説明

建物及びその構築方法

【課題】下端部にガセットプレートが固定された柱部材を下方の梁の上方から下降させたときに、前記ガセットプレートが前記下方の梁に対して予め決められた位置に配置されるようにすることにより、前記柱部材と前記下方の梁とに対する前記ガセットプレートの位置を調整することなく前記ガセットプレートを予め決められた位置に配置できるようにすること。
【解決手段】建物は、間隔を置かれた第1柱部材及び第2柱部材と、これらの間にあって、端部に設けられ、該端部から上方へ伸びる複数の棒状部材を有する下方の梁と、前記第1柱部材の上の第3柱部材であって下端部に固定されたガセットプレートと、これに固定され、前記棒状部材を受け入れる複数の貫通穴を有する下端プレートとを有する第3柱部材と、前記第2柱部材の上の第4柱部材と、前記第3柱部材と前記第4柱部材との間の上方の梁と、該上方の梁と前記ガセットプレートとに取り付けられた斜材とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物及びその構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建物には、水平方向に間隔を置かれた2つの柱と、該柱の間に間隔を置いて設けられた上方の梁及び下方の梁と、該下方の梁の上に設けられた床スラブと、該床スラブの上に各柱に隣接して配置され、該柱と前記床スラブとに取り付けられたガセットプレートと、前記上方の梁と前記床スラブとの間に配置され、上端部が前記上方の梁に、下端部が前記ガセットプレートにそれぞれ取り付けられた斜材とを含むものがある(特許文献1参照)。地震時に前記上方の梁が水平力を受けたとき、前記斜材に軸力が作用する。このとき、前記斜材が前記軸力に抵抗するため、前記建物は比較的高い耐震性を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−270319号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記建物を構築するとき、まず、前記柱の間に前記下方の梁を設け、該下方の梁の上に床スラブを設ける。次に、前記床スラブの上に前記ガセットプレートを各柱に隣接して配置し、該柱と前記床スラブとに対する前記ガセットプレートの位置を調整し、前記ガセットプレートを前記柱と前記床スラブとに取り付ける。その後、前記柱の間に、前記下方の梁から間隔を置かれた前記上方の梁を設け、該上方の梁と前記床スラブとの間に前記斜材を配置し、該斜材の上端部を前記上方の梁に、下端部を前記ガセットプレートにそれぞれ取り付ける。しかし、前記柱と前記床スラブとに対する前記ガセットプレートの位置の調整に多くの手間と時間とを要する。
【0005】
本発明の目的は、下端部にガセットプレートが固定された柱部材を下方の梁の上方から下降させたときに、前記ガセットプレートが前記下方の梁に対して予め決められた位置に配置されるようにすることにより、前記柱部材と前記下方の梁とに対する前記ガセットプレートの位置を調整することなく前記ガセットプレートを予め決められた位置に配置できるようにし、これにより建物を効率的に構築できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、柱部材の下端部に固定されたガセットプレートに固定された下端プレートが、下方の梁の端部に設けられ、該端部から上方へ伸びる棒状部材をそれぞれが受け入れる複数の貫通穴を有する。これにより、前記柱部材を前記下方の梁の上方から下降させたときに、各貫通穴が前記棒状部材を受け入れて、前記ガセットプレートが前記下方の梁に対して予め決められた位置に配置されるようにする。これにより、前記柱部材と前記下方の梁とに対する前記ガセットプレートの位置を調整することなく前記ガセットプレートを予め決められた位置に配置できるようにする。
【0007】
本発明に係る建物は、水平方向に間隔を置かれた第1柱部材及び第2柱部材と、前記第1柱部材の上端部と前記第2柱部材の上端部との間に設けられ、一端部が前記第1柱部材の前記上端部に、他端部が前記第2柱部材の前記上端部にそれぞれ結合された下方の梁であって前記一端部に間隔を置いて設けられ、それぞれが前記一端部から上方へ伸びる複数の棒状部材を有する下方の梁と、前記第1柱部材の上に配置された第3柱部材であって下端部に固定されたガセットプレートと、該ガセットプレートの下端部に固定され、それぞれが前記棒状部材を受け入れる複数の貫通穴を有する下端プレートとを有する第3柱部材と、前記第2柱部材の上に配置された第4柱部材と、前記第3柱部材と前記第4柱部材との間に設けられ、前記下方の梁から間隔を置かれた上方の梁と、該上方の梁と前記下方の梁との間に配置され、上端部が前記上方の梁に、下端部が前記ガセットプレートにそれぞれ取り付けられた斜材とを含む。
【0008】
前記第3柱部材の前記下端部に固定された前記ガセットプレートに固定された前記下端プレートが、前記下方の梁の前記一端部に設けられ、該一端部から上方へ伸びる前記棒状部材を受け入れる前記貫通穴を有するため、前記第3柱部材を前記第1柱部材の上に配置するときに前記第3柱部材を前記下方の梁の上方から、前記貫通穴が前記棒状部材を受け入れるまで下降させたとき、前記ガセットプレートは、前記下方の梁に対して予め決められた位置に配置される。これにより、前記第3柱部材と前記下方の梁とに対する前記ガセットプレートの位置を調整することなく前記ガセットプレートを予め決められた位置に配置することができる。
【0009】
また、前記第3柱部材を前記下方の梁の上方から、前記貫通穴が前記棒状部材を受け入れるまで下降させたとき、前記ガセットプレートが前記下方の梁に対して予め決められた位置に配置されるとともに、前記第3柱部材が前記下方の梁に対して予め決められた位置に配置される。これにより、前記下方の梁に対する前記第3柱部材の位置を調整することなく前記第3柱部材を予め決められた位置に配置することができる。このため、前記建物を効率的に構築することができる。
【0010】
前記建物は、前記第3柱部材が、該第3柱部材の前記下端部の表面に取り付けられた表面プレートを有し、前記ガセットプレートが前記表面プレートに結合されているものとすることができる。
【0011】
前記建物は、前記第3柱部材が、該第3柱部材の前記下端部の内部に配置された、上下方向に伸びるH形鋼を有し、前記ガセットプレートが前記H形鋼に結合されているものとすることができる。
【0012】
前記建物は、前記第3柱部材が、該第3柱部材の前記下端部の内部に配置された内部プレートと、それぞれが前記内部プレートに取り付けられた複数のスタッドボルトとを有し、前記ガセットプレートが前記内部プレートと一体に形成されているものとすることができる。
【0013】
前記建物は、前記第3柱部材が、該第3柱部材の前記下端部に固定され、該下端部を取り巻く筒状体を有し、前記ガセットプレートが前記筒状体に結合されているものとすることができる。
【0014】
本発明に係る建物の構築方法は、水平方向に間隔を置かれた第1柱部材と第2柱部材との間に、一端部が前記第1柱部材の上端部に、他端部が前記第2柱部材の上端部にそれぞれ結合された下方の梁であって前記一端部に間隔を置いて設けられ、それぞれが前記一端部から上方へ伸びる複数の棒状部材を有する下方の梁を設けること、下端部に固定されたガセットプレートと、該ガセットプレートの下端部に固定され、複数の貫通穴を有する下端プレートとを有する第3柱部材を、各貫通穴が前記棒状部材を受け入れるように前記第1柱部材の上に配置すること、前記第2柱部材の上に第4柱部材を配置すること、前記第3柱部材と前記第4柱部材との間に、前記下方の梁から間隔を置かれた上方の梁を設けること、該上方の梁と前記下方の梁との間に斜材を配置すること、該斜材の上端部を前記上方の梁に、下端部を前記ガセットプレートにそれぞれ取り付けることを含む。
【0015】
本発明に係る建物の構築方法に用いる柱部材は、下端部に固定されたガセットプレートと、該ガセットプレートの下端部に固定され、複数の貫通穴を有する下端プレートとを有する。
【0016】
本発明に係る他の建物は、水平方向に間隔を置かれた第1柱部材及び第2柱部材と、前記第1柱部材と前記第2柱部材との間に設けられた下方の梁と、前記第1柱部材の上に配置された第3柱部材であって上端部に固定されたガセットプレートと、該ガセットプレートの上端部に固定され、複数の貫通穴を有する上端プレートとを有する第3柱部材と、前記第2柱部材の上に配置された第4柱部材と、前記第3柱部材の上端部と前記第4柱部材の上端部との間に配置された上方の梁であって端部に間隔を置いて設けられ、それぞれが前記端部から下方へ伸び、前記貫通穴に受け入れられた複数の棒状部材を有する上方の梁と、該上方の梁と前記下方の梁との間に配置され、上端部が前記ガセットプレートに、下端部が前記下方の梁にそれぞれ取り付けられた斜材とを含む。
【0017】
前記第3柱部材の前記上端部に固定された前記ガセットプレートに固定された前記上端プレートが、前記上方の梁の前記端部に設けられ、該端部から下方へ伸びる前記棒状部材を受け入れる前記貫通穴を有するため、前記上方の梁を前記第3柱部材と前記第4柱部材との間に配置するときに前記上方の梁を前記第3柱部材及び前記第4柱部材の上方から、前記棒状部材が前記貫通穴に受け入れられるまで下降させたとき、前記上方の梁の前記端部は、前記ガセットプレートに対して予め決められた位置に配置される。これにより、前記第3柱部材と前記上方の梁とに対する前記ガセットプレートの位置を調整することなく前記ガセットプレートを予め決められた位置に配置することができる。
【0018】
また、前記上方の梁を前記第3柱部材及び前記第4柱部材の上方から、前記棒状部材が前記貫通穴に受け入れられるまで下降させたとき、前記上方の梁の前記端部が前記ガセットプレートに対して予め決められた位置に配置されるとともに、前記上方の梁の前記端部が前記第3柱部材に対して予め決められた位置に配置される。これにより、前記第3柱部材に対する前記上方の梁の前記端部の位置を調整することなく前記上方の梁の前記端部を予め決められた位置に配置することができる。このため、前記建物を効率的に構築することができる。
【0019】
本発明に係る他の建物の構築方法は、水平方向に間隔を置かれた第1柱部材と第2柱部材との間に下方の梁を設けること、上端部に固定されたガセットプレートと、該第1ガセットプレートの上端部に固定され、複数の貫通穴を有する上端プレートとを有する第3柱部材を前記第1柱部材の上に配置すること、前記第2柱部材の上に第4柱部材を配置すること、端部に間隔を置いて設けられ、それぞれが前記端部から下方へ伸びる複数の棒状部材を有する上方の梁を、各棒状部材が前記貫通穴に受け入れられるように、前記第3柱部材と前記第4柱部材との間に配置すること、前記上方の梁と前記下方の梁との間に斜材を配置すること、該斜材の上端部を前記ガセットプレートに、下端部を前記下方の梁にそれぞれ取り付けることを含む。
【0020】
本発明に係る他の建物の構築方法に用いる柱部材は、上端部に固定されたガセットプレートと、該ガセットプレートの上端部に固定され、複数の貫通穴を有する上端プレートとを有する。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る建物によれば、前記第3柱部材の前記下端部に固定された前記ガセットプレートに固定された前記下端プレートが、前記下方の梁の前記一端部に設けられ、該一端部から上方へ伸びる前記棒状部材を受け入れる前記貫通穴を有するため、前記第3柱部材を前記下方の梁の上方から、前記貫通穴が前記棒状部材を受け入れるまで下降させたとき、前記ガセットプレートは、前記下方の梁に対して予め決められた位置に配置される。これにより、前記第3柱部材と前記下方の梁とに対する前記ガセットプレートの位置を調整することなく前記ガセットプレートを予め決められた位置に配置することができ、前記建物を効率的に構築することができる。
【0022】
本発明に係る他の建物によれば、前記第3柱部材の前記上端部に固定された前記ガセットプレートに固定された前記上端プレートが、前記上方の梁の前記端部に設けられ、該端部から下方へ伸びる前記棒状部材を受け入れる前記貫通穴を有するため、前記上方の梁を前記第3柱部材の上方から、前記棒状部材が前記貫通穴に受け入れられるまで下降させたとき、前記上方の梁の前記端部は、前記ガセットプレートに対して予め決められた位置に配置される。これにより、前記第3柱部材と前記上方の梁とに対する前記ガセットプレートの位置を調整することなく前記ガセットプレートを予め決められた位置に配置することができ、前記建物を効率的に構築することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第1実施例に係る建物の正面図。
【図2】第1斜材の下端部が第1ガセットプレートに取り付けられていない状態における、本発明の第1実施例に係る建物の拡大図。
【図3】図2の線3における建物の断面図。
【図4】第1斜材の下端部が第1ガセットプレートに取り付けられている状態における、本発明の第1実施例に係る建物の拡大図。
【図5】第1柱部材と第2柱部材との間に下方の梁を設けたことを示す図。
【図6】第1柱部材の上に第3柱部材を配置していることを示す図。
【図7】第2柱部材の上に第4柱部材を配置したことを示す図。
【図8】第3柱部材と第4柱部材との間に上方の梁を設けたことを示す図。
【図9】第1斜材の下端部が第1ガセットプレートに取り付けられていない状態における、本発明の第2実施例に係る建物の拡大図。
【図10】図9の線10における建物の断面図。
【図11】第1斜材の下端部が第1ガセットプレートに取り付けられていない状態における、本発明の第3実施例に係る建物の拡大図。
【図12】図11の線12における建物の断面図。
【図13】第1斜材の下端部が第1ガセットプレートに取り付けられていない状態における、本発明の第4実施例に係る建物の拡大図。
【図14】図13の線14における建物の断面図。
【図15】本発明の第5実施例に係る建物の正面図。
【図16】本発明の第6実施例に係る建物の正面図。
【図17】第3柱部材と第4柱部材との間に上方の梁を配置していることを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1に示すように、建物10が構築されている。建物10は、水平方向に間隔を置かれた第1柱部材12及び第2柱部材14と、第1柱部材12の上端部16と第2柱部材14の上端部18との間に設けられた下方の梁20と、第1柱部材12の上に配置された第3柱部材22と、第2柱部材14の上に配置された第4柱部材24と、第3柱部材22と第4柱部材24との間に設けられ、下方の梁20から間隔を置かれた上方の梁26とを含む。下方の梁20に下方の床スラブ28が支持されており、上方の梁26に上方の床スラブ30が支持されている。第1柱部材12、第2柱部材14、第3柱部材22、第4柱部材24、下方の梁20、上方の梁26、下方の床スラブ28及び上方の床スラブ30のそれぞれは鉄筋コンクリートからなる。
【0025】
下方の梁20の一端部32は第1柱部材12の上端部16に結合されており、下方の梁20の他端部34は第2柱部材14の上端部18に結合されている。下方の梁20は、該下方の梁の一端部32に間隔を置いて設けられ、それぞれが一端部32から上方へ伸びる複数の棒状部材(第1棒状部材)36と、下方の梁20の他端部34に間隔を置いて設けられ、それぞれが他端部34から上方へ伸びる複数の第2棒状部材38とを有する。第1棒状部材36及び第2棒状部材38のそれぞれはボルトである。
【0026】
第3柱部材22は、該第3柱部材の下端部40に固定されたガセットプレート(第1ガセットプレート)42と、該第1ガセットプレートの下端部に固定された下端プレート(第1下端プレート)44とを有し、該第1下端プレートは、それぞれが第1棒状部材36を受け入れる複数の貫通穴(第1貫通穴)46を有する。第1下端プレート44は、該第1下端プレートの上において第1棒状部材36に螺合された第1ナット48により下方の梁20の一端部32に取り付けられている。
【0027】
第4柱部材24は、該第4柱部材の下端部50に固定された第2ガセットプレート52と、該第2ガセットプレートの下端部に固定された第2下端プレート54とを有し、該第2下端プレートは、それぞれが第2棒状部材38を受け入れる複数の第2貫通穴56を有する。第2下端プレート54は、該第2下端プレートの上において第2棒状部材38に螺合された第2ナット58により下方の梁20の他端部34に取り付けられている。
【0028】
建物10は、上方の梁26と下方の梁20との間に配置され、上端部60が上方の梁26に取り付けられ、下端部62が第1ガセットプレート42に取り付けられた斜材(第1斜材)64と、上端部66が上方の梁26に取り付けられ、下端部68が第2ガセットプレート52に取り付けられた第2斜材70とを含む。上方の梁26は、該上方の梁の中央部72に固定された第3ガセットプレート74を有する。第1斜材64の上端部60及び第2斜材70の上端部66のそれぞれは第3ガセットプレート74に接続されている。
【0029】
第1斜材64及び第2斜材70のそれぞれはダンパーからなる。前記ダンパーは、内部にモルタルが充填された鋼管64a、70aと、該鋼管の内部を経て伸びる、低降伏点鋼からなる芯材64b、70bとからなる(例えば、商品名「アンボンドブレース」 新日鉄エンジニアリング株式会社製)。芯材64b、70bは、前記モルタルに定着しておらず、軸力を受けて変形する。これにより、前記ダンパーは、地震時に建物10に作用する振動エネルギーを吸収する。鋼管64a、70aは芯材64b、70bの座屈を防止する。このため、芯材64b、70bは、圧縮力を受けたとき、座屈することなく変形する。前記ダンパーは、内部に前記モルタルが充填された鋼管64a、70aと、該鋼管の内部を経て伸びる芯材64b、70bとからなる上記の例に代え、オイルダンパーのような他のダンパーでもよい。
【0030】
図2、3に示すように、第3柱部材22は、該第3柱部材の下端部40の表面に取り付けられた表面プレート76を有し、第1ガセットプレート42は表面プレート76に結合されている。このようにして第1ガセットプレート42は第3柱部材22の下端部40に固定されている。第3柱部材22は、該第3柱部材の下端部40に間隔を置いて設けられ、それぞれが下端部40から水平方向に伸びる複数のボルト78を有し、表面プレート76は、それぞれがボルト78を受け入れる複数の貫通穴80を有する。表面プレート76は、該表面プレートの一方の側において第3柱部材の下端部40の前記表面に隣接しており、該表面への表面プレート76の取付けは、該表面プレートの他方の側においてボルト78に螺合されたナット82によりなされている。
【0031】
図4に示すように、第1ガセットプレート42への第1斜材64の下端部62の取付けは、それぞれの一端部が第1斜材64の下端部62に、他端部が第1ガセットプレート42にそれぞれ隣接して配置された複数の添接材84と、各添接材の前記一端部及び第1斜材64の下端部62を貫く、これらの一方の側に頭部が配置されたボルト86と、これらの他方の側においてボルト86に螺合されたナット(図示せず)と、各添接材84の前記他端部及び第1ガセットプレート42を貫く、これらの一方の側に頭部が配置されたボルト88と、これらの他方の側においてボルト88に螺合されたナット(図示せず)とによりなされている。これに代え、第1ガセットプレート42への第1斜材64の下端部62の取付けは、第1斜材64の下端部62を第1ガセットプレート42に溶接することによりなされていてもよい。
【0032】
建物10を構築するとき、まず、図5に示すように、水平方向に間隔を置かれた第1柱部材12と第2柱部材14との間に、一端部32が第1柱部材12の上端部16に、他端部34が第2柱部材14の上端部18にそれぞれ結合された下方の梁20であって一端部32に間隔を置いて設けられ、それぞれが一端部32から上方へ伸びる複数の第1棒状部材36と、他端部34に間隔を置いて設けられ、それぞれが他端部34から上方へ伸びる複数の第2棒状部材38とを有する下方の梁20を設ける。
【0033】
このとき、第1棒状部材36と第2棒状部材38とを有する下方の梁20を予め工場で製作しておき、その後、下方の梁20を第1柱部材12の上端部16と第2柱部材14の上端部18との間に配置し、下方の梁20の一端部32を第1柱部材12の上端部16に、他端部34を第2柱部材14の上端部18にそれぞれ結合する。下方の梁20を工場で製作する上記の例に代え、下方の梁20を、建物10を構築する現場で形成してもよい。すなわち、第1柱部材12と第2柱部材14との間に、第1棒状部材36と第2棒状部材38とを有する下方の梁20を形成してもよい。
【0034】
第1柱部材12と第2柱部材14との間に下方の梁20を設けた後、図6に示すように、下端部40に固定された第1ガセットプレート42と、該第1ガセットプレートの下端部に固定され、複数の第1貫通穴46を有する第1下端プレート44とを有する第3柱部材22を、各第1貫通穴46が第1棒状部材36を受け入れるように第1柱部材12の上に配置する。このとき、第3柱部材22を下方の梁20の上方から、第1貫通穴46が第1棒状部材36を受け入れるまで下降させる。その後、第1下端プレート44の上方において第1棒状部材36に第1ナット48を螺合する。
【0035】
その後、図7に示すように、下端部50に固定された第2ガセットプレート52と、該第2ガセットプレートの下端部に固定され、複数の第2貫通穴56を有する第2下端プレート54とを有する第4柱部材24を、各第2貫通穴56が第2棒状部材38を受け入れるように第2柱部材14の上に配置する。このとき、第4柱部材24を下方の梁20の上方から、第2貫通穴56が第2棒状部材38を受け入れるまで下降させる。その後、第2下端プレート54の上方において第2棒状部材38に第2ナット58を螺合する。
【0036】
第2柱部材14の上への第4柱部材24の配置を第1柱部材12の上への第3柱部材22の配置後に行う上記の例に代え、第2柱部材14の上への第4柱部材24の配置を、第1柱部材12と第2柱部材14との間に下方の梁20を設けた後、第1柱部材12の上への第3柱部材22の配置前に行ってもよいし、第1柱部材12の上への第3柱部材22の配置と同時に行ってもよい。第3柱部材22及び第4柱部材24のそれぞれは、工場で製作されたものである。
【0037】
第1柱部材12の上への第3柱部材22の配置と第2柱部材14の上への第4柱部材24の配置とを行った後、図8に示すように、第3柱部材22と第4柱部材24との間に、下方の梁20から間隔を置かれた上方の梁26であって中央部72に固定された第3ガセットプレート74を有する上方の梁26を設ける。その後、上方の梁26と下方の梁20との間に第1斜材64を配置し、該第1斜材の上端部60を上方の梁26に、下端部62を第1ガセットプレート42にそれぞれ取り付ける。その後、上方の梁26と下方の梁20との間に第2斜材70を配置し、該第2斜材の上端部66を上方の梁26に、下端部68を第2ガセットプレート52にそれぞれ取り付ける(図1)。上方の梁26への第1斜材64の上端部60の取付けは、第1斜材64の上端部60を第3ガセットプレート74に接続することにより行い、上方の梁26への第2斜材70の上端部66の取付けは、第2斜材70の上端部66を第3ガセットプレート74に接続することにより行う。
【0038】
上方の梁26と第2ガセットプレート52とへの第2斜材70の取付けを上方の梁26と第1ガセットプレート42とへの第1斜材64の取付け後に行う上記の例に代え、上方の梁26と第2ガセットプレート52とへの第2斜材70の取付けを上方の梁26と第1ガセットプレート42とへの第1斜材64の取付け前に行ってもよいし、上方の梁26と第1ガセットプレート42とへの第1斜材64の取付けと同時に行ってもよい。
【0039】
第3柱部材22の下端部40に固定された第1ガセットプレート42に固定された第1下端プレート44が、下方の梁20の一端部32に設けられ、該一端部から上方へ伸びる第1棒状部材36をそれぞれが受け入れる複数の第1貫通穴46を有するため、第3柱部材22を下方の梁20の上方から、各第1貫通穴46が第1棒状部材36を受け入れるまで下降させたときに、第1ガセットプレート42が、下方の梁20に対して予め決められた位置に配置されるとともに、第3柱部材22が、下方の梁20に対して予め決められた位置に配置される。これにより、第3柱部材22と下方の梁とに対する第1ガセットプレート42の位置の調整を要することなく第1ガセットプレート42を予め決められた位置に配置することができ、かつ、下方の梁20に対する第3柱部材22の位置の調整を要することなく第3柱部材22を予め決められた位置に配置することができる。
【0040】
また、第4柱部材24の下端部50に固定された第2ガセットプレート52に固定された第2下端プレート54が、下方の梁20の他端部34に設けられ、該他端部から上方へ伸びる第2棒状部材38をそれぞれが受け入れる複数の第2貫通穴56を有するため、第4柱部材24を下方の梁20の上方から、各第2貫通穴56が第2棒状部材38を受け入れるまで下降させたときに、第2ガセットプレート52が、下方の梁20に対して予め決められた位置に配置されるとともに、第4柱部材24が、下方の梁20に対して予め決められた位置に配置される。これにより、第4柱部材24と下方の梁20とに対する第2ガセットプレート52の位置の調整を要することなく第2ガセットプレート52を予め決められた位置に配置することができ、かつ、下方の梁20に対する第4柱部材24の位置の調整を要することなく第4柱部材24を予め決められた位置に配置することができる。このため、建物10を効率的に構築することができる。
【0041】
地震時に上方の梁26が水平力を受けて振動したとき、上方の梁26に振動エネルギーが作用する。上方の梁26が第3柱部材22から第4柱部材24に向けて(図1における左向き)の水平力を受けたとき、第1斜材64は上方の梁26及び第1ガセットプレート42から引張力を受けて変形し、第2斜材70は上方の梁26及び第2ガセットプレート52から圧縮力を受けて変形する。他方、上方の梁26が第4柱部材24から第3柱部材22に向けて(図1における右向き)の水平力を受けたとき、第1斜材64は上方の梁26及び第1ガセットプレート42から圧縮力を受けて変形し、第2斜材70は上方の梁26及び第2ガセットプレート52から引張力を受けて変形する。このとき、第1斜材64の芯材64b及び第2斜材70の芯材70bのそれぞれは降伏し、これにより前記振動エネルギーは消費され、建物10の振動が小さくなる。
【0042】
第1ガセットプレート42に固定された第1下端プレート44が、第1棒状部材36に螺合された第1ナット48により下方の梁20の一端部32に取り付けられているため、地震時に第1ガセットプレート42が第1斜材64から受ける引張力を、第3柱部材22のみならず、下方の梁20にも負担させることができる。これにより、地震時に第1斜材64は比較的大きい引張力を受けることができ、前記振動エネルギーを効果的に低減させることができる。
【0043】
なお、地震時に第1ガセットプレート42が第1斜材64から受ける引張力が比較的小さい場合、前記引張力を、下方の梁20に負担させることなく、第3柱部材22のみに負担させてもよい。この場合、第1下端プレート44が、第1棒状部材36に螺合された第1ナット48により下方の梁20の一端部32に取り付けられている上記の例に代え、第1棒状部材36に第1ナット48が螺合されておらず、第1下端プレート44が下方の梁20の一端部32に取り付けられていなくてもよい。この場合、第1棒状部材36は、ボルトである上記の例に代え、外面に雄ねじが形成されていない棒鋼、鉄筋等でもよい。
【0044】
第1斜材64及び第2斜材70のそれぞれは、ダンパーである上記の例に代え、普通鋼からなる、H形鋼、溝形鋼等のような部材でもよいし、内部にモルタルが充填された鋼管と、該鋼管の内部を経て伸びる、普通鋼からなる芯材とからなるものでもよい。この場合、第1斜材64及び第2斜材70のそれぞれは、地震時に引張力又は圧縮力を受けたとき、これらの力に抵抗する。これにより建物10は比較的高い耐震性を有する。
【0045】
第1ガセットプレート42、第1下端プレート44、第2ガセットプレート52、第2下端プレート54、第3ガセットプレート74及び表面プレート76のそれぞれは鋼製である。第1柱部材12、第2柱部材14、第3柱部材22、第4柱部材24、上方の梁26及び下方の梁20のそれぞれは、鉄筋コンクリートからなる上記の例に代え、鋼製でもよい。
【0046】
第1ガセットプレート42が、第3柱部材22の下端部40の表面に取り付けられた表面プレート76を有し、第1ガセットプレート42が表面プレート76に結合されている図1に示した例に代え、図9、10に示す例では、第3柱部材22は、該第3柱部材の下端部40の内部に配置された、上下方向に伸びるH形鋼84を有し、第1ガセットプレート42はH形鋼84に結合されている。このようにして第1ガセットプレート42は第3柱部材22の下端部40に固定されている。
【0047】
H形鋼84は、相対する2つのフランジ86と、該フランジの間のウェブ88とを有する。第1ガセットプレート42は、H形鋼84の一方のフランジ86に結合されており、該フランジに垂直である。地震時にH形鋼84が第1ガセットプレート42から引張力又は圧縮力を受けたとき、H形鋼84の各フランジ86はこれらの力に抵抗する。これにより、第1ガセットプレート42は第1斜材64からより大きい引張力又は圧縮力を受けることができ、地震時に第1斜材64はより大きい引張力又は圧縮力を受けることができる。
【0048】
H形鋼84は第3柱部材22の下端部40から下方へ伸び、H形鋼84の下端部90は第1柱部材12に受け入れられている。このため、地震時に第1ガセットプレート42が第1斜材64から引張力又は圧縮力を受けたときに第3柱部材22が第1柱部材12に対してずれるのを防止することができる。また、地震時に第1ガセットプレート42が第1斜材64から受ける引張力又は圧縮力を、第3柱部材22のみならず、第1柱部材12にも負担させることができ、第1ガセットプレート42は第1斜材64からより大きい引張力又は圧縮力を受けることができる。H形鋼84の下端部90は、第3柱部材22の下端部40から下方へ伸び、第1柱部材12に受け入れられている上記の例に代え、第3柱部材22の下端部40の下縁部分と同じ高さに位置し、第1柱部材12に受け入れられていなくてもよい。
【0049】
図11、12に示す例では、第3柱部材22は、該第3柱部材の下端部40の内部に配置された、上下方向に伸びるH形鋼84を有する図9に示した例に代え、該第3柱部材の下端部40の内部に配置された内部プレート92と、それぞれが内部プレート92に取り付けられた複数のスタッドボルト94とを有する。第1ガセットプレート42は内部プレート92と一体に形成されている。このようにして第1ガセットプレート42は第3柱部材22の下端部40に固定されている。
【0050】
第1ガセットプレート42は内部プレート92と同一平面上にある。地震時に内部プレート92が第1ガセットプレート42から引張力又は圧縮力を受けたとき、各スタッドボルト94は前記引張力又は前記圧縮力に抵抗する。このため、第1ガセットプレート42は第1斜材64から比較的大きい引張力又は圧縮力を受けることができる。図11に示した例では、内部プレート92の下端部が第3柱部材22の下端部40の下縁部分と同じ高さに位置するが、これに代え、内部プレート92が第3柱部材22の下端部40から下方へ伸び、内部プレート92の下端部が第1柱部材12に受け入れられていてもよい。この場合、第3柱部材22の下端部40の内部及び第1柱部材12の内部の双方において内部プレート92に複数のスタッドボルト94が取り付けられている。
【0051】
図13、14に示す例では、第3柱部材22は、該第3柱部材の下端部40の内部に配置された内部プレート92と、それぞれが内部プレート92に取り付けられた複数のスタッドボルト94とを有する図11に示した例に代え、第3柱部材22の下端部40に固定され、該下端部を取り巻く筒状体96を有する。第1ガセットプレート42は筒状体96に結合されている。このようにして第1ガセットプレート42は第3柱部材22の下端部40に固定されている。筒状体96は、地震時に第1ガセットプレート42が第1斜材64から受ける引張力又は圧縮力に抵抗し、また、第3柱部材22の下端部40を補強する。
【0052】
筒状体96は、該筒状体の内部に上下方向に間隔を置いて配置され、筒状体96の上端部に固定された第1補強プレート98及び筒状体96の下端部に固定された第2補強プレート100を有する。第1補強プレート98及び第2補強プレート100のそれぞれは筒状体96を補強する。第1補強プレート98及び第2補強プレート100のそれぞれは貫通穴102、104を有する。このため、第1補強プレート98により第3柱部材22の下端部40のコンクリートの一体性が損なわれることはなく、第2補強プレート100により第3柱部材22の下端部40と第1柱部材12との接合が妨げられることはない。図13に示した例では、筒状体96の下端部が第3柱部材22の下端部40の下縁部分と同じ高さに位置するが、これに代え、筒状体96が第3柱部材22の下端部40から下方へ伸び、第1柱部材12が筒状体96の下端部に受け入れられていてもよい。
【0053】
図15に示す例では、建物10が2つの斜材64、70を有する図1に示した例に代え、1つ斜材64を有する。この場合、第4柱部材24は、該第4柱部材の上端部106に固定された第2ガセットプレート52を有する。第2ガセットプレート52は上方の梁26に取り付けられており、斜材64の上端部60は第2ガセットプレート52を介して上方の梁26に取り付けられている。
【0054】
図16に示す例では、第1ガセットプレート42が第3柱部材22の下端部40に、第2ガセットプレート52が第4柱部材24の下端部50に、第3ガセットプレート74が上方の梁26の中央部72にそれぞれ固定されている図1に示した例に代え、第1ガセットプレート42が第3柱部材22の上端部108に、第2ガセットプレート52が第4柱部材24の上端部106に、第3ガセットプレート74が下方の梁20の中央部110にそれぞれ固定されている。
【0055】
この場合、第3柱部材22は、該第3柱部材の上端部108に固定された第1ガセットプレート42と、該第1ガセットプレートの上端部に固定され、複数の第1貫通穴112を有する第1上端プレート114とを有する。第4柱部材24は、該第4柱部材の上端部106に固定された第2ガセットプレート52と、該第2ガセットプレートの上端部に固定され、複数の第2貫通穴116を有する第2上端プレート118とを有する。
【0056】
上方の梁26の一端部120は第3柱部材22の上端部108に結合されており、上方の梁26の他端部122は第4柱部材24の上端部106に結合されている。上方の梁26は、該上方の梁の一端部120に間隔を置いて設けられ、それぞれが一端部120から下方へ伸びる複数の第1棒状部材36と、下方の梁20の他端部122に間隔を置いて設けられ、それぞれが他端部122から下方へ伸びる複数の第2棒状部材38とを有する。
【0057】
上方の梁26の各第1棒状部材36は第1上端プレート114の第1貫通穴112に受け入れられており、各第2棒状部材38は第2上端プレート118の第2貫通穴116に受け入れられている。第1上端プレート114は、該第1上端プレートの下において第1棒状部材36に螺合された第1ナット48により上方の梁26の一端部120に取り付けられており、第2上端プレート118は、該第2上端プレートの下において第2棒状部材38に螺合された第2ナット58により上方の梁26の他端部122に取り付けられている。
【0058】
建物10は、上方の梁26と下方の梁20との間に配置され、上端部60が第1ガセットプレート42に取り付けられ、下端部62が下方の梁20に取り付けられた第1斜材64と、上端部66が第2ガセットプレート52に取り付けられ、下端部68が下方の梁20に取り付けられた第2斜材70とを含む。第1斜材60の下端部62及び第2斜材62の下端部68のそれぞれは第3ガセットプレート74に接続されている。
【0059】
建物10を構築するとき、まず、水平方向に間隔を置かれた第1柱部材12と第2柱部材14との間に、中央部110に固定された第3ガセットプレート74を有する下方の梁20を設ける。次に、上端部108に固定された第1ガセットプレート42と、該第1ガセットプレートの上端部に固定され、複数の第1貫通穴112を有する第1上端プレート114とを有する第3柱部材22を第1柱部材12の上に配置する。その後、上端部106に固定された第2ガセットプレート52と、該第2ガセットプレートの上端部に固定され、複数の第2貫通穴116を有する第2上端プレート118とを有する第4柱部材24を第2柱部材14の上に配置する。第3柱部材22及び第4柱部材24のそれぞれは、工場で製作されたものである。
【0060】
その後、図17に示すように、一端部120に間隔を置いて設けられ、それぞれが一端部120から下方へ伸びる複数の第1棒状部材36と、他端部122に間隔を置いて設けられ、それぞれが他端部122から下方へ伸びる複数の第2棒状部材38とを有する上方の梁26を、各第1棒状部材36が第1貫通穴112に、各第2棒状部材38が第2貫通穴116にそれぞれ受け入れられるように、第3柱部材22と第4柱部材24との間に配置する。このとき、上方の梁26を第3柱部材22及び第4柱部材24の上方から、第1棒状部材36が第1貫通穴112に、第2棒状部材38が第2貫通穴116にそれぞれ受け入れられるまで下降させる。上方の梁26は、工場で製作されたものである。その後、第1上端プレート114の下において第1棒状部材36に第1ナット48を螺合し、第2上端プレート118の下において第2棒状部材38に第2ナット58を螺合する。
【0061】
その後、上方の梁26と下方の梁20との間に第1斜材64を配置し、該第1斜材の上端部60を第1ガセットプレート42に、下端部62を下方の梁20にそれぞれ取り付ける。その後、上方の梁26と下方の梁20との間に第2斜材70を配置し、該第2斜材の上端部66を第2ガセットプレート52に、下端部68を下方の梁20にそれぞれ取り付ける(図16)。下方の梁20への第1斜材64の下端部62の取付けは、第1斜材64の下端部62を第3ガセットプレート74に接続することにより行い、下方の梁20への第2斜材70の下端部68の取付けは、第2斜材70の下端部68を第3ガセットプレート74に接続することにより行う。
【0062】
第3柱部材22の上端部108に固定された第1ガセットプレート42に固定された第1上端プレート114が、上方の梁26の一端部120に設けられ、該一端部から下方へ伸びる第1棒状部材36をそれぞれが受け入れる複数の第1貫通穴112を有するため、上方の梁26を第3柱部材22及び第4柱部材24の上方から、各第1棒状部材36が第1貫通穴112に受け入れられるまで下降させたときに、上方の梁26の一端部120が第1ガセットプレート42に対して予め決められた位置に配置されるとともに、上方の梁26の一端部120が第3柱部材22に対して予め決められた位置に配置される。これにより、第3柱部材22と上方の梁26とに対する第1ガセットプレート42の位置の調整を要することなく第1ガセットプレート42を予め決められた位置に配置することができ、かつ、第3柱部材22に対する上方の梁26の一端部120の位置の調整を要することなく上方の梁26の一端部120を予め決められた位置に配置することができる。
【0063】
また、第4柱部材24の上端部106に固定された第2ガセットプレート52に固定された第2上端プレート118が、上方の梁26の他端部122に設けられ、該他端部から下方へ伸びる第2棒状部材38をそれぞれが受け入れる複数の第2貫通穴116を有するため、上方の梁26を第3柱部材22及び第4柱部材24の上方から、各第2棒状部材38が第2貫通穴116に受け入れられるまで下降させたときに、上方の梁26の他端部122が第2ガセットプレート52に対して予め決められた位置に配置されるとともに、上方の梁26の他端部122が第4柱部材24に対して予め決められた位置に配置される。これにより、第4柱部材24と上方の梁26とに対する第2ガセットプレート52の位置の調整を要することなく第2ガセットプレート52を予め決められた位置に配置することができ、かつ、第4柱部材24に対する上方の梁26の他端部122の位置の調整を要することなく上方の梁26の他端部122を予め決められた位置に配置することができる。このため、建物10を効率的に構築することができる。
【0064】
地震時に上方の梁26が第3柱部材22から第4柱部材24に向けて(図16における左向き)の水平力を受けたとき、第1斜材64は第1ガセットプレート42及び下方の梁20から圧縮力を受けて変形し、第2斜材70は第2ガセットプレート52及び下方の梁20から引張力を受けて変形する。これにより、地震時に上方の梁26に作用する振動エネルギーは低減される。他方、上方の梁26が第4柱部材24から第3柱部材22に向けて(図16における右向き)の水平力を受けたとき、第1斜材64は第1ガセットプレート42及び下方の梁20から引張力を受けて変形し、第2斜材70は第2ガセットプレート52及び下方の梁20から圧縮力を受けて変形する。これにより前記振動エネルギーは低減される。
【0065】
図16に示した例では、第3柱部材22が、該第3柱部材の上端部108の表面に取り付けられた表面プレート76を有し、第1ガセットプレート42は表面プレート76に結合されているが、これに代え、第3柱部材22が、該第3柱部材の上端部108の内部に配置された、上下方向に伸びるH形鋼(図示せず)を有し、第1ガセットプレート42が前記H形鋼に結合されていてもよい。また、第3柱部材22が、該第3柱部材の上端部108の内部に配置された内部プレート(図示せず)と、それぞれが前記内部プレートに取り付けられた複数のスタッドボルト(図示せず)とを有し、第1ガセットプレート42が前記内部プレートと一体に形成されていてもよい。また、第3柱部材22が、該第3柱部材の上端部108に固定され、該上端部を取り巻く筒状体(図示せず)を有し、第1ガセットプレート42が前記筒状体に結合されていてもよい。
【符号の説明】
【0066】
10 建物
12 第1柱部材
14 第2柱部材
20 下方の梁
22 第3柱部材
24 第4柱部材
26 上方の梁
36 棒状部材(第1棒状部材)
42 ガセットプレート(第1ガセットプレート)
44 下端プレート(第1下端プレート)
46、112 貫通穴(第1貫通穴)
64 斜材(第1斜材)
76 表面プレート
84 H形鋼
92 内部プレート
94 スタッドボルト
96 筒状体
114 上端プレート(第1上端プレート)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平方向に間隔を置かれた第1柱部材及び第2柱部材と、
前記第1柱部材の上端部と前記第2柱部材の上端部との間に設けられ、一端部が前記第1柱部材の前記上端部に、他端部が前記第2柱部材の前記上端部にそれぞれ結合された下方の梁であって前記一端部に間隔を置いて設けられ、それぞれが前記一端部から上方へ伸びる複数の棒状部材を有する下方の梁と、
前記第1柱部材の上に配置された第3柱部材であって下端部に固定されたガセットプレートと、該ガセットプレートの下端部に固定され、それぞれが前記棒状部材を受け入れる複数の貫通穴を有する下端プレートとを有する第3柱部材と、
前記第2柱部材の上に配置された第4柱部材と、
前記第3柱部材と前記第4柱部材との間に設けられ、前記下方の梁から間隔を置かれた上方の梁と、
前記上方の梁と前記下方の梁との間に配置され、上端部が前記上方の梁に、下端部が前記ガセットプレートにそれぞれ取り付けられた斜材とを含む、建物。
【請求項2】
前記第3柱部材は、該第3柱部材の前記下端部の表面に取り付けられた表面プレートを有し、前記ガセットプレートは前記表面プレートに結合されている、請求項1に記載の建物。
【請求項3】
前記第3柱部材は、該第3柱部材の前記下端部の内部に配置された、上下方向に伸びるH形鋼を有し、前記ガセットプレートは前記H形鋼に結合されている、請求項1に記載の建物。
【請求項4】
前記第3柱部材は、該第3柱部材の前記下端部の内部に配置された内部プレートと、それぞれが前記内部プレートに取り付けられた複数のスタッドボルトとを有し、前記ガセットプレートは前記内部プレートと一体に形成されている、請求項1に記載の建物。
【請求項5】
前記第3柱部材は、該第3柱部材の前記下端部に固定され、該下端部を取り巻く筒状体を有し、前記ガセットプレートは前記筒状体に結合されている、請求項1に記載の建物。
【請求項6】
請求項1に記載の建物の構築方法であって、
水平方向に間隔を置かれた第1柱部材と第2柱部材との間に、一端部が前記第1柱部材の上端部に、他端部が前記第2柱部材の上端部にそれぞれ結合された下方の梁であって前記一端部に間隔を置いて設けられ、それぞれが前記一端部から上方へ伸びる複数の棒状部材を有する下方の梁を設けること、
下端部に固定されたガセットプレートと、該ガセットプレートの下端部に固定され、複数の貫通穴を有する下端プレートとを有する第3柱部材を、各貫通穴が前記棒状部材を受け入れるように前記第1柱部材の上に配置すること、
前記第2柱部材の上に第4柱部材を配置すること、
前記第3柱部材と前記第4柱部材との間に、前記下方の梁から間隔を置かれた上方の梁を設けること、
前記上方の梁と前記下方の梁との間に斜材を配置すること、
前記斜材の上端部を前記上方の梁に、下端部を前記ガセットプレートにそれぞれ取り付けることを含む、建物の構築方法。
【請求項7】
請求項6に記載の建物の構築方法に用いる柱部材であって、
下端部に固定されたガセットプレートと、該ガセットプレートの下端部に固定され、複数の貫通穴を有する下端プレートとを有する、柱部材。
【請求項8】
水平方向に間隔を置かれた第1柱部材及び第2柱部材と、
前記第1柱部材と前記第2柱部材との間に設けられた下方の梁と、
前記第1柱部材の上に配置された第3柱部材であって上端部に固定されたガセットプレートと、該ガセットプレートの上端部に固定され、複数の貫通穴を有する上端プレートとを有する第3柱部材と、
前記第2柱部材の上に配置された第4柱部材と、
前記第3柱部材の上端部と前記第4柱部材の上端部との間に配置された上方の梁であって端部に間隔を置いて設けられ、それぞれが前記端部から下方へ伸び、前記貫通穴に受け入れられた複数の棒状部材を有する上方の梁と、
前記上方の梁と前記下方の梁との間に配置され、上端部が前記ガセットプレートに、下端部が前記下方の梁にそれぞれ取り付けられた斜材とを含む、建物。
【請求項9】
請求項8に記載の建物の構築方法であって、
水平方向に間隔を置かれた第1柱部材と第2柱部材との間に下方の梁を設けること、
上端部に固定されたガセットプレートと、該第1ガセットプレートの上端部に固定され、複数の貫通穴を有する上端プレートとを有する第3柱部材を前記第1柱部材の上に配置すること、
前記第2柱部材の上に第4柱部材を配置すること、
端部に間隔を置いて設けられ、それぞれが前記端部から下方へ伸びる複数の棒状部材を有する上方の梁を、各棒状部材が前記貫通穴に受け入れられるように、前記第3柱部材と前記第4柱部材との間に配置すること、
前記上方の梁と前記下方の梁との間に斜材を配置すること、
前記斜材の上端部を前記ガセットプレートに、下端部を前記下方の梁にそれぞれ取り付けることを含む、建物の構築方法。
【請求項10】
請求項9に記載の建物の構築方法に用いる柱部材であって、
上端部に固定されたガセットプレートと、該ガセットプレートの上端部に固定され、複数の貫通穴を有する上端プレートとを有する、柱部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2011−111831(P2011−111831A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−270466(P2009−270466)
【出願日】平成21年11月27日(2009.11.27)
【出願人】(000001317)株式会社熊谷組 (551)
【Fターム(参考)】