説明

建築用防音パネル

【課題】 パネル部に所定の強度を付与すると共に、施工現場におけるパネル部の寸法調整が容易に実施し得る建築用防音パネル体を提供する。
【解決手段】 間隔をおいて平行に立設したパネル部2の間に吸音材6を配置した建築用防音パネル1において、パネル部2は上下に分割した複数のパネル材4によって形成し、該パネル材は断面略H字状を呈する連結パネル材41と、断面略I字状の中間パネル材42とから成り、パネル材4は左右方向に連続するアルミニウム製形材によって形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、平行に立設したパネル部の間に吸音材を配置した建築用防音パネルであって、フェンスパネル、門扉パネル、簡易構築物のサイドパネル等に利用される。
【背景技術】
【0002】
従来、道路の側部、住宅の隣地境界等に支柱を立設し、この支柱に防音パネルを取り付けたフェンスが知られている。従来の防音パネルは、平行に立設したアルミニウムパネル等の間に、グラスウール等の吸音材を配置したものであり、フェンスの高さ等を変更する際には、アルミニウムパネルを切断しなければならず、変更作業が甚だ難儀なものであった。また、平板状のアルミニウムパネルはそれ自体の強度が弱く、物が当たったりすると容易に変形してしまい、長期の使用には耐え難いものであった。
【0003】
特許文献1には、アルミ中空押出し形材によるメインフレームの中空部に、軟質発泡弾性体を挿入したアルミ製防音用構造体が開示されている。特許文献1によれば、防音用構造体のパネル部は中空内部にリブを形成したアルミ中空押出し形材によって形成しているので、アルミ中空押出し形材の表面は容易に変形することなく、長期の使用に耐え得るものである。
【0004】
さらに、特許文献2には、NOx除去性能を有する光触媒コーティング処理を表面板と背面板に施し、表面板と背面板の間に吸音材を設けたNOx浄化用遮音壁が開示されている。特許文献2においても、表面板並びに背面板は、表面に凹凸を設けたアルミニウム合金の押出型材によって形成しているので、所定の強度を満足し得るものである。
【0005】
特許文献1,2において、パネル部はリブ等を形成したアルミニウム形材によって形成しているため、単なる板状パネルによって構成したものと比較して強度は満足し得るレベルにあるものの、パネル部の寸法を調整しようとすると、アルミニウム形材を現場で切断しなければならず、大掛かりな切断装置を必要とするものであった。
【0006】
【特許文献1】特開2002−194833号公報
【特許文献2】特開2000−262864号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、パネル部に所定の強度を付与すると共に、施工現場におけるパネル部の寸法調整が容易に実施し得る建築用防音パネル体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、このような事情に鑑み鋭意検討を重ねた結果、間隔をおいて平行に立設したパネル部の間に吸音材を配置した建築用防音パネルにおいて、パネル部は上下に分割した複数のパネル材によって形成し、該パネル材は左右方向に連続するアルミニウム製形材によって形成したことによって、所期の目的を達成したものである。
【0009】
請求項2に記載の発明は、断面略H字状を呈する連結パネル材と、断面略I字状の中間パネル材とから成り、連結パネル材と中間パネル材を交互に配設してパネル部を形成したことことにより、平行に立設したパネル部の連結部分が少なくなり、透過損失が大きくなるので、防音性能を高めることができる。
【0010】
請求項3に記載の発明は、パネル材の上下端に係合縁を形成し、隣接するパネル材の係合縁同士を係合したことにより、パネル材を切断加工することなく、係合縁同士を係合あるいは解除することによって、パネル部の寸法調整を行なうことができる。
【0011】
請求項4に記載の発明は、パネル材の本体部に移動空間部を形成し、先端部に係合縁を形成した連結部材の基端部を移動空間部に嵌合し、移動空間部に対し連結部材を出入自在としたことにより、連結部材の出入量を調整して、表面側と裏面側のパネル部の上下方向の長さを変化することができ、上下方向に湾曲した建築用防音パネルを形成することができる。
【0012】
請求項5に記載の発明は、透光部を形成した透光窓材の上下端に係合縁を形成し、透光窓材の係合縁とパネル材の係合縁とを連結したので、パネル部の適宜位置に透光部を設けることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の建築用防音パネルによれば、平行に立設したパネル部を上下に分割した複数のパネル材によって形成し、該パネル材はアルミニウム製形材によって形成したので、パネル部に所定の強度を付与すると共に、パネル部の寸法を調整する際にはパネル材の数を変更するだけで良いので、施行現場における調整作業を容易に為し得るものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための最良の形態を実施例に基づき説明する。なお、本実施例において、本発明建築用防音パネルをフェンスパネルとして用いた例について説明するが、門扉パネルあるいは簡易構築物のサイドパネル等に用いても構わない。
図1乃至図3は本発明建築用防音パネルの第一実施例であり、建築用防音パネル1は平行に立設したパネル部2を有し、パネル部2の周囲が枠体3によって囲われている。パネル部2は、上下方向に分割した複数のパネル材4によって形成しており、該パネル材4は水平方向に連続した同一断面形状を有するアルミニウム製押出形材によって形成されている。さらにパネル材4は、断面が略H状を呈する連結パネル材41と、断面略I字状を呈する中間パネル材42との2種類の形態がある。
【0015】
連結パネル材41は中間部に連結壁部411が形成され、連結壁部411を挟んで両側に垂直壁部412が形成されている。連結壁部411の中央位置には一部が切り欠かれたビスホール413が形成され、該ビスホール413には縦枠31の透孔を挿通するタッピング螺子5が螺入し、連結パネル材41が縦枠31に固定される。
垂直壁部412の上下端には、係合縁414が形成され、上端には雌型係合縁4141、下端には雄型係合縁4142が形成されている。
【0016】
一方、中間パネル材42には垂直壁部422が形成され、垂直壁部422の上下端には、係合縁424が形成されている。上端に位置する係合縁424は雌型係合縁4241であり、下端に位置する係合縁424は雄型係合縁4242である。連結パネル材41に形成した、雌型係合縁4141と雄型係合縁4142は、中間パネル材42に形成した雌型係合縁4241と雄型係合縁4242と夫々同一断面形状となっている。
【0017】
パネル材4によってパネル部2を形成するには、連結パネル材41の雌型係合縁4141に、上方に隣接する中間パネル材42の雄型係合縁4242を係合し、連結パネル材41の雄型係合縁4142に下方に隣接する中間パネル材42の雌型係合縁4241を係合して、連結パネル材41と中間パネル材42が上下方向に交互に配設して形成される。そして平行に配置される垂直壁部412,422の間には、グラスウールから成る吸音材6が設けられる。吸音材としてはグラスウールの他、ロックウール、発泡ポリウレタン、発泡樹脂等が使用される。
【0018】
垂直壁部412,422には、補強溝415,425が上下三箇所にわたって平行に設けられており、垂直壁部412,422の強度を高めている。さらに、補強溝415,425は断面略V字状を呈しており、補強溝415,425の位置で音の乱反射が生じ、音を打ち消す作用が生じる。
【0019】
図1中上端に位置するパネル材4は断面略コ字状を呈しており、上面に係合溝43を平行に設け、この係合溝43に上横枠32の下面に形成した係合突条321を係合しているが、連結パネル材41あるいは中間パネル42の雌型係合縁4141,4241と、上横枠32の係合突条321を直に係合しても構わない。
以上の構成からなる建築用防音パネル1は、所定の間隔をおいて立設した支柱に固着され、防音フェンスとして使用される。断面が略H状を呈する連結パネル材41と、断面略I字状を呈する中間パネル材42とを組み合わせることにより、連結パネル材41によってパネル部に所定の強度を付与すると共に、連結壁部のない中間パネル材42は透過損失が大きくなるので、防音効果を高めることができる。
【0020】
次に、図4乃至5は本発明建築用防音パネルの第二実施例であり、第一実施例と同じ構成については、同一符号を付しその説明を省略する。第一実施例と異なる点は、パネル材4が断面略H状の連結パネル材41のみから構成され、連結パネル材41の係合縁414の断面形状が相違する点である。
【0021】
本第二実施例における雌型係合縁4141と雄型係合縁4142は、断面渦巻き形状を呈しており、図4中右側に位置する雄型係合縁4142は上下位置調整自在となっている。さらに詳細に説明すると、連結パネル材41の本体部である垂直壁部412の下縁に、下向きに開口した断面コ字状の移動空間部416を形成し、該移動空間部416に連結部材417の基端部4171を嵌合している。連結部材417の先端部には雄型係合縁4142が形成され、下方に隣接する連結パネル材41の雌型係合縁4141と係合する。連結部材417は移動空間部416に対して出入自在となっているので、連結部材417の出入量を調整することにより、表面側と裏面側(図4あるいは図5において、左側と右側)のパネル部4の上下方向における長さを変化することができ、図5に示したとおり上下方向に湾曲した建築用防音パネル1を形成することができる。
雌型係合縁4141と雄型係合縁4142は、断面渦巻き形状を呈しているので、図中左側の雌型係合縁4141と雄型係合縁4142の係合部を中心として、連結パネル材41を傾斜することができる。
【0022】
本第二実施例による建築用防音パネル1によれば、道路の側部に設置する防音フェンスの上端部に適用することにより、パネル部2を道路側に向けて湾曲形成すれば、自動車等の騒音に対する防音効果を高めることができる。
【0023】
次に図6は本発明建築用防音パネルの第三実施例であり、第一実施例と同じ構成については、同一符号を付しその説明を省略する。第一実施例と異なる点は、建築用防音パネル1の中間位置に透光部7を形成した点であり、パネル材4間に透光窓材8が設けられている。
透光窓材8は図7に示したとおり、透光可能なポリカーボネート材料から成る透光板81の周囲を、窓枠82によって囲ったものである。本実施例において透光板81には、ポリカーボネート板を使用したが、アクリル板、ガラス板等を使用しても構わない。窓枠82は、上窓枠821と下窓枠822を縦枠823に螺子止して矩形状に形成されている。上窓枠821の両側には雌型係合縁8211が形成され、下窓枠822は両側には雄型係合縁8221が形成されている。雌型係合縁8211は上方に隣接する連結パネル材41の雄型係合縁4142と係合し、雄型係合縁8221は下方に隣接する連結パネル材41の雌型係合縁4141と係合する。
【0024】
このようにして、パネル部2の中間位置に透光部7が形成される。建築用防音パネルは吸音材を有するため、パネル部2を透視することができず、建築用防音パネルで囲われた内部が暗くなりがちである。本実施例によれば、透光部7を形成した透光窓材8の上下端に係合縁8211,8221し、この係合縁8211,8221をパネル材4のパネル材4の係合縁4142,4141を係合したので、パネル部2の適宜位置に透光部7を簡単に設けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明建築用防音パネルの要部拡大縦断面図
【図2】本発明建築用防音パネルの全体正面図
【図3】本発明建築用防音パネルの全体側面図
【図4】本発明建築用防音パネルの第二実施例における要部拡大縦断面図
【図5】本発明建築用防音パネルの第二実施例における使用状態を表わす全体縦断面図
【図6】本発明建築用防音パネルの第三実施例における要部拡大縦断面図
【図7】本発明建築用防音パネルの第三実施例における一部を欠損した透光窓材の全体正面図
【符号の説明】
【0026】
1 建築用防音パネル
2 パネル部
4 パネル材
6 吸音材
7 透光部
8 透光窓材
41 連結パネル材
42 中間パネル材
414,424 係合縁
416 移動空間部
417 連結部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
間隔をおいて平行に立設したパネル部の間に吸音材を配置した建築用防音パネルにおいて、パネル部は上下に分割した複数のパネル材によって形成し、該パネル材は左右方向に連続するアルミニウム製形材によって形成したことを特徴とする建築用防音パネル。
【請求項2】
パネル材は、断面略H字状を呈する連結パネル材と、断面略I字状の中間パネル材とから成り、連結パネル材と中間パネル材を交互に配設してパネル部を形成したことを特徴とする請求項1に記載の建築用防音パネル。
【請求項3】
パネル材の上下端に係合縁を形成し、隣接するパネル材の係合縁同士を係合したことを特徴とする請求項1または2に記載の建築用防音パネル。
【請求項4】
パネル材の本体部に移動空間部を形成し、先端部に係合縁を形成した連結部材の基端部を移動空間部に嵌合し、移動空間部に対し連結部材を出入自在としたことを特徴とする請求項3に記載の建築用防音パネル。
【請求項5】
透光部を形成した透光窓材の上下端に係合縁を形成し、透光窓材の係合縁とパネル材の係合縁とを連結したことを特徴とする請求項3または4に記載の建築用防音パネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−283311(P2006−283311A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−101743(P2005−101743)
【出願日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(000180302)四国化成工業株式会社 (167)
【Fターム(参考)】