説明

建設機械の電気回路

【課題】キャブ室内に設置されたコントローラの少ない出力ポート数において、より多くの制御機器を搭載することができる建設機械の電気回路を実現する。
【解決手段】レバーロック操作によりレバーロックスイッチがOFFの状態だと機械操作が不可能な状態となり、制御コイル6aが非励磁のままで切替リレー6のa接点とb接点が導通となる。従って、コントローラ1からの出力信号は、切替リレー6のa接点とb接点を経由して第1の制御ユニット4に入力されてA機能(給油ポンプ自動停止機能)を実現させる。レバーロックの操作によりレバーロックスイッチがONの状態と機械操作が可能な状態となり、制御コイル6aが励磁となって切替リレー6のa接点とc接点が導通となる。従って、コントローラ1からの出力信号は、切替リレー6のa接点とc接点を経由して第2の制御ユニット5に入力されてB機能(フリースイング機能)を実現させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧ショベルや油圧クレーンなどの建設機械の電気回路に関するものであり、特に、建設機械の運転室内(キャブ室内)に搭載されたコントローラ周辺の電気回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、建設機械としての油圧ショベルは、下部走行体と、該下部走行体上に旋回可能に搭載された上部旋回体と、該上部旋回体に俯仰動可能に設けられたショベル等の作業装置とによって大略構成されている。また、上部旋回体のフレーム上には運転室を構成するキャブが設けられている。
【0003】
この種の従来技術による建設機械用のキャブは、上面部、前面部、後面部及び左,右の側面部を有するキャブボックスと、該キャブボックスの左,右の側面部のうち一方の側面部に回動可能に設けられてオペレータが乗降する乗降口を開閉するドアと、前記キャブボックス内に設けられて外気を取り入れながら室内に調和空気を供給する空調装置(エアコン)とを備えている。さらに、キャブ内には、制御機器、計器類、ランプ類、及びヒューズ等の各種電装品が配置されている。
【0004】
また、キャブの内部にはコントローラを含めた電気回路が搭載されていて、該コントローラからの制御信号によって各種の操作機構の制御が行われる。例えば、該コントローラからの制御信号によって、建設機械の機械操作時にアームやバケットなどのフリースイング制御が行われたたり、建設機械の機械非操作時に給油ポンプの自動停止制御が行われたりする。また、コントローラからの制御信号によって、レバーロックをONにして機械操作を不可能状態にしたり、レバーロックをOFFにして機械操作を可能状態にする制御も行われている。
【0005】
また、レバーロックの作動装置の構成を簡素化するとともに、運転席への乗降スペースを十分に確保するように構成された技術も開示されている(例えば、特許文献1参照)。この技術によれば、シートベルトのロック部に、シートベルトのロック状態を検出するベルトロックスイッチを設け、オペレータが運転席に着座してシートベルトを着用すると、シートベルトがロック状態となってベルトロックスイッチがONになり、レバーロックを作動状態にして操作レバーの操作をロックする。一方、シートベルトがアンロック状態となってベルトロックスイッチがOFFになったときは、レバーロックを非作動状態にして操作レバーの操作を可能にすることができる。このような制御はコントローラからの制御信号によって適宜に行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−269067号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記従来技術のように、コントローラからの制御信号によって、機械操作時にフリースイング制御を行ったり、機械非操作時に給油ポンプの自動停止制御を行ったりする場合は、コントローラの別々の出力ポートから個別の制御機器(制御ユニット)へ制御信号を送信する必要がある。また、前記特許文献1の技術においても、コントローラの別々の出力ポートからの個別の制御信号によって、操作レバーのロック/非ロックに対応した制御が行われる。
【0008】
すなわち、コントローラの出力側に機能の異なる複数の制御機器を搭載(接続)する場合は、コントローラの出力側には制御機器の個数分だけの出力ポート数を設ける必要がある。言い換えると、コントローラの出力ポート数が少ない場合には制御機器の搭載個数が制限されてしまい、結果的に、建設機械に必要な全ての制御を行えなくなるおそれがある。したがって、必然的に、搭載される制御機器が増えるにしたがってコントローラの出力ポート数も増加してしまうので、コントローラが高価になると共に該コントローラのメンテナンス性が低下してしまう。
【0009】
そこで、キャブ室内に設置されたコントローラの少ない出力ポート数において、より多くの制御機器を搭載することができる建設機械の電気回路を実現するために解決すべき技術的課題が生じてくるのであり、本発明はこの課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は上記目的を達成するために提案されたものであり、請求項1記載の発明は、キャブ室内に搭載されたコントローラからの出力信号の系統を切り替える建設機械の電気回路において、レバーロックのON/OFF操作に応じて、前記コントローラからの出力信号の系統を切り替える切替リレーを備えることを特徴とする建設機械の電気回路を提供する。
【0011】
この構成によれば、レバーロックのON/OFF操作に連動して、切替リレーが、コントローラの1つの出力ポートから送出される出力信号の系統を適宜に切り替えて、それぞれ個別の機能の制御を行わせている。したがって、コントローラの出力ポート数を削減しても多くの機能を実現させることが可能となる。
【0012】
また、請求項2記載の発明は、前記切替リレーが、レバーロックのON/OFF操作に応じて、第1の機能を実現させる第1の制御ユニットへの出力信号の系統と、第2の機能を実現させる第2の制御ユニットへの出力信号の系統とを切り替えることを特徴とする請求項1記載の建設機械の電気回路を提供する。
【0013】
この構成によれば、コントローラの1つの出力ポートに対して、第1の機能を実現させる第1の制御ユニットへの出力信号の系統と、第2の機能を実現させる第2の制御ユニットの出力信号の系統を接続している。そして、レバーロックのON/OFF操作に連動する切替リレーによって、第1の制御ユニットの系統と第2の制御ユニットの系統とを切り替えて第1の機能と第2の機能とを交互に実現させている。これによって、コントローラの少ない出力ポート数に多くの制御ユニットを搭載して多くの機能を実現させることができる。
【0014】
また、請求項3記載の発明は、前記第1の機能が、建設機械の機械操作が不可能な状態のときに行われる給油ポンプ自動停止機能であり、前記第2の機能が、建設機械の機械操作が可能な状態のときに行われるフリースイング機能であることを特徴とする請求項2記載の建設機械の電気回路を提供する。
【0015】
この構成によれば、コントローラの1つの出力ポートに対して、機械操作が不可能な状態のときに行われる給油ポンプ自動停止機能を実現させる第1の制御ユニットの系統と、機械操作が可能な状態のときに行われるフリースイング機能を実現させる第2の制御ユニットの系統とを接続している。そして、レバーロックのON/OFF操作に連動する切替リレーによって、第1の制御ユニットの系統と第2の制御ユニットの系統とを適宜に切り替えて、機械操作が不可能な状態のときに行われる給油ポンプ自動停止機能と機械操作が可能な状態のときに行われるフリースイング機能とを交互に実現させている。これによって、機械操作の可能状態と不可能状態とに応じて、必要とする制御機器を使い分けることができるので、建設機械の操作面における安全性を確保することが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
請求項1記載の発明によれば、切替リレーが、コントローラの1つの出力ポートから送出される出力信号の系統を適宜に切り替えているので、コントローラの出力ポート数を削減して多くの機能を交互に実現させることができる。
【0017】
請求項2記載の発明によれば、切替リレーによって第1の制御ユニットの系統と第2の制御ユニットの系統とを切り替えて第1の機能と第2の機能とを交互に実現させているので、請求項1記載の発明の効果に加えて、コントローラの少ない出力ポート数に多くの制御ユニットを搭載して多くの機能を実現させることが可能となる。
【0018】
請求項3記載の発明によれば、切替リレーによって、第1の制御ユニットの系統と第2の制御ユニットの系統とを切り替えて、機械操作が不可能な状態のときに行われる給油ポンプ自動停止機能と機械操作が可能な状態のときに行われるフリースイング機能とを交互に実現させている。従って、請求項2記載の発明の効果に加えて、機械操作の可能状態と不可能状態とに応じて、必要とする制御機器を使い分けることができるので、建設機械の操作面における安全性を確保することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明を適用した建設機械としての油圧ショベルの側面図。
【図2】図1に示す建設機械に搭載されたコントローラを含む電気回路のブロック図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明は、キャブ室内に設置されたコントローラの少ない出力ポート数において、より多くの制御機器を搭載することができる建設機械の電気回路を実現するという目的を達成するために、キャブ室内に搭載されたコントローラからの出力信号の系統を切り替える建設機械の電気回路において、レバーロックのON/OFF操作に応じて、前記コントローラからの出力信号の系統を切り替える切替リレーを備えることを特徴とする建設機械の電気回路を提供することにより実現した。
【0021】
以下、本発明の実施形態による建設機械の電気回路を油圧ショベルに適用した場合を例に挙げ、図1及び図2を参照しながら好適な実施例について詳細に説明する。
【実施例】
【0022】
図1は、本発明を適用した建設機械としての油圧ショベルの側面を示す図である。図1において、該油圧ショベル10は、下部走行体11上に旋回機構12を介して上部旋回体13が旋回自在に載置されている。上部旋回体13には、キャブ(運転室)14と建屋18が設けられている他に、前方中央部にブーム15がブームシリンダ15aによって俯仰可能に取り付けられている。又、ブーム15の先端にはアーム16がアームシリンダ16aによって上下回動自在に取り付けられ、更に該アーム16の先端にはバケット17がバケットシリンダ17aによって可動自在に取り付けられている。
【0023】
また、上部旋回体13の建屋18内には、特に図示されていないが、バッテリ、作業機駆動用の油圧ポンプ、エンジン、各種の機器、及び補器等が配設され、ブーム15、アーム16、及びバケット17等をそれぞれのシリンダによって駆動するための動力ユニットが収納されている。また、下部走行体11の内部には、特に図示しないが複数個のバッテリと電動モータが搭載されていて、該電動モータによってクローラ19を回転駆動させてキャタビラ20を回し、油圧ショベル10を走行させるように構成されている。
【0024】
図2は、図1に示す建設機械に搭載されたコントローラを含む電気回路のブロック図である。この電気回路は、各種の制御を行うコントローラ1、電源となるバッテリ2a,2b、該バッテリ2a,2bの電源を接続/遮断するバッテリ・リレー3、給油ポンプ自動停止機能(第1の機能)を実現させる第1の制御ユニット4、建設機械の各部のフリースイング機能(第2の機能)を実現させる第2の制御ユニット5、制御コイル6aの励磁/非励磁によって第1の制御ユニット4の系統と第2の制御ユニット5の系統とを切り替える切替リレー6、機械操作を可能状態/不可能状態にするためのレバーロックのON/OFFに連動してON/OFF動作を行うレバーロックスイッチ7、及び各種のアクチュエータを制御するソレノイド8によって構成されている。尚、レバーロックスイッチ7は、レバーロックのON/OFF操作に連動するリミットスイッチによって構成されている。
【0025】
このような電機回路の構成において、バッテリ・リレー3がON状態になると、コントローラ1、第1の制御ユニット4、第2の制御ユニット5、及びレバーロックスイッチ7の入力側へ電力が供給される。レバーロックスイッチ7がOFF状態になると、建設機械の機械操作が不可能な状態となり、切替リレー6のa接点とb接点とが導通状態となる。これによって、コントローラ1からの出力信号Sgは、切替リレー6のb接点を選択して第1の制御ユニット4に入力される。したがって、第1の制御ユニット4は第1の機能、すなわち給油ポンプ自動停止機能を実現させることができる。
【0026】
また、レバーロックスイッチ7がON状態になると、建設機械の機械操作が可能な状態となり、制御コイル6aが励磁状態となって切替リレー6のa接点とc接点が導通状態となる。これによって、コントローラ1からの出力信号Sgは、切替リレー6のc接点を選択して第2の制御ユニット5に入力される。したがって、第2の制御ユニット5は第2の機能、すなわちフリースイング機能を実現させることができる。
【0027】
すなわち、レバーロックスイッチ7のON/OFF状態に応じて、コントローラ1からの出力信号Sgの系統が切替リレー6によって切り替える。これによって、レバーロックスイッチ7のOFF時(機械操作不可能時)には第1の制御ユニット4を動作させて第1の機能(給油ポンプ自動停止機能)実現させ、レバーロックスイッチ7のON時(機械操作可能時)には第2の制御ユニット5を動作させて第2の機能(フリースイング機能)実現させることができる。
【0028】
したがって、コントローラの出力信号が送出される出力ポート数を削減して(すなわち、出力ポート数を1つにまとめて)、第1の機能(給油ポンプ自動停止機能)と第2の機能(フリースイング機能)とを交互に実現させることができるので、コントローラの出力側に接続される機器のポート数を削減することが可能となる。
【0029】
以上説明したように、本発明に係る建設機械の電気回路によれば、コントローラの出力ポート数が制限されていても、その出力ポート数よりも多くの制御機器(制御ユニット)を搭載(接続)することができる。また、機械操作の可能状態と不可能状態とに応じて、必要とする制御機器を使い分けることができるので、建設機械の操作面における安全性を確保することが可能となる。
【0030】
以上、本発明の具体的な実施例を説明したが、本発明はこの実施例に限定されるものではなく、本発明の精神を逸脱しない限り種々の改変を為すことができ、そして、本発明が該改変されたものに及ぶことは当然である。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明に係る建設機械の電機回路は、コントローラの出力信号系統を切り替えることにより、機械操作の可能状態と不可能状態と交互に実現させることができるので、建設機械に限らず、各種の機械設備における安全操作に有効に利用することができる。
【符号の説明】
【0032】
1 コントローラ
2a,2b バッテリ
3 バッテリ・リレー
4 第1の制御ユニット
5 第2の制御ユニット
6 切替リレー
6a 制御コイル
7 レバーロックスイッチ
8 ソレノイド
10 油圧ショベル
11 下部走行体
12 旋回機構
13 上部旋回体
14 キャブ
14a キャブ本体
15 ブーム
15a ブームシリンダ
16 アーム
16a アームシリンダ
17 バケット
17a バケットシリンダ
18 建屋
19 クローラ
20 キャタビラ
Sg 出力信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャブ室内に搭載されたコントローラからの出力信号の系統を切り替える建設機械の電気回路において、
レバーロックのON/OFF操作に応じて、前記コントローラからの出力信号の系統を切り替える切替リレーを備えることを特徴とする建設機械の電気回路。
【請求項2】
前記切替リレーは、レバーロックのON/OFF操作に応じて、A機能を実現させる第1の制御ユニットへの出力信号の系統と、B機能を実現させる第2の制御ユニットへの出力信号の系統とを切り替えることを特徴とする請求項1記載の建設機械の電気回路。
【請求項3】
前記A機能は、建設機械の機械操作が不可能な状態のときに行われる給油ポンプ自動停止機能であり、
前記B機能は、建設機械の機械操作が可能な状態のときに行われるフリースイング機能である
ことを特徴とする請求項2記載の建設機械の電気回路。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−231594(P2011−231594A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−105591(P2010−105591)
【出願日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【出願人】(502246528)住友建機株式会社 (346)
【Fターム(参考)】