説明

建設機械

【課題】キャブに対する作業機の干渉を適切に防止しつつ、作業効率を向上させることができる建設機械を提供すること。
【解決手段】旋回体上に並設されるキャブ4および作業機5を備えた建設機械1で、作業機5は、旋回体上で上下方向に揺動自在の第1ブーム51、第1ブーム51軸線からキャブ4側にオフセットされて第1ブーム51に枢軸され左右に揺動自在の第2ブーム52、第2ブーム52で水平方向に揺動自在のブラケット53、ブラケット53で上下方向に揺動自在のアーム54、およびアーム54に枢軸されたバケット55を備え、第2ブーム52をキャブ4側に最も揺動させたときに、バケット55がオペレータシート41の高さ位置より下側で旋回体およびキャブ4と干渉しない軌跡を描き、バケット55およびキャブ4の干渉を防止する干渉防止動作を規制する減速制御規制手段を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設機械に係り、より具体的には、オフセットブームを備えた建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、オフセットブームを備えた油圧ショベル等の建設機械が知られている。この油圧ショベルは、走行装置上に旋回可能に設けられた旋回体と、旋回体上に設けられたキャブと、旋回体上のキャブ横に設けられた作業機とを備えて構成される。
作業機は、さらに、第1ブーム、オフセットブームである第2ブーム、ブラケット、アーム、およびバケットを備え、第1ブームが、旋回体に上下方向に揺動自在に枢軸されている。この第1ブームの軸線上の先端には、第2ブームが水平方向に揺動自在に枢軸され、第2ブームの先端には、ブラケットが水平方向に揺動自在に枢軸されている。
ここで、ブラケットと第1ブーム先端部とは、それぞれの側方においてリンクロッドで連結され、第2ブームとともに4節平行リンク機構を構成している。そして、ブラケットには、アームが上下方向に揺動自在に枢軸され、アームの先端には、バケットが、横軸回りに揺動自在に枢軸されている。
【0003】
このような油圧ショベルでは、4節平行リンク機構を構成する第2ブームの基端側と先端側のブラケットとがオフセットシリンダで連結されており、このオフセットシリンダの伸縮によって第2ブームを第1ブームに対して左右に揺動させて、ブラケットの位置を第1ブームの軸線に対しオフセットさせることが可能である。
これにより、ブラケットに連結されたアームや、アームに連結されたバケットの位置を、第1ブームの軸線に対し自由に車幅方向にオフセットさせることができるため、隣地の壁等が迫った境界部分であっても、バケットをオフセットさせることで掘削作業が容易に行える。
【0004】
ところで、図8に示すように、このようなオフセットブームを備えた従来の油圧ショベル100では、第2ブームを左側に揺動させてバケットをキャブ側にオフセットさせた状態で、第1ブームおよびアームを上下に揺動させると、バケットの先端は、図8の一点鎖線に示すように、キャブと旋回体とを上下方向に横切るような軌跡を描く。つまり、この状態で第1ブームを上側に揺動させ、さらにアームを下側に揺動させてバケットをキャブ側に寄せすぎると、バケットがキャブや旋回体と干渉してしまう。そこで、キャブおよび旋回体の前面やキャブの側面に干渉防止領域を設定し、この干渉防止領域内にバケットが位置する場合に作業機の動作を制限する干渉防止装置を備えた油圧ショベルが知られている(例えば、特許文献1〜特許文献3参照)。
【0005】
【特許文献1】特開平9−60050号公報
【特許文献2】特開平8−333767号公報
【特許文献3】特開平5−247964号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、これら各特許文献に記載の油圧ショベルにおいては、干渉防止領域がキャブ前面およびその延長上の旋回体の前面全てに設定されているため、比較的作業頻度の高い位置である、キャブ前方でオペレータシートよりも下側にバケットが位置しているときに、バケットが干渉防止領域内に位置していると判定されてしまう。従って、このようにキャブの前方下側でバケットを動作させる作業においては、干渉防止装置が作動することで作業機の動作が頻繁に制限されてしまい、作業効率の低下を招くという問題がある。
【0007】
本発明の目的は、キャブに対する作業機の干渉を適切に防止しつつ、作業効率を向上させることができる建設機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1発明に係る建設機械は、走行装置上に旋回可能に設けられる旋回体と、前記旋回体上に設けられるキャブおよび作業機とを備えた建設機械であって、前記キャブおよび前記作業機は、前記旋回体の前方を前記走行装置の走行方向に向けたときに、前記走行方向に直交する車幅方向に並設され、前記作業機は、前記旋回体に上下方向に揺動自在に枢軸された第1ブームと、前記第1ブームに対して左右に揺動自在に枢軸された第2ブームと、前記第2ブームの先端に水平方向に揺動自在に枢軸されたブラケットと、前記ブラケットに上下方向に揺動自在に枢軸されたアームと、前記アームに揺動自在に枢軸されたバケットとを備え、前記第1ブームにおける前記第2ブームの枢軸位置は、前記第1ブームの軸線から前記キャブ側にオフセットされ、前記第2ブームを前記キャブ側に最も揺動させ、前記バケットを前記旋回体に最も接近させたときに、前記バケットが、前記キャブ内のオペレータシートの高さ位置よりも下側で前記旋回体および前記キャブと干渉しない軌跡を描き、前記バケットおよび前記キャブの干渉を防止する干渉防止装置を備え、この干渉防止装置は、前記キャブに対する前記バケットの位置を検出する位置検出手段と、前記位置検出手段で検出された前記バケットの位置に基づいて、前記バケットを減速させる減速制御手段と、前記バケットが前記オペレータシートの高さ位置よりも下側にあるときに、前記減速制御手段の動作を規制する減速制御規制手段とを備えていることを特徴とする。
【0009】
第2発明に係る建設機械は、第1発明において、前記旋回体における前記第1ブームの枢軸位置は、前記オペレータシートと前記キャブの床面との間にあることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
第1発明によれば、第2ブームをキャブ側に最も揺動させ、バケットを旋回体に最も接近させたときに、キャブ内のオペレータシートの高さ位置よりも下側で、バケットが旋回体およびキャブと干渉しない軌跡を描くため、バケットが前記旋回体および前記キャブと干渉するのを気にせずに作業を行うことができ、作業効率を向上させることができる。
また、バケットおよびキャブの干渉を防止する干渉防止装置を備え、干渉防止装置は、バケットの位置に基づいてバケットを減速させる減速制御手段と、バケットがオペレータシートの高さ位置よりも下側にあるときに、減速制御手段の動作を規制する減速制御規制手段とを備えているため、キャブ前方でオペレータシートよりも下方側にバケットが位置しているときに、バケットが干渉防止領域内に位置していると判定されることがない。従って、この範囲での作業時に干渉防止装置が頻繁に作動して作業が停止するのを防ぐことができ、作業効率を向上させることができる。
【0011】
第2発明によれば、旋回体における第1ブームの枢軸位置が、オペレータシートとキャブの床面との間にあるため、この枢軸位置を基準に動作するバケットの先端の軌跡が、全体的に上側に移動する。ここで、バケットは、当該枢軸位置の高さでキャブから水平方向に最も遠くなる軌跡を描くが、この部分の軌跡もオペレータシート側に上がることになる。これにより、バケットがキャブと干渉しない範囲をオペレータシート近傍まで引き上げることができるため、干渉防止装置の作動範囲をオペレータシートよりも上側に設定しても、バケットが旋回体およびキャブと干渉することがない。従って、キャブに対する作業機の干渉を適切に防止しつつ、キャブ前方で作業頻度の高いオペレータシート下側での干渉防止装置の作動を回避でき、作業効率を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
[1]全体構成
図1、図2において、油圧ショベル1は、走行装置2、旋回体3、キャブ4、および作業機5を備えて構成される。
走行装置2は、旋回体3の直下に設けられる図示を省略したトラックフレームと、このトラックフレームにおいて走行方向に直交する車幅方向の両端に設けられた一対の走行体21とを備えて構成される。走行体21は、トラックフレームに突設された駆動輪および遊動輪に巻回される履帯22を備えて構成され、駆動輪を駆動させることによって、履帯22の延出方向に沿って油圧ショベル1を前後進させる。
【0013】
走行装置2のトラックフレーム上には、旋回体3が旋回可能に設けられている。旋回体3の中心から偏心した位置にはキャブ4が設けられ、このキャブ4内にオペレータが乗車して油圧ショベル1を操縦する。キャブ4内にはオペレータシート41が設けられ、オペレータシート41の両脇には、図示しない作業機レバーが設けられている。また、図示を省略するが、キャブ4の床面42には、走行操作用の走行レバーと、オフセット操作用の操作ペダルとが設けられている。そして、このキャブ4の右側に、作業機5が設けられている。すなわち、キャブ4と作業機5とは、旋回体3の前方を走行装置2の走行方向に向けた状態において、旋回体3上で車幅方向に並設されている。
【0014】
[2]作業機5の詳細構成
図1および図2に示すように、作業機5は、第1ブーム51、第2ブーム52、ブラケット53、アーム54、およびバケット55と、これら各要素を動作させるためのブームシリンダ51A、オフセットシリンダ52A、アームシリンダ54A、およびバケットシリンダ55Aとを備えている。ここで、各シリンダ51A,52A,54A,55Aは油圧シリンダであり、その油圧源は、旋回体3に設けられた図示しないエンジンで駆動される油圧ポンプである。
【0015】
第1ブーム51は、基端側がオペレータシート41と床面42との間の高さで、フートピン51Bによって旋回体3に枢軸されており、第1ブーム51の先端部と旋回体3とを第1ブーム51の下方で連結するブームシリンダ51Aの伸縮により、上下方向に揺動可能である。そして、第1ブーム51は、旋回体3に支承された状態で、第1ブーム51の軸方向からオフセットするように屈曲された屈曲部511を先端側に、第1ブーム51が水平方向となす角度であるブーム角を検出するポテンショメータを基端側に、それぞれ備えている。このような構成の第1ブーム51の先端には、第2ブーム52がピン51Cによって枢軸されている。
【0016】
第2ブーム52は、内部に空間を有する筒状体から構成され、屈曲部511の先端において、第1ブーム51の軸線からキャブ4側へオフセットされた位置で第1ブームに対して左右に揺動自在に枢軸されている。第2ブーム52の基端部には、図3にも示すように、ポテンショメータ52Bが設けられており、図4に示される、第1ブーム51の軸線に対して第2ブーム52の軸線がなす角であるオフセット角θ2を検出する。
【0017】
図1および図2に戻り、このような構成の第2ブーム52の先端部と第1ブーム51の屈曲部511とは、それぞれの左側において、オフセットシリンダ52Aで連結されている。すなわち、オフセットシリンダ52Aのシリンダロッドの先端が、ピン52Cによって第2ブーム52の先端部に枢軸され、オフセットシリンダ52Aのシリンダボトムが、ピン51Dによって屈曲部511に枢軸されている。そして、この第2ブーム52に、ブラケット53が連結されている。
【0018】
ブラケット53は、図示しないピンによって、第2ブーム52の先端で水平方向に揺動自在に枢軸されており、ブラケット53と第1ブーム51の屈曲部511とは、それぞれの左側において、リンクロッド52Dで連結されている。すなわち、リンクロッド52Dは、その一端がピン53Aによってブラケット53に枢軸され、他端がピン51Dによって屈曲部511に枢軸されている。
【0019】
これら第1ブーム51の屈曲部511、第2ブーム52、ブラケット53、およびリンクロッド52Dによって4節の平行リンク機構が構成され、屈曲部511と第2ブーム52の先端部を連結するオフセットシリンダ52Aの伸縮により、ブラケット53が第1ブーム51の軸線に対して揺動する。そして、このブラケット53に、アーム54が連結されている。
【0020】
アーム54は、ブラケット53の先端に上下方向に揺動自在に枢軸されている。アーム54の枢軸部分の近傍には、アームシリンダ54Aを取り付けるためのシリンダ取付部541が設けられ、シリンダ取付部541には、ブラケット53に対するアーム54の揺動角度であるアーム角を検出するためのポテンショメータ54Bが設けられている。
ここで、アームシリンダ54Aは、上下方向に揺動可能なように、シリンダ本体部分がブラケット53に、シリンダロッドの先端がシリンダ取付部541に、それぞれ枢軸されている。アーム54は、このアームシリンダ54Aの伸縮によって、第2ブーム52に対して曲がる方向や伸びる方向に揺動する。そして、アーム54の先端には、バケット55が取り付けられている。
【0021】
バケット55は、実際に掘削を行ったり、掘削された土砂をダンプトラック等に積み込んだりする部分であり、アーム54の先端に横軸回りに揺動自在に枢軸されている。バケット55とアーム54のシリンダ取付部541とは、バケットシリンダ55Aで連結されており、このバケットシリンダ55Aを伸縮することで、バケット55が揺動する。
【0022】
[3]油圧ショベル1の作用
以上のような構成の油圧ショベル1では、図4に示すように、前述した平行リンクの動きから、ブラケット53に連結されたアーム54、およびアーム54に連結されたバケット55を、第1ブーム51の軸線に対し左右に平行にオフセットさせることができる。すなわち、オフセットシリンダ52Aを縮めることにより、第2ブーム52が左側に揺動し、これによりアーム54およびバケット55の位置が第1ブーム51の軸線に対して左側にオフセットする。これとは反対に、オフセットシリンダ52Aを伸ばした場合には、第2ブーム52が左側に揺動し、これによりアーム54およびバケット55の位置が第1ブーム51の軸線に対して右側にオフセットする。
【0023】
ここで、第2ブーム52を左側に揺動させた場合のオフセット角θ2は、ピン51Cの位置をキャブ4側へオフセットさせた分だけ、従来に較べて小さくて済む。オフセット角θ2が小さて済むため、図5の一点鎖線に示すように、左側にオフセットさせた際のバケット55先端の軌跡は、図5に実線で示されるオフセット角θ2がゼロの場合の軌跡近くにまで、前方に移動することになる。
【0024】
さらに、図5に示すように、フートピン51Bの位置を高くしてオペレータシート41と床面42との間に位置させたことで、オフセット角θ2がゼロの場合のバケット55先端の軌跡、および左側にオフセットさせた際のバケット55の軌跡とも、全体的に上側に移動する。そして、バケット55の先端の軌跡は、バケット55がフートピン51Bの高さでキャブ4から最も遠くに位置するように描かれるため、この最も遠くに描かれる部分が、軌跡全体の上側への移動によって、オペレータシート41の高さ近傍にまで上がることになる。従って、第2ブーム52を左側に揺動させて、バケット55を左側にオフセットさせた状態であっても、バケット55は、従来のようにキャブ4の床面42からオペレータシート41の間で干渉することがなくなり、オペレータシート41の高さ位置よりも下方では、旋回体3やキャブ4と干渉しないような軌跡を描くのである。
【0025】
一方、バケット55およびキャブ4間の干渉は干渉防止装置により防止され、その作動範囲である干渉防止領域を構成する停止領域Aおよび減速領域Bは、図5にハッチングで示すように、キャブ4の前面およびキャブ4の右側の側面で、オペレータシート41の座面近傍よりも上方に設定されている。干渉防止装置は、このような設定の停止領域A内に作業機5が位置した場合にのみ作業機5を自動停止させ、減速領域B内に作業機5が位置した場合にのみ作業機5を自動減速させることで、バケット55およびキャブ4間の干渉を防止する。作業機5をこのように動作させるための制御、つまり干渉防止制御は、干渉防止装置のコントローラによって行われる。
【0026】
[4]コントローラによる干渉防止制御の制御構造
次に、図6を参照して、コントローラによる干渉防止制御の制御構造について説明する。
図6に示す構成の干渉防止装置6において、コントローラ7は、バケット55の干渉防止制御を行うとともに、バケット55を減速させる動作を規制する減速制御規制手段として構成されている。コントローラ7の入力側には、作業機レバー43および操作ペダル44が電気的に接続され、また、それぞれ位置検出手段として、第1ブーム51の基端部分に設けられたポテンショメータ51E、第2ブーム52に設けられたポテンショメータ52B、およびアーム54に設けられたポテンショメータ54Bが電気的に接続されている。ポテンショメータ51Eは、第1ブーム51が水平方向となす角度であるブーム角θ1を検出し、ポテンショメータ52Bは、第2ブーム52のオフセット角θ2を検出する。また、ポテンショメータ54Bはアーム54のアーム角θ3を検出し、検出されたこれらの角度θ1,θ2,θ3の信号値は、それぞれコントローラ7に出力される。
【0027】
一方、コントローラ7の出力側には、それぞれバケット55を減速させる減速制御手段として、第1ブーム51の上昇方向の揺動動作を制御するための第1ブーム上昇制御用電磁弁51F、第2ブーム52の左側への揺動動作を制御するための第2ブーム揺動制御用電磁弁52E、およびブラケット53に対するアーム54の曲げ方向の揺動動作を制御するためのアーム曲げ制御用電磁弁54Cが電気的に接続されている。これらの電磁弁51F,52E,54Cは、各シリンダ51A,52A,54Aと、各シリンダ51A,52A,54A用にそれぞれ設けられた図示を略する方向制御弁とをつなぐ油圧回路の途中に設けられ、その開閉を制御することで、各シリンダ51A,52A,54Aへの圧油の流量を変化させることができる。
【0028】
コントローラ7は、各ポテンショメータ51E,52B,54Bからの検出信号に基づき、バケット55を減速させるための制御指令を各電磁弁51F,52E,54Cに出力する部分であり、位置演算手段71、干渉防止領域記憶手段72、領域判定手段73、および制御指令出力手段74を備えて構成される。このうちの干渉防止領域記憶手段72および領域判定手段73は、各電磁弁51F,52E,54Cの動作を規制する減速制御規制手段としても機能する。
位置演算手段71は、各ポテンショメータ51E,52B,54Bからそれぞれ出力される、第1ブーム51のブーム角θ1、第2ブーム52のオフセット角θ2、およびアーム54のアーム角θ3に基づいて、アーム54の先端の位置を算出する。
【0029】
干渉防止領域記憶手段72は、前述したようにオペレータシート41よりも上方に設定されて干渉防止領域を構成する停止領域Aおよび減速領域Bを、位置座標形式で記憶している。ここで、干渉防止領域は、バケット55の寸法を考慮した上で、バケット55が旋回体3やキャブ4と干渉しないような範囲に設定されている。
領域判定手段73は、位置演算手段71で算出されたアーム54の先端の位置と、干渉防止領域記憶手段72に記憶されている干渉防止領域の記憶値とに基づき、バケット55が停止領域A内または減速領域B内に位置しているか否かを判定する。
【0030】
制御指令出力手段74は、領域判定手段73の判定結果に基づき、第1ブーム上昇制御用電磁弁51F、第2ブーム揺動制御用電磁弁52E、およびアーム曲げ制御用電磁弁54Cに、それぞれ制御指令を出力する。ここで、各電磁弁51F,52E,54Cは、制御指令出力手段74からの制御指令の出力に応じて、より具体的には制御指令出力手段74からの出力電流値に応じて弁の開度が変化する。これにより、各シリンダ51A,52A,54Aへの圧油の流量を電流値に応じてリニアに変化させることができるため、第1ブーム51、第2ブーム52、およびアーム54の動作速度を細かく変化させることができる。
【0031】
[5]コントローラ7による制御作用
次に、コントローラ7による制御作用について、図7に基づき説明する。
先ず、コントローラ7は、各ポテンショメータ51E,52B,54Bから、角度θ1,θ2,θ3をそれぞれ読み込む(ステップS1)。次に、位置演算手段71は、この角度θ1,θ2,θ3の値を用いて、アーム54の先端位置を算出する(ステップS2)。
【0032】
そして、領域判定手段73は、位置演算手段71で算出されたアーム54の先端位置と、干渉防止領域記憶手段72に記憶されている記憶値とに基づき、バケット55が干渉防止領域内に位置しているか否か、具体的には、バケット55が停止領域A内、減速領域B内、または減速領域Bの外側のどの領域に位置しているかを判定する(ステップS3)。バケット55がキャブ4前方でオペレータシート41の下方側に位置している場合には、ここでの判定によって、バケット55が干渉防止領域内に位置していないと判断される。これにより、バケット55を減速させる動作が規制される。
【0033】
バケット55が干渉防止領域内に位置していると判定された場合に、コントローラ7は、第1ブーム51を上昇させる方向にレバー操作されているか否か(ステップS4)、アーム54を曲げる方向にレバー操作されているか否か(ステップS6)、および第2ブーム52を左側に揺動させる方向にペダル操作されているか否か(ステップS8)を順次判定する。これにより、バケット55が干渉防止領域内に位置している場合であっても、オペレータがバケット55をさらにキャブ4側に移動させる操作をしているのか、それとも干渉防止領域から退避させる操作をしているのかが区別される。
【0034】
そして、制御指令出力手段74は、第1ブーム51を上昇させる操作がされていると判定された場合には、第1ブーム上昇制御用電磁弁51Fに制御指令を出力し(ステップS5)、アーム54を曲げる操作がされていると判定された場合には、アーム曲げ制御用電磁弁54Cに制御指令を出力する(ステップS7)。さらに、制御指令出力手段74は、第2ブーム52を左側に揺動させる操作がされていると判定された場合には、第2ブーム揺動制御用電磁弁52Eに制御指令を出力する(ステップS9)。この際、制御指令出力手段74は、バケット55が停止領域A内に位置している場合には、キャブ4側への動作が要求されている対象部位を停止させる制御指令を、その対象部位に対応した電磁弁に出力し、減速領域B内に位置している場合には、減速させる制御指令を、その対象部位に対応した電磁弁に出力する。
【0035】
一方、制御指令出力手段74は、バケット55が干渉防止領域内に位置していないと判定された場合や、干渉防止領域内に位置している場合でもオペレータが作業機5を干渉防止領域から退避させる操作をしていると判定された場合には、各電磁弁51F,52E,54Cに制御指令を出力しない。
【0036】
このように、コントローラ7は、バケット55が干渉防止領域内に位置しているにもかかわらず、キャブ4側に移動させる操作がされているか否かを判定し、その上でオペレータの要求を操作対象ごとに個別に判定して、要求された操作対象に対応する電磁弁のみに制御指令を出力するため、作業機5の動作が不要に制限されるのを回避することができる。
【0037】
[6]実施形態の変形
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる他の構成等を含み、以下に示すような変形等も本発明に含まれる。
前記実施形態では、旋回体3の前方を走行装置2の走行方向に向けた状態において、キャブ4が旋回体3の左側に設けられ、作業機5がその右側に設けられていたが、これに限られず、それぞれの位置関係が逆であってもよい。この場合には、ピン51Cの位置が第1ブーム51の軸線から右側にオフセットされるとともに、第2ブーム揺動制御用電磁弁52Eが、第2ブーム52の右側への揺動動作を制御するように油圧回路中に配置される必要がある。
【0038】
前記実施形態では、各シリンダ51A,52A,54Aと、各シリンダ51A,52A,54A用にそれぞれ設けられた方向制御弁とをつなぐ油圧回路の途中に設けられ、電流で制御される電磁弁51F,52E,54Cが用いられていたがこれに限られない。要は、第1ブーム51の上昇方向の揺動動作、第2ブーム52のキャブ側への揺動動作、およびブラケット53に対するアーム54の曲げ方向の揺動動作を制御することができればよく、この要件を満たす範囲内で、他の構成の電磁弁を用いたり、電磁弁が油圧回路の他の位置に設けられたりしてもよい。
【0039】
前記実施形態では、アーム54の先端にバケット55が取り付けられていたがこれに限られず、他のアタッチメントが取り付けられてもよい。
前記実施形態では油圧ショベル1が用いられていたがこれに限られず、オフセットブームを備えるものであれば、他の建設機械であってもよい。
その他、本発明は、主に特定の実施形態に関して特に図示され、かつ、説明されているが、本発明の技術的思想および目的の範囲から逸脱することなく、以上述べた実施形態に対し、当業者が様々な変形を加えることができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、油圧ショベルに利用できるほか、オフセットブームを備えたあらゆる建設機械に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の一実施形態に係る建設機械を示す側面図である。
【図2】前記実施形態における建設機械を示す平面図である。
【図3】前記実施形態における建設機械の第1ブームおよび第2ブームの連結部を部分拡大して示す斜視図である。
【図4】前記実施形態における建設機械の作業機の動きを示す図である。
【図5】前記実施形態における建設機械のバケット先端の作動軌跡を示す図である。
【図6】前記実施形態におけるコントローラの制御構造を示すブロック図である。
【図7】前記実施形態におけるコントローラの作用を示すフローチャート。
【図8】従来の建設機械のバケット先端の作動軌跡を示す図である。
【符号の説明】
【0042】
1…油圧ショベル(建設機械)、2…走行装置、3…旋回体、4…キャブ、5…作業機、6…干渉防止装置、41…オペレータシート、42…床面、51…第1ブーム、52…第2ブーム、53…ブラケット、54…アーム、55…バケット。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行装置上に旋回可能に設けられる旋回体と、前記旋回体上に設けられるキャブおよび作業機とを備えた建設機械であって、
前記キャブおよび前記作業機は、前記旋回体の前方を前記走行装置の走行方向に向けたときに、前記走行方向に直交する車幅方向に並設され、
前記作業機は、
前記旋回体に上下方向に揺動自在に枢軸された第1ブームと、
前記第1ブームに対して左右に揺動自在に枢軸された第2ブームと、
前記第2ブームの先端に水平方向に揺動自在に枢軸されたブラケットと、
前記ブラケットに上下方向に揺動自在に枢軸されたアームと、
前記アームに揺動自在に枢軸されたバケットとを備え、
前記第1ブームにおける前記第2ブームの枢軸位置は、前記第1ブームの軸線から前記キャブ側にオフセットされ、
前記第2ブームを前記キャブ側に最も揺動させ、前記バケットを前記旋回体に最も接近させたときに、前記バケットが、前記キャブ内のオペレータシートの高さ位置よりも下側で前記旋回体および前記キャブと干渉しない軌跡を描き、
前記バケットおよび前記キャブの干渉を防止する干渉防止装置を備え、
この干渉防止装置は、
前記キャブに対する前記バケットの位置を検出する位置検出手段と、
前記位置検出手段で検出された前記バケットの位置に基づいて、前記バケットを減速させる減速制御手段と、
前記バケットが前記オペレータシートの高さ位置よりも下側にあるときに、前記減速制御手段の動作を規制する減速制御規制手段とを備えている
ことを特徴とする建設機械。
【請求項2】
請求項1に記載の建設機械において、
前記旋回体における前記第1ブームの枢軸位置は、前記オペレータシートと前記キャブの床面との間にある
ことを特徴とする建設機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−332678(P2007−332678A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−166426(P2006−166426)
【出願日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)
【出願人】(000184632)小松ゼノア株式会社 (60)
【Fターム(参考)】