説明

建設機械の表示制御装置

【課題】面倒な操作無しでサービスマンのみがサービスマン用画面にアクセスできるようにする。サービスマンが建設機械のサービスを行っているときに、エンジンを始動できない状態にして安全を確保する。
【解決手段】キー手段20がキーオン操作されると、読み取り部6は、キー側通信部22、車体側通信部5を介して、キー手段20のサービスマン識別ID記憶部21に記憶されているサービスマン識別IDを読み取り、登録されているIDと照合して両者が一致することを認証する。サービスマンの認証がなされると、表示制御部7は、表示装置4に、サービスマン用画面を表示する。キー手段20がエンジン始動オン操作されても、それだけではエンジン3は始動せず、キー手段20がエンジン始動オン操作される以外に、特定の操作、たとえばサービスマン用画面を通常画面に切り替える操作がなされたことを条件として、エンジン制御部8は、エンジン3を始動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設機械の表示装置の表示画面に、サービスマンのための情報を表示するサービスマン用画面を表示する建設機械における表示制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
(従来の実施技術)
油圧ショベルなどの建設機械の運転室には、モニタパネルが設けられている。建設機械のオペレータがキー手段をキーオン操作すると、モニタパネルには、オペレータのための情報を表示する通常画面が表示される。通常画面には、油温計、燃料計、各種警告灯などの運転操作に必要な情報が表示される。
【0003】
一方、建設機械のメンテナンスなどのサービスを行うサービスマンは、エンジン点検などのサービス作業を行うときに、オペレータと同じ仕様のキー手段をキーオン操作して、通常画面を表示させる。そして、通常画面を、パスワード入力画面に切り替えて、パスワードを入力する。入力したパスワードが登録してあるパスワードと一致すると、通常画面は、サービスマンのための情報を表示するサービスマン用画面に切り替えられる。サービスマン用画面には、点検の履歴、故障の履歴、修理の履歴、部品交換の履歴などの重要な情報が表示されるとともに、エンジンの制御内容などを定めるマシンパラメータの設定内容を画面上で変更することが可能である。このようにサービスマン以外の人間が容易にサービスマン用画面にアクセスできないように、キー手段をキーオン操作する都度パスワードを入力することを条件として、サービスマン用画面に切り替えるようにしている。
【0004】
また、サービスマンは、エンジンを稼動させながら点検作業を行うときを除いて、建設機械のサービスを行うときには、サービス作業の安全を確保するため、通常、キー手段をエンジンオフ位置に操作し、エンジンや作業機を停止した状態にする。
【0005】
(特許文献にみられる従来技術)
特許文献1には、建設機械の分野において、盗難防止を目的として、キー手段に記憶された認証コードと、車体内に記憶された認証コードが一致したことを条件としてエンジン始動を許容するという発明が記載されている。
【特許文献1】特開2001−82010号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、サービス作業を行うたびにパスワードを入力する作業を行うことは面倒であり、この労力を軽減したいとの要請がある。
【0007】
一方、パスワードは、メモなどの形でサービスマン以外の者に容易にみられるおそれがあったり、パスワードの情報が流出するおそれがある。このため、サービスマン以外の者によってパスワードが入力されてサービスマン用画面に切り替えられ、重要な情報が流出したり、マシンパラメータの設定が変更されてエンジンの制御内容などが変更されてメーカーやディーラーの設定と異なる設定となってしまうおそれがある。
【0008】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、面倒な操作無しでサービスマンのみがサービスマン用画面にアクセスできるようにするとともに、サービスマン以外の者がサービスマン用画面に容易にアクセスできないようにすることを第1の課題とするものである。
【0009】
また、従来にあっては、サービスマンが使用するキー手段は、オペレータが使用するキー手段と同じ仕様であるため、サービス作業中に不用意な操作によって意図せずエンジンが始動してしまうおそれがある。このため、たとえば車体カバーを開けてエンジンルームの点検を行っているときや作業機の点検をしているときなどに、エンジンが意図せず始動してしまうと、サービスマンが危険に晒されるおそれがある。
【0010】
そこで、本発明は、サービスマンが建設機械のサービスを行っているときに、エンジンを確実に始動できない状態にして、サービス作業中の安全を確保することを第2の課題とするものである。
【0011】
なお、上記特許文献1記載の発明は、あくまでも建設機械の盗難防止を目的とする発明であり、エンジン始動を許容するかどうかを特徴とするものである。特許文献1には、表示装置の表示画面を、サービスマン用画面にすることを許容するかどうかについては何ら示唆されていない。
【課題を解決するための手段】
【0012】
第1発明は、
建設機械に設けられた表示装置に、サービスマンのための情報を表示するサービスマン用画面を表示する建設機械における表示制御装置であって、
携行自在のキー手段には、
サービスマンを識別するサービスマン識別IDを記憶するサービスマン識別ID記憶部と、
キーオン操作に応じて建設機械の車体内制御装置と通信を行うキー側通信部と
が備えられ、
建設機械の車体内には、
キー側通信部と通信を行う車体側通信部と、
キーオン操作に応じて、キー側通信部、車体側通信部を介してキー手段のサービスマン識別ID記憶部に記憶されているサービスマン識別IDを読み取り、登録されているサービスマン識別IDと照合して両者が一致することを認証する読み取り部と、
サービスマンであるという認証がなされた場合に、表示装置に、サービスマン用画面を表示する表示制御部と
が備えられていることを特徴とする。
【0013】
第2発明は、第1発明において、
キー手段がエンジン始動オン操作された場合に、当該エンジン始動オン操作以外の特定の操作がなされたことを条件として、エンジンを始動するエンジン制御部を
さらに備えたことを特徴とする。
【0014】
第3発明は、第1発明において、
表示装置は、オペレータのための情報を表示する通常画面を表示するものであって、
表示制御部は、
表示装置がサービスマン用画面を表示しているときに、特定の操作がなされたことを条件として、サービスマン用画面を通常画面に切り替えること
を特徴とする。
【0015】
第4発明は、第1発明において、
建設機械から離れた場所に、建設機械のサービスに必要なサービス情報が記憶されたデータベースを備えたサーバが設けられており、
建設機械には、サーバと通信を行う通信端末が設けられており、
サービスマンであるという認証がなされた場合に、通信端末はサーバにアクセスしてデータベースに記憶されたサービス情報を建設機械に取り込むこと
を特徴とする。
【0016】
第1発明の装置は、建設機械1に設けられた表示装置4に、サービスマンのための情報を表示するサービスマン用画面30を表示するものである。
【0017】
携行自在のキー手段20には、サービスマン識別ID記憶部21と、キー側通信部22が備えられている。
【0018】
建設機械1の車体2内には、車体側通信部5と、読み取り部6と、表示制御部7が備えられている。
【0019】
このためキー手段20がキーオン操作されると、読み取り部6は、キー側通信部22、車体側通信部5を介して、キー手段20のサービスマン識別ID記憶部21に記憶されているサービスマン識別IDを読み取り、登録されているサービスマン識別IDと照合して両者が一致することを認証する。サービスマンであるという認証がなされると、表示制御部7は、表示装置4に、サービスマン用画面30を表示する。
【0020】
以上のように本第1発明によれば、サービスマンがキー手段20をキーオン操作するだけで、自動的にサービスマン識別IDの認証が行われ、その認証を条件としてサービスマン用画面を表示装置4に表示するようにしているので、面倒な操作無しでサービスマンのみがサービスマン用画面にアクセスすることができる。また、サービスマン以外の者がサービスマン用画面にアクセスすることが困難となる。
【0021】
第2発明では、キー手段20がエンジン始動オン操作されても、それだけではエンジン3は始動せず、キー手段20がエンジン始動オン操作される以外に、特定の操作、たとえばサービスマン用画面30を通常画面40に切り替える操作がなされたことを条件として、エンジン制御部8は、エンジン3を始動する。
【0022】
以上のように本第2発明によれば、キー手段20がエンジン始動オン操作されても、それだけではエンジン3は始動せず、キー手段20がエンジン始動オン操作される以外に、特定の操作がなされたことを条件として、エンジン3を始動するようにしているので、サービスマンが建設機械1のサービスを行っているときに、エンジン3を確実に始動できない状態にすることができる。これにより、サービス作業中の安全が確保される。
【0023】
第3発明では、表示装置4がサービスマン用画面30を表示しているときに、特定の操作、つまり例えばサービスマン用画面30上でモード切替え操作がなされたことを条件として、サービスマン用画面30が通常画面40に切り替えられる。
【0024】
第4発明では、建設機械1から離れた場所に、建設機械1のサービスに必要なサービス情報が記憶されたデータベース61を備えたサーバ60が設けられている。
【0025】
建設機械1には、サーバ60と通信を行う通信端末9が設けられている。
【0026】
サービスマンであるという認証がなされると、通信端末9はサーバ60にアクセスしてデータベース61に記憶されたサービス情報を建設機械1に取り込む。これにより表示装置4のサービスマン用画面30に、最新のサービス情報を表示することが可能となり、サービスを最新の情報に基づいて行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、図面を参照して本発明に係る建設機械の表示制御装置の実施の形態について説明する。なお、以下では、建設機械として油圧ショベルを想定して説明する。なお、以下では、オペレータというときは、建設機械1を運転操作する者のみならず、建設機械1を使用する一般ユーザを含み、サービスマンとは異なりサービスマン用画面へのアクセスが禁止される者であるという意味で使用することにする。
【0028】
図1は、実施形態の装置構成を示している。
【0029】
図1に示すように、建設機械1には、外部の地上局160と通信を行う通信端末9が設けられている。一方、建設機械1から離れた場所には、地上局160が設けられている。地上局160には、サーバ60と、通信部161とが備えられている。
【0030】
建設機械1の通信端末9と地上局160の通信部161は、相互にデータを送受信する。
【0031】
サーバ60には、建設機械1のサービスに必要なサービス情報が記憶されたデータベース61が備えられている。
【0032】
よって、建設機械1の通信端末9は、地上局160の通信部161と相互にデータを送受信することにより、サーバ60にアクセスすることができ、データベース61に記憶されたサービス情報を建設機械1に取り込むことができる。
【0033】
建設機械1の車体2内には、エンジン3と、キースイッチ10と、表示制御部7と、エンジン制御部8と、通信端末9と、情報記憶部12が設けられている。キースイッチ10は、車体側通信部5と、情報読み取り/書き込み部6と、キーシリンダ部11とを含んで構成されている。これらキースイッチ10と、表示制御部7と、エンジン制御部8と、通信端末9と、情報記憶部12は、信号線13によって相互にデータの送受信が可能なように接続されている。また、信号線13には、外部機器14が接続される。外部機器14には、外部制御装置15と外部記憶装置16が設けられている。外部機器14は、たとえばパーソナルコンピュータである。この外部機器14は、サービスマンが必要に応じて、信号線13に接続して使用するものである。
【0034】
エンジン3は、エンジン制御部8によって制御される。エンジン3は、スタータモータ17が作動することによって始動する。エンジン制御部8からスタータ信号が出力されてスタータモータ17に加えられることにより、スタータモータ17が作動する。
【0035】
車体2の運転室2aには、モニタパネルとして構成された表示装置4が設けられている。この表示装置4の表示画面4aには、後述するように、サービスマンのための情報を表示するサービスマン用画面30と、オペレータのための情報を表示する通常画面40が表示される。表示装置4は、表示制御部7によって制御される。
【0036】
一方、サービスマンは、携行自在のキー手段20を所有している。キー手段20は、電子IDキーまたはRFIDなどによって構成されている。
【0037】
キー手段20には、サービスマン識別ID記憶部21と、キー側通信部22と、有効期限情報記憶部23と、その他情報記憶部24が設けられている。サービスマン識別ID記憶部21、有効期限情報記憶部23、その他情報記憶部24は、たとえばICタグで構成されている。
【0038】
サービスマン識別ID記憶部21には、サービスマンであることを特定しオペレータとは異なる者であることを識別できる符号で構成されたサービスマン識別IDが記憶されている。なお、オペレータが所有するキー手段20には、オペレータ識別ID記憶部が設けられ、このオペレータ識別ID記憶部には、オペレータであることを特定しサービスマンとは異なる者であることを識別できる符号で構成されたオペレータ識別IDが記憶されている。
【0039】
その他情報記憶部24には、建設機械1の内部状態や校正用のデータが記憶されている。
【0040】
有効期限情報記憶部23には、キー手段20の有効期限の情報(たとえば、「2008年X月Y日」)が記憶されている。
【0041】
以下、図2に示すフローチャートを参照して本実施例における処理手順について説明する。
【0042】
同図2に示すように、オペレータがキー手段20を、キースイッチ10のキーシリンダ部11のキーホールに差込み、キー手段20をキーオン位置に操作すると(ステップ200の判断YES)、キー手段20のキー側通信部22と、キースイッチ10の車体側通信部5が相互に送受信可能な状態になる。そこで、情報読み取り/書き込み部6は、キー側通信部22、車体側通信部5を介して、キー手段20のサービスマン識別ID記憶部21に記憶されているサービスマン識別IDを読み取り(ステップ201)、メモリに書き込む。そして、メモリに書き込まれたサービスマン識別IDを、車体2側のメモリに予め登録されているサービスマン識別IDと照合して両者が一致することを認証する。なお、オペレータが所有するキー手段20がキーオン操作された場合には、キー手段20に記憶されているオペレータ識別IDと登録されているオペレータ識別IDが一致することを認証する(ステップ202)。オペレータであるという認証がなされると(ステップ203の判断「オペレータ」)、表示制御部7は、表示装置4の表示画面4aに、通常画面40を表示する。
【0043】
通常画面40の表示例を図3に示す。
【0044】
通常画面40には、油温計40a、油温警告灯40b、燃料計40c、燃料残量警告灯40d、バッテリ端子電圧警告灯40e、サービスメータ40f、作業モード表示部40g、各種ファンクションキーあるいはメニューボタン40h、40i、40j、40k、40lなどが表示される。これによりオペレータは、運転操作に必要な情報を取得することができる。
【0045】
また、表示装置4の表示画面4aに通常画面40が表示されている状態では、キー手段20をエンジン始動オン位置に操作することで、エンジン制御部8からスタータ信号が出力され、スタータモータ17に加えられる。すなわち、通常画面40表示状態では、キー手段20をエンジン始動オン位置に操作することで、エンジン3が始動する(ステップ204)。
【0046】
一方、サービスマンであるという認証がなされると(ステップ203の判断「サービスマン」)、情報読み取り/書き込み部6は、キー側通信部22、車体側通信部5を介して、キー手段20の有効期限情報記憶部23に記憶されている有効期限の情報(「2008年X月Y日」)を読み取り、メモリに書き込む。そして、車体2内の時計で計測されている現在の年、月、日、時刻と比較して、有効期限が切れているかあるいは有効期限内であるかを判断する(ステップ205)。この結果、有効期限切れである場合には(ステップ205の判断「有効期限切れ」)、ステップ203に戻り、サービスマン用画面30の表示を行わせないようにする。
【0047】
すなわち、正規のサービスマンは、キー手段20に記憶された有効期限を、定期的に更新する手続きが必須であり、たとえキー手段20の盗難や流出が発生したとしても、時間が経過すれば有効期限切れとすることによってサービスマン以外の者がサービスマン用画面30にアクセスすることを最小限に食い止めることができる。
【0048】
一方、有効期限内である場合には(ステップ205の判断「有効期限内」)、つぎに、自己の建設機械1が地上局160と通信することができる通信機能を有しているか否か、つまりサーバ60にアクセスできる通信端末9を有しているか否かが判断される(ステップ206)。この結果、建設機械1が通信端末9を有していないと判断された場合には(ステップ206の判断「通信機能無」)、情報記憶部12に蓄積されている過去のメンテナンス履歴が読み出され、表示制御部7に送出される(ステップ207)。
【0049】
一方、建設機械1が通信端末9を有していると判断された場合には(ステップ206の判断「通信機能有り」)、通信端末9は、地上局160の通信部161に、「サービス作業が開始された」という情報を、サービス開始時刻の情報とともに送信する。地上局160の通信部161で、この「サービス作業開始時刻」の情報を受信すると、この「サービス作業開始時刻」の情報がサーバ60のデータベース61のサービス情報に書き込まれる(ステップ208)。
【0050】
つぎに、通信端末9は、地上局160の通信部161に、「過去のメンテナンス履歴」を送るように指令を送信する。地上局160の通信部161で、この指令を受信すると、サーバ60のデータベース61から、対応する建設機械1の「過去のメンテナンス履歴」が読み出され、「過去のメンテナンス履歴」の情報が地上局160の通信部161から発信元の建設機械1の通信端末9に送信される。「過去のメンテナンス履歴」が通信端末9で受信されると、この「過去のメンテナンス履歴」の情報は、表示制御部7に送出される(ステップ209)。
【0051】
つぎに、表示制御部7は、表示装置4の表示画面4aに、サービスマン用画面30を表示する。
【0052】
サービスマン用画面30の表示例を図4に示す。
【0053】
サービスマン用画面30には、「過去のメンテナンス履歴」30A、つまり過去の定期点検履歴30b、修理履歴30c、警報履歴30d、エラー履歴30e、交換履歴30fが表示される。過去の定期点検履歴30bは、建設機械1の定期点検の過去の履歴であり、たとえば「2007年4月1日に○○点検を実施した」という情報が表示される。修理履歴30cは、建設機械1の故障を修理した過去の履歴であり、たとえば「2008年4月1日にエンジンの故障(冷却水不足でオーバーヒート)を修理した」という情報が表示される。警報履歴30dは、建設機械1で発生した警報の過去の履歴であり、たとえば「2008年3月30日に冷却水温上昇」という情報が表示される。エラー履歴30eは、建設機械1で発生したエラーの過去の履歴であり、たとえば「2008年3月30日にオーバーヒート発生」という情報が表示される。交換履歴30fは、建設機械1の部品を交換した過去の履歴であり、たとえば「2007年12月1日にオイルフィルタを交換した」という情報が表示される。お知らせ欄30gには、つぎの定期点検の情報、たとえば「次の点検は、2008年6月1日です。」という情報が表示される。
【0054】
また、サービスマン用画面30には、通常画面40と同様に、サービスメータ30h、作業モード表示部30iが表示される。
【0055】
また、後述するように、サービスマン用画面30には、「通常画面」40に切り替えるためのメニューボタン30j、「新着情報」取得のためのメニューボタン30k、「故障診断」実施のためのメニューボタン30l、「マシンパラメータの更新、バックアップ」を実施するためのメニューボタン30mが表示されている。
【0056】
表示装置4の表示画面4aにサービスマン用画面30が表示されている状態では、キー手段20をエンジン始動オン位置に操作したとしても、エンジン制御部8からスタータ信号が出力されることが禁止される。すなわち、サービスマン用画面30表示状態では、エンジン3は始動できなくなる(ステップ210)。
【0057】
サービスマン用画面30上で「通常画面」40に切り替えるためのメニューボタン30jが操作されると(ステップ211の判断「通常画面へ切替え」)、表示装置4の表示画面4aは、サービスマン用画面30から通常画面40に切り替えられ、表示画面4aには通常画面40が表示される。これによりキー手段20をエンジン始動オン位置に操作することで、エンジン3を始動できるようになる(ステップ204)。
【0058】
このように本実施例では、一旦サービスマン用画面30が表示されると、キー手段20がエンジン始動オン操作されても、それだけではエンジン3は始動せず、キー手段20がエンジン始動オン操作される以外に、特定の操作、つまりサービスマン用画面30を通常画面40に切り替える操作がなされたことを条件として、エンジン3を始動できるようにしている。
【0059】
サービスマン用画面30上で「通常画面」40に切り替えるためのメニューボタン30jが操作されていない場合には(ステップ211の判断「通常画面への切替えなし」)、つぎに、サービスマン用画面30上で「新着情報」取得のためのメニューボタン30kが操作されたか否か、つまりサーバ60へ問い合わせるか否かが判断される(ステップ212)。
【0060】
サービスマン用画面30上で「新着情報」取得のためのメニューボタン30kが操作されたと判断されると(ステップ212の判断「サーバへ問い合わせ」)、通信端末9は、地上局160の通信部161に、「新着情報」を送るように指令を送信する。地上局160の通信部161で、この指令を受信すると、サーバ60のデータベース61から、対応する建設機械1に関連する「新着情報」が読み出され、「新着情報」が地上局160の通信部161から発信元の建設機械1の通信端末9に送信される。「新着情報」が通信端末9で受信されると、この「新着情報」は、表示制御部7に送出される(ステップ213)。
【0061】
つぎに、表示制御部7は、表示画面4a上のサービスマン用画面30の画面を遷移させて、「新着情報」を表示する新着情報表示画面に切り替える。この新着情報表示画面には、サーバ60のデータベース61からダウンロードされた「新着情報」、たとえば「建設機械1のマシンパラメータを変更せよ。変更内容は、○△×である。」と表示される(ステップ210)。
【0062】
サービスマン用画面30上で「新着情報」取得のためのメニューボタン30kが操作されていない場合には(ステップ212の判断「サーバへ問い合わせしない」)、つぎに、サービスマン用画面30上で「故障診断」実施のためのメニューボタン30lが操作されたか否かが判断される(ステップ214)。
【0063】
サービスマン用画面30上で「故障診断」実施のためのメニューボタン30lが操作されたと判断されると(ステップ214の判断「故障診断」)、表示制御部7は、表示画面4a上のサービスマン用画面30の画面を遷移させて、「故障診断」を実行しその結果を表示する故障診断表示画面に切り替える。すなわち、所定のアルゴリズムに従い、建設機械1の内部の故障を診断する処理が実行され(ステップ215)、故障診断結果が、この故障診断表示画面に表示される(ステップ210)。
【0064】
サービスマン用画面30上で「故障診断」実施のためのメニューボタン30lが操作されていない場合には(ステップ214の判断「故障診断」しない)、つぎに、サービスマン用画面30上で「マシンパラメータの更新、バックアップ」を実施するためのメニューボタン30mが操作されたか否かが判断される(ステップ216)。
【0065】
サービスマン用画面30上で「マシンパラメータの更新、バックアップ」を実施するためのメニューボタン30mが操作されたと判断されると(ステップ216の判断「マシンパラメータの更新、バックアップ」)、表示制御部7は、表示画面4a上のサービスマン用画面30の画面を遷移させて、「マシンパラメータの更新、バックアップ」を実行しその結果を表示するためのマシンパラメータ設定画面に切り替える。すなわち、信号線13には、外部機器14(パーソナルコンピュータ)が接続されている。外部機器14の外部記憶装置16には、「マシンパラメータの変更値」が記憶されている。たとえばエンジン3の不具合が生じた場合には、エンジン3の制御パラメータを変更することでエンジン3の制御内容を変更する必要がある。外部制御装置15は、外部記憶装置16から、「マシンパラメータの変更値」を読み出し、信号線13に送出する。これにより車体2内で設定されているマシンパラメータは、外部機器14からダウンロードされた「マシンパラメータの変更値」に変更される。また建設機械1のマシンパラメータの設定内容の情報は、外部機器14の外部記憶装置16にバックアップのために記憶される。なお、キー手段20のその他情報記憶部24に記憶された校正用のデータを用いてマシンパラメータを更新してもよい(ステップ217)。「マシンパラメータの更新、バックアップ」の結果は、マシンパラメータ設定画面に表示される(ステップ210)。
【0066】
サービスマン用画面30上で「マシンパラメータの更新、バックアップ」を実施するためのメニューボタン30mが操作されていない場合には(ステップ215の判断「マシンパラメータの更新、バックアップ」しない)、つぎに、キー手段20がキーオフ位置に操作されたか否かが判断される(ステップ218)。
【0067】
キー手段20がキーオフ位置に操作されていない限りは(ステップ218の判断「キーオフ」でない)、表示装置4の表示画面4aに、サービスマン用画面30の表示が継続されるが(ステップ210)、キー手段20がキーオフ位置に操作されると(ステップ218の判断「キーオフ」)、通信端末9は、地上局160の通信部161に、「サービス作業が終了した」という情報を、サービス終了時刻の情報とともに送信する。地上局160の通信部161で、この「サービス作業終了時刻」の情報を受信すると、この「サービス作業終了時刻」の情報がサーバ60のデータベース61のサービス情報に書き込まれる。これにより、前述のサービス開始時刻の情報を用いて、「建設機械1に関して2008年のZ月W日にr時m分からn字p分までメンテナンス作業が行なわれた。」というメンテナンス情報が作成されて、サーバ60にアップロードされる。これによりサービス情報の中の建設機械1に関する「過去のメンテナンス履歴」30Aの内容が更新される。なお、キー手段20のその他情報記憶部24に、メンテナンス後の建設機械1の内部状態を記憶させてもよい(ステップ219)。ステップ219の処理後、全ての処理を終える。
【0068】
以上のように本実施例によれば、サービスマンがキー手段20をキーオン操作するだけで、自動的にサービスマン識別IDの認証が行われ、その認証を条件としてサービスマン用画面30を表示装置4に表示するようにしているので、面倒な操作無しでサービスマンのみがサービスマン用画面30にアクセスすることができる。また、サービスマンが所有するキー手段20を使用しない限りサービスマン用画面30にアクセスすることができないため、サービスマン以外の者がサービスマン用画面30にアクセスすることが困難となる。
【0069】
また、実施例では、キー手段20がエンジン始動オン操作されても、それだけではエンジン3は始動せず、キー手段20がエンジン始動オン操作される以外に、特定の操作、たとえばサービスマン用画面30を通常画面40に切り替える操作がなされたことを条件として、エンジン3を始動できるようにしている。このようにキー手段20がエンジン始動オン操作されても、それだけではエンジン3は始動せず、キー手段20がエンジン始動オン操作される以外に、特定の操作がなされたことを条件として、エンジン3を始動するようにしているので、サービスマンが建設機械1のサービスを行っているときに、エンジン3を確実に始動できない状態にすることができる。これにより、サービス作業中の安全が確保される。
【0070】
また、本実施例では、サービスマンであるという認証がなされると、通信端末9はサーバ60にアクセスしてデータベース61に記憶されたサービス情報を建設機械1に取り込むようにしている。これにより表示装置4のサービスマン用画面30に、最新のサービス情報を表示することが可能となり、サービスを最新の情報に基づいて行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】図1は、実施形態の装置構成を示した図である。
【図2】図2は、実施例の処理の手順を示したフローチャートである。
【図3】図3は、通常画面の表示例を示した図である。
【図4】図4は、サービスマン用画面の表示例を示した図である。
【符号の説明】
【0072】
1 建設機械、2 車体、4 表示装置、30 サービスマン用画面、40 通常画面、20 キー手段、21 サービスマン識別ID記憶部、22 キー側通信部、5 車体側通信部、6 読み取り部、7 表示制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建設機械に設けられた表示装置に、サービスマンのための情報を表示するサービスマン用画面を表示する建設機械における表示制御装置であって、
携行自在のキー手段には、
サービスマンを識別するサービスマン識別IDを記憶するサービスマン識別ID記憶部と、
キーオン操作に応じて建設機械の車体内制御装置と通信を行うキー側通信部と
が備えられ、
建設機械の車体内には、
キー側通信部と通信を行う車体側通信部と、
キーオン操作に応じて、キー側通信部、車体側通信部を介してキー手段のサービスマン識別ID記憶部に記憶されているサービスマン識別IDを読み取り、登録されているサービスマン識別IDと照合して両者が一致することを認証する読み取り部と、
サービスマンであるという認証がなされた場合に、表示装置に、サービスマン用画面を表示する表示制御部と
が備えられていることを特徴とする建設機械の表示制御装置。
【請求項2】
キー手段がエンジン始動オン操作された場合に、当該エンジン始動オン操作以外の特定の操作がなされたことを条件として、エンジンを始動するエンジン制御部を
さらに備えたことを特徴とする請求項1記載の建設機械の表示制御装置。
【請求項3】
表示装置は、オペレータのための情報を表示する通常画面を表示するものであって、
表示制御部は、
表示装置がサービスマン用画面を表示しているときに、特定の操作がなされたことを条件として、サービスマン用画面を通常画面に切り替えること
を特徴とする請求項1記載の建設機械の表示制御装置。
【請求項4】
建設機械から離れた場所に、建設機械のサービスに必要なサービス情報が記憶されたデータベースを備えたサーバが設けられており、
建設機械には、サーバと通信を行う通信端末が設けられており、
サービスマンであるという認証がなされた場合に、通信端末はサーバにアクセスしてデータベースに記憶されたサービス情報を建設機械に取り込むこと
を特徴とする請求項1記載の建設機械の表示制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−243167(P2009−243167A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−91679(P2008−91679)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)
【Fターム(参考)】