説明

建設機械の排ガス浄化システム

【課題】複数のディーゼルエンジンを備えた建設機械でDPF再生を行う時間および頻度が増大することを抑制する。
【解決手段】排ガス浄化システム1は、第1エンジン11a及び第2エンジン11b(複数のディーゼルエンジン)と、第1DPF13a及び第2DPF13b(フィルタ)と、第1エンジン11a側および第2エンジン11b側それぞれの再生装置とを備える。第1DPF13a及び第2DPF13bは、第1エンジン11a及び第2エンジン11bそれぞれの排気系に配置される。前記再生装置は、第1DPF13a及び第2DPF13bそれぞれに(フィルタごとに)設けられる。また、排ガス浄化システム1では、一の再生装置が一のDPFの再生を開始した時、他の再生装置も他のDPFの再生を開始する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設機械のディーゼルエンジンの排気ガスを浄化する排ガス浄化システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1及び2に記載されている排ガス浄化システムは、ディーゼルエンジン(以下、単に「エンジン」という)の排気ガスを浄化するフィルタ(DPF、Diesel Particulate Filter)を備える。DPFは、エンジンの排気ガスに含まれる粒子状物質(すす)を捕集する。DPFに捕集された粒子状物質は、エンジンに負荷を掛けて排気ガスの温度を上昇させることで焼却除去される(以下「DPF再生」という)。なお、DPF再生を行うための排ガス浄化システムによる制御を「DPF再生制御」という。
【0003】
DPF再生制御は、建設機械のオペレータ(操作者)が手動で指示することで開始される場合がある。また、特許文献1の図5(S−12)及び特許文献2の図4(S120)には、DPFに堆積した粒子状物質の量(以下、「堆積レベル」という)が所定値以上になる(または所定値を超える)とDPF再生制御が開始される技術が記載されている。
【0004】
この排ガス浄化システムを備えた建設機械は、エンジンを駆動源とするアクチュエータを備える。DPF再生制御時には、上述したようにエンジンに負荷が掛けられているので、オペレータが意図しない動作をアクチュエータがするおそれがある。そこで、特許文献1の図5(S−11)及び特許文献2の図4(S100)には、DPF再生制御中にアクチュエータの動作を規制する技術が記載されている。
【0005】
特許文献3の図2等には、2基のエンジンが搭載された建設機械が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−166840号公報
【特許文献2】特開2009−79501号公報
【特許文献3】特開2004−257000号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献3に記載の2基のエンジンを備えた建設機械に、特許文献1及び2に記載の排ガス浄化システムを単純に2基搭載したとする。すると、図5に示すように、第1エンジン側のDPF再生制御と、第2エンジン側のDPF再生制御とが別個に行われることになる。さらに詳しくは、第1エンジン側の第1DPFの堆積レベルがしきい値T1に達すると(図5の符号A及びC参照)、第1DPFでDPF再生が行われる。第2DPFの堆積レベルがしきい値T2に達すると(図5の符号B参照)、第2DPFでDPF再生が行われる。なお、各DPFに粒子状物質が堆積していく速さは2基のエンジンそれぞれの負荷状態によって異なるので、各DPFの堆積レベルが同時にしきい値T1及びT2に達することは通常はない。このように、第1DPFと第2DPFとで別個にDPF再生制御が行われると、1基のエンジンのみ備えた建設機械の排ガス浄化システムに比べ、DPF再生を行う時間が増えるとともにDPF再生を行う頻度が高くなる。
【0008】
また、上述したように、DPF再生中にアクチュエータの動作が規制される場合がある。この場合は次の問題がある。上記の排ガス浄化システムではDPF再生を行う時間が増えるので、アクチュエータの動作が規制される時間が増える。その結果、建設機械での作業を止めて待つ時間(図5の「再生待ち」の時間)が増え、建設機械の稼働率が低下する。また、上記の排ガス浄化システムではDPF再生を行う頻度が高くなるので、建設機械での仕事を細切れに止めて待つことになり煩わしい。
【0009】
また、上記の排ガス浄化システムではDPF再生を行う頻度が高くなる。よって、建設機械のオペレータが手動で指示することでDPF再生制御が開始される場合は、オペレータが頻繁に上記指示のための操作をすることになり煩わしい。
【0010】
そこで本発明は、複数のディーゼルエンジンを備えた建設機械でDPF再生を行う時間および頻度が増大することを抑制できる、建設機械の排ガス浄化システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の建設機械の排ガス浄化システムは、複数のディーゼルエンジンと、フィルタと、再生装置とを備える。前記フィルタは、複数の前記ディーゼルエンジンそれぞれの排気系に配置され、排気ガス中に含まれる粒子状物質を捕集する。前記再生装置は、前記フィルタに堆積した前記粒子状物質を焼却除去して当該フィルタを再生する装置であって、当該フィルタごとに設けられている。また、一の前記再生装置が一の前記フィルタの再生を開始した時、他の前記再生装置も他の前記フィルタの再生を開始する。
【発明の効果】
【0012】
本発明では、複数のディーゼルエンジンを備えた建設機械でDPF再生を行う時間および頻度が増大することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】建設機械の排ガス浄化システムのブロック図である。
【図2】図1に示す排ガス浄化システムの動作のフローチャートである。
【図3】図2に示すDPF再生完了判断ステップS30のフローチャートである。
【図4】図1に示す排ガス浄化システムの動作を示すタイミングチャートである。
【図5】2基のエンジンを備えた建設機械に従来の排ガス浄化システムを搭載した場合の図4相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図1〜図4を参照して建設機械の排ガス浄化システム1の実施形態を説明する。
【0015】
建設機械の排ガス浄化システム1を図1に示す。排ガス浄化システム1が設けられる建設機械は、例えば移動式クレーン等である。排ガス浄化システム1は、主に、エンジン周辺部10と、油圧回路20と、コントローラ30とを備える。エンジン周辺部10は、第1エンジン11a及び第2エンジン11b(複数のディーゼルエンジン)を備える。第1エンジン11aの周辺には、第1エンジン制御ユニット12aと、第1DPF13a(フィルタ)と、第1ポンプ14aとが設けられる。第2エンジン11bの周辺には、第2エンジン制御ユニット12bと、第2DPF13b(フィルタ)と、第2ポンプ14bとが設けられる。油圧回路20は、第1ポンプ14aに接続された第1負荷掛け装置22aと、第2ポンプ14bに接続された第2負荷掛け装置22bと、第1ポンプ14a及び第2ポンプに接続されたアクチュエータ23とを備える。コントローラ30は、第1エンジン関連制御装置30aと、第2エンジン関連制御装置30bとを備える。第1エンジン関連制御装置30aは、第1負荷掛け指令装置32aと、第1DPF再生要否判断手段31aとを備える。第2エンジン関連制御装置30bは、第2負荷掛け指令装置32bと、第2DPF再生要否判断手段31bとを備える。また、排ガス浄化システム1は、コントローラ30に接続された手動再生開始ボタン41を備える。
【0016】
(第1エンジン関連の構成)
第1エンジン11a(ディーゼルエンジン)は、アクチュエータ23の駆動源である。第1エンジン11aは、炭素化合物を含む粒子状物質(すす)を含んだ排気ガスを排出する。
【0017】
第1エンジン制御ユニット12aは、第1エンジン11aの動作を制御する装置(ECU、Engine Control Unit)である。第1エンジン制御ユニット12aは、第1DPF再生要否判断手段31aに、第1堆積レベル信号52a(後述)を出力する。
【0018】
第1DPF13a(フィルタ)は、第1エンジン11aの排気系(排気管など)に配置され、第1エンジン11aの排気ガス中に含まれる粒子状物質を捕集するフィルタである。第1DPF13aに捕集されて堆積した粒子状物質の堆積量の度合い(堆積レベル)は、次のように検出または推測される。
例えば、第1DPF13aの堆積レベルは、図示しないセンサで検出される。このセンサは、例えば、第1DPFの上流側(第1エンジン11a側)の圧力と下流側の圧力(大気圧など)との差圧を検出する。このセンサから第1エンジン制御ユニット12aに検出結果(第1計測信号51a)が出力される(コントローラ30に出力しても良い)。
また例えば、第1DPF13aの堆積レベルは、第1エンジン11aの運転状況に基づき推測される。例えば、前記堆積レベルは、第1エンジン11aの動作時間または(及び)燃料消費量などに基づき、第1エンジン制御ユニット12aにより推測される。
上記のように検出または推測された堆積レベルに基づく第1堆積レベル信号52aは、第1エンジン制御ユニット12aから第1DPF再生要否判断手段31aに出力される。なお、第1DPF13aの温度を図示しないセンサで計測し、この計測結果をDPF再生制御等に用いても良い。
【0019】
第1ポンプ14aは、第1エンジン11aにより駆動され、第1負荷掛け装置22aを介してアクチュエータ23に作動油を供給する、例えば可変容量型油圧ポンプである。
【0020】
第1負荷掛け装置22aは、第1ポンプ14aの吐出圧を上昇させ、その結果、第1エンジン11aに負荷を掛ける装置である(詳細は後述)。
【0021】
アクチュエータ23は、第1エンジン11aを駆動源とする油圧アクチュエータである。アクチュエータ23は、第1エンジン11aにより駆動された第1ポンプ14aから供給された作動油により駆動する。アクチュエータ23は、建設機械の作業(仕事)を行うものである。建設機械が移動式クレーンの場合、アクチュエータ23は例えば、吊荷の巻上げ及び巻下げ用のウインチ、ブームの起伏用のウインチまたはシリンダ、上部旋回体の旋回用のモータ、走行用のモータ、などである。なお、アクチュエータ23は、第1エンジン11aのみを駆動源としても良く、また、第1エンジン11aおよび第2エンジン11bを駆動源としても良い。
【0022】
第1DPF再生要否判断手段31aは、第1DPF13a(及び第2DPF13b)のDPF再生を行うか否かを判断する。第1DPF再生要否判断手段31aは、第1エンジン制御ユニット12aから入力された堆積レベル(第1堆積レベル信号52a)がしきい値T1以上の場合、「DPF再生を行う」と判断する。第1DPF再生要否判断手段31aは、手動再生開始ボタン41から手動再生開始信号55が入力された場合、「DPF再生を行う」と判断する。「DPF再生を行う」と判断した場合、第1DPF再生要否判断手段31aは、第1負荷掛け指令装置32a、第1エンジン制御ユニット12a、及び第2DPF再生要否判断手段31bそれぞれに第1再生制御開始信号53aを出力する。また、第2DPF再生要否判断手段31bが第2DPF13bの「DPF再生を行う」と判断した場合、第2DPF再生要否判断手段31bから第1DPF再生要否判断手段31aへ第2再生制御開始信号53bが入力される。
【0023】
第1負荷掛け指令装置32aは、第1負荷掛け装置22aに負荷掛けを行う旨の指令をする。第1負荷掛け指令装置32aは、第1DPF再生要否判断手段31aから第1再生制御開始信号53aが入力された場合、第1負荷掛け指令信号54aを第1負荷掛け装置22aに出力する。
【0024】
(第1DPFのDPF再生制御)
排ガス浄化システム1は、第1DPF13aに堆積した粒子状物質を焼却除去して第1DPF13aを再生する(排ガス浄化システム1は再生装置(後述)を備える)。具体的には、第1DPF13aのDPF再生制御は次のように行われる。上述したように、第1DPF13aでの堆積レベルがしきい値T1以上になると、第1DPF再生要否判断手段31aが「DPF再生を行う」と判断し、第1負荷掛け指令装置32aが第1負荷掛け装置22aに負荷掛けを行う旨を指令し、第1負荷掛け装置22aが第1ポンプ14aの吐出圧を上昇させる。すると、第1ポンプ14aを駆動する第1エンジン11aに掛かる負荷が増加し、第1エンジン11aの排気温度が上昇する。そして、第1DPFに堆積した粒子状物質が焼却除去される。なお、前記「再生装置」はDPF再生制御を行う装置である。具体的には例えば、上記のDPF再生制御を行っている状態の、第1エンジン11a、第1ポンプ14a、及び第1負荷掛け装置22aが「再生装置」である。
【0025】
第1エンジン11aへの負荷掛けは、上記以外の動作で行っても良い。例えば、第1ポンプ14aの容量を増やして負荷掛けをしても良い(この場合「再生装置」は第1エンジン11a及び第1ポンプ14aである)。また例えば、第1エンジン11aの回転数を上げることで負荷掛けをしても良い(この場合「再生装置」は第1エンジン11aである)。なお、上記のように第1エンジン11aに負荷を掛けることに加えて、第1DPF13aに堆積した粒子状物質を燃焼させるための油を第1DPF13aの上流側で噴射する(ポスト噴射を行う)ことで、排気ガスの温度をさらに上昇させても良い。
【0026】
(第2エンジン関連の構成、および、第2DPFのDPF再生制御)
第2エンジン11bに関連する構成は、上述した第1エンジン11aに関連する構成と同様である。第2DPF13bのDPF再生制御は、上述した第1DPF13aのDPF再生制御と同様に行われる。なお、第1エンジン11a側の、第1計測信号51a、第1堆積レベル信号52a、第1再生制御開始信号53a、及び第1負荷掛け指令信号54aは、第2エンジン11b側の、第2計測信号51b、第2堆積レベル信号52b、第2再生制御開始信号53b、及び第2負荷掛け指令信号54bに対応する。
【0027】
(手動再生開始ボタン)
手動再生開始ボタン41は、建設機械のオペレータがDPF再生を手動で開始させる手段であり、例えば建設機械の運転席に設置される。手動再生開始ボタン41は、第1DPF再生要否判断手段31a及び第2DPF再生要否判断手段31bに手動再生開始信号55を出力する。なお、手動再生開始ボタン41は、ボタン以外のスイッチ(レバーなど)に変形しても良い。また、手動再生開始ボタン41は設けなくても良い。
【0028】
(排ガス浄化システム1の動作(フローチャート))
次に、図2及び図3に示すフローチャートを参照して(上述した各構成要素および各信号については図1参照)、排ガス浄化システム1の動作を説明する。この動作の概略は次の通りである。まず、図2に示すように、DPF再生制御を開始する条件を満たすか否かの判断等を行う(ステップS11〜S14)。次に、第1DPF13aのDPF再生を開始するとともに第2DPF13bのDPF再生を開始する(ステップS21及びS22)。次に、図3に示すように、第1DPF13aと第2DPF13b両方の再生が完了したか否かの判断を行う(ステップS31〜S52)。以下、この動作を詳細に説明する。
【0029】
ステップS11では、図2に示すように、手動でDPF再生を開始するか否かが判断される。具体的には、手動再生開始ボタン41からコントローラ30に手動再生開始信号55が入力されたか否かが判断される。手動でDPF再生を開始する場合(YES)、ステップS14へ進む。手動でDPF再生を開始しない場合(NO)、ステップS12へ進む。
【0030】
ステップS12では、第1DPF13aの堆積レベルがしきい値T1以上か否かが判断される。この判断は、第1堆積レベル信号52aに基づいて第1DPF再生要否判断手段31aが行う。堆積レベルがしきい値T1以上の場合(YES)、ステップS14へ進む。堆積レベルがしきい値T1未満の場合(NO)、ステップS13へ進む。
【0031】
ステップS13では、第2DPF13bの堆積レベルがしきい値T2以上か否かが判断される。堆積レベルがしきい値T2以上の場合(YES)、ステップS14へ進む。堆積レベルがしきい値T2未満の場合(NO)、ステップS11へ戻る。
【0032】
ステップS14では、DPF再生開始不都合があるか否かが判断される。例えば下記(1)〜(4)等の場合に「DPF再生開始不都合がある」とコントローラ30が判断する。(1)建設機械のオペレータがアクチュエータ23を操作中の場合。この場合にDPF再生制御を開始すると、第1エンジン11a及び第2エンジン11bの負荷状態が急変し、アクチュエータ23がオペレータの意図しない動きをしてしまうからである(2)第1エンジン11aまたは第2エンジン11bが暖機されていない場合。焼き付きを抑制するためである。(3)建設機械の分解中や組み立て中の場合。(4)DPF再生を開始させないことをスイッチ等(図示なし)でオペレータが指令している場合など。
DPF再生開始不都合がある場合(YES)、ステップS11へ戻る。DPF再生開始不都合がない場合(NO)、ステップS21へ進む。
【0033】
ステップS21では、第1DPF13aのDPF再生制御を開始する。また、ステップS22では、第2DPF13bのDPF再生制御を開始する。すなわち、一の再生装置が一のフィルタの再生を開始した時、他の再生装置も他のフィルタの再生を開始する。さらに詳しくは、第1エンジン11a側の再生装置(第1負荷掛け装置22a等)が第1DPF13aの再生を開始した時、第2エンジン11b側の再生装置(第2負荷掛け装置22b等)も第2DPF13bの再生を開始する。同様に、第2エンジン11b側の再生装置が第2DPF13bの再生を開始した時、第1エンジン11a側の再生装置も第1DPF13aの再生を開始する。次に、ステップS30へ進む。
【0034】
DPF再生完了判断ステップS30では、図3に示すように、第1DPF13a及び第2DPF13b両方のDPF再生制御が完了したか否か等が判断される。なお、下記の各判断はコントローラ30の、例えば第1DPF再生要否判断手段31aまたは第2DPF再生要否判断手段31bが行う。
【0035】
ステップS31では、第1DPF13aのDPF再生制御が終了したか(ステップS34を経たか)否かが判断される。この判断にはフラグ1が用いられる。フラグ1は、第1DPF13aのDPF再生制御が終了している場合は1、終了していない場合及び初期値は0である。フラグ1が1の場合(YES)、ステップS32へ進む。フラグ1が0の場合(NO)、ステップS33へ進む。
【0036】
ステップS32では、第2DPF13bのDPF再生制御が終了したか(ステップS44を経たか)否かが判断される。この判断にはフラグ2が用いられる。フラグ2は、第2DPF13bのDPF再生制御が終了している場合は1、終了していない場合及び初期値は0である。フラグ2が1の場合(YES)、ステップS51へ進む。フラグ2が0の場合(NO)、ステップS41へ進む。
【0037】
ステップS33では、第1DPF13aのDPF再生が完了したか否かが判断される。具体的には例えば、第1DPF13aの堆積レベルが所定値以下となったときに「DPF再生が完了した」と第1DPF再生要否判断手段31aが判断する。この判断は、DPF再生を行った時間などに基づいて行っても良い。第1DPF13aのDPF再生が完了していない場合(NO)、ステップS41へ進む。第1DPF13aのDPF再生が完了した場合(YES)、第1DPF13aのDPF再生制御を終了し(ステップS34)、フラグ1を1に設定し(ステップS35)、ステップS41へ進む。
【0038】
ステップS41及びS42では、上述したステップS31及びS32とほぼ同様の判断がされる。第1DPF13a及び第2DPF13bのDPF再生制御が終了している場合(ステップS34及びS44を経た場合)(ステップS41及びS42でYES)、ステップS51へ進む。第2DPF13bのDPF再生制御が終了し(ステップS41でYES)、かつ、第1DPF13aのDPF再生制御が終了していない場合(ステップS42でNO)、ステップS31へ戻る。第2DPF13bのDPF再生制御が終了していない場合(ステップS41でNO)、ステップS43へ進む。
【0039】
ステップS43では、第2DPF13bのDPF再生が完了したか否かが判断される。この判断は、第1DPF13aのDPF再生の完了の判断(ステップS33)と同様に行われる。第2DPF13bのDPF再生が完了していない場合(NO)、ステップS31へ戻る。第2DPF13bのDPF再生が完了した場合(YES)、第2DPF13bのDPF再生制御を終了し(ステップS44)、フラグ2を1に設定し(ステップS45)、ステップS31へ戻る。
【0040】
ステップS51ではフラグ1を0に設定する。ステップS52ではフラグ2を0に設定する。そして、DPF再生完了判断ステップS30を終了し、図2に示す制御を終了する。
【0041】
(アクチュエータ23の動作の規制)
また、排ガス浄化システム1では、第1DPF13a及び第2DPF13bのDPF再生を再生装置が開始した時(ステップS21及びS22)から、両方の再生装置が第1DPF13a及び第2DPF13bの再生を完了するまで(ステップS34及びS44を経るまで)アクチュエータ23の動作が規制される。この規制は、DPF再生制御中にアクチュエータ23がオペレータの意図しない動作をすることを抑制するために行われる。この規制は、例えばコントローラ30のアクチュエータ動作規制手段(図示なし)などにより行われる。
【0042】
(排ガス浄化システム1の動作(タイミングチャート))
次に、図4に示すタイミングチャートを参照して(上述した各構成要素は図1、各ステップ図2及び図3参照)、排ガス浄化システム1の動作の推移を説明する。
【0043】
時刻t1の時、第1DPF13aの堆積レベルがしきい値T1である(図2のステップS12でYES)。この時、第1DPF13aのDPF再生制御が開始される(図2のステップS21)。また、この時、第2DPF13bの堆積レベルはしきい値T2未満である。しかし、第2DPF13bのDPF再生制御も開始される(図2のステップS22)。これらのDPF再生制御の開始とともに、アクチュエータ23の動作が規制される。すなわち、建設機械の稼動状態が「再生待ち」となる。
【0044】
時刻t2の時、第2DPF13bのDPF再生が完了し(図3のステップS43でYES)、第2DPF13bのDPF再生制御が終了する(図3のステップS44)。
【0045】
時刻t3の時、第1DPF13aのDPF再生が完了し(図3のステップS33でYES)、第1DPF13aのDPF再生制御が終了する(図3のステップS34)。また、時刻t3の時、アクチュエータ23の動作の規制が解除される。すなわち、建設機械の稼動状態が「再生待ち」から「稼動」の状態に切り換わる。
【0046】
時刻t3〜t4の間、建設機械が稼動して第1DPF13a及び第2DPF13bに粒子状物質が堆積する。第1エンジン11aと第2エンジン11bとの負荷の状況によって、粒子状物質が堆積するペースが第1DPF13aと第2DPF13bとで異なる場合がある。
【0047】
時刻t4〜t6の間は、時刻t1〜t3とほぼ同様に排ガス浄化システム1が動作する。すなわち、時刻t4の時、第2DPF堆積量がしきい値T2となり(図2のステップS13でYES)、第2DPF13bのDPF再生制御が開始される(図2のステップS22)。また、この時、第1DPF13aの堆積レベルはしきい値T1未満であるが、第1DPF13aのDPF再生制御も開始される(図2のステップS21)。時刻t5の時、第1DPF13aのDPF再生制御が終了する(図3のステップS34)。時刻t6の時、第2DPF13bのDPF再生制御が終了する(図3のステップS44)。また、時刻t4〜t6の間は、アクチュエータ23の動作が規制される。
【0048】
(変形例)
上記実施形態では、第1DPF13aまたは第2DPF13bの堆積レベルがしきい値T1またはT2以上となった場合に、自動的にDPF再生制御を開始した。しかし、DPF再生制御を手動で開始させても良い。具体的には例えば堆積レベルがしきい値T1またはT2以上となった旨を知らせる報知手段(図示なし)による報知に基づいて、オペレータが手動再生開始ボタン41を操作することで、DPF再生制御を開始するようにしても良い(すなわち、ステップS12及びS13の判断を省略しても良い)。
【0049】
(効果1)
この排ガス浄化システム1は、第1エンジン11a及び第2エンジン11b(複数のディーゼルエンジン)と、第1DPF13a及び第2DPF13b(フィルタ)と、第1エンジン11a側および第2エンジン11b側それぞれの再生装置とを備える。第1DPF13a及び第2DPF13bは、第1エンジン11a及び第2エンジン11bそれぞれの排気系に配置され、排気ガス中に含まれる粒子状物質を捕集する。前記再生装置は、第1DPF13a及び第2DPF13bそれぞれに(フィルタごとに)設けられ、DPFに堆積した粒子状物質を焼却除去してDPFを再生する装置である。
また、排ガス浄化システム1では、一の再生装置が一のDPFの再生を開始した時、他の再生装置も他のDPFの再生を開始する(図2のステップS21及びS22、図4の時刻t1及びt4参照)。よって、一のDPFを再生する時刻の範囲と、他のDPFを再生する時刻の範囲とが重複する(図4の時刻t1〜t3及びt4〜t6参照)。したがって、これらが重複しない場合(図5参照)に比べ、DPF再生を行う時間および頻度が増大することを抑制できる。すなわち、エンジンの基数を1基から複数基に増やすことによるDPF再生の時間および頻度の増大を抑制できる。
【0050】
上述したように、排ガス浄化システム1ではDPF再生のための時間の増大を抑制できる。よって、DPF再生中にアクチュエータ23の動作が規制される場合、当該規制される時間が増大することを抑制できる。その結果、アクチュエータ23を用いた作業が不能な時間(図4の「再生待ち」の時間)の増大を抑制できる。すなわち、建設機械の稼働率の低下を抑制できる。
【0051】
上述したように、排ガス浄化システム1ではDPF再生の頻度の増大を抑制できる。よって、手動再生開始ボタン41を用いてオペレータが手動でDPF再生を開始する場合(この場合を「場合α」とする)、手動再生開始ボタン41をオペレータが操作する頻度を抑制できる。その結果、手動再生開始ボタン41の操作の煩わしさを軽減できる。
【0052】
また、排ガス浄化システム1では、一の再生装置が一のDPFの再生を開始した時、他の再生装置も他のDPFの再生を開始する。よって、上記「場合α」の場合、第1DPF13a及び第2DPF13bについて別個に手動再生開始ボタン141a及び141b(図1において二点鎖線で示す)を操作する必要が無い。その結果、手動再生開始ボタン41の操作の煩わしさを軽減できる。
【0053】
(効果2)
排ガス浄化システム1は、第1エンジン11a及び第2エンジン11bを駆動源とするアクチュエータ23を備える。排ガス浄化システム1では、第1DPF13a及び第2DPF13bのDPF再生を開始した時から、第1DPF13a及び第2DPF13b両方のDPF再生が完了するまで(図4の時刻t1〜t3の間、時刻t4〜t6の間)、アクチュエータ23の動作が規制される。この規制により、一のDPFの再生中に他のDPFに粒子状物質が堆積しにくい(図4の時刻t2〜t3及びt5〜t6参照)。よって、一のDPFの再生中に他のDPF側のエンジンのみを用いてアクチュエータ23を動作させた場合(例えば図4の符号D参照)に比べ、第1DPF13aと第2DPF13bとで粒子状物質の堆積量の増減が同期に近づきやすい。よって、DPF再生のための時間および頻度が増大することをより抑制できる。
【0054】
(その他の変形例)
排ガス浄化システム1は、図1に示すように、第1エンジン11a及び第2エンジン11bの2基のエンジンを備えていたが、エンジンを3基以上としても良い。
また、排ガス浄化システム1では、第1DPF13aおよび第2DPF13bのいずれかについてDPF再生を行っている間、アクチュエータ23の動作を規制した。しかし、この規制は行わなくても良い。例えば、DPF再生が完了した方のエンジンを用いてアクチュエータ23を動作させても良い(図4の符号D参照)。
また、図3及び図4に示す各ステップの順序は、発明の効果を奏する範囲内で適宜変更しても良い。例えば、ステップS21とS22とを入れ替えても良い。
【符号の説明】
【0055】
1 排ガス浄化システム
11a 第1エンジン(ディーゼルエンジン)
11b 第2エンジン(ディーゼルエンジン)
13a 第1DPF(フィルタ)
13b 第2DPF(フィルタ)
22a 第1負荷掛け装置(再生装置の一部)
22b 第2負荷掛け装置(再生装置の一部)
23a 第1アクチュエータ
23b 第2アクチュエータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のディーゼルエンジンと、
複数の前記ディーゼルエンジンそれぞれの排気系に配置され、排気ガス中に含まれる粒子状物質を捕集するフィルタと、
前記フィルタに堆積した前記粒子状物質を焼却除去して当該フィルタを再生する装置であって、当該フィルタごとに設けられた再生装置と、を備え、
一の前記再生装置が一の前記フィルタの再生を開始した時、他の前記再生装置も他の前記フィルタの再生を開始する、建設機械の排ガス浄化システム。
【請求項2】
前記ディーゼルエンジンを駆動源とするアクチュエータを備え、
前記再生装置が前記フィルタの再生を開始した時から、両方の当該再生装置が当該フィルタの再生を完了するまで、前記アクチュエータの動作を規制する、請求項1に記載の建設機械の排ガス浄化システム。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2012−188955(P2012−188955A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−51586(P2011−51586)
【出願日】平成23年3月9日(2011.3.9)
【出願人】(304020362)コベルコクレーン株式会社 (296)
【Fターム(参考)】