説明

建物

【課題】限られた敷地内で太陽光パネルによる発電量を増加させることができる建物を得る。
【解決手段】建物10は、吹き抜け部16と、吹き抜け部16に設けられ複数の太陽光パネル28を上下方向に収納する収納部20と、複数の太陽光パネル28を吹き抜け部16に案内するガイドレール40A、40B等を有している。ここで、複数の太陽光パネル28をガイドレール40A、40B等を用いて吹き抜け部16の開口部30へ案内することで、複数の太陽光パネル28が並べて配置されるので、吹き抜け部16で1枚の太陽光パネル28を用いて太陽光発電を行う構成に比べて、太陽光パネル全体の発電量を増加させることができる。また、複数の太陽光パネル28を収納部20に収納しておくことで、吹き抜け部16の通気性及び採光性を確保することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽光パネルを有する建物に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の建物は、中庭の上方にルーバー装置を設けている。このルーバー装置は、複数の羽根板が同じ角度に向けられるように回動可能に設けられており、各羽根板の表面には、太陽電池パネルが取付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−221896号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の特許文献1に開示された先行技術では、中庭の上方にルーバー装置を固定しているので、太陽電池パネルの面積を増加させることができず、太陽電池パネルによる発電量を増加させることができなかった。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、限られた敷地内で太陽光パネルによる発電量を増加させることができる建物を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明に係る建物は、吹き抜け部に設けられ、複数の太陽光パネルが、上下方向に複数段で収納されると共に前記吹き抜け部の奥行き方向に引き出し可能とされた収納部と、前記収納部から引き出される複数の前記太陽光パネルを前記吹き抜け部の前記収納部とは異なる開口部に案内する案内手段と、を有する。
【0007】
請求項1の発明に係る建物では、居住者が太陽光パネルによる発電量の増加を必要とする場合、収納部内に収納されている複数の太陽光パネルを引き出すと共に案内手段を用いて開口部へ案内する。これにより、開口部(吹き抜け部)を覆って複数の太陽光パネルが配置されるので、吹き抜け部で1枚の太陽光パネルを用いて太陽光発電を行う構成に比べて、太陽光パネル全体での発電量を増加させることができる。
【0008】
一方、居住者が通気性及び採光性を必要とする場合には、複数の太陽光パネルを収納部に収納しておく。ここで、収納部では、複数の太陽光パネルが上下方向に複数段で収納されているため、吹き抜け部における収納部の占有面積の比率は低くなる。これにより、吹き抜け部の通気性及び採光性を確保することができる。
【0009】
請求項2の発明に係る建物は、前記案内手段により前記開口部に案内された前記複数の太陽光パネルが隣接して配置される。
【0010】
請求項2の発明に係る建物では、案内手段として、例えば、ストッパー部材や各太陽光パネルの幅に対応した長さの異なるレール材を用いることで、収納部から引き出された複数の太陽光パネルが、建物の平面視で見て隣接して配置される。このように、複数の太陽光パネルが案内手段で案内されて隣接配置されるので、複数の太陽光パネルの設置時に各太陽光パネル間の隙間を低減することができる。さらに、無駄な空きスペースを減らせるので、吹き抜け部の面積に対する太陽光パネルの表面積(設置面積)の占有率を上げることができ、発電量を増やすことができる。
【0011】
請求項3の発明に係る建物は、前記収納部には、足場となる作業用パネルが複数の前記太陽光パネルの下側に収納され、該作業用パネルは、前記案内手段によって前記開口部へ案内される。
【0012】
請求項3の発明に係る建物では、収納部から作業用パネルを引き出すと共に案内手段によって開口部(吹き抜け部)へ案内して作業用パネルを配置する。この作業用パネルが足場となり、作業用パネルよりも上側に収納されている各太陽光パネルの引き出し及びメンテナンス作業を行うことができるので、別途、脚立等の足場を準備する必要がなくなり、太陽光パネルのメンテナンス作業を容易に行うことができる。また、メンテナンス作業後は、複数の太陽光パネルと共に収納部に収納すればよいので、作業用パネル用に別途収納部を設けなくても済む。
【0013】
請求項4の発明に係る建物は、前記案内手段は、前記開口部の上部に設けられたレール材である。
【0014】
請求項4の発明に係る建物では、レール材を開口部の上部に設置するだけでよいので、案内手段の施工を簡単に行うことができる、
【0015】
請求項5の発明に係る建物は、前記吹き抜け部には、複数の前記太陽光パネルの配線を収納する配線ボックスが設けられている。
【0016】
請求項5の発明に係る建物では、太陽光パネルに接続された配線が、配線ボックスによって集約されると共に覆われるので、各太陽光パネルを移動させるときに配線が露出しにくくなり、太陽光パネルの配線に傷が付くのを抑制することができる。
【0017】
請求項6の発明に係る建物は、前記配線ボックスは、前記奥行き方向に開口した筒体である。
【0018】
請求項6の発明に係る建物では、配線ボックスが太陽光パネルの引き出し方向に開口した形状となっているため、配線は、少なくとも、引き出し方向と直交する方向で配線ボックスにより覆われる。これにより、移動する各太陽光パネルと配線とが接触しにくくなり、太陽光パネルの配線に傷が付くのを抑制することができる。
【0019】
請求項7の発明に係る建物は、前記収納部には、前記太陽光パネルを前記上下方向及び前記奥行き方向と交差する交差方向へ引き出し可能となる大きさの引出口が形成されている。
【0020】
請求項7の発明に係る建物では、例えば、吹き抜け部が狭いことにより、収納部内の全ての太陽光パネルを開口部へ引き出すことができない場合、収納部内に残った太陽光パネルを引出口から屋根側へ引き出して使用することができる。これにより、吹き抜け部が狭い場合であっても、太陽光パネルによる発電量が低下するのを抑制することができる。
【0021】
請求項8の発明に係る建物は、照度、湿度、及び風速のうち少なくとも1つを検知する検知手段と、前記検知手段で検知された照度、湿度、及び風速の少なくとも1つと、予め設定された設定条件とを比較して、前記吹き抜け部又は前記収納部への前記太陽光パネルの移動を制御する制御手段と、が設けられている。
【0022】
請求項8の発明に係る建物では、制御部が、検知手段で検知された照度、湿度、及び風速のうち少なくとも1つの環境条件と、予め設定された設定条件とを比較する。そして、太陽光発電が必要と判定したときは太陽光パネルを開口部(吹き抜け部)へ移動させ、通気性、採光性が必要と判定したときは太陽光パネルを収納部へ移動させる。このように、太陽光パネルの移動が自動制御となるので、建物の居住者が行う太陽光パネルの移動作業を無くすことができる。
【0023】
請求項9の発明に係る建物は、前記制御手段は、前記太陽光パネルの移動を自動又は手動に切り換える動作モード切り換え機能を有し、前記太陽光パネルには、手動での引き出し時に把持される把持部が設けられている。
【0024】
請求項9の発明に係る建物では、太陽光パネルのメンテナンス作業を行う場合において、太陽光パネルを僅かに移動させるとき、制御手段で自動モードから手動モードに切り換え把持部を把持して引っ張ると、すぐに太陽光パネルを移動させることができ、且つ移動位置の微調整が行える。このように、太陽光パネルの移動時間が短くなり、且つ太陽光パネルの移動に余分なエネルギー(電力)を消費しなくて済むので、太陽光パネルのメンテナンス作業時のエネルギー消費量を低減することができる。
【0025】
請求項10の発明に係る建物は、前記案内手段で案内された前記太陽光パネルを隣接する建物との間に案内する架設部材が設けられている。
【0026】
請求項10の発明に係る建物では、建物と建物との間に架設部材を架設した後、太陽光パネルが架設部材で案内されて建物と建物との間に配置される。これにより、開口部(吹き抜け部)だけでなく、建物と建物との間の空間も太陽光発電に利用可能となるので、太陽光パネルによる発電量を増加させることができる。
【0027】
請求項11の発明に係る建物は、前記吹き抜け部から前記隣接する建物との間への前記太陽光パネルの移動を制御する補助制御手段が設けられている。
【0028】
請求項11の発明に係る建物では、補助制御手段が、吹き抜け部から隣接する建物との間への太陽光パネルの移動を制御する。これにより、吹き抜け部から隣接する建物との間への太陽光パネルの移動が自動制御となるので、建物の居住者が手動で行う太陽光パネルの移動作業を無くすことができる。
【0029】
請求項12の発明に係る建物は、前記収納部の上部には、収納された複数の前記太陽光パネルのうち最上段にある前記太陽光パネルが受光可能となる窓部が設けられている。
【0030】
請求項12の発明に係る建物では、収納部に全ての太陽光パネルを収納しても、最上段の太陽光パネルで太陽光が受光されるので、発電を行うことができる。
【発明の効果】
【0031】
以上説明したように、請求項1に記載の本発明に係る建物によれば、限られた敷地内で太陽光パネルによる発電量を増加させることができるという優れた効果を有する。
【0032】
請求項2に記載の本発明に係る建物によれば、複数の太陽光パネルの設置時に各太陽光パネル間の隙間を低減することができるという優れた効果を有する。
【0033】
請求項3に記載の本発明に係る建物によれば、太陽光パネルのメンテナンス作業を容易に行うことができるという優れた効果を有する。
【0034】
請求項4に記載の本発明に係る建物によれば、案内手段の施工を簡単に行うことができるという優れた効果を有する。
【0035】
請求項5に記載の本発明に係る建物によれば、太陽光パネルの配線に傷が付くのを抑制することができるという優れた効果を有する。
【0036】
請求項6に記載の本発明に係る建物によれば、太陽光パネルの配線に傷が付くのを抑制することができるという優れた効果を有する。
【0037】
請求項7に記載の本発明に係る建物によれば、太陽光パネルによる発電量が低下するのを抑制することができるという優れた効果を有する。
【0038】
請求項8に記載の本発明に係る建物によれば、建物の居住者が行う太陽光パネルの移動作業を無くすことができるという優れた効果を有する。
【0039】
請求項9に記載の本発明に係る建物によれば、太陽光パネルのメンテナンス作業時のエネルギー消費量を低減することができるという優れた効果を有する。
【0040】
請求項10に記載の本発明に係る建物によれば、太陽光パネルによる発電量を増加させることができるという優れた効果を有する。
【0041】
請求項11に記載の本発明に係る建物によれば、建物の居住者が手動で行う太陽光パネルの移動作業を無くすことができるという優れた効果を有する。
【0042】
請求項12に記載の本発明に係る建物によれば、収納部に全ての太陽光パネルを収納しても発電を行うことができるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】第1実施形態に係る建物の斜視図である。
【図2】(A)第1実施形態に係る太陽光パネルの収納部の縦断面図である。(B)第1実施形態に係る太陽光パネルの幅と各ガイドレールの長さとを比較した模式図である。
【図3】(A)第1実施形態に係る太陽光パネルが収納部からガイドレールへ移動する状態を示す断面図である。(B)第1実施形態に係る配線ボックスを示す斜視図である。
【図4】第1実施形態に係る太陽光パネルの移動を制御する制御部の構成図である。
【図5】第1実施形態に係る太陽光パネルの引き出し動作又は収納動作を昼夜、天候、風速で場合分けしたフロー図である。
【図6】(A)、(B)第1実施形態に係る太陽光パネルの収納状態、引き出し状態を示す建物の斜視図である。
【図7】(A)、(B)第1実施形態に係る太陽光パネルを昼夜、天候に合わせて引き出した状態、収納した状態を示す建物の斜視図である。
【図8】第1実施形態に係る太陽光パネルの他の実施例を示す説明図である。
【図9】第2実施形態に係る太陽光パネルの収納部の縦断面図である。
【図10】第2実施形態に係る収納部において太陽光パネルを2方向に引き出す状態を示す説明図である。
【図11】第3実施形態に係る建物の斜視図である。
【図12】第3実施形態に係る太陽光パネルと各ガイドレールの配置を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態に係る建物について説明する。
【0045】
図1には、第1実施形態の建物10が示されている。建物10は、一例として、居住者が生活する場である居住部12と、外壁14と、居住部12及び外壁14で囲まれた吹き抜け部16とを有している。なお、以後の説明に用いる図では、居住部12の長手方向(桁方向)であり且つ吹き抜け部16の奥行き方向を矢印X方向、居住部12の短手方向(妻方向)を矢印Y方向、上下方向(高さ方向)を矢印Z方向で示す。また、建物10の隣地との境界線を二点鎖線Aで示す。
【0046】
居住部12は、柱及び梁からなる躯体(図示省略)と、この躯体の最上部に形成された陸屋根18とを含んで二階建てで構築されており、建物10の平面視で見て逆L字状に形成されている。そして、陸屋根18の外縁部には腰壁19が立設されている。
【0047】
また、居住部12の外周面は、道路22側に配置され玄関25が設けられた側壁24Aと、側壁24Aの一端側と連続して外壁14と対向配置された側壁24Bと、側壁24Bの端部から外壁14側へ向けて延びる側壁24Cと、側壁24Cの端部から外壁14に沿って延びる側壁24Dと、側壁24Aの端部から他方側の隣地へ向けて延びる側壁24Eと、側壁24Eの端部から側壁24Aの他端側へ繋がる側壁24Fとで構成されている。
【0048】
外壁14は、矢印Y方向(厚さ方向に相当)に間隔をあけて側壁24Bと対向配置されており、道路22側とは反対側の端面が側壁24Cと接触した配置となっている。また、外壁14の上端の位置は、居住部12の腰壁19の上端の位置よりも所定の長さだけ下側となっている。なお、本実施形態では、外壁14と居住部12を別体として説明するが、外壁14が居住部12と一体で構築されていてもよい。
【0049】
吹き抜け部16は、建物10を平面視で見て、居住部12の側壁24Bと、側壁24Cと、外壁14とでコ字状に囲まれ、且つ一階部分と二階部分が連通した空間であり、道路22側が開放されている。また、吹き抜け部16には、道路22側における側壁24Bの上部と外壁14の上部との間にルーバー26が架設されている。さらに、吹き抜け部16には、ルーバー26に隣接して、複数の太陽光パネル28を収納する収納部20が設けられている。なお、以後の説明では、吹き抜け部16における収納部20とは異なる部位(収納部20を除いて平面視で見て矩形状に開口した部位)を開口部30という。
【0050】
図2(A)に示すように、収納部20は、一例として、4枚の太陽光パネル28(上から28A、28B、28C、28D)と、太陽光パネル28Dの下側に配置された作業用パネル34とを収納している。また、収納部20は、矢印X方向に見て、太陽光パネル28A、28B、28C、28D、及び作業用パネル34の一端(図示の左端)を支持する上端支持部21と、太陽光パネル28A、28B、28C、28D、及び作業用パネル34の他端(図示の右端)を支持する下端支持部23とを有している。
【0051】
上端支持部21は、矢印Z方向に直立配置された板状の取付部21Aと、取付部21Aの側面から外壁14側へ突設された板状の支持部21B、21C、21D、21E、21F、21Gとを含んで構成されている。取付部21Aは、詳細を後述する配線ボックス32の外壁14側の側面にビス等を用いて固定されている。また、支持部21B、21C、21D、21E、21F、21Gは、太陽光パネル28又は作業用パネル34の厚さに相当する長さよりも長い間隔をあけて矢印Z方向に6段で設けられており、それぞれの先端が同じ角度で斜め下方に向けて延びている。なお、矢印X方向(図示の奥行き方向)において、取付部21A及び支持部21B、21C、21D、21E、21F、21Gの幅は、太陽光パネル28の幅より僅かに長くなっている。
【0052】
下端支持部23は、矢印Z方向に直立配置された板状の取付部23Aと、取付部23Aの側面から側壁24B側へ突設された板状の支持部23B、23C、23D、23E、23F、23Gとを含んで構成されている。取付部23Aは、外壁14にビス等を用いて固定されている。また、支持部23B、23C、23D、23E、23F、23Gは、太陽光パネル28又は作業用パネル34の厚さに相当する長さよりも長い間隔をあけて矢印Z方向に6段で設けられており、それぞれの先端が同じ角度で斜め上方に向けて延びている。なお、矢印X方向(図示の奥行き方向)において、取付部23A及び支持部23B、23C、23D、23E、23F、23Gの幅は、太陽光パネル28の幅より僅かに長くなっている。
【0053】
太陽光パネル28Aの一端は、支持部21B及び支持部21Cで挟まれるように支持部21C上に載置されており、他端は、支持部23B及び支持部23Cで挟まれるように支持部23C上に載置されている。これにより、太陽光パネル28Aが収納部20内に収納されている。また、太陽光パネル28Bの一端は、支持部21C及び支持部21Dで挟まれるように支持部21D上に載置されており、他端は、支持部23C及び支持部23Dで挟まれるように支持部23D上に載置されている。これにより、太陽光パネル28Bが収納部20内に収納されている。
【0054】
同様に、太陽光パネル28Cの一端は、支持部21D及び支持部21Eで挟まれるように支持部21E上に載置されており、他端は、支持部23D及び支持部23Eで挟まれるように支持部23E上に載置されている。これにより、太陽光パネル28Cが収納部20内に収納されている。また、太陽光パネル28Dの一端は、支持部21E及び支持部21Fで挟まれるように支持部21F上に載置されており、他端は、支持部23E及び支持部23Fで挟まれるように支持部23F上に載置されている。これにより、太陽光パネル28Dが収納部20内に収納されている。
【0055】
なお、矢印X方向に見て、太陽光パネル28B、28C、28D、及び作業用パネル34の一端部には、後述するガイドレール40B、42B、44B、46Bに沿って移動する摩擦抵抗の低い樹脂製の支持部材や戸車45(図4参照)が設けられているが、図2(A)ではこれらの図示を省略している。
【0056】
作業用パネル34の一端は、支持部21F及び支持部21Gで挟まれるように支持部21G上に載置されており、他端は、支持部23F及び支持部23Gで挟まれるように支持部23G上に載置されている。これにより、作業用パネル34が収納部20内に収納されている。そして、作業用パネル34は、一例として、太陽光パネル28と同様の大きさ(外形)となっている。
【0057】
配線ボックス32は、Y−Z面の断面が縦長の矩形状となっている筒体であり、矢印Y方向に対向配置された側壁32Aと側壁32Bを有している。側壁32Aは、腰壁19の外側の側壁24Bにボルト等(図示省略)を用いて固定されており、側壁32Bには、上端支持部21の取付部21Aが取付けられている。また、配線ボックス32は、矢印X方向を長手方向として延設されると共に矢印X方向に開口しており、内部に太陽光パネル28A、28B、28C、28Dの配線36A、36B、36C、36Dを収納している。
【0058】
一方、収納部20に対して矢印X方向奥側には、Y−Z断面が略コ字状であり、案内手段及びレール材の一例としてのガイドレール38A、38B、40A、40B、42A、42B、44A、44B、46A、46Bが、収納部20に隣接して設けられている。なお、図2(A)では、ガイドレール38A、38B、40A、40B、42A、42B、44A、44B、46A、46Bを示すために、これらを上端支持部21及び下端支持部23とずらして表示しているが、実際は、これらの部材間に段差は無く、底面、上面、及び側面が面一となるように揃えられている。
【0059】
ガイドレール40A、42A、44A、46Aは、支持部21D、21E、21F、21Gに高さを合わせて、配線ボックス32の側壁32Aに取付けられている。また、ガイドレール40B、42B、44B、46Bは、支持部23D、23E、23F、23Gに高さを合わせて、外壁14に取付けられている。即ち、対向配置されたガイドレール40A、40Bによって太陽光パネル28Bが矢印X方向に案内され、対向配置されたガイドレール42A、42Bによって太陽光パネル28Cが矢印X方向に案内されるようになっている。さらに、対向配置されたガイドレール44A、44Bによって太陽光パネル28Dが矢印X方向に案内され、対向配置されたガイドレール46A、46Bによって作業用パネル34が矢印X方向に案内されるようになっている。
【0060】
本実施形態では、一例として、支持部21Bと支持部23Bとの間が採光用(受光用)の窓部27として開放されており、太陽光パネル28Aの表面が外部に露出している。このため、太陽光パネル28Aについては矢印X方向に移動させる必要が無いので、ガイドレール38A、38Bは使用していない。なお、ガイドレール38A、38Bを使用しないため、図2(B)では、ガイドレール38A、38Bを二点鎖線で図示し、図3以降では図示を省略する。
【0061】
ここで、太陽光パネル28Aは、ガイドレール38Aの手前側(図示の左端)に取付けられたストッパー部材41Aにより移動が規制され、収納部20内で保持されている。また、太陽光パネル28B、28C、28D、及び作業用パネル34は矢印X方向に移動可能となっているが、移動の規制は各ストッパー部材41B、41C、41D、41Eで行われている。
【0062】
図2(B)に示すように、矢印X方向における各太陽光パネル28の長さをLとする。そして、ガイドレール40A、40Bには、収納部20からの長さがLとなる位置にストッパー部材41Bが設けられており、ガイドレール42A、42Bには、収納部20からの長さが2Lとなる位置にストッパー部材41Cが設けられている。さらに、ガイドレール44A、44Bには、収納部20からの長さが3Lとなる位置にストッパー部材41Dが設けられている。これにより、太陽光パネル28B、28C、28Dを矢印X方向の端部(図示の右端部)まで移動させると、平面視で見て、太陽光パネル28A、28B、28C、28Dが隙間なく並んで隣接配置されるようになっている。なお、ガイドレール46A、46Bの長さについては、作業用パネル34が矢印X方向の全体をカバーできるように3Lとなっており、端部にはストッパー部材41Eが設けられている。
【0063】
ここで、図3(A)に示すように、一例として、支持部21D、23Dの上面とガイドレール40A、40Bの上面とが同じ高さに揃えられており、太陽光パネル28Bの両端部は、支持部21D、23Dからガイドレール40A、40Bの上面へ移動するようになっている。なお、他の支持部及びガイドレールについても同様の構成であるため、これらの説明は省略する。
【0064】
また、図3(B)に示すように、一例として、ガイドレール38Aとガイドレール40Aとの間に一体で直立形成された壁部39は、配線ボックス32の側壁32Bに取付けられている。また、壁部39及び側壁32Bには、矢印X方向に延びる長孔である貫通孔35が形成されている。そして、太陽光パネル28B(図2(A)参照)から引き出された配線36Bが、貫通孔35に挿通されると共に配線ボックス32内に収納されている。なお、他のガイドレール及び配線についても同様の構成であるため、これらの説明は省略する。
【0065】
次に、建物10の各部の動作を制御する制御手段の一例としての制御部50の周辺の構成について説明する。
【0066】
図4に示すように、各太陽光パネル28及び作業用パネル34(図2参照)の他端側(ガイドレール40B、42B、44B、46B側)には、モータ48により回転駆動される複数の戸車45が設けられている。モータ48は、各太陽光パネル28内部に搭載されており、各配線36に含まれる第2配線37Bを介して、建物10内に設けられた制御部50に接続されている。また、矢印X方向における各太陽光パネル28の側面(図示の右側面)には、後述する手動モード時に居住者が把持して太陽光パネル28を矢印X方向に移動させる把持部47が設けられている。
【0067】
制御部50は、建物10内に設けられた操作パネル54が接続されており、操作パネル54からの指示によりモータ48を駆動して複数の戸車45を回転させ、各太陽光パネル28を矢印X方向に移動させるようになっている。なお、操作パネル54では、モータ48を駆動する自動モードと、モータ48を駆動せず居住者が手動で各太陽光パネル28を移動させる手動モードとがスイッチ(図示省略)により切り換え可能となっている。
【0068】
また、建物10には、屋外の風速を測定する風速計56と、屋外の温度を測定する温度センサ57と、屋外の湿度を測定する湿度センサ58と、建物10へ照射される太陽光の照度を測定する照度計59とが設けられている。風速計56、温度センサ57、湿度センサ58、及び照度計59は、検知手段の一例であり、制御部50に接続されている。そして、風速、温度、湿度、及び照度の測定データが、制御部50に送られるようになっている。
【0069】
制御部50には、予め、風速、温度、湿度、照度の各閾値と、閾値以上(条件Aとする)、閾値未満(条件Bとする)の設定条件が設定されている。なお、本実施形態では、制御部50において、一例として、湿度及び照度の測定データから晴天、雨天、曇天の各天候や日中又は夜間の時間帯が区別され、風速の測定データに基づいて各太陽光パネル28の移動(開口部30の開閉)を行うようになっている。また、温度の測定データは、必要に応じて、湿度データの補正(例えば、季節が異なることによる補正)に用いられるようになっている。
【0070】
一方、各配線36内には、第2配線37Bに加えて第1配線37Aが含まれている。第1配線37Aは、一端が各太陽光パネル28に接続されており、他端が居住部12(図1参照)内に設けられた集電部49に接続されている。集電部49では、各太陽光パネル28で得られた電力が測定され、この電力情報が制御部50へ送られるようになっている。また、集電部49は、配線37Cを介してパワーコンディショナ52に接続されている。
【0071】
パワーコンディショナ52では、直流の電流が交流に変換され、建物10内の各部へ供給されるようになっている。また、パワーコンディショナ52は、配線37Dを介して蓄電池(図示省略)に接続されており、各太陽光パネル28で得られた電力が、この蓄電池で蓄えられるようになっている。
【0072】
次に、制御部50に設定された各太陽光パネル28の移動パターンの一例について説明する。
【0073】
図5には、時間、天候、及び風速の組合せにより、各太陽光パネル28が収納部20に収納される移動パターン、又は収納部20から引き出される移動パターンがフロー図で示されている。
【0074】
ここで、図4及び図5に示す構成において、日中(昼間含む)且つ晴天の場合、制御部50は、風速計56で得られた平均風速が一例として10m/s以上(条件A)か、10m/s未満(条件B)かを決定する。なお、平均風速10m/sとは、やや強い風と表現される風速であり、人が風に向かって歩きにくくなり、建物では、取付けの不完全な看板やトタン板が飛び始める風速である。
【0075】
続いて、条件Aの場合は、制御部50がモータ48を駆動して、各太陽光パネル28を収納部20(図2参照)から開口部30へ引き出す設定となっている。また、条件Bの場合は、制御部50がモータ48を逆回転駆動して、各太陽光パネル28を開口部30から収納部20(図2参照)へ収納する設定となっている。このように、条件Aのときに各太陽光パネル28を収納部20から引き出し、条件Bのときに各太陽光パネル28を収納部20へ収納するのは、雨天の場合、夜間の場合で同様である。
【0076】
一方、日中において曇天が判定された場合、一例として、制御部50は手動モードに切り換えられるようになっている。そして、居住者が手動で各太陽光パネル28を収納部20(図2参照)へ収納し、又は収納部20から開口部30へ各太陽光パネル28を引き出すように設定されている。
【0077】
(作用)
次に、第1実施形態の作用について説明する。
【0078】
図6(A)に示すように、建物10では、居住者が通気性及び採光性を必要とする場合、複数の太陽光パネル28を収納部20に収納しておく。ここで、収納部20では、複数の太陽光パネル28が上下方向(図1の矢印Z方向)に複数段で収納されているため、吹き抜け部16の空間における収納部20の占有率は低くなる。これにより、吹き抜け部16における通気性及び採光性を確保することができる。なお、太陽光パネル28Aは窓部27(図2参照)を介して屋外に露出されているため、太陽光発電は行われる。
【0079】
一方、図6(B)に示すように、居住者が太陽光パネル28による発電量の増加を必要とする場合は、収納部20内に収納されている複数の太陽光パネル28B、28C、28Dを矢印X方向に引き出すと共に、ガイドレール40A、40B、42A、42B、44A、44B(図2参照)に沿って開口部30へ移動させる。これにより、開口部30(吹き抜け部16)を覆って複数の太陽光パネル28A、28B、28C、28Dが配置されるので、開口部30で1枚の太陽光パネル28を用いて太陽光発電を行う構成に比べて、太陽光パネル28全体の発電量を増加させることができる。
【0080】
また、建物10では、図2(B)に示すように、矢印X方向における太陽光パネル28B、28C、28Dの収納部20からの引き出し長さが、太陽光パネル28の長さLの整数倍nL(n=1、2、3)となっているので、太陽光パネル28B、28C、28Dをストッパー部材41B、41C、41Dの位置まで引き出すと、図6(B)に示すように、太陽光パネル28A、28B、28C、28Dが平面視で見て隣接して配置される。
【0081】
このように、建物10では、太陽光パネル28A、28B、28C、28Dが隣接配置されるので、太陽光パネル28A、28B、28C、28D間の隙間を低減することができる。さらに、これらの隙間が低減されることから、開口部30(吹き抜け部16)における太陽光パネル28の無駄な設置スペースを減らせる。これにより、建物10を平面視で見たときに、開口部30(吹き抜け部16)の全面積に対して、複数の太陽光パネル28の受光面の占有率(表面積の合計比率)を上げることができ、発電量を増やすことができる。
【0082】
さらに、建物10では、図2(A)、(B)に示すように、収納部20から作業用パネル34を引き出すと共に、ガイドレール46A、46Bによって開口部30へ案内することで作業用パネル34が配置される。ここで、作業用パネル34が作業時の足場となり、作業用パネル34よりも上側に収納されている太陽光パネル28A、28B、28C、28Dの引き出し又はメンテナンス作業を行うことができるので、別途、脚立等の足場を準備する必要がなくなる。これにより、太陽光パネル28A、28B、28C、28Dのメンテナンス作業を容易に行うことができる。また、メンテナンス作業後は、作業用パネル34を太陽光パネル28A、28B、28C、28Dと共に収納部20に収納すればよいので、作業用パネル34用に別途、収納部を設けなくても済む。
【0083】
また、建物10では、図2(A)に示すように、太陽光パネル28A、28B、28C、28Dに接続された配線36A、36B、36C、36Dが、配線ボックス32によって一箇所に集約されると共に覆われて隔離されるので、太陽光パネル28B、28C、28Dを矢印X方向に移動させるときに、配線36A、36B、36C、36Dが各太陽光パネル28側に露出しにくくなる。これにより、配線36A、36B、36C、36Dに傷が付くのを抑制することができる。
【0084】
さらに、配線ボックス32が各太陽光パネル28の引き出し方向(矢印X方向)に開口した形状となっているため、配線36B、36C、36Dは、少なくとも、引き出し方向と直交する方向(矢印Y方向、矢印Z方向)で配線ボックス32により覆われる。これにより、移動する太陽光パネル28B、28C、28Dと配線36B、36C、36Dとが接触しにくくなり、配線36B、36C、36Dに傷が付くのを抑制することができる。
【0085】
加えて、建物10では、自動モードを選択した場合、図4に示すように、制御部50が、風速計56、湿度センサ58、照度計59で検知された風速、湿度、及び照度のうち、少なくとも1つの環境因子における設定条件を超えたかどうかを判断する。なお、温度センサ57は補正に用いられる。
【0086】
ここで、図4、図5、及び図7(A)に示すように、一例として、日中に晴天となり、風速が条件Aの場合、制御部50が太陽光発電を必要と判定する。そして、制御部50は、モータ48を駆動して戸車45を正回転(図示の時計回り方向の回転)させ、太陽光パネル28B、28C、28Dを開口部30へ移動させる。これにより、太陽光パネル28A、28B、28C、28Dが吹き抜け部16上に配置され、太陽光発電が行われる。なお、風速の条件がAであり、建物10に吹き付ける風が強くなっているが、吹き抜け部16上が太陽光パネル28A、28B、28C、28Dで覆われているため、吹き抜け部16に吹き込む強風を防ぐことができる。
【0087】
一方、図4、図5、及び図7(B)に示すように、一例として、夜間で風速が条件Bの場合、制御部50は、太陽光発電が不要で且つ風が弱いため、通気性を優先させ、太陽光パネル28B、28C、28Dを収納部20に収納する。即ち、制御部50は、モータ48を逆駆動して戸車45を逆回転(図示の反時計回り方向の回転)させ、太陽光パネル28B、28C、28Dを収納部20内へ移動させる。これにより、太陽光パネル28B、28C、28Dが収納部20内に収納される。なお、風速の条件がBであり、建物10に吹き付ける風が弱くなっている。このため、夏の暑い時期には、開口部30(吹き抜け部16)の上方が開放されることで建物10内の風通しがよくなる。このように、建物10では、自動モード選択時、各太陽光パネル28の移動が自動制御となるので、建物10の居住者が行う各太陽光パネル28の移動作業を無くすことができる。
【0088】
加えて、建物10では、図4及び図5に示すように、太陽光パネル28のメンテナンス作業を行う場合、あるいは、日中に曇天となった場合に、居住者が操作パネル54を操作し、必要に応じて自動モードから手動モードに切り換える。ここで、一例として、把持部47を掴んで太陽光パネル28を僅かに移動させメンテナンスを行う場合、手動モードがあることで、すぐに太陽光パネル28を移動させることができ、且つ移動位置の微調整が行える。これにより、太陽光パネル28の移動に必要な時間が短くなり、且つ太陽光パネル28の移動に余分なエネルギー(電力)を消費しなくて済むので、太陽光パネル28のメンテナンス作業時のエネルギー消費量を低減することができる。
【0089】
図8には、建物10(図1参照)の他の実施例として、建物60が示されている。建物60は、建物10の吹き抜け部16の1階と2階の間となる高さにおいて、居住部12の側壁24Bと側壁24Cとに跨って、床部62が設けられた構成となっている。ここで、一例として、制御部50(図4参照)を手動モードにしておき、太陽光パネル28C、28Dを床部62上に移動させると、太陽光パネル28C、28Dを庇あるいは屋根として利用することができる。
【0090】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係る建物について説明する。なお、前述した第1実施形態と基本的に同一の部材には、前記第1実施形態と同一の符号を付与してその説明を省略する。
【0091】
図9には、第2実施形態の一例としての建物70の縦断面図が示されている。建物70は、第1実施形態の建物10の居住部12(図1参照)に換えて居住部72が設けられ、さらに、収納部20(図1参照)に換えて収納部80が設けられた構成となっている。居住部72は、陸屋根74と、陸屋根74の外縁部に立設された腰壁76とを有している。そして、居住部72と外壁14との間が、吹き抜け部78(開口部79)となっている。
【0092】
収納部80は、一例として、矢印X方向に見て、太陽光パネル28A、28B、28C、28D、及び作業用パネル34の一端(図示の左端)を支持する上端支持部82と、これらのパネルの他端(図示の右端)を支持する下端支持部84とを有している。なお、各太陽光パネル28は、第1実施形態と同様に制御部50(図4参照)に接続されている。また、制御部50における手動モード、自動モードの切り換え、及び風速計56、温度計57、湿度センサ58、及び照度計59(図4参照)を用いた制御については、第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0093】
上端支持部82は、矢印X方向における図示の手前側に直立配置された板状の取付部81(図10参照)と、取付部81から矢印X方向に延設された板状の支持部82A、82B、82C、82D、82E、82Fとを含んで構成されている。取付部は、腰壁76の上面にビス等を用いて固定されている。また、支持部82A、82B、82C、82D、82E、82Fは、太陽光パネル28又は作業用パネル34の厚さよりも大きい間隔をあけて矢印Z方向に6段で設けられており、それぞれの先端が同じ角度で斜め下方(外壁14側)に向けて延びている。なお、矢印X方向(図示の奥行き方向)において、支持部82A、82B、82C、82D、82E、82Fの長さは、太陽光パネル28の長さより僅かに長くなっている。
【0094】
下端支持部84は、外壁14の上端に立設された直方体状の取付部84Gと、取付部84Gから上端支持部82に向けて突設された板状の支持部84A、84B、84C、84D、84E、84Fとを含んで構成されている。支持部84A、84B、84C、84D、84E、84Fは、太陽光パネル28又は作業用パネル34の厚さに相当する長さよりも長い間隔をあけて矢印Z方向に6段で設けられており、それぞれの先端が同じ角度で斜め上方(上端支持部82側)に向けて延びている。なお、矢印X方向(図示の奥行き方向)において、支持部84A、84B、84C、84D、84E、84Fの長さは、太陽光パネル28の長さより僅かに長くなっている。また、取付部81(図10参照)は、上端支持部82から下端支持部84の取付部84Gまで延設されている。
【0095】
ここで、下端支持部84から上端支持部82へ斜め上方に向かう方向(矢印X方向及び矢印Z方向と交差する交差方向)を矢印S方向とする。この矢印S方向において、太陽光パネル28Aの両端部は支持部82B、84Bで支持されており、太陽光パネル28Bの両端部は支持部82C、84Cで支持されている。そして、太陽光パネル28Cの両端部は支持部82D、84Dで支持されており、太陽光パネル28Dの両端部は支持部82E、84Eで支持されている。さらに、作業用パネル34の両端部は支持部82F、84Fで支持されている。
【0096】
一方、収納部80に対して矢印X方向奥側には、ガイドレール38A、38B、40A、40B、42A、42B、44A、44B、46A、46Bが、収納部80に隣接して設けられている。なお、図9では、ガイドレール38A、38B、40A、40B、42A、42B、44A、44B、46A、46Bを示すために、これらを上端支持部82及び下端支持部84とずらして表示しているが、実際はこれらの部材間に段差が無く、底面、上面、及び側面が面一に揃えられている。このようにして、太陽光パネル28A、28B、28C、28D、及び作業用パネル34が、収納部80内に収納されている。
【0097】
また、陸屋根74上で腰壁76に隣接する位置には、配線ボックス86が設けられている。配線ボックス86は、Y−Z面の断面が縦長の矩形状となっている筒体であり、矢印Y方向に対向する側壁86Aと側壁86Bを有している。また、配線ボックス86は、矢印X方向を長手方向として延設されると共に矢印X方向に開口しており、内部に太陽光パネル28A、28B、28C、28Dの配線36A、36B、36C、36Dを収納している。
【0098】
なお、本実施形態では、一例として、収納部80における支持部82Aと支持部84Aとの間が窓部85として開放されており、太陽光パネル28Aの表面が外部に露出している。このため、太陽光パネル28Aについては矢印X方向に移動させる必要が無いので、ガイドレール38A、38Bを使用していない。そして、太陽光パネル28Aはストッパー部材41A(図2(B)参照)により収納部80内で保持されており、他の太陽光パネル28B、28C、28Dが各ストッパー部材41B、41C、41D(図2(B)参照)まで矢印X方向に移動するようになっている。
【0099】
図10には、一例として、収納部80を平面視で見て、太陽光パネル28Bを2方向に引き出す状態が示されている。なお、他の太陽光パネル28C、28D、及び作業用パネル34については、同様の構成であるため説明を省略する。
【0100】
収納部80における矢印S方向の上側の側壁83には、太陽光パネル28が通過可能な大きさに開口した引出口83Aが形成されている。そして、太陽光パネル28Bは、矢印X方向奥側の側面に把持部47が設けられており、さらに、矢印S方向上側の側面に把持部88が設けられている。これにより、手動モードでは、把持部47を掴んで引っ張ることにより太陽光パネル28Bが矢印X方向に引き出され、また、把持部88を掴んで引っ張ることにより太陽光パネル28Bが矢印S方向に引き出されるようになっている。
【0101】
また、収納部80では、取付部81の内側に、矢印S方向に延びるガイドレール92が設けられている。ガイドレール92は、矢印X方向に開放されたコ字状の断面(図示省略)を有するレール材であり、陸屋根74の上方を覆う位置まで延設されている。また、ガイドレール92には、ガイドレール92の凹部と係合することでガイドレール92に沿って移動する直方体状の可動部94が設けられている。
【0102】
可動部94は、制御部50(図4参照)からの指示情報に基づいて矢印+R方向(図示の時計回り方向)又は矢印−R方向(図示の反時計回り方向)に回動するフック部材96が設けられている。フック部材96は、平面視で見てL字状の部材であり、回動軸96Aを有している。回動軸96Aにはモータ(図示省略)が設けられており、制御部50(図4参照)により駆動される。そして、太陽光パネル28の端部(図示の左端部)には、フック部材96と係合する板状の被係合部98が設けられている。
【0103】
また、矢印S方向における可動部94の端部(図示の上端)には、ケーブル102の一端が取付けられており、ケーブル102の他端は、陸屋根74上に設けられた巻取り装置104に接続されている。なお、巻取り装置の動作制御及びフック部材96の回動制御は、制御部50(図4参照)で行われる。また、太陽光パネル28を矢印X方向に移動させるときは、フック部材96と被係合部98との係合状態が解除される。
【0104】
(作用)
次に、第2実施形態の作用について説明する。
【0105】
図10に示すように、収納部80において、手動モードの場合、居住者(操作者)が把持部47を掴んで引っ張ると、太陽光パネル28が矢印X方向に引き出される。また、把持部88を掴んで引っ張ると、太陽光パネル28が矢印S方向に引き出される。
【0106】
一方、収納部80において、自動モードの場合、太陽光パネル28を矢印X方向に引き出すときには、制御部50(図4参照)が、回動軸96Aを回動させてフック部材96と被係合部98との係合状態を解除すると共に、戸車45を回転させる。これにより、太陽光パネル28は、自動で矢印X方向(図示の右方向)に移動する。
【0107】
また、自動モードで、太陽光パネル28を矢印S方向に引き出すときには、制御部50(図4参照)が、回動軸96Aを回動させてフック部材96を被係合部98に係合させる。続いて、フック部材96と被係合部98とが係合した状態で、巻取り装置104を作動させ、ケーブル102を巻き取る。これにより、太陽光パネル28が矢印S方向の上方に移動する。なお、太陽光パネル28を収納部80に収納するときには、巻取り装置104による巻取りを解除すると共にケーブル102を引き出させ、太陽光パネル28を矢印S方向の下方に移動させる。
【0108】
ここで、第2実施形態の建物70では、例えば、開口部79(吹き抜け部78)が狭いことにより、収納部80内の全ての太陽光パネル28(28A、28B、28C、28D)を開口部79へ引き出すことができない建物であっても、上記のように、収納部80内に残った太陽光パネル28を引出口83Aから陸屋根74側へ引き出して使用することが可能となる。このため、開口部79(吹き抜け部78)が狭い場合であっても、各太陽光パネル28による発電量が低下するのを抑制することができる。
【0109】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態に係る建物について説明する。なお、前述した第1、第2実施形態と基本的に同一の部材には、前記第1、第2実施形態と同一の符号を付与してその説明を省略する。
【0110】
図11には、第3実施形態の一例としての建物110、120が示されている。建物110は、道路22に面した居住部112と、居住部112と対向配置された外壁14との間が吹き抜け部114となっており、吹き抜け部114の上部には、収納部20が設けられている。そして、吹き抜け部114における収納部20を除く部位が開口部115となっている。
【0111】
収納部20内には、太陽光パネル28A、28B、28C、28D、及び作業用パネル34が収納されている。また、居住部112における外壁14と対向配置された側壁113の上部には、配線ボックス32及びガイドレール40A、42A、44A、46A(図12参照)が設けられている。さらに、外壁14の内側には、ガイドレール40B、42B、44B、46B(図12参照)が設けられている。
【0112】
一方、建物120は、建物110の境界線Aに隣接した境界線Bで示される敷地に構築されている。建物120は、道路121(建物110とは反対側に位置)に面した居住部122と、外壁124(居住部122と対向配置)との間が、吹き抜け部126となっており、吹き抜け部126の上部には、収納部130が設けられている。そして、吹き抜け部126における収納部130を除く部位が開口部127となっている。
【0113】
また、居住部122における外壁124と対向配置された側壁123の上部には、配線ボックス132及びガイドレール140A、142A、144A、146A(図12参照)が設けられており、外壁124の内側には、ガイドレール140B、142B、144B、146B(図12参照)が設けられている。さらに、建物120は、収納部130内に、太陽光パネル134A、134B、134C、134D、及び作業用パネル136を有している。
【0114】
図12に示すように、太陽光パネル134Aは、収納部130内で保持されており、太陽光パネル134Bは、ガイドレール140A、140Bで案内される。また、太陽光パネル134Cは、ガイドレール142A、142Bで案内され、太陽光パネル134Dは、ガイドレール144A、144Bで案内される。そして、作業用パネル136は、ガイドレール146A、146Bで案内される。
【0115】
なお、図11において、建物110を構成する部材及び部位と建物120を構成する部材及び部位とを異なる符合を用いて図示しているが、建物110と建物120は、同様の大きさ及び形状の部材で構成されており、建物110の敷地と建物120の敷地との境界線Cを挟んで対称配置されている。このため、建物120を構成する各部材及び各部位については、建物110と同じ名称を用いて説明を省略する。
【0116】
ここで、図12に示すように、建物110と建物120との間(以後、空間部Mという)には、ガイドレール44A、44B、46A、46Bで案内された太陽光パネル28D、作業用パネル34を空間部Mに案内する架設部材の一例としての架設レール材148A、148B、149A、149Bが設けられている。架設レール材148A、148B、149A、149Bは、矢印X方向に見て断面がL字状の部材であり、架設レール材148Aと架設レール材148B、架設レール材149Aと架設レール材149Bが、それぞれ矢印Y方向に間隔をあけて対向配置されている。
【0117】
架設レール材148Aは、ガイドレール44Aとガイドレール144Aとを連結しており、架設レール材148Bは、ガイドレール44Bとガイドレール144Bとを連結している。同様に、架設レール材149Aは、ガイドレール46Aとガイドレール146Aとを連結しており、架設レール材149Bは、ガイドレール46Bとガイドレール146Bとを連結している。
【0118】
また、架設レール材148A、148B、149A、149Bは、通常、建物110のガイドレール44A、44B、46A、46Bの内側に収納されている。そして、架設レール材148A、148B、149A、149Bは、使用時に、制御部50で動作制御されるモータ(図示省略)の駆動によって矢印X方向に向けて伸び、端部(図示の右端)がガイドレール144A、144B、146A、146Bの内側に入り込むことで、ガイドレール44A、44B、46A、46Bと、ガイドレール144A、144B、146A、146Bとを連結するようになっている。
【0119】
さらに、本実施形態では一例として、架設レール材148A、148B上に太陽光パネル28D、134Dが配置されている。そして、太陽光パネル134Dは、配線138を介して補助制御手段の一例としての補助制御部139に接続されている。なお、太陽光パネル134A、134B、134C、134Dには、モータ48及び戸車45(図4参照)が搭載されている。
【0120】
ここで、配線138は、建物120において、通常時、太陽光パネル134Dを使用するために用いる配線ではなく、太陽光パネル134Dに設けられた外部操作用端子(図示省略)と、補助制御部139に設けられた端子(図示省略)とを接続するオプション配線である。このため、配線138を収納部130から引き出す必要は無いので、接続作業を簡単に行える。
【0121】
補助制御部139は、制御部50の内部に設けられており、制御部50からの指示により、太陽光パネル134Dに設けられたモータ48(図4参照)を駆動して戸車45(図4参照)を逆回転させ、太陽光パネル134Dを空間部Mへ移動させるように設定されている。また、配線138内には、太陽光パネル134Dで得られた電力が供給される電力供給用の配線が設けられている。
【0122】
(作用)
次に、第3実施形態の作用について説明する。
【0123】
図11及び図12に示すように、一例として、建物110には、日常生活における消費電力量が多い居住者(例えば若い夫婦と子供)が居住しており、建物120には、日常生活における消費電力量の少ない居住者(例えば老夫婦)が居住しているとする。ここで、建物110の居住者が、操作パネル54(図4参照)を操作して、建物110と建物120との間の空間部Mに架設レール材148A、148B、149A、149Bを伸ばし、ガイドレール44A、44B、46A、46Bと、ガイドレール144A、144B、146A、146Bとを連結させる。
【0124】
続いて、操作パネル54の操作により、架設レール材148A、148B上に太陽光パネル28D、134Dを移動させる。これにより、開口部115(吹き抜け部114)の上部だけでなく、建物110と建物120との間の空間部Mにおいても、太陽光パネル134Dを追加配置して太陽光発電に利用することができるので、建物110における太陽光による発電量を増加させることができる。
【0125】
また、建物110、120では、補助制御部139が、空間部Mへの太陽光パネル(ここでは一例として太陽光パネル28D、134D)の移動を制御するので、吹き抜け部114から空間部M、あるいは、吹き抜け部126から空間部Mへの太陽光パネルの移動が自動制御となる。これにより、建物110、120の居住者が太陽光パネル28D、134Dを手動で移動させなくて済む。さらに、作業用パネル34を空間部Mに移動させることで、太陽光パネル28D、134D等のメンテナンスを、吹き抜け部114、126よりも広い場所で行うことができる。
【0126】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されない。
【0127】
建物10、70、110、120は、二階建てに限らず、三階建て以上の高層建物であってもよい。また、建物10は、平面視で見て居住部12がL字形でなく矩形状であってもよい。さらに、吹き抜け部16、114、126は、四方を外壁で囲まれた吹き抜け部であってもよい。また、太陽光パネル28は、4枚に限らず、4枚を除く2枚以上の複数枚であってもよい。そして、作業用パネル34を設けず、太陽光パネル28のみを設けた構成であってもよい。
【0128】
太陽光パネル28の把持部47、88を側面に収納させると共に、ガイドレール40A、40B、42A、42B、44A、44B、46A、46Bの一部を上方に移動可能に設けて、太陽光パネル28A、28B、28C、28Dの上面を揃えてもよい。また、ガイドレール40A、40B、42A、42Bの長さをストッパー部材41B、41Cを用いずに予めL、2Lで形成しておいてもよい。さらに、架設レール材148A、148B、149A、149Bは、居住者が手動で連結作業を行ってもよい。
【0129】
温湿度センサ58を用いた制御部50の制御パターンとして、予め、温度と湿度の組合わせで晴天、曇天、雨天を設定しておき、温湿度センサ58で検知された温度及び湿度に基づいて天候を判断して、太陽光パネル28を収納又は引き出すようにしてもよい。これにより、居住者が操作パネル54に晴天、曇天、雨天を入力(選択)しなくても済む。
【0130】
さらに、第3実施形態の建物110、120の収納部20、130に、第2実施形態の収納部80における2方向移動の構成を適用してもよく、また、第1実施形態で説明した日中、昼間、夜間と天候(温度、湿度、平均風速含む)との組合せによる太陽光パネルの移動制御方法を適用してもよい。
【符号の説明】
【0131】
10 建物
14 外壁
16 吹き抜け部
20 収納部
27 窓部
28 太陽光パネル
30 開口部
32 配線ボックス
34 作業用パネル
40A ガイドレール(案内手段及びレール材の一例)
40B ガイドレール(案内手段及びレール材の一例)
42A ガイドレール(案内手段及びレール材の一例)
42B ガイドレール(案内手段及びレール材の一例)
44A ガイドレール(案内手段及びレール材の一例)
44B ガイドレール(案内手段及びレール材の一例)
46A ガイドレール(案内手段及びレール材の一例)
46B ガイドレール(案内手段及びレール材の一例)
47 把持部
50 制御部(制御手段の一例)
56 風速計(検知手段の一例)
58 湿度センサ(検知手段の一例)
59 照度計(検知手段の一例)
70 建物
79 開口部
83A 引出口
85 窓部
110 建物
114 吹き抜け部
120 建物
126 吹き抜け部
134A 太陽光パネル
134B 太陽光パネル
134C 太陽光パネル
134D 太陽光パネル
139 補助制御部(補助制御手段の一例)
140A ガイドレール(案内手段及びレール材の一例)
140B ガイドレール(案内手段及びレール材の一例)
142A ガイドレール(案内手段及びレール材の一例)
142B ガイドレール(案内手段及びレール材の一例)
144A ガイドレール(案内手段及びレール材の一例)
144B ガイドレール(案内手段及びレール材の一例)
146A ガイドレール(案内手段及びレール材の一例)
146B ガイドレール(案内手段及びレール材の一例)
148A 架設レール材(架設部材の一例)
148B 架設レール材(架設部材の一例)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吹き抜け部に設けられ、複数の太陽光パネルが、上下方向に複数段で収納されると共に前記吹き抜け部の奥行き方向に引き出し可能とされた収納部と、
前記収納部から引き出される複数の前記太陽光パネルを前記吹き抜け部の前記収納部とは異なる開口部に案内する案内手段と、
を有する建物。
【請求項2】
前記案内手段により前記開口部に案内された前記複数の太陽光パネルが隣接して配置される請求項1に記載の建物。
【請求項3】
前記収納部には、足場となる作業用パネルが複数の前記太陽光パネルの下側に収納され、該作業用パネルは、前記案内手段によって前記開口部へ案内される請求項1又は請求項2に記載の建物。
【請求項4】
前記案内手段は、前記開口部の上部に設けられたレール材である請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の建物。
【請求項5】
前記吹き抜け部には、複数の前記太陽光パネルの配線を収納する配線ボックスが設けられている請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の建物。
【請求項6】
前記配線ボックスは、前記奥行き方向に開口した筒体である請求項5に記載の建物。
【請求項7】
前記収納部には、前記太陽光パネルを前記上下方向及び前記奥行き方向と交差する交差方向へ引き出し可能となる大きさの引出口が形成されている請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の建物。
【請求項8】
照度、湿度、及び風速のうち少なくとも1つを検知する検知手段と、
前記検知手段で検知された照度、湿度、及び風速の少なくとも1つと、予め設定された設定条件とを比較して、前記吹き抜け部又は前記収納部への前記太陽光パネルの移動を制御する制御手段と、
が設けられている請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の建物。
【請求項9】
前記制御手段は、前記太陽光パネルの移動を自動又は手動に切り換える動作モード切り換え機能を有し、
前記太陽光パネルには、手動での引き出し時に把持される把持部が設けられている請求項8に記載の建物。
【請求項10】
前記案内手段で案内された前記太陽光パネルを隣接する建物との間に案内する架設部材が設けられている請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の建物。
【請求項11】
前記吹き抜け部から前記隣接する建物との間への前記太陽光パネルの移動を制御する補助制御手段が設けられている請求項10に記載の建物。
【請求項12】
前記収納部の上部には、収納された複数の前記太陽光パネルのうち最上段にある前記太陽光パネルが受光可能となる窓部が設けられている請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の建物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−162935(P2012−162935A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−24875(P2011−24875)
【出願日】平成23年2月8日(2011.2.8)
【出願人】(504093467)トヨタホーム株式会社 (391)
【Fターム(参考)】