説明

建物の換気システム

【課題】建物の屋内空間の換気を行う換気システムにおいて、屋内空間の換気効率を十分に高める。
【解決手段】建物100の屋内空間102の下部領域に外気を供給するための給気タワー10と、屋内空間102の上部領域から空気を排出するための排気タワー20とを備えた構成とする。その際、給気タワー10には、その外気通路14内に散水をするための散水装置30を配置する。そして、排気タワー20の設置により、屋内空間102の排気側において煙突効果を増進させ、屋内空間102の換気効率を高める。一方、給気タワー10においては、散水装置30から散水された水滴の自然落下作用により、外気通路14内に下降気流を形成する。これにより、屋内空間102の給気側においても煙突効果を増進させ、屋内空間102の換気効率をさらに高める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、建物の屋内空間の換気を行う換気システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、建物の換気システムとして、屋内空間の下部領域に外気を供給するとともに、その上部領域から空気を排出するように構成されたものが広く知られている。
【0003】
このような換気システムを採用した場合には、いわゆる煙突効果によって屋内空間における空気の流れがスムーズになるので、屋内空間の換気効率を高めることができる。
【0004】
「特許文献1」には、このような換気システムにおいて、屋内空間の空気を排出するための排気タワーを備えたものが記載されている。
【0005】
また「特許文献2」には、地中構造物の換気システムとして、地中構造物の本体中央部に設置された排気タワーを介して屋内空間の空気を排出するとともに、本体周囲に形成された給気縦穴を介して屋内空間に外気を供給するように構成されたものが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−194826号公報
【特許文献2】特開平6−117121号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記「特許文献1」に記載された換気システムのように、排気タワーを備えた構成とすれば、屋内空間の排気側において煙突効果を増進させることができ、これにより屋内空間の換気効率をより高めることができる。
【0008】
その際、屋内空間の給気側においても煙突効果を増進させることができれば、屋内空間の換気効率をさらに高めることが可能となる。
【0009】
しかしながら、屋内空間への外気の供給は、その下部領域に対して行われるので、上記「特許文献2」に記載された給気縦穴またはこれに相当する給気タワーを単に設置しただけでは、煙突効果を増進させることはできず、むしろ煙突効果を減殺させてしまうこととなるので、屋内空間の換気効率を十分に高めることはできない。
【0010】
本願発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、建物の屋内空間の換気を行う換気システムにおいて、屋内空間の換気効率を十分に高めることができる建物の換気システムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願発明は、屋内空間の下部領域に外気を供給するための給気タワーと、屋内空間の上部領域から空気を排出するための排気タワーとを備えた構成とした上で、その給気タワーに所定の散水装置が配置された構成とすることにより、上記目的達成を図るようにしたものである。
【0012】
すなわち、本願発明に係る建物の換気システムは、
建物の屋内空間の換気を行う換気システムにおいて、
上記屋内空間の下部領域に外気を供給するための給気タワーと、上記屋内空間の上部領域から空気を排出するための排気タワーと、を備えてなり、
上記給気タワーに、外気を導入するための外気導入口と、この外気導入口から導入された外気を下方へ導くための外気通路と、この外気通路に沿って下方へ導かれた外気を上記屋内空間の下部領域に吹き出すための外気吹出口とが形成されており、
上記排気タワーに、上記屋内空間の空気を該屋内空間の上部領域から該排気タワーに流入させるための内気流入口と、この内気流入口から流入した空気を上方へ導くための内気通路と、この内気通路に沿って上方へ導かれた空気を外部空間へ排出するための内気排出口とが形成されており、
上記給気タワーに、該給気タワーの外気通路内に散水をするための散水装置が配置されている、ことを特徴とするものである。
【0013】
上記「給気タワー」および「排気タワー」の設置個数や具体的な設置箇所等は、特に限定されるものではない。
【0014】
上記給気タワーの「外気導入口」は、該給気タワーの外気吹出口よりも上方に位置していれば、その具体的な形成位置は特に限定されるものではない。
【0015】
上記排気タワーの「内気排出口」は、該排気タワーの内気流入口よりも上方に位置していれば、その具体的な形成位置は特に限定されるものではない。
【0016】
上記「散水装置」は、給気タワーの外気通路内に散水をするように構成されたものであれば、その具体的な配置や散水の方向は特に限定されるものではない。
【発明の効果】
【0017】
上記構成に示すように、本願発明に係る建物の換気システムは、建物の屋内空間の下部領域に外気を供給するための給気タワーと、その屋内空間の上部領域から空気を排出するための排気タワーとを備えた構成となっており、その際、給気タワーには、その外気通路内に散水をするための散水装置が配置されているので、次のような作用効果を得ることができる。
【0018】
すなわち、排気タワーにおいては、屋内空間の上部領域の空気を内気流入口から流入させて、これを内気通路に沿って上方へ導き、これを内気排出口から外部空間へ排出するようになっているので、屋内空間の排気側において煙突効果を増進させることができ、これにより屋内空間の換気効率を高めることができる。
【0019】
一方、給気タワーは、外気を外気導入口から導入して、これを外気通路に沿って下方へ導き、これを外気吹出口から屋内空間の下部領域に吹き出す構成となっているが、この給気タワーを設置しただけでは、屋内空間の給気側において煙突効果を増進させることはできず、むしろ煙突効果を減殺させてしまうこととなる。しかしながら、この給気タワーには、その外気通路内に散水をするための散水装置が配置されているので、この散水装置から散水された水滴が自然落下することにより、外気通路内に下降気流を形成することができる。そしてこれにより、屋内空間の給気側においても煙突効果を増進させることができるので、屋内空間の換気効率をさらに高めることができる。
【0020】
このように本願発明によれば、建物の屋内空間の換気を行う換気システムにおいて、屋内空間の換気効率を十分に高めることができる。
【0021】
しかも本願発明においては、散水装置から散水された水滴が自然落下する際、その蒸発冷却作用により外気通路内の空気を冷却することができる。そして、このようにして冷却された空気が屋内空間の下部領域に流入することとなるので、これにより屋内空間の冷却効果を高めることができる。
【0022】
上記構成において、排気タワーに、建物で発生した廃熱(例えば空調装置の室外機からの排出熱やプラントの排熱等)を、その内気通路に供給するための廃熱供給口が形成された構成とすれば、その内気通路内における上昇気流の形成を促進することができ、その分だけさらに屋内空間の換気効率を高めることができる。
【0023】
上記構成において、給気タワーおよび排気タワーが、給気タワーを下にして上下直列で配置された構成とすれば、給気タワーおよび排気タワーの設置効率を高めることができる。
【0024】
上記構成において、給気タワーおよび排気タワーが、建物の外部空間に設置された構成とすれば、既設の建物に対しても、本願発明に係る建物の換気システムを適用することが容易に可能となる。
【0025】
上記構成において、給気タワーおよび排気タワーが、それぞれ複数箇所に設置された構成とすれば、屋内空間の換気効率をより一層高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本願発明の一実施形態に係る建物の換気システムを示す側断面図
【図2】上記換気システムを備えた建物を示す斜視図
【図3】上記実施形態の作用を説明するための図
【図4】上記実施形態の第1変形例示す、図1と同様の図
【図5】上記実施形態の第2変形例示す、図1と同様の図
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を用いて、本願発明の実施の形態について説明する。
【0028】
図1は、本願発明の一実施形態に係る建物の換気システムを示す側断面図である。また、図2は、この換気システムを備えた建物を示す斜視図である。
【0029】
図1に示すように、本実施形態に係る建物の換気システムは、工場や倉庫等のような大きな屋内空間102を有する建物100に対して、その屋内空間102の換気を行う換気システムであって、屋内空間102の下部領域に外気を供給するための給気タワー10と、屋内空間102の上部領域から空気を排出するための排気タワー20とを備えた構成となっている。
【0030】
建物100は、南北両側に緩やかに傾斜した屋根130を有している。
【0031】
給気タワー10および排気タワー20は、いずれも円筒状に形成されており、建物100が設置されている地面から建物100の屋根130よりも高い位置まで鉛直方向に延びている。
【0032】
図2に示すように、これら給気タワー10および排気タワー20は、建物の外部空間に5組設置されている。その際、5つの給気タワー10は、建物100の北側の側壁110に沿って、互いに略等間隔で設置されており、5つの排気タワー20は、建物100の南側の側壁120に沿って、互いに略等間隔で各給気タワー10と対向する位置に設置されている。
【0033】
これら各組の給気タワー10および排気タワー20は、いずれも同様の構成を有しているので、そのうちの1組について説明する。
【0034】
図1に示すように、給気タワー10には、外気を導入するための外気導入口12と、この外気導入口12から導入された外気を下方へ導くための外気通路14と、この外気通路14に沿って下方へ導かれた外気を屋内空間102の下部領域に吹き出すための外気吹出口16とが形成されている。
【0035】
その際、外気導入口12は、給気タワー10の上端部において外気通路14から北向きに開口している。一方、外気吹出口16は、給気タワー10の下端部において外気通路14から南向きに開口しており、北側の側壁110の下端部において屋内空間102と連通している。
【0036】
この給気タワー10には、その外気通路14内に散水をするための散水装置30が配置されている。
【0037】
この散水装置30は、粒子径100〜1000μm程度の細かい水滴を散水するための散水ノズル32と、この散水ノズル32に対する給水制御を行うための給水制御ユニット34とを備えた構成となっている。
【0038】
散水ノズル32は、外気通路14の上端部(すなわち外気導入口12よりもやや下方の位置)において、外気通路14の略中央位置に配置されている。その際、この散水ノズル32は、下向きに開口するように配置されており、水滴を下方へ向けて略円錐状に散水するようになっている。
【0039】
給水制御ユニット34は、給気タワー10の上端部(すなわち外気通路14内の最上端部であって、建物100の屋根130よりも上方の位置)において、給気タワー10の周面壁に支持されている。その際、この給水制御ユニット34は、その一側壁面を給気タワー10の周面壁から南側へ向けて露出させるようにして配置されている。そして、この南側に露出した側壁面は、給水制御のための駆動電力を太陽光により発電する太陽電池パネル34aとして構成されている。
【0040】
一方、排気タワー20には、屋内空間102の空気をその上部領域から該排気タワー20に流入させるための内気流入口22と、この内気流入口22から流入した空気を上方へ導くための内気通路24と、この内気通路24に沿って上方へ導かれた空気を外部空間へ排出するための内気排出口26とが形成されている。
【0041】
その際、内気流入口22は、排気タワー20の上下方向中央部よりもやや上方の位置において内気通路24から北向きに開口しており、南側の側壁120の上端部において屋内空間102と連通している。一方、内気排出口26は、排気タワー20の上端縁において上向きに開口している。
【0042】
この排気タワー20において、内気通路24よりも下方に位置する部分は、内気通路24と同一断面形状で排気タワー20の下端縁まで延びる内気通路延長部24Eとして形成されている。
【0043】
この排気タワー20の下端部には、建物100で発生した廃熱を該排気タワー20の内気通路24に供給するための廃熱供給口28が、内気通路延長部24Eから南向きに開口するように形成されている。この廃熱供給口28には、建物100で使用される空調装置の室外機40が取り付けられており、その排気ファンからの排出熱を、内気通路延長部24Eを介して内気通路24に導くようになっている。
【0044】
次に、本実施形態の作用効果について説明する。
【0045】
本実施形態に係る建物の換気システムは、建物100の屋内空間102の下部領域に外気を供給するための給気タワー10と、その屋内空間102の上部領域から空気を排出するための排気タワー20とを備えた構成となっており、その際、給気タワー10には、その外気通路14内に散水をするための散水装置30が配置されているので、次のような作用効果を得ることができる。
【0046】
すなわち、排気タワー20においては、屋内空間102の上部領域の空気を内気流入口22から流入させて、これを内気通路24に沿って上方へ導き、これを内気排出口26から外部空間へ排出するようになっているので、屋内空間102の排気側において煙突効果を増進させることができ、これにより屋内空間102の換気効率を高めることができる。
【0047】
一方、給気タワー10は、外気を外気導入口12から導入して、これを外気通路14に沿って下方へ導き、これを外気吹出口16から屋内空間102の下部領域に吹き出す構成となっているが、この給気タワー10を設置しただけでは、給気側において煙突効果を増進させることはできず、むしろ煙突効果を減殺させてしまうこととなる。しかしながら、この給気タワー10には、その外気通路14内に散水をするための散水装置30が配置されているので、この散水装置30から散水された水滴が自然落下することにより、外気通路14内に下降気流を形成することができる。そしてこれにより、屋内空間102の給気側においても煙突効果を増進させることができるので、屋内空間102の換気効率をさらに高めることができる。
【0048】
この点について、図3に基づいて詳しく説明する。
【0049】
図3(a)は、本実施形態に係る建物の換気システムを示す模式図であり、図3(b)は、その給気タワー10および排気タワー20を建物100から分離して示す模式図である。
【0050】
同図(b)に示すように、建物100単体としての屋内空間102は、その下部領域よりも上部領域の方が温度が高くなるので、屋内空間102の圧力は、下部領域において低く上部領域において高くなる。そして、この屋内空間102の圧力P2と外部空間の圧力Poとの差P2−Poは、その下部領域においては負の値となり、その上部領域においては正の値となる。このとき、屋内空間102における給気タワー10の外気吹出口16近傍のP2−Poの値をP2a(負圧)とし、屋内空間102における排気タワー20の内気流入口22近傍のP2−Poの値をP2b(正圧)とする。
【0051】
また、同図(b)に示すように、排気タワー20単体としての内気通路24においては、その下端部の内気流入口22から屋内空間102の空気が流入して、その上端部の内気排出口26から吹き出されるので、屋内空間102の場合と同様、この内気通路24の圧力P3と外部空間の圧力Poとの差P3−Poは、その下部領域においては負の値となり、その上部領域においては正の値となる。このとき、内気通路24における内気流入口22近傍のP3−Poの値をP3a(負圧)とし、内気通路24における内気排出口26近傍のP3−Poの値をP3b(正圧)とする。
【0052】
一方、同図(b)に示すように、給気タワー10単体としての外気通路14においては、仮に散水装置30からの散水がないとすると、この外気通路14内の圧力P1´と外部空間の圧力Poとの差P1´−Poは、図中2点鎖線で示すように、屋内空間102の場合と同様の圧力分布となる。
【0053】
しかしながら、この外気通路14内には散水装置30が配置されているので、この散水装置30から散水された水滴が自然落下することにより、外気通路14内には下降気流が生じる。このため、外気通路14内の圧力P1と外部空間の圧力Poとの差P1−Poは、その上部領域においては負の値となり、その下部領域においては正の値となる。このとき、外気通路14内における外気導入口12近傍のP1−Poの値をP1a(負圧)とし、外気通路14内における外気吹出口16近傍のP1−Poの値をP1b(正圧)とする。
【0054】
実際には、同図(a)に示すように、本実施形態に係る建物の換気システムにおいては、給気タワー10および排気タワー20が建物100に連結された構成となっている。
【0055】
したがって、給気タワー10の外気吹出口16においては、屋内空間102のP2a(負圧)が吸引圧として作用するだけでなく、給気タワー10の外気通路14のP1b(正圧)が吐出圧として作用することとなる。このため、外気吹出口16における屋内空間102への空気流入圧としては、両者を加算した圧力P1b+P2aが作用することとなる。そして、吐出圧P1bの分だけ屋内空間102の給気側における煙突効果が増進し、これにより屋内空間102の換気効率が高められることとなる。
【0056】
また、排気タワー20の内気流入口22においては、屋内空間102のP2b(正圧)が吐出圧として作用するだけでなく、排気タワー20の内気通路24のP3a(負圧)が吸引圧として作用することとなる。このため、内気流入口22における屋内空間102からの空気流出圧としては、両者を加算した圧力P2b+P3aが作用することとなる。そして、吸引圧P3aの分だけ屋内空間102の排気側における煙突効果が増進し、これにより屋内空間102の換気効率が高められることとなる。
【0057】
このように本実施形態によれば、建物100の屋内空間102の換気を行う換気システムにおいて、屋内空間102の換気効率を十分に高めることができる。
【0058】
特に本実施形態においては、散水装置30からの散水が下向きに行われるようになっているので、その際の散水圧力により、外気通路14内の下降気流の形成を促進することができる。そしてこれにより、その内気流入口22からの吐出圧P1bが増大することとなるので、その分だけ屋内空間102の排気側における煙突効果を増進させることができ、これにより屋内空間102の換気効率を一層高めることができる。
【0059】
しかも本実施形態においては、この散水装置30から散水された水滴が自然落下する際、その蒸発冷却作用により外気通路14内の空気を冷却することができる。そして、このようにして冷却された空気が屋内空間102の下部領域に流入することとなるので、これにより屋内空間102の冷却効果を高めることができる。
【0060】
また本実施形態においては、排気タワー20に、建物100で発生した廃熱(具体的には空調装置の室外機40からの排出熱)を、内気通路延長部24Eを介して内気通路24に供給するための廃熱供給口28が形成されているので、この廃熱供給口28から内気通路延長部24E内を上昇する熱により、内気通路24内における上昇気流の形成を促進することができ、その分だけさらに換気効率を高めることができる。
【0061】
さらに本実施形態においては、給気タワー10および排気タワー20が、建物100の外部空間に設置されているので、建物100が既設の建物であるような場合においても、本実施形態に係る建物の換気システムを適用することが容易に可能となる。
【0062】
その際、本実施形態においては、給気タワー10および排気タワー20が、それぞれ5箇所に設置されているので、屋内空間102の換気効率をより一層高めることができる。
【0063】
しかもその際、5つの給気タワー10は、建物100の南側に設置されているので、これら各給気タワー10に対して太陽光が広範囲にわたって照射されるようにすることができる。そして、この太陽光照射により、内気通路24内の空気が加熱されるので、内気通路24内における上昇気流の形成を促進することができる。
【0064】
また、これら各給気タワー10に配置された散水装置30は、その給水制御ユニット34が建物100の屋根130よりも高い位置に配置されており、その給気タワー10の周面壁から南側へ向けて露出した側壁面は太陽電池パネル34aとして構成されているので、給水制御のための駆動電力を太陽光により発電することが可能となる。
【0065】
上記実施形態においては、給気タワー10および排気タワー20が、それぞれ5箇所に設置されているものとして説明したが、4箇所以下または6箇所以上に設置された構成とすることももちろん可能である。
【0066】
上記実施形態においては、換気システムの適用対象が単一の大きい屋内空間102である場合について説明したが、複数の小さい屋内空間に仕切られているような場合においても、これら各屋内空間を換気システムの適用対象として設定すれば、上記実施形態の場合と同様の作用効果を得ることができる。
【0067】
次に、上記実施形態の変形例について説明する。
【0068】
まず、上記実施形態の第1変形例について説明する。
【0069】
図4は、本変形例に係る建物の換気システムを示す、図1と同様の図である。
【0070】
同図に示すように、本変形例に係る建物の換気システムにおいても、複数組の給気タワー210および排気タワー220を用いて、建物100の屋内空間102の換気を行う構成となっているが、本変形例においては、各組の給気タワー210および排気タワー220が、給気タワー210を下にして上下直列で配置された構成となっている。
【0071】
すなわち、排気タワー220は、内気流入口222、内気通路224および内気排出口226が、上記実施形態の排気タワー20の場合と同様に配置された構成となっているが、上記実施形態の排気タワー20において内気通路延長部24Eを構成している部分は存在せず、その部分に給気タワー210が組み込まれた構成となっている。
【0072】
その際、給気タワー210は、上記実施形態の給気タワー10と同様、外気導入口212、外気通路214および外気吹出口216が形成された構成となっているが、その外気通路214は、上記実施形態の給気タワー10における外気通路14よりも短くなっている。また、この外気通路214には、下向きに開口する散水ノズル232および給水制御ユニット234を備えた散水装置230が配置されているが、その配置が上記実施形態の散水装置30の場合と多少異なっている。
【0073】
本変形例の構成を採用した場合においても、屋内空間102の換気効率を十分に高めることができる。
【0074】
その際、本変形例の構成を採用することにより、上記実施形態における各給気タワー10の設置箇所および各排気タワー20の設置箇所に、給気タワー210および排気タワー220を1つのタワーとして設置することができるので、その設置効率を高めることができる。例えば、上記実施形態の場合と同様の設置環境であれば、10組の給気タワー210および排気タワー220を設置することができる。
【0075】
そして、このように給気タワー210および排気タワー220の設置効率を高めることができることにより、屋内空間102の換気効率をさらに高めることができる。
【0076】
次に、上記実施形態の第2変形例について説明する。
【0077】
図5は、本変形例に係る建物の換気システムを示す、図1と同様の図である。
【0078】
同図に示すように、本変形例に係る建物の換気システムにおいても、給気タワー310および排気タワー320を用いて、建物100の屋内空間102の換気を行う構成となっているが、本変形例においては、1つの排気タワー320に対して1対の給気タワー310A、310Bが設置されている。
【0079】
1対の給気タワー310A、310Bは、上記実施形態における各組の給気タワー10および排気タワー20の設置箇所に設置されている。
【0080】
これら各給気タワー310A、310Bは、上記実施形態の給気タワー10と同様、外気導入口312A、312B、外気通路314A、314Bおよび外気吹出口316A、316Bを備えており、その外気通路314A、314Bには、下向きに開口する散水ノズル32および給水制御ユニット34を備えた散水装置30が配置されている。
【0081】
その際、建物100の北側に設置された給気タワー310Aは、上記実施形態の給気タワー10と全く同様の構成を有している。一方、建物100の南側に設置された給気タワー310Bは、給気タワー310Aに対して、その外気吹出口316Bは左右対称の位置関係に設置されているが、その外気導入口312Bおよび散水装置30は平行移動の位置関係で設置されている。そしてこれにより、1対の給気タワー310A、310Bのいずれにおいても、その散水装置30における給水制御ユニット34の太陽電池パネル34aが南向きに配置されるようにしている。
【0082】
一方、排気タワー320は、建物100の外部空間ではなく、建物100における南北方向の中央位置において、屋内空間102から屋根130を突き抜けてその上方まで鉛直方向に延びるように設置されている。
【0083】
この排気タワー320には、屋内空間102の空気をその上部領域から該排気タワー320に流入させるための1対の内気流入口322と、これら各内気流入口322から流入した空気を上方へ導くための内気通路324と、この内気通路324に沿って上方へ導かれた空気を外部空間へ排出するための内気排出口326とが形成されている。
【0084】
その際、この排気タワー320は、円筒状ではなく矩形筒状に形成されている。そして、1対の内気排出口322は、排気タワー320の周面壁の南北2箇所に形成されている。
【0085】
この排気タワー320において、内気通路324よりも下方に位置する部分は、内気通路324と同一断面形状で排気タワー320の下端縁まで延びる内気通路延長部324Eとして形成されており、その下端部における周面壁の南北2箇所には1対の廃熱供給口328が形成されている。これら各廃熱供給口328には、建物100で使用される空調装置の室外機40が取り付けられており、その排気ファンからの排出熱を、内気通路延長部324Eを介して内気通路324に導くようになっている。
【0086】
この排気タワー320は、その上端縁が閉じており、その内気排出口326は、排気タワー320の上端部においてその周面壁の南北2箇所に形成されている。これら各内気排出口326には、ガラリ350が取り付けられている。また、排気タワー320の上端部の南北両側には、1対の断面「く」字状のカバー352が、各内気排出口326を所定間隔をおいて覆うようにして配置されている。そして、この排気タワー320の上方空間を流れる風により、各カバー352と排気タワー320の上端縁との隙間から、内気通路324内の空気を外部空間に吸い出させるようになっている。
【0087】
本変形例の構成を採用した場合においても、屋内空間102の換気効率を十分に高めることができる。
【0088】
その際、本変形例においては、1つの排気タワー320に対して1対の給気タワー310A、310Bが設置されているので、屋内空間102の換気効率をより一層高めることができる。
【0089】
なお、上記実施形態および各変形例において諸元として示した数値は一例にすぎず、これらを適宜異なる値に設定してもよいことはもちろんである。
【符号の説明】
【0090】
10、210、310A、310B 給気タワー
12、212、312A、312B 外気導入口
14、214、314A、314B 外気通路
16、216、316A、316B 外気吹出口
20、220、320 排気タワー
22、222、322 内気流入口
24、224、324 内気通路
24E、324E 内気通路延長部
26、226、326 内気排出口
28、328 廃熱供給口
30、230 散水装置
32、232 散水ノズル
34、234 給水制御ユニット
34a 太陽電池パネル
40 空調装置の室外機
100 建物
102 屋内空間
110 北側の側壁
120 南側の側壁
130 屋根
350 ガラリ
352 カバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の屋内空間の換気を行う換気システムにおいて、
上記屋内空間の下部領域に外気を供給するための給気タワーと、上記屋内空間の上部領域から空気を排出するための排気タワーと、を備えてなり、
上記給気タワーに、外気を導入するための外気導入口と、この外気導入口から導入された外気を下方へ導くための外気通路と、この外気通路に沿って下方へ導かれた外気を上記屋内空間の下部領域に吹き出すための外気吹出口とが形成されており、
上記排気タワーに、上記屋内空間の空気を該屋内空間の上部領域から該排気タワーに流入させるための内気流入口と、この内気流入口から流入した空気を上方へ導くための内気通路と、この内気通路に沿って上方へ導かれた空気を外部空間へ排出するための内気排出口とが形成されており、
上記給気タワーに、該給気タワーの外気通路内に散水をするための散水装置が配置されている、ことを特徴とする建物の換気システム。
【請求項2】
上記排気タワーに、上記建物で発生した廃熱を該排気タワーの内気通路に供給するための廃熱供給口が形成されている、ことを特徴とする請求項1記載の建物の換気システム。
【請求項3】
上記給気タワーおよび上記排気タワーが、上記給気タワーを下にして上下直列で配置されている、ことを特徴とする請求項1または2記載の建物の換気システム。
【請求項4】
上記給気タワーおよび上記排気タワーが、上記建物の外部空間に設置されている、ことを特徴とする請求項1〜3いずれか記載の建物の換気システム。
【請求項5】
上記給気タワーおよび上記排気タワーが、それぞれ複数箇所に設置されている、ことを特徴とする請求項1〜4いずれか記載の建物の換気システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−57807(P2012−57807A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−198252(P2010−198252)
【出願日】平成22年9月3日(2010.9.3)
【出願人】(000174943)三井住友建設株式会社 (346)
【Fターム(参考)】