説明

建物の空調システム

【課題】ドレン水を利用して空調用の室外機置場内の温度を下げて室外機の運転負荷を低減することにより、ドレン水の有効利用と電力の節約による省エネを実現した建物の空調システムを提供する。
【解決手段】各階の空調用の室外機置場1の外気と面する部分にルーバー3を設置する。ルーバー3は、は各階の同じ位置に設置する。ルーバー3の各羽板5の下端部にドレン水を貯留するための貯留部5aを形成し、その底部分に複数の排水孔5bを形成する。ルーバー3にドレン水を注ぎ込む。ドレン水が排水孔5bを介して羽板5,5間を上から下に順に水滴の形で滴り落ちるときのドレン水自体の水温とドレン水の気化熱を利用して外壁部分の外気を冷やし建物内に取り込む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は建物の空調システムに関し、主としてオフィスビルや商業ビル等のような多層階建物の空調(冷暖房含む)に利用され、空調時に排水されるドレン水の有効利用と電力の節約による省エネを図ることができる。
【背景技術】
【0002】
近年、省エネへの社会的な要請に伴い、オフィスビルや商業ビル等の多層階建物の空調方式として、室外機などの空調設備をたとえば各階ごとに配置して各階ごとまたは各部屋ごとに空調を行う個別分散方式の需要が拡大している。
【0003】
この方式では、空調用の室外機は一般に各階の壁際部分に設けられた専用の室外機置場に設置され、室外機置場の外気と面する部分には換気と建物の外観に配慮して目隠し用のルーバーが取り付けられている。
【0004】
ところで、室外機置場には何台もの室外機が設置され、これらが同時に長時間稼動し、その排熱のために室外機置場内の温度は高い。このため、室外機は高温下での運転となり、また、空調により除湿された水が大量のドレン水として排水される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−127746号公報
【特許文献2】特開2010−116741号公報
【特許文献3】特開2008−157600号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
高温下での室外機の運転は高温空気を吸い込むため、運転負荷が大きく電力の無駄な消費をもたらし、ランニングコストが嵩む等の課題があった。
【0007】
また、室外機置場内の高温空気は建物の外に高温のまま排気されるため、都市部のヒートアイランド現象の原因にもなっている。さらに、ドレン水は専用のドレンパイプを介して捨てられるだけで、特に利用されていない。
【0008】
本発明は、以上の課題を解決するためになされたもので、ドレン水の有効利用と、ドレン水を利用して室外機置場内の温度を下げることにより、室外機の運転負荷を低減して電力の節約による省エネを実現した建物の空調システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1記載の建物の空調システムは、外壁面に設置されるルーバーの羽板部分に空調機のドレン水を供給し、当該ドレン水の気化熱により外壁部分の空気を冷却し、建物内に取り込むようにしたことを特徴とするものである。
【0010】
本発明は、外気よりは冷たい(13〜15°C)ドレン水の水温とドレン水の気化熱を利用して外壁部分の空気を冷やして吸込み温度を下げ、低温の空気と熱交換することにより運転負荷を下げることができる。
【0011】
また、ドレン水によって冷やされた空気を建物内に取り込んで建物内の冷房に利用することも可能であり、特に建物の壁際付近の室内冷房を自然換気によって行うことにより、電力の無駄な消費をなくして省エネを図ることができる。
【0012】
なお、ルーバーの羽板部分にドレン水を供給するには、ドレン水の自然な流れを利用して無動力によって行うことができ、また、空調機がルーバーから離れた位置に設置されている場合などには簡易な動力ポンプを利用することにより、ドレン水をルーバーの羽板部分に確実にかつ安定して供給することができる。
【0013】
請求項2記載の建物の空調システムは、請求項1記載の建物の空調システムにおいて、前記ルーバーは、複数の空調機を収納した空調機置場の外壁面に設けられたルーバーであることを特徴とするものである。
【0014】
本発明は、特に温度の高い空調機置場内の冷房にドレン水を利用したものであり、ドレン水を利用して空調機置場内の温度を下げることにより、空調機の運転負荷を低減して電力の無駄な消費をなくし、省エネを図ることができる。
【0015】
請求項3記載の建物の空調システムは、請求項1または2記載の空調システムにおいて、前記羽板の表面に供給されたドレン水を貯留するための貯留部を形成してあることを特徴とするものである。ドレン水を貯留するための貯留部は、各羽板の下端部を真上に開口する溝状に加工する等の方法によって容易に形成することができる。
【0016】
請求項4記載の建物の空調システムは、請求項1または2記載の建物の空調システムにおいて、前記ドレン水を前記ルーバーの羽板の表面に水滴の形でたらして供給するようにしたことを特徴とするものである。
【0017】
ドレン水を水滴の形でたらして供給することで、羽板間を落下する際にドレン水が気化しやすく、ルーバーの各羽板間を通る空気を効率的に冷却することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、本来、何らかの手段で処理しなければならないドレン水をルーバー部分で気化させることで、ドレン水の処理と気化熱を利用した空調を同時に行うことができる。
【0019】
また、ルーバーの羽板部分へのドレン水の供給は、無動力で行うことができ、またルーバー部分でのドレン水の気化および冷たいドレン水の自然落下自体には実質的にコストがかからないため、非常に経済的である。
【0020】
ルーバー部分はもともと日差しの影響で悪影響を受けることがあるのと、空調機の排熱があるのに対し、冷たいドレン水で冷やされ、かつ加熱状態ではより気化が促進されるため、空調システムとして大きな相乗効果を得ることができる。
【0021】
さらに、複数の空調機を収納した空調機置場に適用した場合、空調機置場内より低温の空気を吸い込むことになるため、空調機の運転負荷が低減でき、電力の節約につながり、高い省エネ効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】各階に室外機置場が配置されたオフィスビルを示し、各階の室外機置場の位置を示す縦断面図である。
【図2】ルーバーの構造を示す各階の室外機置場の縦断面図である。
【図3】ルーバーの羽板を示し、(a)は羽板の軸方向断面図、(b)は羽板の軸直角方向断面図、(c)は羽板の一部拡大断面図である。
【図4】従来のルーバーの構造を示す各階の室外機置場の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1〜図3は、本発明の一実施形態を示し、図において、オフィスビル等の多層階建物の各階に各階専用の空調(冷暖房を含む)用の室外機置場1が配置され、各階の室外機置場1には各階専用の空調用の室外機2がそれぞれ設置されている。
【0024】
室外機置場1は、外気に接する壁際部分にそれぞれ配置され、また各階の室外機置場1は各階同じ位置に配置され、その外気と面する部分には換気と外観のために目隠し用のルーバー3がそれぞれ設置され、さらに、床部分には空調時に排水されるドレン水をルーバー3側に流すための排水路4が設置されている。
【0025】
ルーバー3は、複数の羽板5をカタカナ文字の「ミ」の字状に等間隔に隙間をあけ、横に平行に組み込むことにより構成されている。また、ルーバー3は各階同じ位置に鉛直方向に連続して設置されている。
【0026】
ルーバー3の各羽板5は横に細長い板状に形成され、その下端部にドレン水を貯留するための貯留部5aが形成されている。貯留部5aは真上に開口する溝状に形成され、かつ羽板5の長手方向に連続して形成されている。さらに、各羽板5の貯留部5aの底部分には複数の排水孔5bが羽板5の長手方向に所定間隔おきに形成されている。排水孔5bは上下に重ならないように互いにずれた位置に形成されている。
【0027】
このような構成のもと、各階の室外機置場1内では室外機2の稼働に伴い外との空気の循環が行われる。すなわち、室外機2で熱交換された高温の空気がルーバー3の上段部分の各羽板5,5間を介して室外機置場1の外に排気される。これに伴いルーバー3の下段部分の羽板5,5間を介して室外機置場1内に外気が取り込まれる。
【0028】
また、室外機2からはドレン水が排水され、ドレン水は排水路4をルーバー3側に流れて羽板5の貯留部5aに注がれる。貯留部5aに注がれたドレン水は排水孔5bを通じて下側の羽板5の貯留部5aに順に水滴の形で滴るように自然に落下して排水される。
【0029】
その際、室外機置場1内の高温空気は、ルーバー3の羽板5,5間を通過するときに冷たいドレン水自体の水温とドレン水の気化熱によって冷やされてから室外機置場1の外に排気されるため、室外機2の排熱による都市部のヒートアイランド現象を低減することができる。
【0030】
また、外気は、ルーバー3の羽板5,5間を通過するときに冷たいドレン水自体の水温とドレン水の気化熱によってさらに冷やされてから室外機置場1内に取り込まれるため、室外機2の空調負荷を低減することができ、電力の節約による省エネを図ることができる。さらに、ドレン水の量も気化により少なくなり処理が容易になる。
【0031】
なお、ルーバー3の各羽板5,5間にドレン水を水滴の形でたらして供給することで、ドレン水が羽板5,5間を自然落下する際に気化しやすく、羽板5,5間を通る空気を効率的に冷却することができる。
【0032】
また、図3(c)に図示するように、各排水孔5bの周縁部に貯留部5a内のドレン水量が一定量になるまでせき止めるための立上りリブ5cを設けることにより、貯留部5a内のドレン水が一度に流れ落ちることはなく、羽板5,5間を水滴の形でドレン水をたらして排水することができる。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明は、ドレン水の有効利用と電力の節約による省エネを図ることができる。
【符号の説明】
【0034】
1 空調用の室外機置場(空調機置場)
2 空調用の室外機(空調機)
3 ルーバー
4 排水路
5 羽板
5a 貯留部
5b 排水孔
5c 立上りリブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外壁面に設置されるルーバーの羽板部分に空調機のドレン水を供給し、当該ドレン水の気化熱により外壁部分の空気を冷却し、建物内に取り込むようにしたことを特徴とする建物の空調システム。
【請求項2】
請求項1記載の建物の空調システムにおいて、前記ルーバーは、複数の空調機を収納した空調機置場の外壁面に設けられたルーバーであることを特徴とする建物の空調システム。
【請求項3】
請求項1または2記載の空調システムにおいて、前記羽板の表面に供給されたドレン水を貯留するための貯留部を形成してあることを特徴とする建物の空調システム。
【請求項4】
請求項1または2記載の建物の空調システムにおいて、前記ドレン水を前記ルーバーの羽板の表面に水滴の形でたらして供給するようにしたことを特徴とする建物の空調システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−102470(P2012−102470A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−249592(P2010−249592)
【出願日】平成22年11月8日(2010.11.8)
【出願人】(592040826)住友不動産株式会社 (94)
【Fターム(参考)】