説明

建設機械のフロアマット及びそのフロアマット構造

【課題】オペレータが乗降の際に滑ることを防止するとともに、見栄えの悪化を回避することが可能となる。
【解決手段】建設機械のキャブ100のフロア106上に敷設される建設機械のフロアマット120において、フロア106の上面を覆う上面部122と、上面部122から下方に折り曲げられてキャブ100の乗降口108の端面となるフロア106の側面102Aを覆う側面部124と、を備え、且つ弾性部材で形成されている。また、フロアマット120の側面部124には乗降口108に設けられたドア110のシール部材112と当接する当接面126が設けられ、当接面126とシール部材112との当接によりドア110下側の気密性が保持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧ショベル等の建設機械のフロアマット及びそのフロアマット構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、図6に示すような油圧ショベル等の建設機械MCのキャブ(運転室)1のフロアには、オペレータの足元に伝わる振動などを緩衝するとともに、オペレータのキャブ1への乗降の際のスリップを防止するために、特許文献1に示されるような弾性体のフロアマットが敷設されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−146555号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の図面に示される如く、フロアマットはキャブ1のフロアの上面を覆うのみであり、乗降口近傍のフロアマットの形態に対しては特段の考慮がなされていなかった。このため、乗降口近傍においてはフロアを構成する金属部分がむき出しの状態となるおそれがあることから、その金属部分にオペレータの足がかかりキャブ1へ乗降した場合には滑るおそれがあった。また、金属部分がむき出しになることで、そのむき出しの部分で、オベレータの足やフロアマットや土砂などで摺擦が生じて、その部分の塗装が剥げてさびが出るなどの見栄えが悪くなるおそれもあった。
【0005】
そこで、本発明は、前記問題点を解決するべくなされたもので、オペレータが乗降の際に滑ることを防止するとともに、見栄えの悪化を回避することが可能な建設機械のフロアマット及びそのフロアマット構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、建設機械のキャブのフロア上に敷設される建設機械のフロアマットにおいて、前記フロアの上面を覆う上面部と、該上面部から下方に折り曲げられて前記キャブの乗降口の端面となる前記フロアの側面を覆う側面部と、を備え、且つ弾性部材で形成されていることにより、上記課題を解決したものである。
【0007】
本発明のフロアマットは、弾性部材で形成されており、フロアの上面を覆う上面部と、該上面部から下方に折り曲げられた側面部と、を備える。しかもその側面部は、キャブの乗降口の端面となる前記フロアの側面を覆っている。このため、キャブの乗降口近傍においてフロアを構成する金属部分がむき出しの状態とはならず、且つフロアの側面にフロアマットの側面部が位置することでフロアマットのずれが規制されることとなる。即ち、オペレータが乗降口近傍に足をかけても、そこは金属部分とはならずに且つフロアマットもずれない。このため、オペレータが乗降の際に滑ることを防止することができる。同時に、フロアを構成する金属部分がむき出しの状態とはならないため、見栄えを悪化させることを回避することができる。
【0008】
また、前記フロアマットの前記側面部には前記乗降口に設けられたドアのシール部材と当接する当接面が設けられ、該当接面と前記シール部材との当接により前記ドア下側の気密性(水密性を含む)が保持される場合には、ドアを閉めることで、ドア下側の気密性が面で確保されることから少なくともドア下側からの汚水や粉塵のキャブへの浸入を確実に防止することができる。
【0009】
また、前記当接面が前記シール部材の横断面形状に合わせた横断面形状を有している場合には、当接面とシール部材との当接する面積を大きくすることができるとともに当接面にかかる圧力を低くすることができる。このため、多少の汚れや塵埃などが当接面に存在しても安定して気密性を保持できる。また、ドアの開閉による当接面とシール部材の変形量を少なくできることから、フロアマットとシール部材の長寿命化を図ることができ、気密性を長期に亘り確保することができる。具体的には、前記当接面とシール部材のうちの一方に凸部、他方に該凸部に合わせた凹部を形成してもよい。
【0010】
また、更に、前記フロアマットの側面部の前記当接面の下部に前記ドアの内側に向かう突起部が設けられている場合には、ドアが開いているときにはキャブの下から舞い上がって当接面に載ってくる塵埃を低減でき、ドアを閉めているときにもドア下側から当接面に(作業によって生じる)破砕片などが接近するのを排除でき、また直接的な当接面への被水も低減できる。結果的に、汚水や粉塵のキャブへの浸入を更に防止することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、オペレータが乗降の際に滑ることを防止するとともに、見栄えの悪化を回避することが可能となる。更に、フロアマットがその当接面でドアのシール部材と当接することで、気密性を長期に亘って保持することも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1実施形態に係る建設機械のフロアマットがキャブのフロアに敷設された状態を一部拡大した斜視図
【図2】同じくキャブのドアを閉めた状態におけるフロアマット構造を示す断面模式図(A)とフロアマットの当接面の部分の断面模式図(B)
【図3】本発明の第2実施形態に係る建設機械のフロアマットに対してキャブのドアを閉めた状態におけるフロアマット構造を示す断面模式図
【図4】比較例1のフロアマットとフロアへの敷設した様子を示す模式図
【図5】比較例2のフロアマットとフロアへの敷設した様子を示す模式図
【図6】建設機械の一例を示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の第1実施形態の例を図面に基づいて説明する。
【0014】
図1は、本発明の第1実施形態に係る建設機械のフロアマットがキャブのフロアに敷設された状態を一部拡大した斜視図である。また、図2(A)はドアを閉めた状態におけるフロアマット構造を示す断面模式図と、図2(B)はフロアマットの当接面の部分の断面模式図である。まず、図1、図2を用いて本実施形態の概略構成について説明する。なお、本実施形態においても、建設機械の一例としては図6に示される油圧ショベルなどである。
【0015】
建設機械のキャブ100は、建設機械のオペレータ室(運転室)であり、略箱型形状をなしている。キャブ100には、オペレータが座り建設機械を運転するための運転席(図示せず)があり、その運転席の前側にフロア106が設けられている。フロア106は、キャブ100の略箱型形状の辺に固着されたキャブフレーム102と、キャブフレーム102に一体的に取り付けられた床面104と、を有する。
【0016】
キャブ100の略箱型形状のうち、一方の側面にはオペレータがキャブ100に乗降するための乗降口108が設けられている。乗降口108には開閉自在のドア110が設けられている。ドア110には弾性部材からなるシール部材112が取り付けられている。シール部材112は、キャブ100の気密性(水密性を含む)を保つために取り付けられている。乗降口108において、フロア106は(キャブフレーム102による)側面102Aを有する。フロア106の側面102Aは、ドア110が閉められた際には、ドア110の内側110Aと所定の間隔で対峙する。なお、キャブ100は高い剛性を持たせるために金属で構成されており、ドア110やフロア106も金属で構成されている。
【0017】
次に、キャブ100のフロア106上に敷設されるフロアマット120について、図1、図2を用いて詳細に説明する。
【0018】
フロアマット120は、弾性部材であり、上面部122と、上面部122と一体成形された側面部124と、を備える。上面部122は、フロア106(キャブフレーム102と床面104)の上面を覆っている。なお、上面部122の下面は、床面104からの振動を緩衝するために凸凹形状とされている。また、上面部122の上面は、オペレータのフロアマット120上での滑りを防止するために凸凹形状とされている。
【0019】
側面部124は、上面部122から下方に折り曲げられてキャブ100の乗降口108の端面となるフロア106の側面102Aを覆っている。このため、図2(A)の右側から力(図2(A)の矢印)がフロアマット120に加わっても、フロア106(キャブフレーム102)の側面102Aと側面部124の裏面124Aとの接触により、フロアマット120の水平方向への移動が規制される。
【0020】
また、側面部124には、乗降口108に設けられたドア110のシール部材112と当接する当接面126が設けられている。本実施形態においては、上面部122と側面部124とでできる角の部分126A(図2(B)で破線部分)が一定の曲率半径で切り欠かれることで、当接面126が設けられている(凹設)。これは、図2(A)に示す如く、シール部材112の横断面形状が、前記一定の曲率に近い略円形で突出していることによる。即ち、当接面126はシール部材112の横断面形状に合わせた横断面形状を有している。ここで、当接面126の断面の接線と垂直方向とのなす角度θは、ドア110の方向に近づくにつれ大きくなり、最終的には90度を超えていない。このため、当接面126に汚れを残しにくく、容易に異物を取り除くことができる。即ち、当接面126の掃除もしやすく、シール部材112との密着性を安定して得ることができる。
【0021】
次に、フロアマット120の作用について説明する。
【0022】
本実施形態のフロアマット120は、弾性部材で形成されており、フロア106の上面を覆う上面部122と、該上面部122から下方に折り曲げられた側面部124と、を備える。しかもその側面部124は、キャブ100の乗降口108の端面となるフロア106の側面102Aを覆っている。
【0023】
これに対しては、図4に示す比較例1(特許文献1の構成にほぼ該当)との比較を行う。比較例1においては、フロアマット20Aに側面部が存在せず、金属のキャブフレーム2Aの上面と側面とがむき出しとなる。このため、オペレータの乗降時に、そのむき出しの金属部分にオペレータの足がかかり、滑る可能性がある。そして、その金属部分のむき出し部分において、見栄えが悪く、塗装部分が剥がれることで更に見栄えが悪化する可能性がある。
【0024】
このような足の滑りや見栄えの欠点を解決するために、図5に示す比較例2が考えられる。比較例2においては、L型のデッキガード30Bを用いて、フロアマット20Bの端部をキャブフレーム2Bと挟み込んで固定する構造を採用している。このため、(デッキガード30Bの塗料が剥がれることで見栄えが悪化することやデッキガード30Bにオペレータの足がかかることで滑る場合を除けば)キャブ1Bへのオペレータの乗降時にむき出しのキャブフレーム2Bに足がかかることがなく、足の滑りが防止でき、且つ見栄えの向上が可能となる。しかし、フロアマット20Bの清掃時において、フロアマット20Bの脱着のためにデッキガード30Bを取外す必要がある。即ち、清掃容易性が損なわれ、更にデッキガード30Bの部品点数が増大し、その分コスト高となってしまう。
【0025】
本実施形態は、上記比較例1、2の上述した欠点を克服したものである。即ち、キャブ100の乗降口108近傍においてフロア106を構成する床面104やキャブフレーム102の金属部分がむき出しの状態とはならず、且つフロア106の側面102Aにフロアマット120の側面部124が位置することでフロアマット120のずれが規制されることとなる。即ち、オペレータが乗降口108近傍に足をかけても、そこが金属部分とはならずに且つフロアマット120もずれない。このため、オペレータが乗降の際に(その足の滑りとフロアマットのずれが防止されることで)滑ることを防止することができる。同時に、フロア106を構成する床面104やキャブフレーム102の金属部分がむき出しの状態とはならないため、見栄えを悪化させることを回避することができる。更に、本実施形態のような構成により、デッキガードなどの部品の増加と複雑な形状の部品の採用を不要にして、コストアップを防止することができる。また、デッキガードなどの部品を使用しないことで、フロアマット120の脱着が容易であり、清掃容易性についても確保することができる。
【0026】
また、フロアマット120の側面部124には乗降口108に設けられたドア110のシール部材112と当接する当接面126が設けられ、当接面126とシール部材112との当接によりドア110下側の気密性が保持される。このため、ドア110を閉めることで、ドア110下側の気密性が面で確保されることから少なくともドア110下側からの汚水や粉塵のキャブ100への浸入を確実に防止することができる。なお、ここでのドア110下側は、フロアマット120の当接面126とシール部材112との当接する範囲で占められるドア110の部分をいう。
【0027】
また、当接面126がシール部材112の横断面形状に合わせた横断面形状を有しているので、当接面126とシール部材112との当接する面積を大きくすることができるとともに当接面126にかかる圧力を低くすることができる。このため、多少の塵埃が当接面126に存在しても安定して気密性を保持できる。また、ドア110の開閉による当接面126とシール部材112の変形量を少なくできることから、フロアマット120とシール部材112の長寿命化を図ることができ、気密性を長期に亘り確保することができる。更に、当接面126が張り出さずに凹設されていることから、オペレータの乗降の際に、邪魔になることを回避することができる。
【0028】
即ち、本実施形態によれば、オペレータが乗降の際に滑ることを防止するとともに、見栄えの悪化を回避することが可能となる。更に、フロアマット120がその当接面126でドア110のシール部材112と当接することで、気密性を長期に亘って保持することも可能となる。
【0029】
本発明について第1実施形態を挙げて説明したが、本発明は第1実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の要旨を逸脱しない範囲においての改良並びに設計の変更が可能なことは言うまでもない。
【0030】
例えば、図3に示す第2実施形態で示されるフロアマット及びフロアマット構造であってもよい。図3に示されるフロアマット220では、第1実施形態で示されたフロアマット120に対して、更に、フロアマット220の側面部224の当接面226の下部にドア210の内側210Aに向かう突起部225が設けられている。このため、ドア210が開いているときにはキャブの下から舞い上がって当接面226に載ってくる塵埃を低減できる。また、ドア210を閉めているときにはドア210下側から当接面226に(作業によって生じる)破砕片などが接近するのを排除でき、また直接的な当接面226への被水も低減できる(図3の矢印)。結果的に、汚水や粉塵のキャブへの浸入を更に防止することができる。
【0031】
また、上記実施形態においては、フロアマットの側面部には乗降口に設けられたドアのシール部材と当接する当接面が設けられ、該当接面と前記シール部材との当接により前記ドア下側の気密性が保持されていたが、本発明はこれに限定されない。例えばフロアマットとシール部材とが必ずしも当接する必要もなく、ドアにシール部材が設けられておらず、フロアマットが直接ドアの内側に当接して気密性を保ってもよい。更に言えば、その気密性を保つことが必ずしも必要ではない。
【0032】
また、上記実施形態においては、当接面が前記シール部材の横断面形状に合わせた横断面形状を有して、且つ凹設されていたが、本発明はこれに限定されない。例えば、当接面とシール部材のうちの一方に凸部、他方に該凸部に合わせた凹部を形成してもよい。あるいは、当接面とシール部材のいずれもが凹凸を繰り返した形状とされて、互いに形状が噛合うように当接してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明は、油圧ショベル等の建設機械に適用可能である。
【符号の説明】
【0034】
1、1A、1B、100…キャブ(運転室)
2A、2B、102、202…キャブフレーム
4A、4B、104、204…床面
6A、6B、106、206…フロア
10A、10B、110、210…ドア
12A、12B、112、212…シール部材
20A、20B、120、220…フロアマット
22A、22B、122、222…上面部
108…乗降口
124、224…側面部
126、226…当接面
225…突起部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建設機械のキャブのフロア上に敷設される建設機械のフロアマットにおいて、
前記フロアの上面を覆う上面部と、
該上面部から下方に折り曲げられて前記キャブの乗降口の端面となる前記フロアの側面を覆う側面部と、を備え、且つ
弾性部材で形成されていることを特徴とする建設機械のフロアマット。
【請求項2】
請求項1に記載のフロアマットを備え、
該フロアマットの前記側面部には前記乗降口に設けられたドアのシール部材と当接する当接面が設けられ、
該当接面と前記シール部材との当接により前記ドア下側の気密性が保持される
ことを特徴とする建設機械のフロアマット構造。
【請求項3】
請求項2において、
前記当接面は前記シール部材の横断面形状に合わせた横断面形状を有している
ことを特徴とする建設機械のフロアマット構造。
【請求項4】
請求項3において、
前記当接面とシール部材のうちの一方に凸部、他方に該凸部に合わせた凹部が形成されている
ことを特徴とする建設機械のフロアマット構造。
【請求項5】
請求項2乃至4のいずれかにおいて、更に、
前記フロアマットの側面部の前記当接面の下部に前記ドアの内側に向かう突起部が設けられている
ことを特徴とする建設機械のフロアマット構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−153472(P2011−153472A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−15975(P2010−15975)
【出願日】平成22年1月27日(2010.1.27)
【出願人】(502246528)住友建機株式会社 (346)
【出願人】(390001579)プレス工業株式会社 (173)
【Fターム(参考)】