説明

建物の排熱システム

【課題】建物の内部の温度上昇を極力、抑えることが可能な建物の排熱システムを提供する。
【解決手段】住宅1Aの内部の熱を外部に排出するための建物の排熱システムである。そして、住宅の床下空間14の空気を床上のホール17に供給させるために収納室8の下部に仕切られた下部空間81の床13に設けられる給気ファン2と、下部空間とホールとを連通させるガラリ82と、ホールに連通された2階居室12の面に設けられるガラリ4と、2階居室に設けられた開閉可能な大型窓5とを備え、給気ファンは、床開口の周縁から上方に突出させた枠板に取り付けられるとともに、その上方は金枠と網部によって形成される金網によって着脱可能に覆われている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の内部の温度上昇を抑えたり、温度が上昇した際に速やかに熱を外部に排出したりするための建物の排熱システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、床下空間を通過した空気を床に設けた開口を通して床上の階段通路に供給し、建物の内部を上昇させた後に建物の上部から外部に排出させる建物の換気システムが知られている(特許文献1,2参照)。
【0003】
例えば特許文献1の換気システムには、階段下の床に設けたベースファンによって床下空間の空気を床上の階段通路に取り込み、階段通路を上昇させた空気を2階の居室のドアの上に設けたファンによって居室内に取り込む構成が開示されている。そして、居室に取り込まれた空気は、居室の壁上部に設けられた換気口から外部に排出される。
【0004】
一方、特許文献3には、階段下空間に設置したファンによって床下空間から取り込まれた空気を、階段の蹴込み板に設けたグリル板のスリットを通して階段通路に供給する床下空気導入口の構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第2690720号公報
【特許文献2】特許第3974874号公報
【特許文献3】特開平10−220830号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の換気システムでは、居室のドアの上にファンを設置するため、ファンの運転音によって居室の静寂性が低下するおそれがある。また、従来の換気システムは、建物内部の空気の流れにのみ着目したものが多く、建物内部の温度上昇を抑えるという観点にたって開発されていない。
【0007】
そこで、本発明は、建物の内部の温度上昇を極力、抑えることが可能な建物の排熱システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明の建物の排熱システムは、建物の内部の熱を外部に排出するための建物の排熱システムであって、建物の床下空間の空気を床上の共用空間に供給させるために収納室の下部に仕切られた下部空間の床に設けられる給気ファンと、前記下部空間と前記共用空間とを連通させる給気口と、前記共用空間に連通された居室の面に設けられる通気部と、前記居室に設けられた開閉可能な窓とを備え、前記給気ファンは、床開口の周縁から上方に突出させた枠板に取り付けられるとともに、その上方は金枠と網部によって形成される金網によって着脱可能に覆われることを特徴とする。
【0009】
ここで、前記通気部は、前記共用空間に面した居室の上部の壁に設けることができる。また、前記居室の窓の外側を被覆可能に配置される遮熱スクリーンを備えた構成とすることができる。
【0010】
さらに、前記居室の壁に前記建物の内部の熱を外部に排出するための排気ファンが取付けられる構成であってもよい。
【発明の効果】
【0011】
このように構成された本発明の建物の排熱システムは、床下空間から取り込まれた空気(冷気)を共用空間経由で居室に送り、居室の窓から熱気となった空気などを排出させることが可能な換気経路を備えている。また、居室の窓の外側を被覆することが可能な遮熱スクリーンを配置することもできる。
【0012】
このため、窓に差し込む太陽光による熱の侵入を防ぐとともに、上述した換気経路により建物の内部空間の温度上昇を最小限に抑えることができる。
【0013】
また、収納室の下部を仕切って下部空間を設け、そこに給気ファンを配置するのであれば、給気ファンの存在を目立たないようにすることができる。
【0014】
さらに、通気部を共用空間に面した居室の上部の壁に設けた場合は、居室のドアを閉めたままの状態にしても、常時、共用空間の空気を居室に取り込むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の建物の排熱システムの構成を説明するための断面図である。
【図2】給気ファンの構成を説明する斜視図である。
【図3】ガラリが設けられた階段の構成を説明する斜視図である。
【図4】実施例1の建物の排熱システムの構成を説明する平面図である。
【図5】本発明の建物の排熱システムの構成を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に関する構成について図面を参照して説明する。図1は、建物としての住宅1の排熱システムの構成を説明する断面図である。
【0017】
この住宅1は、基礎部15の上に構築されており、1階の床13の下には床下空間14が形成される。また、床13上には、共用空間としての階段通路11及び居室としての1階居室16が形成される。
【0018】
この階段通路11には、廻り階段などの階段3が設けられ、壁16aを隔てて1階居室16が面している。また、1階居室16の上には居室としての2階居室12が設けられ、2階居室12も同様に階段通路11に面している。
【0019】
この2階居室12の階段通路11に面するドア12aの上には、壁としての垂れ壁41が設けられ、その垂れ壁41には通気部としてのガラリ4が設けられて2階居室12内と階段通路11とが常に連通された状態となっている。
【0020】
また、2階居室12の南面には、窓としての大型窓5が設けられている。この大型窓5は、住宅1の外側から遮熱スクリーン6によって被覆することができる。
【0021】
この遮熱スクリーン6は、日射熱や紫外線の大部分を遮断することができる。すなわち、大型窓5を遮熱スクリーン6で被覆することによって、太陽光が差し込む2階居室12の内部に発生する熱量を大幅に削減することができる。この遮熱スクリーン6には、材質によって、日射熱や紫外線は遮断するが風や光は透過できるものがある。
【0022】
また、遮熱スクリーン6は、夏季や日差しの強い日には展開させて大型窓5を被覆させ、それ以外のときには巻き取ったり、折り畳んだり、取り外したりして大型窓5の前面から撤去することができる。また、1階居室16の大型窓5Aの外側にも同様の遮熱スクリーン6Aが配置される。
【0023】
一方、階段通路11に設けられる階段3は、図1,3に示すように、複数の段板34,・・・と、上下の段板34,34間の隙間を塞ぐ蹴込み板32,33とによって主に形成される。
【0024】
また、階段3の下方側は、裏板31aによって塞がれ、段板34,・・・及び蹴込み板32,33と裏板31aと床13とによって囲まれた階段下空間31が形成される。
【0025】
さらに、この階段下空間31内の床13には、床下空間14と床上とを連通させるための床開口13aが設けられている。そして、この床開口13aに、図2に示すような大型の給気ファン2が取り付けられる。
【0026】
この給気ファン2は、床開口13aの周縁から上方に突出させた四角筒状の枠板21に取り付けられる。また、給気ファン2の上方は、金枠と網部によって形成される金網22によって、着脱可能に覆われる。
【0027】
さらに、この給気ファン2が設置される階段下空間31には、点検口31bから出入りすることができる。そして、給気ファン2から階段下空間31に供給された空気を階段通路11に放出させるために、階段3の蹴込み板33に給気口としてのガラリ33aを設ける。このガラリ33aによって、階段下空間31と階段通路11とが連通される。
【0028】
また、ガラリ33aは、図3に示すように、1段の蹴込み板33に例えば2箇所ずつ設けられる。さらに、この2箇所に設けられるガラリ33a,33aは、蹴込み板33の両側にそれぞれ寄せて設けられる。
【0029】
また、ガラリ33a,33aを備えた蹴込み板33は、本実施の形態の階段3では、下から2〜4段目までの3枚が配置される。すなわち、ガラリ33a,33aを備えた3枚の蹴込み板33,・・・は、図1,3に示すように、給気ファン2の側方又は上方に配置される。
【0030】
他方、床13に隣接する階段3の最下段の蹴込み板32には、ガラリを設けない。この最下段の蹴込み板32にガラリを設けない理由として、床13に隣接しているためガラリの掃除がしにくい、ガラリから排出される風によって床13の埃などが舞い上げられてしまう等が挙げられる。
【0031】
次に、住宅1の排熱システムの作用について説明する。
【0032】
このように構成された住宅1の排熱システムでは、基礎部15の外気取込口15aから床下空間14に流れ込んだ冷気(空気)が、給気ファン2によって吸い上げられて階段下空間31に送り込まれる。
【0033】
そして、階段下空間31に送り込まれた冷気は、階段3の2〜4段目に配置された3枚の蹴込み板33,・・・のガラリ33a,・・・を通って階段通路11に供給される。
【0034】
一方、2階居室12の大型窓5を開けると、住宅1の外部と内部とが連通されることになる。また、この2階居室12は、ガラリ4によって室内と階段通路11とが連通された状態となっている。
【0035】
そして、床下空間14から冷気として取り込まれて階段通路11に供給された空気は、ガラリ4を通って2階居室12に流れ込み、開いた大型窓5から住宅1の外部に排出されることになる。
【0036】
このため、階段通路11や2階居室12に熱気があったとしても、上述した空気の流れ(換気経路)によって住宅1の外部に排出させることで温度上昇を最小限に抑えることができる。また、床下空間14経由の比較的温度の低い空気が供給されれば、2階居室12の温度を下げることができる。さらに、このような換気は、大型窓5を少し開けた状態でロックすることで、留守中であってもおこなうことができる。
【0037】
また、階段通路11に面した2階居室12の上部の垂れ壁41にガラリ4を設けているので、2階居室12のドア12aを閉めたままの状態にしても、常時、階段通路11の空気を2階居室12に取り込むことができる。
【0038】
また、2階居室12の南面の大型窓5の外側は遮熱スクリーン6によって被覆されているので、2階居室12に差し込む太陽光による日射熱や紫外線の大部分は遮断される。
【0039】
このため、大型窓5に差し込む太陽光による住宅1の内部の温度上昇を抑えることができる。また、住宅1の内部に熱が滞留したとしても、大型窓5を開けることで上述した換気経路によって速やかに外部に排出することができる。
【0040】
さらに、床下空間14から空気を取り込むための給気ファン2は、階段下空間31を有効に利用する形態で配置されている。また、階段下空間31に配置することで、給気ファン2の存在を目立たなくすることができる。
【0041】
さらに、居室(12,16)から離れた階段下空間31に配置されるのであれば、給気ファン2から発生するモータ音などの騒音が居室(12,16)まで聞こえることはほとんどない。
【0042】
また、階段3の蹴込み板33,・・・に複数のガラリ33a,・・・を設けることによって一つ当たりの風圧を低減させることができるので、ガラリ33a,・・・から排出される風によって居住者が不快に感じることを抑えることができる。特に、蹴込み板33の両側にそれぞれ寄せてガラリ33a,33aを設けた場合は、階段3の真ん中を昇降する居住者にはほとんど風を感じさせることがない。
【0043】
さらに、床13に隣接する階段3の1段目の蹴込み板32に給気口を設けないことで、掃除などのメンテナンス作業をおこない易くできる。また、給気口から排出される風による床13の埃の舞い上がりを抑えることができる。
【0044】
さらに、床13上の点検口31bから給気ファン2にアプローチすることができるので、床下空間14に潜らなくてもメンテナンス作業を容易におこなうことができる。
【実施例1】
【0045】
以下、図4を参照しながら説明する。なお、上述した内容と同一乃至均等な部分の説明については同一符号を付して説明する。
【0046】
ここまでは、階段3の蹴込み板33に給気口としてのガラリ33aを設ける場合について説明したが、この実施例1では、階段3Aの手摺壁35に給気口としてのガラリ35aを設ける場合について説明する。
【0047】
この階段3Aは、図4に示すように廻り階段となっており、最下段側の左側には手摺壁35が設けられる。この手摺壁35は、階段下空間31(図1参照)の側方を塞ぐように立設されるとともに、隣接する段板34,・・・より高い位置まで延設されて階段3Aの手摺り(図示省略)を取り付けることができる。
【0048】
また、この手摺壁35は、共用空間としてのホール17に面して設けられており、ホール17と階段下空間31とは手摺壁35によって遮られている。そこでこの手摺壁35に、給気口としてのガラリ35aを設け、ホール17と階段下空間31とを連通させる。
【0049】
このようにホール17と階段下空間31とに面した手摺壁35にガラリ35aを設けることによって、後述する図5によって参照できるように、床下空間14から壁(手摺壁35)を通ってホール17に流れ、2階居室12を通って外部に排出されるという換気経路を形成することができる。
【実施例2】
【0050】
以下、本発明の実施例について、図5を参照しながら説明する。なお、上述した内容と同一乃至均等な部分の説明については同一符号を付して説明する。
【0051】
ここまでは、階段下空間31に給気ファン2を設置する場合について説明したが、この実施例では、1階居室16に設けられた収納室8の下部空間81に給気ファン2が配置された住宅1Aの排熱システムについて説明する。
【0052】
この収納室8は、1階居室16のホール17に面した位置に設けられる。このため、収納室8の一方の壁16bは、ホール17に面することになる。また、収納室8の下部に設けられる下部空間81は、収納室8の最下段の棚板83と、その棚板83の下面と床13との間を塞ぐ仕切板81aとによって、収納室8の他の空間から仕切られる。
【0053】
さらに、下部空間81の床13には床開口13aが設けられ、床下空間14と下部空間81とが連通される。また、下部空間81のホール17に面した壁16bには、給気口としてのガラリ82が設けられる。このガラリ82によって下部空間81とホール17とが連通される。
【0054】
このように構成された本発明の住宅1Aの排熱システムでは、基礎部15の外気取込口15aから床下空間14に流れ込んだ冷気(空気)が、給気ファン2によって吸い上げられて下部空間81に送り込まれる。そして、下部空間81に送り込まれた冷気は、壁16bのガラリ82を通ってホール17に供給される。
【0055】
一方、2階居室12の大型窓5を開けると、住宅1Aの外部と内部とが連通されることになる。また、この2階居室12は、ガラリ4によって室内とホール17とが連通された状態となっている。
【0056】
そして、床下空間14から冷気として取り込まれてホール17に供給された空気は、ガラリ4を通って2階居室12に流れ込み、開いた大型窓5から住宅1Aの外部に排出されることになる。
【0057】
このように収納室8の下部を仕切って下部空間81を設け、そこに給気ファン2を配置するのであれば、給気ファン2の存在を目立たないようにすることができる。
【0058】
なお、他の構成及び作用効果については、上述した他の例と略同様であるので説明を省略する。
【0059】
以上、図面を参照して、本発明の実施例を詳述してきたが、具体的な構成は、この実施例に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
【0060】
例えば、2階居室12の垂れ壁41に通路部としてのガラリ4を設ける場合について説明したが、これに限定されるものではなく、通路部として欄間を設けたり、ドア12aを開けたりしてもよい。
【0061】
また、共用空間(階段通路11又はホール17)から2階居室12に空気を導き、住宅1,1Aの外部に排出する場合についてのみ説明したが、1階居室16にも2階居室12と同様に共用空間と居室内部とを連通させるための通路部を設け、大型窓5Aを開けたり1階居室16の壁に排気ファンを取り付けたりして1階居室16の熱を外部に排出させることができる。なお、排気ファンは、2階居室12にも設けることができる。
【符号の説明】
【0062】
1,1A 住宅(建物)
11 階段通路(共用空間)
12 2階居室(居室)
13 床
13a 床開口
14 床下空間
16b 壁
17 ホール(共用空間)
2 給気ファン
3,3A 階段
31 階段下空間
33 蹴込み板
33a ガラリ(給気口)
35 手摺壁
35a ガラリ(給気口)
4 ガラリ(通気部)
41 垂れ壁
5 大型窓(窓)
6 遮熱スクリーン
8 収納室
81 下部空間
81a 仕切板
82 ガラリ(給気口)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の内部の熱を外部に排出するための建物の排熱システムであって、
建物の床下空間の空気を床上の共用空間に供給させるために収納室の下部に仕切られた下部空間の床に設けられる給気ファンと、
前記下部空間と前記共用空間とを連通させる給気口と、
前記共用空間に連通された居室の面に設けられる通気部と、
前記居室に設けられた開閉可能な窓とを備え、
前記給気ファンは、床開口の周縁から上方に突出させた枠板に取り付けられるとともに、その上方は金枠と網部によって形成される金網によって着脱可能に覆われることを特徴とする建物の排熱システム。
【請求項2】
前記通気部は、前記共用空間に面した居室の上部の壁に設けられることを特徴とする請求項1に記載の建物の排熱システム。
【請求項3】
前記居室の窓の外側を被覆可能に配置される遮熱スクリーンを備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載の建物の排熱システム。
【請求項4】
前記居室の壁に前記建物の内部の熱を外部に排出するための排気ファンが取付けられることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の建物の排熱システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−87610(P2012−87610A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−140863(P2011−140863)
【出願日】平成23年6月24日(2011.6.24)
【分割の表示】特願2010−233209(P2010−233209)の分割
【原出願日】平成22年10月18日(2010.10.18)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】