説明

建設機械の暖機装置

【課題】暖機運転時における作業機の誤動作を確実に防止する。
【解決手段】この建設機械の暖機装置は、ロック検出手段と、レバー状態検出手段としての圧力センサ23と、作動油温度センサ22と、昇温手段としてのコントローラ20と、を備えている。ロック検出手段は作業機の動作を不能にするためのロックレバー6の状態を検出する。圧力センサ23は作業機操作レバー5の操作状態を検出する。作動油温度センサ22は作動油温度を検出する。昇温手段は、ロックレバー6がオン状態であることが検出され、作業機操作レバー5が中立状態であることが検出され、かつ作動油温度が第1設定温度より低いことが検出されたとき、作動油温度を上げるための処理を実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設機械の暖機装置、特に、作業機を有する建設機械の作動油を暖機するための建設機械の暖機装置に関する。
【背景技術】
【0002】
油圧式の作業機を有する油圧ショベル等の建設機械では、低温時の作業機の始動時において、作動油温度が低く粘度が高いために、操作に対して作動遅れが生じ、作業機がスムーズに作動しない場合がある。また、エンジン始動後で作動油温度が上昇した後においても、作業を行っていないアイドリング状態が長く続くと、特に低温環境下では、その間に作動油が冷えてしまう。このような場合には、再稼働時に暖機運転が必要となり、作業効率が低下する。
【0003】
そこで、特許文献1に示されるように、エンジン始動後で作業機の非稼働時において、作動油温度が所定温度以下であれば、油圧ポンプの吐出量を一時的に増大して作動油温度を上昇させる技術が提案されている。
【0004】
また、特許文献2には、建設機械において、油圧ポンプの吐出回路からパイロット操作弁を経てタンクドレンに至る油圧パイロット回路を還流させて暖機運転を行うことが示されており、また、この暖機運転中において、作業機の誤作動を防止するための技術が示されている。この文献に示された装置では、暖機運転の際に、油圧ポンプからパイロット操作弁までの間に設けられている電磁切換弁を、作業機の動作をロックするためのロックレバーの電気回路と関連させている。したがって、この装置では、作業機のアクチュエータがロックされた状態でのみ電磁切換弁が切り換えられて暖機運転が可能となる。このため、この装置では、暖機運転が行われている状態で、誤って通常運転状態に入る操作がなされても、作業機が動作せず、誤動作を防止することができる。
【特許文献1】特開2003−239907号公報
【特許文献2】特開2003−184827号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2に記載された装置では、暖機運転が行われている状態で誤って通常運転状態に入る操作がなされても作業機が動作しないので、誤動作を防止することができる。すなわち、作業機の操作レバーが誤ってニュートラルの状態から作業位置に移動させられても、ロックレバーによってロックされた状態で暖機運転が行われるので、暖機運転時の誤動作を防止することができる。
【0006】
しかし、暖機運転が終了した等によって、ロックレバーのロックを解除するときに、作業機の操作レバーが作業位置に入っていることに運転者が気づかない場合、ロックレバーのロック解除と同時に作業機が誤動作するおそれがある。
【0007】
本発明の課題は、暖機運転時における作業機の誤動作を確実に防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明に係る建設機械の暖機装置は、油圧アクチュエータにより駆動される作業機を有する建設機械の作動油を暖機するための装置であって、ロック検出手段と、レバー状態検出手段と、作動油温度検出手段と、昇温手段と、を備えている。ロック検出手段は作業機の動作を不能にするためのロック機構のオン、オフ状態を検出する。レバー状態検出手段は作業機の操作レバーの操作状態を検出する。作動油温度検出手段は作動油温度を検出する。昇温手段は、ロック検出手段によりロック機構がオン状態であることが検出され、作業レバー状態検出手段で操作レバーが中立状態であることが検出され、かつ作動油温度検出手段で作動油温度が第1設定温度より低いことが検出されたとき、作動油温度を上げるための処理を実行する。
【0009】
ここでは、ロック機構がオン状態であるとともに作業機の操作レバーが中立状態であるときに、作動油温度が第1設定温度より低いことが検出されたときに暖機が実行される。このため、例えば、ロック機構がオン状態の時に作業機操作レバーが中立位置から移動されて操作位置に入っているときには、暖機が実行されない。したがって、暖機終了時等においてロック機構を解除したときに、作業機が誤って作動するのを防止することができる。
【0010】
第2の発明に係る建設機械の暖機装置は、第1の発明の装置において、昇温手段により昇温のための処理を実行させるか否かを外部から指示可能な自動暖機スイッチをさらに備えている。
【0011】
この装置では、オペレータにより自動暖機を行う旨の指示がスイッチによってなされたときに暖機処理が実行される。
【0012】
第3の発明に係る建設機械の暖機装置は、第1又は第2の発明の装置において、エンジン回転数を検出する回転数検出手段をさらに備え、昇温手段は、回転数検出手段が所定の回転数より低いときにエンジン回転数を所定の回転数にするための制御を行った後に作動油温度を上げる処理を実行する。
【0013】
例えばアイドリング時においては、エンジン回転数が最低回転数に抑えられており、作動油の温度を上げるための回転数としては低すぎる場合がある。そこで、暖機を行うに際してエンジン回転数が低すぎる場合は、エンジン回転数を所定の回転数まで上げた後に、暖機処理を実行する。このため、効率の良い暖機処理を行うことができる。
【0014】
第4の発明に係る建設機械の暖機装置は、第1から第3のいずれかの発明の装置において、昇温手段は、作動油を上げるための処理を実行した後に作動油温度が第1設定温度より高い第2設定温度を超えたとき、昇温のための処理を停止する。
【0015】
暖機処理を開始する作動油温度と停止する作動油温度が同じ場合には、ハンチングが発生してしまう場合がある。そこで、この装置では、処理開始のための温度と停止のための温度との差を持たせて、すなわちヒステリシスを持たせてハンチングの発生するのを防止している。
【0016】
第5の発明に係る建設機械の暖機装置は、第1から第4のいずれかの発明の装置において、油圧アクチュエータは建設機械のエンジンにより駆動される油圧ポンプにより作動油圧が供給されるものであり、昇温手段は油圧ポンプの吐出油量を増大させて作動油の温度を上げる。
【0017】
ここでは、油圧ポンプの吐出油量を増大させることによって作動油の温度を上げることができる。
【0018】
第6の発明に係る建設機械の暖機装置は、第1から第4のいずれかの発明の装置において、油圧アクチュエータは建設機械のエンジンにより駆動される油圧ポンプにより作動油圧が供給されるものであり、油圧アクチュエータの非作動時に、油圧ポンプの吐出油をタンクに戻すための閉回路をさらに備え、昇温手段は閉回路の油圧を高くして作動油の温度を上げる。
【0019】
第7の発明に係る建設機械の暖機装置は、第6の発明の装置において、昇温手段は、油圧アクチュエータの非作動時に油圧ポンプの吐出量が低下した場合の現象と同様の現象を強制的に発生させる擬制手段を含み、閉回路の油圧を高くするとともに油圧ポンプの吐出油量を増大させて作動油の温度を上げる。
【0020】
作業機操作レバーが中立位置では、油圧アクチュエータの負荷が変化しない。したがって、吐出量を電子制御によって制御できるようなタイプの油圧ポンプ以外では、原則として油圧ポンプの吐出量を制御することはできない。
【0021】
そこで、この発明では、油圧アクチュエータが非作動であっても、作動してその負荷が増大したような、すなわち油圧ポンプの吐出量が低下したような現象と同様の現象を強制的に発生させている。つまり、油圧アクチュエータが作動して負荷が増大したような現象を擬制している。
【0022】
以上のような擬制処理により、油圧ポンプの吐出油量が増大することになる。このため、閉回路の油圧の上昇とともに吐出油量も増大し、効率よく暖機処理が行える。
【発明の効果】
【0023】
以上のような本発明では、暖機運転時における作業機の誤動作を確実に防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
[第1実施形態]
<全体構成>
図1は、本発明の一実施形態に係る建設機械の暖機装置の構成をブロックで示したものである。図1に示す建設機械は、エンジン1と、エンジン1によって駆動される電子制御式の可変容量型ポンプ2と、このポンプ2によって駆動される作業機用の油圧シリンダ(油圧アクチュエータ)3と、ポンプ2と油圧シリンダ3との間に設けられた制御用のメインバルブ4とを有している。また、この建設機械は、作業機を操作するための作業機操作レバー5と、作業機が作動をするのを防止するためのロックレバー6と、自動暖機スイッチ7と、が設けられている。これらのレバー5,6及び自動暖機スイッチ7は、ともに運転席の近傍に設けられている。なお、自動暖機スイッチ7は、作動油の温度が所定の温度以上に維持されるように自動暖機制御を開始するためのスイッチである。なお、エンジン1には、エンジン回転数を制御するためのガバナ1aが設けられ、油圧ポンプ2には、斜板の傾転角を制御するためのサーボ機構2aが設けられている。
【0025】
また、ポンプ2の吐出側において、メインバルブ4への油圧供給路10から分岐して、タンク11に作動油を戻すリターン油路12,13が設けられている。そして、リターン油路12には圧力制御用のリリーフ弁14が設けられ、リターン油路13にはアンロード弁15が設けられている。そして、油圧ポンプ2、リリーフ弁14、タンク11及びこれらの間に設けられた油路12によって閉回路が形成されている。
【0026】
<暖機装置>
次に、作動油を暖機するための暖機装置に関連する制御回路について説明する。この建設機械は、マイクロコンピュータからなるコントローラ20を有しており、このコントローラ20には、作業機操作レバー5の操作位置を示す信号S1と、ロックレバー6のレバー位置を示す信号S2と、自動暖機スイッチ7からの自動暖機開始信号S3と、作動油温度センサ22からの信号S4と、エンジン回転数センサ21からのエンジン回転数を示す信号S5と、が入力されている。なお、作業機操作レバー5の操作位置を示す信号S1は、メインバルブ4の操作部の圧力を検出する圧力センサ23の出力信号である。
【0027】
コントローラ20は、以上の信号を入力して、エンジンの回転数を制御するための信号S6をエンジンのガバナ1aに出力するとともに、ポンプ2の斜板角度を制御してポンプ容量を制御するための信号S7をサーボ機構2aに出力する。
【0028】
<暖機制御>
以下に、コントローラ20の自動暖機制御について、図2のフローチャートを参照して説明する。この自動暖機制御は、前述のように、作動油の温度を所定温度以上に維持するための制御処理であり、エンジンが回転している状態で実行される。
【0029】
まず、ステップS1では、自動暖機スイッチ7が押されるのを待つ。自動暖機スイッチ7が押された場合には、ステップS1からステップS2に移行する。
【0030】
ステップS2では、ロックレバー6がロック状態であるか否かを判断し、ステップS3では作業機操作レバー5が中立状態であるか否かを判断する。ロックレバー6がロック状態でない場合、すなわち作業機の作動を許可する状態の場合はステップS2からステップS4に移行し、また、作業機操作レバー5が中立状態ではなく、作業位置に操作されている場合にはステップS3からステップS4に移行する。ステップS4では、ロックレバー6がロック状態になっていないか、あるいは作業機操作レバー5が中立状態でないことをオペレータに警告し、ステップS1に戻る。
【0031】
以上のように、自動暖機スイッチ7が押された場合であっても、ロックレバー6がロック状態であり、かつ作業機操作レバー5が中立状態であることを確認して、以降の処理が実行される。そして、自動暖機スイッチ7が押されても処理が実行されず、警告表示がなされた場合には、オペレータは、ロックレバー6の状態及び作業機操作レバー5の位置を確認し、それぞれをロック状態及び中立状態にして、自動暖機スイッチ7を再度押す必要がある。
【0032】
自動暖機スイッチ7が押されたときに、ロックレバー6がロック状態であり、かつ作業機操作レバー5が中立状態である場合には、ステップS2,S3からステップS5に移行する。ステップS5では、作動油温度が予め設定されている設定温度Aより低いか否かを判断する。作動油温度が設定温度A以上である場合には、作動油を昇温する必要がないので、以降の処理を実行せず、そのまま待機する。具体的には、エンジン回転数はアイドリング状態のまま維持するようにエンジンガバナ1aに信号S6が出力され、ポンプ2を最低容量に設定するための信号S7がサーボ機構2aに出力される。
【0033】
作動油温度は所定の周期で検出されており、例えば低温状況下で長時間アイドリング運転が続いたような場合には、油温が設定温度Aより低くなる。このような場合には、ステップS5からステップS6に移行する。ステップS6では、エンジン回転数が予め設定された回転数Nよりも低いか否かを判断する。エンジン回転数が回転数Nより低い場合は、効率よく暖機が行われないので、ステップS6からステップS7に移行し、エンジン回転数を回転数Nより高い回転数に設定するための信号S6をエンジンガバナ1aに出力する。また、エンジン回転数が回転数N以上の場合は、ステップS7をスキップしてステップS8に移行する。
【0034】
ステップS8では、ポンプ2の容量を上げるための信号S7をサーボ機構2aに対して出力する。ポンプ2の容量をどの程度まで上げるかは、その建設機械が使用される環境等を考慮し、予め実験等で定められている。
【0035】
次にステップS9では、作動油温度が設定温度Bより高くなったか否かを判断する。この設定温度Bは設定温度Aより高く設定されており、ヒステリシスを持たせることによりハンチング現象が発生するのを防止している。そして、作動油温度が、設定温度Bより高くなるまでステップS8の処理を実行し、設定温度Bになって十分に作動油が暖機された場合には、ステップS10に移行する。ステップS10では、ポンプ容量を最小容量に戻すための信号S7をサーボ機構2aに出力し、ステップS5に戻る。
【0036】
以上の処理を実行することにより、作業機の誤動作を防止し、しかも作動油の暖機を実行して効率の良い作業機による作業を行うことができる。
【0037】
[第2実施形態]
<全体構成>
図3及び図4に本発明の第2実施形態を示す。第1実施形態では、油圧ポンプとして電子制御式可変容量型の油圧ポンプ2を用いたが、この第2実施形態では、油圧式サーボ弁によって斜板の傾転角を制御するタイプの可変容量型油圧ポンプ2’を用いている。他の構成は第1実施形態と同様である。
【0038】
<油圧ポンプ及び容量制御>
まず、油圧ポンプ2’の制御方式として、この第2実施形態ではCLSS(クローズドセンタ・ロードセンシングシステム:Closed-center Load Sensing System)方式を採用している。このCLSS方式では、油圧ポンプ2’の吐出側においてLS(ロードセンシング)圧を検出し、このLS圧が一定になるように油圧ポンプ2’の吐出量が制御される。
【0039】
そこでこの第2実施形態では、油圧ポンプ2’の吐出量を制御するための回路として、作業機負荷(油圧シリンダ3の負荷)を感知して油圧ポンプ2’の吐出量を制御するLS弁30と、作業機の負荷がエンジン馬力を超えないように制御するPC弁31と、が設けられ、さらに、コントローラ20の指令に応じてLS弁30及びPC弁31のそれぞれにパイロット圧を付与するLS弁用電子式切換弁(LS−EPC弁)32及びPC弁用電子式切換弁(PC−EPC弁)33が設けられている。なお、図3の回路では、油圧ポンプ2’の斜板を制御するための油圧式サーボ弁を省略している。
【0040】
以上のような構成により、油圧ポンプ2’の吐出量は、油圧シリンダ3に作用する負荷及びコントローラ20からの指令に応じて制御される。
【0041】
<暖機装置>
また、この第2実施形態では、作動油を暖機するための構成として、アンロード弁15におけるアンロードをキャンセルするための電磁弁34が設けられている。電磁弁34をコントローラ20によって制御することにより、油圧ポンプ2’の吐出油を、アンロード弁15を介してタンク11に戻したり、またそのアンロードをキャンセル(解除)したりすることが可能となる。他の構成については第1実施形態と同様である。
【0042】
<暖機処理>
次に作動油の暖機処理について、図4のフローチャートを用いて説明する。なお、この図4に示す第2実施形態のフローチャートにおいて、ステップS1〜S7及びステップS9での処理は第1実施形態における処理と同様である。
【0043】
すなわち、ステップSS1〜S7においては、自動暖機スイッチ7が押されると、ロックレバー6がロック状態であるか否かを判断するとともに、作業機操作レバー5が中立状態であるか否かを判断し、ロックレバー6がロック状態でないか、あるいは作業機操作レバー5が中立状態でない場合は、その旨をオペレータに警告し、暖機処理を実行しない。そして、自動暖機スイッチ7が押されたときに、ロックレバー6がロック状態であり、かつ作業機操作レバー5が中立状態である場合には、作動油温度によって暖機を実行するか否かを決定する。作動油の暖機を実行する場合は、エンジン回転数を回転数Nより高い回転数に設定する。
【0044】
以上のような第1実施形態と同様の処理を実行した後に、ステップS10に移行する。ステップS10では、アンロード弁15を閉じるための信号を電磁弁34に対して出力する。これにより、アンロード弁15を介して作動油がタンク11に戻される油路が遮断される。
【0045】
ここでは、油圧ポンプ2’の吐出量は増加するわけではないが、油圧ポンプ2’、メインリリーフ弁4及びタンク11によって構成される閉回路の油圧は、メインリリーフ弁の設定圧まで上昇する。このため、この閉回路を循環する作動油は、アンロード弁を介して作動油を戻した場合には油圧はごく微小なものとなる。以上のような処理によって、アンロード弁15が閉じられていない場合に比較して温度が上昇することになる。
【0046】
以上の処理によって作動油が設定値Bを超えた場合は、ステップS9からステップS11に移行する。ステップS11では、アンロード弁15を開け、このアンロード弁15からも作動油をタンク11に戻すようにする。これにより、油圧ポンプ2’の負荷は通常のアイドリング状態に戻る。
【0047】
以上の処理を実行することにより、作業機の誤動作を防止し、しかも作動油の暖機を実行して効率の良い作業機による作業を行うことができる。
【0048】
[第3実施形態]
第2実施形態では、アンロード弁15を閉じることによって油圧を上げ、作動油の温度を上げるようにしている。しかし、油圧ポンプ2’の斜板を制御して作動油の吐出量を増加させることはできない。
【0049】
そこで、図5及び図6に示す第3実施形態では、油圧ポンプ2’の斜板を制御することによって、油圧を上げるだけでなくポンプ吐出量をも増加させるようにしている。これにより、より短時間に作動油の暖機を行うことができる。なお、油圧ポンプ2’のタイプ及び制御方式は第2実施形態と同様である。
【0050】
具体的には、図3に示した構成に加えて、油圧ポンプ2’の負荷(油路13の油圧)を上昇させるための電磁弁35を設けている。この負荷アップ用の電磁弁35はコントローラ20によって制御される。なお、他の構成は第2実施形態と同様である。
【0051】
<暖機処理>
以上の構成を有する第3実施形態では、図6に示すフローチャートにしたがって作動油の暖機が実行される。なお、図6では、第2実施形態と異なる処理ステップS20〜S22のみを示しており、他のステップS1〜S7及びステップS9,S11は第2実施形態と同様である。
【0052】
ここでは、ステップS1〜S7で第2実施形態と同様の処理を実行し、ステップS7でエンジン回転数を設定回転数に上げた後、ステップS20に移行する。ステップS20では、アンロード弁15を閉じる。これにより、第2実施形態と同様に油圧ポンプ2’、メインリリーフ弁14及びタンク11を循環する閉回路の油圧が上昇し、作動油温度が上昇する。以上に加えて、この第3実施形態では、ステップS21において、負荷アップ用の電磁弁35を作動させて、LS差圧を小さくする。このLS差圧の低下は、油圧ポンプ2’の吐出量が少なくなったことを意味する。これにより、ステップS22では、油圧ポンプ2’の容量を上げるべく、PC−EPC弁33に指令を出す。
【0053】
<擬制処理>
以上のように、この第3実施形態では、作動油の温度を上げるために、LS差圧を強制的に小さくして油圧ポンプ2’の容量を上げるようにしている。すなわち、作業機操作レバー5が中立状態では、作業機負荷(油圧シリンダの負荷)は変化しないので、油圧ポンプ2’の負荷は変化しない。つまり、油圧ポンプ2’の容量を増大させることはできない。そこで、本実施形態では、LS差圧を強制的に小さくし、あたかも作業機負荷が増えたように擬制している。この擬制によって、作業機操作レバー5が中立状態であるにもかかわらず、油圧ポンプ2’の容量を増大させることができる。したがって、油圧の上昇だけではなく、油圧ポンプ2’の吐出量をも増加させることができ、効率よく短時間で作動油の暖機を行うことができる。
【0054】
[第4実施形態]
図7に本発明の第4実施形態を示す。この第4実施形態では、油圧ポンプ2’の制御方式が第1〜第3実施形態と異なっている。
【0055】
<油圧ポンプ及び容量制御のための構成>
この第4実施形態における油圧ポンプ2’の制御方式として、OLSS(オープンセンタ・ロードセンシングシステム:Open-center Load Sensing System)方式を採用している。このOLSS方式では、油圧ポンプ2’の吐出量が、オペレータが操作するレバーのストロークに合わせて制御され、これによりエネルギロスとなる余剰圧油量を減らし、省エネルギ化を図っている。この方式では、油量を検出する絞り弁が設けられ、絞り弁を通過する油量が増えると絞り弁前後の圧力差が大きくなるので、この圧力差を検出してポンプ容量を減ずる方向にサーボ弁等を制御し、通過流量が減るとポンプ容量を大きくする方向にサーボ弁等を制御する。
【0056】
そこでこの第4実施形態では、油圧ポンプ2’の吐出量を制御するための回路として、ニュートラルコントロール弁(NC弁)40と、カットオフ弁(CO弁)41と、可変式トルクコントロール弁(TVC弁)42とが直列に接続されている。また、TVC弁42にパイロット圧を付与するEPC弁43と、カットオフ弁41を作動させるための電磁弁44と、が設けられている。なお、この実施形態では、第1実施形態等におけるアンロード弁15が、ロードセンシング(負荷検出)用のジェットセンサとして機能している。他の構成は、前記各実施形態において同じ符号で示した構成と同様である。また、油圧ポンプ2’の斜板を作動させるためのサーボ弁は省略している。
【0057】
<油圧ポンプの容量制御>
この実施形態における油圧ポンプの容量制御は次のようにして実行される。
【0058】
すなわち、ジェットセンサとしてのリリーフ弁15の圧力と、リリーフ弁15の下流側の圧力とが、それぞれNC弁40に入力され、NC弁40はこれらの差圧によって切り換えられる。具体的には、メインバルブ4が中立状態では、ジェットセンサリリーフ弁15からドレンされる油量が増加し、これによる差圧の変化により、NC弁40は油圧ポンプ2’の吐出量を減らし、中立位置におけるエネルギロスを少なくしている。
【0059】
一方、メインバルブ4が操作された場合は、ジェットセンサリリーフ弁15には作動油は流れない。そして、エンジン回転数の指令信号に対して油圧ポンプ2’の吐出圧が低いときは、TVC弁42及びCO弁41の作動により、油圧ポンプ2’の吐出量を増加させる。また、逆に、エンジン回転数の指令信号に対して油圧ポンプ2’の吐出圧が高いときは、TVC弁42が切り換えられ、このTVC弁42及びCO弁41の作動により、油圧ポンプ2’の吐出量が減少させられる。
【0060】
なお、CO弁41は、油圧ポンプ2’の吐出圧力が最大圧力になったときに切り換えられ、最大圧力の流量をより減少させるように作動する。
【0061】
以上のようにして、油圧ポンプ2’の吐出量は、メインバルブ4の操作及びコントローラ20からの指令に応じて制御される。
【0062】
<暖機処理>
作動油の暖機処理については、第2実施形態における図4のフローチャートの処理と全く同様である。すなわち、自動暖機スイッチ7が押されると、ロックレバー6がロック状態であるか否かを判断するとともに、作業機操作レバー5が中立状態であるか否かを判断し、ロックレバー6がロック状態でないか、あるいは作業機操作レバー5が中立状態でない場合は、その旨をオペレータに警告し、暖機処理を実行しない。そして、自動暖機スイッチ7が押されたときに、ロックレバー6がロック状態であり、かつ作業機操作レバー5が中立状態である場合には、作動油温度によって暖機を実行する。具体的には、暖機を実行する場合は、ジェットセンサリリーフ弁15を閉じるための信号を電磁弁34に対して出力し、ジェットセンサリリーフ弁15を介して作動油がタンク11に戻される油路を遮断する。これにより、油圧ポンプ2’を含む閉回路の油圧が高くなり、作動油温度が上昇する。
【0063】
[第5実施形態]
第4実施形態では、ジェットセンサリリーフ弁15を閉じることによって油圧を上げ、作動油の温度を上げるようにしている。しかし、この場合は、第2実施形態と同様に油圧ポンプ2’の斜板を制御して作動油の吐出量を増加させることはできない。
【0064】
そこで、図8及び図9に示す第5実施形態では、油圧ポンプ2’の斜板を制御することによって、油圧を上げるだけでなくポンプ吐出量をも増加させるようにしている。これにより、より短時間に作動油の暖機を行うことができる。
【0065】
具体的には、図7に示した構成に加えて、NC弁40に入力される2つの圧力を同じ圧力にするためのNCライン連通用電磁弁45を設けている。この電磁弁45はコントローラ20によって制御される。なお、他の構成は第4実施形態と同様である。
【0066】
<暖機処理>
このような第5実施形態では、図9に示すフローチャートにしたがって作動油の暖機が実行される。なお、図9では、第4実施形態(図4に示したフローチャート)と異なる処理ステップS30〜S32のみを示しており、他のステップS1〜S7及びステップS9,S11は第4実施形態と同様である。
【0067】
ここでは、ステップS1〜S7で第2実施形態と同様の処理を実行し、ステップS7でエンジン回転数を設定回転数に上げた後、ステップS30に移行する。ステップS30では、ジェットセンサリリーフ弁15を閉じる。これにより、第4実施形態と同様に油圧ポンプ2’、メインリリーフ弁14及びタンク11を循環する閉回路の油圧が上昇し、作動油温度が上昇する。以上に加えて、この第5実施形態では、ステップS31において、NCライン連通用電磁弁45を作動させて、NC弁40の両ポートの圧力を同じ圧力にする。この現象は、油圧ポンプ2’の吐出量が少なくなった場合の現象と同じである。これにより、ステップS32では、油圧ポンプ2’の容量を上げるべく、TVC−EPC弁43に指令を出す。
【0068】
<擬制処理>
以上のように、この第5実施形態では、作動油の温度を上げるために、NC弁40の両ポートの圧力を強制的に同じにして、油圧ポンプ2’の容量を上げるようにしている。すなわち、前述のように、作業機操作レバー5が中立状態では、作業機負荷(油圧シリンダの負荷)は変化しないので、油圧ポンプ2’の負荷は変化しない。つまり、油圧ポンプ2’の容量を増大させることはできない。そこで、本実施形態では、NC弁40の両ポートの圧力を強制的に同じにして、あたかも作業機負荷が増えたように擬制している。この擬制によって、作業機操作レバー5が中立状態であるにもかかわらず、油圧ポンプ2’の容量を増大させることができる。したがって、油圧の上昇だけではなく、油圧ポンプ2’の吐出量をも増加させることができ、効率よく短時間で作動油の暖機を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の第1実施形態を採用した作業車両の概略ブロック構成図。
【図2】第1実施形態の暖機処理を示すフローチャート。
【図3】本発明の第2実施形態を採用した作業車両の概略ブロック構成図。
【図4】第2実施形態の暖機処理を示すフローチャート。
【図5】本発明の第3実施形態を採用した作業車両の概略ブロック構成図。
【図6】第3実施形態の暖機処理を示すフローチャート。
【図7】本発明の第4実施形態を採用した作業車両の概略ブロック構成図。
【図8】本発明の第5実施形態を採用した作業車両の概略ブロック構成図。
【図9】第5実施形態の暖機処理を示すフローチャート。
【符号の説明】
【0070】
1 エンジン
2,2’ 油圧ポンプ
3 油圧シリンダ
5 作業機操作レバー
6 ロックレバー
7 自動暖機スイッチ
15 アンロード弁(ジェットセンサリリーフ弁)
20 コントローラ
21 エンジン回転数センサ
22 作動油温度センサ
23 圧力センサ
30 LS弁
31 PC弁
34 アンロードキャンセル用電磁弁
35 負荷アップ用電磁弁
45 NCライン連通用電磁弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
油圧アクチュエータにより駆動される作業機を有する建設機械の作動油を暖機するための暖機装置であって、
作業機の動作を不能にするためのロック機構のオン、オフ状態を検出するロック検出手段と、
作業機の操作レバーの操作状態を検出するレバー状態検出手段と、
作動油温度を検出する作動油温度検出手段と、
前記ロック検出手段によりロック機構がオン状態であることが検出され、前記作業レバー状態検出手段で操作レバーが中立状態であることが検出され、かつ前記作動油温度検出手段で作動油温度が第1設定温度より低いことが検出されたとき、作動油温度を上げるための昇温手段と、
を備えた建設機械の暖機装置。
【請求項2】
前記昇温手段により昇温のための処理を実行させるか否かを外部から指示可能な自動暖機スイッチをさらに備えた、請求項1に記載の建設機械の暖機装置。
【請求項3】
エンジン回転数を検出する回転数検出手段をさらに備え、
前記昇温手段は、前記回転数検出手段が所定の回転数より低いときにエンジン回転数を前記所定の回転数にするための制御を行った後に作動油温度を上げる処理を実行する、
請求項1又は2に記載の建設機械の暖機装置。
【請求項4】
前記昇温手段は、前記作動油温度を上げるための処理を実行した後に作動油温度が前記第1設定温度より高い第2設定温度を超えたとき、昇温のための処理を停止する、
請求項1から3のいずれかに記載の建設機械の暖機装置。
【請求項5】
前記油圧アクチュエータは建設機械のエンジンにより駆動される油圧ポンプにより作動油圧が供給されるものであり、
前記昇温手段は前記油圧ポンプの吐出油量を増大させて作動油の温度を上げる、
請求項1から4のいずれかに記載の建設機械の暖機装置。
【請求項6】
前記油圧アクチュエータは建設機械のエンジンにより駆動される油圧ポンプにより作動油圧が供給されるものであり、
前記油圧アクチュエータの非作動時に、前記油圧ポンプの吐出油をタンクに戻すための閉回路をさらに備え、
前記昇温手段は前記閉回路の油圧を高くして作動油の温度を上げる、
請求項1から4のいずれかに記載の建設機械の暖機装置。
【請求項7】
前記昇温手段は、前記油圧アクチュエータの非作動時に前記油圧ポンプの吐出量が低下した場合の現象と同様の現象を強制的に発生させる擬制手段を含み、前記閉回路の油圧を高くするとともに前記油圧ポンプの吐出油量を増大させて作動油の温度を上げる、
請求項6に記載の建設機械の暖機装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2008−267490(P2008−267490A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−111158(P2007−111158)
【出願日】平成19年4月20日(2007.4.20)
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)
【Fターム(参考)】