説明

建設機械

【課題】エンジンルームから座席への伝熱を抑えると同時に、そのための構成を利用して、工具類を、使い勝手が良くてスペース効率の良い状態で収納できるようにする。
【解決手段】上部旋回体のアッパーフレームにシートスタンド5が設けられ、このシートスタンド5下にエンジンルームが形成される建設機械において、シートスタンド5上に台枠10を、シートスタンド上面との間に座席下空間を形成する状態で設け、この台枠10上に座席6を取付けるとともに、座席下空間に、工具類を収納する収納ボックス12を抽斗式に出し入れ自在で、かつ、走行レバー7と干渉しないようにストッパ13とストッパガイド溝14により最大引き出し量が制限された状態で設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はミニショベルのような小型の建設機械に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ミニショベルを例にとって背景技術を説明する。
【0003】
ミニショベルは、図9に示すようにクローラ式の下部走行体1上に上部旋回体2が地面に対して鉛直な軸まわりに旋回自在に搭載され、この上部旋回体2の前部に作業アタッチメント3が装着されて構成される。
【0004】
上部旋回体2はアッパーフレーム(本体フレーム)4を備え、図7にも示すようにこのアッパーフレーム4の上面(座席フロア)4aにシートスタンド5が設けられている。
【0005】
このシートスタンド5の下方(内側空間=エンジンルーム)に図示しないエンジンとその関連機器が設置されるとともに、シートスタンド5上に座席6が設置され、この座席6にオペレータが着座した状態で、座席フロア4aの前部に設けられた左右一対の走行レバー(片側のみ図示する)7や、座席両側に配置された各種作業レバーが操作される。
【0006】
図9中、8は座席6を上方から覆うキャノピ、9は座席フロア4aの前端部に取付けられた手摺りである。
【0007】
このようなミニショベルの構成はたとえば特許文献1に示されている。
【0008】
なお、この明細書において、「左右」「前後」は、座席6に着座したオペレータから見た方向性をいう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2000−120108号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
このミニショベルにおいて、次の解決すべき課題があった。
【0011】
(i) 上記のようにシートスタンド5がエンジンルームの上方に設けられ、このシートスタンド5の上面に座席6が直接取付けられているため、エンジンルーム内の熱がシートスタンド5を通して座席6に直接伝わり易い。
【0012】
このため、空調設備付きのキャビンを備え、しかもキャビンがエンジンルームと離隔した標準ショベルと異なり、ミニショベルでは、とくに夏場に座席が高温化してオペレータが不快感を抱くおそれがあった。
【0013】
(ii) キャビンを持たず、かつ、余分なスペースが無いミニショベルでは、スパナ、レンチ、ハンマー等の工具や取り扱い説明書といった身近に使用する物品(以下、工具類という)を収納するためのまとまった収納空間を座席まわりに確保できなかった。
【0014】
このため、スパナやレンチ、ハンマー等の工具は工具箱に入れて座席フロア4a等に置き、取り扱い説明書はキャノピ7のルーフ下面側に専用ボックスを設けて収納する等、使い勝手が悪くて紛失し易い、あるいはスペース効率の悪い対応しかとれなかった。
【0015】
そこで本発明は、上記二点の課題を一挙に解決し、エンジンルーム上方に座席が設置されるレイアウトを前提として、エンジンルームから座席への伝熱を抑えると同時に、そのための構成を利用して、工具類を、使い勝手が良くてスペース効率の良い状態で収納することができる建設機械を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
請求項1の発明は、下部走行体上に搭載された上部旋回体のアッパーフレームにシートスタンドが設けられ、このシートスタンド下にエンジンルームが形成される一方、シートスタンド上に台枠が、シートスタンド上面との間に座席下空間を形成する状態で設けられ、この台枠上に座席が取付けられるとともに、上記座席下空間に、工具類を収納する上面が開口した収納ボックスが、前方に引き出される引き出し位置と、同空間に収容される押し込み位置との間で出し入れ自在に設けられたものである。
【0017】
請求項2の発明は、請求項1の構成において、上記収納ボックスの最大引き出し量を制限するストッパ機構が設けられたものである。
【0018】
請求項3の発明は、請求項2の構成において、上記アッパーフレームの上面である座席フロアにおける上記シートスタンドの前方に、中立位置とその前後両側の操作位置との間で傾動操作される操作レバーが設けられ、上記ストッパ機構は、上記操作レバーが中立位置にある状態で同レバーと上記収納ボックスが干渉しない範囲で最大引き出し量を制限するように構成されたものである。
【0019】
請求項4の発明は、請求項3の構成において、上記操作レバーが前側操作位置にある状態で、上記ストッパ機構のストッパ機能を解除して収納ボックスを上記座席下空間から取り外し得るように構成されたものである。
【0020】
請求項5の発明は、請求項2〜4のいずれかの構成において、上記ストッパ機構として、上記台枠と収納ボックスの相対向する側面の一方に収納ボックスの出し入れ方向に延びるストッパガイド溝、他方にこのストッパガイド溝に係合するストッパがそれぞれ設けられたものである。
【0021】
請求項6の発明は、請求項1〜5のいずれかの構成において、上記収納ボックスの前端部に、前面側からのキー操作により施錠アームが施錠位置と開錠位置との間で回転する錠機構が設けられる一方、上記台枠の前端部に、上記収納ボックスが押し込み位置にある状態で上記施錠アームが上記施錠位置で係合して上記収納ボックスを押し込み位置にロックする施錠スリットが設けられたものである。
【0022】
請求項7の発明は、請求項6の構成において、上記施錠スリットが上記台枠の左右いずれか一側壁に設けられるとともに、台枠の天壁における上記施錠スリットが設けられた側部の前端部に、上記施錠アームと.天壁との干渉を避ける施錠アーム逃げ溝が設けられたものである。
【0023】
請求項8の発明は、請求項7の構成において、上記収納ボックス内の前端部における上記錠機構が設けられた側部に、上記押し込み位置で上記施錠アーム逃げ溝から浸入する水を受ける水受け室が形成されたものである。
【0024】
請求項9の発明は、請求項1〜8のいずれかの構成において、上記収納ボックスの隅部に、収納ボックス内に浸入した水を外部に排出する水抜き穴が設けられたものである。
【0025】
請求項10の発明は、請求項1〜9のいずれかの構成において、上記収納ボックス及び台枠に、上記収納ボックスを上記押し込み位置に停止させる押し込みストッパが設けられたものである。
【0026】
請求項11の発明は、請求項1〜10のいずれかの構成において、上記収納ボックスの内底面に、防音と断熱を兼ねる防音断熱シートが設けられたものである。
【0027】
請求項12の発明は、請求項1〜11のいずれかの構成において、上記収納ボックスと、台枠及びシートスタンドとの相接触する面間に、これらの間の摩擦抵抗を減じる減摩シートが設けられたものである。
【0028】
請求項13の発明は、請求項1〜12のいずれかの構成において、上記収納ボックスの前面壁及び後面壁の上端部に、弾性材料からなる防音シールが設けられたものである。
【発明の効果】
【0029】
本発明によると、シートスタンド上に台枠を互いの間に座席下空間が形成される状態で設け、この座席下空間に、工具類を収納する収納ボックスを出し入れ自在に設けたから、シートスタンド下のエンジンルームから座席への伝熱を座席下空間によって抑制することができる。
【0030】
このため、夏場でも座席の高温化を抑え、オペレータにとって快適な座席環境を確保することができる。
【0031】
そして、このための構成である、座席下に形成される空間、つまり、座席下という最もオペレータから近くて出し入れし易い位置に、しかも抽斗式という工具類を出し入れし易い状態で工具類を収納することができる。
【0032】
すなわち、ミニショベル等の小型建設機械が抱えていた二つの課題を一挙に解決することができる。
【0033】
しかも、座席下といういわばデッドスペースに台枠と抽斗式の収納ボックスを設けるだけでよいため、構成が簡単でコストが安くてすむ上に、座席周りの限られたスペースを、無駄なく、かつ、他の必要なスペースを侵食せずに効率良く利用することができる。
【0034】
ところで、座席フロア上には、操作レバー(通常は図9中の走行レバー7)を含めて各種設備が配置されるため、抽斗式の収納ボックスを引き出したときにこれらと干渉するおそれがある。
【0035】
この点、請求項2〜5の発明によると、収納ボックスの最大引き出し量をストッパ機構によって制限できるため、干渉するおそれのある相手方との位置関係に応じてこの制限量を設定することによって干渉の問題を解決することができる。
【0036】
とくに請求項3,4の発明によると、図9中の走行レバー7のようにシートスタンド前方に前後方向に傾動操作される操作レバーが設けられている場合に、操作レバーが中立位置にある状態で同レバーと収納ボックスが干渉しない範囲で最大引き出し量を制限するため、作業中にレバー中立状態で収納ボックスを引き出したときに同レバーが押されて機械が動く危険性がない。
【0037】
また、請求項4の発明によると、操作レバーが前側操作位置にある状態で、ストッパ機構のストッパ機能を解除して収納ボックスを座席下空間から取り外し得るように構成したから、同ボックス内の清掃時等、必要に応じて、機械(エンジン)停止状態で収納ボックスを脱着することができる。
【0038】
請求項5の発明によると、ストッパ機構として、台枠と収納ボックスの相対向する側面の一方に収納ボックスの出し入れ方向(前後方向)に延びるストッパガイド溝、他方にこのストッパガイド溝に係合するストッパをそれぞれ設けたから、この両者によって収納ボックスの上下動を抑える効果が得られる。このため、収納ボックスをスムーズに出し入れできるとともに、機械の振動による収納ボックスの振動、これに伴う騒音の発生を抑えることができる。
【0039】
請求項6〜8の発明によると、錠機構によって収納ボックスを押し込み位置に施錠することができるため、管理者以外の工具類の無断使用や盗難、及び機械の走行振動や傾き等によるボックスの不測の飛び出しを防止することができる。
【0040】
この場合、キー操作により施錠アームが回転して施開錠する回転式の錠機構を用いているため、エンジンキーを施開錠キーとして共用することができる。
【0041】
また、台枠に、施錠アームが施錠位置で係合する施錠スリットを設けているため、いいかえれば台枠を錠機構の一部として利用する構成であるため、錠機構の構造が簡単で組み付けも容易となるとともにコストが安くてすむ。
【0042】
ここで、台枠(座席下空間)の高さ寸法は、シートスタンドから座席への伝熱を抑制し、かつ、収納ボックスを収容するのに必要最小限の高さ寸法に設定されるため、回転式の錠機構を設けると、施錠アームが台枠の天壁と干渉して回転できなくなる。
【0043】
かといって、台枠の高さ寸法を増やすと、座席の対フロア高さが高くなり、座席フロアに設けられた操作レバーに対する操作性が悪くなる等の弊害が生じる。
【0044】
この点、請求項7の発明によると、台枠の天壁における施錠アームが当たる部分に施錠アーム逃げ溝を設けたから、台枠の高さ寸法を高くすることなく、施開錠作用を確保することができる。
【0045】
ところで、キャブを持たないオープンタイプの建設機械では、座席フロアだけでなく座席下にも雨水が浸入するため、台枠の天壁に施錠アーム逃げ溝を設けると、同溝から収納ボックス内に浸水するという弊害が生じる。
【0046】
この点、請求項8の発明によると、浸入した水を収納ボックスの水受け室で受けるため、ボックス内全域への多量の浸水を回避することができる。
【0047】
請求項9の発明によると、収納ボックスの隅部に水抜き穴を設けたから、請求項8の発明における水受け室で受ける水を含めて収納ボックス内に浸入した水を外部に排出し、工具の錆び付き等を防止することができる。
【0048】
請求項10の発明によると、収納ボックス及び台枠に、収納ボックスを押し込み位置に停止させる押し込みストッパを設けたから、このストッパが働くまで収納ボックスを押し込むだけで上記錠機構によって施錠し得る位置に自動的に位置決めすることができる。
【0049】
請求項11の発明によると、収納ボックスの内底面に、防音と断熱を兼ねる防音断熱シートを設けたから、シートスタンド下がエンジンルームとなった小型建設機械において、エンジンルームからの振動や熱が収納ボックスに伝わることを防止することができる。
【0050】
この場合、防音断熱シートの質量を十分大きく設定することにより、同シートでシートスタンドの振動を抑えることも可能となる。
【0051】
請求項12の発明によると、収納ボックスと、台枠及びシートスタンドとの相接触する面間に、これらの間の摩擦抵抗を減じる減摩シートを設けたから、収納ボックスの出し入れ時の滑りを良くするとともに、接触部分の磨耗や損傷を防止することができる。
【0052】
請求項13の発明によると、収納ボックスの前面壁及び後面壁の上端部に、弾性材料からなる防音シールを設けたから、走行時等に収納ボックスが跳ね上がって振動や騒音が発生することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の実施形態にかかるミニショベルの概略側面図である。
【図2】同ショベルの座席とその取付部分の分解斜視図である。
【図3】同座席取付部分の拡大正面図である。
【図4】図3のIV−IV線断面図である。
【図5】座席下に設けられる収納ボックスの斜視図である。
【図6】同平面図である。
【図7】台枠の一部切欠斜視図である。
【図8】(イ)〜(ハ)は収納ボックスと操作レバーの位置関係を説明するための概略側面図である。
【図9】従来のミニショベルの概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0054】
本発明の実施形態を図1〜図8によって説明する。
【0055】
実施形態は、ミニショベルを適用対象としている。
【0056】
実施形態に係るミニショベルおいて、図1に示すように、下部走行体1上に上部旋回体2が搭載され、この上部旋回体2の前部に作業アタッチメント3が装着されるとともに、アッパーフレーム4の上面(座席フロア)にシートスタンド5が設けられ、このシートスタンド5の下方(内側=エンジンルーム)に図示しないエンジンが設置される一方、シートスタンド5上に座席6が設けられる点は、図9に示す従来のミニショベルと同じである。
【0057】
図1において、図9と同一部分には同一符号を付して示し、その重複説明を省略する。
【0058】
このミニショベルにおいて、シートスタンド5と座席6との間に台枠10が設けられている。
【0059】
この台枠10は、図7にも示すように天壁10aと、左右両側壁10b,10bと、取付部10c,10cとから成る断面ハット形に形成され、取付部10c,10cが前後両側でシートスタンド5上にボルト11…によって固定される。
【0060】
これにより、台枠10とシートスタンド上面との間に座席下空間S(図2〜図4参照)が形成され、この座席下空間Sにより、エンジンルーム熱がシートスタンド5を通じて座席6に伝わることが抑制される。
【0061】
そして、この伝熱抑制のための座席下空間Sを工具類の収納スペースとして利用するべく、図3,4に示すように同空間Sに収納ボックス12が抽斗式に前後方向に出し入れ自在に設けられている。
【0062】
収納ボックス12は、図5,6にも示すように上面が開口したやや扁平な箱形に形成され、外底面がシートスタンド5の上面に接し、かつ、左右両側の外面が台枠10の左右両側壁10b,10bによって位置規制された状態で、座席下空間Sの前方に引き出される引き出し位置(図4中の二点鎖線は引き出し始めの状態を示す)と、座席下空間S内に収容される押し込み位置との間で出し入れ自在に設けられている。
【0063】
この収納ボックス12に関して次の構成がとられている。
【0064】
(1) ストッパ機構
座席フロア4aにおけるシートスタンド5の前方に、中立位置とその前後両側の操作位置との間で傾動操作される走行レバー7が設けられているため、収納ボックス12を引き出した状態で同ボックス12と走行レバー7が干渉するおそれがある。
【0065】
そこで、この干渉回避策として、収納ボックス12の最大引き出し量を制限するストッパ機構が設けられている。
【0066】
このストッパ機構は、図3,4,7,8に示すように台枠10の左右一方の側壁(右側壁の場合で説明する)10bの前端部に設けられたストッパ13と、収納ボックス12の右側壁の前端部から後端部までに亘って設けられたストッパガイド溝14とから成っている。
【0067】
ストッパ13は、四角形の金属板材がZ形に折り曲げられて成り、先端部が台枠10の右側壁10bに設けられたストッパ差込み穴15(図7参照)を介してストッパガイド溝14に導入された状態で、基端部がシートスタンド5上面に台枠取付用のボルト11によって台枠右側壁10bとともに取付けられている。
【0068】
図8(イ)は収納ボックス12を台枠10(座席下空間S)に最大限押し込んだ状態、同(ロ)(ハ)は同ボックス12をこの最大押し込み状態から最大限引き出した状態それぞれ示す。
【0069】
また、走行レバー7について、図8(イ)、図8(ロ)(ハ)の二点鎖線は中立位置、(ロ)の実線は後側操作位置、(ハ)の実線は前側操作位置をそれぞれ示す。
【0070】
ストッパ13は、図8(イ)に示す最大押し込み状態でストッパガイド溝14の前端部に位置し、同(ハ)の最大引き出し状態でストッパガイド溝14の後端部に当接することによって、収納ボックス12の最大引き出し量が制限される。
【0071】
このストッパ作用による、走行レバー7と、最大引き出し状態での収納ボックス12の前端との関係は次のように設定されている。
【0072】
I. 走行レバー7の中立時…ボックス前端は走行レバー7に接触しない。
【0073】
但し、この状態でストッパ13を取外して収納ボックス12をさらに引き出そうとすると走行レバー7に接触する。つまり、収納ボックス12を座席下空間Sから取り出すことはできない。
【0074】
II. 走行レバー7の後側操作時…ボックス前端が走行レバー7に接触する。
【0075】
III. 走行レバー7の前側操作時…ボックス前端は走行レバー7に接触しない。
【0076】
また、ボックス前端と走行レバー7との間に十分な隙間が残されるため、ストッパ13を取外せば、収納ボックス12を座席下空間Sから取り出し、また再装着することが可能となる。
【0077】
このように、走行レバー7との干渉を回避し得る範囲で収納ボックス12をできるだけ前方に大きく引き出し、かつ、その脱着も可能となるように構成されている。
【0078】
また、図4,5,7に示すように、台枠10及び収納ボックス12の後端部に押し込みストッパ16,17が、前者は下向きに、後者は上向きにそれぞれ突出して設けられ、これらが当接することによって収納ボックス12が押し込み位置に停止・保持されるように構成されている
(2) 錠機構18とその関連構成
収納ボックス12の前端左側に錠機構18が設けられている。
【0079】
この錠機構18は施錠アーム19を有し、前面側からのキー操作によりこの施錠アーム19が左倒れのほぼ水平姿勢となる施錠位置(図3実線)と、右倒れのほぼ水平姿勢となる開錠位置(図3一点鎖線)との間で回転する。
【0080】
収納ボックス12の左側壁の前端部には、上記施錠位置で施錠アーム19の先端部を外部に突出させるアーム溝20(図4,5参照)が設けられている。
【0081】
一方、台枠10の左側壁10bの前端部に縦長の施錠スリット21(図7に示す)が設けられ、収納ボックス12が押し込み位置にある状態で施錠アーム19が施錠位置に回転操作されたときに、その先端部がアーム溝20から突出してこの施錠スリット21に係合する。
【0082】
これにより、収納ボックス12が押し込み位置にロックされる。
【0083】
ここで、座席下空間S(台枠10)の高さ寸法は必要最小限に設定されるため、回転式の錠機構18を設けると、施錠アーム19が台枠10の天壁10aと干渉して回転できなくなる。
【0084】
半面、台枠10の高さ寸法を増やすと、座席6の対フロア高さH(図3参照)が高くなり過ぎて、とくに走行レバー7の操作性が悪くなる等の弊害が生じる。
【0085】
そこで、台枠10の天壁10aにおける施錠アーム19が当たる部分に施錠アーム逃げ溝22(図7参照)が設けられ、施錠アーム19がこの施錠アーム逃げ溝22から一旦台枠10上に突出して回転し得るように構成されている。
【0086】
なお、施、開錠操作するキーは、機械のエンジンキーと共用するのが望ましい。
【0087】
(3) 排水設備
上記のように台枠10の天壁10aに施錠アーム逃げ溝22を設けると、オープンタイプのミニショベルだけに雨水や洗浄水が同逃げ溝22から収納ボックス12内に浸入するため、同ボックス内全域が水浸しになってしまう。
【0088】
そこで、収納ボックス12における錠機構18が設けられた前端部左側に、施錠アーム逃げ溝22から浸入した水を受ける水受け室23が上から見てL字形の仕切り壁23aによって区画形成されている。
【0089】
また、収納ボックス12の底面四隅部に、水受け室23で受けた水を含めて収納ボックス12内に浸入した水を外部に排出する水抜き穴24…が設けられている。
【0090】
(4) その他の構成
(イ) 図4〜図6に示すように、収納ボックス12の内底面ほぼ全域に亘って、防音と断熱を兼ねるゴム等から成る防音断熱シート25が設けられている。
【0091】
この防音断熱シート25により、シートスタンド5下のエンジンルームからの振動や熱が収納ボックス12に伝わることを抑制することができる。
【0092】
また、同シート25の質量を十分大きく設定することにより、同シート25でシートスタンド5の振動を抑えることも可能となる。
【0093】
(ロ) 収納ボックス12の左右両側外面とシートスタンド5の上面に、摩擦係数の小さい材料からなる減摩シート26…が設けられている。
【0094】
この減摩シート26…により、収納ボックス12と台枠10及びシートスタンド5との相接触する面間の摩擦抵抗が減じられて、収納ボックス12の出し入れ時の滑りが良なるとともに、接触部分の磨耗や損傷を防止することができる。
【0095】
なお、減摩シート26を、台枠10の左右両側壁10b,10bの内面、及び収納ボックス12の底板下面にそれぞれ設けてもよい。
【0096】
(ハ) 収納ボックス12の前板及び押し込みストッパ19の各上端部に、弾性材料からなる防音シール(所謂トリム)27が設けられている。
【0097】
この防音シール27により、走行時等に収納ボックス12が跳ね上がって振動や騒音が発生することを抑制することができる。
【0098】
図3〜図6中、28は収納ボックス12の前面に設けられた取手である。
【0099】
このように、シートスタンド5上に台枠10を互いの間に座席下空間Sが形成される状態で設け、この座席下空間Sに、工具類を収納する収納ボックス12を出し入れ自在に設けたから、シートスタンド5下のエンジンルームから座席6への伝熱を座席下空間Sによって抑制し、夏場でも座席の高温化を抑えて、オペレータにとって快適な座席環境を確保することができる。
【0100】
そして、このための構成である、座席下に形成される空間S、つまり、座席下という最もオペレータから近くて出し入れし易い位置に、しかも抽斗式という工具類を出し入れし易い状態で工具類を収納することができる。
【0101】
すなわち、ミニショベル等の小型建設機械が抱えていた二つの課題を一挙に解決することができる。
【0102】
しかも、座席下といういわばデッドスペースに台枠10と抽斗式の収納ボックス12を設けるだけでよいため、構成が簡単でコストが安くてすむ上に、座席6周りの限られたスペースを、無駄なく、かつ、他の必要なスペースを侵食せずに効率良く利用することができる。
【0103】
また、実施形態によると次の効果を得ることができる。
【0104】
(i) ストッパ機能
ストッパ13とストッパガイド溝14によって収納ボックス12の最大引き出し量を制限し、走行レバー7が中立位置にある状態で同レバー7と収納ボックス12が干渉を防止できるため、作業中にレバー中立状態で収納ボックス12を引き出したときに同レバー12が押されて機械が動く危険性がない。
【0105】
また、図8(ハ)に示すように走行レバー7が前側操作位置にある状態で、ストッパ機能を解除して(ストッパ13を取外して)、収納ボックス12を座席下空間Sから取り外し得るように構成したから、同ボックス12内の清掃時等、必要に応じて、機械(エンジン)停止状態で収納ボックスを脱着することができる。
【0106】
さらに、ストッパ13とストッパガイド溝14の係合作用によって収納ボックス12の浮き上がりを抑え、同ボックス12をスムーズに出し入れすることができる。
【0107】
(ii) 錠機能
錠機構18によって収納ボックス12を収納位置に施錠することができるため、管理者以外の工具等の無断使用や盗難、及び機械の走行振動や傾き等によるボックス12の不測の飛び出しを防止することができる。
【0108】
また、座席下空間Sを形成するための台枠10に、施錠アーム19が施錠位置で係合する施錠スリット21を設けているため、いいかえれば台枠10を錠機構18の一部として利用する構成であるため、錠機構18の構造が簡単で組み付けも容易となるとともにコストが安くてすむ。
【0109】
さらに、台枠10の天壁10aにおける施錠アーム19が当たる部分に施錠アーム逃げ溝22を設けたから、台枠10の高さ寸法を必要以上に高くすることなく、施、開錠作用を確保することができる。
【0110】
(iii) 排水作用
施錠アーム逃げ溝22から収納ボックス12内に浸入した水を水受け室23で受けるため、ボックス内全域への多量の浸水を回避することができるとともに、この水受け室23で受けた水を含めて収納ボックス12内に浸入した水を外部に速やかに排出し、工具の錆び付き等を防止することができる。
【0111】
(iv) 押し込みストッパ機能
台枠10及び収納ボックス12に、収納ボックス12を押し込み位置に停止させる押し込みストッパ16,17を設けたから、この押し込みストッパ16,17が働くまで収納ボックス12を押し込むだけで錠機構18によって施錠し得る位置に自動的に位置決めすることができる。
【0112】
他の実施形態
(1) 収納ボックス12の最大引き出し量を制限するストッパ機構として、上記実施形態とは逆に、台枠10側にストッパガイド溝14、収納ボックス12側(同ボックス後端部)にストッパ13を設けてもよい。
【0113】
あるいは、ストッパ13とストッパガイド溝14によるもの以外の構成、たとえば台枠10の天壁10aの前端部下面にストッパ当たり、収納ボックス12の後端部上面にストッパをそれぞれ設ける構成等を採用してもよい。
【0114】
(2) 上記実施形態では、ストッパ機構を、収納ボックス12と走行レバー7の干渉を防止することを目的として設けたが、座席フロア4a上に走行レバー7以外の操作レバーや、操作レバー以外の設備が収納ボックス12と干渉するおそれがある位置関係で設けられる場合に、ストッパ機構を、この干渉のおそれのある相手方との位置関係に応じて収納ボックス12の最大引き出し量を制限するものとして設けてもよい。
【0115】
(3) 錠機構18として、上記実施形態で採用した、施錠アーム19を台枠10の施錠スリット21に係合させて施錠する構成のものに代えて、フック形の施錠アームを台枠側の係合部材に係合させて施錠する構成のもの等を用いてもよい。
【0116】
(4) 客先の要望等に応じて選択される座席6の仕様として、座席6を前後にスライドさせて位置調節を可能とする座席スライド仕様や、座席下にサスペンションを付加するサスペンション仕様がとられる場合に、台枠10と座席6との間にスライド機構やサスペンション機構を設けてもよい。
【0117】
あるいは、台枠10によって座席下空間Sが形成されていることを利用して、収納ボックス12を取外し、同空間Sにスライド機構やサスペンション機構を設けてもよい。
【0118】
(5) 本発明はミニショベルに限らず、これを母体に作業アタッチメントの先端にブレーカや開閉式の圧砕装置を取付けた小型の破砕機や解体機等にも適用することができる。
【符号の説明】
【0119】
5 シートスタンド
6 座席
10 台枠
10a 台枠の天壁
10b,10b 同、左右両側壁
10c,10c 同、取付部
S 座席下空間
12 収納ボックス
13 ストッパ機構を構成するストッパ
14 同、ストッパガイド溝
16,17 押し込みストッパ
18 錠機構
19 施錠アーム
21 台枠の施錠スリット
22 同、施錠アーム逃げ溝
23 水受け室
24 水抜き穴
25 防音断熱シート
26 減摩シート
27 防音シール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部走行体上に搭載された上部旋回体のアッパーフレームにシートスタンドが設けられ、このシートスタンド下にエンジンルームが形成される一方、シートスタンド上に台枠が、シートスタンド上面との間に座席下空間を形成する状態で設けられ、この台枠上に座席が取付けられるとともに、上記座席下空間に、工具類を収納する上面が開口した収納ボックスが、前方に引き出される引き出し位置と、同空間に収容される押し込み位置との間で出し入れ自在に設けられたことを特徴とする建設機械。
【請求項2】
上記収納ボックスの最大引き出し量を制限するストッパ機構が設けられたことを特徴とする請求項1記載の建設機械。
【請求項3】
上記アッパーフレームの上面である座席フロアにおける上記シートスタンドの前方に、中立位置とその前後両側の操作位置との間で傾動操作される操作レバーが設けられ、上記ストッパ機構は、上記操作レバーが中立位置にある状態で同レバーと上記収納ボックスが干渉しない範囲で最大引き出し量を制限するように構成されたことを特徴とする請求項2記載の建設機械。
【請求項4】
上記操作レバーが前側操作位置にある状態で、上記ストッパ機構のストッパ機能を解除して収納ボックスを上記座席下空間から取外し得るように構成されたことを特徴とする請求項3記載の建設機械。
【請求項5】
上記ストッパ機構として、上記台枠と収納ボックスの相対向する側面の一方に収納ボックスの出し入れ方向に延びるストッパガイド溝、他方にこのストッパガイド溝に係合するストッパがそれぞれ設けられたことを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項に記載の建設機械。
【請求項6】
上記収納ボックスの前端部に、前面側からのキー操作により施錠アームが施錠位置と開錠位置との間で回転する錠機構が設けられる一方、上記台枠の前端部に、上記収納ボックスが押し込み位置にある状態で上記施錠アームが上記施錠位置で係合して上記収納ボックスを押し込み位置にロックする施錠スリットが設けられたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の建設機械。
【請求項7】
上記施錠スリットが上記台枠の左右いずれか一側壁に設けられるとともに、台枠の天壁における上記施錠スリットが設けられた側部の前端部に、上記施錠アームと.天壁との干渉を避ける施錠アーム逃げ溝が設けられたことを特徴とする請求項6記載の建設機械。
【請求項8】
上記収納ボックス内の前端部における上記錠機構が設けられた側部に、上記押し込み位置で上記施錠アーム逃げ溝から浸入する水を受ける水受け室が形成されたことを特徴とする請求項7記載の建設機械。
【請求項9】
上記収納ボックスの隅部に、収納ボックス内に浸入した水を外部に排出する水抜き穴が設けられたことを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の建設機械。
【請求項10】
上記収納ボックス及び台枠に、上記収納ボックスを上記押し込み位置に停止させる押し込みストッパが設けられたことを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の建設機械。
【請求項11】
上記収納ボックスの内底面に、防音と断熱を兼ねる防音断熱シートが設けられたことを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の建設機械。
【請求項12】
上記収納ボックスと台枠及びシートスタンドとの相接触する面間に、これらの間の摩擦抵抗を減じる減摩シートが設けられたことを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の建設機械。
【請求項13】
上記収納ボックスの前面壁及び後面壁の上端部に、弾性材料からなる防音シールが設けられたことを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載の建設機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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