説明

建物用のフレームレス防火ドア

【課題】極めて簡単な構造で、挿入片を挟着溝に抜けない状態で固定する。
【解決手段】フレームレス防火ドアは、側縁と平行に挿入片3を折曲して設けている第1の表面板1と、この挿入片3を挿入する挟着溝4をU曲して設けている第2の表面板2とを備える。挿入片3は、先端縁部を挟着溝4のU曲方向に折り返すように折曲して第1の折り返し積層片31を設けて片面を段差面32としている。第2の表面板2の挟着溝4は、先端縁部を溝の内側に折り返すように折曲して第2の折り返し積層片41を設けて片面を段差面42としている。フレームレス防火ドアは、挿入片3に設けている第1の折り返し積層片31を、挟着溝4の第2の折り返し積層片41よりも内部に案内して、第1の折り返し積層片31の段差面32と第2の折り返し積層片41の段差面42とを係止状態として、互いの先端面を当接させて第1の表面板1を第2の表面板2に抜けないように固定している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物用のドアに関し、とくに四角形に枠組みしている補強フレームを省略したフレームレス防火ドアに関する。ただし、本発明において「フレームレス防火ドア」とは、四角形に枠組みしている全てのフレーム、すなわち縦枠と横枠の両方を省略したものに特定するものではなく、縦枠のみを省略したドアも含む広い意味に使用する。
【背景技術】
【0002】
現在の一般的なドアの水平断面を図1に示す。このドアは、縦枠と横枠を四角形に枠組したフレーム91の両面に、第1と第2の表面板92を固定している。このドアは、Cチャンネル93で四角形のフレーム91を作り、このフレーム91の両面に表面板92を固定している。第1と第2の表面板92は、側縁を内側にコ字状に折り曲げて、互いに当接するようにフレーム91に固定している。この図に示すドアは、これまでに製造方法や構造が充分に考えられて、限界に近い状態までコストダウンされている。このため、さらにコストダウンすることは極めて難しい。重いフレームを方形状に組み立てるので、原料コストと組み立て加工のコストが高くなるからである。このために、図1に示すドアは、さらに安価に多量生産することができない。
【0003】
図1に示す従来のドアは、周縁に沿って厚い金属製のCチャンネル93を内蔵するので、全体の重量が相当に重くなる。たとえば、Cチャンネルの両面に、0.6mmの金属板である表面板を固定したドアの全重量は約40kgと相当に重くなる。軽量化するために、Cチャンネルを薄くすると強度が著しく低下する欠点がある。Cチャンネルがドアの補強材に使用されているからである。重いドアは、建物への取り付け部分に強靱な強度を要求する。ドアを開閉するときに、取り付け部分に強い衝撃を与えるからである。このためドアのコストが高くなるばかりでなく、取り付け部分のコストも高くなる欠点がある。
【0004】
さらに、図1に示す構造のドアは、表面板の加工に極めて高い精度が要求される。加工精度の誤差が、組み立て後におけるクリアランスの差となって、ドアの品質を低下させるからである。このため、この構造のドアは、部品コストと加工コストの両方が高くなって、製造コストが相当に高くなる欠点がある。
【0005】
本発明者は、この欠点を解消することを目的として、図2に示す構造のフレームレスドアを開発した。(特許文献1)
このフレームレスドアは、以下の構造を備える。
(a) 第1の表面板81と第2の表面板82と、一対の表面板の間の中空部に配設されている芯材85とを備える。
(b) 第1の表面板81は両側をコ字状に折曲して、所定の厚さのフレームレスドアの両側部を構成し、ドアの両側部の間に開口部を形成している。
(c) 第1の表面板81は、折曲部83の先端縁に、第2の表面板82の両側縁を連結する連結部84を設けている。
(d) 第2の表面板82を第1の表面板81に固定して、第1の表面板81と第2の表面板82とで閉鎖構造のフレームレスドアを構成できるように、第2の表面板82は、第1の表面板81の開口部に固定できる外形に形成している。
(e) 第1の表面板81の連結部84に、第2の表面板82の両側縁が連結されて中空箱形のフレームレスドアを構成している。
【特許文献1】特開平7−305573号公報
【特許文献2】特開2007−315046号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
以上のフレームレスドアは、ドアの両面をバランスよく同じ強度とするのが難しい欠点がある。本発明者は、この欠点を解決することを目的として、図3の断面図に示すフレームレス防火ドアを開発した。このフレームレス防火ドアは、ドアの第1の表面に固定している第1の表面板71と、ドアの第1の表面と反対側の面である第2の表面に固定している第2の表面板72とを備える。第1の表面板71と第2の表面板72は金属板である。第1の表面板71は、その側縁に沿って、ドアの内側に折曲している挿入片73を有し、第2の表面板72は、挿入片73を挿入する挟着溝74を金属板を折曲して設けている。第1の表面板71と第2の表面板72は、挿入片73を挟着溝74に挿入して、両側の側縁で連結している。
【0007】
図3のフレームレス防火ドアは、挿入片73を挟着溝74に挿入して、第1の表面板71を第2の表面板72に固定して組み立てできるので能率よく製造できる。しかしながら、この構造のフレームレス防火ドアは、第1の表面板71と第2の表面板72とを強固に連結するのが難しい。この欠点は、特許文献2に記載するように、挿入片を挟着溝で弾性的に挟着する構造で少なくできる。しかしながら、この構造によっても、フレームレス防火ドアとしては十分な強度で第1の表面板と第2の表面板を固定できない。それは、防火ドアは、火事などで片面が高温に加熱されてドアが熱歪みを起こすときに、挿入片に強い引き抜き力が作用して、挟着溝から引き抜かれるからである。挿入片の引き抜き力は、挟着溝が強く挿入片を弾性的に挟着する構造、たとえば第2の表面板を厚くて硬い金属板を使用することで少なくできる。ただ、この構造は、第2の表面板を厚く、あるいは高品質な金属板を使用する必要があって、重くて部品コストが高くなり、また挿入片を挟着溝にスムーズに挿入できなくなって、製造に手間がかかる欠点がある。
【0008】
本発明は、さらにこの欠点を解決することを目的に開発されたものである。本発明の重要な目的は、極めて簡単な構造で、挿入片を挟着溝に抜けない状態で固定できるフレームレス防火ドアを提供することにある。
また、本発明の他の大切な目的は、簡単かつ容易に、しかもスムーズに挿入片を挟着溝に挿入して、能率よく組み立てできるフレームレス防火ドアを提供することにある。
さらにまた、本発明の他の大切な目的は、火災などで加熱される状態においても、挿入片を挟着溝に抜けないように固定できるフレームレス防火ドアを提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0009】
本発明のフレームレス防火ドアは、建物用のフレームレス防火ドアであって、ドアの第1の表面に固定している金属板からなる第1の表面板1と、ドアの第1の表面と反対側の面である第2の表面に固定している金属板からなる第2の表面板2とを備える。第1の表面板1は、その側縁と平行に挿入片3を折曲して設けており、第2の表面板2は、この挿入片3を挿入する挟着溝4をU曲して設けており、挿入片3を挟着溝4に挿入して、第1の表面板1と第2の表面板2を固定している。さらに、挿入片3は、先端縁部を所定の幅で挟着溝4のU曲方向に折り返すように折曲して先端縁に沿って第1の折り返し積層片31を設けて片面を段差面32としており、第2の表面板2の挟着溝4を構成している金属板は、U曲して挟着溝4としてなる先端縁部を所定の幅で溝の内側に折り返すように折曲して、溝の開口部を狭くする第2の折り返し積層片41を設けて片面を段差面42としている。フレームレス防火ドアは、挿入片3に設けている第1の折り返し積層片31を、挟着溝4の第2の折り返し積層片41よりも内部に案内して、第1の折り返し積層片31の段差面32と第2の折り返し積層片41の段差面42とを互いに係止状態として、第1の折り返し積層片31と第2の折り返し積層片41の先端面とを互いに当接させて、第1の表面板1を第2の表面板2に抜けないように固定している。
【0010】
このフレームレス防火ドアは、極めて簡単な構造で、挿入片を挟着溝に抜けない状態でしっかりと固定できる。それは、挿入片と挟着溝に設けている折り返し積層片が互いに引っかかって、挿入片が挟着溝から抜けるのが阻止されるからである。とくに、この構造は、単に挿入片を挟着溝で挟着して抜け止めするのではなく、挿入片と挟着溝の両方の表面に折り返し積層片を設けて段差面を設け、これらの段差面を互い係止状態として、折り返し積層片の先端面が互いに当たる構造で抜け止めする。この構造は、挿入片に引き抜き力が作用するとき、挿入片に設けている第1の折り返し積層片の先端面が挟着溝に設けている第2の折り返し積層片の先端面に当たって引き抜きが阻止される。この状態で引き抜きを阻止する構造は、所定の幅で折り返すように折曲している折り返し積層片が変形しないかぎり、挿入片は挟着溝から引き抜きされない。挿入片に引き抜き力が作用するとき、折り返し積層片には、その両面と平行な方向に引き抜き力が作用する。この方向に作用する引き抜き力は、折り返すように折曲している折り返し積層片を平面状に復元する作用はなく、直線状の折り返し積層片をく字状に変形するように作用するが、金属板からなる折り返し積層片は、この方向の力に対して極めて強く、挿入片に作用する強い引き抜き力によっても変形せず、挿入片が挟着溝から引き抜かれるのを確実に阻止する。
【0011】
さらに、以上のフレームレス防火ドアは、簡単かつ容易に、しかもスムーズに挿入片を挟着溝に挿入して、能率よく組み立てできる特徴もある。それは、挿入片を挟着溝で強く挟着して抜け止めするのでなく、挿入片の片面と、挟着溝の内面に設けている段差面を係止状態として、引き抜きを阻止するからである。この構造は、挟着溝が挿入片を強く挟着して引き抜きを阻止する必要がない。このため、挿入片を挟着溝に挿入するときに、挟着溝を弾性的に変形させて、スムーズに挿入できる。
【0012】
さらに、以上のフレームレス防火ドアは、挿入片と挟着溝の先端縁部を所定の幅で折り返して折曲して折り返し積層片を設けているので、挿入片と挟着溝の先端部を折曲された折り返し積層片で補強できる特徴もある。このように、折り返し積層片で補強される挿入片と挟着溝は、所定の形状に保持された状態で、挿入片を挟着溝に挿入して互いに連結できるので能率よく組み立てできると共に、長期間にわたって挿入片が挟着溝から引き抜かれるのを確実に阻止できる。
【0013】
さらにまた、以上のフレームレス防火ドアは、火災などで片面が加熱されてドアが熱歪みを起こす状態となっても、挿入片を挟着溝に抜けないように固定できる特徴がある。このことは、とくに防火ドアに大切である。それは、火災で表面板が分離されると、火炎がドアを透過はて防火特性が低下からである。
【0014】
さらに、本発明の請求項2の建物用のフレームレス防火ドアは、第1の表面板1と第2の表面板2とを、厚さを0.9mm〜1.8mmとする鉄板としている。
【0015】
さらに、本発明の請求項3の建物用のフレームレス防火ドアは、挿入片3が挟着溝4に挿入された状態で、互いに対向して配設される第1の折り返し積層片31と第2の折り返し積層片41の先端面の隙間50を、0mm〜1mmとしている。
このフレームレス防火ドアは、互いに接近する挿入片と挟着溝の折り返し積層片の先端面の隙間を狭くしているので、第1の表面板を第2の表面板の定位置に確実に固定できる。
【0016】
さらに、本発明の請求項4の建物用のフレームレス防火ドアは、第1の表面板1が、側縁に沿って内側に折り返すように折曲されたU曲積層部6を備え、このU曲積層部6の内側に積層している内側積層片7を、ドアの内側に直角に折曲して挿入片3を設けている。
この構造のフレームレス防火ドアは、U曲積層部でもって表面板の側縁を補強して、挿入片を挟着溝に挿入して確実に固定できる特徴がある。
【0017】
さらにまた、本発明の請求項5の建物用のフレームレス防火ドアは、第2の表面板2が、側縁に沿って内側に折り返すように折曲されたU曲積層部6を備え、このU曲積層部6の内側に積層している内側積層片7を、ドアの内側に直角に折曲して側面プレート9を設けており、この側面プレート9の先端に挟着溝4を設けている請求項1に記載される。
この構造のフレームレス防火ドアは、U曲積層部でもって表面板の側縁側を補強しながら、側面プレートでU曲積層部を補強し、さらに、この側面プレートの先端部に設けた挟着溝に挿入片を挿入して、側面プレートと挟着溝と挿入片とでドアの側縁を補強して強靱な構造にできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施例は、本発明の技術思想を具体化するための建物用のフレームレス防火ドアを例示するものであって、本発明はフレームレス防火ドアを以下の実施例には特定しない。
【0019】
さらに、この明細書は、特許請求の範囲を理解しやすいように、実施例に示される部材に対応する番号を、「特許請求の範囲」および「課題を解決するための手段の欄」に示される部材に付記している。ただ、特許請求の範囲に示される部材を、実施例の部材に特定するものでは決してない。
【0020】
図4ないし図7は、本発明の第1の実施例にかかる建物用のフレームレス防火ドアを、図8は、本発明の第2の実施例にかかるフレームレス防火ドアを、図9は、本発明の第3の実施例にかかるフレームレス防火ドアをそれぞれ示している。これ等の図に示すフレームレス防火ドアは、第1の表面(図5及び図8において下面、図9において上面)に固定している第1の表面板1と、ドアの第1の表面と反対側の面である第2の表面(図5及び図8において上面、図9において下面)に固定している第2の表面板2と、第1の表面板1と第2の表面板2の上縁と下縁に固定している上枠11及び下枠12を備える。
【0021】
第1の表面板1と第2の表面板2は金属板である。表面板の金属板は、たとえば、厚さ1mmである。ただし、表面板に使用する金属板の厚さは、たとえば0.5mm〜1.8mm、好ましくは0.8mm〜1.5mm、さらに好ましくは、1mm〜1.5mmとすることができる。第1の表面板1と第2の表面板2は、鉄又は鉄合金からなる金属板である。金属板は、表面をプリントし、あるいは化粧シートを接着して綺麗に表面処理している。
【0022】
第1の表面板1は、両側の側縁と平行に、ドアの内側に折曲して挿入片3を設けている。第2の表面板2は、この挿入片3を挿入する挟着溝4を設けており、挿入片3を挟着溝4に挿入して、第1の表面板1と第2の表面板2を両側の側縁部で連結している。第1の表面板1と第2の表面板2は、ドアの外側表面の全面を覆う四角形で、両側縁を折曲加工している。
【0023】
図5と図8のフレームレス防火ドアは、第1の表面板1の両側の側縁から中央に離れた位置に挿入片3を設けている。これらの第1の表面板1は、両側縁に沿って内側に折り返すように折曲しているU曲積層部6を両側縁部に設け、さらに、このU曲層部6の内側に積層している内側積層片7の先端部をドアの内側に直角に折曲して挿入片3としている。図9のフレームレス防火ドアは、第1の表面板1の両側縁部を内側に直角に折曲して挿入片3としている。
【0024】
図5のフレームレス防火ドアは、第1の表面板1の両側縁に設けたU曲積層部6の先端縁をドアの側面と同一平面上として、U曲積層部6の先端部をドアの側面から突出しない構造としている。この構造のフレームレス防火ドアは、左右対称であって、表と裏が同じ形状となる。
【0025】
図8のフレームレス防火ドアは、第1の表面板1の一方の側縁(図において右側縁)である第1の側縁に、U曲積層部6からなる防犯用目板5を設けている。このフレームレス防火ドアは、U曲積層部6の幅を広くして、U曲積層部6の先端部をドアの側面から突出させて防犯用目板5としている。このように、第1の側縁に設けたU曲積層部6を防犯用目板5とするフレームレス防火ドアは、ドア枠とドアの間にできる隙間を防犯用目板5で閉塞できるので、防犯性に優れたドアを実現できる。このフレームレス防火ドアは、第1の表面板1の第1の側縁に設けたU曲積層部6を防犯用目板5とするが、第2の側縁に設けたU曲積層部6は、ドアの側面から突出せず防犯用目板とならない。すなわち、第2の側縁のU曲積層部6は、ドアの側面から突出しないように、防犯用目板5となる第1の側縁に設けているU曲積層部6よりも幅を狭くしている。
【0026】
挿入片3は、先端縁部を所定の幅で折り返すように折曲して、先端縁に沿って第1の折り返し積層片31を設けている。挿入片3は、図5、及び図7ないし図9に示すように、第1の折り返し積層片31を設けた部分を厚く、第1の折り返し積層片のない部分を薄くして、第1の折り返し積層片31でもって片側の表面を段差面32としている。図の挿入片3は、第1の折り返し積層片31の幅(W1)を、挿入片3の全幅(W)の約50%として、挿入片3の中央部に沿って段差面32を設けている。折り返し積層片の幅(W1)は、挿入片の全幅(W)の20%〜80%とすることができる。折り返し積層片の幅(W1)は、狭すぎても広すぎても、挿入片を抜けないように挟着溝に固定できない。挿入片を強固に挟着溝に抜けないように、最も強固に固定するために、好ましくは、折り返し積層片の幅(W1)は、挿入片の全幅(W)の30%〜70%とする。
【0027】
さらに、図のフレームレス防火ドアは、挿入片3の全幅(W)を、ドアの厚さ(T)の約50%としている。このフレームレス防火ドアは、挿入片3を挟着溝4に挿入して第1の表面板1と第2の表面板2とを確実に固定できる。ただし、挿入片の全幅(W)は、ドアの厚さ(T)の20%〜80%とすることもできる。挿入片の全幅を狭くすると、挟着溝に挿入される幅が狭くなって、挿入片を挟着溝に強固に固定するのが難しくなる。反対に挿入片の幅を広くすると、第1の表面板に加工する金属板の幅が広くなって、材料コストが高く、ドアが重くなる。したがって、挿入片の全幅(W)は、第1の表面板と第2の表面板とに要求される連結強度と、材料コストとドアの重量とを考慮して、前述の範囲で最適値に設計され、好ましくは、ドアの厚さ(T)の30%〜70%に設定される。
【0028】
第2の表面板2は、第1の表面板1を連結する第1の表面側に、第1の表面板1の両側に沿って設けた挿入片3を挿入して連結する挟着溝4を設けている。第2の表面板2は、両側縁部において、金属板を折曲加工して、第1の表面板1の挿入片3の挿入位置に挟着溝4を設けている。
【0029】
図5と図8のフレームレス防火ドアは、第2の表面板2を、第1の側縁と第2の側縁で内側に直角に折曲して、ドアの側面プレート9を設けている。側面プレート9は、その幅をドアの厚さとしている。さらに、側面プレート9の先端縁を内側に直角に折曲して、第1の表面板1の内面に面接触させる折返片10を設けている。折返片10は、その先端に設けている挟着溝4を、第1の表面板1の挿入片3を挿入する位置とする幅としている。折返片10の先端は、さらに内側に直角に折曲すると共に、溝形に折曲して挟着溝4を設けている。挟着溝4は、挿入される挿入片3を弾性的に挟着する幅に折曲加工している。
【0030】
図9のフレームレス防火ドアは、第2の表面板2を、第2の側縁で内側に直角に折曲して、ドアの側面プレート9を設けると共に、第1の側縁に沿って内側に折り返すように折曲してU曲積層部6を設け、さらに、このU曲層部6の内側に積層している内側積層片7の先端部をドアの内側に直角に折曲して側面プレート9を設けている。この第2の表面板2は、側面プレート9の先端縁を内側に折曲して折返片を設けることなく、側面プレート9の先端部の内側に挟着溝4を設けている。第2の表面板2は、側面プレート9の先端縁部を折り返すように折曲し、さらに挟着溝4の底で折り返すように溝形に折曲して、挟着溝4を設けている。挟着溝4は、挿入片3の挿入方向が、側面プレート9と平行な方向となる。この挟着溝4も、挿入される挿入片3を弾性的に挟着する幅に折曲加工している。さらに、図9のフレームレス防火ドアは、第1の側縁に設けたU曲積層部6を、ドアの側面から突出させて防犯用目板5としている。このフレームレス防火ドアも、ドア枠とドアの間にできる隙間を防犯用目板5で閉塞できるので、防犯性に優れたドアを実現できる。
【0031】
第2の表面板2の挟着溝4を構成している金属板は、U曲して挟着溝4としているその先端縁部を、所定の幅で溝の内側に折り返すように折曲加工して挟着溝4の内側に積層される第2の折り返し積層片41を設けている。この第2の折り返し積層片41は、図5、及び図7ないし図9に示すように、溝の開口部にあって、挟着溝4の幅を狭くして、挟着溝4の片側の内面を段差面42としている。挟着溝4は、第2の折り返し積層片41を設けている部分の内幅(H2)が狭く、第2の折り返し積層片41のない部分の内幅(H1)を広くして、内面を段差面42としている。挟着溝4は、内幅の広い部分に、挿入片3に設けている第1の折り返し積層片31が案内される。したがって、第2の折り返し積層片41の幅(W2)は、挿入片3の第1の折り返し積層片31を設けない部分の幅となる。図のフレームレス防火ドアは、第1の折り返し積層片31の幅(W1)を、挿入片3の全幅(W)の約50%とするので、第2の折り返し積層片41の幅(W2)も挟着溝4の深さ(D)の約50%として、第1の折り返し積層片31を設けない部分に、第2の折り返し積層片41を配設している。このフレームレス防火ドアは、挿入片3を挟着溝4に挿入する状態で、互いに対向して配設される第1の折り返し積層片31と第2の折り返し積層片41の先端面の隙間50がほぼ0となって、第1の折り返し積層片31と第2の折り返し積層片41の先端面が接触する。このフレームレス防火ドアは、第1の折り返し積層片31と第2の折り返し積層片41の先端面が接触する状態で挿入片3を挟着溝4に挿入しているので、第1の表面板1は、第2の表面板2に対して全く抜けない状態で固定される。ただし、第1の折り返し積層片31と第2の折り返し積層片41の先端面の隙間50は、たとえば、0mm〜1mm、好ましくは0〜0.5mm、さらに好ましくは0〜0.3mmとすることもできる。第1の折り返し積層片31と第2の折り返し積層片41の隙間50を狭くして、第1の表面板1を第2の表面板2から抜けないように連結できるが、この隙間50を狭くすると、高い加工精度が要求される。それは、加工精度が低いと、第2の折り返し積層片41を、第1の折り返し積層片31のない領域に挿入できなくなって、第1の折り返し積層片31と第2の折り返し積層片41が先端部で重なって、係止状態で抜け止めできなくなるからである。
【0032】
以上のフレームレス防火ドアは、挿入片3に設けている第1の折り返し積層片31を、挟着溝4の第2の折り返し積層片41よりも内部に挿入して、第1の折り返し積層片31の段差面31と第2の折り返し積層片41の段差面42を互いに係止状態として、第1の表面板1と第2の表面板2とを抜けないように連結する。すなわち、第1の折り返し積層片31と第2の折り返し積層片41とを同一面に配置することで、第1の折り返し積層片31と第2の折り返し積層片41の先端面を互いに当たる状態として、第1の表面板1を第2の表面板2から抜けないように固定している。
【0033】
さらに、フレームレス防火ドアは、図6の断面図に示すように、第1の表面板1と第2の表面板2の上縁に沿って上枠11を、下縁に沿って下枠12を内蔵する。第1の表面板1と第2の表面板2は、上縁を上枠11に固定し、下縁を下枠12に固定している。上枠11と下枠12は、表面板よりも厚い金属板を溝形に折曲加工しているチャンネル材である。チャンネル材の上枠11は、溝の開口部を上向きとし、下枠12は溝の開口部を下向きとして、第1の表面板1と第2の表面板2の間に固定している。さらに、これ等の図に示すフレームレス防火ドアは、第1の表面板1と第2の表面板2の上縁と下縁を互いに内側に直角に折曲して積層し、積層部13を結合している。表面板の積層部13は、スポット溶接し、あるいはリベットで連結し、あるいはまた接着して結合される。
【0034】
さらに、図5、図8、及び図9に示すフレームレス防火ドアは、第2の側縁側であって、蝶番14を固定する位置に固定台16を内蔵している。固定台16は、表面板よりも厚い鉄などの金属材をコ字状に折曲加工しているチャンネル材18である。チャンネル材18は、ドアの内幅に等しい幅の固定プレート18Aの両側に側壁18Bを有し、横断面形状をコ字状としている。
【0035】
蝶番14を固定する固定台16は、図に示すように、ドアの側面プレート9の内面に固定プレート18Aを接触して固定される。この固定台16は、表面板に接着して固定され、あるいは止ネジ19で固定される。蝶番14は、止ネジ19を、固定台16であるチャンネル材18の固定プレート18Aにねじ込んで固定される。図4のフレームレス防火ドアは、上下方向の3カ所に固定台16を内蔵して、3個の蝶番14を固定している。
【0036】
さらに、図4に示すフレームレス防火ドアは、第1の側縁側であって、ドアロック(図示せず)を固定する位置に固定台17を内蔵している。この固定台17は、図示しないが、表面板よりも厚い鉄などの金属材をコ字状に折曲加工しており、第1の表面板1と第2の表面板2の間に固定されて、第1の側縁側に配置されるドアロックを定位置に固定している。
【0037】
以上のフレームレス防火ドアは、以下の工程で組み立てられる。
(1)第2の表面板2の内面に、上枠11と下枠12と固定台16、17を接着して固定する。
(2)第2の表面板2に第1の表面板1を連結すると共に、第1の表面板1の内面を、上枠11と下枠12と固定台16、17に接着する。第1の表面板1は、挿入片3を挟着溝4に挿入して第2の表面板2に連結される。このとき、挿入片3と挟着溝4は、接着して結合される。
(3)第1の表面板1と第2の表面板2は、上側縁と下側縁の積層部13を接着して結合する。
(4)第2の側縁側に内蔵している固定台16に蝶番14を固定すると共に、第1の側縁側に内蔵している固定台17にドアロックを固定する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】従来の一般的なドアの水平断面図である。
【図2】従来のフレームレスドアの分解断面図である。
【図3】本発明者が先に開発したフレームレス防火ドアの断面図である。
【図4】本発明の第1の実施例にかかる建物用のフレームレス防火ドアの正面図である。
【図5】図4に示す建物用のフレームレス防火ドアの一部拡大水平断面図である。
【図6】図4に示す建物用のフレームレス防火ドアの垂直断面図である。
【図7】図5に示すフレームレス防火ドアの要部拡大分解断面図である。
【図8】本発明の第2の実施例にかかる建物用のフレームレス防火ドアの一部拡大水平断面図である。
【図9】本発明の第3の実施例にかかる建物用のフレームレス防火ドアの一部拡大水平断面図である。
【符号の説明】
【0039】
1…第1の表面板
2…第2の表面板
3…挿入片
4…挟着溝
5…防犯用目板
6…U曲積層部
7…内側積層片
9…側面プレート
10…折返片
11…上枠
12…下枠
13…積層部
14…蝶番
16…固定台
17…固定台
18…チャンネル材 18A…固定プレート
18B…側壁
19…止ネジ
31…第1の折り返し積層片
32…段差面
41…第2の折り返し積層片
42…段差面
50…隙間
71…第1の表面板
72…第2の表面板
73…挿入片
74…挿入溝
81…第1の表面板
82…第2の表面板
83…折曲部
84…連結部
85…芯材
91…フレーム
92…表面板
93…Cチャンネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物用のフレームレス防火ドアであって、ドアの第1の表面に固定している金属板からなる第1の表面板(1)と、ドアの第1の表面と反対側の面である第2の表面に固定している金属板からなる第2の表面板(2)とを備え、
第1の表面板(1)は、その側縁と平行に挿入片(3)を折曲して設けており、第2の表面板(2)は、この挿入片(3)を挿入する挟着溝(4)をU曲して設けており、挿入片(3)が挟着溝(4)に挿入されて、第1の表面板(1)と第2の表面板(2)を固定しており、
さらに、前記挿入片(3)は先端縁部を、所定の幅で挟着溝(4)のU曲方向に折り返すように折曲して先端縁に沿って第1の折り返し積層片(31)を設けて片面を段差面(32)としており、第2の表面板(2)の挟着溝(4)を構成している金属板は、U曲して挟着溝(4)としてなる先端縁部を所定の幅で溝の内側に折り返すように折曲して、溝の開口部を狭くする第2の折り返し積層片(41)を設けて片面を段差面(42)としており、
前記挿入片(3)に設けている第1の折り返し積層片(31)が、前記挟着溝(4)の第2の折り返し積層片(41)よりも内部に案内されて、第1の折り返し積層片(31)の段差面(32)と第2の折り返し積層片(41)の段差面(42)が互いに係止状態となって、第1の折り返し積層片(31)と第2の折り返し積層片(41)の先端面が、互いに当たって、第1の表面板(1)が第2の表面板(2)から抜けないように固定してなる建物用のフレームレス防火ドア。
【請求項2】
前記第1の表面板(1)と前記第2の表面板(2)が、厚さを0.5mm〜1.8mmとする鉄板である請求項1に記載される建物用のフレームレス防火ドア。
【請求項3】
前記挿入片(3)が前記挟着溝(4)に挿入された状態で、互いに対向して配設される第1の折り返し積層片(31)と第2の折り返し積層片(41)の先端面の隙間(50)が、0mm〜1mmである請求項1に記載される建物用のフレームレス防火ドア。
【請求項4】
前記第1の表面板(1)が、側縁に沿って内側に折り返すように折曲されたU曲積層部(6)を備え、このU曲積層部(6)の内側に積層している内側積層片(7)を、ドアの内側に直角に折曲して挿入片(3)を設けている請求項1に記載される建物用のフレームレス防火ドア。
【請求項5】
前記第2の表面板(2)が、側縁に沿って内側に折り返すように折曲されたU曲積層部(6)を備え、このU曲積層部(6)の内側に積層している内側積層片(7)を、ドアの内側に直角に折曲して側面プレート(9)を設けており、この側面プレート(9)の先端に挟着溝(4)を設けている請求項1に記載される建物用のフレームレス防火ドア。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−1623(P2010−1623A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−159799(P2008−159799)
【出願日】平成20年6月18日(2008.6.18)
【出願人】(391016886)日本フネン株式会社 (30)
【Fターム(参考)】