説明

建設機械の排気構造

【課題】エンジン下方を通る下方空気流の排風性能を高めながら、ポンプ音の漏れを抑制し、かつ、吸音材を設ける場合に、少ない吸音材で高い吸音効果を確保できるとともに、機器の搭載性を改善する。
【解決手段】ファン42の回転により、エンジン下方の通風隙間Sを通る下方空気流を含めてファン側を吸気側、油圧ポンプ側を排気側とする冷却用の空気流を生成する建設機械において、エンジンルーム排気側の床に排出口49を設けるとともに、この排出口49の上に、下方空気流をエンジンルーム外に排出する中空体としての排気ダクト50を、油圧ポンプ44を排出口49に対して遮蔽する状態で排気側に配置した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はショベル等の建設機械において、エンジンルームにおけるエンジン下方を流れる下方空気流を排出する排気構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ショベルを例にとって背景技術を説明する。
【0003】
ショベルは、図8に示すように下部走行体1上に上部旋回体2が旋回自在に搭載され、この上部旋回体2のベースとなるアッパーフレーム3上にキャビン4を含む各種設備、機器が搭載されるとともに、同フレーム3の前部に作業アタッチメント(掘削アタッチメント)5が装着されて構成される。図8中、CWはアッパーフレーム後端部に装着されたカウンタウェイトである。
【0004】
なお、この明細書においては、キャビン4の位置を左側前部とし、これを基準に「前後」「左右」の方向性をいうものとする。
【0005】
また、図及び説明の簡略化のために本発明と直接関係のないアッパーフレーム各部の細かな図示、説明を省略する。
【0006】
アッパーフレーム3の後部には、エンジン6が収容されるエンジンルーム7が設けられている。
【0007】
図9はこのエンジンルーム7内の機器配置を背面側から見た模式的断面図である。
【0008】
同図に示すようにエンジンルーム7は、アッパーフレーム底板8を床として、パネル材等のエンジンガード部材9や、図8に示すカウンタウェイトCW等で囲まれた左右方向に長い空間として形成され、エンジン6がこのエンジンルーム7内に図示しないマウント部材を介して左右方向に設置される。
【0009】
一方、アッパーフレーム底板8の車幅方向の中間部には、補強部材とアタッチメント取付部材とを兼ねる左右一対の縦板10,11が間隔を置いて、かつ、前後方向のほぼ全長に亘って垂直に設けられ、エンジン6がこの縦板10,11よりも上方に設置される。
【0010】
これにより、エンジンルーム7内におけるエンジン6の下方に、空気が通過し得る通風隙間Sが形成される。
【0011】
また、エンジン6の片側(右側)にファン12及び熱交換器(ラジエータ、オイルクーラ等)13、反対側(左側)に油圧ポンプ14がそれぞれ設けられ、ファン12の回転により、右側上面壁に設けられた吸気口15から外部空気が取り込まれて、エンジンルーム7内を右側から左側に流れる冷却用の空気流が生成され、この空気流によって熱交換器13及びエンジン6が冷却される。
【0012】
上記空気流のうち、図9中に矢印で示すように通風隙間Sを通る下方空気流の排出性能を良くする技術として特許文献1に示されたものが公知である。
【0013】
この公知技術を図9によって説明する。
【0014】
油圧ポンプ14からミスト状に漏洩・飛散した油がエンジン6(正確にはマフラー16を含むエンジン排気系)に降りかかることのないように、エンジンルーム7内の左側(油圧ポンプ14側)に、エンジン6と油圧ポンプ14とを仕切る防火壁17が設けられるとともに、この防火壁17の下端とアッパーフレーム底板8との間に風路形成部材材18が取付けられている。
【0015】
この風路形成部材18は、上部が水平、下部が垂直となった逆L字形に形成され、この風路形成部材18と左縦板10とアッパーフレーム底板8とで、通風隙間Sに連通する風路19が形成されるとともに、風路形成部材18及び防火壁17によりエンジンルーム7の左側に排気室20が区画形成される。
【0016】
また、風路形成部材18の垂直部分に風路出口21が開口形成されるとともに、排気室20の下面(アッパーフレーム底板8)に下向きに開口する下部排気口22、上面(エンジンガード部材9の上面壁)に上部排気口23がそれぞれ設けられている。
【0017】
こうして、通風隙間Sを通過した下方空気流が、風路19、風路出口21を通って排気室20に入り、両排気口22,23からエンジンルーム外部に排出されるように構成されている。
【0018】
この構成により、下方空気流の排気側の流れを滑らかにして排風性能を向上させることとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】特開2005−186910号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
ところが、上記公知技術では、油圧ポンプ14が防火壁17を貫通して排気室20に入り込み、両側排気口22,23を通して外部から丸見えとなる構成、すなわち、ポンプ音を外部に対して全く遮蔽できない構成となっているため、油圧ポンプ14から外部に直接出る「直接音」を含めて、外部へのポンプ音の漏れが大きくなるという問題があった。
【0021】
また、このポンプ音の漏れをグラスウール等の吸音材で低減しようとする場合に、排気口22,23付近を含めた排気室20の広い範囲に吸音材を設けなければ十分な吸音効果が得られない。
【0022】
このため、吸音材の使用量が多くなってコスト高となるだけでなく、吸音材を排気側の広い範囲に設けることで、排気側に設置される図示しない機器のサイズや位置が制限される等、機器の搭載性が悪くなるという問題があった。
【0023】
そこで本発明は、下方空気流の排風性能を高めながら、ポンプ音の漏れを抑制し、かつ、吸音材を設ける場合に、少ない吸音材で高い吸音効果を確保できるとともに、機器の搭載性を改善することができる建設機械の排気構造を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0024】
上記課題を解決する手段として、本発明においては、エンジンルーム内に収容されたエンジンの片側にファン、反対側に油圧ポンプをそれぞれ設け、上記ファンの回転により、上記エンジンの下方に形成された通風隙間を通る下方空気流を含めて上記ファン側を吸気側、上記油圧ポンプ側を排気側とする冷却用の空気流を生成するように構成された建設機械の排気構造において、上記エンジンルームの排気側の床に設けられた排出口と、上記下方空気流をエンジンルーム外に排出する排気ダクトを備え、この排気ダクトは、
(A) 上部に空気を導入する空気入口、下部に空気出口をそれぞれ有するとともに、上記空気入口と空気出口の間が風路となった中空体として形成し、
(B) 上記空気入口から導入した空気を、上記空気出口から上記排出口を通してエンジンルーム下方に排出する状態で、かつ、上記油圧ポンプを上記排出口に対して遮蔽する状態で排気側に配置した
ものである。
【0025】
この構成によれば、中空体としての排気ダクトを、油圧ポンプを排出口(外部)に対して遮蔽する状態でエンジンルームの排気側に設けたから、下方空気流をこの排気ダクトを通してエンジンルーム外に効率良く排出しながら、ポンプ音の排出口からの漏れを抑制することができる。
【0026】
また、吸音材を設ける場合に、ダクト内面という限られた範囲に集中して設ければよいため、少ない吸音材で高い吸音効果を確保できるとともに、排気側の機器のサイズや位置の制限が緩やかとなり、機器の搭載性が良くなる。
【0027】
この場合、上記排気ダクトの風路を、少なくとも一つの曲げ部を備えた曲折状に形成するのが望ましい(請求項2)。
【0028】
こうすれば、曲折形状によってダクト内での音の反射・減衰効果が高くなるため、ポンプ音の漏れを一層抑制することができる。
【0029】
さらに本発明においては、上記排気ダクトを、上記排出口を通して外部から上記油圧ポンプが直視できない状態で配置するのが望ましい(請求項3)。
【0030】
こうすれば、「直接音」を完全に防止できるため、騒音低減効果がさらに高くなる。
【0031】
また本発明においては、上記エンジンルーム内の排気側に、上記エンジンと上記油圧ポンプとを仕切る防火壁を設け、上記排気ダクトを、上記防火壁よりも下方に設置するのが望ましい(請求項4)。
【0032】
この構成によれば、防火壁が下方空気流の抵抗となるおそれがないため、排気性能(風量性能)を良くすることができる。
【0033】
この場合、下部走行体上に上部旋回体を搭載し、この上部旋回体を構成するアッパーフレームの車幅方向の中央部に前後方向に延びる左右一対の縦板を設けるとともに、上記アッパーフレームの後部に上記エンジンルームを形成し、上記エンジンを上記エンジンルーム内に左右方向に設置する一方、上記排気ダクトを排気側の縦板よりも上記下方空気流の下流側に配置し、かつ、上記防火壁を、上記排気側の縦板の上端との間に、上記通風隙間に通じる排風口が形成される状態で設けるのが望ましい(請求項5)。
【0034】
こうすれば、ショベルのようにエンジンルーム内の左右両側に縦板が存在する機械において、排気側の縦板が下方空気流の障害とならず、良好な流れを確保することができる。
【0035】
さらにこの場合、上記排気ダクトの空気入口と上記排風口の各下縁をほぼ同じ高さ位置に設定するのが望ましい(請求項6)。
【0036】
こうすれば、通風隙間から排風口に出た下方空気流がほぼ水平な流れで排気ダクトに導入されるため、通風隙間から排気ダクトに導入される経路での通風抵抗が少なく、排風性能の向上に寄与する。
【0037】
また、本発明においては、請求項1〜5のいずれかの構成において、上記排気ダクトを、上辺部と下辺部とこれらをつなぐ縦辺部とから成るコの字形に形成し、上記上辺部と下辺部との間に上記油圧ポンプを挟み込む状態で配置するのが望ましい(請求項7)。
【0038】
こうすれば、油圧ポンプのサイズ、位置に変更を加えないで排気ダクトを設置することができる。
【0039】
また、空気入口を、上記のようにコの字の上辺部の広い範囲に亘る大開口面積をもって形成することができるため、排気ダクトの吸い込み空気量を増加させることができる。
【0040】
さらに、空気入口と空気出口の間の風路の長さを長くとることができるため、ポンプ騒音低減効果を高めることができる。
【0041】
一方、上記排気ダクトを、上記エンジンルームの外周に沿って、エンジンルーム外周の内側に設けるのが望ましい(請求項7)。
【0042】
こうすれば、排気ダクトを設置するためにエンジンルームの外周形状を変える必要がないため、エンジンルームの大幅な設計変更と改造が不要となる。
【発明の効果】
【0043】
本発明によると、下方空気流の排風性能を高めながら、ポンプ音の漏れを抑制し、かつ、吸音材を設ける場合に、少ない吸音材で高い吸音効果を確保し、機器の搭載性を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の第1実施形態を示す排気ダクト付きのアッパーフレームの概略斜視図である。
【図2】同実施形態のアッパーフレーム後部の概略平面図である。
【図3】同アッパーフレームの概略側面図である。
【図4】同実施形態におけるエンジンルーム内の機器配置を示す概略断面図である。
【図5】排気ダクトの斜視図である。
【図6】本発明の第2実施形態を示す図2相当図である。
【図7】本発明の第3実施形態を示す図4相当図である。
【図8】本発明の適用対象であるショベルの概略側面図である。
【図9】公知技術によるエンジンルーム内の機器配置を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
実施形態は、背景技術の説明に合わせてショベルを適用対象としている。
【0046】
第1実施形態(図1〜図5参照)
第1実施形態において、次の点は図8,9に示す従来技術及び公知技術と同じである。
【0047】
(i) アッパーフレーム33の後部に、エンジン36が収容されるエンジンルーム37(図4参照)が設けられる点。
【0048】
(ii) エンジンルーム37は、アッパーフレーム底板38を床として、パネル材等のエンジンガード部材39や、アッパーフレーム後端部に装着されたカウンタウェイト(図示省略)等で囲まれた左右方向に長い空間として形成され、エンジン36がこのエンジンルーム37内に図示しないマウント部材を介して左右方向に設置される点。
【0049】
(iii) アッパーフレーム底板38の車幅方向の中間部に、補強部材とアタッチメント取付部材とを兼ねる左右一対の縦板40,41が間隔を置いて、かつ、前後方向のほぼ全長に亘って垂直に設けられ、エンジン36がこの縦板40,41よりも上方に設置されることにより、エンジンルーム37内におけるエンジン36の下方に、空気が通過し得る通風隙間S(図4参照)が形成される点。
【0050】
(iv) エンジン36の片側(右側)にファン42及び熱交換器(ラジエータ、オイルクーラ等)43、反対側(左側)に油圧ポンプ44がそれぞれ設けられ、ファン42の回転により、右側上面壁に設けられた吸気口45から外部空気が取り込まれて、通風隙間Sを通る下方空気流を含めてエンジンルーム37内を右側から左側に流れる冷却用の空気流が生成され、この空気流によって熱交換器43及びエンジン36が冷却される点。
【0051】
(v) 油圧ポンプ44からミスト状に漏洩・飛散した油がエンジン36(正確にはマフラー46を含むエンジン排気系)に降りかかることのないように、エンジンルーム37内の左側(油圧ポンプ44側)に、エンジン36と油圧ポンプ44とを仕切る防火壁47が設けられる点。
【0052】
なお、図1〜図3、及び第2実施形態を示す図6中、Wはエンジンルーム前方においてアッパーフレーム底板38上に左右方向に設けられた仕切り板である。
【0053】
第1実施形態においては、以上の構成を前提として、防火壁47と排気側(左側)の縦板40の上端との間に、通風隙間Sに通じる排風口48(図1,4参照)が形成されるとともに、エンジンルーム37の排気側、すなわち、排気側(左側)の縦板40よりも下方空気流の下流側の床に排出口49が設けられている。
【0054】
そして、この排出口49の上に排気ダクト50が設けられ、排風口48から出た下方空気流をこの排気ダクト50を通して排出口49から外部に下向きに排出するように構成されている。
【0055】
詳述すると、排気ダクト50は、上端部に空気を導入する空気入口51、下端に排出口49に連通する下向きの空気出口52をそれぞれ有するとともに、これらの間が風路53となった独立した中空体として形成され、空気入口51から導入した空気を、空気出口52から排出口49を通じてエンジンルーム下方に排出する状態で取付けられている。
【0056】
ところで、エンジンルーム37が形成されるアッパーフレーム33の底板38を含めた後端部外周は、通常、旋回半径をできるだけ小さくすることを目的として図1,2に示すように大略円弧状に形成される。
【0057】
従って、エンジンルーム37の後端も、このアッパーフレーム後端部外周に沿う大略円弧状とされる。
【0058】
ここで、第1実施形態では、図1〜図4に示すようにアッパーフレーム底板38の後端部左側が一部切り欠かれて、この切欠部分にダクト座板54が取付けられ、排出口49がこのダクト座板54に設けられるとともに、排気ダクト50が、本来のアッパーフレーム外周から外側に一部突出する状態でこのダクト座板54上に取付けられている。
【0059】
この場合、排気ダクト50は、排出口49を通して外部から油圧ポンプ44が直視できない状態、すなわち、油圧ポンプ44を排出口49に対して遮蔽する状態で設けられている。
【0060】
いいかえれば、このようなポンプ遮蔽状態が得られるように排気ダクト50の形状、サイズ、設置位置が設定されている。
【0061】
また、同ダクト50は、
(a) ポンプ音の漏れ防止効果を強化することを目的として、図示のように一つの曲げ部を備えた背面視くの字形の曲折形状とされ、
(b) 防火壁47よりも下方において、空気入口51と排風口48の各下縁がほぼ同じ高さ位置となる状態で設置されている。
【0062】
なお、通常、排気ダクト50の内面全体にグラスウール等の吸音材(二点鎖線で示す)55が貼り付けられる。
【0063】
このように、中空体としての排気ダクト50を、油圧ポンプ44を排出口49に対して遮蔽する状態でエンジンルーム37の排気側に設けたから、下方空気流をこの排気ダクト50を通してエンジンルーム37外に効率良く排出しながら、ポンプ音の排出口49からの漏れを抑制することができる。
【0064】
また、騒音低減のために吸音材を設ける場合に、吸音材55をダクト内面という限られた範囲に集中して設ければよいため、少ない吸音材55で高い吸音効果を確保できるとともに、排気側の機器のサイズや位置の制限が緩やかとなり、機器の搭載性が良くなる。
【0065】
また、この排気構造によると、次の効果を得ることができる。
【0066】
(I) 排気ダクト50(風路53)を、一つの曲げ部を備えた曲折状に形成したから、ダクト50内での音の反射・減衰効果によってポンプ音の漏れを一層抑制することができる。
【0067】
(II) 排気ダクト50を、排出口49を通して外部から油圧ポンプ44全体が直視できない状態(油圧ポンプ44を排出口49に対して完全に遮蔽する状態)で配置しているため、油圧ポンプ44から排気ダクト50及び排出口49を通って外部に直接漏れる「直接音」を確実に防止することができる。このため、騒音低減効果がさらに高くなる。
【0068】
(III) 排気ダクト50を、防火壁47よりも下方に設置したから、防火壁が下方空気流の抵抗となるおそれがない。このため、排気性能(風量性能)を良くすることができる。
【0069】
(IV) 排気ダクト50を排気側の縦板40よりも下方空気流の下流側に配置し、かつ、防火壁47を、排気側の縦板40の上端との間に、通風隙間Sに通じる排風口48が形成される状態で設けたから、この実施形態で挙げたショベルのようにエンジンルーム37内の左右両側に縦板40,41が存在する機械において、排気側の縦板40が下方空気流の障害とならず、良好な流れを確保することができる。
【0070】
(V) 排気ダクト50の空気入口51と排風口48の各下縁をほぼ同じ高さ位置に設定したから、通風隙間Sから排風口48に出た下方空気流がほぼ水平な流れで排気ダクト50に導入される。このため、通風隙間Sから排気ダクト50に導入される経路での通風抵抗が少なく、排風性能の向上に寄与する。
【0071】
第2実施形態(図6参照)
以下の第2及び第3両実施形態については、第1実施形態との相違点のみを説明する。
【0072】
第1実施形態では、排気ダクト50がアッパーフレーム33の後端部外周から外側に一部突出するレイアウトでダクト座板54上に取付けられたのに対し、第2実施形態においては、排気ダクト50が、エンジンルーム37(アッパーフレーム後端部)の、大略円弧状の外周に沿って、エンジンルーム外周の内側に設けられている。
【0073】
こうすれば、排気ダクト50を設置するためにエンジンルーム37の外周形状を変える必要がないため、エンジンルーム37の大幅な設計変更と改造が不要となる。
【0074】
第3実施形態(図7参照)
第3実施形態においては、排気ダクト50が、上辺部50aと下辺部50bとこれらをつなぐ縦辺部50cとから成る背面視コの字形に形成され、上辺部50aと下辺部50bの間に油圧ポンプ44を挟み込む状態で配置されている。
【0075】
なお、この排気ダクト50の空気入口51は、上辺部50aの上面、側面、下面に跨って設けられ、空気出口52は下辺部50bの下面に設けられている。
【0076】
この第3実施形態によれば、油圧ポンプ44のサイズ、位置に変更を加えないで排気ダクト50を設置することができる。
【0077】
また、空気入口51を、上記のようにコの字の上辺部50aの広い範囲に亘る大開口面積をもって形成することができるため、排気ダクト50の吸い込み空気量を増加させることができる。
【0078】
さらに、空気入口51と空気出口52の間の風路53の長さを長くとることができるため、ポンプ騒音低減効果を高めることができる。
【0079】
他の実施形態
(1) 排気ダクト50を二つまたはそれ以上の曲げ部をもった曲折形状としてもよい。
【0080】
(2) 排気ダクト50は、上記各実施形態のように、油圧ポンプ44全体が外部から排出口49を通して全く直視できない状態(油圧ポンプ44を外部に対して完全に遮蔽する状態)で設置するのが望ましいが、実用上、必要なポンプ遮蔽効果(ポンプ音低減効果)を確保し得る範囲で、油圧ポンプ44の一部のみが外部から直視できる状態で設置してもよい。
【0081】
(3) 上記各実施形態では、排気ダクト50を独立した中空体として構成したが、仕切り板Wやエンジンガード部材39、カウンタウェイト等の上部旋回体の構造体を一部に利用して構成してもよい。
【0082】
(4) 本発明はショベルに限らず、ショベルを母体として構成される解体機や破砕機等、アッパーフレーム後部に形成されたエンジンルームにエンジンが設置されるとともに、このエンジンの片側にファン、反対側に油圧ポンプが配置され、エンジン下方の通風隙間を通る下方空気流が生成される建設機械に広く適用することができる。
【符号の説明】
【0083】
33 アッパーフレーム
36 エンジン
37 エンジンルーム
S 通風隙間
38 アッパーフレーム底板
40,41 縦板
42 ファン
44 油圧ポンプ
45 吸気口
47 防火壁
48 排風口
49 排出口
50 排気ダクト
51 空気入口
52 空気出口
53 風路
50a 排気ダクトの上辺部
50b 同、下辺部
50c 同、縦辺部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンルーム内に収容されたエンジンの片側にファン、反対側に油圧ポンプをそれぞれ設け、上記ファンの回転により、上記エンジンの下方に形成された通風隙間を通る下方空気流を含めて上記ファン側を吸気側、上記油圧ポンプ側を排気側とする冷却用の空気流を生成するように構成された建設機械の排気構造において、上記エンジンルームの排気側の床に設けられた排出口と、上記下方空気流をエンジンルーム外に排出する排気ダクトを備え、この排気ダクトは、
(A) 上部に空気を導入する空気入口、下部に空気出口をそれぞれ有するとともに、上記空気入口と空気出口の間が風路となった中空体として形成し、
(B) 上記空気入口から導入した空気を、上記空気出口から上記排出口を通してエンジンルーム下方に排出する状態で、かつ、上記油圧ポンプを上記排出口に対して遮蔽する状態で排気側に配置した
ことを特徴とする建設機械の排気構造。
【請求項2】
上記排気ダクトの風路を、少なくとも一つの曲げ部を備えた曲折状に形成したことを特徴とする請求項1記載の建設機械の排気構造。
【請求項3】
上記排気ダクトを、上記排出口を通して外部から上記油圧ポンプが直視できない状態で配置したことを特徴とする請求項1または2記載の建設機械の排気構造。
【請求項4】
上記エンジンルーム内の排気側に、上記エンジンと上記油圧ポンプとを仕切る防火壁を設け、上記排気ダクトを、上記防火壁よりも下方に設置したことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の建設機械の排気構造。
【請求項5】
下部走行体上に上部旋回体を搭載し、この上部旋回体を構成するアッパーフレームの車幅方向の中央部に前後方向に延びる左右一対の縦板を設けるとともに、上記アッパーフレームの後部に上記エンジンルームを形成し、上記エンジンを上記エンジンルーム内に左右方向に設置する一方、上記排気ダクトを排気側の縦板よりも上記下方空気流の下流側に配置し、かつ、上記防火壁を、上記排気側の縦板の上端との間に、上記通風隙間に通じる排風口が形成される状態で設けたことを特徴とする請求項4記載の建設機械の排気構造。
【請求項6】
上記排気ダクトの空気入口と上記排風口の各下縁をほぼ同じ高さ位置に設定したことを特徴とする請求項5記載の建設機械の排気構造。
【請求項7】
上記排気ダクトを、上辺部と下辺部とこれらをつなぐ縦辺部とから成るコの字形に形成し、上記上辺部と下辺部との間に上記油圧ポンプを挟み込む状態で配置したことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の建設機械の排気構造。
【請求項8】
上記排気ダクトを、上記エンジンルームの外周に沿って、エンジンルーム外周の内側に設けたことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の建設機械の排気構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−79501(P2013−79501A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−218938(P2011−218938)
【出願日】平成23年10月3日(2011.10.3)
【出願人】(000246273)コベルコ建機株式会社 (644)
【Fターム(参考)】