説明

建材ボード及びその製造方法

【課題】
内部空間の温度上昇が抑制された建築物を得ることができる建材ボード及びその製造方法を提供する。
【解決手段】
金属顔料を含有し熱放射率が0.5未満である裏面塗膜層を有することを特徴とする建材ボード。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建材ボード及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、屋外建築物の内部空間の温度上昇を防ぐことを目的として、遮熱性を有する建材ボードが検討されている。遮熱性を有する建材ボードは、夏場に直射日光にさらされた場合の建築物内部の温度上昇を抑制することができるものである。すなわち、夏場に建築物の内部温度を快適に保つためには、空調設備の運転が必要とされている。遮熱性を有する建材ボードによって、エネルギー消費量の低減によるコスト低減及びエネルギーの使用量低減によるCO排出量削減という利点が得られる。このため、より優れた遮熱性能を有する建材ボードが求められてきた。
【0003】
従来、おもて面、すなわち、太陽光の当たる側に遮熱効果を有する層を形成する方法が一般的に用いられてきた。しかしながら、このような方法は、商品の意匠(外観)が重要となる製品への適用が困難であり、用いられる塗料の自由度も低いものであった。
【0004】
特許文献1には、塗装鋼板の内面に赤外線反射機能を有する薄板を設置する方法が開示されている。特許文献1には、このような方法によって自動車ボディー等のような塗装鋼板によって形成された構造体の内部温度の上昇を抑制することが記載されているものの、建材ボード等の遮熱性能に関する検討は一切行われていない。
【0005】
特許文献2には、自動車ボディーの内側に薄板、又は、塗膜で形成された赤外線反射機能を有する層を設ける方法が開示されている。しかし、特許文献2も特許文献1と同様、建材ボード等の遮熱性能に関する検討は一切行われていない。
【0006】
特許文献3には、塗装板の赤外線照射を受けない側に赤外線反射機能を有する金属顔料含有塗膜を形成する方法が開示されている。しかし、特許文献3も特許文献1と同様、建材ボード等の遮熱性能に関する検討は一切行われていない。
【0007】
【特許文献1】特開2001−165386号公報
【特許文献2】特開2001−158306号公報
【特許文献3】特開2001−157871号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記に鑑み、内部空間の温度上昇が抑制された建築物を得ることができる建材ボード及びその製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、金属顔料を含有し熱放射率が0.5未満である裏面塗膜層を有することを特徴とする建材ボードである。
上記裏面塗膜は、金属顔料の含有量が塗膜固形分に対して5〜50質量%であることが好ましい。
上記金属顔料は、アルミニウム及び/又はステンレスであることが好ましい。
【0010】
上記建材ボードは、更に、着色を呈するおもて面塗膜を有するものであってもよい。
上記おもて面塗膜は、L値が75以上であることが好ましい。
上記おもて面塗膜は、780〜2100nmの波長域における日射反射率が70%以上である白色系顔料、780〜2100nmの波長域における日射反射率が30%以上である青色系顔料、780〜2100nmの波長域における日射反射率が40%以上である赤色系顔料、780〜2100nmの波長域における日射反射率が20%以上である緑色系顔料、780〜2100nmの波長域における日射反射率が40%以上である黄色系顔料、及び、780〜2100nmの波長域における日射反射率が30%以上である黒色系顔料からなる群から選択される少なくとも一種の原色顔料を含有する遮熱塗料組成物によって形成された着色塗膜層を少なくとも一層有するものであることが好ましい。
上記おもて面塗膜は、下塗り塗膜層、中塗り塗膜層及びクリヤー上塗り塗膜層からなり、中塗り塗膜層が着色を呈するものであってもよい。
【0011】
本発明は、建材ボード用素材の裏面に裏面塗料を塗装する工程からなることを特徴とする上述した建材ボードの製造方法でもある。
以下、本発明を詳細に説明する。
【0012】
本発明は、金属顔料を含有し熱放射率が0.5未満である裏面塗膜層を有することを特徴とする建材ボードである。建材ボードにおいては、一般に無機系材料が使用され、一定の厚みと多孔質構造を有するものが多い。このような基材においては、多孔質構造中に熱が蓄積されやすいものである。本発明は、このような蓄積された熱の建築物内部への放射を低減させることによって、室内の温度上昇を抑制するものである。このため、裏面、すなわち建材ボードの建築物内部の側に金属顔料を含有し熱放射率が0.5未満である塗膜層を形成することによって上記目的を達成したものである。
【0013】
これに対して、自動車ボディーの遮熱を目的として、ボディー内部に金属顔料を含有する塗膜層を形成する方法は、金属製の薄板を透過するエネルギー線を反射させることによって透過する熱量を低減させるものであるから、効果を生じる作用が異なるものであり、本発明とは本質的に相違するものである。また、金属製の薄板は、多孔質構造中に蓄熱させることができるものでもないから、本発明ほどの高い遮熱効果を得ることはできない。すなわち、本発明は、従来の熱遮蔽加工においてみられるような金属顔料の熱反射を利用したものではなく、熱放射の抑制という性質を利用したものである。
【0014】
本発明の建材ボードは、建材ボードの裏面に熱放射率が0.5未満である塗膜を有することを特徴とするものである。ここで、建材ボードの裏面とは建築物とした時に内部空間となる側であり、おもて面とは日光にさらされる側のことである。
【0015】
本発明は、建築物の内部側に塗膜を形成することによって内部空間の温度上昇を抑制するものである。上記裏面塗膜層は、内部側に形成されたものであるため、外観の意匠性を損ねることがない。また、塗料組成物を直接建材ボードに塗装するものであるため、剥がれに対する耐久性、塗装面の凹凸に対する追随性に優れた塗膜を形成することができる。
【0016】
上記建材ボードの基材としては特に限定されず、例えば、無機材料、有機材料、及び、これらの複合体からなるものを挙げることができる。具体的には、例えば、スレート、セメント、ケイ酸カルシウム板、木片セメント板等の窯業系基材、セラミックス、ガラス、プラスチック、木、石材、コンクリート、繊維、布帛、紙、これらのうちの複数の基材からなるもの、これらの積層体、弾性防水膜、シーリング等を塗装した塗装体等を挙げることができる。なかでも、耐久性、施工性のため、ケイ酸カルシウム板、木片セメント板等の窯業系基材からなる建材ボードであることが好ましい。
【0017】
上記基材は、密度0.9〜1.5g/cm、厚み12〜24mmであることが好ましい。このような範囲のものであると、基材中に熱が蓄熱されやすく、特に本発明の目的を好適に達成することができる。
【0018】
上記裏面塗膜層は、熱放射率が0.5未満となるものである。上記熱放射率とは、JIS A 1423に準拠して測定した値であり、値が小さいほど熱を蓄積し、放射しない傾向にあることを示す。
【0019】
上述したように、本発明は熱放射率が0.5未満の塗膜を内部空間側に形成することにより、建材ボードに蓄積された熱の建造物の内部空間への放射を低減するものである。本発明は、このような作用によって、内部空間の温度上昇を抑制することができるものである。上記熱放射率は0.45未満であることがより好ましい。
【0020】
上記裏面塗膜層の熱放射率は、塗布量、塗膜における金属顔料の含有量、使用する金属顔料の種類、金属顔料の粒径、塗膜中の分散状態等の条件により調整することができる。
【0021】
上記裏面塗膜層は、上記目的を達成するために、金属顔料を含有するものである。上記金属顔料の含有量は、塗膜固形分に対して5〜50質量%の範囲内であることが好ましい。上記含有量が5質量%未満であると、ライン塗装では、無理が生じるほどの膜厚を増大させる必要が生じるおそれがある。上記含有量が50質量%を超えると、塗料化が困難、塗膜中に金属顔料を保持できないおそれがある。上記含有量は、7〜40質量%の範囲内であることがより好ましい。
【0022】
本発明において用いられる金属顔料としては、特に限定されず、例えば、アルミニウム、ステンレス、銀、ニッケル、金、銅等を挙げることができる。なかでも、塗料化の容易性の点からアルミニウムが好ましい。
【0023】
上記アルミニウムとしては特に限定されず、例えば、アルミ粉、アルミ箔等を挙げることができる。上記アルミニウムとしては、平均粒子径が10〜40μmの範囲内となるものが好ましい。上記平均粒子径が下限未満であると、塗膜中の分散状態が悪くなり、機能発現が小さくなる。上記平均粒子径が上限を超えると、アルミニウムの含有量を高める必要があるため好ましくない。
【0024】
更に、上記アルミニウムとしては、白さが70〜90の範囲内となるアルミニウム粒子を用いることが好ましい。ここで、白さとは、HUNTERのL値(9−d法)に基づき測定した値であり、値が大きいほどアルミ粒子の表面平滑性が向上し、アルミが効率良く機能し、熱放射の効率向上の効果が期待できる。本発明においては、白さが高いほど熱放射率が低下するため好ましいが、上記上限を超えると入手が困難となる。
【0025】
上記アルミニウムとしては特に限定されず、旭化成株式会社製アルミペースト、東洋アルミニウム(株)アルペースト(商品名)等の市販の製品を使用することもできる。
【0026】
上記ステンレスとしては特に限定されず、例えば、フレーク状のもの、球状のもの等を挙げることができる。上記フレーク状のステンレスとしては特に限定されず、例えば、東洋アルミニウム(株)ステンレスペースト(商品名)等の市販の製品を使用することができる。
【0027】
上記球状のステンレスとしては特に限定されず、例えば、ステンレススチールの溶融をアトマイズ化した平均粒径が4〜10μmの実質的に球状の粒子等を挙げることができる。上記球状のステンレスとしては、例えば、PF−5〜20(株式会社パシフィックソーワ製)等の市販の製品を使用することもできる。
【0028】
上記裏面塗膜層は、上記金属顔料の他に、樹脂を含有するものであることが好ましい。上記樹脂としては、通常、塗料のバインダー樹脂として用いられるものを使用することができ、例えば、アクリル樹脂、アルキド樹脂、ポリエステル樹脂、シリコーン変性ポリエステル樹脂、シリコーン変性アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、シリケート樹脂、フッ素樹脂、塩素系樹脂、ポリオレフィン樹脂等を挙げることができ、更に、必要に応じて、メラミン樹脂、ブロックイソシアネート等を含むものであってもよく、建材ボードの材質の種類や用途によって、適宜使いわけることができる。
【0029】
上記裏面塗膜層は、上記裏面塗膜層を構成するために必要とされる各成分を含有する裏面用塗料組成物を塗装することによって形成することができる。
【0030】
上記裏面用塗料組成物における金属顔料の含有量としては特に限定されず、塗料固形分に対して5〜50質量%の範囲内であることが好ましい。上記含有量が5質量%未満であると、ライン塗装では、無理が生じるほどの膜厚を増大させる必要が生じるおそれがある。上記含有量が50質量%を超えると、塗料化が困難、塗膜中に金属顔料を保持できないおそれがある。
【0031】
上記裏面用塗料組成物は、添加剤、溶剤等を含んでいてもよい。上記添加剤としては特に限定されず、例えば、消泡剤、レベリング剤、たれ防止剤、表面調整剤、粘性調整剤、分散剤、ワックス等の慣用の添加剤等を挙げることができる。上記溶剤としては一般に塗料用として用いられるものであれば特に限定されず、例えば、トルエン、キシレン、ソルベッソ100、ソルベッソ150等の芳香族炭化水素類;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン等のケトン類、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、i−ブタノール、t−ブタノール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ジメチルアミノエタノール、ジエチルアミノエタノール、アセトール、アリルアルコール、プロパルギルアルコール等のアルコール系化合物、及び、水等を挙げることができる。これらは、溶解性、蒸発速度、安全性等を考慮して用いる用途に応じて適宜選択することができ、単独で、又は、2種以上を併用して用いることができる。
【0032】
上記裏面用塗料組成物は、例えば、以下のようにして製造することができる。ロールミル、ペイントシェーカー、ポットミル、ディスパー、サンドグラインドミル等の一般に顔料分散に使用されている機械を用いて、顔料分散用樹脂及び/又は分散剤及び/又は溶剤に上記金属顔料を混合して顔料分散ペーストを調製し、これに上記バインダー樹脂、メラミン樹脂及び/又はブロックイソシアネート、添加剤、溶剤等を加える。その他の方法としては、例えば、上記金属顔料と顔料分散用樹脂及び/又は分散剤及び/又は溶剤とがペースト状になった市販の製品を直接添加してもよい。
また、上記裏面用塗料組成物は、溶剤系塗料、水溶性塗料、水分散性塗料、粉体塗料等の任意の形態のものを使用することができる。
【0033】
本発明の建材ボードは、更に、着色を呈するおもて面塗膜を有するものであってもよい。
【0034】
上記おもて塗膜が呈する着色の色調は特に限定されるものではないが、建材ボードに良好な遮熱性を付与することができるため、淡色系であることが好ましい。例えば、上塗り塗装を行った後の複層塗膜で測定したL、a、b表色系で表される色空間で、L値が75以上となる淡色系のものが好ましい。上記L値は、色彩色差計、ミノルタCM−3600、ミノルタCR−300等により測定することができる。上記中塗り塗料組成物のL値としては、77以上がより好ましく、80以上が更に好ましい。
【0035】
上記おもて面塗膜がL値が75未満となる濃色系のものである場合、上記おもて面塗膜は、780〜2100nmの波長域における日射反射率が70%以上である白色系顔料、780〜2100nmの波長域における日射反射率が30%以上である青色系顔料、780〜2100nmの波長域における日射反射率が40%以上である赤色系顔料、780〜2100nmの波長域における日射反射率が20%以上である緑色系顔料、780〜2100nmの波長域における日射反射率が40%以上である黄色系顔料、及び、780〜2100nmの波長域における日射反射率が30%以上である黒色系顔料からなる群から選択される少なくとも一種の原色顔料を含有する遮熱塗料組成物によって形成された着色塗膜層を有するものであることが好ましい。おもて面塗膜の着色がL値が75未満となる濃色系の場合にも、このような太陽熱反射特性を有する原色顔料を含有する遮熱塗料組成物を用いることにより、良好な遮熱性を保持することができる。上記原色顔料は、塗膜中に3〜70質量%の割合で含まれることが好ましい。
【0036】
なお、「日射反射率」の用語の意義は、JIS A 5759に記載されており、そこでは350〜2100mmの波長域であるが、本明細書における「日射反射率」は、太陽光の780〜2100nmの波長域における波長ごとの強度によりウエイト付けした反射率を意味するものとする。
【0037】
なお、ここで各顔料の日射反射率は、顔料、樹脂及び溶剤の混合物を分散機で分散して得られた分散体(原色)を白色の下地に膜厚100μmとなるように塗装し、分光光度計(日立製作所社製、U−3500スペクトロフォトメーター)を用いて測定した780〜2100nmの波長域における反射率をもとに、JIS A 5759に記載の方法に従って算出した値である。ここで上記分散体における顔料の濃度としては、下地の色を完全に隠蔽できる量であれば特に限定されない。
【0038】
上記白色系顔料の日射反射率は、70%以上であれば効果を奏することができるが、好ましくは75%以上であり、より好ましくは80%以上であり、更に好ましくは85%以上である。上記青色系顔料の日射反射率は、30%以上であれば効果を奏することができるが、好ましくは35%以上である。上記赤色系顔料の日射反射率は、40%以上であれば効果を奏することができるが、好ましくは45%以上であり、より好ましくは50%以上であり、更に好ましくは55%以上である。
【0039】
上記緑色系顔料の日射反射率は、20%以上であれば効果を奏することができるが、好ましくは25%以上であり、より好ましくは30%以上であり、更に好ましくは35%以上である。上記黄色系顔料の日射反射率は、40%以上であれば効果を奏することができるが、好ましくは45%以上であり、より好ましくは50%以上であり、更に好ましくは55%以上である。上記黒色系顔料の日射反射率は、30%以上であれば効果を奏することができるが、好ましくは35%以上であり、より好ましくは40%以上であり、更に好ましくは45%以上である。
【0040】
上記原色顔料としては、下記の顔料等を挙げることができる。白色系顔料としては、酸化チタンであるチタンCR97(石原産業(株)製)等を挙げることができる。黒色系顔料としては、焼成顔料であるダイピロキサイドカラー ブラック 9590、ダイピロキサイドカラー ブラウン 9290、ダイピロキサイド カラー ブラウン 9211(いずれも大日精化工業社製)、Black 411(The Shepherd Color Company社製)、有機顔料であるクロモファインブラックAー1103(大日精化工業社製)、Fastogen Super Black MX(大日本インキ化学工業社製)、パリオゲン ブラック S0084、パリオトール ブラック L0080(いずれもBASF社製)、ホスターパームブラウン HFR−01(クラリアントジャパン社製)等を挙げることができ、更に、Symuler Fast Yellow 4192(大日本インキ化学工業社製)と、Fastogen Red 7100Y(大日本インキ化学工業社製)と、リオノールブルー FG7980(東洋インキ製造社製)とを混合したもの等を挙げることができる。
【0041】
青色系顔料としては、ダイピロキサイドカラー ブルー 9453(大日精化工業社製)、FastogenBlue 9453、Fastogen Blue RS、Fastogen Blue 5380、Fastogen Super Blue 6070S(いずれも大日本インキ化学工業社製)、シアニンブルー5240KB、シアニンブルー5050(いずれも大日精化工業社製)、HELIOGEN BLUE L7460(BASF社製)等を挙げることができる。
【0042】
赤色系顔料としては、トダカラー 120ED(戸田工業社製)、Fastogen Super Magenta RH、Fastogen Red 7100Y、Fastogen Super Red 500RG、Fastogen Super Red ATY、Fastogen Super Blue Violet RVS、ルビクロンレッド 400RG(いずれも大日本インキ化学工業社製)等を挙げることができる。
【0043】
黄色系顔料としては、Symuler Fast Yellow 4192(大日本インキ化学工業社製)、シコパールイエロー L−1110、シコパール イエロー L−1100(いずれもBASF社製)等を挙げることができる。緑色系顔料としては、ダイピロキサイド カラー グリーン 9310(大日精化工業社製)、Fastogen Green 2YK、Fastogen Green MY(いずれも大日本インキ化学工業社製)、リオノールグリーン6YKP−N(東洋インキ製造社製)等を挙げることができる。
【0044】
上記おもて面塗膜は、下塗り塗膜層、中塗り塗膜層、及び、クリヤー上塗り塗膜層からなる複層塗膜で、中塗り塗膜層が着色を呈するものであってもよい。これらは、それぞれ下塗り塗料組成物、中塗り塗料組成物、クリヤー上塗り塗料組成物を塗装することによって形成することができる。なお、この場合のおもて面塗膜のL値は、複層塗膜を形成した後に測定した値を指す。
【0045】
上記下塗り塗料組成物としては特に限定されず、例えば、以下で述べる裏面塗料のシーラーとして挙げるものを使用することができる。上記下塗り塗料組成物の塗装方法としては特に限定されず、例えば、ロールコーター、スプレー等を用いた公知の方法を利用することができる。これらの塗装方法は、組み合わせて行うこともできる。上記下塗り塗料組成物の塗布量は、30cm×30cm当たり下限5g、上限15gの範囲内であることが好ましい。上記下塗り塗膜は、60〜100℃×1〜20分の条件で加熱して焼き付けたものであることが好ましい。
【0046】
上記中塗り塗料組成物としては特に限定されず、使用する建材ボードの基材、用途等に応じて適宜選択することができるが、例えば、アクリル、シリコーンアクリル、エポキシ、ポリイソシアネート、ウレタン樹脂系、シリコーン樹脂系、フッ素樹脂系、塩化ビニル樹脂系、フタル酸樹脂系等の塗膜形成性樹脂、上述した着色顔料等からなる公知の建材ボード用中塗り塗料組成物を挙げることができる。また、溶剤系塗料、水溶性塗料、水分散性塗料、粉体塗料等の任意の形態のものを使用することができる。中塗り塗料組成物は、上述したような性質を有する着色を得ることができるものを使用することが好ましい。
【0047】
上記中塗り塗料組成物は、必要に応じて、添加剤等を含むものであってもよい。上記添加剤としては特に限定されず、例えば、シリカ、アルミナ等の艶消し剤、消泡剤、レベリング剤、たれ防止剤、表面調整剤、粘性調整剤、分散剤、紫外線吸収剤、ワックス等の慣用の添加剤等を挙げることができる。
【0048】
上記中塗り塗料組成物の塗装方法としては特に限定されず、例えば、ロールコーター、スプレー等を用いた公知の方法を利用することができる。これらの塗装方法は、組み合わせて行うこともできる。上記中塗り塗料組成物の塗布量は、30cm×30cm当たり下限5g、上限20gの範囲内であることが好ましい。上記中塗り塗膜層は、60〜100℃×1分〜10分の条件で加熱して焼き付けたものであることが好ましい。
【0049】
上記クリヤー上塗り塗料組成物としては特に限定されず、例えば、アクリル樹脂、アルキド樹脂、ポリエステル樹脂、シリコーン変性ポリエステル樹脂、シリコーン変性アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、シリケート樹脂、フッ素樹脂、塩素系樹脂、ポリオレフィン樹脂等の樹脂成分を含有するクリヤー塗料組成物を挙げることができる。具体的には、オーデタイトEX用水性クリヤー(日本ペイント社製)等の市販の製品を使用することもできる。
【0050】
上記クリヤー上塗り塗料組成物の塗装方法としては特に限定されないが、スプレーを用いて好適に塗装することができる。上記クリヤー上塗り塗料組成物の塗布量は、30cm×30cm当たり下限5g、上限15gの範囲内であることが好ましい。上記クリヤー上塗り塗膜は、60〜120℃×2分〜20分の条件で加熱して焼き付けることによって得られたものであることが好ましい。
【0051】
上記おもて面塗膜は、780〜2100nmの波長域における表面の日射反射率が40%以上となることが好ましく、60%以上となることがより好ましく、70%以上となることが更に好ましい。建材ボードのおもて面にも、高い日射反射率を有する塗膜を形成することにより、建材ボードの遮熱性をより高めることができる。なお、上記複層塗膜の日射反射率は、複層塗膜表面を分光光度計(日立製作所社製、U−3500スペクトロフォトメーター)を用いて測定し、780〜2100nmの波長域における反射率をもとに、JIS A 5759に記載の方法に従って算出した値である。
【0052】
本発明は、建材ボードの裏面に上記裏面用塗料組成物を塗布する工程からなることを特徴とする建材ボードの製造方法でもある。上記方法における塗装方法としては特に限定されず、例えば、ロールコーター、スプレー等を用いた公知の方法を利用することができる。上記裏面用塗料組成物の塗布量は、上述の範囲内であることが好ましい。
【0053】
上記裏面用塗料組成物の塗布量としては特に限定されないが、30cm×30cm当たり下限5g、上限20gの範囲内であることが好ましい。塗布量が下限未満であると均一な塗膜を形成することが難しく、また、塗料組成物中の金属顔料濃度を高める必要があるため好ましくない。上記上限を超えると、作業性、コストの面から好ましくない。上記下限は、7gがより好ましく、上記上限は、15gがより好ましい。
【0054】
上記建材ボードの製造方法は、更に、上記工程の後に塗膜の熱硬化又は乾燥工程を含むことが好ましい。硬化又は乾燥条件は、使用する裏面用塗料組成物の組成によっても相違し、当業者によって適宜設定することができるが、一般的には30〜100℃、好ましくは40〜80℃で、加熱時間は1〜20分であることが好ましい。
【0055】
熱硬化又は乾燥した塗膜の乾燥膜厚としては特に限定されないが、10〜40μmの範囲内であることが好ましい。上記乾燥膜厚が10μm未満であると、充分な遮熱性が得られず好ましくない。上記乾燥膜厚が40μmを超えると、それ以上の効果が得られず不経済である。
【0056】
上記建材ボードの製造方法において、被塗装物である建材ボードは劣化抑制の観点からシーラーを塗装したものであることが好ましい。上記シーラーとしては特に限定されず、例えば、アクリル系、アクリルエマルション系、エポキシ系、ウレタン、ポリイソシアネート、ケイ酸ソーダ等の公知のシーラーを使用することができ、水性シーラー、溶剤系シーラーのいずれであってもよい。
【0057】
上記シーラーの塗装方法としては特に限定されず、上述の方法を挙げることができるが、ロールコーターを用いることが好ましい。塗布量としては特に限定されないが、30cm×30cm当たり下限1g、上限10gの範囲内であることが好ましい。上記シーラーは、塗装後、上記塗装工程の前に30〜80℃×1〜5分の条件で加熱することが好ましい。
【0058】
本発明の建材ボードの製造方法は、更に、建材ボードのおもて面に塗料組成物を塗装する工程を有することが好ましい。建材ボードのおもて面にも塗装を行うことにより、遮熱性をより高めることができる。上記塗料組成物としては、通常建材ボードのおもて面に施されるものであれば特に限定されないが、特に、下塗り塗料組成物、中塗り塗料組成物、及び、クリヤー上塗り塗料組成物を塗装することが好ましい。すなわち、上記建材ボードの製造方法は、更に、建材ボードのおもて面に下塗り塗料組成物を塗装する工程、中塗り塗料組成物を塗装する工程、及び、クリヤー上塗り塗料組成物を塗装する工程を含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0059】
本発明の建材ボードは、日光にさらされた屋外建造物の内部温度上昇を効果的に抑制することができる。これによって、空調設備の利用によるエネルギー消費を低減できるため、環境の面からも優れた建材ボードである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0060】
以下、本発明について実施例を掲げて更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。また、実施例中、「部」は特に断りのない限り「質量部」を意味し、「%」は特に断りのない限り「質量%」を意味する。
【0061】
製造例
裏面用塗料組成物の調製
アクリルエマルジョン(AC−3001、ローム・アンド・ハース社製)65部、ブチルセロソルブ15部、表1記載の金属顔料、BYK−190(商品名、ビックケミー社製)2部、イオン交換水9部、SNシックナー617(サンノプコ社製)0.3部をディスパー攪拌しながら混合した後、ディスパーを用いて10分間攪拌混合して塗料名シルバーA〜F及びステンレスを調製した。上記金属顔料は、いずれもアルミニウム又はステンレスと溶剤とのペーストである。
【0062】
【表1】

【0063】
実施例1〜12、比較例1〜4
試験板(ニチハ製モエンエクセラード:フラット板、厚み16mm、150mm×150mm)の裏面にシーラーA(日本ペイント社製オーデタイトEX用水性バックシーラー)を塗布量6.0g/30cm×30cmで塗布し、45℃×3分の条件で加熱した。次に、製造例で得られたシルバーA〜F及びステンレスを表3に示した塗布量で塗装し、60℃×10分の条件で加熱して塗膜を形成した。
【0064】
次に、試験板のおもて面に下塗り塗料、中塗り塗料、クリヤー塗料順次塗布して複層塗膜を形成し、塗装板を得た。なお、塗装は3コート3ベークで行い、下塗り塗料は、塗布量11gをスプレーによって塗布し、80℃×4分の条件で焼付けさせた。中塗り塗料は、塗布量10gをスプレーによって塗布し、80℃×4分の条件で焼付けさせた。クリヤー上塗り塗料は、8gをスプレーによって塗布し、100℃×8分の条件で焼付けさせた。
【0065】
使用した塗料組成物及び塗布量は、表2に示した通りである。表2における中塗り塗料のY、x、y値は、ミノルタCR−300を用いて測定し、L、a、b値は、色彩色差計ミノルタCR−300を使用して測定した値である。また、塗装板のおもて面に形成された複層塗膜の日射反射率は、分光光度計(日立製作所社製、U−3500スペクトロフォトメーター)を用いて測定し、780〜2100nmの波長域における反射率をもとに、JIS A 5759に記載の方法に従って算出した。
【0066】
得られた塗装板を図1に示した実験装置に設置し、遮熱性について評価した。光源としては、250Wの赤外線電球を使用し、発泡スチロール製、厚み28mm、内容積6500cm、上部開口部140mm×140mmのクーラーボックスを使用した。雰囲気温度をT0、塗装板表面温度をT1、塗装板裏面温度をT2、ボックス内温度をT3として1時間加温後の各温度を測定し、初期との温度差をそれぞれΔT1〜ΔT3として表3に示した。
【0067】
【表2】

【0068】
【表3】

【0069】
表3より、本発明により得られた塗装板は、ボックス内温度の上昇を好適に抑制することが示された。おもて面塗料として、L値の高い中塗り塗料を用いた場合、また、L値の低い中塗り塗料を用いる場合には遮熱塗料を用いた場合に良好な結果が得られることも示された。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明の建材ボードは、遮熱性に優れるものであるため、家屋、店舗、事務所、工場、倉庫等の屋外建造物に広く利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】実施例で用いた塗膜の遮熱性を評価するための装置を示す概略図である
【符号の説明】
【0072】
1 光源(250W)
2 塗装板
3 クーラーボックス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属顔料を含有し熱放射率が0.5未満である裏面塗膜層を有することを特徴とする建材ボード。
【請求項2】
裏面塗膜は、金属顔料の含有量が塗膜固形分に対して5〜50質量%である請求項1記載の建材ボード。
【請求項3】
金属顔料は、アルミニウム及び/又はステンレスである請求項1又は2記載の建材ボード。
【請求項4】
更に、着色を呈するおもて面塗膜を有する請求項1、2又は3記載の建材ボード。
【請求項5】
おもて面塗膜は、L値が75以上である請求項4記載の建材ボードの熱遮蔽方法。
【請求項6】
おもて面塗膜は、780〜2100nmの波長域における日射反射率が70%以上である白色系顔料、780〜2100nmの波長域における日射反射率が30%以上である青色系顔料、780〜2100nmの波長域における日射反射率が40%以上である赤色系顔料、780〜2100nmの波長域における日射反射率が20%以上である緑色系顔料、780〜2100nmの波長域における日射反射率が40%以上である黄色系顔料、及び、780〜2100nmの波長域における日射反射率が30%以上である黒色系顔料からなる群から選択される少なくとも一種の原色顔料を含有する遮熱塗料組成物によって形成された着色塗膜である請求項4記載の建材ボード。
【請求項7】
おもて面塗膜は、下塗り塗膜層、中塗り塗膜層及びクリヤー上塗り塗膜層からなり、中塗り塗膜層が着色を呈する請求項4,5又は6記載の建材ボード。
【請求項8】
建材ボード用素材の裏面に裏面用塗料組成物を塗装する工程からなることを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6又は7記載の建材ボードの製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2007−16558(P2007−16558A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−201999(P2005−201999)
【出願日】平成17年7月11日(2005.7.11)
【出願人】(000230054)日本ペイント株式会社 (626)
【出願人】(000110860)ニチハ株式会社 (182)
【Fターム(参考)】