説明

建設機械用メンテナンス情報管理装置及び建設機械用メンテナンス情報管理方法

【課題】建設機械の消耗品のメンテナンス時期を的確に把握できるようにする。
【解決手段】特定の作業の作業時に検出された前記消耗品の負荷を代表させる代表値を累積して記憶する記憶手段56と、記憶手段56に累積して記憶された負荷代表値に基づいて、当該消耗品のメンテナンス時期に関する情報を導出する導出手段59が含まれている。記憶手段56は、吊り作業又はブーム起伏作業によって負荷のかかる油圧ホース類の負荷代表値として、当該作業の作業半径と吊り荷重との積であるモーメントと作業時間とに基づくモーメント時間を累積して記憶する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設機械用メンテナンス情報管理装置及び建設機械用メンテナンス情報管理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、下記特許文献1〜4に開示されているように、クレーン等の建設機械に設けられている部品の修理又は交換時期についての情報を管理する技術が公知となっている。このうち特許文献1のものでは、油圧ショベルの部位毎の稼働時間を収集しておき、交換部品が関わる部位の稼働時間により、当該交換部品の交換時間間隔についての情報を蓄積するようにしている(文献1の図8等参照)。そして、例えばエンジンオイルフィルタの交換時間間隔を、エンジンの稼働時間ベースでデータベースに格納するようにしている(特許文献1の図9等参照)。特許文献2及び3のものでも、交換部品の関わる部位の稼働時間を蓄積する点で特許文献1と同様である。そして特許文献2では、その蓄積されたデータを基に当該交換部品の修理交換時期を算出し、また特許文献3では、その蓄積されたデータを基に今後の機械管理費用及び機械価値推移を算出するようにしている。
【0003】
一方、特許文献4では、建設機械を構成する主要部品について、作業内容、作業負荷、稼動環境条件及び使用条件と対応させた評価係数を設定し、この評価係数と、入力された稼働時間情報を基に当該部品の余命を算出している(特許文献4の図7、図11等参照)。ここで作業内容とは、掘削作業、整地作業等を指し、作業負荷は機械の機種ごとに複数段階に設定され、稼動環境条件とは砂塵地域、高地地域等をいい、使用条件は潤滑油の種類等に応じて選択されると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第WO01/073217号パンフレット
【特許文献2】特開2004−21290号公報
【特許文献3】特開2004−46550号公報
【特許文献4】特開2002−99598号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記特許文献1〜3のものでは、エンジン、アタッチメント等の部位ごとの稼働時間データを基に各部品の修理交換時期等を取得している。しかしながら、単に稼働時間を考慮するだけでは、部品の消耗度合いを的確に把握することは困難である。すなわち、エンジンが稼動しているといってもその負荷は作業時と待機時とでは大きく異なるため、それに応じて部品の消耗度合いも大きく異なる。このため、単に稼働時間を考慮するだけでは建設機械の消耗品のメンテナンス時期を的確に把握することは困難であるという問題がある。
【0006】
一方、特許文献4に開示されているシステムでは、主要部品についての余命を算出するに際し、作業負荷等が考慮されている。しかしながら、この作業負荷等は予め設定されるものなので、作業負荷等を考慮するからといって、作業時に実際に主要部品にかかる負荷を的確に把握できるものではない。このため、このものでも建設機械の消耗品のメンテナンス時期を的確に把握することは困難であるという問題が残されている。
【0007】
そこで、本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、建設機械の消耗品のメンテナンス時期を的確に把握できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の目的を達成するため、本発明は、クレーンの消耗品についてのメンテナンス情報を管理する装置であって、巻上げウィンチから繰り出される前記消耗品としてのワイヤロープの負荷を代表させる代表値として、シーブ径、シーブ個数及びロープ径と、基準となるメンテナンス時とを関連付けて記憶する記憶手段と、前記巻上げウィンチから繰り出されたワイヤロープが通過するシーブのシーブ径及びシーブ個数と、当該ワイヤロープのロープ径とに基づいて、当該ワイヤロープのメンテナンス時期に関する情報を導出する導出手段が含まれている。
【0009】
本発明では、クレーンの消耗品としての巻上げウィンチのワイヤロープについてのメンテナンス時期を的確に把握することが可能となる。また、本発明では、ワイヤロープ自体の寿命に基づくメンテナンス時期を推定することが可能となる。
【0010】
そして、前記記憶手段は、吊り作業の作業回数を累積して記憶するのが好ましく、この場合には、前記導出手段は、前記記憶手段に累積して記憶された作業回数に基づいて、前記巻上げウィンチのメンテナンス時期に関する情報を導出するのが好ましい。
【0011】
また、前記記憶手段は、巻上げウィンチのオイルの負荷を代表させる代表値として、前記巻上げウィンチの定格負荷に対する吊り作業時に巻上げウィンチにかかった負荷の割合である負荷率と吊り作業時間との乗算値を累積して記憶するのが好ましく、この場合には、前記導出手段は、前記乗算値に基づいて、前記オイルのメンテナンス時期に関する情報を導出するのが好ましい。
【0012】
吊り作業によって巻上げウィンチに実際にかかった負荷は、この巻上げウィンチのオイルの消耗度合いに影響を与える。したがって本態様では、巻上げウィンチの負荷率と吊り作業時間との乗算値を累積し、その累積値に基づいて当該ウィンチのオイルのメンテナンス時期を導出するので、当該オイルのメンテナンス時期を的確に把握することができる。
【0013】
また、前記記憶手段は、ブーム起伏用ウィンチのオイルの負荷を代表させる代表値として、ブーム起伏用ウィンチの定格負荷に対するブーム起伏作業時にブーム起伏用ウィンチにかかった負荷の割合である負荷率と、ブーム起伏作業時間との乗算値を累積して記憶するのが好ましく、この場合には、前記導出手段は、前記乗算値に基づいて、前記オイルのメンテナンス時期に関する情報を導出するのが好ましい。
【0014】
ブームを起伏させる際にブーム起伏用ウィンチに実際にかかった負荷は、ブーム起伏用ウィンチのオイルの消耗度合いに影響を与える。したがって本態様では、ブーム起伏用ウィンチの負荷率とブーム起伏作業時間との乗算値を累積し、その累積値に基づいて当該ウィンチのオイルのメンテナンス時期を導出するので、当該オイルのメンテナンス時期を的確に把握することができる。
【0015】
また、本発明は、クレーンの消耗品についてのメンテナンス情報を管理する方法であって、巻上げウィンチから繰り出される前記消耗品としてのワイヤロープの負荷を代表させる代表値として、シーブ径、シーブ個数及びロープ径と、基準となるメンテナンス時とを関連付けて記憶するステップと、前記巻上げウィンチから繰り出されたワイヤロープが通過するシーブのシーブ径及びシーブ個数と、当該ワイヤロープのロープ径とに基づいて、当該ワイヤロープのメンテナンス時期に関する情報を導出する導出ステップとが含まれている。
【0016】
本発明では、建設機械の消耗品としての巻上げウィンチのワイヤロープについてのメンテナンス時期を的確に把握することが可能となる。また、本発明では、ワイヤロープ自体の寿命に基づくメンテナンス時期を推定することが可能となる。
【0017】
ここで、メンテナンス情報管理方法には、吊り作業の作業回数を累積して記憶する蓄積ステップと、前記記憶された作業回数に基づいて、前記巻上げウィンチのメンテナンス時期に関する情報を導出する導出ステップが含まれているのが好ましい。
【0018】
また、メンテナンス情報管理方法には、巻上げウィンチのオイルの負荷を代表させる代表値として、前記巻上げウィンチの定格負荷に対する吊り作業時に前記巻上げウィンチにかかった負荷の割合である負荷率と、吊り作業時間との乗算値を累積して記憶する蓄積ステップと、前記記憶された乗算値に基づいて、前記オイルのメンテナンス時期に関する情報を導出する導出ステップが含まれているのが好ましい。
【0019】
また、メンテナンス情報管理方法には、ブーム起伏用ウィンチのオイルの負荷を代表させる代表値として、ブーム起伏用ウィンチの定格負荷に対するブーム起伏作業時に前記ブーム起伏用ウィンチにかかった負荷の割合である負荷率と、ブーム起伏作業時間との乗算値を累積して記憶する蓄積ステップと、前記記憶された乗算値に基づいて、前記オイルのメンテナンス時期に関する情報を導出する導出ステップが含まれているのが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
以上説明したように、本発明によれば、建設機械の消耗品のメンテナンス時期を的確に把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本実施形態に係る建設機械用メンテナンス情報管理装置とクレーンの制御器との制御ブロック図である。
【図2】前記クレーンの構成を概略的に示す図である。
【図3】油圧ホース類の設定表示画面を示す図である。
【図4】アワーメータ稼働時間による油圧ホース類の管理画面を示す図である。
【図5】経年時間による油圧ホース類の管理画面を示す図である。
【図6】負荷代表値による油圧ホース類の管理画面を示す図である。
【図7】作業回数による油圧ホース類の管理画面を示す図である。
【図8】アワーメータ稼働時間によるワイヤロープ類の管理画面を示す図である。
【図9】経年時間によるワイヤロープ類の管理画面を示す図である。
【図10】負荷代表値によるワイヤロープ類の管理画面を示す図である。
【図11】作業回数によるワイヤロープ類の管理画面を示す図である。
【図12】アワーメータ稼働時間によるギアオイル類の管理画面を示す図である。
【図13】経年時間によるギアオイル類の管理画面を示す図である。
【図14】負荷代表値によるギアオイル類の管理画面を示す図である。
【図15】メンテナンス情報管理に関するクレーンの動作制御を示すフロー図である。
【図16】メンテナンス情報管理に関する情報管理装置の動作制御を示すフロー図である。
【図17】本発明の実施形態3に係る情報管理装置が適用されたクレーンの構成を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を実施するための最良の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0023】
(実施形態1)
図1は、本発明に係る建設機械用メンテナンス情報管理装置の一実施形態と、この情報管理装置1と通信可能な建設機械の一例としてのクレーン10とを概略的に示している。情報管理装置1は、例えば管理センタ5に設けられている。情報管理装置1の詳細については後述することとし、まずクレーン10の構成について図2を参照しつつ説明する。
【0024】
クレーン10は、図2に示すように、クレーン本体11と、このクレーン本体11に装着されるアタッチメント12とからなっている。クレーン本体11は、クローラ式の下部走行体14と、この下部走行体14上に縦軸(旋回軸)まわりに旋回自在に搭載された上部旋回体15とを備えている。下部走行体14には、左右のクローラ17を個別に駆動する走行モータ19が設けられている。
【0025】
前記アタッチメント12は、上部旋回体15に横軸(起伏軸)まわりに起伏可能に支持されたブーム21を備えている。ブーム21の先端部には種々のシーブ23,24が取り付けられている。本実施形態1では、クレーン10は、ブーム21だけで荷物を吊る狭義のクレーン作業形態をとる。
【0026】
上部旋回体15には、ブーム21等を起伏動作させるためのブーム起伏用ウィンチ26が設けられていて、このウィンチ26からブーム起伏用のワイヤロープであるブーム起伏ロープ27が引き出されるようになっている。このブーム起伏ロープ27の繰り出し、引き込みによりブーム21を起伏動作させるようになっている。
【0027】
上部旋回体15には、主巻ウィンチ30と補巻ウィンチ31とが搭載されている。主巻ウィンチ30は、主巻用のワイヤロープである主巻ロープ32の繰り出し、引き込みにより主巻フック28を上げ下げする。主巻ウィンチ30から引き出された主巻ロープ32は、ブーム先端のシーブ23を介して垂下されて多数本掛け状態で主巻フック28を吊持し、主として大重量物を低速で上げ下げする主巻吊り作業を行うのに利用される。一方、補巻ウィンチ31は、補巻用のワイヤロープである補巻ロープ33の繰り出し、引き込みにより補巻フック29を上げ下げする。補巻ウィンチ31から引き出された補巻ロープ33は、補助シーブブラケット35のシーブ24から垂下されて補巻フック29を一本掛け状態で吊持し、主として軽量物を高速で上げ下げする補巻吊り作業を行うのに利用される。なお、主巻吊り作業と補巻吊り作業が同時に行われる場合もある。
【0028】
運転室内には、オペレータがウィンチ26,30,31を図略の制御弁等を介して操作するための操作レバー37(図1参照)が設けられている。この操作レバー37に取り付けた図略のリミットスイッチ(検出手段)の出力信号から各種作業時間を検出するようにしている。この作業時間は、たとえエンジンオンであったとしても、オペレータが、この操作レバー37を操作していない時間は、ブーム21等による作業時間に含めない場合と、操作レバー37を操作していなくても作業時間に含める場合に分かれるが、評価の項目により、適切な計測がなされるものとする。
【0029】
クレーン10には、制御器41(図1参照)が設けられている。この制御器41には、操作レバー37、センサ45,47,49、アワーメータ51等から出力された信号が入力される。センサ45は、ブーム21の作業角度αを検出するセンサである。センサ45としては、例えばエンコーダやポテンショメータが用いられる。センサ47は、主巻フック28による吊り荷重Wを検出する検出手段としてのセンサである。またセンサ49は、補巻フック29による吊り荷重Wを検出する検出手段としてのセンサである。これらセンサ47,49としては、例えばロードセルが用いられる。また、厳密に言えば、吊り荷重Wには各種自重成分が含まれているので、実荷重はこの自重成分を差し引いたものであるが、本実施形態では、説明の簡単化のために、吊り荷重Wを実荷重と略等しいものとしている。
【0030】
制御器41には、入力信号を計測時刻等と関連付けて記憶する記憶部41aと、これらの入力信号に基づいてクレーン10の種々の動作に関する制御を実行する運転制御部41bと、ウィンチ26,30,31の過負荷を防止する過負荷防止装置41cとが設けられており、運転制御部41bは所定の制御信号をウィンチ26,30,31の上記制御弁等にそれぞれ出力するようになっている。
【0031】
過負荷防止装置41cは、ブーム21の作業角度αと、予め記憶部41aに記憶したおいたブーム長さLと、下部走行体14上における上部旋回体15の旋回軸からブーム21の起伏軸までの距離R0とに基づいて作業半径Rを演算する(作業半径の検出手段として機能)。この演算式は、以下のとおりである。
【0032】
R=L・cos(α)+R0 ・・・(1)
また制御器41には、通信制御部41dが設けられていて、管理センタ5との通信が可能となっており、記憶部41aに記憶された各種データを、そのクレーン10の号機シリアル番号(例えば1号機、2号機、・・・)や機種名称等のデータとともに、所定のタイミングで管理センタ5に送信するようになっている。
【0033】
なお、制御器41は、図略のCPU等を備えており、上記運転制御部41bと、通信制御部41dと、過負荷防止装置41cとは、例えば記憶部41aの特定記憶領域に予め記憶された各種プログラムを、このCPUに読み込んで実行することにより構築されるものである。
【0034】
一方、前記情報管理装置1は、クレーン10の消耗品の消耗度合いを評価するためのものであって、本実施形態では、この情報管理装置1は管理センタ5に設けられている。管理センタ5とは、クレーンメーカのサービス部門、クレーン販売会社等、クレーンのメンテナンス等が可能な組織を有するセンタを意味している。
【0035】
情報管理装置1は、例えば図1に示すように、通信手段55と、記憶手段56と、負荷演算手段57と、作業回数演算手段58と、導出手段59と、報知手段60と、検索手段61とを備えている。なお、この情報管理装置1についても、図略のCPU等を備えており、通信手段55と負荷演算手段57と作業回数演算手段58と導出手段59と報知手段60と検索手段61とは、例えば記憶手段56の特定記憶領域に予め記憶された各種プログラムを、このCPUに読み込んで実行することにより構築されるものである。
【0036】
また、情報管理装置1は、例えばCRT等の出力手段65のメニュー画面上に表示されるソフトスイッチである入力手段64を用いて、そのメニュー画面上で所定の操作を行うことによって、クレーン10の種々の消耗品についてのメンテナンス情報の管理を行うように構成されている。
【0037】
消耗品としては、例えば油圧ホース類、ギアオイル類、ワイヤロープ類等が挙げられる。油圧ホース類にはブレーキホース、クラッチホース、プレッシャラインホース等が含まれる。ギアオイル類には、旋回モータ、ウィンチ26,30,31等のギアオイルが含まれる。ワイヤロープ類には、主巻ウィンチ30、補巻ウィンチ31、ブーム起伏用ウィンチ26等のワイヤロープ32,33,27が含まれる。なお、消耗品としての油圧ホース類は、本発明の参考例に係るものである。また、本明細書において、この油圧ホース類に係る記載部分は、本発明の参考例に係る記載である。
【0038】
各消耗品に対して、メンテナンス情報の管理項目がそれぞれ複数設定されている。例えば、油圧ホース類及びワイヤロープ類については、アワーメータ51による稼働時間、経年時間、後述の負荷代表値及び作業回数の4つの管理項目が設定されている。またギアオイル類については、アワーメータ51による稼働時間、経年時間及び後述の負荷代表値の3つの管理項目が設定されている。
【0039】
通信手段55は、クレーン10の通信制御部41dと通信用アンテナ41e及び通信用アンテナ55aを介して無線通信できるように構成されている。これにより、管理センタ5に配置された情報管理装置1は、各作業現場にあるクレーン10の1号機、2号機、・・・とデータ授受が可能となっている。
【0040】
記憶手段56には、各種初期設定値、予め入力されたユーザ登録データ、M/L(過負荷防止装置)コード、ユーザデータ等が記憶されている。また、記憶手段56は、複数のクレーン10から所定のタイミングで送信されてくる各種データを、その号機シリアル番号や機種名称のデータに基づいて、1号機、2号機・・・ごと、その機種ごとに分け、それらを累積して記憶するようになっている。
【0041】
前記負荷演算手段57は、クレーン10の消耗品にかかった負荷を代表させる代表値(負荷代表値)を、演算により消耗品ごとに導出する。そして、記憶手段56は、この導出された負荷代表値を消耗品ごとに累積して記憶する。
【0042】
前記負荷代表値とは、特定の作業において、その作業時に数値で検出されるものであって、その消耗品にかかった負荷そのものではなく、当該負荷に影響を与えるものをいう。言い換えると、消耗品の消耗度合いに影響する負荷そのものを検出するのではなく、クレーン10が元々有するセンサ等を利用して消耗品の消耗度合いを予測している。
【0043】
負荷代表値を具体的に説明すると、例えばブレーキホース、プレッシャラインホース等に対する負荷代表値としては、モーメント時間MTが該当する。ウィンチ26,30,31等のギアオイルの負荷代表値としては、ウィンチ負荷率積LTが該当する。旋回モータのブレーキホースやギアオイルについての負荷代表値としては、旋回時間が該当する。クラッチホースの負荷代表値としては、クラッチ断接回数が該当する。
【0044】
前記モーメント時間MTは、作業半径Rと吊り荷重Wとの積であるモーメントMに作業時間Tがさらに乗算されたものであり、演算式は、以下の通りである。
【0045】
MT=R・W・T ・・・(2)
なお、モーメント時間MTは、モーメントのべき乗に作業時間Tを乗算して求めるようにしてもよい。この場合の演算式は以下のとおり
MT=(R・W)n・T ・・・(2’)
となる。ただし、n=1,2,・・・である。
【0046】
前記ウィンチ負荷率積LTは、ウィンチ26,30,31の定格荷重(ラインプル定格値)Woに対するロープ1本当りの張力S(=W/K)の割合である負荷率に作業時間Tが乗算されたものである。Wは吊り荷重であり、Kはロープ掛け数である。ウィンチ負荷率積LTの演算式は、
LT=(S/Wo)・T ・・・(3)
となる。ここでいう作業時間Tは、主巻ウィンチ30、補巻ウィンチ31を駆動する作業では、これらのウィンチ30,31による吊上げ作業の時間となり、一方、ブーム起伏用ウィンチ26を駆動する作業では、このブーム起伏用ウィンチ26によるブーム21の起伏動作の時間となる。
【0047】
前記作業回数演算手段58は、操作レバー37の操作に基づいて吊り作業回数及び旋回回数を演算する。例えば、吊り荷を引き上げる操作が行われて、その後に旋回操作及び吊り荷を降ろす操作が行われると吊り作業回数を1回とカウントする。演算された吊り作業回数及び旋回回数は記憶手段56に記憶されて積算されるようになっている。
【0048】
記憶手段56には、アワーメータ51によって計時された稼働時間が累積的に記憶されるとともに、エンジン駆動に関係なく計時される経年時間が累積的に記憶される。稼働時間及び経年時間は、消耗品が交換された場合、または所定の場合にリセットされる。
【0049】
前記導出手段59は、各種演算を行うことにより、消耗品についてのメンテナンス時期に関する情報を導出する。すなわち、導出手段59は、基準値から負荷演算手段57によって演算された負荷代表値を減算することにより、その差(残負荷)をメンテナンス時期に関する情報として導出する。例えば、クラッチホース以外の油圧ホース類については、負荷代表値としてモーメント時間を導出し、クラッチホースについては断接回数を導出する。またワイヤロープ類については、負荷代表値として負荷率積指数を導出し、旋回モータ以外のギアオイル類については、負荷代表値として負荷率積指数を導出し、旋回モータのギアオイルについては、負荷代表値として旋回時間を導出する。なお、ワイヤロープ類の負荷代表値としての負荷率積は、本発明の参考例に係るものである。また、本明細書においてワイヤロープ類の負荷代表値として負荷率積を用いることに係る記載部分は、本発明の参考例に係る記載である。
【0050】
また、導出手段59は、基準値から作業回数演算手段58によって演算された吊り作業回数を減算することにより、その差(残回数)をメンテナンス時期に関する情報として導出する。また導出手段59は、基準値から作業回数演算手段58によって演算された旋回回数を減算することにより、その差(残回数)をメンテナンス時期に関する情報として導出する。また導出手段59は、基準値からアワーメータ51によって計測された稼働時間を減算することにより、その差(残時間)をメンテナンス時期に関する情報として導出する。また導出手段59は、基準値から交換またはメンテナンス後の経年時間を減算することにより、その差(残時間)をメンテナンス時期に関する情報として導出する。
【0051】
前記基準値は、何れも記憶手段56に記憶されている。各基準値は、経験に基づいて妥当な値として設定されたものである。例えば、ブレーキホースの負荷代表値の基準値は、定格荷重の10%の荷重及び平均的な作業半径Rで吊り作業を行ったときの2年分(例えば400日)の作業時間に相当するモーメント時間MTが設定されている。またブレーキホースについての吊り作業回数の基準値は、経験によって得られている1日あたりの平均的な吊り作業回数で2年間(例えば400日)吊り作業したときの吊り作業回数が設定されている。また、アワーメータによる稼働時間及び経年時間の基準値は、2年分に相当する時間が採用されており、機種別の一覧表となって記憶されている。
【0052】
前記報知手段60は、導出手段59によって導出された差(残負荷など)が所定の値以下のときに出力手段65の画面上でメンテナンスを促すための表示を行う。この表示は、例えば「メンテナンスをしてください」等の表示でもよく、あるいは文字色や背景色を変える等によって強調する表示であってもよい。また導出手段59によって導出された値がマイナスになったとき(即ち、メンテナンス時期を経過しているとき)には、その表示をさらに強調したり表示を点滅させたりしてもよい。
【0053】
出力手段65の表示画面として、メニュー画面、消耗品グループごとの管理画面等が用意されている。メニュー画面には、メンテナンス管理を行う消耗品グループを選択する項目や他の選択項目が用意されている。
【0054】
各消耗品グループの管理画面には、設定表示画面とメンテナンス管理画面とが設けられている。図3に油圧ホース類の設定表示画面70を例示している。
【0055】
前記設定表示画面70は、各消耗品についての設定等を行うための画面であり、この画面70には、交換回数表示ボタン70a、交換履歴出力ボタン70b、交換実施ボタン70c、リセットボタン70d、設定ボタン70eが消耗品ごとに設けられている。交換回数表示ボタン70aが押されると、その消耗品の交換回数が表示される。交換履歴出力ボタン70bを押すと、その消耗品の交換履歴が表示される。交換実施ボタン70cが押されると、その消耗品の交換又はメンテナンスが行われたことを示す信号が出力されて、経年時間等がリセットされるとともに交換回数がカウントされ、交換履歴に記憶される。リセットボタン70dが押されると、経年時間等はリセットされるが、交換回数・交換履歴には反映されない。設定ボタン70eは、基準値の設定及び変更をするためのボタンである。
【0056】
前記メンテナンス管理画面は、各消耗品のメンテナンス時期を管理するための画面であり、各消耗品グループに対して管理項目ごとに用意にされている。例えば油圧ホース類のメンテナンス管理画面は、アワーメータ稼働時間による管理画面72(図4)と、経年時間による管理画面73(図5)と、負荷代表値による管理画面74(図6)と、作業回数による管理画面75(図7)が用意されている。アワーメータ稼働時間及び経年時間による管理画面72,73においては、基準値と、交換後の計測時間と、その差(残時間)とが時間単位で表示される。また負荷代表値指数による管理画面74においては、基準値と、交換後の計測値(負荷代表値)と、その差(残指数)とがモーメント時間単位で表示される。また作業回数による管理画面75においては、基準値と、交換後の作業回数と、その差(残回数)とが作業回数単位で表示される。
【0057】
また例えばワイヤロープ類のメンテナンス管理画面は、アワーメータ稼働時間による管理画面76(図8)と、経年時間による管理画面77(図9)と、負荷代表値による管理画面78(図10)と、作業回数による管理画面79(図11)が用意されている。また例えばギアオイル類のメンテナンス画面は、アワーメータ稼働時間による管理画面80(図12)と、経年時間による管理画面81(図13)と、負荷代表値による管理画面82(図14)とが用意されている。
【0058】
前記検索手段61は、機型、機号、ユーザ、消耗品グループ、消耗品の名称、管理項目、稼動地等によるキーワード検索を可能に構成されている。そして、検索手段61は、ユーザ、残時間等によるデータのソーティングを可能に構成されている。
【0059】
次に、クレーン10と情報管理装置1のメンテナンス情報管理に関する動作制御について説明する。図15はクレーン10の関連動作を示すフローチャート、図16は管理センタ5内の情報管理装置1の制御動作を示すフローチャートである。
【0060】
図15において、クレーン10の動作中、操作レバー37の操作信号が、制御器41に入力され(ステップST11)、図略の制御弁等を動かすことで、ウィンチ26,30,31等を駆動する。一方、動作によってクレーン10のブーム21が動くことで、そのブーム21に取り付けられたセンサ45で作業角度αを検出して、制御器41の過負荷防止装置41cに入力される。すると、この過負荷防止装置41cで、ブーム21の作業角度αと、ブーム長さLとを、前記(1)式に代入することにより、作業半径Rを演算する。この作業半径Rが運転制御部41bに入力される。また、負荷を吊っているワイヤロープの張力の変化等をセンサ47,49で計測することで吊り荷重Wを検出し、操作レバー37の操作状況からブーム21による吊り作業の時間Tを検出して、制御器41の運転制御部41bにそれらの検出データを含む各種データが入力される(ステップST12)。
【0061】
このとき、運転制御部41b内には、作業半径R、作業時間T等の各データが存在している。さらに、センサ47,49による負荷実荷重のデータも存在している。これらのデータをサンプリングタイムごとに関連付けて制御器41の記憶部41a内に蓄積して(ステップST13)、一定時間ごとに通信制御部41dへ送信する(ステップST14)。この通信制御部41dは、決められた時刻等にブーム21の作業半径Rと作業時間Tとの組み合わせのまま、通信用アンテナ41eを介して管理センタ5側にデータを送信する。
【0062】
各クレーン10から送信されたデータは、図16に示すように、通信用アンテナ55aを介して、管理センタ5内に設けられた情報管理装置1の通信手段55で受信される(ステップST51)。この受信データは、記憶手段56に一旦蓄積される(ステップST52)。その蓄積時において、受信データは、クレーン10の1号機、2号機、・・・ごと、機種ごとに分けて記憶される。このデータには負荷代表値等が含まれている。すなわち、ステップST52は、負荷代表値を累積して記憶する蓄積ステップを構成している。
【0063】
この蓄積されたデータは、クレーン10の各種消耗品のメンテナンス時期に関する情報の生成に供される。すなわち、負荷演算手段57が、前記(2)式を用いてモーメント時間MTを求めるとともに、前記(3)式を用いてウィンチ負荷率積LTを求める(ステップST53)。また、作業回数演算手段58が、吊り作業回数及び旋回回数を積算する(ステップST54)。そして、導出手段59によって、各消耗品について管理項目ごとにメンテナンス時期に関する情報が導出される(ステップST55)。すなわち、ステップST55は導出ステップを構成している。
【0064】
例えば主巻ロープ32については、アワーメータによる稼働時間(管理項目1)、経年時間(管理項目2)、負荷代表値(管理項目3)、吊り作業回数(管理項目4)についてメンテナンス時期に関する情報が導出される。
【0065】
そして、管理センタ5でのオペレータの操作に応じて、各消耗品の管理画面において、基準値、現在までの計測値、残時間等が表示される(ステップST56)。このとき、各消耗品に対してそれぞれ全管理項目の情報が表示される。そして、少なくとも1つの管理項目の残時間等が所定値未満であれば、メンテナンスを促すための表示がなされる。これにより、管理センタ5のオペレータは、メンテナンス時期が近づいている消耗品を的確に把握することができる。しかもこのとき、残時間等が所定値未満になっているものが強調されて表示されるので、オペレータが一見してメンテナンスすべき消耗品を認識することができる。
【0066】
以上説明したように、本実施形態によれば、実際に作業を行っている時に検出された消耗品の負荷についての代表値を累積し、その累積値に基づいて、当該消耗品のメンテナンス時期を導出するので、クレーン10の消耗品についてのメンテナンス時期を的確に把握することができる。
【0067】
そして、実際の作業時に油圧ホース類にかかる負荷に影響を与えるモーメント時間を累積し、その累積値に基づいて、当該油圧ホース類のメンテナンス時期を導出すれば、油圧ホース類のメンテナンス時期を的確に把握することができるようになる。すなわち、吊り作業等では、油圧ホース類にモーメント時間と相関のある負荷が蓄積されるので、このモーメント時間に基づいて演算を行うことにより、油圧ホース類のメンテナンス時期を的確に把握できるようになる。
【0068】
また、メンテナンス時期に関する情報として、モーメント時間に基づくものと、作業回数に基づくものとの双方が得られれば、機種、作業形態等に応じて、より適した基準を採用できるようになり、油圧ホース類のメンテナンス時期をより正確に把握できるようになる。
【0069】
一方、吊り作業によって主巻ウィンチ30及び補巻ウィンチ31に実際にかかった負荷と、そのウィンチ30,31から繰り出される主巻ロープ32及び補巻ロープ33の消耗度合いとは、相関がある。したがって、主巻ウィンチ30の負荷率及び補巻ウィンチ31の負荷率と吊り作業時間との乗算値を累積し、その累積値に基づいて主巻ロープ32及び補巻ロープ33のメンテナンス時期に関する情報を導出すれば、当該ワイヤロープ32,33のメンテナンス時期を的確に把握することができるようになる。
【0070】
また、ブーム21を起伏させる際にブーム起伏用ウィンチ26に実際にかかった負荷と、ブーム起伏ロープ27の消耗度合いとは、相関がある。したがって、ブーム起伏用ウィンチ26の負荷率とブーム起伏作業時間との乗算値を累積し、その累積値に基づいてブーム起伏ロープ27のメンテナンス時期を導出すれば、当該ロープ27のメンテナンス時期を的確に把握することができるようになる。
【0071】
また、吊り作業によって主巻ウィンチ30及び補巻ウィンチ31に実際にかかった負荷は、このウィンチ30,31のギアオイルの消耗度合いに影響を与える。したがって本実施形態1では、主巻ウィンチ30の負荷率及び補巻ウィンチ31の負荷率と吊り作業時間との乗算値を累積し、その累積値に基づいて当該ウィンチ30,31のギアオイルのメンテナンス時期を導出するので、当該ギアオイルのメンテナンス時期を的確に把握することができる。
【0072】
ブームを起伏させる際にブーム起伏用ウィンチ26に実際にかかった負荷は、ブーム起伏用ウィンチ26のギアオイルの消耗度合いに影響を与える。したがって本実施形態1では、ブーム起伏用ウィンチ26の負荷率とブーム起伏作業時間との乗算値を累積し、その累積値に基づいて当該ウィンチ26のギアオイルのメンテナンス時期を導出するので、当該ギアオイルのメンテナンス時期を的確に把握することができる。
【0073】
なお、本発明は、この実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変更、改良等が可能である。例えば、図2に示す構成では、巻上げ用のウィンチとして主巻ウィンチ30と補巻ウィンチ31の2つのウィンチが設けられる構成としたが、これ以外の巻上げウィンチ(例えば、副巻ウィンチ等)が設けられる構成にしてもよい。この場合には、副巻ウィンチ等についても主巻ウィンチ30、補巻ウィンチ31と同様にギアオイル、ワイヤロープ等のメンテナンス情報を導出することができる。
【0074】
また本実施形態1では、管理センタ5側に情報管理装置1を設けている場合について説明したが、情報管理装置1の全部又は一部をクレーン10に設けてもよい。情報管理装置1の全部をクレーン10に設けた場合には、クレーン10と情報管理装置1との間の通信手段が不要となる。また、情報管理装置1の一部として、モーメント時間MTの演算を行う負荷演算手段57をクレーン10に設けた場合には、通信データ量が少なくなり、その分だけ通信費用を節約することができる。
【0075】
本実施形態1では、いわゆるラチス構造のブーム21を備えたクローラクレーン(LBCC)について説明したが、この発明の適用範囲はこれに限定されず、本発明を、例えばボックス構造の伸縮ブームを備えたホイールクレーンについても、上記と同様に適用できるのはもちろんである。
【0076】
また、本実施形態1では、クレーン10と管理センタ5との間を無線で通信可能としているが、これは現地から管理センタ5に戻ってこないクレーンなどを想定しているからであり、例えば管理センタ5に戻ってくるクレーンの場合には、現地から管理センタ5に帰ってくる都度にデータの授受をカード等で行ってもよい。
【0077】
(実施形態2)
本実施形態2では、ワイヤロープ類のメンテナンス時期を導出するための負荷代表値として、負荷率積を用いる代わりに、ロープ径、シーブ径及び通過シーブ個数を負荷代表値として用いている。以下具体的に説明する。
【0078】
ワイヤロープの寿命推定式として、以下の式(4)が提唱されている(ニーマンの式)。
【0079】
【数1】

【0080】
ここで、aはシーブ形状による係数、bはワイヤロープの構成による係数である。この推定式によってワイヤロープの寿命を推定することは可能だが、絶対的な寿命の算出は困難であるばかりでなく、各機種についてワイヤロープごとにデータを記憶するとなるとデータ量が膨大になるという不具合も生ずる。そこで、本実施形態2では、基本となる基準値を予め設定しておいてその基準値との差を導出することにより、メンテナンス時期を得るようにしている。
【0081】
すなわち、ロープ径をdとし、シーブ径をDとし、ワイヤロープが通過するシーブ個数(ただし、ウィンチを除く)をnとし、基準となるメンテナンス時期に相当するものとしてD/d=20、n=1の場合の基準値を例えば200000回と設定した場合、前記ニーマンの式を簡略化して表すと、
200000=1/n×定数×{(D/d)/σt}2 ・・・(5)
の関係式が成り立つ。そして(5)式を用いると、D/d=18の場合には、N=162000回となり、さらに通過シーブ数nが2の場合には、N=81000回となる。実際にはσt(荷重による応力成分)にも依存するため、絶対的な寿命の推定にはならないが、経験に基づいて設定される基準値を基にして、ワイヤロープについての負荷代表値の相対的な基準値を得ることができる。そして、ワイヤロープ類の管理項目3として、この相対的な基準値を用いてメンテナンス時期に関する情報の導出を行うことができる。
【0082】
したがって、本実施形態2では、ワイヤロープの寿命推定式を間接的に利用しているので、ワイヤロープ自体の寿命に基づくメンテナンス時期を推定することができる。しかも、経験から得られた基準値を基にして相対的な予測値を導出するようにしているので、実際の荷重から応力を計算して絶対的予測値を導出する場合に比べ、データ量を大幅に低減することができる。この結果、メモリ容量が膨大になるのを回避しつつ、ワイヤロープのメンテナンス時期を予測することが可能となる。一方、ロープの寿命予測についてもウィンチの定格荷重に対する負荷(負荷率)に基づく負荷率積を基準としている場合には、ロープの定格荷重よりも小さな定格荷重に設定されるウィンチの定格荷重に基づくクレーンとしての仕事を代表しやすく、ワイヤロープの消耗度合いを過大に評価してしまうのを防止することができる。
【0083】
なおその他の構成、作用及び効果は実施形態1と同様である。
【0084】
(実施形態3)
図17に示すように、本実施形態3は、ブーム21の先端にラッフィングジブ84を取り付けたクレーン10に適用したものである。このクレーン10では、ラッフィングジブ84先端で荷物を吊るラッフィング作業形態となる。
【0085】
クレーン10の上部旋回体15には、ジブ起伏ウィンチ85が搭載されている。このウィンチ85からジブ起伏用のワイヤロープであるジブ起伏ロープ86が繰り出され、引き込まれることによりジブ84を起伏動作させるようになっている。
【0086】
また、クレーン10には、実施形態1に加え、ラッフィングジブ84の作業角度βを検出するセンサ88が設けられている。センサ88としては、例えばエンコーダやポテンショメータが用いられる。
【0087】
過負荷防止装置41cは、ブーム21の作業角度α及び予め記憶部41aに記憶したおいたブーム長さLと、ラッフィングジブ84の作業角度β及び予め記憶部41aに記憶したおいたジブ長さL’と、予め記憶部41aに記憶したおいた下部走行体14上における上部旋回体15の旋回軸からブーム21の起伏軸までの距離R0に基づいて作業半径R’を演算する。この演算式は、以下のとおりである。
【0088】
R’=L・cos(α)+L’・sin(β)+R0 ・・・(6)
一方、情報管理装置1の負荷演算手段57は、前記式(2)(2’)における作業半径Rをこの式(6)の作業半径R’に読み替えて演算する。またウィンチ負荷率積LTについては、ジブ起伏ウィンチ85についてもブーム起伏用ウィンチ26と同様に式(3)を用いて演算する。
【0089】
本クレーン10の消耗品としては、ワイヤロープ類の中にジブ起伏用ウィンチ85等のワイヤロープ(ジブ起伏ロープ)86が含まれる。そして、このジブ起伏ロープ86のメンテナンス時期に関する情報の導出は、ブーム起伏用ロープ27と同様の手法で行われる。
【0090】
したがって、実施形態3も実施形態1と同様に、実際に作業を行っている時に検出された消耗品の負荷についての代表値を累積し、その累積値に基づいて、当該消耗品のメンテナンス時期を導出するので、クレーン10の消耗品についてのメンテナンス時期を的確に把握することができる。
【0091】
なおその他の構成、作用及び効果は実施形態1と同様である。
【符号の説明】
【0092】
26 ブーム起伏用ウィンチ
27 ブーム起伏用ロープ(消耗品)
30 主巻ウィンチ(巻上げウィンチ)
31 補巻ウィンチ(巻上げウィンチ)
32 主巻ロープ(消耗品)
33 補巻ロープ(消耗品)
56 記憶手段
59 導出手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クレーンの消耗品についてのメンテナンス情報を管理する装置であって、
巻上げウィンチから繰り出される前記消耗品としてのワイヤロープの負荷を代表させる代表値として、シーブ径、シーブ個数及びロープ径と、基準となるメンテナンス時とを関連付けて記憶する記憶手段と、
前記巻上げウィンチから繰り出されたワイヤロープが通過するシーブのシーブ径及びシーブ個数と、当該ワイヤロープのロープ径とに基づいて、当該ワイヤロープのメンテナンス時期に関する情報を導出する導出手段が含まれている建設機械用メンテナンス情報管理装置。
【請求項2】
前記記憶手段は、吊り作業の作業回数を累積して記憶し、
前記導出手段は、前記記憶手段に累積して記憶された作業回数に基づいて、前記巻上げウィンチのメンテナンス時期に関する情報を導出する請求項1に記載の建設機械用メンテナンス情報管理装置。
【請求項3】
前記記憶手段は、巻上げウィンチのオイルの負荷を代表させる代表値として、前記巻上げウィンチの定格負荷に対する吊り作業時に巻上げウィンチにかかった負荷の割合である負荷率と吊り作業時間との乗算値を累積して記憶し、
前記導出手段は、前記乗算値に基づいて、前記オイルのメンテナンス時期に関する情報を導出する請求項1に記載の建設機械用メンテナンス情報管理装置。
【請求項4】
前記記憶手段は、ブーム起伏用ウィンチのオイルの負荷を代表させる代表値として、ブーム起伏用ウィンチの定格負荷に対するブーム起伏作業時にブーム起伏用ウィンチにかかった負荷の割合である負荷率と、ブーム起伏作業時間との乗算値を累積して記憶し、
前記導出手段は、前記乗算値に基づいて、前記オイルのメンテナンス時期に関する情報を導出する請求項1に記載の建設機械用メンテナンス情報管理装置。
【請求項5】
クレーンの消耗品についてのメンテナンス情報を管理する方法であって、
巻上げウィンチから繰り出される前記消耗品としてのワイヤロープの負荷を代表させる代表値として、シーブ径、シーブ個数及びロープ径と、基準となるメンテナンス時とを関連付けて記憶するステップと、
前記巻上げウィンチから繰り出されたワイヤロープが通過するシーブのシーブ径及びシーブ個数と、当該ワイヤロープのロープ径とに基づいて、当該ワイヤロープのメンテナンス時期に関する情報を導出する導出ステップとが含まれている建設機械用メンテナンス情報管理方法。
【請求項6】
吊り作業の作業回数を累積して記憶する蓄積ステップと、
前記記憶された作業回数に基づいて、前記巻上げウィンチのメンテナンス時期に関する情報を導出する導出ステップが含まれている請求項5に記載の建設機械用メンテナンス情報管理方法。
【請求項7】
巻上げウィンチのオイルの負荷を代表させる代表値として、前記巻上げウィンチの定格負荷に対する吊り作業時に前記巻上げウィンチにかかった負荷の割合である負荷率と、吊り作業時間との乗算値を累積して記憶する蓄積ステップと、
前記記憶された乗算値に基づいて、前記オイルのメンテナンス時期に関する情報を導出する導出ステップが含まれている請求項5に記載の建設機械用メンテナンス情報管理方法。
【請求項8】
ブーム起伏用ウィンチのオイルの負荷を代表させる代表値として、ブーム起伏用ウィンチの定格負荷に対するブーム起伏作業時に前記ブーム起伏用ウィンチにかかった負荷の割合である負荷率と、ブーム起伏作業時間との乗算値を累積して記憶する蓄積ステップと、
前記記憶された乗算値に基づいて、前記オイルのメンテナンス時期に関する情報を導出する導出ステップが含まれている請求項5に記載の建設機械用メンテナンス情報管理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2010−247996(P2010−247996A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−180135(P2010−180135)
【出願日】平成22年8月11日(2010.8.11)
【分割の表示】特願2006−311823(P2006−311823)の分割
【原出願日】平成18年11月17日(2006.11.17)
【出願人】(304020362)コベルコクレーン株式会社 (296)
【Fターム(参考)】