説明

建物の電気錠制御システム

【課題】電子キー等の携帯機を自動車と共用でき、しかも自動車の買い換えなどに伴うシステム変更にも好適に対処することができる建物の電気錠制御システムを提供する。
【解決手段】建物10の玄関ドア11には電気錠12が設けられ、ユーザにより所持される電子キー40との無線通信に応じて建物側コントローラ13が電気錠12の施解錠制御を実施する。自動車20には、通信手段を介して建物側コントローラ13との間で通信可能とされる車両側コントローラ26が搭載されている。電気錠12の解錠に際し、建物10側で受信した電子キー40のIDコードが通信手段を介して車両側コントローラ26に送信され、当該車両側コントローラ26においてIDコードの認証が行われる。その認証後、建物側コントローラ13では、車両側コントローラ26での認証結果に基づいて電気錠12の施解錠制御が実施される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の電気錠制御システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、無線機能を有する電子キーを用い、その電子キーを所持したユーザが自動車のドアに近づくだけでドアの施錠及び解錠を行うシステム(いわゆる電子キーシステム)が実用化されている。この電子キーシステムでは、電子キーが自動車に近づく際に、電子キーに内蔵された通信回路によってIDコード(識別情報)が車載コントローラに送信される。そして、車載コントローラにおいてIDコードの認証が行われ、そのIDコードが正しいことを条件に車両ドアの解錠などが行われる。
【0003】
上記のような電子キーシステムは、住宅等の建物においても適用が提案されており、電子キーを所持したユーザが玄関ドアに近づくことで玄関ドアの施錠及び解錠が自動で行われるようになっている。また、電子キーを自動車と建物とで共用する技術も各種提案されている(例えば、特許文献1参照)。電子キーを自動車と建物とで共用する場合、自動車側及び建物側にそれぞれ認証装置が設けられ、これら自動車側及び建物側の各認証装置において電子キーとの間で無線情報のやり取りが行われるとともに無線情報に含まれるIDコードの認証などが行われる。かかる場合、キー数が削減できることにより、電子キーを持ち歩いたり使用したりする際の利便性が向上する。また、電子キーの管理も簡素化できる。
【0004】
しかしながら、上記のように電子キーを自動車と建物とで共用する場合、自動車が買い換えられると、買い換え後の自動車における電子キーシステムがそのまま建物側で使用できないことがあると考えられる。例えば、自動車に関する電子キー技術が高度化している場合などにおいて、自動車側の認証装置と建物側の認証装置とで認証方法に相違が生じると、電子キーが共通に使用できなくなる。したがって、自動車の買い換えに伴い建物側のシステム交換など(認証装置の交換や認証アルゴリズムの更新処理など)が必要となり、システム交換の都度ユーザに煩雑な作業が要求される。また、コストが嵩むといった不都合も生じる。ユーザによっては頻繁に自動車が買い換えられることも想定され、その買い換えの都度建物側のシステムを交換することは実用上支障が多いと考えられる。
【0005】
なお、自動車の買い換えを想定して認証方法に幅を持たせておくことで対処することも考えられるが、将来における技術進歩は予測しがたく現実的な方法でないと思われる。
【特許文献1】特開平8−120992号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、電子キー等の携帯機を自動車と共用でき、しかも自動車の買い換えなどに伴うシステム変更にも好適に対処することができる建物の電気錠制御システムを提供することを主たる目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、上記課題を解決するのに有効な手段等につき、必要に応じて作用、効果等を示しつつ説明する。なお以下では、理解を容易にするため、発明の実施形態において対応する構成例を括弧書き等で適宜示すが、この括弧書き等で示した具体的構成に限定されるものではない。
【0008】
本発明の建物の電気錠制御システムは、出入り口ドア(玄関ドア11)に設けられた電気錠(電気錠12)と、その電気錠を施錠及び解錠する建物側装置(建物側コントローラ13)とを備えた建物(建物10)に適用され、本システムにおいては、ユーザにより所持される携帯機(電子キー40)との無線通信に応じて建物側装置による電気錠の施解錠制御が実施される。また、自動車に搭載された車載装置(車両側コントローラ26)が、通信手段(電力線18,31,62等)を介して建物側装置との間で通信可能となっている。そして、電気錠の解錠に際し、建物側で受信した携帯機の識別情報(IDコード)が通信手段を介して車載装置に送信され、当該車載装置において前記識別情報に基づく認証が行われる。その認証後、建物側装置において車載装置での認証結果に基づいて電気錠の施解錠制御が実施される。
【0009】
上記構成によれば、建物に設けられた電気錠の解錠に際し、建物側装置ではなく車載装置によって携帯機の認証が行われる。したがって、自動車の買い換え後において建物側装置の交換等が行われなくても、新たな車載装置によって新規な認証方法の適用が可能となる。つまり、自動車の買い換え後も、共用する携帯機による建物側の施解錠制御が実施できる。以上により、本発明の電気錠制御システムでは、電子キー等の携帯機を建物と自動車とで共用でき、しかも自動車の買い換えなどに伴うシステム変更にも好適に対処することができる。
【0010】
建物側装置は、電気錠の解錠に際し、携帯機から受信した識別情報があらかじめ登録された識別情報であるか否かを判定する。そして、登録された識別情報であればその認証を当該建物側装置自身で行い、登録された識別情報でなければ当該識別情報の認証を車載装置で行わせると良い。
【0011】
上記構成によれば、例えば、自動車の買い換えに伴い携帯機の識別情報が変更された場合において、その買い換え前は建物側装置で認証が行われ、買い換え後は車載装置で認証が行われる。したがって、自動車の買い換え後も買い換え前と同様に電気錠制御を実施できる。この場合、建物側装置に新たな識別情報の登録は不要であり、使い勝手の良いシステムが実現できる。
【0012】
建物側装置は、通信相手である自動車があらかじめ登録した登録車両であるか否かを判定し、登録車両である場合に車載装置による認証結果を有効とすると良い。これにより、登録車両でない車両を用いて不正に建物の電気錠が解錠されるといった不都合が回避できる。
【0013】
また本発明は、蓄電機能又は発電機能の少なくともいずれかを有する自動車(自動車20)に電気的に接続され、該自動車との間で電力授受を行うようにした建物に適用される。かかる場合において、建物と自動車とが電気的に接続された状態で前記通信手段による通信を可能とし、該通信手段を通じて識別情報や認証結果の送受信を行わせると良い。本構成によれば、例えば建物側での停電時において自動車側から建物側への電力供給が可能となる。また逆に、自動車側での残存電力の低下時(バッテリ電力低下時)において建物側から自動車側への電力供給が可能となる。また、建物と自動車とを電気的に接続した状態では、通信手段として通信回線を容易に開通でき、その通信回線によって識別情報や認証結果の送受信が可能となる。
【0014】
ここで、建物及び自動車を結ぶ電力線(電力線18,31,62)又は専用線を前記通信手段として用い、当該電力線又は専用線を通信媒体とする有線通信により識別情報や認証結果の送受信を行わせると良い。この場合、有線通信によって識別情報や認証結果の送受信を確実に行わせることができる。特に、通信手段として電力線を用いる構成によれば、電力授受のための電力線を通信回線として兼用でき、構成の簡素化が実現できる。
【0015】
また、建物及び自動車間の電力授受を管理する電力管理装置(建物側コントローラ13、又は充電装置32)を備えたシステムにおいて、電力管理装置は、電力授受の相手である自動車があらかじめ登録した登録車両であるか否かを判定し、登録車両である場合に電力線を開通させると良い。これにより、登録車両以外への電力供給が防止できる。また、電力線が開通されなければ、識別情報や認証結果の送受信が不可となるため、登録車両でない車両を用いて不正に建物の電気錠が解錠されるといった不都合が回避できる。
【0016】
また、建物側装置は、電力授受の相手である自動車があらかじめ登録した電力授受対象車両であるか否かを判定し、電力授受対象車両である場合に車載装置による認証結果を有効とすると良い。これにより、電力授受対象車両でない車両を用いて不正に建物の電気錠が解錠されるといった不都合が回避できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
[第1の実施形態]
以下、本発明を具体化した第1の実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態では、住宅等の建物と自動車とで共用できる電子キーを使って電子キーシステムを構築するものとしており、本システムでは、共通の電子キーによって建物及び自動車の施解錠が実施できるようになっている。図1は、本実施形態における電子キーシステムの概略を示す全体構成図である。
【0018】
図1に示すように、建物10には玄関ドア11が設けられており、この玄関ドア11を通じて人が出入りできるようになっている。玄関ドア11には、当該玄関ドア11の施錠及び解錠(ロック及びアンロック)を行う電気錠12が設けられている。電気錠12は、建物側コントローラ13(建物側装置)からの施解錠指令により施錠状態又は解錠状態とされる。建物側コントローラ13は、図示の如く建物10の屋内側に設けられる他、玄関ドア11に内蔵されるものであっても良い。また、玄関ドア11には、屋内側送受信機15と屋外側送受信機16とが設けられている。これら各送受信機15,16は、ユーザが所持する電子キー40との間で無線通信を行うものであり、その通信状況に応じて建物側コントローラ13による電気錠12の施解錠が行われる。
【0019】
建物10内には、AC100Vの交流電力を伝送するための電力線18が敷設されており、この電力線18を通じて建物内の各種電気設備に電力供給が行われるようになっている。また、建物10には、交流電力を建物外部に出力するための電力出力端子19が設けられている。
【0020】
一方、自動車20は、動力源としてエンジン21とモータ22とを有するハイブリッド自動車であり、バッテリ23の蓄電電力によってモータ22が駆動され、モータ22による車両走行が可能となっている。なお、モータ22の回生運転時においてバッテリ充電が行われる。
【0021】
自動車20には、車両ドアの施錠及び解錠(ロック及びアンロック)を行うためのドアロック装置25が設けられている。このドアロック装置25は、車両側コントローラ26(車載装置)からの施解錠指令により施錠状態又は解錠状態とされる。車両側コントローラ26は無線通信機能を有しており、電子キー40との間で無線通信が行われその通信状況に応じて車両側コントローラ26によるドアロック装置25の施解錠が行われる。
【0022】
ここで、建物10に隣接してガレージ30が設けられており、そのガレージ30内の所定位置に自動車20が駐車されることにより、建物10側から自動車20側への電力供給が可能となっている。詳しくは、ガレージ30内には充電装置32が設けられており、この充電装置32には、建物10側の電力出力端子19と電力線31とを介してAC100Vの交流電力が供給される。自動車20には電力端子27が設けられる一方、充電装置32には結合プラグ33が設けられている。そして、ユーザにより自動車20の電力端子27に結合プラグ33が差し込まれることによって、充電装置32から自動車20への電力供給が行われる。これにより、車載バッテリ23の電力低下時等において、建物10側からの電力供給によりバッテリ充電が行われる。
【0023】
ただし、充電装置32と自動車20との電気的な結合は、上記のようにユーザによる結合プラグ33の差込作業を要するもの以外に、自動車20がガレージ30内の特定位置に駐車された場合に、自動的に充電装置32と自動車20との電気的な結合が行われるものであっても良い。また、充電装置32を、ガレージ30内ではなく建物10の外壁近くに設ける構成であっても良い。
【0024】
建物10と自動車20とが電力線31により接続される場合において、上記とは逆に、自動車20側から建物10側に電力供給が行われる構成であっても良い。これにより、例えば、建物10側での停電時において建物10に対して非常時用電力の供給が可能となる。
【0025】
電子キー40は、ユーザが通常持ち歩くことができるサイズのキー型の携帯装置であり、電子キー40には、建物側コントローラ13や車両側コントローラ26との間で各種情報の送受信を行うための通信機能を有するキーコントローラ41が内蔵されている。なお、電子キー40の形態は任意であり、カード型としたり、リストバンド式として人体に装着できるものとしたりすることも可能である。
【0026】
電子キー40は、基本的に自動車20の付属キーであり、車両ドアロックの施解錠操作機能やエンジンの始動操作機能などを有するものである。そして、この自動車20の付属キーである電子キー40を併用して建物10のドアロックが可能となっている。
【0027】
次に、上記電子キーシステムの電気的な構成について図2を用いて詳細を説明する。
【0028】
建物10側の構成として、屋内側送受信機15は、屋内アンテナ部51と、この屋内アンテナ部51を用いて各種信号を送受信する送受信回路52とを備えている。より具体的には、屋内アンテナ部51は送信アンテナと受信アンテナとを有する構成となっている。送受信回路52は、建物側コントローラ13から出力されるリクエスト信号を所定周波数の電波に変調して屋内アンテナ部51の送信アンテナから発信するとともに、屋内アンテナ部51の受信アンテナにて受信した電子キー40からのIDコード信号をパルス信号に復調して建物側コントローラ13に対して出力する。このとき、リクエスト信号は、屋内側における玄関ドア11周辺の所定エリアに送信される。つまり、屋内側所定エリアにおいて、電子キー40はリクエスト信号を受信可能となっている。
【0029】
また、屋外側送受信機16は、屋外アンテナ部53と、この屋外アンテナ部53を用いて各種信号を送受信する送受信回路54とを備えている。より具体的には、屋外アンテナ部53は送信アンテナと受信アンテナとを有する構成となっている。送受信回路54は、建物側コントローラ13から出力されるリクエスト信号を所定周波数の電波に変調して屋外アンテナ部53の送信アンテナから発信するとともに、屋外アンテナ部53の受信アンテナにて受信した電子キー40からのIDコード信号をパルス信号に復調して建物側コントローラ13に対して出力する。このとき、リクエスト信号は、屋外側における玄関ドア11周辺の所定エリアに送信される。つまり、屋外側所定エリアにおいて、電子キー40はリクエスト信号を受信可能となっている。
【0030】
なお、屋内側/屋外側の各送受信機15,16において送受信回路52,54を各々個別に設けるのではなく、共通に設けることも可能である。
【0031】
建物側コントローラ13は、CPU、ROM、RAM等からなる周知のマイクロコンピュータを備えて構成されており、建物側コントローラ13には、リクエスト情報や電子キー40に対応するIDコード情報(識別情報)があらかじめ記憶されている。そして、建物側コントローラ13は、ドアロック監視システムが作動している間、リクエスト信号を屋内側送受信機15及び屋外側送受信機16の送受信回路52,54に常時出力する。また、建物側コントローラ13は、電子キー40から発信されたIDコード信号(電子キー40固有のID情報)を屋内側送受信機15及び屋外側送受信機16の送受信回路52,54を通じて取り込み、そのIDコード信号の認証を行う。そして、その認証結果に基づいて電気錠12を施錠又は解錠させる。ただし、本実施形態のシステムでは、ID認証を自動車20側に請け負わせる構成としており、建物側コントローラ13にID認証機能を持たせるかどうかは任意である(その詳細は後述する)。
【0032】
また、建物10には電力線通信(PLC:Power Line Communication)機能が付加されており、その具体的な構成として、建物側コントローラ13と電力線18とを結ぶ配線上にPLCモデム55が接続されている。PLCモデム55は電力線通信用アダプタであって、このPLCモデム55によって交流電力と通信用信号との重ね合わせや分離が行われる。
【0033】
一方、自動車20側の構成として、車両側コントローラ26は、CPU、ROM、RAM等からなる周知のマイクロコンピュータを備えて構成されており、同車両側コントローラ26には、リクエスト情報や電子キー40に対応するIDコード情報(識別情報)があらかじめ記憶されている。車両側コントローラ26は、電子キー40との無線通信を可能とする無線通信機能を有しており、定期的にリクエスト信号を送受信回路から出力する。また、車両側コントローラ26は、電子キー40から発信されたIDコード信号(電子キー40固有のID情報)を取り込み、そのIDコード信号の認証を行う。そして、その認証結果に基づいてドアロック装置25を施錠又は解錠させる。
【0034】
自動車20には、電力線31や充電装置32等を介して交流電力が供給されるようになっており、自動車20では、電力変換部(AC/DC変換部)61によって交流電力が直流電力に変換されるとともに、その直流電力によってバッテリ23が充電される。
【0035】
また、自動車20には、建物10と同様、電力線通信機能が付加されており、その具体的な構成として、車両側コントローラ26と電力線62とを結ぶ配線上にPLCモデム63が接続されている。PLCモデム63は電力線通信用アダプタであって、このPLCモデム63によって交流電力と通信用信号との重ね合わせや分離が行われる。
【0036】
また、電子キー40において、キーコントローラ41は、CPU、ROM、RAM等からなる周知のマイクロコンピュータを備えて構成されており、建物側コントローラ13や車両側コントローラ26との無線通信を可能とする無線通信機能を有している。キーコントローラ41には、当該電子キー固有のIDコードがあらかじめ記憶されており、キーコントローラ41は、建物10側又は自動車20側からの要求(リクエスト信号)に応じてIDコード信号を出力する。そして、この出力されたIDコード信号が送受信回路を通じて外部に発信される。
【0037】
ところで、自動車20は例えば数年で買い換えられ、買い換え後の自動車20ではIDコードの認証方法などが変更されることがある。自動車20の買い換えに伴い電子キー40も交換される。この場合、建物10側の認証方法と自動車20側の認証方法とに相違が生じると、建物10側で共通の電子キー40による施解錠制御が実施できなくなるため、従来既存の構成では建物10側でのシステム交換などが強いられていた。これに対して本実施形態では、電子キー40による電気錠12の解錠に際し、自動車20側において建物10側でのIDコード認証を行わせる構成を採用し、それにより自動車20の買い換え後にも共通の電子キー40を都合良く使えるようしている。
【0038】
また特に、建物側コントローラ13と車両側コントローラ26との間で開設される電力線通信を用い、その電力線通信により建物側コントローラ13から車両側コントローラ26に対してIDコード(電子キー40からの受信IDコード)を送信するとともに、その応答として車両側コントローラ26から建物側コントローラ13に対して前記IDコードに基づく認証結果を送信する。そして、建物側コントローラ13において、車両側コントローラ26での認証結果に基づいて電気錠12の解錠処理を実行する。
【0039】
電子キー40を用いた電気錠12の解錠手順を以下に説明する。なおここでは、ユーザが玄関ドア11から外出する場合について説明する。自動車20はガレージ30内の所定位置に駐車されるとともに、充電装置32に接続されて建物10側との電力線通信が可能となっているものとする。
【0040】
まずユーザが電子キー40を持って玄関ドア11に近づくと、屋内側送受信機15から発信されるリクエスト信号を電子キー40が受信し、同電子キー40がリクエスト信号に応答してIDコード信号を発信する。そして、建物側コントローラ13においてIDコード信号の受信が確認されると、そのIDコード信号が電力線通信によって車両側コントローラ26に送信される。車両側コントローラ26では、所定の認証アルゴリズムに従いIDコード信号の認証を行う。例えば、IDコード信号に含まれるIDコードと、あらかじめ登録されたIDコードとを比較し、一致するかどうかを判定する。
【0041】
その後、IDコード信号の認証結果が電力線通信によって建物側コントローラ13に送信される。そして、建物側コントローラ13では、認証結果に基づいて電気錠12の解錠処理を実施する。このとき、認証OK(IDコード一致)であれば、電気錠12が解錠され、認証NG(IDコード不一致)であれば、電気錠12が解錠されない。
【0042】
次に、本システムで実行される施解錠制御の処理手順を説明する。図3は、建物側コントローラ13による施解錠制御処理を示すフローチャートであり、本処理は建物側コントローラ13によって所定の時間周期で繰り返し実行される。
【0043】
図3において、まずステップS101では、今現在オートロックモードであるか否かを判定する。オートロックモードは、例えばユーザの設定により有効とされるモードであり、当該モード下において玄関ドア11のオートロック(自動施解錠)が適宜行われる。オートロックモードでなければそのまま本処理を終了し、オートロックモードであれば後続のステップS102に進む。ステップS102では、屋内側送受信機15及び屋外側送受信機16に対してリクエスト信号を出力する。
【0044】
その後、ステップS103では、上記のリクエスト信号に応答するIDコード信号を電子キー40から受信したか否かを判定する。IDコード信号を受信していなければステップS106に進み、受信していればステップS104に進む。
【0045】
ステップS104では、建物10と自動車20側との間で電力線による通信回線が開通しているか否かを判定する。このとき、電力線通信の開通判定手法として、例えば車両側コントローラ26との通信が可能な状態であるか否かを判定する。より具体的には、車両側コントローラ26から所定の微弱電流信号を出力する構成とし、建物側コントローラ13で微弱電流信号が受信できれば、電力線による通信回線が開通していると判定する。その他、充電装置32の結合プラグ33に、自動車20側の電力端子27との結合時にON信号(又はOFF信号でも可)を出力する結合検知スイッチを設けておき、当該スイッチからの出力信号に基づいて電力線通信の開通判定を行うことも可能である。
【0046】
そして、電力線通信が開通していなければそのまま本処理を終了し、電力線通信が開通していればステップS105に進む。ステップS105では、電子キー40から受信したIDコード信号を車両側コントローラ26に送信する。これにより、IDコード信号が電力線通信によって車両側コントローラ26に送信される。
【0047】
その後、ステップS106では、前記IDコード信号に応答する認証結果を車両側コントローラ26から受信したか否かを判定し、続くステップS107では、認証OKであるか否かを判定する。ステップS106,S107が共にYESの場合、ステップS108に進み、電気錠12に対して解錠駆動信号を出力する。これにより、電気錠12が解錠される。
【0048】
これに対し、ステップS106,S107のいずれかがNOの場合、すなわち車両側コントローラ26から認証結果を受信していない場合、又は受信した認証結果が認証OKである判定されなかった場合、電気錠12に対して解錠駆動信号が出力されない。電気錠12に対して解錠駆動信号が出力されない状態では、電気錠12が施錠状態で保持される。
【0049】
また、図4は、車両側コントローラ26によるID認証処理を示すフローチャートであり、本処理は車両側コントローラ26によって所定の時間周期で繰り返し実行される。
【0050】
図4において、まずステップS201では、電力線通信により建物側コントローラ13からIDコード信号を受信したか否かを判定する。IDコード信号を受信していなければそのまま本処理を終了し、IDコード信号を受信していればステップS202に進む。ステップS202では、IDコード信号の認証処理を実行し、続くステップS203では認証OKか認証NGかの判定を行う。
【0051】
その後、ステップS204では、認証結果(ここでは認証OKを表す信号)を建物側コントローラ13に送信する。
【0052】
以上詳述した本実施形態によれば、建物10側の電気錠12の解錠に際し、建物側コントローラ13ではなく車両側コントローラ26によって電子キー40のID認証を行うようにしたため、例えば、自動車20の買い換え後において建物側コントローラ13の交換等が行われなくても、新たな車両側コントローラ26によって新規な認証方法の適用が可能となる。自動車20が買い換えられた場合には、車載の電子キー技術が高度化していることも考えられるが、その際も建物10側のシステム変更なしで対応が可能となる。つまり、自動車20の買い換え後も、共用する電子キー40による建物10側の施解錠制御が実施できる。以上により、電子キー40を建物10と自動車20とで共用する電子キーシステムにおいて、自動車20の買い換えなどに伴うシステム変更にも好適に対処することができる。
【0053】
また、建物10と自動車20とを電力線31で接続してそれら両者間での電力授受を可能としたため、建物10側からの電力供給により自動車20のバッテリ充電などが可能となる。
【0054】
またこのとき、建物側コントローラ13と車両側コントローラ26とを電力線通信により相互に通信可能とし、その電力線通信によってIDコード情報や認証情報の送受信を行わせるようにしたため、電力授受のための電力線31等を通信回線として兼用でき、構成の簡素化が実現できる。
【0055】
[第2の実施形態]
上記システムでは、車両側コントローラ26によりID認証を行わせるため、建物側コントローラ13と車両側コントローラ26とが通信可能な状態で接続されていなければ、電子キー40を使った電気錠12の施解錠制御を行うことができない。つまり、自動車20が所定の駐車スペースに駐車されていない場合や、他のユーザにより自動車20が使用されている場合には電子キー40を使った電気錠12の施解錠制御を行うことができない。
【0056】
そこで、その対策として本実施形態では、建物側コントローラ13にもID認証機能を持たせておき、基本的には建物側コントローラ13にてID認証を行わせる。そして、自動車20の買い換えなどにより、建物側コントローラ13でID認証が不可能となった場合に、車両側コントローラ26でID認証を行わせることとする。なお自動車20の買い換え時でなくとも、自動車20側でIDコードが更新登録され、それに伴い建物側コントローラ13でID認証が不可能となった場合には、前記同様、車両側コントローラ26でID認証が行われる。
【0057】
図5は、本実施形態における施解錠制御処理を示すフローチャートであり、本処理は前記図3の処理に置き換えて実行される。なお図5において、前記図3と同様のステップについては同じステップ番号を付すとともにその説明を簡略にする。ステップS301,S302が追加処理部分である。
【0058】
図5では、オートロックモードである場合にリクエスト信号を出力し、その状態で電子キー40からのIDコード信号の受信判定を行う(ステップS101〜S103)。その後、ステップS301では、IDコード信号の認証処理を実行し、続くステップS302では認証OKか認証NGかの判定を行う。このとき、電子キー40から受信したIDコードが建物側コントローラ13にあらかじめ登録されたIDコードに一致するか否かを判定する。そして、認証OKである場合、そのままステップS108に進み、電気錠12に対して解錠駆動信号を出力する。これにより、電気錠12が解錠される。
【0059】
一方、ステップS302で認証NGであると判定した場合、ステップS104に進む。そして、既述のとおり建物10と自動車20側との間の電力線通信を用いてIDコード信号を車両側コントローラ26に送信する(ステップS104,S105)。また、車両側コントローラ26から受信した認証結果に基づいて電気錠12の解錠処理を実行する(ステップS106〜S108)。
【0060】
以上第2の実施形態によれば、本システムの初期状態(自動車20の買い換え前)において好適に施解錠制御が実施できるとともに、自動車20の買い換え後も買い換え前と同様に施解錠制御が実施できる。この場合、建物側コントローラ13に新たなIDコード登録は不要であり、使い勝手の良いシステムが実現できる。
【0061】
ちなみに、電子キー40による解錠操作が不可能な場合には、電子キー40のメカニカルキーをキー孔に差し込んで回し操作することで、電気錠12を解錠することが可能となっている。電子キー40の電池切れの場合も同様である。
【0062】
[他の実施形態]
本発明は上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施しても良い。
【0063】
建物10及び自動車20間の電力授受を管理する電力管理機能を建物側コントローラ13に付加する。そして、建物側コントローラ13が、電力授受の相手である自動車20があらかじめ登録した登録車両(電力授受対象車両)であるか否かを判定し、登録車両である場合に電力線31を開通させるようにしても良い。これにより、登録車両以外への電力供給が防止できる。また、電力線31が開通されなければ、識別情報や認証結果の送受信が不可となるため、登録車両でない車両の認証システムを用いて不正に建物10側の電気錠12が解錠されるといった不都合が回避できる。なお本構成のように登録車両の認定を行う場合には、自動車20の買い換えに伴い建物側コントローラ13等において登録車両の更新が行われる(以下同様、自動車の買い足し時も同様)。
【0064】
建物側コントローラ13は、電力授受の相手である自動車20があらかじめ登録した登録車両であるか否かを判定し、登録車両である場合に車両側コントローラ26による認証結果を有効にする構成としても良い。かかる構成においても、登録車両でない車両の認証システムを用いて不正に建物10の電気錠12が解錠されるといった不都合が回避できる。
【0065】
複数台の自動車の電子キーが使用できる構成であっても良い。この場合、建物側コントローラ13には、該当する複数台の自動車があらかじめ登録され、いずれかの登録車両である場合に電力線31が開通される。又は、いずれかの登録車両である場合に車両側コントローラ26による認証結果が有効とされる。
【0066】
充電装置32に電力管理用のコントローラを設け、そのコントローラに、上記した電力管理機能や登録車両の判定機能を付加しても良い。
【0067】
建物10及び自動車20間で電力線通信が行われる際、電力線31等を通じて送受信されるIDコード情報や認証情報を暗号化すると良い。これにより、電力線31等において、IDコード情報や認証情報が不正に傍受され、その結果、建物10側の電気錠12が不正に解錠されるといった不都合が回避できる。
【0068】
上記実施形態では、電力線を用いた電力線通信により建物側コントローラ13と車両側コントローラ26との間の通信を実現したが、これを変更する。例えば、電力線通信以外の有線通信手段を用いる。具体的には、専用の通信線(専用線)を用いる。又は、無線通信手段を用いる。この場合、電力線通信以外の有線通信手段や無線通信手段によって、建物10→自動車20へのIDコード情報の送信、自動車20→建物10への認証情報の送信がそれぞれ行われる。なお、建物側コントローラ13と車両側コントローラ26との間での無線通信を可能にすることにより、上記のように自動車20がガレージ30内の特定位置に駐車される場合でなくても(すなわち、電力線等の通信媒体による電気的な接続がなされない場合であっても)、両コントローラ間でIDコード情報や認証情報等の通信が可能となる。
【0069】
上記実施形態では、建物側装置として建物側コントローラ13を設け、この建物側コントローラ13がキー認証機能と電気錠12の施解錠制御機能とを有する構成としたが、この構成を変更する。例えば、建物側コントローラ13とは別にキー認証装置を設け、キー認証装置によって電子キー40からの受信ID情報の認証を行うとともに、建物側コントローラ13によって電気錠の施解錠制御を行う構成とする。本構成では、建物側コントローラ13とキー認証装置とにより「建物側装置」が構成される。なおこの場合、車両側コントローラ26との間の通信は建物側コントローラ13、キー認証装置のいずれで行われても良い。
【0070】
上記実施の形態では、自動車20としてハイブリッド車両を用いたが、これを他に変更することも可能である。例えば、自動車20として、モータを動力源とする電気自動車を用いる。又は、自動車20として、エンジンを動力源とする車両を用いる。この場合、適用される車両は任意であるが、蓄電機能又は発電機能の少なくともいずれかを有する自動車であれば、建物と自動車との間で電力の授受を行わせることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】実施形態における電子キーシステムの概略を示す全体構成図。
【図2】電子キーシステムの電気的な構成を示す図。
【図3】建物側コントローラにより実行される施解錠制御処理を示すフローチャート。
【図4】車両側コントローラにより実行されるID認証処理を示すフローチャート。
【図5】第2の実施形態における施解錠制御処理を示すフローチャート。
【符号の説明】
【0072】
10…建物、11…玄関ドア、12…電気錠、13…建物側コントローラ、18…電力線、20…自動車、23…バッテリ、26…車両側コントローラ、31…電力線、32…充電装置、40…電子キー、41…キーコントローラ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
出入り口ドアに設けられた電気錠と、その電気錠を施錠及び解錠する建物側装置とを備えた建物に適用され、ユーザにより所持される携帯機との無線通信に応じて前記建物側装置が電気錠の施解錠制御を実施する建物の電気錠制御システムにおいて、
自動車に搭載され、通信手段を介して前記建物側装置との間で通信可能とされる車載装置を備え、
前記電気錠の解錠に際し、建物側で受信した前記携帯機の識別情報を前記通信手段を介して車載装置に送信して当該車載装置が前記識別情報に基づく認証を行い、その認証後、前記建物側装置が前記車載装置での認証結果に基づいて電気錠の施解錠制御を実施することを特徴とする建物の電気錠制御システム。
【請求項2】
前記建物側装置は、前記電気錠の解錠に際し、前記携帯機から受信した識別情報があらかじめ登録された識別情報であるか否かを判定し、登録された識別情報であればその認証を当該建物側装置自身で行い、登録された識別情報でなければ当該識別情報の認証を前記車載装置で行わせることを特徴とする請求項1に記載の建物の電気錠制御システム。
【請求項3】
前記建物側装置は、通信相手である自動車があらかじめ登録した登録車両であるか否かを判定し、登録車両である場合に前記車載装置による認証結果を有効とすることを特徴とする請求項1又は2に記載の建物の電気錠制御システム。
【請求項4】
蓄電機能又は発電機能の少なくともいずれかを有する自動車に電気的に接続され、該自動車との間で電力授受を行うようにした建物に適用され、
前記建物と前記自動車とが電気的に接続された状態で前記通信手段による通信を可能とし、該通信手段を通じて前記識別情報や前記認証結果の送受信を行わせることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の建物の電気錠制御システム。
【請求項5】
建物及び自動車を結ぶ電力線又は専用線を前記通信手段として用い、当該電力線又は専用線を通信媒体とする有線通信により前記識別情報や前記認証結果の送受信を行わせることを特徴とする請求項4に記載の建物の電気錠制御システム。
【請求項6】
建物及び自動車間において電力線を通じて授受される電力の管理を行う電力管理装置を備えたシステムであって、
前記電力管理装置は、電力授受の相手である自動車があらかじめ登録した登録車両であるか否かを判定し、登録車両である場合に前記電力線を開通させることを特徴とする請求項5に記載の建物の電気錠制御システム。
【請求項7】
前記建物側装置は、電力授受の相手である自動車があらかじめ登録した電力授受対象車両であるか否かを判定し、電力授受対象車両である場合に前記車載装置による認証結果を有効とすることを特徴とする請求項4乃至6のいずれかに記載の建物の電気錠制御システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2008−14099(P2008−14099A)
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−188984(P2006−188984)
【出願日】平成18年7月10日(2006.7.10)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】