説明

建築用ガラスレンガ、ガラスレンガ壁及びその施工方法

【課題】充分な採光性有するとともに充分な強度を有し、平常時においては目地充填材等により破損せず、更に建築基準法に規定される(特定)防火設備性能を満足する建築用ガラスレンガ、ガラスレンガ壁及びその施工方法を提供する。
【解決手段】本発明の建築用ガラスレンガ10aは、30〜380℃における平均熱膨張係数が70×10-7/K以下で、且つ、波長400〜700nmの範囲における平均透過率が肉厚7mmで15〜85%のガラスからなり、幅、長さ及び厚みのそれぞれが50mm以上であり、意匠面11以外の側面に耐アルカリ性ガラス繊維を用いた補強層13、14が形成されている。また、ガラスレンガ壁20は、積層面に意匠面11と平行な溝部17を有する複数の建築用ガラスレンガ10aと、積みモルタル25と、溝部17に配置され枠体22に固定される補強筋26とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に、建築基準法に規定される(特定)防火設備性能が必要とされる建築物の開口部に使用される建築用ガラスレンガ、これを用いたガラスレンガ壁及びその施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
透光不透視のガラスからなるガラスレンガ等のガラス物品は、従来、誘導灯、歩道灯、足元灯等の前面材として用いられ、面材の下部に光源を設け、他の床材と前面材とが同一面を形成するように設置し使用されるものである。例えば、特許文献1には、光源からの光がガラス物品内部の気孔により散乱され、凹凸を有する意匠面から散乱光が放出される発光構造体が開示されている。この発光構造体を誘導灯、歩道灯、足元灯等として使用すると、人や自転車で踏んでも割れることが無く、雨で濡れても滑りにくく、また柔らかな光が出て目にやさしいというものである。
【0003】
また、特許文献2には、側面に凹溝を設けたガラスブリックを配列積層し、ガラスブリックの凹溝に鉄筋を挿通させ、枠に締め付ける結合施工方法が開示されている。
【特許文献1】特開2002−33002号公報
【特許文献2】特開昭49−37420号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
建築用ガラスレンガを壁の構成材として使用する場合、通常の火災により加熱されると、貫通に到る破面のオリジンとなるクラックが建築用ガラスレンガに多数発生した後、壁面を構成する各部材の熱膨張によって生じる面外変形応力のため、建築用ガラスレンガが完全に破断され、その一部が脱落する。その結果、火炎がガラスレンガ壁面を貫通して、建築基準法第2条第9号の二のロ(防火戸その他の政令で定める防火設備)、建築基準法第64条(外壁の開口部の防火設備)、建築基準法施行令第112条第1項(防火区画に用いる特定防火設備)の規定に基づく防火性能を満足できないという問題があった。
【0005】
また、採光性を有する建築用ガラスレンガを壁の構成材として使用する場合、特許文献2に示すように、建築用ガラスレンガ間の目地部に鉄筋等の補強筋を配設しても、建築用ガラスレンガが略直方体であるため、建築用ガラスレンガ同士の結合を充分に高めることができず、強度の点で問題があった。
【0006】
さらに、建築用ガラスレンガを壁の構成材として使用する場合、建築用ガラスレンガ間の目地部に防火性が良く、低コストのモルタルを充填すると、平常時において、モルタルの乾燥収縮の際に生じる応力によって建築用ガラスレンガに破損が発生する問題があった。
【0007】
本発明は、充分な採光性を有するとともに充分な強度を有し、平常時においては目地充填材等の膨張により破損することが無く、更に建築基準法に規定される(特定)防火設備性能を満足する建築用ガラスレンガと、これを用いたガラスレンガ壁及びその施工方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る建築用ガラスレンガは、30〜380℃における平均熱膨張係数が70×10-7/K以下で、且つ、波長400〜700nmの範囲における平均透過率が肉厚7mmで15〜85%のガラスからなり、幅、長さ及び厚みのそれぞれが50mm以上であり、意匠面以外の側面に耐アルカリ性ガラス繊維を用いた補強層が形成されていることを特徴とする。
【0009】
本発明で、建築用ガラスレンガの壁面となる意匠面以外の側面に耐アルカリ性ガラス繊維を用いた補強層が形成されているとは、積層される上下面、一方のみが意匠面の場合には、その裏面、他のガラスレンガと隣接する側面などのうち、可能な側面に、耐アルカリ性ガラス繊維を用いた補強材を貼設すること等を意味している。耐アルカリ性ガラス繊維としては、Aガラス等のガラス繊維が使用可能であり、この繊維をバインダーによりマット状、ネット状などに成形されて平面状のもであれば補強材として都合がよい。このような補強材を建築用ガラスレンガの意匠面以外の側面に貼設する手段としては、無機系接着剤や建築用耐火シーリング材等の有機系接着剤等を使用する方法が一般的である。建築用ガラスレンガの側面を耐アルカリ性ガラス繊維による補強を施すことで、通常の火災による加熱された場合でも、破損した部分の脱落を防止することができる。
【0010】
補強層に用いる耐アルカリ性ガラス繊維としては、メッシュ状又はネット状に織り上げたものが施工性もよく好ましいが、チョップドストランドを使用してもよい。ガラスレンガの側面側に補強として用いる耐アルカリ性ガラス繊維には、熱膨張係数、軟化点、密度、引張強度、ヤング率が日本電気硝子株式会社製のARGファイバと同等性能以上のものが良い。ガラスレンガの側面側に補強として用いる耐アルカリ性ガラス繊維の接着は、耐火性能または防火性能を有すると国土交通大臣に認められた建築用シーリング材を用いればよい。
【0011】
また、ガラス物品内部の平均透過率が波長400〜700nmの範囲において、厚さ7mmで15〜85%である。即ち、平均透過率が15%より小さいと、意匠面以外の面に対向させて設置した光源からの可視光がほとんど透過しないため、誘導灯、歩道灯、足元灯等の機能を果たしにくく、85%よりも大きいと、光源や構造材が透けて見えてしまうため好ましくない。
【0012】
また、ガラス物品内部の波長400〜700nmの範囲における平均透過率を、厚さ10mmで15〜85%になる材料として、その内部に多数の気孔を有するガラスを用いると、安価に製造できるため好ましく、具体的にはガラス内部に102〜1012個/kgの気孔を有すると、波長400〜700nmの範囲において、肉厚10mmで平均透過率が15〜85%になるため好ましい。また、その気孔のサイズは0.1mm〜3mmであると、可視光が散乱しやすいため好ましい。
【0013】
また、本発明の建築用ガラスレンガは、積層面に、意匠面と平行な溝部を有することを特徴とする。
【0014】
本発明で、建築用ガラスレンガの積層面に設けられる意匠面と平行な溝部としては、断面形状がU字形、チャンネル形等で意匠面と平行な方向に貫通する溝部であれば使用可能であり、破壊につながるオリジンとなるクラックを防止する上で、滑らかに連続する曲面により構成される略U字形等が好ましい。また、溝部の大きさに関しては、特に制限しないが、防火性能を維持して採光性に支障が出ない大きさで、例えば、幅が10mm以上、深さが10mm以上で長さは溝を設ける側面の長さがよい。溝部の位置に関しては、意匠面に外観を損なうような不要な陰等が出ない位置であればよく、モルタル等の未硬化材料を充填する場合、建築用ガラスレンガの上面に設けることが好ましい。
【0015】
さらに、本発明の建築用ガラスレンガは、積層面の溝部に、応力緩衝層を設けたことを特徴とする。
【0016】
積層面の溝部に設ける応力緩衝層としては、目地充填材として溝部内に入り込む積みモルタルの硬化収縮や、熱膨張などの寸法変動を建築用ガラスレンガに直接伝えないようにして、建築用ガラスレンガの破損を防止できるもので、かつ防火性能を維持して採光性に支障が出ないものであれば使用可能である。例えば、材質としては、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂とメラミン樹脂の架橋反応合成樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリエチレン樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂等の溶剤系やエマルジョン系を用いることが可能であるが、特に耐候性、耐セメント液性、作業性、経済性を考慮するとアクリルエマルジョンが好ましい。更に、建築用ガラスレンガの積層面の溝部に、これらの樹脂他の材料からなる応力緩衝層を容易に形成するには、これら材料の塗装膜によるものや、ビニルテープ等の帯状の成形品が適している。
【0017】
本発明に係るガラスレンガ壁は、枠体と、30〜380℃における平均熱膨張係数が70×10-7/K以下で、且つ、波長400〜700nmの範囲における平均透過率が肉厚7mmで15〜85%のガラスからなり、幅、長さ及び厚みのそれぞれが50mm以上であり、かつ積層面に意匠面と平行な溝部を有する複数の建築用ガラスレンガと、該建築用ガラスレンガの意匠面以外の側面に耐アルカリ性ガラス繊維を用いて形成された補強層と、該建築用ガラスレンガの積層面の間及び溝部に充填される積みモルタルと、前記枠体内に積層された建築用ガラスレンガの積層面の溝部に配置され枠体に固定される補強筋とを具備するものである。また、建築用ガラスレンガの溝部には、応力緩衝層を設けることが好ましい。
【0018】
本発明で、建築用ガラスレンガの積層面の間及び溝部に充填される積みモルタルとしては、普通ポルトランドセメント、砂および水を必須成分としたモルタルが使用可能である。建築用ガラスレンガの積層面の溝部に配置され枠体に固定される補強筋としては、鉄筋、防錆メッキされた鉄筋、ステンレス鋼等が使用可能である。
【0019】
本発明の係るガラスレンガ壁の施工方法は、30〜380℃における平均熱膨張係数が70×10-7/K以下で、且つ、波長400〜700nmの範囲における平均透過率が肉厚7mmで15〜85%のガラスからなり、幅、長さ及び厚みのそれぞれが50mm以上であり、かつ積層面に意匠面と平行な溝部を有する建築用ガラスレンガを作製する工程と、該建築用ガラスレンガの意匠面以外の側面に、耐アルカリ性ガラス繊維を用いた補強層を形成する工程と、建造物の躯体に枠体を固定する枠体固定工程と、該枠体の空間部に積みモルタル及び枠体に固定される補強筋とを用いて複数の該建築用ガラスレンガを配列させつつ、その積層面の溝部に補強筋を配置させるレンガ配列工程とを有することを特徴とする。
【0020】
本発明の施工方法で、建築用ガラスレンガの意匠面以外の側面に、耐アルカリ性ガラス繊維を用いた補強層を形成する工程は、施工現場でのレンガ積み作業中に建築用ガラスレンガの意匠面以外の側面に建築用の防火並びに耐火シーリング材等を使用して貼り付けることも可能であるが、予め施工現場でのレンガ積み作業前に貼り付けておく方がレンガ積み作業が簡素化され、現場での施工が効率的となり好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明の建築用ガラスレンガは、30〜380℃における平均熱膨張係数が70×10-7/K以下で、且つ、波長400〜700nmの範囲における平均透過率が肉厚7mmで15〜85%のガラスからなり、幅、長さ及び厚みのそれぞれが50mm以上であり、意匠面以外の側面に耐アルカリ性ガラス繊維を用いた補強層が形成されているので、火災により加熱された際に、建築用ガラスレンガに貫通破面のオリジンとなるクラックが多数発生した後、壁面を構成する各部材の膨張によって生じる面外変形応力のために、建築用ガラスレンガのガラス部分が完全に破断された場合でも、耐アルカリ性ガラス繊維を用いた補強材により、建築用ガラスレンガの一部が脱落することもなく、建築基準法に規定される防火設備性能を満足することができる。
【0022】
また、本発明の建築用ガラスレンガは、積層面に、意匠面と平行な溝部を有するので、目地部から溝部にかけて配置されたモルタル等により、ガラスレンガ壁の防火性が高くなり、また、水平に整列された建築用ガラスレンガの積層面の溝によって形成される水平な挿通部に補強筋を挿通することで、建築用ガラスレンガを縦横方向に配列した透光性を有するとともに充分な強度を有するガラスレンガ壁を構築することができる。
【0023】
さらに、本発明の建築用ガラスレンガは、積層面の溝部に、応力緩衝層を設けたので、溝部に防火性が良く、低コストであるモルタルを充填しても、モルタルの乾燥収縮等による応力が発生した際に、応力緩衝層によって建築用ガラスレンガに応力がほとんど伝わらず、建築用ガラスレンガの破損を防止することができる。
【0024】
本発明のガラスレンガ壁は、枠体と、30〜380℃における平均熱膨張係数が70×10-7/K以下で、且つ、波長400〜700nmの範囲における平均透過率が肉厚7mmで15〜85%のガラスからなり、幅、長さ及び厚みのそれぞれが50mm以上であり、かつ積層面に意匠面と平行な溝部を有する複数の建築用ガラスレンガと、該建築用ガラスレンガの意匠面以外の側面に耐アルカリ性ガラス繊維を用いて形成された補強層と、該建築用ガラスレンガの積層面の間及び溝部に充填される積みモルタルと、前記枠体内に積層された建築用ガラスレンガの積層面の溝部に配置され枠体に固定される補強筋とを具備するので、火災により加熱された際に、建築用ガラスレンガに貫通破面のオリジンとなるクラックが多数発生した後、壁面を構成する各部材の膨張によって生じる面外変形応力のために、建築用ガラスレンガのガラス部分が完全に破断された場合でも、耐アルカリ性ガラス繊維を用いた補強層により、建築用ガラスレンガの一部が脱落することもなく、ガラスレンガ壁が建築基準法に規定される防火設備性能を満足することができる。
【0025】
また、本発明のガラスレンガ壁は、建築用ガラスレンガの積層面に設けられた溝部に、応力緩衝層を設けたので、モルタルの乾燥収縮等による応力が発生した際に、応力緩衝層によって建築用ガラスレンガに応力がほとんど伝わらず、ガラスレンガ壁を構成する建築用ガラスレンガの破損を防止することができる。
【0026】
本発明のガラスレンガ壁の施工方法は、30〜380℃における平均熱膨張係数が70×10-7/K以下で、且つ、波長400〜700nmの範囲における平均透過率が肉厚7mmで15〜85%のガラスからなり、幅、長さ及び厚みのそれぞれが50mm以上であり、かつ積層面に意匠面と平行な溝部を有する建築用ガラスレンガを作製する工程と、該建築用ガラスレンガの意匠面以外の側面に、耐アルカリ性ガラス繊維を用いた補強層を形成する工程と、建造物の躯体に枠体を固定する枠体固定工程と、該枠体の空間部に積みモルタル及び枠体に固定される補強筋とを用いて複数の該建築用ガラスレンガを配列させつつ、その積層面の溝部に補強筋を配置させるレンガ配列工程とを有するので、確実に上記の特徴を有するガラスレンガ壁を効率よく施工することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下に、本発明の建築用ガラスレンガ、及びこれを用いたガラスレンガ壁とその施工方法について、図を用いて説明する。
【実施例1】
【0028】
図1(A)、(B)に示すように、建築用ガラスレンガ10は、防火性能上、例えば、質量%でSiO2 70%、Al23 5%、B23 14%、CaO 0.5%、BaO 1.5%、Na2O 7%、K2O 2%の組成を含有するホウケイ酸ガラスからなり、肉厚7mmで可視光線の平均透過率が70%であり、30〜380℃における平均熱膨張係数が32×10-7/Kであり、1kgあたり4×104個の気泡を含有するものを使用した。建築用ガラスレンガ10の寸法は、成形のための抜け勾配を考慮した±1mm前後の範囲の中央値で表すと、幅が98mm、長さが198mm、厚みが60mmである。建築用ガラスレンガ10は、意匠面11以外の側面12の上積層面12aに耐アルカリ性ガラス繊維を用いた補強材が貼設されて補強層13が形成されており、下積層面12cにも補強材が貼設されて、補強層14が形成されている。また図示しないが、短辺側の側面12bにも同様に補強材を貼り付けるのが好ましい。また、上積層面12aには、意匠面11と平行で滑らかに連続する曲面により構成される略U字形の断面形状を有する溝部15が設けられており、その上にビニルテープからなる応力緩衝層16が形成されている。
【実施例2】
【0029】
また、他の実施例として、図1(C)に示す建築用ガラスレンガ10aのように、略矩形状の断面形状を有する溝部17が設けられており、その形状に追従する形のビニルテープからなる応力緩衝層16aが形成されている。
【実施例3】
【0030】
本実施例のガラスレンガ壁20は、図2に示すような構造となっており、H形鋼からなる躯体21に、金属製の枠体22が取り付けられており、枠体22内の底面に水抜きプレート23と、枠体22内の内側面に軟質塩化ビニル又はブチルゴムからなる滑り材24が配設されており、図中で拡大して示すように、枠体22内のこれらの上に、積みモルタル25を介して上下の積層面に耐アルカリ性ガラス繊維を用いた補強層13、14が貼設されている建築用ガラスレンガ10aが積層されている。また、建築用ガラスレンガ10aの応力緩衝層16aが形成された溝部17には補強筋26が配筋されて積みモルタル25により固定されている。また、左右および上部の枠体22の内部には緩衝材としてエキスパンション材27が配置されている。枠体22と隣り合う上下左右の部分には、シリコーン系シーリング材28が、躯体21と枠体22との間にはシーリング材29がそれぞれ充填されている。このガラスレンガ壁20は、地震時に発生する面内力を受けた場合に、躯体21の変形がガラスレンガ壁20に伝わらないように、躯体21に取り付けられた金属製枠体22の四周の立ち上がり部には、例えば1.2mm厚のブチルゴム製の滑り材24を取り付け、左右および上部の枠体22の内部には10mm厚の天然ゴムまたはポリエチレン製発泡材のエキスパンション材27を取り付けてある。この10mm厚のエキスパンション材27が、それぞれ最大75%圧縮可能として、合計15mmの層間変形に対応することができ、ガラスレンガ10aの破損を防止している。
【0031】
また、図3(A)に示すように、ガラスレンガ壁20は、枠体22内の内側面にエキスパンション材27のさらに内側にアンカーピース30が配置され、アンカーピース30の孔に補強筋26が挿通され、積みモルタル25等により固定されている。
【0032】
さらに、H形鋼等からなる躯体21以外でのガラスレンガ壁20の接合部位は、図3(B)に示すように、支柱31に設けた平面突起31a、31bに対して枠体22を固定してあり、その枠体22内に建築用ガラスレンガ10aが積層されたものとなっている。
【0033】
上記のガラスレンガ10または10aを作製する場合、まず、成形のための抜け勾配を考慮した中央値で、幅が98mm、長さが198mm、厚みが60mmに対応する内部寸法を有する耐火性容器の底面上に、意匠面11と平行で滑らかに連続する曲面により構成される略U字形の断面形状を有する耐火性の山形状棒または角棒を長さ方向に渡して配置した後、融着による収縮量を考慮した耐火性容器に厚みが60mmに対応する量のガラス粒を充填する。次いで、この耐火性容器を加熱炉に入れ、熱処理することによってガラス粒を融着一体化させる。その後、耐火性容器を冷却して建築用ガラスレンガを取り出す。
【0034】
完成した建築用ガラスレンガの溝部15または17に、ビニルテープを貼り付けて応力緩衝層16または16aを形成した後、モルタルと接する一面毎に建築用耐火シーリング材を塗布し、ヘラを用いて均す。続いて、建築用耐火シーリング材の上から日本電気硝子株式会社製の耐アルカリ性ガラス繊維(商品名:スーパークラックノン ネット)を所定の大きさに切断した補強材13、14を置き、その上から押さえて耐アルカリ性ガラス繊維表面が少し見える程度まで建築用耐火シーリング材に埋め込む。建築用耐火シーリング材が硬化したら図1に示すようなガラスレンガ10または10aが完成する。
【0035】
ガラスレンガ壁20の施工方法は、まず、図2に示すように、建築物の開口部のH形鋼からなる躯体21に、枠体22を固定する。次いで、枠体22内の底面に水抜きプレート23と、枠体22内の内側面に軟質塩化ビニル又はブチルゴムからなる滑り材24を、枠体22の左右および上部の内部にエキスパンション材27を配設し、左右のエキスパンション材27のさらに内側にアンカーピース30を配設する。そこに積みモルタル25を敷き、一段目となるの建築用ガラスレンガ10aを置く。次に、一段目の建築用ガラスレンガ10aの溝部17へ積みモルタル25を充填したものを、溝部17が上面になるよう敷き並べる。続いて一段目の建築用ガラスレンガ10a上面12aに目地モルタルを敷き詰め、直径3mmのステンレス製鉄筋の補強筋26をアンカーピース30の孔に挿通し、積みモルタル25に埋める。一段目と同様に、建築用ガラスレンガ10aの溝部17へモルタルを充填したものを敷き並べる。以後、同様な作業を繰り返し、建築用ガラスレンガ10aを積み上げる。一連の作業が終了した後、必要な場合、目地部に化粧目地モルタルを充填し、枠体22と隣り合う上下左右の部分には、シリコーン系シーリング材28が、躯体21と枠体22との間にはシーリング材29がそれぞれ充填し、ガラスレンガ壁20の施工を終了する。なお、建築用ガラスレンガ10aを積み上げる場合、溝部17が下面になるよう敷き並べることも可能である。
【0036】
以上のように施工を行い完成したガラスレンガ壁20は、充分な採光性を有するとともに充分な強度を有し、平常時においては目地充填材等により破損することはないものであった。また、防火試験の結果、上記ガラスレンガ壁20は、建築基準法に規定される(特定)防火設備性能を満足するものであった。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、ガラス以外のセラミックス等の脆性材料からなる建築用レンガにも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明のガラスレンガの説明図であって、(A)は斜視図、(B)は(A)短辺側から見た側面図、(C)は溝部の形状が異なるガラスレンガの説明図。
【図2】本発明のガラスレンガ壁の垂直断面図。
【図3】本発明のガラスレンガ壁の水平断面図であって、(A)は躯体への取付部分を示す説明図、(B)は支柱で接合した部位の説明図。
【符号の説明】
【0039】
10、10a 建築用ガラスレンガ
11 意匠面
12 側面
12a 上積層面
13、14 補強層
15、17 溝部
16、16a 応力緩衝層
20 ガラスレンガ壁
21 躯体
22 枠体
23 水抜きプレート
24 滑り材
25 積みモルタル
26 補強筋
27 エキスパンション材
28、29 シーリング材
30 アンカーピース
31 支柱

【特許請求の範囲】
【請求項1】
30〜380℃における平均熱膨張係数が70×10-7/K以下で、且つ、波長400〜700nmの範囲における平均透過率が肉厚7mmで15〜85%のガラスからなり、幅、長さ及び厚みのそれぞれが50mm以上であり、意匠面以外の側面に耐アルカリ性ガラス繊維を用いた補強層が形成されていることを特徴とする建築用ガラスレンガ。
【請求項2】
積層面に、意匠面と平行な溝部を有することを特徴とする請求項1に記載の建築用ガラスレンガ。
【請求項3】
積層面の溝部に、応力緩衝層を設けたことを特徴とする請求項2に記載の建築用ガラスレンガ。
【請求項4】
枠体と、30〜380℃における平均熱膨張係数が70×10-7/K以下で、且つ、波長400〜700nmの範囲における平均透過率が肉厚7mmで15〜85%のガラスからなり、幅、長さ及び厚みのそれぞれが50mm以上であり、かつ積層面に意匠面と平行な溝部を有する複数の建築用ガラスレンガと、該建築用ガラスレンガの意匠面以外の側面に耐アルカリ性ガラス繊維を用いて形成された補強層と、該建築用ガラスレンガの積層面の間及び溝部に充填される積みモルタルと、前記枠体内に積層された建築用ガラスレンガの積層面の溝部に配置され枠体に固定される補強筋とを具備するガラスレンガ壁。
【請求項5】
建築用ガラスレンガの積層面に設けられた溝部に、応力緩衝層を設けたことを特徴とする請求項4に記載のガラスレンガ壁。
【請求項6】
30〜380℃における平均熱膨張係数が70×10-7/K以下で、且つ、波長400〜700nmの範囲における平均透過率が肉厚7mmで15〜85%のガラスからなり、幅、長さ及び厚みのそれぞれが50mm以上であり、かつ積層面に意匠面と平行な溝部を有する建築用ガラスレンガを作製する工程と、該建築用ガラスレンガの意匠面以外の側面に、耐アルカリ性ガラス繊維を用いた補強層を形成する工程と、建造物の躯体に枠体を固定する枠体固定工程と、該枠体の空間部に積みモルタル及び枠体に固定される補強筋とを用いて複数の該建築用ガラスレンガを配列させつつ、その積層面の溝部に補強筋を配置させるレンガ配列工程とを有することを特徴とするガラスレンガ壁の施工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−63626(P2006−63626A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−246843(P2004−246843)
【出願日】平成16年8月26日(2004.8.26)
【出願人】(000232243)日本電気硝子株式会社 (1,447)
【Fターム(参考)】