説明

建物の壁際構造

【課題】建物の壁際に設けられる各種構成部材に振動や変形が生じた場合にも、それら構成部材の破損等を抑制する。
【解決手段】建物において、外壁92には第2居室22に対応して窓枠94が設けられており、その窓枠94と略同じ高さで、窓枠94と内壁93との間隙を塞ぐ窓台95が設けられている。窓台95は内壁93が固定される溝型金具96に対してビス97によって固定され、窓台95の外壁92側は外壁92に固定されたL型金具98の上面に載置されているに過ぎない。そして、窓枠94と窓台95との間には数cm程度の十分なクリアランスCが形成されるように相対位置が決められている。このように構成することで、クリアランスCの範囲内で窓枠94と窓台95とが互いに相対移動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地震や強風等により建物に揺れが生じた場合においてその揺れに伴う不都合を好適に軽減できる建物の壁際構造に関する。
【背景技術】
【0002】
地震や強風等により建物に外力が加わると、その外力により建物が水平方向に変形し、その変形により柱等が斜めに傾く。その際、柱に取り付けられた窓枠や面材(外装面材、内装面材)に変形や破損が生じるおそれがあった。その対策として、例えば特許文献1では、建物ユニットの柱間に配置される間柱を上下の梁材に取り付ける建物構造において、間柱の上下端部の少なくといずれかを、梁材にその長手方向にスライド可能に取り付ける構成としている。また、同特許文献1では、間柱に外装面材や内装面材があらかじめ固定される構成が提案されている。
【0003】
上記特許文献1の構成によれば、建物が変形しても間柱の傾斜が防止されるため、同間柱が鉛直方向を向く状態が保たれ、ひいては窓枠や面材(外装面材、内装面材)の変形や破損が抑制できるとしている。
【特許文献1】特開2005−307497号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、実際に地震や強風等により建物に外力が加わる場合には、柱材だけが斜めに傾くのではなく、壁材を含め種々の構成部材が傾くこととなる。そのため、間柱の傾斜を防止することは困難であり、十分な効果が期待できないと考えられる。例えば、台風などによる強風時には強風により外壁自体が傾き、間柱が鉛直方向を向く状態が保てなくなる。したがって、窓枠や面材等が十分に保護できないと考えられる。
【0005】
また、地震や強風等により建物に外力が加わる場合には、建物の壁際に設けられる各種構成部材において各々異なる態様で振動が生じることがあると考えられる。さらに、経年変化や気候等による環境変化によって、建物の各種構成部材において各々異なる態様で変形等が生じるとも考えられる(例えば、各部材の膨張率の違いによる)。こうして種々の要因で建物の各種構成部材に個別に振動や変形が生じる場合、それら個別の振動や変形により、やはり窓枠や面材(外装面材、内装面材)等に変形や破損が生じるおそれが考えられる。
【0006】
本発明は、建物の壁際に設けられる各種構成部材に振動や変形が生じた場合にも、それら構成部材の破損等を抑制することができる建物の壁際構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、上記課題を解決するのに有効な手段等につき、必要に応じて作用、効果等を示しつつ説明する。なお以下では、理解を容易にするため、発明の実施形態において対応する構成例を括弧書き等で適宜示すが、この括弧書き等で示した具体的構成に限定されるものではない。
【0008】
本発明の壁際構造は、外壁(外壁92)に一体に設けられる外壁側部材(窓枠94等)と、前記外壁側部材に対向して設けられる屋内側部材(窓台95等)とを備える建物に適用される。そして特に、前記外壁側部材と前記屋内側部材とが互いに相対移動可能となるように設けられている。
【0009】
上記構成によれば、外壁側部材と屋内側部材とが互いに相対移動可能であるため、地震や強風等により建物に外力が加わる場合において、それら部材ごとに各々異なる態様での振動が許容される。また、壁際の構成部材については特に経年変化や気候等の環境変化(屋内外の温度差等を含む)による変形も考えられるが、その変形についても各部材(外壁側部材、屋内側部材)ごとに許容される。以上により、外壁側部材と屋内側部材とに個別に振動や変形が生じる場合にも、それら各部材に破損等が生じるといった不都合が解消される。例えば、内装材の破損、亀裂、クロスのしわ等の発生が抑制できる。
【0010】
前記外壁側部材と前記屋内側部材との間において水平方向に所定のクリアランス(クリアランスC)が設けられ、そのクリアランスの範囲内で前記外壁側部材と前記屋内側部材とが互いに相対移動可能とされているとよい。これにより、地震や強風等により建物に外力が加わりそれに伴い建物が変形する場合にも、上記クリアランスにより外壁側部材と屋内側部材とが相互に干渉することなく振動し、壁際構造物が好適に保護される。
【0011】
前記クリアランスは、前記建物において層間変形角があらかじめ定めた最大値となる場合にも前記外壁側部材と前記屋内側部材との相対移動を許容する寸法にて設けられているとよい。これにより、あらかじめ想定した範囲内で建物が最大限変形する場合にも壁際構造物が好適に保護される。
【0012】
前記外壁側部材として窓枠(窓枠94)が取り付けられるとともに、その窓枠と略同じ高さで前記屋内側部材として窓台(窓台95)が設けられた建物においては、前記窓枠と前記窓台とが互いに相対移動可能とされているとよい。本構成では、建物の変形等に際し、窓枠と窓台とが各々相対移動することにより、窓枠や窓台が好適に保護できる。なお、窓枠は窓建具(サッシ)においてガラス戸を囲む枠体のことであり、窓台は窓枠よりも屋内側に延びる水平材のことである。
【0013】
前記外壁側部材として、前記外壁に一体化して設けられた内壁面材(内壁93)を有する建物においては、前記内壁面材とその下方に設置される床材(床91)とが互いに相対移動可能とされているとよい。本構成では、建物の変形等に際し、内壁面材と床材とが各々相対移動することにより、内壁面材や床材が好適に保護できる。
【0014】
住宅等の建物においては、通常の床高とは異なる高さでスキップフロアが設けられるものがある。かかる建物において、前記床材は、前記スキップフロアを構成するスキップ用床材であるとよい。この場合、スキップフロアは、通常の一階部分、二階部分等とは異なり中間階(半階部分)を構成するものであり、建物における挙動が相違する可能性があるが、上記のとおり内壁面材と床材(スキップ用床材)とが各々相対移動することにより、内壁面材や床材が好適に保護できる。
【0015】
互いに相対移動可能となる前記外壁側部材と前記屋内側部材との近接部分に、それら両者の相対移動を許容しつつ両者間の隙間部分を隠すための遮蔽部材(カバー99等)が設けられているとよい。これにより、外壁側部材や屋内側部材の保護を図りつつ、隙間部分を隠すことで見栄えの改善を図ることができる。
【0016】
ここで、上記の壁際構造は、外壁側部材と屋内側部材とがそれぞれ挙動が異なる構造物として設けられている建物において特に有効となる。具体的には、建物の全体構造を構成する主架構と、その主架構から独立して設けられるスキップ架構とを備える建物において、前記外壁側部材が前記主架構に設けられ、前記屋内側部材が前記スキップ架構に設けられているとよい。
【0017】
つまり、建物の構造上、外壁側部材と屋内側部材とがそれぞれ挙動が異なるものであると、地震や強風等により建物に外力が加わる場合において、上記の各部材(特に、主架構及びスキップ架構)で揺れ方に相違が生じる。したがって、それら各部材が互いに変形力を及ぼしあい、それにより破損等が生じるおそれがある。また、つなぎ部分において内装材の破損、亀裂、クロスのしわなどが生じやすくなる。この点、本発明の壁際構造によれば、各部材の破損等が抑制できる。
【0018】
なお、主架構とスキップ架構とがそれぞれ独立して設けられることにより、スキップ架構の追加によって主架構の構造計算が複雑になることがなく、量産化やレイアウトの多様化に適したものとなる。
【0019】
前記スキップ架構は、前記主架構とは別の位置で基礎に連結することにより自立して設けられているとよい。また、前記スキップ架構は、少なくとも複数のスキップ柱と各スキップ柱に繋がれたスキップ床梁とを備え、基礎の側面に支持金具を設け、当該支持金具に各スキップ柱を固定して設けられているとよい。
【0020】
上記構成によれば、スキップ架構を独立して設定するには、基礎に対してスキップ架構を連結して自立させるようにすれば済む。この場合、スキップ架構用の基礎を別途追加することも考えられるが、主架構に利用する基礎の側面に支持金具を設けてその支持金具にスキップ架構のスキップ柱を固定するようにすれば、スキップ架構専用の基礎が不要となってコスト面で有利となる。
【0021】
なお本明細書において、スキップ架構とは、スキップフロアを構成する構造をいうものであり、具体的な骨組構造として例えばスキップフロアを構築するスキップ床梁を有し、場合によっては当該スキップ床梁と連結されたスキップ柱も含むものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
(建物の全体構成についての説明)
以下に、発明を具体化した一実施形態である建物について、図1を参照しつつ説明する。なお、図1は本実施形態の建物全体を示す概略縦断面図である。
【0023】
図1に示すように、本実施形態の建物10は、基礎11上に形成された下階としての一階部分12と、その一階部分12の上方に連続して形成された上階としての二階部分13と、その二階部分13の上方に形成された屋根部分14とを備えている。なお、ここでは詳細な説明は省略するが、一階部分12と二階部分13との境界部15は、周知のように一階天井面と二階床面とを含むそれらの間にある各部材によって構成されている。
【0024】
建物10の一階部分12には、例えば、第1居室21、第2居室22、第1収納室23、第2収納室24及びガレージ25がそれぞれ形成されている。建物10の二階部分13には、例えば第3居室26及び第4居室27が形成されている。
【0025】
本実施形態では、一階部分12に、複数のスキップ部31,32が構築されている。具体的には、第1居室21は通常の一階の居室として構築され、第2居室22が第1居室21よりも若干フロア位置を高く形成した第1スキップ部31として構築され、第2居室22の下方すなわち第1スキップ部31の下方に第1収納室23が形成されている。また、第1居室21を挟んだ第2居室22の反対側には、ガレージ25が屋内車庫として構築され、その上方に第2スキップ部32が構築されて境界部15との間に第2収納室24が形成されている。
【0026】
各収納室23,24は、その空間内の高さが1m〜1.4mの範囲に設定されている。1.4mを上限としたのは、建築基準法上、居室とみなされないための上限値だからであり、1mを下限としたのは、収納室23,24の収納空間に家人が容易に立ち入ることができるとともに収納力を高めるためである。但し、1mは家人が立ち入ることを前提としなければ必要条件とはならない。
【0027】
そして、一階部分12に第1スキップ部31及び第2スキップ部32が設けられて上記のとおり十分な高さを有する第1収納室23及び第2収納室24が設けられているにもかかわらず、一階部分12と二階部分13との間の境界部15の高さ位置は一般的な二階建てと何ら変わらないようになっている。また、各収納室23,24の高さを確保するために、第1収納室23及びガレージ25の床面が基礎11の天端17よりも下方となるように配置されている。なお、逆に第1収納室23に対応した箇所以外の基礎11の天端を高く設定することにより、第1収納室23の高さを確保するようにしてもよい。
【0028】
この結果、従来の二階建て(一階部分及び二階部分とは別に中間階部分を持たない建物)と同一高さにより、家人が入り込むことのできる十分な高さを有した中間階収納や床下収納を確保することができる。なお、第1居室21又はその高さ位置のフロアから第2居室22や各収納室23,24に家人が容易に立ち入ることができるようにするにはスキップ階段を設ければよい。
【0029】
また、このような大収納タイプの収納室23,24を居室等の上下位置に配置しているにもかかわらず建物全体の高さが高くなってしまうことがなく、従来の一般的な二階建てと外壁等の各種部材を共有化することができる。したがって、斜線規制による弊害がなく、コストダウンを図ることができる。
【0030】
なお、図2(a)に示されるように、一階部分12の居室41の上方にスキップ部43を設けて、スキップ部43と境界部15との間に収納室42を形成してもよい。この場合には、居室41の床面が基礎11の天端17よりも下方に設定されることで、居室41の高さ及び収納室42の高さを十分に確保することができる。また、図2(b)に示されるように、スキップ部43の上方に一階部分12と二階部分13の境界部15を設けずに吹抜け46として利用してもよい。これらの場合にあっても、図1の例と同様の効果が得られる。
【0031】
その他、図示しないが、二階部分13において、居室と収納室とを上下に配置することも可能である。すなわち、互いに隣接する上下階の境界部15の上面から上方に収納室を設けるとともに、その収納室の上面と屋根部分14との間に居室を設けるのが一例であり、この場合、当該居室の天井面を境界部15の上面に形成された別の居室の天井面よりも高く形成することが好ましい。また、別の例としては、互いに隣接する上下階の境界部15の上面から上方に居室を設けるとともに、その居室の上面と屋根部分14との間に収納室を設けることも可能であり、この場合、当該居室の天井面を境界部15の上面に形成された別の居室の天井面よりも低く形成することが好ましい。
【0032】
(架構モデルの説明)
上記の建物10等の構築するに際して、構造計算を容易なものとし、バリエーションに富みつつ量産化を可能とするのに好適な架構モデルについて、図3に基づいて説明する。
【0033】
なお、図3は収納スペースを設ける際の好適な架構モデルのバリエーションを示す説明図であり、(a)〜(d)の各上段に図示したものが架構モデル図、各下段に図示したものが構造システム図である。いずれも二階建ての建物の架構モデル51a〜51dを示し、基礎52a〜52d上に構築される主架構53a〜53dに対して、収納スペース構築のためのスキップ架構54a〜54dがどのように設定されるのが好ましいかを説明するものである。
【0034】
図3(a)に示した例は、一階部分12うち下部に収納スペースを配置した例である。この例では、主架構53aに対しその内部にスキップ架構54aを独立して設定している。具体的には、主架構53aとは別個に、基礎52aに対しスキップ架構54aを繋いでいる。この例によれば、主架構53aの構造計算上、スキップ架構54aを考慮に入れなくて済むため、従来の二階建ての建物と主架構53aを同一のものとして設計することができる利点がある。
【0035】
図3(b)〜(d)に示した例は、一階部分12うちの上部、すなわち一階部分12と二階部分13との境界部である上階床梁55b〜55cの下面側に収納スペースを配置した例である。
【0036】
図3(b)では、主架構53bの上階床梁55bに対しスキップ架構54bを繋ぎ、スキップ架構54bの下部と基礎52bとの間には主架構53bの耐震要素として機能する耐力壁56bを配置している。また、スキップ架構54bの一部が基礎52bと上階床梁55bとを繋ぐ下階柱57bにも連結されている。この例によれば、主架構53bの構造計算上、スキップ架構54bを主架構53bの耐力壁の一部とみなすことができるため、主架構53bの耐力壁を減らしてその分をスキップ架構54bに委ねることができるとともに、従来の二階建ての建物と主架構53bをほぼ同一のものとして設計することができる利点がある。
【0037】
図3(c)では、主架構53cの上階床梁55cに対しスキップ架構54cを繋ぎ、スキップ架構54cの側面の少なくとも一面を耐力壁によって構成することで、上階床梁55cとスキップ架構54cとが一体となった耐力壁が構成されている。この例によれば、主架構53cの構造計算上、スキップ架構54cを上階床梁55cの付属部分とみなすことができるため、従来の二階建ての建物と主架構53cを同一のものとして設計することができる利点がある。
【0038】
図3(d)では、主架構53dの基礎11dと上階床梁55dとの間の耐震要素として機能する耐力壁56dをスキップ架構54dの下部に配置している。この耐力壁56dはスキップ架構54dとともに基礎52dと上階床梁55dとを繋ぐ下階柱57dとして機能する。この例によれば、主架構53dの構造計算上、スキップ架構54dを主架構53dの耐力壁の一部とみなすことができるため、主架構53dの耐力壁を減らしてその分をスキップ架構54dに委ねることができるとともに、従来の二階建ての建物と主架構53dをほぼ同一のものとして設計することができる利点がある。
【0039】
(上記架構モデルを実現する具体的構造の説明)
次に、上記架構モデルを実現する具体的構造について、図4〜図7に基づき説明する。なお、図4は図1の建物10における骨組構造を示す正面図、図5,6は図4の部分拡大図、図7は図4のガレージ部分の基礎と各柱との関係を示す平面図である。
【0040】
図1において説明した建物10は、図4に示されるとおり基礎11上に鋼材が骨組として利用された骨組構造61を有し、この骨組構造61に外壁その他の各種建築材が設けられて構築されるものである。本実施形態の骨組構造61は、先に概略説明した主架構53とスキップ架構54とからなる。
【0041】
そこで、まず主架構53について説明すると、基礎11のうち、第1収納室23の両側に対応する基礎11a,11bは通常の建物において想定される他の基礎11c,11dよりも低くなるように設置されている。なお、逆に他の基礎11c,11dが第1収納室23の両側に対応する基礎11a,11bよりも高くなるように設置することも可能である。各基礎11a〜11d上には、それぞれ下階柱63a〜63dが立設されている。各下階柱63a〜63dの上端は水平方向に延びる上階床梁64と連結されている。その連結構造は、例えばコーナ金具がそれぞれにボルト止めされたり溶接されたりすることにより実現される。
【0042】
上階床梁64においてその上部に図示しない上階床材が設置されるとともにその下部に下階天井材が設置されることにより、図1における一階部分12と二階部分13との境界部15(図1参照)が構築される。上階床梁64には上階柱65a〜65dの下端が連結されている。さらに、これら各上階柱65a〜65dの上端には水平方向に延びる上階天井梁66が連結されている。なお、これらの連結構造も、下階柱63a〜63dの場合と同様、例えばコーナ金具がそれぞれにボルト止めされたり溶接されたりすることにより実現される。以上により主架構53が構築されている。
【0043】
次いで、スキップ架構54について説明する。本実施形態では、スキップ架構54として、第1収納室23を形成するためのスキップ架構54a(図3(a)参照)と、第2収納室24を形成するためのスキップ架構54b(図3(b)参照)とを備えている。
【0044】
両スキップ架構54a,54bのうち、まず第1収納室23を形成するためのスキップ架構54aについて、図5に基づいて説明する。
【0045】
基礎11a,11bには互いに向き合う側面に、それぞれ上下一対の支持金具71a,71bが設けられている。各支持金具71a,71bは、基礎11a,11bのコンクリート内部に設けられた図示しない鋼製フレームに固定されている。そして、鋼製フレームに各支持金具71a,71bが固定されている状態で基礎型枠にコンクリートが流し込まれることで、基礎11a,11bと一体化された高剛性の支持金具71a,71bが得られる。
【0046】
各支持金具71a,71bには、それぞれスキップ柱72a,72bが鉛直方向に延びるようにしてボルト止めや溶接等により固定されている。なお、図面では正面視のため一対のスキップ柱72a,72bのみが見えるようになっているが、実際には第1収納室23の平面視で少なくとも四隅となる位置にそれぞれスキップ柱72a,72bが設けられている。
【0047】
各スキップ柱72a,72bの上端は水平方向に延びるスキップ床梁73と連結されている。その連結構造は、例えばコーナ金具がそれぞれにボルト止めされたり溶接されたりすることにより実現される。スキップ床梁73においてその上部に図示しないスキップ床材が設置されるとともにその下部に収納室天井材が設置されることにより、第2居室22と第1収納室23との境界部が構築される。
【0048】
次いで、ガレージ25の上方に第2収納室24を形成するためのスキップ架構54bについて図6,7に基づいて説明する。
【0049】
スキップ架構54bは、図3(b)でも説明したとおり、主架構53の柱の一部を兼用している。主架構53の下階柱63c,63dは、基礎11c,11d上に立設されている。なお、図6では正面視のため一対の下階柱63c,63dのみが見えるようになっているが、実際には図7に示すように、平面視でガレージ25を囲むようにその他複数の下階柱63e〜63jが基礎11c,11d上に所定間隔をおいて立設されている。なお、下階柱63c〜63jの多くを剛性維持のためにラチス柱やトラス柱としている。
【0050】
また、スキップ架構54bを下方から支持するスキップ柱76a〜76gもガレージ25を囲むようにして基礎11c,11d上に立設されている。但し、本実施形態では、スキップ架構54bは正面視で奥行き方向にみた場合、ガレージ25よりも奥行きが少ない設定とされており、このためにスキップ架構54bの奥側端部に沿って基礎梁77が基礎11c,11d間に架け渡され、この基礎梁77上に所定のスキップ柱76eが立設されている。また、一部のスキップ柱76aは下階柱63dとの間にトラス材78を渡してトラス柱を構成しており、これによりスキップ架構54bが主架構53の一部を兼用している。
【0051】
そして、スキップ床梁79は上記スキップ柱76a〜76g及び下階柱63c〜63jに対して連結されている。スキップ床梁79は平面視でスキップ柱76a〜76g及び下階柱63c〜63jにより囲まれる矩形の内周形状にほぼ合致した矩形枠状に形成されており、上記スキップ柱76a〜76g及び下階柱63c〜63jの内周側とスキップ床梁79の外周側とが連結されている。その連結構造は、他の連結構造と同様、例えばコーナ金具がそれぞれにボルト止めされたり溶接されたりすることにより実現される。スキップ床梁79においてその上部にスキップ床材75(図7参照)が設置されるとともにその下部に図示しないガレージ天井材が設置されることにより、第2収納室24とガレージ25との境界部が構築される。
【0052】
なお、スキップ柱76a〜76g及び下階柱63c〜63jは、それぞれの上端が上階床梁64に連結されるが、スキップ柱76a〜76gについてはその上端がスキップ床梁79のところまでの長さとされていてもよい。
【0053】
また、図6の例に代えて図8に示す骨組構造としてもよい。これは図3(d)で示したスキップ架構54dの構造に対応する。すなわち、このスキップ架構54dでは、上階床梁64とスキップ床梁81との間に複数本のスキップ柱82a〜82dを連結し、各スキップ柱82a〜82dに筋交い83を交差するように施すことで、スキップ架構54dの側面の少なくとも一部を耐力壁としている。そして、この耐力壁が上階床梁64に連結されることで、構造計算上はスキップ架構54dにより構築される第2収納室24を主架構53の上階床部分の一部とみなすことができる。さらに、基礎11dとスキップ床梁81との間に下階柱63dを含むラチス柱によって構成された耐力壁84を設けることで、主架構53の耐力壁を削減することができ、各種レイアウトプランに対して柔軟に対応することができるようになる。なお、図3(c)のような架構モデルを実現する場合には、この耐力壁84を省略し、スキップ架構54d(図3(c)のスキップ架構54c)を上階床梁64に対してのみ連結するように構成すればよい。
【0054】
また、建物10をユニット建物とし、このユニット建物を構成する複数の建物ユニットにそれぞれ梁と柱とを含む骨組構造を採用し、スキップ架構を所定の建物ユニットに組み込んだり別途取り付けたりしてもよい。例えば、所定の下階用建物ユニットの天井梁にスキップ架構を吊り下げるようにして予め固定しておくことにより、現場施工の作業性を向上させつつ上記した各効果が得られる。
【0055】
(内装仕上げの説明)
上記のように主架構53とスキップ架構54が構築された場合、例えば地震が発生したと仮定すると、主架構53とスキップ架構54との揺れ方に相違が生じ得る。そうすると、両者の連結箇所における内装材が破損するおそれがある。特に、図3(a)及び図3(c)において説明した架構モデルを採用した場合には、その可能性が高い。このような破損を未然に防止する建物の構造を図9に基づいて説明する。なお、図9は、図3(a)及び図5で説明したとおりの主架構53とスキップ架構54aとを独立して設定した構造であって、スキップ架構54aの下側に第1収納室23、上側に第2居室22が設けられているものを前提としたものである。
【0056】
このような主架構53とスキップ架構54aとを独立させた骨組構造を採用したものでは、地震等により建物10が揺れた場合、主架構53とスキップ架構54aとは個別に揺れ、その揺れの幅や周期がそれぞれ異なる(すなわち、挙動が異なるものとなる)。ここで、スキップ架構54aの上側に形成された第2居室22においては、その床91がスキップ架構54a側に、外壁92が主架構53側にそれぞれ取り付けられている。その結果、床91と外壁92との空隙部を埋める内装材がそれらに固定されていると、内装材の一部が破損するおそれがある。これを回避するために、主架構53に設けられている外壁92と、スキップ架構54aに設けられている床91上から延びる内壁93とが固定されないように工夫されている。
【0057】
すなわち、外壁92には第2居室22に対応して窓枠94(ガラス戸を囲む枠体)が設けられており、その窓枠94と略同じ高さで、窓枠94と内壁93との間隙を塞ぐ窓台95が設けられている。窓台95は内壁93が固定される溝型金具96に対してビス97によって固定され、窓台95の外壁92側は外壁92に固定されたL型金具98の上面に載置されているに過ぎない。そして、窓枠94と窓台95との間には数cm程度の十分なクリアランスCが形成されるように相対位置が決められている。
【0058】
このように構成することで、主架構53とスキップ架構54aとが個別に揺れても、スキップ架構54aとともに揺れる窓台95と、主架構53とともに揺れる窓枠94とが、互いに連結されずかつ両者間にクリアランスCが設けられているため、窓台95,内壁93,床91等の内装材が破損するおそれがない。つまり、クリアランスCの範囲内で窓枠94と窓台95とが互いに相対移動することで、地震や強風等により建物に外力が加わりそれに伴い建物が変形する場合にも、窓枠94と窓台95とが相互に干渉することなく振動し、壁際構造物が好適に保護される。例えば、内装材の破損、亀裂、クロスのしわ等の発生が抑制できる。
【0059】
また、窓枠94や窓台95といった壁際の構成部材については特に経年変化や気候等の環境変化(屋内外の温度差等を含む)による変形も考えられるが、その変形についても各部材(窓枠94、窓台95)ごとに許容される。例えば、温度変化に対する膨張率が部材ごとに相違しても、その膨張率の相違に伴う変形の差異が吸収できる。したがって、やはり内装材の破損、亀裂、クロスのしわ等の発生が抑制できる。
【0060】
ここで、窓枠94と窓台95との間に形成されるクリアランスCは、建物に水平力が作用した場合において主架構53に生じる層間変位に基づき設定されている。すなわち、図10に示すように、建物に水平力が作用した場合には主架構53が斜めに傾き、一階/二階の境界部(高さh)で層間変位がδとなる。このとき、層間変形角はδ/hである。クリアランスCは、主架構53において層間変形角(δ/h)があらかじめ定めた最大値(例えば、1/200)となる場合にも窓枠94と窓台95との相対移動を許容する寸法にて設けられている。
【0061】
加えて、窓枠94(外壁側部材)と窓台95(屋内側部材)とを互いに相対移動可能として構成したことで、壁際構造部分におけるメンテナンス性を高めることができる。つまり、建物において、外壁92だけ(窓枠94だけも含む)だけを交換したり、内壁93だけ(窓台95だけも含む)だけ交換したりする際にその交換作業が容易となる。
【0062】
また、図9の例では、上記クリアランスCによる間隙を第2居室22から見えないようにして美観を向上させるため、窓枠94にカバー99が設けられている。カバー99はその屋内側端部が窓台95上に当接される程度まで屋内側に延びることが好ましい。この場合、カバー99は、窓枠94と窓台95との相対移動を許容しつつ両者間の隙間部分(クリアランスC)を隠すものであり、各部材の保護を図りつつ、見栄えの改善を図ることができる。
【0063】
また、窓台95の下方には溝型金具96とL型金具98とに架け渡される防火用鉄板100が設けられている。防火用鉄板100の屋内側端部は溝型金具96に対してビス97によって固定されるが、屋外側端部は窓台95の屋外側端部と同程度までの位置とされ、かつ単にL型金具98上に載置されているに過ぎない。したがって、防火用鉄板100は窓台95とともに揺れるものであり、内装材を破損させることがなくかつ防火性能も維持することができる。
【0064】
なお、上記のもの以外にも、床91と内壁93との間の連結を行わず、主架構53とスキップ架構54aとが個別に揺れた場合に、床91に対して内壁93がスライドするように構成してもよい。この場合は、床91を内壁93の下端よりも若干屋外側まで延長するように形成することが好ましい。その具体的な構成を図11に示す。なお、図11は、前記図9の構成の一部を変更したものであり、共通の構成については同一の符号を付して説明を割愛する。
【0065】
図11の壁際構造では、外壁92及び内壁93(実際には各壁面材の背面側のフレーム材)が連結片115により一体化されている。また、内壁93(特に内壁面材)とその下方に設置される床91とは互いに連結されず、それら両者間には隙間Sが設けられている。この場合、外壁92及び内壁93はいずれも主架構側の構造物、床91はスキップ架構側の構造物であり、地震や強風等により建物が変形する際には、これらが個別に揺れ、その際互いに相対移動可能となっている。つまり、相対向する内壁93と床91とで言えば、それらが互いに相対移動可能とされている。本構成では、地震や強風等による建物の変形等に際し、内壁93と床91とが各々相対移動することにより、これら各部材が好適に保護できる。
【0066】
また、内壁93の下端部と床91の上面との間の隙間Sには、それら両部材の相対移動を許容しかつ隙間Sを隠す遮蔽部材としてのシール材116(例えば、樹脂製の長尺シール材)が設けられている。これにより、内壁93や床91の保護を図りつつ、隙間部分を隠すことで見栄えの改善を図ることができる。なお、遮蔽部材として、シール材116に代えて巾木を設けることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本実施形態の建物を示す概略縦断面図。
【図2】一階部分に収納スペースと居室とを上下配置したバリエーションを示す概略縦断面図。
【図3】収納スペースを設ける際の好適な架構モデルのバリエーションを示す説明図。
【図4】建物の骨組構造を示す正面図。
【図5】図4の部分拡大図。
【図6】図4の部分拡大図。
【図7】図4のガレージ部分の基礎と各柱との関係を示す平面図。
【図8】図6とは別のバリエーションを示す一部正面図。
【図9】主架構とスキップ架構との関係を示す縦断面図。
【図10】主架構の層間変位を説明するための略図。
【図11】主架構とスキップ架構との関係を示す縦断面図。
【符号の説明】
【0068】
10…建物、11…基礎、12…一階部分、13…二階部分、51…架構モデル、52…基礎、53…主架構、54…スキップ架構、55…上階床梁、57…下階柱、63…下階柱、64…上階床梁、65…上階柱、66…上階天井梁、71…支持金具、72…スキップ柱、73…スキップ床梁、75…スキップ床材、76…スキップ柱、77…基礎梁、79…スキップ床梁、81…スキップ床梁、82…スキップ柱、91…床、92…外壁、93…内壁、94…窓枠、95…窓台、99…カバー、116…シール材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外壁に一体に設けられる外壁側部材と、前記外壁側部材に対向して設けられる屋内側部材とを備える建物に適用され、
前記外壁側部材と前記屋内側部材とが互いに相対移動可能となるように設けられていることを特徴とする建物の壁際構造。
【請求項2】
前記外壁側部材と前記屋内側部材との間において水平方向に所定のクリアランスが設けられ、そのクリアランスの範囲内で前記外壁側部材と前記屋内側部材とが互いに相対移動可能とされている請求項1に記載の建物の壁際構造。
【請求項3】
前記クリアランスは、前記建物において層間変形角があらかじめ定めた最大値となる場合にも前記外壁側部材と前記屋内側部材との相対移動を許容する寸法にて設けられている請求項2に記載の建物の壁際構造。
【請求項4】
前記外壁側部材として窓枠が取り付けられるとともに、その窓枠と略同じ高さで前記屋内側部材として窓台が設けられた建物に適用され、
前記窓枠と前記窓台とが互いに相対移動可能とされている請求項1乃至3のいずれか一項に記載の建物の壁際構造。
【請求項5】
前記外壁側部材として、前記外壁に一体化して設けられた内壁面材を有する建物に適用され、
前記内壁面材とその下方に設置される床材とが互いに相対移動可能とされている請求項1乃至3のいずれか一項に記載の建物の壁際構造。
【請求項6】
通常の床高とは異なる高さでスキップフロアが設けられる建物に適用され、
前記床材は、前記スキップフロアを構成するスキップ用床材である請求項5に記載の建物の壁際構造。
【請求項7】
互いに相対移動可能となる前記外壁側部材と前記屋内側部材との近接部分に、それら両者の相対移動を許容しつつ両者間の隙間部分を隠すための遮蔽部材が設けられている請求項1乃至6のいずれか一項に記載の建物の壁際構造。
【請求項8】
前記外壁側部材と前記屋内側部材とが、建物においてそれぞれ挙動が異なる構造物として設けられている請求項1乃至7のいずれか一項に記載の建物の壁際構造。
【請求項9】
建物の全体構造を構成する主架構と、その主架構から独立して設けられるスキップ架構とを備える建物に適用され、
前記外壁側部材が前記主架構に設けられ、前記屋内側部材が前記スキップ架構に設けられている請求項1乃至8のいずれか一項に記載の建物の壁際構造。
【請求項10】
前記スキップ架構は、前記主架構とは別の位置で基礎に連結することにより自立して設けられている請求項9に記載の建物の壁際構造。
【請求項11】
前記スキップ架構は、少なくとも複数のスキップ柱と各スキップ柱に繋がれたスキップ床梁とを備え、基礎の側面に支持金具を設け、当該支持金具に各スキップ柱を固定して設けられている請求項9又は10に記載の建物の壁際構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−315166(P2007−315166A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−19956(P2007−19956)
【出願日】平成19年1月30日(2007.1.30)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】