説明

建設機械におけるキャブ用の補強材

【課題】油圧ショベル1のキャブ5を枠組み形成する後側梁材13と左右梁材11とのあいだの直角コーナー部に、これら梁材11、13の座屈を防止することができる補強材14を組み付ける。
【解決手段】補強材は、これら梁材11、13に面当てされる第一、第二の当て板15、16と、これら当て板15、16とのあいだに介装される直角三角形状をした支持板17とを一体化して構成されるが、当て板15、16に、支持板17の頂点17b、17dよりも辺方向に沿って延長した延長面部15a、16aを形成し、これによって頂点部位に働く負荷を面当て状態で分散支持するようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧ショベルやホイールローダ等の建設機械におけるキャブ用の補強材の技術分野に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、油圧ショベル等の建設機械のなかには走行車両にキャブを搭載することがあり、このようなキャブとしては、オペレーター保護のため、足場が悪い作業現場での作業において走行車両の横転や転倒を想定して補強が試みられている。このようなキャブの補強をするにあたり、キャブが、柱材および梁材を枠材として用いて枠組み形成されたものである場合、隣接する枠材同士のあいだに形成される直角状のコーナー部に三角板形状をした補強材を組み込んで補強するようにしたものが提唱されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−131263号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら前記従来のものは、補強材の各枠材に当接する頂点部分が補強板の厚さに対応した線接触状態となっているため、枠材同士の角度を小さくする方向の負荷が働いた場合、枠材には、補強材の頂点部位に応力集中する状態で負荷を受けることになって該部位の枠材部分が座屈しやすく、強度的に弱くなってしまうという問題があり、ここに本発明の解決すべき課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、請求項1の発明は、柱材および梁材を枠材として用いて枠組み形成されたキャブを備えてなる建設機械において、前記枠材の隣接するもの同士のあいだに形成される直角状のコーナー部に補強材を組み込んでキャブの補強をするにあたり、補強材は、各枠材にそれぞれ面当てされる平板状の第一、第二の当て板と、直角三角形状をした平板状の支持板とを、支持板の直角を挟んだ辺のうちの一方の第一辺を第一当て板の板面に当接し、他方の第二辺を第二当て板の板面に当接した状態で一体化して構成されたものとし、第一、第二の当て板には、前記支持板の第一、第二辺の頂点位置より対応する各辺に沿った方向に延出する延出面部がそれぞれ設けられていることを特徴とする建設機械におけるキャブ用の補強材である。
請求項2の発明は、第一、第二当て板が面当てされる枠材側の面のうちの少なくとも一方が傾斜面である場合、当て板と支持板とは、傾斜面の傾斜に対応して一体化されていることを特徴とする請求項1記載の建設機械におけるキャブ用の補強材である。
【発明の効果】
【0006】
請求項1の発明とすることにより、隣接する枠材間のコーナー角度を小さくする方向の負荷が働いた場合に、この負荷を受ける枠材には、直角三角形状の支持板の頂点部位よりも延出した延出面部が枠材に面当てされていることになる結果、頂点部位が支点となる状態で延出面部が面当て状態で押された状態となって広く分散された負荷を受けることになり、枠材の座屈防止が図れ、キャブの強度アップを達成することができる。
請求項2の発明とすることにより、第一、第二当て板が面当てする部位が傾斜面であっても簡単かつ確実に面当て状態に維持できることになって、枠材の座屈防止が図れ、キャブの強度アップを達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】油圧ショベルの全体側面図である。
【図2】キャブの枠組み状態を示す斜視図である。
【図3】キャブ補強部位を示す部分斜視図である。
【図4】(A)はキャブ補強部位を示す部分断面正面図、(B)はキャブ補強部位を示す部分断面側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を実施するための形態について、図面に基づいて説明する。図中1は油圧ショベルであって、該油圧ショベル1は、クローラ式の下部走行体2に、バケット式の作業アタッチメント3が設けられた上部旋回体4が旋回自在に設けられている。上部旋回体4には、運転席5aを保護すべく囲繞する後述のキャブ5が前半部一側に設けられ、エンジンルーム6が後半部に設けられ、カウンターウエイト7が後端部に設けられて構成されていること等は何れも従来通りである。
【0009】
前記キャブ5は、機体フレーム8から立設する前側左右コーナー部の柱材9と、後側左右コーナー部の柱材10と、これら柱材9、10の上端部間に支架される左右の梁材11、前側梁材12、後側梁材13等の各種部材を枠材として用いて枠組み形成され、これら枠組みされた各空間部に板材や窓材、さらにはドア等の必要部材を組み込んで構成されていること等も従来どおりである。
【0010】
14は本発明が実施された補強材であって、該補強材14は、前記後側梁材13と左右の梁材11とによって形成される直角コーナー部に組み付けられるものであるが、後側梁材13は、後側左右の柱材10と同様、四角形状をした2本の筒材を積層して構成されている。これに対し、左右の梁材11は、前側左右の柱材9と同じ異形鋼管を採用しているが、キャブ5内側面には、下側ほど左右外方に至るように傾斜した傾斜面11aが形成されていて、キャブ5内空間を広く確保できるように配慮されている。
【0011】
前記補強材14は、後側梁材13のフラットなキャブ内側面13aと左右梁材11の前記傾斜面11aとにそれぞれ面当て状に当てがわれて固定される第一、第二の当て板15、16と、該当て板15、16間に介装される直角三角形状をした支持板17とによって構成されている。そして、第一当て板15と支持板17とは、第一当て板15の板面の上下方向中間位置に支持板17の直角を挟む二つの辺のうちの一方の第一辺17aを突き当てた状態で互いの板面同士が直角になるようにして溶着により一体化されているが、第一当て板15には、支持板第一辺17aの前側頂点17b位置よりも第一辺17aに沿って前方に延出した延出面部15aが形成されている。
【0012】
一方、第二当て板16と支持板17とは、第二当て板16の板面の上下方向中間位置に支持板17の直角を挟む他方の第二辺17cを突き当てた状態で、第二当て板16の板面が前記傾斜面11aに面当てされるよう互いの板面が傾斜した状態で溶着により一体化されているが、第二当て板16にも、前記第一当て板15の場合と同様、支持板第二辺17cの左右内側頂点17dよりも第二辺17cに沿って左右方向内方に延出した延出面部16aが形成されている。
【0013】
叙述の如く構成された本発明を実施するための形態において、補強材14を、前述したように天井面の左右枠および後枠を構成する後側梁材13と左右梁材11とのあいだの直角コーナー部に組み付けてキャブ5の補強をすることになるが、この場合において、後側梁材13と左右梁材11とのなす角度を小さくする方向の負荷が働いたとき、該負荷を補強材14の支持板17で受けることになるが、該支持板17で受けたことによる反作用で前記負荷が後側梁材13と左右梁材11とに働くことになるが、該後側梁材13と左右梁材11とが受ける負荷は、それぞれ第一、第二当て板15、16によって広く面受けすることになる。
【0014】
この場合において、第一、第二当て板15、16は、支持板7の頂点17b、17d位置よりも延出した前記延出面部15a、16aが形成されている。この結果、前記従来のもののように支持板17の頂点17b、17dの肉厚相当部分で応力集中して線状に受けてしまうことがなく、頂点17b、17dが支点となり、該支点よりも延出した延出面部15a、16aが各梁材11、13に面当て状態で広く分散された状態で負荷を受けることになり、そして該負荷が分散されることで枠材の座屈防止が図れ、キャブの強度アップを達成することができ補強機能が増大する。
【0015】
しかも補強材14は、第一、第二当て板15、16と支持板17との3枚の板材を溶着により一体固定しているため、左右梁材11のように傾斜面11aがあったものであっても、該傾斜面11aに沿うよう傾斜した状態で固定すればよいことになって加工性が向上しながら、当て板が面当てする部位が傾斜面であっても確実な面当て状態に維持できることになって、枠材の座屈防止が図れ、キャブ5の強度アップを達成することができる。
【0016】
尚、本発明は前記実施の形態に限定されないものであることは勿論であって、梁材同士のあいだだけでなく、例えば柱材と梁材とのあいだを補強する場合にも用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0017】
本発明は、油圧ショベルやホイールローダ等の建設機械におけるキャブの強度アップに利用することができる。
【符号の説明】
【0018】
1 油圧ショベル
5 キャブ
9、10 柱材
11、12、13 梁材
11a 傾斜面
14 補強材
15、16 当て板
15a、16a 延出面部
17 支持板
17a、17c 支持板辺
17b、17d 支持板頂点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
柱材および梁材を枠材として用いて枠組み形成されたキャブを備えてなる建設機械において、前記枠材の隣接するもの同士のあいだに形成される直角状のコーナー部に補強材を組み込んでキャブの補強をするにあたり、補強材は、各枠材にそれぞれ面当てされる平板状の第一、第二の当て板と、直角三角形状をした平板状の支持板とを、支持板の直角を挟んだ辺のうちの一方の第一辺を第一当て板の板面に当接し、他方の第二辺を第二当て板の板面に当接した状態で一体化して構成されたものとし、第一、第二の当て板には、前記支持板の第一、第二辺の頂点位置より対応する各辺に沿った方向に延出する延出面部がそれぞれ設けられていることを特徴とする建設機械におけるキャブ用の補強材。
【請求項2】
第一、第二当て板が面当てされる枠材側の面のうちの少なくとも一方が傾斜面である場合、当て板と支持板とは、傾斜面の傾斜に対応して一体化されていることを特徴とする請求項1記載の建設機械におけるキャブ用の補強材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−255245(P2010−255245A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−105242(P2009−105242)
【出願日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【出願人】(000190297)キャタピラージャパン株式会社 (1,189)
【出願人】(390001579)プレス工業株式会社 (173)
【Fターム(参考)】