説明

建物

【課題】大型の結合手段を用いることなく斜材を柱に取り付けることができるようにすることにより、建物を経済的に構築できるようにすること。
【解決手段】建物は、水平方向に間隔を置かれた第1柱及び第2柱と、前記第1柱に固定され、該第1柱から水平方向内方へ突出する、高さ寸法が漸減する第1部材であって水平面に対して傾斜する上縁部を有する第1部材と、前記第2柱に固定され、該第2柱から水平方向内方へ突出する第2部材であって前記第1部材の前記上縁部から該上縁部と直交する方向に間隔を置かれた、前記上縁部に平行な下縁部を有する第2部材と、前記第1部材の前記上縁部と前記第2部材の前記下縁部との間に前記上縁部及び前記下縁部のそれぞれに対して垂直に配置され、前記上縁部と前記下縁部とに固定された斜材とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建物には、水平方向に間隔を置かれた2つの柱と、該柱の間に間隔を置いて設けられた上方の梁及び下方の梁と、前記上方の梁と前記下方の梁との間に配置され、前記上方の梁と一方の柱とに取り付けられた斜材とを有するものがある(特許文献1参照)。前記斜材はダンパーからなる。地震時に前記上方の梁が水平力を受けて振動することにより、前記上方の梁に振動エネルギーが作用したとき、前記斜材は前記上方の梁と前記一方の柱とから軸力を受けて変形する。これにより前記振動エネルギーは低減される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−171729号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
多くの場合、前記斜材の一端部は結合手段により前記一方の柱に結合されている。前記結合手段は、前記斜材の前記一端部に連結されたガセットプレートと、該ガセットプレートに前記ガセットプレートに対して垂直に固定されたベースプレートと、該ベースプレートに間隔を置いて設けられた、それぞれが前記ベースプレートをその厚さ方向に貫く複数の貫通穴と、一端部が前記一方の柱の内部に固定された、前記一方の柱の内部からその外方へ水平方向に伸びるボルトであって前記一方の柱の外方において各貫通穴を貫くボルトと、該ボルトの他端部に螺合されたナットとからなる。
【0005】
地震時に前記斜材が前記上方の梁と前記一方の柱とから前記軸力を受けたとき、前記ガセットプレートは前記斜材からその軸線方向の外力を受ける。このとき、前記外力の上下方向成分が前記ガセットプレートから前記ベースプレートに伝わり、該ベースプレートが前記一方の柱に対して上下方向にずれようとすることにより、前記ボルトにせん断力が作用する。これにより、前記ボルトは前記せん断力に抵抗しなければならず、前記ボルトの本数は比較的多く、前記ボルトの断面積は比較的大きい。このため、前記結合手段は比較的大型であり、前記結合手段の購入費が高くつき、前記建物を経済的に構築することができない。
【0006】
本発明の目的は、大型の結合手段を用いることなく斜材を柱に取り付けることができるようにすることにより、建物を経済的に構築できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、斜材が、該斜材に対して垂直な、第1柱に固定された第1部材の上縁部と、前記斜材に対して垂直な、第2柱に固定された第2部材の下縁部とに固定されていることにより、地震時に前記第1柱と前記第2柱とに水平力が作用して前記斜材が前記第1柱と前記第2柱とから軸力を受けたとき、前記斜材が前記第1部材の前記上縁部と前記第2部材の前記下縁部とに対して上下方向にずれようとすることがないようにする。これにより、前記斜材の一端部が第1結合手段により前記第1部材の前記上縁部に結合され、前記斜材の他端部が第2結合手段により前記第2部材の前記下縁部に結合されている場合に前記第1結合手段及び前記第2結合手段のそれぞれにせん断力が作用することがないようにし、前記第1結合手段及び前記第2結合手段のそれぞれの大型化を招くことがないようにする。これにより、大型の結合手段を用いることなく前記斜材を前記第1柱と前記第2柱とに取り付けることができるようにする。
【0008】
本発明に係る建物は、水平方向に間隔を置かれた第1柱及び第2柱と、前記第1柱に固定され、該第1柱から水平方向内方へ突出する、高さ寸法が漸減する第1部材であって水平面に対して傾斜する上縁部を有する第1部材と、前記第2柱に固定され、該第2柱から水平方向内方へ突出する第2部材であって前記第1部材の前記上縁部から該上縁部と直交する方向に間隔を置かれた、前記上縁部に平行な下縁部を有する第2部材と、前記第1部材の前記上縁部と前記第2部材の前記下縁部との間に前記上縁部及び前記下縁部のそれぞれに対して垂直に配置され、前記上縁部と前記下縁部とに固定された斜材とを含む。
【0009】
地震時に前記第1柱と前記第2柱とが水平力を受けて振動することにより、前記第1柱及び前記第2柱のそれぞれに振動エネルギーが作用したとき、前記斜材は前記第1柱及び前記第2柱からそれぞれ前記第1部材の前記上縁部及び前記第2部材の前記下縁部を介して軸力を受ける。このとき、前記斜材は、前記軸力を受けて変形することにより、前記振動エネルギーを吸収する、又は、前記軸力に抵抗することにより、前記第1柱及び前記第2柱のそれぞれが前記水平力に十分に耐えられるようにする。
【0010】
前記斜材が、該斜材に対して垂直な、前記第1柱に固定された前記第1部材の前記上縁部と、前記斜材に対して垂直な、前記第2柱に固定された前記第2部材の前記下縁部とに固定されているため、前記斜材が前記軸力を受けたときに前記斜材が前記第1部材の前記上縁部と前記第2部材の前記下縁部とに対して上下方向にずれようとすることはない。これにより、前記斜材の一端部が第1結合手段により前記第1部材の前記上縁部に結合され、前記斜材の他端部が第2結合手段により前記第2部材の前記下縁部に結合されている場合に前記第1結合手段及び前記第2結合手段のそれぞれにせん断力が作用しないようにすることができ、前記第1結合手段及び前記第2結合手段のそれぞれの大型化を招くことはない。このため、大型の結合手段を用いることなく前記斜材を前記第1部材を介して前記第1柱に取り付け、前記第2部材を介して前記第1柱に取り付けることができるようにすることができる。
【0011】
前記斜材は、棒状の本体と、該本体の一端部に前記本体に対して垂直に固定された一端側プレートであって第1結合手段により前記第1部材の前記上縁部に結合された一端側プレートと、前記本体の他端部に前記本体に対して垂直に固定された他端側プレートであって第2結合手段により前記第2部材の前記下縁部に結合された他端側プレートとを有する。
【0012】
前記斜材は、前記一端側プレートに間隔を置いて設けられた、それぞれが前記一端側プレートをその厚さ方向に貫く複数の一端側貫通穴を有し、前記第1結合手段は、一端部が前記第1柱の内部に固定された、前記第1柱の内部から前記第1部材の前記上縁部の内部を経て前記上縁部の外方へ該上縁部と直交する方向に伸びるボルトであって前記上縁部の外方において前記斜材の各一端側貫通穴を貫くボルトと、該ボルトの他端部に螺合されたナットとからなる。
【0013】
前記斜材は、前記他端側プレートに間隔を置いて設けられた、それぞれが前記他端側プレートをその厚さ方向に貫く複数の他端側貫通穴を有し、前記第2結合手段は、一端部が前記第2柱の内部に固定された、前記第2柱の内部から前記第2部材の前記下縁部の内部を経て前記下縁部の外方へ該下縁部と直交する方向に伸びるボルトであって前記下縁部の外方において前記斜材の各他端側貫通穴を貫くボルトと、該ボルトの他端部に螺合されたナットとからなる。
【0014】
本発明に係る他の建物は、水平方向に間隔を置かれた第1柱及び第2柱と、前記第1柱に固定され、該第1柱から水平方向内方へ突出する、高さ寸法が漸減する第1部材であってそれぞれが水平面に対して傾斜する上縁部及び下縁部を有する第1部材と、前記第2柱に固定され、該第2柱から水平方向内方へ突出する第2部材であって前記第1部材の前記上縁部から該上縁部と直交する方向に間隔を置かれた、前記上縁部に平行な下縁部を有する第2部材と、該第2部材から下方へ間隔を置いて前記第2柱に固定され、該第2柱から水平方向内方へ突出する第3部材であって前記第1部材の前記下縁部から該下縁部と直交する方向に間隔を置かれた、前記下縁部に平行な上縁部を有する第3部材と、前記第1部材の前記上縁部と前記第2部材の前記下縁部との間に前記第1部材の前記上縁部及び前記第2部材の前記下縁部のそれぞれに対して垂直に配置され、前記第1部材の前記上縁部と前記第2部材の前記下縁部とに固定された第1斜材と、前記第1部材の前記下縁部と前記第3部材の前記上縁部との間に前記第1部材の前記下縁部及び前記第3部材の前記上縁部のそれぞれに対して垂直に配置され、前記第1部材の前記下縁部と前記第3部材の前記上縁部とに固定された第2斜材とを含む。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、斜材が、該斜材に対して垂直な、第1柱に固定された第1部材の上縁部と、前記斜材に対して垂直な、第2柱に固定された第2部材の下縁部とに固定されているため、地震時に前記斜材が前記第1柱及び前記第2柱からそれぞれ前記第1部材の前記上縁部及び前記第2部材の前記下縁部を介して軸力を受けたとき、前記斜材が前記第1部材の前記上縁部と前記第2部材の前記下縁部とに対して上下方向にずれようとすることはない。これにより、前記斜材の一端部が第1結合手段により前記第1部材の前記上縁部に結合され、前記斜材の他端部が第2結合手段により前記第2部材の前記下縁部に結合されている場合に前記第1結合手段及び前記第2結合手段のそれぞれにせん断力が作用しないようにすることができ、前記第1結合手段及び前記第2結合手段のそれぞれの大型化を招くことはない。このため、大型の結合手段を用いることなく前記斜材を前記第1部材を介して前記第1柱に取り付け、前記第2部材を介して前記第1柱に取り付けることができるようにすることができ、結合手段の購入費が高くつくことはなく、建物を経済的に構築することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1実施例に係る建物の正面図。
【図2】図1の線2における建物の拡大図。
【図3】本発明の第2実施例に係る建物の拡大図。
【図4】本発明の第3実施例に係る建物の正面図。
【図5】本発明の第4実施例に係る建物の拡大図。
【図6】本発明の第5実施例に係る建物の正面図。
【図7】本発明の第6実施例に係る建物の正面図。
【図8】本発明の第7実施例に係る建物の正面図。
【図9】本発明の第8実施例に係る建物の正面図。
【図10】図9の線10における建物の水平断面図。
【図11】本発明の第9実施例に係る建物の正面図。
【図12】図11の線12における建物の水平断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1に示すように、建物10が構築されている。建物10は、水平方向に間隔を置かれた第1柱12及び第2柱14と、第1柱12に固定され、該第1柱から水平方向内方へ、すなわち第2柱14に向けて突出する第1部材16と、第2柱14に固定され、該第2柱から水平方向内方へ、すなわち第1柱12に向けて突出する第2部材18とを有する。第1柱12、第2柱14、第1部材16及び第2部材18のそれぞれは鉄筋コンクリートからなる。
【0018】
第1部材16の高さ寸法は第1柱12から水平方向内方に向けて漸減し、第1部材16は、水平面に対して傾斜する上縁部20を有する。第2部材18の高さ寸法は第2柱14から水平方向内方に向けて漸減し、第2部材18は、水平面に対して傾斜する下縁部22を有する。第2部材18の位置は第1部材16の位置より高く、第2部材18の下縁部22は、第1部材16の上縁部20から該上縁部と直交する方向に間隔を置かれており、第1部材16の上縁部20に平行である。第1部材16及び第2部材18はそれぞれ第1柱12及び第2柱14に一体に形成されている。
【0019】
建物10は、第1部材16の上縁部20と第2部材18の下縁部22との間に配置された斜材24を有する。斜材24は、第1部材16の上縁部20及び第2部材18の下縁部22のそれぞれに対して垂直であり、第1部材16の上縁部20と第2部材18の下縁部22とに固定されている。このように斜材24は、第1部材16を介して第1柱12に取り付けられ、第2部材18を介して第2柱14に取り付けられている。
【0020】
斜材24は、棒状の本体26と、該本体の一端部28に本体26に対して垂直に固定された一端側プレート30と、本体26の他端部32に本体26に対して垂直に固定された他端側プレート34とを有する。一端側プレート30は第1結合手段36により第1部材16の上縁部20に結合され、他端側プレート34は第2結合手段38により第2部材18の下縁部22に結合されている。
【0021】
本体26はダンパーからなる。前記ダンパーは、内部にモルタルが充填された鋼管26aと、該鋼管の内部を経て伸びる、低降伏点鋼からなる芯材26bとからなる(例えば、商品名「アンボンドブレース」 新日鉄エンジニアリング株式会社製)。芯材26bは、前記モルタルに定着しておらず、軸力を受けて変形し、鋼管26aは芯材26bの座屈を防止する。このため、芯材26bは、圧縮力を受けたとき、座屈することなく変形する。前記ダンパーは、芯材26bが変形することにより、地震時に第1柱12及び第2柱14のそれぞれに作用する振動エネルギーを吸収する。前記ダンパーは、内部に前記モルタルが充填された鋼管26aと、該鋼管の内部を経て伸びる芯材26bとからなる上記の例に代え、オイルダンパーのような他のダンパーでもよい。
【0022】
図2に示すように、斜材24は、一端側プレート30に間隔を置いて設けられた、それぞれが一端側プレート30をその厚さ方向に貫く複数の一端側貫通穴40を有する。第1結合手段36は、一端部が第1柱12の内部に固定された、第1柱12の内部から第1部材16の上縁部20の内部を経て上縁部20の外方へ該上縁部と直交する方向に伸びるボルト42であって上縁部20の外方において斜材24の各一端側貫通穴40を貫くボルト42と、該ボルトの他端部に螺合されたナット44とからなる。
【0023】
斜材24は、他端側プレート34に間隔を置いて設けられた、それぞれが他端側プレート34をその厚さ方向に貫く複数の他端側貫通穴(図示せず)を有する。第2結合手段38は、一端部が第2柱14の内部に固定された、第2柱14の内部から第2部材18の下縁部22の内部を経て下縁部22の外方へ該下縁部と直交する方向に伸びるボルト46であって下縁部22の外方において斜材24の各他端側貫通穴を貫くボルト46と、該ボルトの他端部に螺合されたナット48とからなる。
【0024】
地震時に第1柱12と第2柱14とが水平力を受けて振動することにより、第1柱12及び第2柱14のそれぞれに振動エネルギーが作用する。このとき、建物10の全体が曲げ変形又はせん断変形し、斜材24は第1柱12及び第2柱14からそれぞれ第1部材16の上縁部20及び第2部材18の下縁部22を介して軸力を受ける。前記軸力は、前記水平力が第1柱12から第2柱14に向けて(図1における右向き)の力であるときに引張力であり、前記水平力が第2柱14から第1柱12に向けて(図1における左向き)の力であるときに圧縮力である。斜材24が前記軸力を受けることにより、斜材24の本体26は変形し、該本体の芯材26bは降伏する。これにより、前記振動エネルギーは低減され、第1柱12及び第2柱14のそれぞれの振動は小さくなる。
【0025】
斜材24が、該斜材に対して垂直な、第1柱12に固定された第1部材16の上縁部20と、斜材24に対して垂直な、第2柱14に固定された第2部材18の下縁部22とに固定されているため、斜材24が前記軸力を受けたときに斜材24が第1部材16の上縁部20と第2部材18の下縁部22とに対して上下方向にずれようとすることはない。このため、第1結合手段36のボルト42及び第2結合手段38のボルト46のそれぞれにせん断力が作用することはなく、第1結合手段36のボルト42及び第2結合手段38のボルト46のそれぞれがせん断力を負担することはない。このため、これらのボルト42、46の本数は比較的少なく、これらのボルト42、46の断面積は比較的小さく、第1結合手段36及び第2結合手段38のそれぞれは比較的小型である。このように、斜材24を第1柱12と第2柱14とに取り付けるために大型の結合手段を要しない。
【0026】
ボルト42の中間部は、図1に示した例では、シース(図示せず)で覆われておらず、第1柱12の内部と第1部材16の上縁部20の内部とに付着しているが、これに代え、シース(図示せず)で覆われ、第1柱12の内部と第1部材16の上縁部20の内部とに付着していなくてもよい。地震時に斜材24に引張力が作用したとき、ボルト42は斜材24の一端側プレート30から引張力を受ける。このとき、ボルト42の中間部が第1部材16の上縁部20の内部に付着している場合、前記引張力がボルト42から第1部材16の上縁部20に伝わり、該上縁部にひび割れが生じる恐れがある。これに対して、ボルト42の中間部が前記シースで覆われている場合、前記引張力がボルト42から第1部材16の上縁部20に伝わることはなく、該上縁部にひび割れが生じるのを防止することができる。ボルト42は、張力が導入されていないものでもよいし、張力が導入されていているものでもよい。ボルト42は、PC鋼棒からなるものとすることができる。
【0027】
ボルト46の中間部は、シース(図示せず)で覆われておらず、第2柱14の内部と第2部材18の下縁部22の内部とに付着している図1に示した例に代え、シース(図示せず)で覆われ、第2柱14の内部と第2部材18の下縁部22の内部とに付着していなくてもよい。地震時に斜材24に引張力が作用したとき、ボルト46は斜材24の他端側プレート34から引張力を受ける。このとき、ボルト46の中間部が第2部材18の下縁部22の内部に付着している場合、前記引張力がボルト46から第2部材18の下縁部22に伝わり、該下縁部にひび割れが生じる恐れがある。これに対して、ボルト46の中間部が前記シースで覆われている場合、前記引張力がボルト46から第2部材18の下縁部22に伝わることはなく、該下縁部にひび割れが生じるのを防止することができる。ボルト46は、張力が導入されていないものでもよいし、張力が導入されていているものでもよい。ボルト46は、PC鋼棒からなるものとすることができる。
【0028】
斜材24の本体26は、ダンパーである図1に示した例に代え、図3に示すように、普通鋼からなる、H形鋼、溝形鋼等のような部材でもよいし、内部にモルタルが充填された鋼管と、該鋼管の内部を経て伸びる、普通鋼からなる芯材とからなるものでもよい。この場合、斜材24は、地震時に第1柱12及び第2柱14からそれぞれ第1部材16の上縁部20及び第2部材18の下縁部22を介して前記軸力を受けたとき、該軸力に抵抗する。これにより建物10の耐震性を高めることができる。
【0029】
図4に示す例では、建物10は、第1柱12に固定された第1部材16と、第2柱14に固定された第2部材18とに加え、該第2部材から下方へ間隔を置いて第2柱14に固定された第3部材50を有する。第3部材50は第2柱14から水平方向内方へ突出しており、第3部材50の高さ寸法は第2柱14から水平方向内方に向けて漸減する。
【0030】
第1部材16は、水平面に対して傾斜する下縁部52を有する。第3部材50は、水平面に対して傾斜する上縁部54を有する。第3部材50の位置は第1部材16の位置より低く、第3部材50の上縁部54は、第1部材16の下縁部52から該下縁部と直交する方向に間隔を置かれており、第1部材16の下縁部52に平行である。第3部材50は第2柱14に一体に形成されている。
【0031】
建物10は、第1部材16の上縁部20と第2部材18の下縁部22との間に配置された斜材(第1斜材)24に加え、第1部材16の下縁部52と第3部材50の上縁部54との間に配置された第2斜材56を有する。第2斜材56は、第1部材16の下縁部52及び第3部材50の上縁部54のそれぞれに対して垂直であり、第1部材16の下縁部52と第3部材50の上縁部54とに固定されている。このように第2斜材56は、第1部材16を介して第1柱12に取り付けられ、第3部材50を介して第2柱14に取り付けられている。
【0032】
第2斜材56は、棒状の本体26’と、該本体の一端部28’に本体26’に対して垂直に固定された一端側プレート30’と、本体26’の他端部32’に本体26’に対して垂直に固定された他端側プレート34’とを有する。一端側プレート30’は第3結合手段58により第1部材16の下縁部52に結合されており、他端側プレート34’は第4結合手段60により第3部材50の上縁部54に結合されている。
【0033】
第2斜材56は、図2に示したように、一端側プレート30’に間隔を置いて設けられた、それぞれが一端側プレート30’をその厚さ方向に貫く複数の一端側貫通穴40’を有する。第3結合手段58は、一端部が第1柱12の内部に固定された、第1柱12の内部から第1部材16の下縁部52の内部を経て下縁部52の外方へ該下縁部と直交する方向に伸びるボルト42’であって下縁部52の外方において第2斜材56の各一端側貫通穴40’を貫くボルト42’と、該ボルトの他端部に螺合されたナット44’とからなる。
【0034】
第2斜材56は、他端側プレート34’に間隔を置いて設けられた、それぞれが他端側プレート34’をその厚さ方向に貫く複数の他端側貫通穴(図示せず)を有する。第4結合手段60は、一端部が第2柱14の内部に固定された、第2柱14の内部から第3部材50の上縁部54の内部を経て上縁部54の外方へ該上縁部と直交する方向に伸びるボルト46’であって上縁部54の外方において第2斜材56の各他端側貫通穴を貫くボルト46’(図4)と、該ボルトの他端部に螺合されたナット(図示せず)とからなる。
【0035】
建物10は、第1柱12から水平方向外方(図4における左方)へ間隔を置かれた第3柱62と、第1柱12と第3柱62との間に配置され、第1部材16と同じ高さに位置する梁64とを有する。梁64の一端部は第1柱12に、梁64の他端部は第3柱62にそれぞれ結合されている。第1斜材24及び第2斜材56のそれぞれが、梁64と同じ高さに位置する第1部材16を介して第1柱12に取り付けられているため、地震時に梁64が水平力を受けて梁64に振動エネルギーが作用したとき、前記水平力は梁64から第1部材16を介して第1斜材24及び第2斜材56のそれぞれに効果的に伝わる。このため、第1斜材24及び第2斜材56のそれぞれは、第1部材16から効果的に軸力を受けることができ、前記振動エネルギーを効果的に吸収することができる。第3柱62及び梁64のそれぞれは鉄筋コンクリートからなる。
【0036】
図5に示す例では、建物10は、梁64の前記一端部の下に第1柱12に隣接して配置された第4部材66と、梁64の前記一端部の上に第1柱12に隣接して配置された第5部材68とを有する。第4部材66及び第5部材68のそれぞれは梁64の前記一端部と第1柱12とに固定されている。第4部材66は第1部材16の上縁部20に平行な下縁部70を有し、第5部材68は第1部材16の下縁部52に平行な上縁部72を有する。第4部材66及び第5部材68のそれぞれは、梁64と第1柱12とに一体に形成されていてもよいし、梁64及び第1柱12のそれぞれと別個の部材でもよい。第4部材66及び第5部材68のそれぞれは、鉄筋コンクリート製でもよいし、鋼製でもよい。
【0037】
第1結合手段36は、一端部が第4部材66の下縁部70に固定された、第4部材66の下縁部70の内部と第1柱12の内部と第1部材16の上縁部20の内部とを経て上縁部20の外方へ該上縁部と直交する方向に伸びるボルト42であって上縁部20の外方において第1斜材24の各一端側貫通穴40を貫くボルト42と、該ボルトの他端部に螺合されたナット44とからなる。ボルト42の中間部は、シース74で覆われており、第4部材66の下縁部70の内部と第1柱12の内部と第1部材16の上縁部20の内部とに付着していない。ボルト42は、PC鋼棒からなり、張力が導入されていている。
【0038】
第3結合手段58は、一端部が第5部材68の上縁部72に固定された、第5部材68の上縁部72の内部と第1柱12の内部と第1部材16の下縁部52の内部とを経て下縁部52の外方へ該下縁部と直交する方向に伸びるボルト42’であって下縁部52の外方において第2斜材56の各一端側貫通穴40’を貫くボルト42’と、該ボルトの他端部に螺合されたナット44’とからなる。ボルト42’の中間部は、シース74’で覆われており、第5部材68の上縁部72の内部と第1柱12の内部と第1部材16の下縁部52の内部とに付着していない。ボルト42’は、PC鋼棒からなり、張力が導入されていている。
【0039】
第1柱12と第3柱62との間に、第1部材16と同じ高さに位置する梁64が配置されている図4に示した例に代え、図6に示すように、第1柱12と第3柱62との間に、第1部材16と同じ高さに位置する梁が配置されていなくてもよい。図1に示した例では、第1部材16の下縁部52及び第2部材18の上縁部76のそれぞれが水平面に対して傾斜しているが、これに代え、図7に示すように、第1部材16の下縁部52及び第2部材18の上縁部76のそれぞれが水平でもよい。第1柱12、第2柱14、第1部材16、第2部材18及び第3部材50のそれぞれは、鉄筋コンクリート製である図1、4に示した例に代え、鋼製でもよい。
【0040】
図8に示す例では、第1柱12と第2柱14との間に、上下方向に間隔を置かれた上方の水平材78及び下方の水平材80が配置されている。上方の水平材78は第1柱12と第2部材18とに固定されており、下方の水平材80は第1部材16と第2柱14とに固定されている。
【0041】
図9に示す例では、建物10は、第1柱12に第1部材16から上方へ間隔を置いて固定され、第1柱12から水平方向内方へ突出する第6部材82であって第2部材18と同じ高さに位置する第6部材82と、第2柱14に第2部材18から下方へ間隔を置いて固定され、第2柱14から水平方向内方へ突出する第7部材84であって第1部材16と同じ高さに位置する第7部材84とを有する。第6部材82の高さ寸法は第1柱12から水平方向内方に向けて漸減し、第6部材82は、水平面に対して傾斜する下縁部86を有する。第7部材84の高さ寸法は第2柱14から水平方向内方に向けて漸減し、第7部材84は、水平面に対して傾斜する上縁部88を有する。第7部材84の上縁部88は、第6部材82の下縁部86から該下縁部と直交する方向に間隔を置かれており、第6部材82の下縁部86に平行である。
【0042】
第1部材16は、図10に示すように、第1水平方向(図10における左右方向)と直交する第2水平方向(図10における上下方向)における第1柱12の中心から一方の側(図10における下方)へ隔てられており、第2部材18は前記第2水平方向における第2柱14の中心から前記一方の側へ隔てられている。第6部材82は第1柱12の中心から他方の側へ(図10における上方)隔てられており、第7部材84は第2柱14の中心から前記他方の側へ隔てられている。建物10は、第6部材82の下縁部86と第7部材84の上縁部88との間に第6部材82の下縁部86及び第7部材84の上縁部88のそれぞれに対して垂直に配置された第3斜材90を有する。第3斜材90は第6部材82の下縁部86と第7部材84の上縁部88とに固定されている。
【0043】
図11に示す例では、第3斜材90は、一端部が第6部材82の下縁部86に結合され、他端部が第1斜材24の中心部に結合された第1部分92と、一端部が第7部材84の上縁部88に結合され、他端部が第1斜材24の前記中心部に結合された第2部分94とを有する。第1部分92及び第2部分94のそれぞれは、内部にモルタルが充填された鋼管と、該鋼管の内部を経て伸びる、低降伏点鋼からなる芯材とを有するダンパーからなる。この場合、図12に示すように、第6部材82は前記第2水平方向における第1柱12の中心に位置し、第2部材18は前記第2水平方向における第2柱14の中心に位置する。また、第1部材16は前記第2水平方向における第1柱12の中心に位置し、第7部材84は前記第2水平方向における第2柱14の中心に位置する。
【符号の説明】
【0044】
10 建物
12 第1柱
14 第2柱
16 第1部材
18 第2部材
20 上縁部
22 下縁部
24 斜材(第1斜材)
26 本体
28 一端部
30 一端側プレート
32 他端部
34 他端側プレート
36 第1結合手段
38 第2結合手段
40 一端側貫通穴
42 ボルト
44 ナット
46 ボルト
48 ナット
50 第3部材
52 下縁部
54 上縁部
56 第2斜材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平方向に間隔を置かれた第1柱及び第2柱と、
前記第1柱に固定され、該第1柱から水平方向内方へ突出する、高さ寸法が漸減する第1部材であって水平面に対して傾斜する上縁部を有する第1部材と、
前記第2柱に固定され、該第2柱から水平方向内方へ突出する第2部材であって前記第1部材の前記上縁部から該上縁部と直交する方向に間隔を置かれた、前記上縁部に平行な下縁部を有する第2部材と、
前記第1部材の前記上縁部と前記第2部材の前記下縁部との間に前記上縁部及び前記下縁部のそれぞれに対して垂直に配置され、前記上縁部と前記下縁部とに固定された斜材とを含む、建物。
【請求項2】
前記斜材は、棒状の本体と、
前記本体の一端部に前記本体に対して垂直に固定された一端側プレートであって第1結合手段により前記第1部材の前記上縁部に結合された一端側プレートと、
前記本体の他端部に前記本体に対して垂直に固定された他端側プレートであって第2結合手段により前記第2部材の前記下縁部に結合された他端側プレートとを有する、請求項1に記載の建物。
【請求項3】
前記斜材は、前記一端側プレートに間隔を置いて設けられた、それぞれが前記一端側プレートをその厚さ方向に貫く複数の一端側貫通穴を有し、
前記第1結合手段は、一端部が前記第1柱の内部に固定された、前記第1柱の内部から前記第1部材の前記上縁部の内部を経て前記上縁部の外方へ該上縁部と直交する方向に伸びるボルトであって前記上縁部の外方において前記斜材の各一端側貫通穴を貫くボルトと、該ボルトの他端部に螺合されたナットとからなる、請求項2に記載の建物。
【請求項4】
前記斜材は、前記他端側プレートに間隔を置いて設けられた、それぞれが前記他端側プレートをその厚さ方向に貫く複数の他端側貫通穴を有し、
前記第2結合手段は、一端部が前記第2柱の内部に固定された、前記第2柱の内部から前記第2部材の前記下縁部の内部を経て前記下縁部の外方へ該下縁部と直交する方向に伸びるボルトであって前記下縁部の外方において前記斜材の各他端側貫通穴を貫くボルトと、該ボルトの他端部に螺合されたナットとからなる、請求項2に記載の建物。
【請求項5】
水平方向に間隔を置かれた第1柱及び第2柱と、
前記第1柱に固定され、該第1柱から水平方向内方へ突出する、高さ寸法が漸減する第1部材であってそれぞれが水平面に対して傾斜する上縁部及び下縁部を有する第1部材と、
前記第2柱に固定され、該第2柱から水平方向内方へ突出する第2部材であって前記第1部材の前記上縁部から該上縁部と直交する方向に間隔を置かれた、前記上縁部に平行な下縁部を有する第2部材と、
前記第2部材から下方へ間隔を置いて前記第2柱に固定され、該第2柱から水平方向内方へ突出する第3部材であって前記第1部材の前記下縁部から該下縁部と直交する方向に間隔を置かれた、前記下縁部に平行な上縁部を有する第3部材と、
前記第1部材の前記上縁部と前記第2部材の前記下縁部との間に前記第1部材の前記上縁部及び前記第2部材の前記下縁部のそれぞれに対して垂直に配置され、前記第1部材の前記上縁部と前記第2部材の前記下縁部とに固定された第1斜材と、
前記第1部材の前記下縁部と前記第3部材の前記上縁部との間に前記第1部材の前記下縁部及び前記第3部材の前記上縁部のそれぞれに対して垂直に配置され、前記第1部材の前記下縁部と前記第3部材の前記上縁部とに固定された第2斜材とを含む、建物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−163039(P2011−163039A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−28577(P2010−28577)
【出願日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【出願人】(596033576)
【出願人】(000001317)株式会社熊谷組 (551)
【Fターム(参考)】