説明

建物及び目地選定システム

【課題】建物環境に応じてシーリング材による撥水対策を施した建物及び目地選定システムを得る。
【解決手段】建物環境(建物周りで粉塵や塵埃が多いか否か)に応じ、粉塵や塵埃が多い建物環境では、目地30において、可塑剤無シーリング材を用い、粉塵や塵埃が少ない建物環境では、可塑剤有シーリング材を用いる。つまり、建物環境に応じて、使用するシーリング材の種類(可塑剤の有無)を使い分けて撥水対策を施すことができるという優れた効果を有する。また、これにより、粉塵や塵埃が少ない建物環境では、過剰品質を抑制することができ、結果的にコストダウンを図ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物及び目地選定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
建物の外壁パネルと外壁パネルの間に形成された目地には、シリコン系のシーリング材が充填されるが、このシーリング材を用いた場合、当該シーリング材の成分が経年変化により析出して建物の外壁パネルが薄黒く汚れてしまうという、いわゆる撥水汚染の問題が生じる。
【0003】
このため、特許文献1では、光触媒が含有された外壁塗料、又はタイル材を用い、これらによるセルフクリーニング機能によって撥水汚染を防止する方法が開示されている。また、特許文献2では、シーリング材表面に塗膜を塗って、撥水汚れの成分となるシーリング材からの移行成分の流出を抑える方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−78791号公報
【特許文献2】特開平8−100167号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1による場合、光触媒が含有された塗料やタイル材を外壁全体に用いる必要があるため、コストが非常に高くなる。また、特許文献2による場合、シーリング材が硬化した後塗膜する必要があり、作業コストが高くなる。その一方で、建物の外壁パネルの汚染状況は、当該建物が立地された環境によっても異なってくる。
【0006】
本発明は上記事実を考慮し、建物環境に応じてシーリング材による撥水対策を施した建物及び目地選定システムを得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の建物は、隣接する外壁パネルと外壁パネルの間に形成された横目地をシールする不定形シールの建物汚染許容限度を第1基準とし、建物環境に応じて、所定のメンテナンス時期まで前記第1基準を超えない種類の不定形シールで前記横目地がシールされている。
【0008】
建物に用いられる建物部材では経年変化により劣化するものもあり、建物の維持管理のためには、所定の築年数を経過するとメンテナンスを行う必要がある。一方、外壁パネルなどの汚染レベル(汚染度)により求められた建物汚染許容限度を第1基準として、使用された建物部材がメンテナンス時期まではこの第1基準を超えないように、使用する建物部材の種類を選定する必要がある。
【0009】
隣接する外壁パネルと外壁パネルの間に形成された横目地は、不定形シールによってシールされているが、この不定形シールには、パテ状のいわゆるシーリング材が用いられる。このシーリング材に柔軟性を付与するために含有された可塑剤の有無によって撥水汚染は異なり、当該可塑剤が含有されていないシーリング材(以下、「可塑剤無シーリング材」という)は、可塑剤が含有されたシーリング材(以下、「可塑剤有シーリング材」という)よりも撥水汚染が少ないが、その反面コストは高くなる。一方、粉塵や塵埃が多い建物環境と少ない建物環境とでは、建物の汚染レベルが異なる。
【0010】
請求項1に記載の建物では、所定のメンテナンス時期まで不定形シールの建物汚染許容限度(第1基準)を超えないように、建物環境(建物周りで粉塵や塵埃が多いか否か)に応じ、横目地において、例えば、粉塵や塵埃が多い建物環境では、可塑剤無シーリング材を用い、粉塵や塵埃が少ない建物環境では、可塑剤有シーリング材を用いるといったことが可能である。つまり、建物環境に応じて、使用するシーリング材の種類(可塑剤の有無)を使い分けることができる。これにより、粉塵や塵埃が少ない建物環境では、過剰品質を抑制することができ、結果的にコストダウンを図ることができる。
【0011】
請求項2に記載の建物は、請求項1に記載の建物において前記メンテナンス時期を第2基準とし、前記第2基準に応じて、前記不定形シールの種類が選定されている。
【0012】
撥水汚染による汚染度は、建物のメンテナンス時期が長いほどその割合が上がっていく。このため、請求項2に記載の建物では、建物のメンテナンス時期を第2基準とし、当該第2基準に応じ、メンテナンス時期が長い建物では、横目地に使用されるシーリング材において、可塑剤無シーリング材が用いられ、メンテナンス時期が短い建物では、可塑剤有シーリング材が用いられる。
【0013】
建物のメンテナンス時期は、通常、約15年程度としており、メンテナンス時期が長い場合は、この15年を越えるスパンであり、メンテナンス時期が短い場合は、15年以内のスパンである。メンテナンスでは、シーリング材が更新されることとなるが、ここでの更新とは、シーリング材を剥がし、新しいシーリング材を横目地に充填する、或いは、汚染されたシーリング材の表面をコーティングする意味である。
【0014】
つまり、建物のメンテナンス時期に応じて、使用するシーリング材の種類(可塑剤の有無)を使い分けることで、建物の建設時に投入されるイニシャルコストと建物の維持管理におけるランニングコストとを比較考慮した上で、適切なシーリング材を選択することができる。また、逆に、選択したシーリング材によって、メンテナンス時期が変わるため、ユーザ側の経済事情などに合わせて、建物に掛かる必要経費を長いスパンで柔軟に対応することができる。
【0015】
請求項3に記載の建物は、請求項1又は2に記載の建物において、前記不定形シールの種類が当該不定形シールに柔軟性を付与する可塑剤の有無である。
【0016】
可塑剤の有無によって撥水汚染は異なり、可塑剤無シーリング材は、可塑剤有シーリング材よりも撥水汚染は少ない。このため、粉塵や塵埃が多い建物環境やメンテナンス時期が長い建物などでは、可塑剤無シーリング材が用いられ、粉塵や塵埃が少ない建物環境やメンテナンス時期が短い建物などでは、可塑剤有シーリング材が用いられる。
【0017】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3の何れか1項に記載の建物において、前記建物環境が、建物周りの粉塵や塵埃の量によって量られる。
【0018】
請求項4に記載の発明では、建物環境が建物周りの粉塵や塵埃の量によって量られ、当該粉塵や塵埃の量によって、シーリング材の種類(可塑剤の有無)を変え、建物周りにおいて、粉塵や塵埃が多い建物環境では、可塑剤が含有されていないシーリング材(可塑剤無シーリング材)が用いられ、粉塵や塵埃が少ない建物環境では、可塑剤が含有されたシーリング材(可塑剤有シーリング材)が用いられる。つまり、建物環境に応じて、使用するシーリング材の種類(可塑剤の有無)を使い分けることができる。
【0019】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4の何れか1項に記載の建物において、前記外壁パネルの方位に基づいて前記不定形シールの種類が選定されている。
【0020】
外壁パネルの方位によって粉塵や塵埃の量は異なるため、請求項5に記載の発明では、同じ建物の中で、建物の外壁パネルの方位に基づいて横目地のシーリング材の種類を選定可能としている。これにより、コストの高い可塑剤無シーリング材の使用を最小限とすることができ、コストダウンを図ることができる。
【0021】
請求項6に記載の目地選定システムは、建物環境を入力する入力手段と、建物環境に基づいて、建物の外壁パネルと外壁パネルの間に形成された横目地をシールする不定形シールの汚染データに関する情報が記憶された記憶手段と、所定のメンテナンス時期に基づいて定められた建物汚染許容限度を第1基準とし、前記入力手段によって入力された建物環境に基づいて、前記記憶手段に記憶された汚染データの情報から前記第1基準を超えない範囲で不定形シールの種類を選定する第1目地選定手段と、を有している。
【0022】
請求項6に記載の目地選定システムでは、入力手段によって建物環境が入力される。一方、建物環境に基づいて、建物の外壁パネルと外壁パネルの間に形成された横目地をシールする不定形シールの汚染データに関する情報が記憶手段に記憶されている。第1目地選定手段では、所定のメンテナンス時期に基づいて定められた建物汚染許容限度を第1基準として、入力手段によって入力された建物環境に基づいて、記憶手段に記憶された汚染データの情報から当該第1基準を超えない範囲で不定形シールの種類が選定される。
【0023】
つまり、建物環境に応じて、使用するシーリング材の種類(可塑剤の有無)を使い分けることで、粉塵や塵埃が少ない建物環境では、過剰品質を抑制することができ、結果的にコストダウンを図ることができる。
【0024】
請求項7に記載の目地選定システムは、請求項6に記載の目地選定システムにおいて、前記メンテナンス時期を第2基準として、前記第2基準に応じて、前記不定形シールの種類を選定する第2目地選定手段を有している。
【0025】
請求項7に記載の目地選定システムでは、第2目地選定手段によって、メンテナンス時期を第2基準として、当該第2基準に応じて、不定形シールの種類が選定される。建物のメンテナンス時期を第2基準として、メンテナンス時期が長い建物では、横目地に使用されるシーリング材において、可塑剤無シーリング材が用いられ、メンテナンス時期が短い建物では、可塑剤有シーリング材が用いられる。
【0026】
つまり、建物のメンテナンス時期に応じて、使用するシーリング材の種類(可塑剤の有無)を使い分けることで、建物の建設時に投入されるイニシャルコストとシーリング材が更新など建物の維持管理におけるランニングコストとを比較考慮した上で、適切なシーリング材を選択することができる。
【発明の効果】
【0027】
以上説明したように、請求項1に記載の建物によれば、建物環境に応じてシーリング材による撥水対策を施すことができるという優れた効果を有する。
【0028】
請求項2に記載の建物によれば、建物に掛かる必要経費を長いスパンで柔軟に対応することができるという優れた効果を有する。
【0029】
請求項3に記載の建物によれば、建物環境に応じて、不定形シールに含有される可塑剤の有無を変えて適切なシーリング材を選択することができるという優れた効果を有する。
【0030】
請求項4に記載の建物によれば、建物周りの粉塵や塵埃の量に応じて、適切なシーリング材を選択することができるという優れた効果を有する。
【0031】
請求項5に記載の建物によれば、1つの建物の中で建物環境に合わせて適切なシーリング材を選択することができるため、シーリング材の撥水対策を安いコストで実現することができるという優れた効果を有する。
【0032】
請求項6に記載の建物によれば、建物環境に応じてシーリング材による撥水対策を施すことができるという優れた効果を有する。
【0033】
請求項7に記載の建物によれば、建物に掛かる必要経費を長いスパンで柔軟に対応することができるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本実施形態に係る建物の概略正面図である。
【図2】可塑剤有シーリング材及び可塑剤無シーリングをそれぞれ外壁材に塗布し、曝露させた状態を示す正面図である。
【図3】(A)は、都心など粉塵や塵埃が多い建物環境での可塑剤有シーリング材及び可塑剤無シーリングによる建物の汚染度を示すグラフであり、(B)は、郊外など粉塵や塵埃が少ない建物環境での可塑剤有シーリング材及び可塑剤無シーリングによる建物の汚染度を示すグラフである。
【図4】建物の各方位での可塑剤有シーリング材による建物の汚染度を示すグラフである。
【図5】本発明の実施の形態に係る建物の目地部材選定システムの概略構成を示すブロック図である。
【図6】目地部材選定システムを構成するコンピュータに登録するお客様情報の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明に係る建物の一実施形態について説明する。
【0036】
図1には、本実施形態に係る建物の概略正面図が示されている。図1に示されるように、この建物10は一階部分12と、一階部分12の上に据付けられた二階部分14と、二階部分14の上に据付けられた屋根部分16と、を含んで構成されている。
【0037】
建物10の一階部分12と二階部分14の接合部には、化粧部材18が設けられており、一階部分12及び二階部分14の外周部には、所定枚数の外壁パネル20が隣接して配置されており、隣接する外壁パネル20と外壁パネル20の間には、それぞれ縦目地22が形成され、当該縦目地22には後述する定形シールが設けられている。なお、ここでは、外壁パネル20が各階の高さ方向で1枚となっているが、外壁パネル(図示省略)が複数枚設けられていても良い。但し、この場合、上下に配置された外壁パネルと外壁パネルの間に横目地が設けられることとなる。
【0038】
また、建物10の一階部分12には、シャッター装置23及び換気扇フード26が設けられており、二階部分14には、サッシ28が設けられている。シャッター装置23、換気扇フード26及びサッシ28の周りには、外壁パネル20、22との間にそれぞれ縦目地22及び横目地24が形成されている。
【0039】
一般的に、目地30では、ガスケットなどの定形シール(乾式シール)を用いる場合と、シーリング材などの不定形シール(湿式シール)を用いる場合とがあり、定形シールは主に縦目地22に使用され、不定形シールは主に横目地24に使用される。
【0040】
不定形シールには、柔軟性を付与するための可塑剤が含有されたシーリング材52(以下、「可塑剤有シーリング材52」という;図3参照)と、当該可塑剤が含有されていないシーリング材54(以下、「可塑剤無シーリング材54」という;図3参照)とがある。可塑剤有シーリング材52は、可塑剤無シーリング材54よりも安価となっている。
【0041】
しかし、可塑剤有シーリング材52を用いた目地30では、表面に粉塵や塵埃が付着すると、シーリング材に含有された可塑剤やシリコンオイルが粉塵や塵埃に吸着され(撥水性を帯びた粉塵や塵埃)、目地30周辺が薄黒く汚れたり、撥水性を帯びた粉塵や塵埃が雨で流れると、目地30周辺がスジ状に汚れたりする(いわゆる撥水汚染;図3左側参照)。このため、工場周辺や車両通行量が多い建物環境では、粉塵や塵埃が多いので撥水汚染も大きくなる。
【0042】
ここで、図3(A)には、都心など粉塵や塵埃が多い建物環境での不定形シールによる建物10の汚染度が示されており、可塑剤有シーリング材52と可塑剤無シーリング材54とで建物10の汚染度の違いが示されている。ここでの汚染度は、1単位面積当たりの付着粉塵割合であり、外壁材50(図2参照)の基の色が見えない状態(真っ黒な状態)を100%としている。また、NGラインは、建物汚染許容限度(第1基準)を示しており、基の色によっても異なる。
【0043】
試験方法は、図2に示されるように、可塑剤有シーリング材52と可塑剤無シーリング材54を外壁材50に塗布した状態で曝露させ、各可塑剤有シーリング材52、可塑剤無シーリング材54において、外壁材50の汚染度を確認する。ここでは、可塑剤有シーリング材52側において、撥水汚染が見られる。
【0044】
図3(A)によると、目地30に可塑剤無シーリング材54を用いた場合、メンテナンス時期(第2基準、ここでは、一例として、約15年)において、建物10の汚染度がNGラインを下回っているが、目地30に可塑剤有シーリング材52を用いた場合は、15年のメンテナンス時期では建物10の汚染度がNGラインを越えてしまう。つまり、この場合、この建物10の目地30には、コスト高ではあるが、可塑剤無シーリング材54が選定されることとなる。
【0045】
ここで、建物の性能・機能・デザイン等を保つためには適切なメンテナンスが必要となるが、シーリング材に含有された可塑剤の有無によって、このメンテナンス時期が異なってくる。つまり、可塑剤有シーリング材52は、可塑剤無シーリング材54よりもコストは安いがメンテナンスのスパンは短いため、シーリング材の更新間隔が短くなる。ここで、更新とは、シーリング材を剥がし、新しいシーリング材を目地30に充填する、或いは、汚染されたシーリング材の表面をコーティングすることの意味である。
【0046】
このため、可塑剤有シーリング材52の使用ではシーリング材の更新間隔が短くなるが、この建物10のメンテナンス時期を12年未満とすると、目地30に可塑剤有シーリング材52を用いた場合であっても、建物10の汚染度はNGラインを越えていない。したがって、この場合は、安価な可塑剤有シーリング材52が選定される。
【0047】
一方、図3(B)には、郊外など粉塵や塵埃が少ない建物環境での不定形シールによる建物10の汚染度が示されている。これによると、シーリング材の可塑剤の有無に拘わらず、15年のメンテナンス時期まで建物10の汚染度がNGラインを下回っている。このため、この建物10の目地30には、安価な可塑剤有シーリング材52が選定される。
【0048】
また、図4には、建物10の各方位において、可塑剤有シーリング材52による建物10の汚染度が示されている。ここでは、一例として、北面側の粉塵や塵埃が多く、次いで、南面、西面、東面と続いている。南面、西面、東面は、15年のメンテナンス時期まで建物10の汚染度がNGラインを下回っているが、北面は、15年のメンテナンス時期では建物10の汚染度がNGラインを越えてしまう。
【0049】
つまり、この場合、この建物10の南面、西面、東面側の目地30には、可塑剤有シーリング材52が選定されるが、北面側の目地30には、コスト高ではあるが、可塑剤無シーリング材54が選定されることとなる。
【0050】
なお、北面及び南面側の目地30に可塑剤無シーリング材54を選定しても良いし、また、コスト高とはなるが全ての面の目地30に可塑剤無シーリング材54を用いても良いのは勿論のことである。可塑剤有シーリング材52と可塑剤無シーリング材54の2種類を用いる場合、シーリング材の保管管理及び作業性等を考慮すると、シーリング材の種類を1つにした方が良い場合もある。
【0051】
一方、この建物10のメンテナンス時期を13年未満とすると、北面側の目地30に可塑剤有シーリング材52を用いた場合であっても、建物10の汚染度はNGラインを越えない。このため、この場合は、安価な可塑剤有シーリング材52が選定されることとなる。
【0052】
(建物の作用・効果)
次に、本実施形態に係る建物の作用・効果について説明する。
【0053】
本実施形態では、建物環境(建物周りで粉塵や塵埃が多いか否か)に応じ、粉塵や塵埃が多い建物環境では、目地30において、可塑剤無シーリング材54を用い、粉塵や塵埃が少ない建物環境では、可塑剤有シーリング材52を用いる。
【0054】
つまり、建物環境に応じて、使用するシーリング材の種類(可塑剤の有無)を使い分けて撥水対策を施すことができるという優れた効果を有する。また、これにより、粉塵や塵埃が少ない建物環境では、過剰品質を抑制することができ、結果的にコストダウンを図ることができる。
【0055】
一方、撥水汚染による汚染度は、建物のメンテナンス時期が長いほどその割合が上がっていく。このため、建物10のメンテナンス時期に応じ、メンテナンス時期が長い建物10では、目地30に使用されるシーリング材において、可塑剤無シーリング材54を用い、メンテナンス時期が短い建物10では、可塑剤有シーリング材52を用いる。建物10のメンテナンス時期は、通常、約15年程度としており、メンテナンス時期が長い場合は、この15年を越えるスパンであり、メンテナンス時期が短い場合は、15年以内のスパンである。
【0056】
つまり、建物10のメンテナンス時期に応じて、使用するシーリング材の種類(可塑剤の有無)を使い分けることで、シーリング材の寿命及びコストを勘案して、適切なシーリング材を選択することができる。このため、過剰品質のシーリング材を選択することなく、コストダウンを図ることができるという優れた効果を有する。
【0057】
また、目地30に使用されるシーリング材において、可塑剤無シーリング材54を用いた場合は、可塑剤有シーリング材52を用いた場合に比べて、建物10のメンテナンス時期を長くする。つまり、シーリング材の種類(可塑剤の有無)によって、建物10のメンテナンス時期を変えることで、建物10の建設時に投入されるイニシャルコストと建物10の維持管理におけるランニングコストとを比較考慮した上で、適切なシーリング材を選択することができる。また、逆に、選択したシーリング材によって、メンテナンス時期が変わるため、ユーザ側の経済事情などに合わせて、建物に掛かる必要経費を長いスパンで柔軟に対応することができる。
【0058】
一方、建物10が建築された方位によって、粉塵や塵埃の量は異なるため、同じ建物10の中で、建物10の外壁パネル20の方位毎にシーリング材の種類を使い分けることで、コストの高い可塑剤無シーリング材54の使用を最小限とすることができ、コストダウンを図ることができる。したがって、1つの建物10の中で建物環境に合わせて適切なシーリング材を選択することができるため、シーリング材の撥水対策を安いコストで実現することができるという優れた効果を有する。
【0059】
次に、目地の種類を設定するための目地部材選定システムについて説明する。
(目地部材選定システム)
【0060】
図5は、本発明の実施の形態に係る建物の目地の種類の目地部材選定を行う際に用いる目地部材選定システムの概略構成を示すブロック図である。
【0061】
目地部材選定システム60は、パーソナルコンピュータ62を含んで構成されている。パーソナルコンピュータ62は、CPU(第1目地選定手段、第2目地選定手段)64、ROM66、RAM68、及び入出力ポート70を備えており、これらがアドレスバス、データバス、制御バス等のバス72を介して互いに接続されている。
【0062】
入出力ポート70には、各種の入出力機器として、ディスプレイ74、マウス76、キーボード(入力手段)78、ハードディスク(HDD)80、及び各種ディスク84からの情報を読み出すためのディスクドライブ82が各々接続されている。また、入出力ポート70には、ネットワーク86が接続されており、ネットワーク86に接続されたデータベース(DB;記憶手段)88等との情報の授受が可能とされている。
【0063】
DB88には、図3及び図4で示される、シーリング材に含有される可塑剤の有無による建物10の汚染度の違いを示す実験データや、図6に示されるように、オーダNo.に対応して、お客様名、希望メンテナンス時期、立地条件(各東面、西面、南面、北面において、例えば、工場など粉塵や塵埃を出す建物の有無、車両の通行状況において、1時間当たり車両が何台通過するか)などの情報等が記憶される(後述する)。そして、これらの情報は、DB88ではなく、パーソナルコンピュータ62のHDD80に記憶するようにしてもよい。
【0064】
なお、ここでは、工場など粉塵や塵埃を出す建物の有無及び車両の通行状況についての情報を記録するようにしたが、工場に限らず、建物の周りは海岸であるとか田畑であるなどの情報を記録しても良い。
【0065】
また、パーソナルコンピュータ62のHDD80には、目地部材選定プログラムがインストールされている。なお、目地部材選定プログラムをパーソナルコンピュータ62にインストールするには、幾つかの方法があるが、例えば、目地部材選定プログラムをセットアッププログラムと共に各種ディスク84に記録しておき、ディスク84をパーソナルコンピュータ62のディスクドライブ82にセットし、CPU64に対してセットアッププログラムの実行を指示すれば、ディスク84から目地部材選定プログラムが順に読み出され、HDD80に書き込まれることによりインストールが行われる。
【0066】
また、目地部材選定プログラムが、公衆電話回線やネットワーク(例えば、LAN、インターネット、及び無線通信ネットワーク等)86を介してパーソナルコンピュータ62と接続される他の情報処理機器の記憶装置に記憶され、パーソナルコンピュータ62が情報処理機器と通信することで、情報処理機器からパーソナルコンピュータ62へ目地部材選定プログラムが伝送されてHDD80にインストールされる構成を採用してもよいし、ネットワーク86に接続された情報処理機器に記憶された目地部材選定プログラムをパーソナルコンピュータ62で実行可能な構成を採用するようにしてもよい。
【0067】
次に、目地部材選定システムの作用・効果について説明する。
(目地部材選定システムの作用・効果)
【0068】
この目地部材選定プログラムでは、メンテナンス時期に応じて、建物10で使用する方位毎にシーリング材の種類(可塑剤の有無)が選定される。例えば、図6に示されるように、この建物の建物環境では、北面及び南面が道路に面する角地に立設されており、車両の通行量は、北面側の道路では1時間当たり約10台となっており、南面側の道路では1時間当たり約5台となっている。また、北面側には工場など粉塵や塵埃を出す建物が多く立設されているが、南面側及び西側にはこのような建物はほとんどなく、東面側には、当該建物は立設されていない。
【0069】
このようなデータをパーソナルコンピュータ62へ入力するとDB88に基づいて演算処理され、図4に示されるデータが得られる。このデータに基づいて、南面、西面及び東面では可塑剤有シーリング材52が選択され、北面では可塑剤無しのシーリング材が選定される。
【0070】
なお、ここでは、メンテナンス時期を15年として、建物10で使用する方位毎にシーリング材の種類が選定されるようにしたが、メンテナンス時期を変更して、シーリング材の種類が選定(又は再設定)されるようにしても良い。図4では、この建物10のメンテナンス時期を13年未満に設定すると、建物10の全方位において可塑剤有シーリング材52が選定されることとなる。
【0071】
つまり、シーリング材の種類(可塑剤の有無)及び建物10のメンテナンス時期の組み合わせによって、建物10の汚染度のNGラインを越えないようにすることができる。これにより、建物の建設時に投入されるイニシャルコストとシーリング材が更新など建物の維持管理におけるランニングコストとを比較考慮した上で、適切なシーリング材を選択することができる。また、選択したシーリング材によって、メンテナンス時期が変わるため、ユーザ側の経済事情などに合わせて、建物に掛かる必要経費を長いスパンで柔軟に対応することができる。
【符号の説明】
【0072】
10 建物
20 外壁パネル
30 目地(横目地)
50 外壁パネル
52 可塑剤有シーリング材(シーリング材)
54 可塑剤無シーリング材(シーリング材)
60 目地部材選定システム
64 CPU(第1目地選定手段、第2目地選定手段)
78 キーボード(入力手段)
88 DB(記憶手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
隣接する外壁パネルと外壁パネルの間に形成された横目地をシールする不定形シールの建物汚染許容限度を第1基準とし、建物環境に応じて、所定のメンテナンス時期まで前記第1基準を超えない種類の不定形シールで前記横目地がシールされた建物。
【請求項2】
前記メンテナンス時期を第2基準とし、前記第2基準に応じて、前記不定形シールの種類が選定された請求項1に記載の建物。
【請求項3】
前記不定形シールの種類が当該不定形シールに柔軟性を付与する可塑剤の有無である請求項1又は2に記載の建物。
【請求項4】
前記建物環境は、建物周りの粉塵や塵埃の量によって量られる請求項1〜3の何れか1項に記載の建物。
【請求項5】
前記外壁パネルの方位に基づいて前記不定形シールの種類が選定された請求項1〜4の何れか1項に記載の建物。
【請求項6】
建物環境を入力する入力手段と、
建物環境に基づいて、建物の外壁パネルと外壁パネルの間に形成された横目地をシールする不定形シールの汚染データに関する情報が記憶された記憶手段と、
所定のメンテナンス時期に基づいて定められた建物汚染許容限度を第1基準とし、前記入力手段によって入力された建物環境に基づいて、前記記憶手段に記憶された汚染データの情報から前記第1基準を超えない範囲で不定形シールの種類を選定する第1目地選定手段と、
を有する目地選定システム。
【請求項7】
前記メンテナンス時期を第2基準として、前記第2基準に応じて、前記不定形シールの種類を選定する第2目地選定手段を有する請求項6に記載の目地選定システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−157785(P2011−157785A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−22187(P2010−22187)
【出願日】平成22年2月3日(2010.2.3)
【出願人】(504093467)トヨタホーム株式会社 (391)
【Fターム(参考)】