説明

建物の出隅部材およびそれを用いた出隅部の施工構造。

【課題】意匠性が高く、施工が容易で、上下に接合するときに連結用の部材を使用する必要が無く、接合部の継ぎ目も目立たず、低価格な金属材料から製造できる出隅部材とその施工構造を提供する。
【解決手段】出隅部材は化粧部材と1対の固定部材からなり、固定部材のガイド片は化粧部材の係合片と係合端部と折り返し片とに囲まれる係合空間に挿入されていて、建物の垂直方向に対して化粧部材が前記1対の固定部材よりも下方に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住宅等の建物の外壁を乾式の外壁板で施工するに際して、その出隅部分を外観の優れた状態に且つ容易に施工することのできる出隅部材とその施工構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建物の外壁の施工に際して、金属サイディング材や窯業サイディング材等のように、予め所定の形状に製作された乾式の外壁板であるサイディング材を使用すると、容易に施工できるので、近年サイディング材が広く利用されている。そして、建物の角部である出隅部の納まりに関して、同質出隅以外にも様々な出隅部材と施工構造が提案されている。
【0003】
サイディング材を使用して建築物の外壁を施工するときの出隅部分には、図10に示すように2枚のサイディング材305がそれぞれの裏面の端縁を突き合せた状態のいわゆる角継ぎとするための、L字状の表面部材311の裏面側にそれぞれ前記サイディング材305の側端面を差し込まれる凹条部312が形成されている出隅材310が使用されている。
出隅材310は、凹条部312の屋内側に折曲されている固定片313が表面部材311の端縁より側方に突出していて、この固定片313に釘を打って建築物の柱306や胴縁材に固定されるので、施工された外壁表面に釘頭が表われることがなく外観が優れた状態に外壁を施工することができるという長所がある。その反面出隅材310の出隅端部に位置する表面部材311の裏面,すなわち両凹条部312のサイディング材305の側端面が当接する部位とこの部位と対向する部位の表面部材311との間には空間が形成されるのであり、また出隅材310は一般に金属板を折曲して形成されているので、出隅端部に外力が作用するとこの空間が形成される部分に位置する表面部材311が簡単に変形するという欠点があった。更に前記した如く出隅材310の出隅端部に位置する表面部材311の裏面に空間が形成されるので、断熱性が悪いだけでなく防火性に関しても劣っているという欠点があった。(特許文献1)
【0004】
出隅材310の欠点である出隅端部の空間が変形しやすいという欠点を解消する出隅材として、図11に示すごとく一方の化粧部42aと他方の化粧部42bが直角を成すL字状に形成された表面部材402と、該表面部材402の一方の化粧部42aの裏面に他方の化粧部42bから所定の間隔を隔てて垂直に突設されておりその端縁が他方の化粧部42bの端縁より側方に突出して位置する第一固定部403と、該第一固定部403に他方の化粧部42bと反対側に一方の化粧部42aから所定の間隔を隔てて垂直に突設されておりその端縁が一方の化粧部42aの端縁より側方に突出して位置する第二固定部404とが形成されることによって、図10の出隅材310の欠点を解消し、サイディング材を使用して建築物の外壁を施工したときにこの外壁の出隅部分を出隅材やサイディング材を固定するための釘の頭が外面に露出することがなく且つ一人でも簡単にサイディング材を外観の優れた状態に固定することのできるサイディング材用出隅材401が提供されている。
このサイディング用出隅材401は、溶融亜鉛めっき塗装鋼板や溶融アルミニウム合金めっき塗装鋼板等の1枚の金属板をベンディング加工したり、アルミ押出成型加工により簡単に製造することができる。(特許文献1)
【0005】
図12に示すように、特許文献2で開示される既設の建築物の外壁505に外装パネル506を確実に設置するための出隅役物504は、外装パネル506の内側に配置されるベース部54bと、外装パネル506の外側に配置されるカバー部54aとを備えており、前記ベース54b部とカバー部54aとは一体に構成されており、既設の建築物のコーナー部近傍の外壁505に、鉛直方向に延びる胴縁502を配置し、前記ベース部54bが、接合部材503と共に前記胴縁502を介して既設の建築物の外壁505に固定されるようにしたので、カバー部54aがベース部54bに対してずれることがなく、また、既設建築物の外壁505に対して出隅役物504を確実に固定することができる。しかしながらこの出隅役物504は、意匠性は高いものの形状が複雑であり金属板をベンディング加工して製造することは困難であった。(特許文献2)
【0006】
図13に示すように、特許文献3では意匠性を高めることができる外壁出隅部の目地構造が開示されている。
特許文献3の外壁出隅部の目地構造は、所定角度をなして一対の固定片601の各側縁同士を結合し、この結合部から一対のガイド片602を突設させて接合部材603が形成され、隙間を空けて前記所定角度と等しい角度をなして設置された複数の外壁材604の後面側に前記接合部材603の各固定片601が配置されていると共に、この接合部材603の一対のガイド片602が前記隙間を通って各外壁材604の前面から突出していることを特徴とするものであり、外壁材604から突出しているガイド片602によって目地部分に外観上のアクセントをつけることができ、意匠性を高めることができるものである。
しかしながら、特許文献3の外壁出隅部の目地構造は、意匠性は高いものの金属板をベンディング加工して製造することは困難であり、加えて外壁材604の側端とガイド片602の間にはシーリング材605が必要とされていた。さらに、建物が2階建てのように接合部材の長さが垂直方向において足りなくなる場合には、固定片601及びガイド片602がそれぞれ連続するようにして複数の接合部材603を上下に隣り合うように配置するのであるが、そのままでは接合部材間の継ぎ目が目立ってしまうおそれがあるので、アルミニュウム等の金属で形成された連結具609を用いることによって連結部材間の継ぎ目を連結具609で覆い隠し、この継ぎ目を目立たないようにするとともに、また上下に隣り合う接合部材603の位置がずれるのを防止する必要があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8−246656号公報
【特許文献2】特開2007−120047号公報
【特許文献3】特開2009−161956号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、アルミ押出成形材料のような高価な材料を使用せずに、折り曲げ加工等の製造方法で製造可能な材料を使用することができ、出隅部材を出隅部に施工する際には外壁板と出隅部材との間にはシーリング材も必要としない意匠性の高い出隅部材に関するものであって、さらに出隅部材を上下に接合した場合においても、連結用の部材などを使用する必要がなく、施工が容易であり、接合部の継ぎ目も目立つことがない出隅部材とその施工構造を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための本発明による出隅役物は、
左右に外壁板を所定の角度で隣接配置することにより出隅部を形成する建物の出隅部材であって、
前記出隅部材は化粧部材と1対の固定部材からなり、
前記化粧部材は化粧面側に180度から前記所定の角度を引いた角度で折り曲げられた化粧片と、前記化粧片の端縁で化粧面の裏面側に90度の角度で折り曲げられた係合片と、前記係合片の端縁を化粧面の裏面側に180度の角度で折り返された折り返し片と、前記係合片と前記折り返し片の間に形成された係合端部とからなり、
前記固定部材は外壁板の裏面側に配置されるベース片と、前記ベース片の端縁から外壁板の表面側に90度の角度で折り曲げられた立ち上がり片と、前記立ち上がり片の端縁から前記ベース片側に90度の角度で折り曲げられたガイド片とからなり、
前記固定部材のガイド片は前記化粧部材の係合片と係合端部と折り返し片とに囲まれる係合空間に挿入されていて、
建物の垂直方向に対して前記化粧部材が前記1対の固定部材よりも下方に配置されていることを特徴としている。
【0010】
また、上記課題を解決するための本発明による出隅部の施工構造は、
左右に外壁板を所定の角度で隣接配置することにより出隅部を形成する建物の出隅部材であって、
前記出隅部材は化粧部材と1対の固定部材からなり、
前記化粧部材は化粧面側に180度から前記所定の角度を引いた角度で折り曲げられた化粧片と、前記化粧片の端縁で化粧面の裏面側に90度の角度で折り曲げられた係合片と、前記係合片の端縁を化粧面の裏面側に180度の角度で折り返された折り返し片と、前記係合片と前記折り返し片の間に形成された係合端部とからなり、
前記固定部材は外壁板の裏面側に配置されるベース片と、前記ベース片の端縁から外壁板の表面側に90度の角度で折り曲げられた立ち上がり片と、前記立ち上がり片の端縁から前記ベース片側に90度の角度で折り曲げられたガイド片とからなり、
前記固定部材のガイド片は前記化粧部材の係合片と係合端部と折り返し片とに囲まれる係合空間に挿入されていて、
建物の垂直方向に対して前記化粧部材が前記1対の固定部材よりも下方に配置されていて、前記出隅部材が建物の垂直方向に上下に接続して配置される出隅部の施工構造において、
下側の出隅部材のガイド片が、上側の出隅部材の係合片と係合端部と折り返し片とに囲まれる係合空間に挿入されて、前記下側の出隅部材と前記上側の出隅部材が接続されることを特徴としている。
【0011】
本発明による出隅部材およびそれを用いた出隅部施工構造においては、出隅部材における化粧部材と固定部材とは異なる材料から製造することができる。したがって、表面の化粧面として意匠性が要求される化粧部材には、重厚感のある肉厚の材料やステンレスやチタン、アルミなどの表面性の良い材料を使用し、意匠性を高める表面処理として、ヘアーライン仕上げやサンドブラスト仕上げあるいはクリアー塗装などを施して意匠性を高める。
一方、施工後には化粧面として表面に現れない固定部材は、意匠性を高める化粧仕上げや高価な材料を使用する必要はなく、所望の耐久性が備わっていれば安価な材料を使用することができる。例えば、溶融亜鉛メッキ鋼板や溶融アルミニウム合金メッキ鋼板等の比較的安価な金属材料を使用して、ベンディング加工やロール成形加工など押出成形加工よりも安価な加工方法を使用して製造することができる。さらに、固定部材に使用される鋼板は出隅部材の重量を支えることが可能であれば薄い金属板で良く、固定部材は胴縁等の受け材に釘やビス等の固定具によって容易に固定することが可能である。
したがって、出隅部材を全て同じ材料から製造する従来の出隅部材と比較して、本発明の出隅部材は、低コストで製造することが可能となる。
上記で開示した化粧部材および固定部材の材料は、好適な例であって、本発明の主旨に合致する材料であればどの様な材料でも使用することができる。
【0012】
本発明による出隅部材およびそれを用いた出隅部施工構造において、固定部材のガイド片は化粧部材の係合片と係合端部と折り返し片が囲む係合空間に挿入されることによって、化粧部材と固定部材は接合されている。
固定部材のガイド片の厚さと化粧部材の係合片と折り返し片との間隔が同じ寸法である、あるいは固定部材のガイド片が化粧部材の係合片と折り返し片によって圧着されることによって、固定部材と化粧部材が異なった材料であっても接着剤や固定具等の接合材料などを使用することなく固定部材と化粧部材とは容易に接合される。
【0013】
本発明による出隅部材およびそれを用いた出隅部施工構造においては、出隅部の角度は一般的には略90度の角度が一般的であるが、他の角度であっても出隅部材を製造する際に折り曲げ角度を変更することで容易に角度を変更することが可能である。
一方、従来からの押出成形によって製造される出隅部材は金型を変更する必要があるので、角度の変更を実施することは容易では無い。
【発明の効果】
【0014】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、意匠性が高く低コストの材料を使用してかつコストを押さえて容易に製造することのできる出隅部材の発明であり、さらに上記出隅部材を建物の垂直方向に上下に接続して施工する場合において、連結用の部材を使用することもなく、施工が容易でありながら上下接合部の接合目地が目立たない施工構造を提供することを目的とする。
本発明によれば、
1)出隅部材を下地材に固定するベース片は外壁板の裏面に配置されるので、出隅部材を固定する釘等の固定具の頭は外壁板によって表面を覆われる。したがって、固定具の頭は施工後の表面から見ることはできず意匠性にすぐれた外観を提供する。
2)出隅部材が外壁板の端部を覆うので、外壁板の端部が露出されることが無く意匠性にすぐれた外観を提供する。
3)出隅部材を構成する材料として、アルミ押出成形品ではなく低コストの金属板を使用することが可能となる。
4)出隅部材を構成する材料として、複数の材料を組み合わせて製造することができる。したがって、出隅部材の表面を構成する化粧部材には意匠性の高い材料や塗装仕上げが施された材料、あるいはさらに高級感を醸しだして変形しにくい肉厚の材料などを使用し、出隅部材の表面を構成しない固定部材には耐腐食性が高く、剛性等の物理的性能が要求される性能を保有していれば、意匠性は要求されない材料を使用することができるので、使用する材料のコストを下げる事が可能となる。
5)出隅部材を建物の垂直方向に上下に接続して施工した上下接合部においては、下側の出隅部材のガイド片が、上側の出隅部材の係合片と係合端部と折り返し片が囲む係合空間に挿入されているので、連結具のような追加の材料を使用しなくても出隅部材のみで上下に接合することができる。そして上側の出隅部材の化粧部材の裏面を下側の出隅部材の固定部材が支承するので、段差が発生することがなく上下接合部の接合目地は糸目地となって高い意匠性の外観を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明による出隅部材を建物の垂直方向に上下に接続する工程を示す図であって、上側の出隅部材と下側の出隅部材が接続される前の斜視図。
【図2】本発明による出隅部材を建物の垂直方向に上下に接続する工程を示す図であって、上側の出隅部材と下側の出隅部材が接続された後の斜視図。
【図3】本発明による出隅部材の固定部材の断面図であって、図1のA−A断面を示す図。
【図4】本発明による出隅部材の化粧部材の断面図であって、図1のB−B断面を示す図。
【図5】本発明による出隅部材の断面図。
【図6】第1の実施例における、図1のC−C断面と図2のD−D断面での図5の一点鎖線で囲まれた丸枠内を拡大した図。
【図7】第2の実施例における、図2のD−D断面での図5の一点鎖線で囲まれた丸枠内を拡大した図。
【図8】第2の実施例における、図1のC−C断面での図5の一点鎖線で囲まれた丸枠内を拡大した図。
【図9】本発明の出隅部材を施工した状態を示す平面図。
【図10】従来例として、引用文献1の出隅部材を使用して施工された外壁の出隅部分を示す平断面説明図。
【図11】従来例として、引用文献1の他の出隅部材を使用して施工された外壁の出隅部分を示す平断面説明図。
【図12】従来例として、引用文献2の出隅部材を使用して施工された外壁の出隅部分を示す平断面説明図。
【図13】従来例として、引用文献3の出隅部材を使用して施工された外壁の出隅部分を示す平断面説明図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら本発明の好ましい実施の形態を説明する。
図1は、本発明による出隅部材を建物の垂直方向に上下に接続する工程を示す図であって、上側の出隅部材と下側の出隅部材が接続される前の斜視図。図2は、本発明による出隅部材を建物の垂直方向に上下に接続する工程を示す図であって、上側の出隅部材と下側の出隅部材が接続された後の斜視図。図3は、本発明による出隅部材の固定部材の断面図であって、図1のA−A断面を示す図。図4は、本発明による出隅部材の化粧部材の断面図であって、図1のB−B断面を示す図。図5は、本発明による出隅部材の断面図。図6は、第1の実施例における、図1のC−C断面と図2のD−D断面での図5の一点鎖線で囲まれた丸枠内を拡大した図。図7は、第2の実施例における、図2のD−D断面での図5の一点鎖線で囲まれた丸枠内を拡大した図。図8は、第2の実施例における、図1のC−C断面での図5の一点鎖線で囲まれた丸枠内を拡大した図。図9は、本発明の出隅部材を施工した状態を示す平面図である。
【0017】
本発明において、出隅部材40は化粧部材21と固定部材11A、11Bの3つの部材によって構成されていて、化粧部材21と固定部材11A、11Bはそれぞれ所定の寸法に裁断した1枚の金属板を折り曲げ加工あるいはプレス加工することによって作られている。なお、出隅部材40は建物の屋外に使用されるので、耐腐食性と耐候性の高い材料からできていることが要求される。
化粧部材21と固定部材11A、11Bはいずれも長尺な形状をしており、建物の垂直方向に対して化粧部材21と固定部材11A、11Bの長尺方向は平行となっている。
化粧部材21と固定部材11A、11Bの長さは、1000mmから4000mmの範囲内であれば、建物の様々なモジュールに対応できて好適である。
化粧部材21は、出隅部材40の表面を形成するので、特に意匠性の高い材料であることが要求される。したがって、化粧部材の材料としては耐腐食性と耐候性が高くさらに意匠性の高い材料が好ましく、例えばステンレス、チタン、マグネシューム合金等が好適な材料として使用することができる。意匠性を更に高めるためには、ヘアーライン仕上げ、鏡面仕上げ、サンドブラスト仕上げ、クリアー塗装等の仕上げ処理がなされるとさらに好適である。さらに、肉厚の材料を使用するとさらに高級感のある高い意匠性が演出される。
化粧部材21の材料は、意匠性を高める加工が施されていれば上記で述べたようにステンレス、チタン、マグネシューム合金等以外でも、溶融亜鉛メッキ鋼板や溶融アルミニウム合金メッキ鋼板等の他の材料を使用することができる。
固定部材11A,11Bは、出隅部材40としての化粧面を形成しておらず人の目に触れることはないので意匠性の高い材料である必要は無い。したがって固定部材の材料としては、耐腐食性と耐候性が高く、剛性が高く、施工性、加工性が良好な材料が好ましく、例えば溶融亜鉛メッキ鋼板や溶融アルミニウム合金メッキ鋼板などの薄板鋼板が好適である。
化粧部材の厚さは0.5mmから2.0mmが意匠性と加工性と耐久性等の性能を発揮でき好適であり、固定部材の厚さは0.2mmから1.0mmが加工性と耐久性と施工性等の性能を発揮でき好適である。なお、化粧部材の厚さは要求される意匠性のグレードによって任意に選択されるが、固定部材は化粧部材の厚さよりも薄い厚さのものが選択される。
【0018】
出隅部材40が施工される出隅部の角度、すなわち出隅部材40の両端に配置される左右の外壁板32がなす角度は、建物の出隅形状に応じた角度であればどの様な角度であっても良いが、本実施例における出隅部の角度は一般的な建物の出隅部の角度である略90度を採用して実施の形態を説明する。
図4は化粧部材21を説明する断面図であって、化粧部材21は中央部において、180度から出隅部の角度を引いた角度で折り曲げられる。本実施例では出隅部の角度を略90度とするので、化粧部材21は中央部において化粧面側25の方向に略90度で折り曲げられることによって、施工後に化粧面となる化粧片23A、23Bが形成される、そして化粧片23A、23Bは端部において化粧面の裏面側26の方向に90度の角度で折り曲げられて係合片22A、22Bを形成し、さらに係合片22A、22Bは化粧面の裏面側26に180度の角度で折り曲げられて折り返し片222A、222Bが形成される、この時係合片22A、22Bと折り返し片222A、222Bが平行な状態を形成するために、係合片22A、22Bと折り返し片222A、222Bの間には係合端部221A、221Bが形成される。したがって係合片22A、22Bと折り返し片222A、222Bと係合端部221A、221Bによって、略コの字状の係合空間223A、223Bが形成される。
【0019】
図3は固定部材11A,11Bを説明する断面図であって、固定部材11Aと固定部材11Bは線対称な形状である。以下に固定部材11Aについてその実施の形態を説明する。
固定部材11Aは外壁板32の裏面側に配置されるベース片14Aと、ベース片14Aの端縁から外壁板32の表面側に90度の角度で折り曲げられた立ち上がり片13Aと、立ち上がり片13Aの端縁からベース片側に90度の角度で折り曲げられたガイド片12Aから構成されている。
好ましい例として、ベース片14Aの立ち上がり片13Aと反対側の端縁を外壁板側に180度折り曲げて折り曲げ片15Aが形成されている。折り曲げ片15Aを形成することによって、金属板からなる固定部材11Aの形状を保形するとともに、金属板の端部を露出させないことによって、固定部材11Aを取り扱う際に作業者が怪我をする危険性を防止する。
【0020】
図5は出隅部材40を説明する断面図であって、出隅部材40は固定部材11A,11Bと化粧部材21の3つの部材によって構成されている。出隅部材40において、固定部材11A、11Bのガイド片12A,12Bは化粧部材21の係合空間223A,223Bに挿入されている。
出隅部材40は長尺な部材であり、出隅部材40を構成する化粧部材21と固定部材11A,11Bの長さ方向の構成について、図1と図2を使用して説明する。
図1で図示されるように、化粧部材21は固定部材11A,11Bよりも下方にずれて配置されていて、出隅部材の下端の化粧部材21と固定部材11A,11Bとの下端のずれ量Mは、出隅部材の上端の化粧部材21と固定部材11A,11Bとの上端のずれ量Nと同じか若干長い寸法が好ましい。
ずれ量Mとずれ量Nが同じ寸法であれば、化粧部材21と固定部材11A,11Bの長さは同じであり、ずれ量Mがずれ量Nよりも大きければ、化粧部材21の長さは固定部材11A,11Bよりも長くなる。
出隅部材を建物の垂直方向に上下に接続する場合において、上記で述べたようにずれ量Mがずれ量Nと同じか若干長い寸法であれば、上側の出隅部材41のベース片14A,14Bと下側の出隅部材42のベース片14A,14Bは互いに干渉することが無いので、上側の出隅部材41の化粧部材21と下側の出隅部材42の化粧部材21との間に形成される接合目地43には隙間が空くことが無く好ましい。
一方、ずれ量Mがずれ量Nよりも短い寸法であると、上側の出隅部材41のベース片14A,14Bと下側の出隅部材42のベース片14A,14Bが干渉するので、上側の出隅部材41の化粧部材21と下側の出隅部材42の化粧部材21との間に形成される接合目地43にはずれ量N−ずれ量Mの隙間が発生する。
【0021】
出隅部材40を構成する化粧部材21と固定部材11Aとの接合状態について、固定部材11Aのガイド片12Aが化粧部材21の係合空間223Aに挿入されている部分を拡大した図6,図7、図8(一点鎖線で囲まれた部分)と図1、図2を使用して説明する。
化粧部材21と固定部材11Bとの接合状態は、化粧部材21と固定部材11Aの接合状態と同様な方法で接合されている。
【0022】
第1の実施例の化粧部材21と固定部材11Aとの接合状態は、図6で図示されるように、係合片22Aは折り返し片222Aよりも長く、係合片22Aと折り返し片222Aと係合端部221Aが形成する係合空間223Aにおいて係合片22Aと折返し片222Aは略平行となっている。そして、係合片22Aと折り返し片222Aとの間隔TA3はガイド片12Aの厚さTA2と同じ寸法となっている。
したがって、固定部材のガイド片12Aは化粧部材の係合片22Aと折り返し片222Aと係合端部221Aが形成する係合空間223Aに隙間無く挿入されるので、化粧部材21と固定部材11Aとを接合するための接着加工や圧着加工無しで、化粧部材21と固定部材11Aとは接合されている。
【0023】
第2の実施例の化粧部材21と固定部材11Aとの接合状態は、図7で図示されるように、係合片22Aと折り返し片222Aとの間隔TA1がガイド片12Aの厚さTA2よりも広くなっている。しかしながらこの状態では化粧部材と固定部材は固定されていないので、化粧部材21と固定部材11Aが重なり合う部分(図1のC−C断面)の係合空間224Aでは、図8で図示されるように折り返し片222Aの先端がガイド片12Aを圧着して化粧部材21と固定部材11Aは接合される。
一方、出隅部材の上端部45と出隅部材の下端部46のように化粧部材21と固定部材11Aが重なり合わない部分の化粧部材21の係合空間223Aは、図7で図示したように係合片22Aと折り返し片222Aの間隔TA1はガイド片12Aの厚さTA2よりも広くなっている。
【0024】
第2の実施例では出隅部材40を上下に接続する部分(図2のD−D断面)において、上側の出隅部材41の下端部46の化粧部材21の係合空間223Aにおける係合片22Aと折り返し片222Aとの間隔は、図7のように下側の出隅部材42のガイド片12Aの厚さよりも広いので、下側の出隅部材42の上端部45のガイド片13Aを上側の出隅部材41の係合空間223Aに容易に挿入することができる。
【0025】
したがって、図1のC−C断面は、化粧部材21と固定部材11A,11Bが重なり合う部分の断面であり、上記C−C断面における接合空間の状態は第1の実施例では図6の状態であり、第2の実施例では図8の状態となる。
一方、図2のD−D断面は、上側の出隅部材41の化粧部材21と下側の出隅部材42の固定部材11A,11Bとが接続する部分の断面であり、上記D−D断面における接合空間の状態は第1の実施例では図6の状態であり、第2の実施例では図7の状態となる。
【0026】
通常、出隅部において外壁板32は複数用いて建物の垂直方向に上下に設置していくので、出隅部材40の長さが上下方向において足りなくなる場合がある。
例えば、建物が2階建ての場合においては、出隅部材を上下に繋いで施工する必要が生じる。この場合、従来であれば上下の出隅部材を接続するために何らかの連結具が必要となっていた。
しかしながら、本発明においては、上側の出隅部材41の化粧部材21の係合空間223A,223Bに下側の出隅部材42の固定部材11A,11Bのガイド片12A,12Bを挿入することにより、上側の出隅部材41と下側の出隅部材42とは連結具等を使用することなく接続することができる。
この場合、上側の出隅部材41の化粧部材21の下端部と固定部材11A,11Bの下端部との距離Mが、下側の出隅部材42の化粧部材21の上端部と固定部材11A,11Bの上端部との距離Nと同じ長さか若干短い長さとなっていると、上側の出隅部材41のベース片14A,14Bと下側の出隅部材42のベース片14A,14Bは互いに干渉することが無いので、上側の出隅部材41の化粧部材21の下端部と下側の出隅部材42の化粧部材21の上端部との間に形成される接合目地43に隙間が空くことが無い。その結果、接合目地43は例えば糸目地のような美観に優れた目地となる。
【0027】
同じ長さの化粧部材と固定部材からなる出隅部材のように、出隅部材の上端部45に固定部材11A,11Bが上方に突出してしまう出隅部材の場合、出隅部材40を施工する際に、出隅部材の上端部45の固定部材11A,11Bを切断することによって意匠性に優れた出隅部を維持することができる。
出隅部材の上端部45において固定部材11A,11Bが突出していない専用の出隅部材を用意すれば、出隅部材の上端部45の固定部材11A,11Bを切断する必要が無いが、この場合、切断加工の現場手間はなくなるものの、一階建て用専用出隅部材あるいは二階建て用の上下接合用出隅部材のように複数種類の出隅部材を用意することになる。
【0028】
本発明の出隅部材を使用した出隅部施工構造について説明する。図9に示すように出隅部材40は、固定部材のベース片14A、14Bが釘やビスなどの固定具34によって、胴縁などの受け材31に固定される。そして外壁板32は外壁板の端部36が建物の外側から見えないように、係合片22A、22Bの端縁よりも化粧片23A,23Bの裏側に配置された折り曲げ片13A,13B側に入り込んだ状態で、従来から知られている留め付け金具35を用いて胴縁31に留め付けられている。したがって、出隅部材40の固定具34は外壁板によって覆われるので、固定具34は表面に現れることがなく意匠性に優れた状態で出隅部材40が施工される。さらに、外壁板の端部36も出隅部材40の係合片22A,22Bによって覆われるので、シーリング処理や端部処理金具を使用することなく外観が優れた状態で出隅部に外壁板が施工される。
【符号の説明】
【0029】
11A、11B 固定部材
12A、12B ガイド片
13A、13B 立ち上がり片
14A、14B ベース片
15A、15B 折り曲げ片
21 化粧部材
22A、22B 係合片
23A、23B 化粧片
221A、221B 係合端部
222A、222B 折り返し片
223A、223B 係合空間
224A、224B 圧着後の係合空間
25 化粧面側
26 化粧面の裏面側
27 外壁板の表面側
28 外壁板の裏面側
31 受け材
32 外壁板
33 柱
34 固定具
35 留付金具
36 外壁板の端部
40 出隅部材
41 上側の出隅部材
42 下側の出隅部材
43 接合目地
44 上下接合部
45 出隅部材の上端部
46 出隅部材の下端部
L 建物の垂直方向
M 上側の出隅部材の下端部における、ガイド片と重なっていない化粧部材の長さ
N 下側の出隅部材の上端部における、化粧部材と重なっていない固定部材の長さ
TA1 係合片と折り返し片との間隔
TA2 ガイド片の厚さ
TA3 係合片と折り返し片との間隔
TA4 圧着後の係合片と折り返し片の先端との間隔
305 サイディング材
306 柱
310 出隅材
311 表面部材
312 凹条部
313 固定片
316 釘
42a 一方の化粧部
42b 他方の化粧部
401 サイディング材用出隅材
402 表面部材
403 第1固定部
404 第2固定部
405 サイディング材
406 柱
408 シーリング材
416 釘
54a カバー部
54b ベース部
501 出隅役物構成体
502 胴縁
503 接合部材
504 出隅役物
505 外壁
506 外装パネル
507 ナット
508 ねじ
601 固定片
602 ガイド片
603 接合部材
604 外壁材
605 シーリング材
606 連結片
608 係合部
609 連結具
610 係合突起


【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右に外壁板を所定の角度で隣接配置することにより出隅部を形成する建物の出隅部材であって、
前記出隅部材は化粧部材と1対の固定部材からなり、
前記化粧部材は化粧面側に180度から前記所定の角度を引いた角度で折り曲げられた化粧片と、前記化粧片の端縁で化粧面の裏面側に90度の角度で折り曲げられた係合片と、前記係合片の端縁を化粧面の裏面側に180度の角度で折り返された折り返し片と、前記係合片と前記折り返し片の間に形成された係合端部とからなり、
前記固定部材は外壁板の裏面側に配置されるベース片と、前記ベース片の端縁から外壁板の表面側に90度の角度で折り曲げられた立ち上がり片と、前記立ち上がり片の端縁から前記ベース片側に90度の角度で折り曲げられたガイド片とからなり、
前記固定部材のガイド片は前記化粧部材の係合片と係合端部と折り返し片とに囲まれる係合空間に挿入されていて、
建物の垂直方向に対して前記化粧部材が前記1対の固定部材よりも下方に配置されていることを特徴とする出隅部材。
【請求項2】
化粧部材と固定部材とは異なる金属板からなることを特徴とする、請求項1に記載の出隅部材。
【請求項3】
化粧部材の係合片と係合端部と折り返し片に囲まれる係合空間に挿入されている固定部材のガイド片が、前記係合片と前記折り返し片によって圧着されていることを特徴とする請求項1から2に記載の出隅部材。
【請求項4】
所定の角度は略90度であることを特徴とする、請求項1から3に記載の出隅部材。
【請求項5】
請求項1から4に記載の出隅部材が建物の垂直方向に上下に接続して配置される出隅部の施工構造において、
下側の出隅部材のガイド片が上側の出隅部材の係合片と係合端部と折り返し片とに囲まれる係合空間に挿入されて、前記下側の出隅部材と前記上側の出隅部材が接続されることを特徴とする出隅部の施工構造。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−82651(P2012−82651A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−231398(P2010−231398)
【出願日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【出願人】(000110860)ニチハ株式会社 (182)
【Fターム(参考)】