接する部材の前記一方側の表面は、前記弾性部材の前記一方側の表面と平坦な面を形成すべく配置されるか、又は、前記弾性部材の前記一方側の表面より他方側に配置されることを特徴とする建具用パネル部材。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の建具用パネル部材であって、
前記弾性部材は、前記建具用パネルの下端側に設けられていることを特徴とする建具用パネル部材。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の建具用パネル部材と、
前記建具用パネル部材を支持する枠体と、
を有することを特徴とする建具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−287294(P2009−287294A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−141490(P2008−141490)
【出願日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【出願人】(390005267)YKK AP株式会社 (776)
【Fターム(参考)】