説明

建物

【課題】粉末材料を芯材として用いた真空断熱材を適用しても、粉末材料の飛散を防止できる建物を提供する。
【解決手段】室内空間を構成する内壁6と、内壁6の室内側の面に固定された真空断熱材5と、真空断熱材5を室内側から覆い隠すと共に真空断熱材5を室内側から保護するように内壁6に固定部材8で固定された突き刺し防止板7とからなり、真空断熱材5は、熱溶着層同士が対向するガスバリア性の外被材の間に、粉末材料からなる複数の芯材が、厚み方向に略垂直な方向に互いに所定間隔離して配置されて減圧密封されており、複数の芯材のそれぞれが独立した減圧空間内に位置するように、隣接する芯材と芯材との間の外被材(熱溶着層)同士を熱溶着したものであるので、施工時の作業環境の悪化及び居住時の生活空間の汚染を防止でき、長期間にわたり高い断熱効果を維持可能な建物となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室内空間を構成する壁に真空断熱材を適用した建物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化抑制の観点より、家電製品や産業機器の省エネルギー化と並び住宅起因のエネルギー削減も取り組むべき重要な課題である。住宅起因のエネルギー消費削減には冷暖房運転の負荷低減が効果は大きく、そのためには住宅駆体の断熱強化が必須である。そのため様々な断熱材の適用や各種断熱施工法が提案されている。
【0003】
断熱材の中でも、真空断熱材は気相容積比率の大きな芯材を、ガスバリア性を有する外被材中に減圧密封されたものであり、他の断熱材に比べて非常に断熱性能が優れている。そのため真空断熱材を適用すると、徒に壁厚を大きくすることなしに、断熱性の高い建物を施工できる。
【0004】
真空断熱材の芯材としては繊維材料、粉末材料、連通化した発泡体などが用いられ、その中でも粉末材料については、真空度の劣化に対する断熱性能の悪化の割合が小さいことが一般に知られている。従って粉末材料を芯材とする真空断熱材の断熱性能は経年変化量が小さく、10年から30年以上の長期にわたる耐久性を要求される住宅等の適用に対して非常に有効である。
【0005】
ここで芯材として粉末材料を用いた真空断熱材には、パーライト粉末中に粉末状カーボンが均一分散しているものや、粉体状カーボンがカーボンブラックであるものが提案されている(特許文献1)。
【0006】
また、種々粉末にカーボン粉末が均一分散しているもの(特許文献2)、フェロシリコン生産で発生される微粉末を用いたもの(特許文献3)が提案されている。
【0007】
図15に示すように、粉末材料を用いた真空断熱材1は、クラフト紙や不織布等の通気性を有する材料2によって、芯材3である粉末材料を包んだ後、ガスバリア性を有する外被材4の中で減圧密封されている。
【特許文献1】特開昭60−33479号公報
【特許文献2】特公昭61−36595号公報
【特許文献3】特公平8−20032号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記従来の真空断熱材1をその優れた断熱性能を活かすため、住宅に対して適用する場合、真空断熱材1が施工時において現場の異物によって傷付けられたり、作業者の釘打ちやカットによって突き刺されたりする可能性があり、その際、粉末材料が現場に飛散し作業環境が悪化する懸念がある。また居住者が不意に真空断熱材を傷付けた場合、生活空間を汚染することも有り得る。
【0009】
本発明は上記課題を解決するもので、優れた断熱性能を長期間にわたり維持可能である粉末材料を芯材として用いた真空断熱材を適用しても、粉末材料の飛散を防止できる建物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の建物は、室内空間を構成する内壁と、前記内壁の室内側の面に固定された真空断熱材と、前記真空断熱材を室内側から覆い隠すと共に前記真空断熱材を室内側から保護するように前記内壁に固定された突き刺し防止板とからなり、前記真空断熱材は、熱溶着層同士が対向するガスバリア性の外被材の間に、複数の芯材が、厚み方向に略垂直な方向に互いに所定間隔離して配置されて減圧密封されており、前記複数の芯材のそれぞれが独立した減圧空間内に位置するように、隣接する前記芯材と前記芯材との間の前記外被材同士を熱溶着したものであり、前記芯材に粉末材料を用いたのである。
【0011】
本発明では、複数の芯材のそれぞれが独立した減圧空間内に位置するように、隣接する芯材と芯材との間の外被材同士を熱溶着したので、作業者による施工過程や居住者による実生活時において真空断熱材の傷付きや突き刺しが発生した場合でも、粉末材料の飛散が破壊された芯材だけに限定される。また芯材が成形された粉末は飛散が大幅に抑制されることになる。
【0012】
更に、真空断熱材を室内側から覆い隠すと共に真空断熱材を室内側から保護するように突き刺し防止板を内壁に固定したので、真空断熱材の傷付きや突き刺し自体を抑制できる。
【0013】
上記効果により、真空断熱材の粉末材料によって生じると想定された施工時の作業環境の悪化及び居住時の生活空間の汚染を防止することが可能であり、長期間にわたり優れた断熱性能を維持できる真空断熱材を適用した断熱効果が高い建物を提供できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の建物は、複数の芯材のそれぞれが独立した減圧空間内に位置するように、隣接する芯材と芯材との間の外被材同士を熱溶着したので、作業者による施工過程や居住者による実生活時において真空断熱材の傷付きや突き刺しが発生した場合でも、粉末材料の飛散が破壊された芯材だけに限定される。また芯材が成形された粉末は飛散が大幅に抑制されることになる。
【0015】
更に、真空断熱材を室内側から覆い隠すと共に真空断熱材を室内側から保護するように突き刺し防止板を内壁に固定したので、真空断熱材の傷付きや突き刺し自体を抑制できる。
【0016】
上記効果により、真空断熱材の粉末材料によって生じると想定された施工時の作業環境の悪化及び居住時の生活空間の汚染を防止することが可能であり、長期間にわたり優れた断熱性能を維持できる真空断熱材を適用した断熱効果が高い建物を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の請求項1に記載の建物の発明は、室内空間を構成する内壁と、前記内壁の室内側の面に固定された真空断熱材と、前記真空断熱材を室内側から覆い隠すと共に前記真空断熱材を室内側から保護するように前記内壁に固定された突き刺し防止板とからなり、
前記真空断熱材は、熱溶着層同士が対向するガスバリア性の外被材の間に、複数の芯材が、厚み方向に略垂直な方向に互いに所定間隔離して配置されて減圧密封されており、前記複数の芯材のそれぞれが独立した減圧空間内に位置するように、隣接する前記芯材と前記芯材との間の前記外被材同士を熱溶着したものであり、前記芯材に粉末材料を用いたことを特徴とするものである。
【0018】
本発明の建物は、複数の芯材のそれぞれが独立した減圧空間内に位置するように、隣接する芯材と芯材との間の外被材同士を熱溶着したので、作業者による施工過程や居住者による実生活時において真空断熱材の傷付きや突き刺しが発生した場合でも、粉末材料の飛散が破壊された芯材だけに限定される。また芯材が成形された粉末は飛散が大幅に抑制されることになる。そのため、作業環境の悪化や生活環境の汚染が抑制される。
【0019】
さらに各々の芯材は互いに独立し、減圧状態にあるので、個々の芯材の真空度低下による断熱性能の悪化についても、当該芯材以外の芯材にはその影響が及ばず、全体としての断熱性能は充分に維持できることも言うまでもない。本特性によって、施工時における釘打ちや、現場における異物が原因の芯材の傷付きや突き刺しによる真空度悪化の影響を真空断熱材全体に波及することが防止されている。
【0020】
また、粉末材料を芯材とする真空断熱材は、真空度の劣化に対する断熱性能の悪化の割合が小さいことが一般に知られている。従って粉末材料を芯材とする真空断熱材は断熱性能の経年変化量が小さく、10年から30年以上の長期にわたる耐久性を要求される住宅等の適用に対して好適である。
【0021】
ここで粉末材料としては、粉末間で形成される空隙間距離が100μm以下であることが好ましい。この場合、工業的に容易に実現可能な1Pa〜100Paで真空断熱材において気体熱伝導の影響を無視できるようになる。
【0022】
更に、真空断熱材を室内側から覆い隠すと共に真空断熱材を室内側から保護するように突き刺し防止板を内壁に固定したので、突き刺し防止板に対して居住者が押しピン等を突き刺した場合も、突き刺し部を突き刺し防止板の厚みによって吸収し、真空断熱材における芯材の破壊を阻止することができるので、芯材粉末の飛散リスクを小さくできる。
【0023】
さらに突き刺し防止板の上に壁紙やクロスの施工も実施可能であり、居住者の趣向に合わせた居住空間を実現できる。
【0024】
上記効果により、真空断熱材の粉末材料によって生じると想定された施工時の作業環境の悪化及び居住時の生活空間の汚染を防止することが可能であり、長期間にわたり優れた断熱性能を維持できる真空断熱材を適用した断熱効果が高い建物を提供できる。
【0025】
請求項2に記載の建物の発明は、請求項1に記載の発明において、前記真空断熱材が、前記外被材の間に前記芯材がない部分の前記外被材同士を密着させて、前記密着した前記外被材同士を熱溶着してなり、前記外被材同士が密着する全ての部分の前記外被材同士が熱溶着されていることを特徴とするものである。
【0026】
従って、請求項1に記載の発明の効果に加えて、真空断熱材が、外被材の間に芯材がない部分の前記外被材同士を密着させて、前記密着した前記外被材同士を熱溶着してなり、前記外被材同士が密着する全ての部分の前記外被材同士が熱溶着されているので、比較的に強固に芯材を外被材に保持することが可能であり、真空断熱材の傷付きや突き刺しが発生した場合でも、粉末材料の飛散を一層抑制できる。
【0027】
また、対向する二枚の外被材の外周部同士のみを熱溶着した真空断熱材や三方を熱溶着した袋状の外被材に芯材を入れて袋状の外被材の開口部を熱溶着した真空断熱材と比べて、熱溶着部を広く形成することが可能であり、粉末材料である芯材を外被材によって真空封止する時に粉末が挟雑物となっても、その影響を低減し、芯材空間における真空度を維持できるように熱溶着を実施することができる。
【0028】
請求項3に記載の建物の発明は、請求項1または2に記載の発明において、前記芯材が、粉末材料を成形してなる固形体であることを特徴とするものであり、粉末が固形化されているので、真空断熱材が傷付けられたり、突き刺されたりしても粉末の飛散が大きく抑制される。また固形体であるので、芯材形状を自由に形成することができるので、施工性や断熱効果を考慮した芯材パターンを設計できる。
【0029】
請求項4に記載の建物の発明は、請求項1から3のいずれか一項に記載の発明において、前記突き刺し防止板の室内側の面に前記真空断熱材の芯材位置を明示したことを特徴とするものであり、突き刺し防止板の施工(固定)時においても、作業者は芯材位置を容易に確認できるので真空断熱材における芯材の破壊される可能性が大幅に低下し、芯材粉末の飛散を防止できる。
【0030】
請求項5に記載の建物の発明は、請求項1から4のいずれか一項に記載の発明において、前記真空断熱材は、前記外被材同士を熱溶着した熱溶着部を貫通して前記内壁に突き刺さる固定部材により前記内壁の室内側の面に固定されていることを特徴とするものであり、釘、ネジ、タッカー等の固定部材により真空断熱材を確実に内壁に固定することができると同時に、固定部材によって真空断熱材に対して傷付きや突き刺しが発生した場合も、請求項1から4に記載の効果により芯材粉末の飛散を抑制でき、施工時の作業環境の保全を確保することができる。
【0031】
請求項6に記載の建物の発明は、請求項1から5のいずれか一項に記載の発明において、前記真空断熱材は、接着剤により前記内壁の室内側の面に固定されていることを特徴とするものであり、接着剤による固定なので、内壁に対する密着性を確保できることに加え、施工時においても真空断熱材に対する傷付きや突き刺しの懸念が小さく、芯材粉末の飛散リスクを低減できる。
【0032】
請求項7に記載の建物の発明は、請求項1から6のいずれか一項に記載の発明において、前記内壁が既存の建物の室内空間を構成する壁であることを特徴とするものであり、既存建物の壁構造を破壊することなく、真空断熱材を室内空間を構成する壁の室内側の面に設けるという容易な方法で、建物の断熱強化を図ることが可能となる。
【0033】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明するが、これらの実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0034】
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1の建物における壁の室内側の面の内部を示す平面図、図2は図1のA−A線断面図、図3は図1のB−B線断面図、図4は同実施の形態の建物に用いた真空断熱材の平面図、図5は図4のC−C線断面図、図6は同実施の形態の建物に用いた突き刺し防止板の平面図、図7は同実施の形態の建物の突き刺し防止板に壁紙を貼った場合の平面図である。
【0035】
図1から図3に示すように、本実施の形態の建物は、真空断熱材5を室内空間を構成する内壁6の室内側の面に固定し、真空断熱材5を室内側から覆い隠すと共に真空断熱材5を室内側から保護するように内壁6に突き刺し防止板7を釘やネジ等の固定部材8で固定している。
【0036】
図4と図5に示すように、真空断熱材5は、熱溶着層12同士が対向するガスバリア性の二枚の外被材10の間に、粉末材料からなる複数の芯材9が、厚み方向に略垂直な方向に互いに所定間隔離して縦方向と横方向に碁盤目状に配置されて減圧密封されており、複数の芯材9のそれぞれが独立した減圧空間内に位置するように、隣接する芯材9と芯材9との間及び各芯材9の周囲に外被材(熱溶着層12)同士を熱溶着した熱溶着部11を設けたものである。
【0037】
ここで、芯材9に使用する粉末材料は、真空包装時に芯材部の気相容積率が90%前後となるものが好ましく、無機系、有機系、およびこれらの混合物があり、工業的には乾式シリカ、湿式シリカ、パーライト等を主成分とするものが利用できる。
【0038】
粉末材料としては、粉末間で形成される空隙間距離が100μm以下であることが好ましい。この場合、工業的に容易に実現可能な1Pa以上の真空度にて真空断熱材における気体熱伝導の影響を無視できるようになるからである。
【0039】
本実施の形態では、平均一次粒子径が100nm以下の乾式シリカと、カーボンブラックを全量に対し4.5〜16wt%混合した粉末材料を用いており、この混合粉末を不織布等の通気性を有する材料(図示せず)にて充填したものを、外被材10で覆い減圧密封している。
【0040】
図5に示すように、真空断熱材5の外被材10はラミネート構造を有しており、芯材9側(内側)に熱溶着層12、中間層にガスバリア層、外側に保護層を有する。
【0041】
ここで、熱溶着層12は、加熱加圧することで外被材10の内部を減圧封止するものであり、本実施の形態における熱溶着部11の幅は10mmとしている。
【0042】
また、ガスバリア層は、外被材10の表面を通じての芯材9への空気の侵入を防ぐものであり、保護層は、外被材10の表面における埃や塵等による傷つきや、摩擦、折り曲げ、さらには芯材9による突き刺し等によるピンホールの発生を防ぐものである。
【0043】
このようにして作製した真空断熱材5の熱伝導率は、平均温度24℃において、0.0030〜0.0040W/m・Kであり、汎用的な断熱材である硬質ウレタンフォームの6〜8倍もの断熱性能を有する。
【0044】
図6に示すように、突き刺し防止板7の室内側の面には、真空断熱材5の芯材9位置を明示する明示部13がある。
【0045】
なお、本実施の形態では、突き刺し防止板7として石膏ボードを採用しており、その厚みは10mmである。突き刺し防止の目的を果たすには、厚みは突き刺し物の長さ以上であることが必要であり、押しピン等を想定すると、7mmより大きい厚みであることが必要である。突き刺し防止板7の上には図7に示すように、壁紙14を貼付して、建物の居住空間の意匠を高めることができる。
【0046】
以上のように、本実施の形態の建物は、室内空間を構成する内壁6と、内壁6の室内側の面に固定された真空断熱材5と、真空断熱材5を室内側から覆い隠すと共に真空断熱材5を室内側から保護するように内壁6に固定された突き刺し防止板7とからなり、真空断熱材5は、熱溶着層12同士が対向するガスバリア性の外被材10の間に、複数の芯材9が、厚み方向に略垂直な方向に互いに所定間隔離して配置されて減圧密封されており、複数の芯材9のそれぞれが独立した減圧空間内に位置するように、隣接する芯材9と芯材9との間の外被材(熱溶着層12)同士を熱溶着したものであり、芯材9に粉末材料を用いている。
【0047】
本実施の形態では、複数の芯材9のそれぞれが独立した減圧空間内に位置するように、隣接する芯材9と芯材9との間の外被材(熱溶着層12)同士を熱溶着したので、作業者による施工過程や居住者による実生活時において真空断熱材5の傷付きや突き刺しが発生した場合でも、粉末材料の飛散が破壊された芯材9だけに限定される。また芯材9が成形された粉末は飛散が大幅に抑制されることになる。そのため、作業環境の悪化や生活環境の汚染が抑制される。
【0048】
さらに各々の芯材9は互いに独立し、減圧状態にあるので、個々の芯材9の真空度低下による断熱性能の悪化についても、当該芯材9以外の芯材9にはその影響が及ばず、全体としての断熱性能は充分に維持できることも言うまでもない。本特性によって、施工時における釘打ちや、現場における異物が原因の芯材9の傷付きや突き刺しによる真空度悪化の影響を真空断熱材5全体に波及することが防止されている。
【0049】
また、粉末材料を芯材9とする真空断熱材5は、真空度の劣化に対する断熱性能の悪化の割合が小さいことが一般に知られている。従って粉末材料を芯材とする真空断熱材5は断熱性能の経年変化量が小さく、10年から30年以上の長期にわたる耐久性を要求される住宅等の適用に対して好適である。
【0050】
更に、真空断熱材5を室内側から覆い隠すと共に真空断熱材5を室内側から保護するように突き刺し防止板7を内壁6に固定したので、突き刺し防止板7に対して居住者が押しピン等を突き刺した場合も、突き刺し部を突き刺し防止板6の厚みによって吸収し、真空断熱材5における芯材9の破壊を阻止することができるので、芯材粉末の飛散リスクを小さくできる。
【0051】
上記効果により、真空断熱材5の粉末材料によって生じると想定された施工時の作業環境の悪化及び居住時の生活空間の汚染を防止することが可能であり、長期間にわたり優れた断熱性能を維持できる真空断熱材5を適用した断熱効果が高い建物を提供できる。
【0052】
また、本実施の形態では、突き刺し防止板7の室内側の面に、真空断熱材5の芯材9位置を明示する明示部13があるので、突き刺し防止板7の施工(固定)時においても、作業者は芯材9位置を容易に確認できるので真空断熱材5における芯材9の破壊される可能性が大幅に低下し、芯材粉末の飛散を防止できる。
【0053】
また、本実施の形態では、真空断熱材5は、外被材10(熱溶着層12)同士を熱溶着した熱溶着部11を貫通して内壁6に突き刺さる固定部材8により内壁6の室内側の面に固定されているが、突き刺し防止板7の明示部により、固定部材8による真空断熱材5に対する傷付きや突き刺しの発生を防止できる。
【0054】
また、釘、ネジ、タッカー等の固定部材8により真空断熱材5を確実に内壁6に固定することができると同時に、固定部材8によって真空断熱材5に対して傷付きや突き刺しが発生した場合も、芯材粉末の飛散を抑制でき、施工時の作業環境の保全を確保することができる。
【0055】
本実施の形態では、突き刺し防止板7を内壁6に固定する固定部材8が、外被材10(熱溶着層12)同士を熱溶着した熱溶着部11を貫通して内壁6に突き刺さり、真空断熱材5を内壁6に固定しているが、突き刺し防止板7を内壁6に固定する固定部材8とは別の釘、ネジ、タッカー等の外被材10(熱溶着層12)同士を熱溶着した熱溶着部11を貫通して内壁6に突き刺さる固定部材を真空断熱材5の固定のためだけに用いても構わない。
【0056】
(実施の形態2)
図8は、本発明の実施の形態2の建物に用いた真空断熱材の平面図、図9は図8のD−D線断面図である。
【0057】
本実施の形態の建物は、実施の形態1の建物における真空断熱材5の代わりに、真空断熱材15を用いたものであり、その他の構成は実施の形態1の建物と同様である。
【0058】
本実施の形態の建物に用いた真空断熱材15は、熱溶着層12同士が対向するガスバリア性の二枚の外被材10の間に、粉末材料を成形してなる固形体の複数の芯材が16、厚み方向に略垂直な方向に互いに所定間隔離して縦方向と横方向に碁盤目状に配置されて減圧密封されており、複数の芯材16のそれぞれが独立した減圧空間内に位置するように、外被材10の間に芯材16がない部分の外被材10同士(隣接する芯材16と芯材16との間の外被材10同士を含む)を密着させて、その密着した外被材10(熱溶着層12)同士を熱溶着してなり、大気圧下で外被材10(熱溶着層12)同士が密着する全ての部分の外被材10(熱溶着層12)同士が熱溶着されている。
【0059】
真空断熱材15は、内面に熱溶着層12を有するガスバリア性のラミネートフィルムからなる外被材10内に複数の芯材16を厚み方向に略垂直な方向に互いに所定間隔離して配置して例えば0.1Torr以下の減圧空間内において減圧密封した後、外被材10の外圧を大気圧にして外被材10の外圧と内圧との差圧で外被材10の間に芯材16がない部分の外被材10(熱溶着層12)同士を密着させ、前記差圧で外被材10(熱溶着層12)同士が密着している部分に熱溶着層12が溶融するのに必要な熱を非接触で加えて、密着している外被材10(熱溶着層12)同士を熱溶着する製造方法により得られる。
【0060】
ここで、減圧空間内において外被材10内に芯材16を減圧密封する工程は、例えば0.1Torr以下に減圧された真空包装機の減圧チャンバー内で、芯材16が挿入された袋状の外被材10の開口部を、一対の熱溶着バーで挟んで加熱加圧により熱溶着するものであっても、真空包装機の減圧チャンバー内で、芯材16を覆う二枚の外被材10の外周部同士を全周にわたって一対の熱溶着バーで挟んで加熱加圧により熱溶着するものであっても構わない。
【0061】
また、外被材10内に芯材16を減圧密封する工程と、外被材10の外圧を大気圧にして外被材10の外圧と内圧との差圧で密着している外被材10(熱溶着層12)同士を熱溶着する工程とを、内部空間の真空排気と真空開放が可能なチャンバー内で行っても良いし、減圧空間内において外被材10内に芯材16を減圧密封したものを、減圧空間から取り出すことにより、外被材10の外圧を大気圧にしても良い。
【0062】
また、非接触で加える熱溶着層12が溶融するのに必要な熱は、ヒータの輻射熱と周囲の温度とすることができ、また、非接触で加える熱溶着層12が溶融するのに必要な熱は、外被材10全体を加熱するものであっても構わない。
【0063】
本実施の形態における真空断熱材15の芯材16は、粉末材料を成形してなる固形体であり、気相容積率が90%前後となるものが好ましく、無機系、有機系、およびこれらの混合物があり、工業的には乾式シリカ、湿式シリカ、パーライト等を主成分とするものが利用できる。
【0064】
但し、粉末材料単独では成形することは困難であるため各種バインダーを用いることが有効である。ここでは平均一次粒子径が100nm以下の乾式シリカと、カーボンブラックを全量に対し4.5〜16wt%混合した粉末材料に対して、無機繊維をバインダーとして用いている。
【0065】
本実施の形態では、無機繊維として平均繊維径10μm以下のものを全量に対して5〜20wt%混合した後、加圧成形し固形体としている。
【0066】
このように粉末材料を固形化することで、粉末材料を充填するための通気性材料を不要となり、芯材16の形状や配置パターンを自由に設計することができる。本実施の形態における芯材16の形状は長方形(四角形)となっているが、三角形やその他多角形、更には円形等の任意の形状が選択可能である。
【0067】
以上のように、本実施の形態の建物は、実施の形態1の建物における真空断熱材5の代わりに、熱溶着層12同士が対向するガスバリア性の外被材10の間に、複数の芯材が16、厚み方向に略垂直な方向に互いに所定間隔離して配置されて減圧密封されており、複数の芯材16のそれぞれが独立した減圧空間内に位置するように、外被材10の間に芯材16がない部分の外被材10同士(隣接する芯材16と芯材16との間の外被材10同士を含む)を密着させて、その密着した外被材10(熱溶着層12)同士を熱溶着してなり、大気圧下で外被材10(熱溶着層12)同士が密着する全ての部分の外被材10(熱溶着層12)同士が熱溶着されている真空断熱材15を用いたことにより、実施の形態1の効果に加えて、比較的に強固に芯材16を外被材10に保持することが可能であり、真空断熱材15の傷付きや突き刺しが発生した場合でも、粉末材料の飛散を一層抑制できる。
【0068】
また、対向する二枚の外被材の外周部同士のみを熱溶着した真空断熱材や三方を熱溶着した袋状の外被材に芯材を入れて袋状の外被材の開口部を熱溶着した真空断熱材と比べて、熱溶着部11を広く形成することが可能であり、粉末材料である芯材16を外被材10によって真空封止する時に粉末が挟雑物となっても、その影響を低減し、芯材空間における真空度を維持できるように熱溶着を実施することができる。
【0069】
また、芯材16が、粉末材料を成形してなる固形体であり、粉末が固形化されているので、真空断熱材15が傷付けられたり、突き刺されたりしても粉末の飛散が大きく抑制される。また固形体であるので、芯材形状を自由に形成することができるので、施工性や断熱効果を考慮した芯材パターンを設計できる。
【0070】
(実施の形態3)
図10は、本発明の実施の形態3の建物に用いた真空断熱材の平面図、図11は図10のE−E線断面図である。
【0071】
本実施の形態の建物は、実施の形態2の建物における真空断熱材15の代わりに、真空断熱材17を用いたものであり、その他の構成は実施の形態2の建物と同様である。
【0072】
本実施の形態の建物に用いた真空断熱材17は、真空断熱材17において固定部材8による突き刺しが発生しやすいと懸念される外被材10の外周端に近接する箇所の芯材16の大きさを、他の芯材16より小さくしたものであり、その他の真空断熱材17の構成は実施の形態2の建物における真空断熱材15と同様である。
【0073】
本実施の形態では、真空断熱材17において固定部材8による突き刺しが発生しやすいと懸念される外被材10の外周端に近接する箇所の芯材16の大きさを、他の芯材16より小さくしたので、固定部材8が真空断熱材17の芯材16を突き刺した場合でも、全体の断熱低下に対する影響を低減させることができる。
【0074】
なお、本実施の形態では、外被材10の外周端に近接する箇所の芯材16の大きさを、他の芯材16より小さくしたが、外被材10の外周端に近接する箇所以外で固定部材8による突き刺しが発生しやすい箇所があれば、施工の環境、状況等を考慮した芯材16の大きさ、配置パターンを選択すれば良い。
【0075】
(実施の形態4)
図12は本発明の実施の形態4における建物の壁の構成を示す断面図である。
【0076】
本実施の形態の建物は、実施の形態1の建物において、真空断熱材5を、接着剤18により内壁6の室内側の面に固定(貼付)したものであり、その他の構成は、実施の形態1の建物と同様である。
【0077】
接着剤18としては粘着性を有するものであればよく、両面テープなども利用可能である。固定前の接着剤18は、真空断熱材5側に付けても、内壁6側に付けても構わないが、真空断熱材5側に付ける方が作業性に優れ、固定前の接着剤18が真空断熱材5の傷付きを抑制する働きもある。
【0078】
以上のように、本実施の形態では、真空断熱材5を、接着剤18により内壁6の室内側の面に固定するので、内壁6に対する密着性を確保できることに加え、施工時においても真空断熱材5に対する傷付きや突き刺しの懸念が小さく、芯材粉末の飛散リスクを低減できる。
【0079】
(実施の形態5)
図13は本発明の実施の形態5におけるにおける壁の室内側の面の内部を示す平面図、図14は図13のF−F線断面図である。
【0080】
本実施の形態は、内壁20が既存の建物の室内空間を構成する壁であるものであり、その他の構成は、実施の形態1の建物と同様である。
【0081】
図13、図14に示すように、断熱改修構造19は既存建物の内壁20に対して真空断熱材5が配置され、さらに真空断熱材5の上に突き刺し防止板7が固定部材8によって施工されている。
【0082】
以上のように、本実施の形態では、既存建物の内壁6の表面上に真空断熱材5を配置させる断熱改修構造を有するものであり、既存建物の壁構造を破壊することなく、真空断熱材5を室内空間を構成する壁の室内側の面に設けるという容易な方法で、建物の断熱強化を図ることが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明にかかる建物は、真空断熱材の粉末材料によって生じると想定された施工時の作業環境の悪化及び居住時の生活空間の汚染を防止することが可能であり、長期間にわたり優れた断熱性能を維持できる真空断熱材を適用した断熱効果が高い建物を提供できるものであり、既存の建物の内壁を解体することなくリフォーム(断熱改修)して断熱壁にする場合に最適であるが、新築の建物の壁にも適用可能で、住宅用の建物や商業用の建物、その他、断熱が必要な建物に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本発明の実施の形態1の建物における壁の室内側の面の内部を示す平面図
【図2】図1のA−A線断面図
【図3】図1のB−B線断面図
【図4】同実施の形態の建物に用いた真空断熱材の平面図
【図5】図4のC−C線断面図
【図6】同実施の形態の建物に用いた突き刺し防止板の平面図
【図7】同実施の形態の建物の突き刺し防止板に壁紙を貼った場合の平面図
【図8】本発明の実施の形態2の建物に用いた真空断熱材の平面図
【図9】図8のD−D線断面図
【図10】本発明の実施の形態3の建物に用いた真空断熱材の平面図
【図11】図10のE−E線断面図
【図12】本発明の実施の形態4における建物の壁の構成を示す断面図
【図13】本発明の実施の形態5におけるにおける壁の室内側の面の内部を示す平面図
【図14】図13のF−F線断面図
【図15】従来の真空断熱材の斜視図
【符号の説明】
【0085】
5 真空断熱材
6 内壁
7 突き刺し防止板
8 固定部材
9 芯材
10 外被材
11 熱溶着部
12 熱溶着層
15 真空断熱材
16 芯材(固形体)
17 真空断熱材
18 接着剤
19 断熱改修構造
20 既存建物の内壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
室内空間を構成する内壁と、前記内壁の室内側の面に固定された真空断熱材と、前記真空断熱材を室内側から覆い隠すと共に前記真空断熱材を室内側から保護するように前記内壁に固定された突き刺し防止板とからなり、
前記真空断熱材は、熱溶着層同士が対向するガスバリア性の外被材の間に、複数の芯材が、厚み方向に略垂直な方向に互いに所定間隔離して配置されて減圧密封されており、前記複数の芯材のそれぞれが独立した減圧空間内に位置するように、隣接する前記芯材と前記芯材との間の前記外被材同士を熱溶着したものであり、前記芯材に粉末材料を用いたことを特徴とする建物。
【請求項2】
前記真空断熱材は、前記外被材の間に前記芯材がない部分の前記外被材同士を密着させて、前記密着した前記外被材同士を熱溶着してなり、前記外被材同士が密着する全ての部分の前記外被材同士が熱溶着されていることを特徴とする請求項1に記載の建物。
【請求項3】
前記芯材が、粉末材料を成形してなる固形体であることを特徴とする請求項1または2に記載の建物。
【請求項4】
前記突き刺し防止板の室内側の面に前記真空断熱材の芯材位置を明示したことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の建物。
【請求項5】
前記真空断熱材は、前記外被材同士を熱溶着した熱溶着部を貫通して前記内壁に突き刺さる固定部材により前記内壁の室内側の面に固定されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の建物。
【請求項6】
前記真空断熱材は、接着剤により前記内壁の室内側の面に固定されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の建物。
【請求項7】
前記内壁が既存の建物の室内空間を構成する壁であることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載に記載の建物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2009−270399(P2009−270399A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−124320(P2008−124320)
【出願日】平成20年5月12日(2008.5.12)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成17年度新エネルギー・産業技術総合開発機構「高性能、高機能真空断熱材」に関する委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】