説明

建設機械のアンダーカバー装置

【課題】上部旋回体の下面に取付けるアンダーカバーに伝わる振動を抑制し、アンダーカバーに発生するクラック等の損傷を防止できる装置を提供する。
【解決手段】上部旋回体のフレーム15とアンダーカバー14との間に防振ゴム18をボルト16により取付ける。上部旋回体のフレーム15とアンダーカバー14との間に防振ゴム18を介装したので、駆動源により発生する振動や、建設機械の作業により発生する振動のアンダーカバーへの伝達が、防振ゴムによって緩和される。これにより、アンダーカバー14の損傷が防止される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧ショベルやクレーンあるいはこれらの応用機械として構成された建設機械において、上部旋回体の下面を覆うアンダーカバー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
油圧ショベルやクレーンあるいはこれらの応用機械として構成された建設機械においては、上部旋回体に搭載されたエンジンやエンジン回りの種々の機器や装置を障害物から保護するため、上部旋回体上に建屋を設け、建屋の上面、側面に搭載機器、装置を覆うカバーを設けると共に、上部旋回体の下面にもアンダーカバーを設ける。図5に示すように、搭載機器等の保守点検が容易に行えるように、上部旋回体の下面に設けるアンダーカバー14は、上部旋回体を構成するフレーム15の下面に直接当接させ、ボルト16およびナット17により着脱可能に取付けられている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−144509号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の建設機械において、エンジン等のパワーユニットの作動によるフレーム(車体)15の振動、あるいは建設機械の作業中におけるフレーム15の振動がアンダーカバー14に直接伝達される。このため、このアンダーカバー14に加わる振動の繰り返しにより、アンダーカバー14にクラック等の損傷が発生するおそれがあるという問題点がある。
【0005】
本発明は、上記問題点に鑑み、アンダーカバーに伝わる振動を抑制し、もってアンダーカバーにおけるクラック等の損傷の発生を防止できる建設機械のアンダーカバー装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の建設機械のアンダーカバー装置は、下部走行体上に上部旋回体を設置し、前記上部旋回体に駆動源を搭載してなり、前記上部旋回体のフレームの下面にアンダーカバーを取付けた建設機械において、
前記上部旋回体のフレームと前記アンダーカバーとの間に防振ゴムを介装したことを特徴とする。
【0007】
請求項2の建設機械のアンダーカバー装置は、請求項1に記載の建設機械のアンダーカバー装置において、
前記フレームと前記アンダーカバーと前記防振ゴムにそれぞれ設けたボルト挿通部と、
前記各ボルト挿通部に挿通するアンダーカバー取付けボルトと、
前記ボルトに螺合されて前記アンダーカバーおよび防振ゴムを前記フレームに取付ける雌ねじ部材と、
前記ボルトに外嵌されて前記フレームの下面と前記アンダーカバーとの間の間隔を保持するスペーサとを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
請求項1の発明によれば、上部旋回体のフレームとアンダーカバーとの間に防振ゴムを介装したので、駆動源により発生する振動や、建設機械の作業により発生する振動のアンダーカバーへの伝達が、防振ゴムによって緩和される。このため、アンダーカバーのクラック発生等の破損が防止される。また、アンダーカバーの破損が防止されるため、メンテナンスに要する手間、コストが低減できる。
【0009】
請求項2の発明によれば、フレーム下面とアンダーカバーとの間の間隔を保持するスペーサを介在させたので、防振ゴムのつぶれが防止される。このため、防振ゴムの緩衝効果を高く維持することができ、フレームからアンダーカバーへの振動伝達がより有効に抑制される。また、スペーサを介在させたことにより、ボルトの高い軸力(ボルトの軸心方向の締付力)が得られ、ボルトの緩みを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明を適用する建設機械の一例を示す側面図である。
【図2】図1の建設機械におけるアンダーカバーの配置を示す分解斜視図である。
【図3】図2のアンダーカバー装置の一部を示す底面図である。
【図4】本発明による建設機械のアンダーカバー装置の一実施の形態を示す断面図である。
【図5】従来の建設機械のアンダーカバー装置の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は本発明を適用する建設機械の一例を示す側面図である。この例では建設機械が油圧ショベルである場合について示している。この油圧ショベルは、下部走行体1上に旋回装置2を介して上部旋回体3を設置し、上部旋回体3上にパワーユニット4や運転室5等を搭載すると共に、多関節構造の作業用フロント6を取付けてなる。
【0012】
作業用フロント6は、上部旋回体3にブームシリンダ7により俯仰可能に取付けられるブーム8と、ブーム8の先端にアームシリンダ9により回動可能に取付けられるアーム10と、アーム10の先端にバケットシリンダ11により回動可能に取付けられるバケット12とを備える。パワーユニット4は原動機として通常はエンジンを用いるが、外部電源あるいは搭載電源により駆動される電動モータを使用する場合もある。
【0013】
作業用フロント6には非伸縮式または伸縮式のブームを用いることができ、また、作業具として、解体、荷役、破砕等、各種目的の作業具を取付けることにより、目的に応じた建設機械を構成することができる。
【0014】
図2の分解斜視図に示すように、上部旋回体3の下面には複数枚のアンダーカバー14が取付けられる。図3はこのアンダーカバー14の1つを上部旋回体3のフレーム15に取付けた構造を示し、図4は本発明によるアンダーカバー14の取付け構造の一実施の形態を示す。14aはアンダーカバー14の一方の端部に設けた取付け溝、14bは他方の端部に設けた取付け孔である。15aはフレーム15に設けたボルト挿通部であり、アンダーカバー14を取付けるためのボルト16を挿通するものである。17はフレーム15に溶接した雌ねじ部材としてのナットである。18はフレーム15の下面とアンダーカバー14との間に介装する防振ゴム、18aはボルト16を挿通するボルト挿通部である。19はフレーム15の下面とアンダーカバー14との間の間隔を保持するために設けた筒状スペーサである。
【0015】
この実施の形態においては、このスペーサ19はボルト16に外嵌されてフレーム15のボルト挿通部15a、防振ゴム18のボルト挿通部18a、アンダーカバー14の取付け孔14b(または取付け溝14a)に挿通され、ナット17とボルト16の頭部16aとの間に介装される。20はスペーサ19とボルト頭部16aとの間に介在させたワッシャである。
【0016】
この実施の形態において、アンダーカバー14の取付けは一例として下記のようになされる。図2のようにアンダーカバー14の一端のボルト挿通部を取付け溝14aとする場合、スペーサ19を予めナット17に溶接しておくことが好ましい。また、防振ゴム18のボルト挿通部18aをスペーサ19に嵌合して防振ゴム17をフレーム15の下面に予め取付けておく。
【0017】
そして、アンダーカバー14の取付けに当たり、取付け溝14a側のナット17に螺合するボルト16を緩めた状態で取付けておく。続いて、アンダーカバー14をフレーム15の下面でスライドさせて取付け溝14aをボルト16の軸部に嵌め、ボルト16の頭部16aでアンダーカバー14を支持させておく。そしてアンダーカバー14の取付け孔14b側を押し上げてフレーム15の下面の防振ゴム18に当て、ボルト16をスペーサ19に挿通してナット17に螺合し締結する。また、その後に取付け溝14a側のボルト16も締結することにより、アンダーカバー14をフレーム15に下面に固定する。このような手順でアンダーカバー14を取付けることにより、アンダーカバー14の取付けが容易となる。
【0018】
上記の手順と異なり、防振ゴム18はアンダーカバー14に接着しておいて防振ゴム18もアンダーカバー14と同時にフレーム15に取付けることもできる。アンダーカバー14に予め防振ゴム18を取付けておくとすれば、この例のようにアンダーカバー14の一端側に取付け溝14a側を設けている場合には、取付け溝14a側に取付ける防振ゴム18にもアンダーカバー14の取付け溝と同様の取付け溝を、両取付け溝が連続するように設けておく。アンダーカバー14の取付け孔14b側にも防振ゴム18を取付けておくとすれば、同様に防振ゴム18にも取付け孔14bに連続する取付け孔を設けておく。
【0019】
この実施の形態においては、上部旋回体3のフレーム15とアンダーカバー14との間に防振ゴム18を介在させたので、駆動源であるパワーユニット4により発生する振動や、建設機械の作業により発生する振動のアンダーカバー14への伝達が、防振ゴム18によって緩和される。このため、アンダーカバー14のクラック発生等の破損が防止される。また、アンダーカバー14の破損が防止されるため、メンテナンスに要する手間、コストが低減できる。
【0020】
また、この実施の形態においては、スペーサ19によりフレーム15とアンダーカバー14との間の間隔を保持するため、防振ゴム18のつぶれが防止される。このため、防振ゴム18の緩衝効果を高く維持することができ、クラック発生等の効果がよりよく発揮できる。また、フレーム15の下面とアンダーカバー14との間の間隔を保持するため、ボルト16の頭部16aとナット17との間に剛体でなるスペーサ19を介在させたので、ボルト16の高い軸力が得られ、ボルト16の緩みを防止することができる。
【0021】
なお、この実施の形態においては、アンダーカバー14の一端側に取付け溝14aを設け、他端側に取付け孔14bを設けた例を示したが、アンダーカバー14の取付け部の構造はこれに限らず、両端に取付け溝14aを取付けたり、両端に取付け孔14bを設ける構造も採用でき、ボルト16によるフレーム15へのアンダーカバー14の固定も、アンダーカバー14の全周について行ってもよい。
また、防振ゴム18の取付けは、フレーム15への接着により行なってもよい。
また、ボルト16の頭部16aをフレーム15の上面に固定し、アンダーカバー14の下面からボルトのねじ部を突出させて下方からナット17をボルトに螺合する構造も採用できる。
また、スペーサ19は、フレーム15のボルト挿通部15aに嵌合するのではなく、フレーム15とアンダーカバー14との間に介在させる構造としてもよい。
【符号の説明】
【0022】
1:下部走行体、2:旋回装置、3:上部旋回体、4:パワーユニット、5:運転室、6:作業用フロント、7:ブームシリンダ、8:ブーム、9:アームシリンダ、10:アーム、11:バケットシリンダ、12:バケット、14:アンダーカバー、14a:取付け溝、14b:取付け孔、15:フレーム、15a:ボルト挿通部、16:ボルト、17:ナット、18:防振ゴム、18a:ボルト挿通部、19:スペーサ、20:ワッシャ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部走行体上に上部旋回体を設置し、前記上部旋回体に駆動源を搭載してなり、前記上部旋回体のフレームの下面にアンダーカバーを取付けた建設機械において、
前記上部旋回体のフレームと前記アンダーカバーとの間に防振ゴムを介装したことを特徴とする建設機械のアンダーカバー装置。
【請求項2】
請求項1に記載の建設機械のアンダーカバー装置において、
前記フレームと前記アンダーカバーと前記防振ゴムにそれぞれ設けたボルト挿通部と、
前記各ボルト挿通部に挿通するアンダーカバー取付けボルトと、
前記ボルトに螺合されて前記アンダーカバーおよび防振ゴムを前記フレームに取付ける雌ねじ部材と、
前記ボルトに外嵌されて前記フレームの下面と前記アンダーカバーとの間の間隔を保持するスペーサとを備えたことを特徴とする建設機械のアンダーカバー装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−216190(P2010−216190A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−66873(P2009−66873)
【出願日】平成21年3月18日(2009.3.18)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】