説明

建設機械の操作レバースイッチ装置

【課題】スイッチの共用化を図り、スイッチの個数を増加させることなく、スイッチ機能を増加させる。
【解決手段】運転席19の近傍に設けた操作レバー23bにノブスイッチ24を取り付けた建設機械の操作レバースイッチ装置において、ノブスイッチ24の押圧操作時間を計測する計時手段27と、ノブスイッチ24の押圧操作時間が設定基準時間と比較してノブスイッチ24押圧操作が短押操作又は長押操作のいずれであるかを判断する押圧操作判断手段28と、ノブスイッチ24が短押操作されたときは一のスイッチ機能に動作設定し、且つ、ノブスイッチ24が長押操作されたときは他のスイッチ機能に動作設定するスイッチ機能切替え手段29とを備え、1個のノブスイッチ24で複数のスイッチ機能を動作させるように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は建設機械の操作レバースイッチ装置に関するものであり、特に、操作レバーに設けたスイッチの多機能化を可能にした建設機械の操作レバースイッチ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、油圧ショベル等の建設機械は、下部走行体上に上部旋回体が搭載され、該上部旋回体の前方中央部に作業機が上下回動可能に枢着されていると共に 上部旋回体の前方一側部にキャブが設けられている。図6に示すように、キャブ1内の略中央部には運転席2が設置されていると共に、運転席2の左右両側にはコンソールボックス3,3が配設され、コンソールボックス3,3の上面には、前記作業機等を運転操作するための操作レバー4が設けられる。
【0003】
又、操作レバー4の握持部には各種のスイッチ、例えば、ラジオミュート用スイッチ5が取り付けられる。従って、オペレータは、操作レバー4で作業機等を操縦しながら、ラジオミュートのスイッチ操作を安全に行うことができる(例えば、特許文献1及び2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−322683号公報
【特許文献2】特開2004−346643号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、従来技術では、操作レバーの握持部には、手元でスイッチ操作を行うべく、ラジオミュート用スイッチ等が複数個取り付けられるが、これらスイッチは1個に付き1つのスイッチ機能しか有していない。
【0006】
従って、スイッチ機能を増加したい場合には、それに応じて操作レバーに取り付けるスイッチの個数を増加させなければならない。しかし、操作レバーの握持部の表面積、即ち、スイッチの取り付けスペースが狭小であるので、スイッチの機能を増加させることはできない。加えて、スイッチの個数を増加させた場合は、スイッチの製作費が高騰してコストアップを招くという問題がある。加えて、別のスイッチを設けた場合には、運転を中断してスイッチを押す必要があるという煩わしさがある。
【0007】
そこで、スイッチの共用化を図り、少ない個数のスイッチでスイッチ機能を増加させるために解決すべき技術的課題が生じてくるのであり、本発明はこの課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記目的を達成するために提案されたものであり、請求項1記載の発明は、運転席の近傍に設けた操作レバーに押圧式スイッチが取り付けられた建設機械の操作レバースイッチ装置において、前記押圧式スイッチの押圧時に押圧操作時間を計測する計時手段と、該押圧式スイッチの押圧時間を設定基準時間と比較して該押圧式スイッチの押圧操作が短押操作又は長押操作のいずれであるかを判断する押圧操作判断手段と、前記押圧式スイッチの押圧操作が短押操作の場合には一のスイッチ機能に動作設定し、且つ、該押圧式スイッチの押圧操作が長押操作の場合には他のスイッチ機能に動作設定するスイッチ機能切替え手段とを備え、1つの押圧式スイッチで複数のスイッチ機能を動作できるように構成したことを特徴とする建設機械の操作レバースイッチ装置を提供する。
【0009】
この構成によれば、押圧式スイッチが押圧操作されると、計時手段により押圧式スイッチの操作時間が計測され、該計測値を押圧操作判断手段に送信する。次に、押圧操作判断手段は、押圧式スイッチの押圧時間を設定基準時間と比較することで、押圧式スイッチが短押操作又は長押操作のいずれであるかを判断する。
【0010】
その結果、長押操作の場合には、スイッチ機能切替え手段は、押圧式スイッチに一のスイッチ機能、例えば、ラジオミュートスイッチ機能に動作設定する。又、短押操作の場合には、押圧式スイッチに他のスイッチ機能、例えば、作業機干渉防止一時解除スイッチ機能に動作設定する。依って、1個の押圧式スイッチに複数のスイッチ機能が付与される。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載の発明は、押圧式スイッチは単押操作又は長押操作に応じて複数のスイッチ機能を選択的に動作させることができるので、スイッチの共用化が可能になり、少ない個数のスイッチで複数のスイッチ機能を発揮でき、且つ、スイッチ製作費のコストダウンを図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施例を示し、操作レバースイッチ装置を備えた油圧ショベルを概念的に説明する平面図。
【図2】本発明に係る油圧ショベルのキャブ内を説明する斜視図。
【図3】本発明に係る操作レバーの構成例を説明する斜視図。
【図4】本発明に係る操作レバースイッチ装置の制御装置の構成例を説明するブロック図。
【図5】本発明に係る操作レバースイッチ装置のタイミングチャート。
【図6】従来例を示し、操作レバーの斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、スイッチの共用化を図り、少ない個数のスイッチで各種スイッチ機能を増加させるという目的を達成するために、運転席の近傍に設けた操作レバーに押圧式スイッチが取り付けられた建設機械の操作レバースイッチ装置において、前記押圧式スイッチの押圧時に押圧操作時間を計測する計時手段と、該押圧式スイッチの押圧時間を設定基準時間と比較して該押圧式スイッチの押圧操作が短押操作又は長押操作のいずれであるかを判断する押圧操作判断手段と、前記押圧式スイッチの押圧操作が短押操作の場合には一のスイッチ機能に動作設定し、且つ、該押圧式スイッチの押圧操作が長押操作の場合には他のスイッチ機能に動作設定するスイッチ機能切替え手段とを備え、1つの押圧式スイッチで複数のスイッチ機能を動作できるように構成したことにより実現した。
【実施例1】
【0014】
以下、本発明の好適な一実施例を図1乃至図5に従って説明する。図1は、本実施例に係る建設機械としての油圧ショベルを示す。油圧ショベル10の下部走行体11上には、旋回機構12を介して上部旋回体13が旋回自在に搭載されている。又、上部旋回体13の前方一側部にはキャブ14が設けられ、且つ、上部旋回体13の前方中央部にはブーム15、アーム16及びバケット17等から成る作業機Mが上下回動可能に枢着されている。
【0015】
又、図2に示すように、該キャブ14内の左右両側にはコンソールボックス18,18が配設され、該コンソールボックス18,18の間には、オペレータが着座して運転操作を行うための運転席19が設置されている。更に、運転席19のサイドにはラジオ等の音響機器の操作パネル20が設けられ、音響機器のスピーカ21,21は運転席19の背面側にてカバー22で覆って固定されている。
【0016】
前記運転席19の前部一側には、前記作業機M等を駆動操作するための操作レバー23a,23bが設けられている。図3に示すように、操作レバー23bの握持部、例えば、該操作レバー23bの上面部又は側面部には、押圧式スイッチ(以下、「ノブスイッチ」という。)24が取り付けられている。
【0017】
そして、該ノブスイッチ24は1個で2つのスイッチ機能A,B、例えば、キャブ3内に装備したラジオの音量を調整するラジオミュート用スイッチ、並びに、作業機2とキャブ14との干渉を防止する作業機干渉防止一時解除(以下「機械干渉防止解除」と称する。)用スイッチを兼用している。
【0018】
ノブスイッチ24は、作業機干渉防止装置の構成要素である近接センサ25(図1参照)、並びに、前記ラジオに電気的に接続されている。その他、キャブ14内の前部には、カラー液晶ディスプレーから成るモニター31(図4参照)が設置されていると共に、該モニター31には制御装置26が電気的に接続されている。
【0019】
図4は、本発明に係る操作レバースイッチ装置の制御装置26を示す。同図に示すように、該制御装置26は、主としてマイクロコンピュータから成り、計時手段27、押圧操作判断手段28、スイッチ機能切替え手段29及び記憶手段30とを備えている。制御装置26の入力部にはノブスイッチ24が電気的に接続されていると共に、該制御装置26の出力部にはスピーカ21及び近接センサ25が電気的に接続されている。
【0020】
前記計時手段27は、ノブスイッチ24の押圧操作時間を計測する。又、押圧操作判断手段28は、計時手段27で計測されたノブスイッチ24の押圧操作時間を予め設定した基準時間と比較して、ノブスイッチ24が長押操作又は短押操作のいずれの押圧操作が行われたかを判断する。即ち、ノブスイッチ24の押圧操作時間Tが前記基準時間以下であれば短押操作と判断し、又、該基準時間を越えれば長押操作と判断する。
【0021】
更に、スイッチ機能切替え手段29は、押圧操作判断手段28の判断結果に応じて、ノブスイッチ24にラジオミュート用スイッチの機能モード、又は機械干渉防止解除用スイッチの機能モードに切替える。即ち、ノブスイッチ24が長押操作されたと判断したときは、ラジオミュート機能モードに設定し、且つ、ノブスイッチ24が短押操作されたと判断したときは、機械干渉防止解除機能モードに設定する。尚、記憶手段30には各種の制御データ、例えば、操作レバースイッチ装置の動作制御を実行するためのプログラム等が格納されている。
【0022】
従って、ノブスイッチ24の機能選択時に、長押操作又は短押操作のいずれが実行されたかに応じて、1個のノブスイッチ24で複数のスイッチ機能が選択的に動作するように構成されている。尚、操作レバースイッチ装置の操作・動作状況は、前記モニター31によりリアルタイムで画面表示される。
【0023】
次に、図5のタイムチャートを参照しつつ、上記操作レバースイッチ装置によるラジオミュートスイッチ機能及び機械干渉防止解除スイッチ機能について詳述する。尚、本実施例に係るラジオミュートスイッチ機能では、ノブスイッチ24の押圧操作時間が2秒以内であるときに、ラジオミュート調整のオン・オフ状態が相互に切り換えられる(オルタネータ方式)。又、機械干渉防止解除スイッチ機能では、ノブスイッチ24を押圧操作している間は、常時オン状態が持続される(モーメンタリ方式)。
【0024】
いま、図5(a)のタイムチャートに示すように、最初に、ノブスイッチ24がΔT(≦2秒)の操作時間でノブスイッチ24が2回押圧操作され、その後に、操作時間ΔT(>2秒)及びΔTで各々2回ずつ交互にノブスイッチ24が押圧操作されたとする。
【0025】
この場合には、ラジオミュートスイッチ機能は、同図(b)に示すように、1回目の時間ΔTの押圧操作でオン状態に設定され、2回目の時間ΔTの押圧操作でオフ状態に設定される。その後、ラジオミュートスイッチ機能は、3回目の時間ΔTの押圧操作で再度オン状態に設定され、更に、4回目の時間ΔTの押圧操作でオフ状態に設定される。
【0026】
一方、機械干渉防止解除スイッチ機能は、同図(c)に示すように、時間ΔT及びTのいずれの場合でも,ノブスイッチ24を押圧操作している間は、常にオン状態に設定され、ノブスイッチ24の押圧操作を解除するとオフ状態に設定される。
【0027】
叙上の如く本発明によると、ノブスイッチ24が押圧操作されると、計時手段27によりノブスイッチ24の押圧操作時間が計測される。次に、押圧操作判断手段28は、ノブスイッチ24の押圧時間を設定基準値と比較してノブスイッチ24が長押操作又は短押操作の何れの押圧操作がなされたかを判断する。
【0028】
そして、スイッチ機能切替え手段29は、ノブスイッチ24が短押操作されたときにはノブスイッチ24にラジオミュートスイッチとして機能する一方、ノブスイッチ24が短押操作されていないときには機械干渉防止解除スイッチとして機能する。
【0029】
斯くして、ノブスイッチ24は押圧操作時に短押操作されたか否かに応じて、複数のスイッチ機能の1つを選択的に発揮する。従って、1個のノブスイッチ24でラジオミュート用スイッチ及び機械干渉防止解除用スイッチの共用化が可能になり、スイッチ製作費の大幅な低減化が図れると共に、ノブスイッチ24の多機能化が容易に実現される。
【0030】
上記実施例では、ノブスイッチ24を短押操作したときに、ある1つのスイッチ機能(ラジオミュートスイッチ機能)を動作させるようにしたが、ノブスイッチ24を長押操作したときに、更に他の1つのスイッチ機能を動作させるように構成することもできる。
【0031】
なお、本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り種々の改変を為すことができ、そして、本発明が該改変されたものに及ぶことは当然である。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明は、操作レバーに押圧式スイッチを取り付けた操作レバースイッチ装置であれば、建設機械用以外に土木用などの各種機械の操作レバースイッチ装置にも適用することができる。
【符号の説明】
【0033】
14 キャブ
19 運転席
23b 操作レバー
24 押圧式のノブスイッチ
26 操作レバースイッチ装置の制御装置
27 計時手段
28 押圧操作判断手段
29 スイッチ機能切替え手段



【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転席の近傍に設けた操作レバーに押圧式スイッチが取り付けられた建設機械の操作レバースイッチ装置において、前記押圧式スイッチの押圧時に押圧操作時間を計測する計時手段と、該押圧式スイッチの押圧時間を設定基準時間と比較して該押圧式スイッチの押圧操作が短押操作又は長押操作のいずれであるかを判断する押圧操作判断手段と、前記押圧式スイッチの押圧操作が短押操作の場合には一のスイッチ機能に動作設定し、且つ、該押圧式スイッの押圧操作チが長押操作の場合には他のスイッチ機能に動作設定するスイッチ機能切替え手段とを備え、1つの押圧式スイッチで複数のスイッチ機能を動作できるように構成したことを特徴とする建設機械の操作レバースイッチ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−14104(P2011−14104A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−160245(P2009−160245)
【出願日】平成21年7月6日(2009.7.6)
【出願人】(502246528)住友建機株式会社 (346)
【Fターム(参考)】