説明

建物

【課題】脱衣所の温度調整に際して省エネルギ化を実現する。
【解決手段】建物10には、浴室15、脱衣所16、キッチン17、ユーティリティルーム18が設けられており、ユーティリティルーム18は脱衣所16とキッチン17との間に配置されている。ユーティリティルーム18は、物干しスペースと下方スペースとを有しており、下方スペースには乾燥機が設置されている。脱衣所16と下方スペースとを仕切る仕切壁21には放熱孔51が形成されており、放熱孔51は乾燥機における背面側の放熱部と対向している。前記仕切壁21には、放熱孔51を閉鎖する放熱孔開閉体が設けられており、放熱孔開閉体が開放されることで乾燥機42の排熱が放熱孔51を介して脱衣所16へ導入される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱衣所及びユーティリティルームを備えている建物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
住宅等の建物には、家事室としての機能を有するユーティリティルームが設けられていることがある。例えば特許文献1に、洗濯機が設置されているとともに、勝手口や脱衣室などと隣接して配置されているユーティリティルームについての構成が開示されている。この場合、住人等は、脱衣室で脱衣した衣類等をユーティリティルームへ運んで洗濯した後、洗濯物を勝手口から屋外側へ運んで乾燥させることができる。
【特許文献1】特開2000−96840号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記特許文献1に開示された構成では、脱衣所の温度調整を行うことが困難となり、住人等が脱衣所を使用するに際して不都合であると考えられる。例えば、入浴者が脱衣所で衣類を脱ぐ場合、冬季であればヒートショックが生じるおそれがあるためである。これに対して、脱衣所にエアコン等の空調装置が設置されている構成であれば、脱衣所の温度調整を行うことが容易となる。ところが、この構成は省エネルギ化の観点から見て改善の余地がある。
【0004】
本発明は、脱衣所の温度調整に際して省エネルギ化を実現することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、第1の発明は、脱衣所とその脱衣所に隣接して配置されたユーティリティルームとを備えている建物であって、冷気又は暖気を発生する発生装置が前記ユーティリティルームに設置されているとともに、前記発生装置により発生した冷気又は暖気を前記脱衣所に導く通気路が設けられていることを特徴とする。
【0006】
第1の発明によれば、脱衣所の温度調整が行われるため、脱衣所が暑すぎたり寒すぎたりすることを回避できる。これは、脱衣所を利用する人にとって好適である。また、脱衣所の温度調整は、ユーティリティルームにおいて発生した冷気又は暖気を脱衣所に流れ込ませることで行われる。この場合、冷気又は暖気がユーティリティルームからの排気であれば、その排気を有効利用することになるため、脱衣所の温度調整に際して省エネルギ効果を得ることができる。つまり、脱衣所の温度調整に際して省エネルギ化を実現することができる。
【0007】
なお、衣類を乾燥させる乾燥装置が発生装置としてユーティリティルームに設置された構成とすることが好ましい。この場合、乾燥装置の排熱を利用して脱衣所を暖めることができる。
【0008】
第2の発明では、前記脱衣所の温度を検出する温度検出手段と、前記発生装置から暖気が発生していることを検出する暖気発生検出手段とを備え、前記温度検出手段により検出された前記脱衣所の温度が所定温度以下であり且つ前記暖気発生検出手段により暖気発生が検出された場合に、前記暖気が前記通気路を通じて前記脱衣所に導入される。
【0009】
第2の発明によれば、脱衣所が住人等にとって寒い場合に脱衣所を暖めることができる。この場合、例えば冬季において人が脱衣所に入ったり脱衣所で衣類を脱いだりした際にヒートショックが発生することを抑制できるため、人の健康管理を行う観点から見て好適である。
【0010】
なお、「前記暖気が前記通気路を通じて前記脱衣所に導入される構成」としては、通気路を開閉する開閉装置が設けられ、開閉装置により通気路が開放されることで暖気が脱衣所に流れ込む構成が挙げられる。この場合、必要な場合に限って脱衣所を暖めることができる。また、ユーティリティルームから脱衣所に風を送る送風装置が設けられ、送風装置が動作することで暖気が脱衣所に供給される構成も挙げられる。この場合、脱衣所を速やかに暖めることができる。
【0011】
さらに、浴室から暖気が発生していることを検出する浴室用検出手段を備え、前記温度検出手段により検出された前記脱衣所の温度が所定温度以下であり且つ前記浴室用検出手段により暖気発生が検出された場合に前記暖気が前記浴室通気路を通じて前記脱衣所に導入される構成としてもよい。この場合でも、浴室の排熱を脱衣所に導入することにより、ヒートショックの発生を抑制できる。
【0012】
第3の発明では、前記脱衣所に人が入ったことを検出する人検出手段を備え、前記人検出手段により前記脱衣所に人が入ったことが検出された場合に前記脱衣所への前記冷気又は暖気の導入が開始される。
【0013】
第3の発明によれば、実際に人が脱衣所に入ってから冷気又は暖気が脱衣所に導入されるため、脱衣所が使用されていないにもかかわらず脱衣所の温度調整が行われてしまうことを回避できる。換言すれば、人が脱衣所を使用する場合には確実に脱衣所の温度調整を行うことができる。なお、人が脱衣所で衣類を脱ぐ場合、衣類を脱ぎ終わるまでにある程度の時間を要すると考えられるため、人が脱衣所に入ってから冷気又は暖気の導入が開始されても脱ぎ終わるまでに脱衣所を好適な温度に調整することが可能となる。
【0014】
第4の発明では、浴室設備により入浴準備が開始されたことを検出する準備検出手段を備え、前記準備検出手段により入浴準備の開始が検出された場合に前記脱衣所への前記冷気又は暖気の導入が開始される。
【0015】
第4の発明によれば、実際に人が入浴するより前に脱衣所の温度調整が開始される。この場合、人が脱衣所に入った時には脱衣所の温度調整を完了させておくことができる。したがって、入浴者は好適な温度に調整された脱衣所を使用することができる。なお、準備検出手段は、浴室設備として設置された浴槽に湯が貯め始められたことを検出したり、浴室設備として設置された加熱装置により浴槽内の湯水が加熱され始めたことを検出したりする構成であることが好ましい。
【0016】
第5の発明では、前記脱衣所の壁に形成された所定の開口部を開閉する扉体と、前記扉体を開閉させる扉体駆動部と、前記脱衣所に人がいる場合に前記扉体を閉鎖動作させるように前記扉体駆動部を制御する制御手段とを備えていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の建物。
【0017】
第5の発明によれば、人が脱衣所を使用している場合に、開口部を通じて脱衣所の内部が視認されることを回避できる。しかも、ユーティリティルームから脱衣所に導入された冷気又は暖気が開口部から流出してしまうことが回避されるため、脱衣所を好適な温度にて保持することが可能となる。なお、前記扉体により前記脱衣所の出入口が閉鎖される構成とすることが好ましい。この場合、入浴者の着替え中に他の住人等が脱衣所に入ってしまうことを回避できる。
【0018】
第6の発明では、前記脱衣所に隣接して浴室が配置されているとともに、前記浴室にて発生した冷気又は暖気を前記ユーティリティルームに導く浴室通気路が設けられている。
【0019】
第6の発明によれば、ユーティリティルームから冷気又は暖気が発生していなくても、浴室において発生した冷気又は暖気が脱衣所に流れ込むことで脱衣所の温度調整が行われる。この場合、脱衣所の温度調整を行うためだけにユーティリティルームにおいて暖気を発生させるといった必要がない。したがって、脱衣所の温度調整に際して省エネルギ効果をより一層高めることができる。なお、浴室において浴槽の湯張りが行われている場合にその湯から発生した熱が暖気として脱衣所に導かれる構成とすることが好ましい。この場合、その暖気により脱衣所を暖めることができる。
【0020】
第7の発明では、前記脱衣所と前記ユーティリティルームとを仕切る壁には、前記脱衣所から前記ユーティリティルームへ衣類を排出する衣類排出口が設けられている。
【0021】
第7の発明によれば、人は脱衣所で衣類を脱いだ後、その衣類を脱衣所に居ながらにしてユーティリティルームの衣類用カゴなどに入れることができる。また、この場合、例えば主婦は洗濯を行う際に衣類を脱衣所からユーティリティルームへ持ち運ぶ必要がないため、衣類を洗って干すまでの一連の作業をユーティリティルームだけで行うことが可能となる。つまり、家事を行う際に動線の合理化を図ることが可能となる。しかも、動線の合理化に伴って脱衣所の出入口用ドアの開閉も少なくなるため、脱衣所の温度変化を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、建物10の間取りの一部を示す平面図、図2は、ユーティリティルーム18の構成を示す斜視図、図3は、脱衣所16とユーティリティルーム18との境界部周辺の側面図である。図3において、(a)は図1のA−A線部分断面を示し、(b)は図1のB−B線部分断面を示す。
【0023】
図1に示すように、住宅等の建物10には、居住空間として浴室15、脱衣所16、キッチン17、ユーティリティルーム18、廊下19が設けられており、それら居住空間は仕切壁21により仕切られている。ユーティリティルーム18は、いわゆる家事室となっており、脱衣所16とキッチン17との間に配置されている。キッチン17とユーティリティルーム18とを仕切る仕切壁21にはキッチン側開口部25が形成されており、ユーティリティルーム18はキッチン側開口部25を介してキッチン17側に開放されている。
【0024】
図2に示すように、ユーティリティルーム18は、衣類を干す物干しスペース31と、物干しスペース31の下方に配置されている下方スペース32とを有している。それら物干しスペース31と下方スペース32とは仕切板33により上下に仕切られており、仕切板33は水平方向に延びている。仕切板33は、金属材料により形成されており、熱伝導率の高い伝熱板となっている。
【0025】
物干しスペース31には、洗濯物等の衣類を干すための物干し竿35と、その物干し竿35を支持する支持アーム36が設けられている。支持アーム36は、キッチン側開口部25を挟んで対向する側方壁面のそれぞれに対して固定されており、物干し竿35は奥方壁面に沿って延びるようにして支持されている。また、支持アーム36は、物干し竿35をユーティリティルーム18に収納させる収納状態と、物干し竿35をキッチン17側に露出させる露出状態とに切り替え可能な構成となっている。
【0026】
具体的には、図3に示すように、支持アーム36は、一端が固定端として側方壁面に対して回動可能に軸支されており、その回動軸は側方壁面と直交している。また、自由端としての他端が物干し竿35を支持しており、回動軸を中心に側方壁面に沿って回動することで収納状態から露出状態に移行する。この場合、支持アーム36を収納状態とすることで、住人等の手が届かないような高い位置に衣類を収納することができる。つまり、高い位置の空間を衣類収納用のスペースとして有効に活用することができる。しかも、支持アーム36を露出状態とすることで、住人等の手が届く位置で物干し作業を行うことができる。
【0027】
また、物干しスペース31には、換気扇38が設けられており、その換気扇38は排気ダクトを介して屋外に通じている。したがって、換気扇38が駆動すると、物干しスペース31内の空気が排気として屋外に排出される。
【0028】
図2の説明に戻り、下方スペース32には、衣類を洗う洗濯機41と、乾燥運転を行うことで衣類を乾燥させる乾燥機42と、衣類の収納が可能な衣類分別カゴ43とが設けられている。洗濯機41及び乾燥機42は、その前面がキッチン17側を向いて配置されており、住人等はキッチン17側から使用することができる。また、洗濯機41及び乾燥機42は、衣類分別カゴ43の側方に配置されており、乾燥機42が洗濯機41の上方に位置するように上下に並べられている。ここで、乾燥機42は、仕切板33の直下であり且つ脱衣所16側の仕切壁21に近接した位置にある。この場合、乾燥機42は、その上面が仕切板33の下面と対向しており、その背面が前記仕切壁21の壁面と対向している。乾燥機42の背面や上面には複数の放熱フィン等により形成された放熱部が設けられており、乾燥運転に伴って発生した熱が放熱部から排出される構成となっている。つまり、乾燥機42は、暖気を発生する発生装置となっている。
【0029】
衣類分別カゴ43は、例えば下着用、色物用、毛用、厚物用等として複数設けられており、それらは上下に並べて配置されている。衣類分別カゴ43は、箱形状に形成され、上方が開放されている。ちなみに、衣類分別カゴ43は、キッチン17側にスライド移動させることが可能な構成となっている。この場合、衣類分別カゴ43がスライド移動されると、衣類分別カゴ43への衣類の出し入れを上方から容易に行うことができる。
【0030】
図3(a)に示すように、仕切壁21のうち脱衣所16と下方スペース32とを仕切る部分には、乾燥機42からの排熱を暖気として放出する通気路としての放熱孔51が形成されている。放熱孔51は、乾燥機42の背面における放熱部と対向する位置に複数設けられている。また、放熱孔51は、放熱孔開閉体52により閉鎖されている。放熱孔開閉体52は、仕切壁21の脱衣所16側に配置された板部であり、その仕切壁21に沿って上下方向にスライド移動することが可能となっている。例えば、下方にスライド移動することで放熱孔51を開放する。仕切壁21には、駆動することで放熱孔開閉体52をスライド移動させる放熱用駆動部53が設けられている。なお、ここでは、全ての放熱孔51が開放された場合に放熱孔開閉体52が開放状態に移行し、全ての放熱孔51が閉鎖された場合に放熱孔開閉体52が閉鎖状態に移行したことになる。
【0031】
また、図3(b)に示すように、仕切壁21のうち脱衣所16とユーティリティルーム18とを仕切る部分には、放熱孔51の他に衣類排出口としての衣類投入口55が形成されている。衣類投入口55は、例えば下着用、色物用、毛用、厚物用等として放熱孔51の側方に複数設けられており、それらは各衣類分別カゴ43に対応して上下に並べて配置されている。各衣類投入口55は、対応した衣類分別カゴ43の脱衣所16側における上方に配置されており、衣類分別カゴ43の開放側に通じている。
【0032】
前記仕切壁21には衣類投入口55を開閉する投入口開閉体56が設けられている。投入口開閉体56は、その上端が仕切壁21に対して回動可能に軸支された板部であり、その回動軸は仕切壁21と平行に且つ水平に延びている。この場合、投入口開閉体56がユーティリティルーム18側に回動することで衣類投入口55が開放される。したがって、住人等は、脱衣所16に居ながらにしてユーティリティルーム18の衣類投入口55に衣類を分別しつつ入れることができる。なお、投入口開閉体56が脱衣所16側に回動することで衣類投入口55が開放されてもよい。
【0033】
図1の説明に戻り、脱衣所16は、ユーティリティルーム18の他にも、浴室15及び廊下19と隣接している。仕切壁21のうち浴室15と脱衣所16とを仕切る部分には、浴室通気路としての通気孔61が形成されており、その通気孔61には送風ファンなどの送風装置62が設けられている。送風装置62は、駆動した場合に浴室15内の空気を脱衣所16に送る。また、仕切壁21のうち脱衣所16と廊下19とを仕切る部分には、所定の開口部としての脱衣所出入口65が形成されており、脱衣所出入口65は扉体としての脱衣所ドア66により開閉される。さらに、仕切壁21には、駆動することで脱衣所ドア66をスライド移動させる扉体駆動部としてのドア駆動部67が設けられている。
【0034】
浴室15には、浴槽71が設置されており、浴槽71には浴室設備としての給湯装置72から湯水が供給される。また、浴室15には、浴室15内の温度調整を行う空調装置として浴室エアコン73が設けられている。
【0035】
ここで、建物10においては脱衣所16の温度調整を行う温調システムが構築されており、その温調システムに関する電気的な構成について、図4を参照しつつ説明する。
【0036】
図4に示すように、脱衣所16の温調システムは、ホームサーバ81を含んで構成されている。ホームサーバ81は、CPUや各種メモリ等からなるマイクロコンピュータを有しているとともに、操作ボタン等の入力手段やディスプレイ等の表示手段を備えている。ホームサーバ81において、住人等は、入力手段を操作することで人監視システムの制御内容を設定することが可能となっている。なお、ホームサーバ81は、例えばキッチン17に設置されている。
【0037】
ホームサーバ81には、乾燥機42、給湯装置72、温度検出手段としての脱衣所温度センサ85、人検出手段としての脱衣所人感センサ86、湿度センサ87が接続されている。乾燥機42は、洗濯物の乾燥運転をしていることを暖気発生検出手段としての運転検出部により検出し、その検出信号をホームサーバ81に対して出力する。給湯装置72は、浴槽71の湯張りを行っていることを湯張り検出部により検出し、その検出信号をホームサーバ81に対して出力する。脱衣所温度センサ85は脱衣所16に設置されており、脱衣所16の温度を検出し、その検出信号をホームサーバ81に対して出力する。脱衣所人感センサ86は脱衣所16に設置されており、脱衣所16に人が居ることを検出し、その検出信号をホームサーバ81に対して出力する。湿度センサ87は、物干しスペース31に設置されており、物干しスペース31内の湿度を検出し、その検出信号をホームサーバ81に対して出力する。
【0038】
また、ホームサーバ81には、換気扇38、放熱用駆動部53、送風装置62、ドア駆動部67、浴室エアコン73が接続されており、ホームサーバ81は、指令信号を出力することでこれら換気扇38、放熱用駆動部53、送風装置62、ドア駆動部67、浴室エアコン73の動作制御を行う。ホームサーバ81は、これらに加えて給湯装置72に対して指令信号を出力し、その給湯装置72の動作制御を行う。特に、ホームサーバ81は、放熱用駆動部53の動作制御を行うことによりユーティリティルーム18から脱衣所16への暖気導入制御を行うことになる。また、送風装置62の動作制御を行うことにより浴室15から脱衣所16への送風制御を行うことになる。
【0039】
ここで、ホームサーバ81によって実行される脱衣所16の温度調整処理、及び物干しスペース31の衣類乾燥処理について、図5及び図6のフローチャートを参照しつつ説明する。なお、各処理は、それぞれ所定の時間周期で実行される。
【0040】
まず、脱衣所16の温度調整処理について説明する。
【0041】
図5において、ステップS101では、乾燥機42、給湯装置72、脱衣所温度センサ85、脱衣所人感センサ86から出力された各種検出信号を取得する。ステップS102では、脱衣所16の実際の温度が目標温度より低いか否かを判定する。ここで、前記実際の温度は、脱衣所温度センサ85の検出信号に基づいて算出した値である。また、目標温度は、住人等によりあらかじめ設定された所定の値であり、例えば20℃に設定されている。脱衣所16の実際の温度が目標温度より低い場合、ステップS103に進む。
【0042】
ステップS103では、脱衣所人感センサ86の検出信号に基づいて、脱衣所16に人がいるか否かを判定する。脱衣所16に人がいる場合、ステップS104に進み、住人等がこれから入浴するとしてドア駆動部67の動作制御を行い、脱衣所ドア66により脱衣所出入口65を閉鎖させる。
【0043】
ステップS105では、乾燥機42の検出信号に基づいて、乾燥機42が乾燥運転を行っているか否かを判定する。乾燥機42が運転中である場合、ステップS106に進み、脱衣所16に暖気を導入する暖気導入処理を行う。具体的には、放熱用駆動部53の動作制御を行い、放熱孔開閉体52を開放させる。この場合、運転中の乾燥機42から発生した熱が放熱孔51を介して脱衣所16に放出される。つまり、ユーティリティルーム18の下方スペース32から脱衣所16に暖気が導入される。この結果、乾燥機42から発生する熱により脱衣所16の暖房が行われ、脱衣所16の温度が調整される。
【0044】
なお、放熱孔51は乾燥機42の裏面側に存在するため、放熱孔開閉体52が開放されてもユーティリティルーム18側から脱衣所16の内部は視認されない。
【0045】
これに対して、乾燥機42が運転中でない場合、ステップS107に進み、送風処理が実行中であるか否かを判定する。送風処理については後述するが、送風処理が実行中である場合は、脱衣所16の暖房が行われているとしてそのまま本温度調整処理を終了し、送風処理が実行中でない場合は、ステップS108に進み、浴室エアコン73の運転制御を行う。その運転制御としては、浴室エアコン73に暖房運転を行わせ、浴室15の温度を調整する。この場合、浴室15内の暖気が通気孔61や浴室扉の換気用ガラリ等を通じて脱衣所16に流れ込み、浴室15に加えて脱衣所16の暖房が行われる。なお、この場合、浴室15から脱衣所16へ強制的に暖気を供給するために、送風装置62の動作制御を行ってもよい。
【0046】
脱衣所16に人がいない場合(ステップS103がNO判定の場合)、ステップS109に進み、給湯装置72の検出信号に基づいて、浴室15の浴槽71において湯張り中であるか否かを判定する。ここで、給湯装置72による湯張りは、住人等によりあらかじめ設定された時刻に開始される。また、湯張りが開始されたことは、給湯装置72により入浴準備が開始されたことになる。湯張り中である場合、ステップS110に進み、住人等が入浴する準備が行われているとして、且つ浴槽71に供給される湯や貯留された湯から熱気が発生しているとして、送風処理を行う。具体的には、送風装置62の動作制御を行い、浴室15から脱衣所16へ空気を供給する。この場合、浴室15においては、湯張りに伴って発生した熱気が暖気として脱衣所16へ供給される。つまり、浴室15から脱衣所16に暖気が導入される。この結果、浴槽71の湯張りに伴って発生する熱により脱衣所16の暖房が行われ、脱衣所16の温度が調整される。
【0047】
また、脱衣所16に人が存在せず且つ湯張り中でない場合(ステップS109がNO判定の場合)は、脱衣所16の暖房を行う必要がないとして、そのまま本処理を終了する。
【0048】
脱衣所16の実際の温度が目標温度以上である場合(ステップS102がNO判定である場合)、ステップS111に進み、脱衣所16の温度保持処理を行う。この場合、ステップS106の暖気導入処理により放熱孔開閉体52を開放させていれば、放熱用駆動部53の動作制御を行い、放熱孔開閉体52を閉鎖させる。これにより、乾燥機42の発生熱による脱衣所16の温度調整が終了される。また、ステップS108の処理により浴室エアコン73が運転していれば、浴室エアコン73の運転を停止させる。これにより、浴室エアコン73による浴室15及び脱衣所16の温度調整が終了される。さらに、ステップS110の送風処理により送風装置62を駆動させていれば、送風装置62の駆動を停止させる。これにより、浴槽71の湯張りに伴った発生熱による脱衣所16の温度調整が終了される。これらに対して、暖気導入処理、浴室エアコン73の運転処理及び送風処理のいずれも行われていない場合は、脱衣所16の温度調整を行う必要がないとして、そのまま本温度調整処理を終了する。
【0049】
次に、物干しスペース31の衣類乾燥処理について説明する。
【0050】
図6において、ステップS201では、乾燥機42、湿度センサ87から出力された各種検出信号を取得する。ステップS202では、物干しスペース31において衣類乾燥が必要であるか否かを判定する。具体的には、湿度センサ87の検出信号に基づいて、物干しスペース31の実際の湿度が所定湿度より高いか否かを判定する。前記実際の湿度が所定湿度より高い場合は、物干しスペース31に洗濯された衣類が干されている、又は干されている衣類が濡れているとして、衣類乾燥が必要であると判定する。一方、実際の湿度が所定湿度以下である場合は、物干しスペース31に洗濯された衣類が干されていない、又は物干しスペース31に干されている衣類が乾燥しているとして、衣類乾燥が必要ないと判定する。衣類乾燥が必要ない場合はそのまま本衣類乾燥処理を終了し、衣類乾燥が必要である場合はステップS203に進む。
【0051】
ステップS203では、乾燥機42の検出信号に基づいて、乾燥機42が乾燥運転中であるか否かを判定する。乾燥機42が乾燥運転中でない場合は、ステップS204に進み、換気扇駆動処理を行う。具体的には、換気扇38の動作制御を行い、湿度の高い空気を物干しスペース31から屋外に排出する。これにより、物干しスペース31に干されている衣類は乾燥しやすくなる。
【0052】
一方、乾燥機42が乾燥運転中である場合は、そのまま本衣類乾燥処理を終了する。この場合、乾燥機42から発生した熱が仕切板33を介して物干しスペース31に導入されるため、その熱により衣類を乾燥させることが可能となる。したがって、この場合は換気扇38を駆動させる必要がない。ここで、ユーティリティルーム18において、物干しスペース31と下方スペース32とが仕切板33により仕切られているため、乾燥機42の発生熱が暖気として物干しスペース31の一部に滞留することを抑制できる。つまり、仕切板33から熱が伝えられることで物干しスペース31の全体に熱を導入させることができる。
【0053】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の優れた効果が得られる。
【0054】
住人等が脱衣所16を使用する場合に脱衣所16の暖房が行われるため、例えば冬季において、住人等にとって脱衣所16が寒すぎることを回避できる。この場合、住人等が暖房されたリビング等の居室空間から脱衣所16に移動した時や、入浴者が脱衣所16で衣服を脱いだ時などにヒートショックが生じることを抑制できる。したがって、脱衣所16の温度調整を行うことは、人の健康管理を行う観点から見て好適である。また、乾燥機42の排熱が脱衣所16に導入されるため、脱衣所16の暖房を行うに際してユーティリティルーム18における排熱を有効利用することになり、その結果、省エネルギ効果を得ることができる。
【0055】
浴室15において浴槽71の湯張り中に発生した暖気が脱衣所16に導入されるため、脱衣所16の暖房を行うに際して浴室15における排熱を有効利用することになり、その結果、省エネルギ効果をより一層高めることができる。また、この場合、乾燥機42が乾燥運転していなくても脱衣所16の暖房を行うことができる。換言すれば、脱衣所16の暖房を行うためだけに乾燥機42を運転させる必要はない。さらに、別の見方をすれば、乾燥機42が運転中であれば浴室15において湯張り中でなくても脱衣所16の暖房を行うことができる。換言すれば、脱衣所16の暖房を行うためだけに湯張りを行う必要はない。
【0056】
乾燥機42が運転されておらず且つ浴槽71の湯張りも行われていない状況において、住人等が脱衣所16を使用する場合には、浴室エアコン73により浴室15及び脱衣所16の暖房が行われる。したがって、この場合でも住人等にヒートショックが生じることを抑制できる。また、浴室15及び脱衣所16の温度調整が常に浴室エアコン73により行われる構成に比べて省エネルギ効果を得ることができる。
【0057】
住人等が脱衣所16を使用する場合に放熱孔開閉体52が開放されたり送風装置62が駆動されたりするため、乾燥機42の排熱や浴槽71の湯張りによる熱気による脱衣所16の暖房を必要な時にだけ行うことができる。
【0058】
住人等が脱衣所16へ入った場合に脱衣所16への暖気の導入が開始されるため、住人等が使用していないにもかかわらず脱衣所16の暖房が行われることを回避できる。換言すれば、住人等が脱衣所16を使用する場合に限って確実に脱衣所16の暖房を行うことができる。また、入浴者が脱衣所16を使用する場合には、その入浴者が衣類を脱ぎ終わるまでにある程度の時間を要すると考えられるため、入浴者が脱衣所16に入ってから暖気の導入を開始しても、脱衣終了までに脱衣所16を暖めることが可能となる。
【0059】
浴室15において浴槽71の湯張りが開始された場合に脱衣所16への暖気の導入が開始されるため、住人等が脱衣所16に入った時には脱衣所16の暖房を完了させておくことが可能となる。この結果、好適に暖房された脱衣所16を住人等に使用させることができる。
【0060】
住人等が脱衣所16へ入った場合に脱衣所ドア66が閉鎖されるため、入浴者の着替え中に他の住人等が脱衣所16に入ってしまったり入浴者の着替えが他の住人等から見えてしまったりすることを回避できる。しかも、この場合、ユーティリティルーム18側や浴室15側から導入された暖気が脱衣所出入口65から廊下19等へ流れ出ることが規制されるため、脱衣所16の温度低下を抑制したり脱衣所16の暖房を効率良く行わせたりすることができる。
【0061】
入浴者は脱衣所16にて脱いだ衣類を衣類投入口55からユーティリティルーム18の衣類分別カゴ43に投入することができる。この場合、例えば主婦は、洗濯を行う際に衣類を脱衣所16からユーティリティルーム18へ持ち運ぶ必要がないため、衣類を洗濯してから干すまでの一連の作業をユーティリティルーム18だけで行うことができる。しかも、ユーティリティルーム18はキッチン17に隣接して配置されているため、料理や洗濯などの家事を行う際における動線の合理化を図ることができる。さらに、動線の合理化に伴って主婦が脱衣所16へ出入する回数が減少するため、脱衣所ドア66の開閉も減少する。この結果、脱衣所16に導入された暖気が廊下19等へ流れ出る頻度が少なくなり、脱衣所16の温度調整を効率良く行うことができる。
【0062】
ユーティリティルーム18においては、換気扇38を駆動させたり乾燥機42の排熱を仕切板33から伝えたりすることで物干しスペース31を衣類を乾燥させる乾燥スペースとして使用することができる。
【0063】
(他の実施形態)
本発明は上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施してもよい。
【0064】
(1)ユーティリティルーム18には冷気を発生する発生装置が設置されていてもよく、冷気及び暖気のいずれか一方を発生する発生装置が設置されていてもよい。例えば、発生装置としてエアコン等の空調装置が設置されている場合、放熱孔51を介して脱衣所16に冷気又は暖気を導入させることが可能となるため、脱衣所16において暖房だけでなく冷房を行うことができる。この場合、脱衣所16におけるヒートショックの発生を回避できるだけでなくコールドショックの発生も回避できる。これは、人の健康管理を行う観点から見てより一層好適である。なお、洗濯機41が暖気発生装置としての役割を果たす構成としてもよい。
【0065】
また、エアコン等の空調装置は、キッチン17や脱衣所16に設置されていてもよい。この場合、乾燥機42が運転しておらず且つ浴槽71の湯張りが行われていない場合に、浴室エアコン73を暖房運転させなくても、ユーティリティルーム18を介してキッチン17から脱衣所16へ暖気を供給したり、空調装置から脱衣所16へ直接暖気を供給したりすることができる。
【0066】
(2)放熱孔51に送風装置62が設けられていてもよい。この場合、乾燥機42の排熱をユーティリティルーム18から脱衣所16へ強制的に送ることができるため、脱衣所16の温度調整を速やかに行うことができる。また、放熱孔51には放熱孔開閉体52が設けられていなくてもよい。但し、この場合、乾燥機42の排熱が常に脱衣所16へ導入されるため、前記排熱が物干しスペース31に伝わりにくくなり、物干しスペース31における衣類乾燥の効率が低下する可能性がある。したがって、必要な場合に限って乾燥機42の排熱が脱衣所16へ導入される構成とすることが好ましい。
【0067】
(3)通気路としての放熱孔51は、仕切壁21のうちユーティリティルーム18の物干しスペース31と脱衣所16とを仕切る部分に設けられていてもよい。この場合でも、仕切板33を介して物干しスペース31に伝わった乾燥機42の排熱が、物干しスペース31から脱衣所16へ導入される。要は、ユーティリティルーム18において発生した暖気が脱衣所16へ導入される構成であればよい。したがって、通気ダクトによりユーティリティルーム18と脱衣所16とが連通されている構成としてもよい。この場合は、通気ダクトにより通気路が形成されていることになる。
【0068】
(4)ユーティリティルーム18の仕切板33は、その少なくとも一部が伝熱部となっていてもよい。この場合、仕切板33の伝熱部の直下に乾燥機42が配置されていることが好ましい。また、仕切板33は通気性を有するようにメッシュ状や網目状に形成されていてもよい。いずれの場合でも、乾燥機42の排熱を物干しスペース31に好適に伝えることができる。さらに、ユーティリティルーム18に仕切板33は設けられていなくてもよい。つまり、ユーティリティルーム18において、物干しスペース31と下方スペース32とが1つの空間として一体的に形成されていてもよい。
【0069】
(5)浴槽71の貯留水を加熱する加熱装置が浴室15に設けられており、その加熱装置による前記貯留水の加熱開始が入浴準備の開始として検出される構成としてもよい。この場合、浴槽71に水を貯留してからその貯留水を加熱するタイプの浴室設備を備える建物10においても、入浴者が脱衣所16へ入る前に脱衣所16の温度調整を行っておくことが可能となる。
【0070】
(6)通気孔61に送風装置62が設けられていなくてもよい。この場合でも、浴室15において暖気が発生すればその暖気は通気孔61を介して脱衣所16に導入される。また、通気孔61を開閉する開閉体が設けられていてもよい。この場合、必要な時に限って浴室15から脱衣所16へ暖気を供給することができる。また、通気ダクトにより脱衣所16と浴室15とが連通されている構成としてもよい。この場合は、通気ダクトにより浴室用通路が形成されていることになる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本実施形態における建物の間取りの一部を示す平面図。
【図2】ユーティリティルームの構成を示す斜視図。
【図3】脱衣所とユーティリティルームとの境界部周辺の側面図。
【図4】温調システムに関する電気的な構成を示すブロック図。
【図5】脱衣所の温度調整処理を示すフローチャート。
【図6】物干しスペースの衣類乾燥処理を示すフローチャート。
【符号の説明】
【0072】
10…建物、15…浴室、16…脱衣所、18…ユーティリティルーム、42…発生装置としての乾燥機、51…通気路としての放熱孔、55…衣類排出口としての衣類投入口、61…浴室通気路としての通気孔、65…所定の開口部としての脱衣所出入口、66…扉体としての脱衣所ドア、67…扉体駆動部としてのドア駆動部、72…準備検出手段を検出する給湯装置、81…制御手段としてのホームサーバ、85…温度検出手段としての脱衣所温度センサ、86…人検出手段としての脱衣所人感センサ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脱衣所とその脱衣所に隣接して配置されたユーティリティルームとを備えている建物であって、
冷気又は暖気を発生する発生装置が前記ユーティリティルームに設置されているとともに、前記発生装置により発生した冷気又は暖気を前記脱衣所に導く通気路が設けられていることを特徴とする建物。
【請求項2】
前記脱衣所の温度を検出する温度検出手段と、
前記発生装置から暖気が発生していることを検出する暖気発生検出手段と
を備え、
前記温度検出手段により検出された前記脱衣所の温度が所定温度以下であり且つ前記暖気発生検出手段により暖気発生が検出された場合に、前記暖気が前記通気路を通じて前記脱衣所に導入される構成としたことを特徴とする請求項1に記載の建物。
【請求項3】
前記脱衣所に人が入ったことを検出する人検出手段を備え、
前記人検出手段により前記脱衣所に人が入ったことが検出された場合に前記脱衣所への前記冷気又は暖気の導入が開始される構成としたことを特徴とする請求項1又は2に記載の建物。
【請求項4】
浴室設備により入浴準備が開始されたことを検出する準備検出手段を備え、
前記準備検出手段により入浴準備の開始が検出された場合に前記脱衣所への前記冷気又は暖気の導入が開始される構成としたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の建物。
【請求項5】
前記脱衣所の壁に形成された所定の開口部を開閉する扉体と、
前記扉体を開閉させる扉体駆動部と、
前記脱衣所に人がいる場合に前記扉体を閉鎖動作させるように前記扉体駆動部を制御する制御手段と
を備えていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の建物。
【請求項6】
前記脱衣所に隣接して浴室が配置されているとともに、前記浴室にて発生した冷気又は暖気を前記ユーティリティルームへ導入可能に構成されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のユーティリティルーム付き建物。
【請求項7】
前記脱衣所と前記ユーティリティルームとを仕切る壁には、前記脱衣所から前記ユーティリティルームへ衣類を排出する衣類排出口が設けられていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の建物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−85016(P2010−85016A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−254729(P2008−254729)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】